説明

光ファイバ接続部収納ユニットと光ファイバ接続部収納構造

【課題】 加入者系光通信網の構築に用いられる単心光ファイバあるいは多心光ファイバテープのコネクタ、特にMTコネクタが、無理な力がかからず光ファイバの接続特性が確保された状態で、しかも密に収納する手段がなかった。
【解決手段】 光ファイバ42a、42bがコネクタ40により接続されている接続部が複数組、筐体35内に収納され、前記筐体35は弾性変形可能な材料により構成され、前記各コネクタ40が、前記筐体35に設けられた仕切板36上に支持されると共に、該コネクタ40から延びる光ファイバ42a、42bが、同筐体35に設けられたスリット37a、37bに挟持されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、加入者系光通信網の構築に用いられる光ファイバ接続部収納ユニットと光ファイバ接続部収納構造に関する。
【0002】
【従来の技術】最近、加入者系光通信網として、複数の単心線あるいは複数の多心テープ線等の光ファイバを用いた光通信網が構築されている。中でも、4心あるいはそれ以上の複数の光ファイバを横一列に配列し、これを上下両面からプラスチックフィルムで接合しテープ状とした、多心光ファイバテープが用いられることが多い。加入者系光通信網は、分岐も含めて接続替えが必要となる場合が多いため、光ファイバについてコネクタによる接続が行われる。また、一般的には、将来の分岐、接続替え、接続作業の失敗に備えて、接続部には、光ファイバの余長部が、たとえば片側1m程度取られている。光接続部のこれらコネクタおよび余長部の光ファイバ、または光ファイバテープはクロージャと呼ばれる容器中に保存される。
【0003】図8に、一例として、4心の光ファイバテープを接続するピン嵌合方式のコネクタ(MTコネクタと呼ばれる)を示す。この図において、MTコネクタ1は、両側の光ファイバテープ2a、2bから口出しされたファイバが、コネクタ中央で突き合わされて接続されている。すなわち、両側のフェルール3a、3bに穿設された微細孔に、光ファイバテープ2a、2bから口出しされた光ファイバを挿入し、接着剤で固定し、その端面5を研磨した後、位置決めピン4で両フェルール3a、3bを嵌合し、両側の光ファイバの先端を突き合わせる。その上で両フェルールを外側からクリップ6で挟持して光ファイバを接続する。接続後はコネクタと、その両側の余長部としての光ファイバテープとをクロージャ内に収納する。
【0004】図9、図10(a)、(b)は従来の光ファイバ接続部をクロージャ10内のプラスチックシート13内に収納した状態を示す図である。この図は、1例として、一方及び他方の単心の光ファイバ12a、12bが、2組それぞれ別々のコネクタ15a、15bにより接続され、余長部16と共に、折り曲げられたプラスチックシート13内に収納されている例を示している。単心ファイバを集束した光ケーブル11a、11bから分離された光ファイバ12a、12bは、コネクタ15a、15bによって接続され、このコネクタ15a、15bおよびそれぞれの光ファイバ余長部16a、16bは折り曲げられたシート13内に、2本まとめて収納されている。プラスチックシート13は、図10に示すように、その上部の折り返し18と下部の折り返し19とを有し、その間に光ファイバ接続部を収納する。その折り曲げられたシート13は、図9に示すように放射状に多数設けられ、光ファイバ接続部が多数個別に収納できる構造となっている。こうして、光ファイバ接続部を多数収納した光接続部収納構造は気密なクロージャ内に封入される。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、上述した従来の光ファイバ接続部の収納構造においては、折り曲げられたプラスチックシート中にコネクタと光ファイバの余長部が共に収納されている。従って、例えば、4心の光ファイバテープを接続したMTコネクタの接続部の場合、1対のMTコネクタと、光ファイバテープの余長部からなる光ファイバ接続部をシート内に同時に収納する必要があるが、狭いシート内には収納しにくい。たとえ収納しても、光ファイバの分岐や接続替えを行う場合には、光ファイバが錯綜したクロージャ内にて、必要なコネクタが収納されているシートを選び、折り曲げられたシート内からコネクタおよび余長部を一旦取りだし、そのファイバテープの余長部を取り揃え直して、接続点の光ファイバを識別できる状態としてから、コネクタを外し、再接続することが必要で、このため接続替えに長時間を要するという問題があった。また、プラスチックシート内にはスペースは無く、外部からの力により、コネクタのフェルールを両側から加圧し挟持しているクリップが外れるといった事故が発生する問題もあった。
【0006】分岐あるいは接続替えの作業は、接続箇所であるコネクタとコネクタから両側に延びている光ファイバ識別から始まる。従って、コネクタを、可能な限り密に整理し、配列して収納し、接続に必要なコネクタとそのコネクタから延びる光ファイバが容易に識別でき、かつ接続部を容易に取り出せれば、短時間で接続替え等の作業を完了させることができると考えられる。この発明は、このような背景の下になされたもので、加入者線路の構築に用いられる単心光ファイバで構成されたケーブルあるいは多心光ファイバテープのコネクタ、特にMTコネクタを密に収納し、例えば、接続替えに必要なコネクタや光ファイバを必要に応じてすばやく識別して取りだすことができ、その結果、接続替えの作業が短時間で完了でき、しかも、光ファイバ接続部に無理な力がかかること無く、光ファイバの接続状態を確実に確保し得る光ファイバ接続部収納ユニット及び光ファイバ接続部収納構造を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載の発明は、一方の光ファイバと他方の光ファイバとがコネクタにより接続されている接続部が複数組筐体内に収納されてなり、前記筐体は、弾性変形可能な材料により構成されていると共に、少なくともその一面が開放されて構成され、かつ前記一面に対向する筐体壁部に、前記開放面に向けて突出する仕切板が複数列設されると共に、これら仕切板の両側方に位置する両側壁に、各仕切板の両側方近傍にそれぞれスリットが形成されてなり、前記各コネクタが、それぞれ仕切板上に支持されると共に、前記コネクタから延びる一方および他方の光ファイバが前記スリットに挟持されていることを特徴とするものである。
【0008】請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の光ファイバ接続部収納ユニットが複数個多段に積み重ねられて保持され、これら複数の光ファイバ接続部収納ユニットがクロージャ内に収納配置され、前記光ファイバ収納ユニットから延びる光ファイバの余長部が、前記クロージャ内に配置されていることを特徴とするものである。
【0009】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、この発明の実施の形態について説明する。図1は、この発明による、光ファイバテープ接続部収納構造を示す図である。この図において、符号20はクロージャ、22、22・・・は光ファイバテープ接続部収納ユニット、28は光ファイバテープの余長部である。クロージャ20内には、光ファイバテープ接続部収納ユニット22、22・・・と光ファイバテープの余長部28が収納されている。
【0010】図2は、光ファイバテープ接続部収納ユニット(以下、収納ユニットという)22の構成を示す図である。この図において、35は光ファイバテープ接続部収納筐体(以下、収納筐体という)40はコネクタ、42a、42bはコネクタによって接続された一方および他方の光ファイバテープである。接続部収納筐体35には、仕切板36およびスリット37が設けられている。コネクタ40は、そのクリップ41を上にして、収納筐体35の下壁45上および各仕切板36上に保持されている。コネクタ40に接続された一方および他方の光ファイバテープ42a、42bは、収納筐体35の両側壁46、47に設けられたスリット37中に挟持されている。なお、このコネクタ40は、図8に示した、従来から用いられている、4心の光ファイバテープを接続するMTコネクタである。
【0011】上記のように、コネクタ40およびその両側に延びる光ファイバテープ42a、42bが保持されることにより、これらコネクタ40および光ファイバテープ42a、42bは、密に並列状態に置かれ、かつ平面的に位置している。ここで、収納筐体35の各コネクタ40を収納する空間部の高さは、クリップ41を含めたコネクタ40の厚みより大きく作られており、各コネクタ40は、そのクリップ41を上にして収納されているので、クリップ41に外力が加わることはない。
【0012】図3は、収納筐体35の構成を示す図である。この図に示すように、収納筐体35は、矩形の主壁部43と、この主壁部43の外周部に形成された上壁44、下壁45、右側壁46、左側壁47を有するものであって、主壁部43に対向する一面が開放され、該主壁部43に開放面に突出する仕切板36が4個列設されている。また、収納筐体35の開放面の左右両側壁46、47の、仕切板36および下壁45の上面近傍にスリット37a、37bが形成されている。また、上壁44および下壁45には、他の収納筐体と接合するためにピン38およびピン穴39が設けられている。収納筐体35の各部は、弾性変形可能な材料、例えばゴム、を用いて一体成形によって製作されている。
【0013】上記収納ユニット22は、図4に示すように、2つのものが収納筺体35のピン38およびピン穴39を利用してこれらを嵌合させることにより積み重ねられている。そして、図1に示すように、この積み重ねられた収納ユニット22が2つ一組として、2組が収納ユニット保持台26上に設置されている。収納ユニット22が積み重ねられると、4心の光ファイバテープを接続したMTコネクタが10個収納されることになる。そして、各収納ユニット22から両側方に延びる光ファイバテープ42a、42bは、図1に示す余長部として、湾曲状態とされ、半ターンされて、クロージャ20の内面に沿って配置されている。
【0014】次に、光ファイバテープ接続部収納構造について、収納ユニット22からの光ファイバテープ接続部の取り外し、または収納筐体35への光ファイバテープ接続部の取り付けに作業について説明する。
【0015】まず、収納ユニット22から、4心の光ファイバテープ42a、42bを両側に接続したMTコネクタを取り外すには、図5に示すように、収納筐体35の下壁45を保持し、上壁44を仕切板36が突出する方向の反対方向に押す。収納筐体35は、弾性変形可能な材料で作られているため、この図に示すように背面に湾曲する。その結果スリット37a、37bはそれぞれ開き、スリット37a、37bに挟持されていた光ファイバテープ42a、42bは、スリット37a、37bの下面のみで、支えられている状態となる。このため、それぞれのコネクタ40が光ファイバテープ42a、42bと共に収納ユニット22から容易に取り出せる。
【0016】同様に、収納筐体35が背面に湾曲し、スリット37が開かれた状態においては、MTコネクタ40の両側に延びる光ファイバテープ42a、42bを支持しながら、コネクタ40と共に光ファイバテープ接続部を、収納筐体35に容易に取り付けることができる。
【0017】上記の光ファイバテープ接続部収納構造においては、収納ユニット22は、光ファイバテー42a、42bを接続した多数のコネクタ40を、コンパクトに、かつ平面的に位置させて収納する。従って、コネクタ40や光ファイバテープ42a、42bの識別が容易となり、接続替えなどの作業を短時間で終了させることができる。また、上記の構成によれば、光ファイバテープの接続部、すなわちコネクタ40が収納筐体35の区切られたスペース中に支持されるので、外力を受け難く、光ファイバテープの接続状態を長期間に亘って確実に確保することができる。さらに、収納ユニット22から引き出された余長部28がクロージャ20内の広いスペース部分に配置させることが出きるので、接続替えなどの作業時にコネクタ40と共に、容易に識別して引き出すことができ、作業性の向上を図ることができる。
【0018】なお、収納ユニット22を積み重ねる方法は、上述のピン38およびピン穴39による方法に限定されない。例えば、図6は、収納ユニット22を、収納穴を設けた棚を用いて積み重ねた例を示している。この例では、収納ユニット22が、底部棚50と上部棚51に設けられた収納穴52および53中に納められ、2段に積み重ねられている。上部棚51は、底部棚に設けられた4本の支柱55によって支持されている。底部棚50に設けられた収納穴は止まり穴である。そして、図7は、収納ユニット22をクランプ60によって、2段に重ねて支持した例を示す図である。また、上記実施の形態においては、4心の光ファイバテープの接続部を対象として説明したが、この発明では、多心および単心光ファイバの接続部を対象としてもよい。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば、次の様な効果が得られる。請求項1に記載の光ファイバ接続部収納ユニットによれば、光ファイバまたは光ファイバテープが接続されているコネクタが、収納筐体中にコンパクトに、しかも平面的に位置して収納されるので、コネクタと光ファイバまたは光ファイバテープを容易に識別することができる。また、接続された光ファイバまたは光ファイバテープとコネクタを収納ユニットに容易に取り付け、また容易に取り外すことができるので、識別が容易であることを含めて、収納作業や分岐または接続が得の作業の作業性の向上が図れる。さらに、各コネクタは、収納筐体中の区切られたスペース内に支持されるので、外力を受け難く、光ファイバまたは光ファイバテープの接続状態を長期間に亘って、確実に確保することができる。
【0020】請求項2に記載の光ファイバ接続部収納構造によれば、複数段に収納ユニットを積み重ね、かつ積み重ねられた収納ユニットの組を複数組用いるので、加入者系光通信網の構築に必要な数多くの接続部を、コンパクトに、識別しやすく収納することができる。また、光ファイバ、または光ファイバテープの余長部は、収納ユニットの背後のクロージャスペース内に整理されて保持されるので、接続部と共に余長部を容易に取り出すことができ、他のファイバの伝送に影響を与えることなく、分岐あるいは接続替えなどの作業を短時間で完成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施例として示した光ファイバテープ接続部の収納構造の構成を示す概略構成図である。
【図2】 光ファイバテープ接続部収納ユニットの構成を示す正面図である。
【図3】 光ファイバテープ接続部を収納する収納筐体の斜視図である。
【図4】 2段に積み重ねられた収納ユニットの斜視図である。
【図5】 収納筐体の作用を説明するための説明図である。
【図6】 収納ユニットを2段に積み重ねる方法の一例を示す斜視図である。
【図7】 収納ユニットを2段に積み重ねる方法の一例を示す斜視図である。
【図8】 従来用いられている、4心の光ファイバテープを接続したコネクタ(MTコネクタ)の斜視図である。
【図9】 従来の光ファイバ接続部の収納構造を示す概略構成図である。
【図10】 従来の光ファイバ接続部をプラスチックシート内に収納した状態を示す平面図および断面図である。
【符号の説明】
20…クロージャ、22…接続部収納ユニット、28…光ファイバテープの余長部、35…接続部収納筐体、36…仕切板、37a…スリット、37b…スリット、40…コネクタ、42a …一方の光ファイバテープ、42b…他方の光ファイバテープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方の光ファイバ(42a)と他方の光ファイバ(42b)とがコネクタ(40)により接続されている接続部が複数組、筐体(35)内に収納されてなり、前記筐体は、弾性変形可能な材料により構成されていると共に、少なくともその一面が開放されて構成され、前記一面に対向する壁部に、前記開放面に向けて突出する仕切板(36)が複数列設されると共に、これら仕切板の両側方に位置する両側壁に、各仕切板の両側方近傍にそれぞれスリット(37a、37b)が形成されてなり、前記各コネクタが、それぞれ仕切板上に支持されると共に、該コネクタから延びる一方および他方の光ファイバが前記スリットに挟持されていることを特徴とする光ファイバ接続部収納ユニット(22)。
【請求項2】 請求項1に記載の光ファイバ接続部収納ユニットが複数個多段に積み重ねられて保持され、これら複数の光ファイバ接続部収納ユニットがクロージャ(20)内に収納配置され、 前記光ファイバ収納ユニットから延びる光ファイバの余長部(28)が、前記クロージャ内に配置されていることを特徴とする光ファイバ接続部収納構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開平9−133813
【公開日】平成9年(1997)5月20日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−289023
【出願日】平成7年(1995)11月7日
【出願人】(000005186)株式会社フジクラ (4,463)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)