光制御膜積層体及びそれを用いたプロジェクション用スクリーン
【課題】プロジェクション用スクリーンに適用したときに、広い角度範囲にわたって明るく高画質の画像を与えうる光制御膜積層体を提供する。
【解決手段】曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜21と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜22とを積層した構成とした。
【解決手段】曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜21と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜22とを積層した構成とした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光制御膜積層体及びそれを用いたプロジェクション用スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクションディスプレイは、背面投射型表示装置とも呼ばれるもので、その例を図1に基づいて説明する。この図に示すように、プロジェクションディスプレイ1は、光源ユニット3からの光を、画像表示ユニット4、さらに投射レンズ5を通してミラー6に当て、そこで反射させてスクリーン7に背面から画像を投影するものである。画像表示ユニット4には、液晶パネルや陰極線管(CRT)などが用いられる。また、画像表示ユニットからの画像を直接スクリーンに投射する方式もある。
【0003】
このようなプロジェクションディスプレイのスクリーン7には通常、フレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせたものが用いられている。フレネルレンズは、光源からの又はミラーからの光を平行光に変え、かつレンチキュラーレンズにほぼ垂直に入射させる機能を有しており、一方レンチキュラーレンズは、フレネルレンズから入射した光を制御して散乱させる機能を有している。
【0004】
プロジェクション用スクリーンのレンチキュラーレンズやフレネルレンズの材料としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明な熱可塑性樹脂が使用され、なかでもアクリル樹脂が、透明性、硬度、耐久性、加工適性などから多く用いられている。また、レンチキュラーレンズには、上記の熱可塑性樹脂に、シリカ、アルミナ、粘土、ガラス、ビーズなどの光拡散性物質を混合して、光拡散性を付与したものが広範に用いられている。
【0005】
プロジェクション用スクリーンにおいては、光拡散性能と光線透過性能の両方が重要である。従来のプロジェクション用スクリーンは、光拡散性に優れるものの、全光線透過率が低く、スクリーン画面が暗くなるという問題点を有する。スクリーン画面を明るくするために、全光線透過率を上げようとすると、光拡散性を犠牲にすることになり、スクリーン画面の解像度が低下してしまう。このように、光拡散性能と光線透過性能の両方を同時に満足させることは難しかった。また、従来のプロジェクション用スクリーンは、フレネルレンズとレンチキュラーレンズのピッチに起因するモアレ模様が画面に発生しやすいという問題点も有していた。さらに、視認性の良好な画像を与える角度範囲が狭く、大型の高画質を目的としたテレビ用のスクリーンとしては満足のいくものではなかった。
【0006】
これらの問題点を改善するために、曇価に角度依存性のある光制御膜をプロジェクション用スクリーンに適用することが、これまでにもいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に平行光を照射することにより硬化してなる曇価に角度依存性のない光制御膜を、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。また特許文献2には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化してなる曇価に角度依存性のある光制御膜を複数枚積層して、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。さらに、特許文献3には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化させた、曇価に角度依存性のある光制御膜を3枚以上積層してなる光制御膜積層体であって、うち2枚は光散乱角度域が法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層し、さらに別の1枚は、光散乱角度域の中心が法線方向にほぼ一致して、先の2枚の光制御膜に対して光散乱角度域の方向がほぼ平行になるように積層して、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。
【0007】
また、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物を膜状とし、そこに特定方向から光を照射して硬化させ、曇価に角度依存性のある光制御膜を作製する方法及びそのための組成物は、例えば、特許文献4や特許文献5において提案されている。
【特許文献1】特開平4−77727号公報
【特許文献2】特開平4−77728号公報
【特許文献3】特開2006−84769号公報
【特許文献4】特開昭64−40906号公報
【特許文献5】特開平02−67501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの文献で提案される光制御膜をプロジェクション用スクリーンに適用すると、高い全光線透過率を保ちながら、明るい画像が得られるようにはなるが、大型のテレビ用として、広い角度範囲にわたって画質の高い画像を与えるという面では、必ずしも十分に満足できる状態に至っていない。例えば、スクリーンの水平方向、垂直方向ともに広い視認性(視野角)を有するためには、曇価に角度依存性を示す光制御膜のみで構成した場合、水平方向に広い角度範囲にわたって画像を与えうるために3枚、さらに垂直方向に広い角度範囲にわたって画像を与えるためにさらに1枚積層する必要があり、合計で少なくとも4枚の光制御膜を積層する必要がある(特許文献2、3)。また、曇価に角度依存性のない光制御膜で構成した場合、十分に広い視認性(視野角)は未だ得られていない。
【0009】
本発明は、現在の主流であるフレネルレンズとレンチキュラーレンズを組み合わせたスクリーン及び前記文献で提案されている光制御膜を用いたスクリーンにおける問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、広い角度範囲にわたって明るく高画質の画像を与えうる光制御膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る光制御膜積層体では、曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層した構成とした。
【0011】
この積層体において、第2の光制御膜として、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものを使用できる。前記単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が、光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出射面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層されているのが好ましい。また前記2枚の単層膜は、光散乱角度域が互いに5°以上の重なりを有しているのが好ましい。さらに、前記2枚の単層膜の光散乱角度域が、光出射面の法線方向を中心に互いに対称であるのが好ましい。
【0012】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜としては、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものが好ましい。
【0013】
そして、この積層体は、第1の光制御膜が光入射側となるように配置することによってプロジェクション用スクリーンに好適に適用される。
【0014】
なお、本明細書で「ほぼ平行」とか「ほぼ一致」とかというときの「ほぼ」は、そこに記載の配置(平行又は一致)を中心に、±10°程度までは許容されることを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用することにより、広い角度範囲にわたって明るく高画質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る光制御膜積層体についてさらに詳述する。本発明では、曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層して光制御膜積層体とする。ここでいう曇価とは、JIS K 7105に従い、積分球式光線透過率測定装置(例えば、スガ試験機株式会社製のヘーズメーター HGM-2DP型測定装置等)を用いて、光制御膜の全光線透過率及び拡散透過率を測定し、下式により求められる値である。
【0017】
【数1】
【0018】
また、光制御膜における曇価の角度依存性は、次のようにして測定される。すなわち、図2に示すように、光制御膜の試験片8への光の入射角度θを0〜180°の間で変化させて、それぞれの角度毎に上記の曇価を測定し、60%以上の曇価を示す角度範囲を光散乱角度域とする。ここで、角度θは、試験片8の光入射面と入射光とのなす角度であって、試験片8の回転は、曇価の角度依存性が最大となる方向に行う。図中に示すAとBは、図2(a)(試験片8に垂直方向から光を入射する場合:θ=90°)と図2(b)(試験片8に斜め方向から光を入射する場合)とで、試験片8の対応する部分がわかるように付した符号である。
【0019】
本発明の光制御膜積層体では、このようにして求められる曇価が、角度θが0〜180°の範囲全域で60%以上である、曇価に角度依存性のない第1の光制御膜と、角度θが0〜180°の範囲で60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜とを積層してなることが大きな特徴である。このような光制御膜を積層構成とすることで、本発明の光制御膜積層体は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、画像表示ユニットから入射してくる光軸を、視認者側(つまりスクリーンに対して垂直な方向)へ曲げることができる最大入射角度を広くすることが可能となり、その結果として、視認者側ではスクリーン全体が一様に明るく見える領域、すなわち高感度領域が大幅に広がる効果をもたらす。
【0020】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜は、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物を膜状に形成し、そこに特定方向から光を照射して硬化させることにより製造できる。第1の光制御膜及び第2の光制御膜の製造に用いられる光重合可能なモノマー又はオリゴマーは、分子内に、アクリロイル基〔CH2=CHCO-〕、メタクリロイル基〔CH2=C(CH3)CO-〕、ビニル基〔CH2=CH- 〕、アリル基〔CH2=CHCH2-〕などの重合可能な基を少なくとも1個有する化合物である。
【0021】
光重合可能なモノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルオキシエチルフタレート、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2,4,6−トリブロムフェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルフォリン、2−フェニルフェニルアクリレート、p−クミルフェニルアクリレート、ジフェニルメチルアクリレート、3−フェノキシフェニルアクリレートこれらのアクリレートに対応するメタクリレートモノマーなどの分子内に1つの重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0022】
また、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、トリスアクリロキシイソシアヌレート、多官能のエポキシアクリレート、多官能のウレタンアクリレート、これらのアクリレートに対応するメタクリレート、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の分子内に複数の重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物も挙げられる。
【0023】
光重合可能なオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリオールポリアクリレート、変性ポリオールポリアクリレート、イソシアヌル酸骨格のポリアクリレート、メラミンアクリレート、ヒダントイン骨格のポリアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能アクリレートや、これらのアクリレートに対応するメタクリレートなどが挙げられる。ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、ポリイソシアネートとポリオールと2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの付加反応によって生成するものが例示される。ここで、ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。またポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0024】
これらの光重合可能なモノマー又はオリゴマーは、少なくとも2種類の混合物からなる組成物として用いられる。ここで、使用するモノマー又はオリゴマーは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差があるものを選択する。屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを混合した組成物に所定方向から光を照射して硬化させることで、光を散乱する領域、すなわち光散乱角度域が形成される。この組成物は、それを構成する複数の化合物相互の溶解性とそれぞれの屈折率差によって、曇価の角度依存性を発現するものであり、相溶性があまり良くない組合せで屈折率差が大きく、かつ反応速度が異なる場合に、光の散乱する度合い、すなわち曇価が大きくなる。この屈折率差は、0.01以上、とりわけ0.04以上であるのが好ましい。
【0025】
上記の組成物には通常、硬化性を向上させるために光重合開始剤が混合されて、光重合に供される。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0026】
生成した光硬化膜は、屈折率の異なる樹脂が相分離して、特定の方向に回折格子状の層構造を形成しており、特定の角度から入射した光は、Bragg の回折条件に準じた原理にて散乱するものと考えられる。散乱の度合い及び選択的に散乱する入射光の角度は、使用する組成物及び照射条件によって調節することができ、特に硬化時に、膜状組成物試料面に対する照射光の入射角度を変えることによって、硬化したシートに入射する光がシートから出射する際に散乱又は直進透過するシート膜面との角度域が制御できる。
【0027】
光硬化の際、光の照射方向を中心に光散乱角度域が発現する。例えば、光硬化性樹脂組成物の膜面にほぼ垂直に光を照射すれば、当該垂直方向、すなわち法線方向を中心に、光散乱角度域が発現する。また、法線方向に対して所定角度傾いた斜め方向から光を照射すれば、その傾いた方向を中心に、光散乱角度域が発現する。
【0028】
硬化に用いる光は、前述の組成物を硬化させるものであればどのような波長を有していてもよく、例えば、可視光、紫外線などがよく用いられる。紫外線は、水銀ランプやメタルハライドランプなどから発せられるが、棒状のランプを用いた場合には、その照射条件を調節することにより、生成した光硬化膜が光源の長軸と短軸方向に対して異方性を示し、光源の長軸方向を軸として回転させた場合にのみ、特定角度の光を散乱するようになる。
【0029】
曇価に角度依存性がなく、光入射角度が0〜180°の間でいずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜は、屈折率に差がある少なくとも2種類のモノマー又はオリゴマーを含有する前述の光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布するか、又はセル中に封入して膜状とした後、点状光源又は点状光源からフレネルレンズを介して得られる平行光を照射することにより作製される。
【0030】
曇価に角度依存性のない第1の光制御膜の製造例を、図3に基づいて説明する。図3は、光硬化性樹脂組成物膜に対して多方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す斜視図である。この装置は、矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の上方に、コンベア10の移動方向と略垂直方向に配置された棒状の光源ランプ15と、コンベア10と光源ランプ15との間に、コンベア10の移動方向と平行に且つコンベア10の移動方向と垂直方向に所定間隔で並列に設置された複数枚の薄板状の遮光板14とを備える。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を樹脂組成物膜に照射する。
【0031】
このとき、光源ランプ15から出射した光は、コンベア10の移動方向と平行に設置された複数枚の遮光板14によって、コンベア10の移動方向と垂直方向に複数個に区分される。区分された光は、その区分内においてあたかも点状光源のような作用を奏する。これにより、樹脂組成物膜には種々の方向から光が照射され、種々の方向に屈折率の異なる相が交互に形成され、曇価に角度依存性のない第1の光制御膜が作製される。
【0032】
一方、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜は、第1の光制御膜と同様に、前述の光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布するか、又はセル中に封入して膜状とした後、棒状光源から光を照射しながら徐々に硬化させることにより作製できる。
【0033】
光散乱角度域の中心が光入射面の法線方向とほぼ一致する、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜の製造例を図4に基づいて説明する。同図(A)は、光硬化性樹脂組成物膜に対して垂直方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同図(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の上方に離隔対向して配置された、コンベア10の移動方向に対して垂直方向に細長いスリット13が形成された遮光板12と、スリット13の上方に所定距離隔てて、スリット13の長手方向と略平行に配置された棒状の光源ランプ15とを備える。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を遮光板12のスリット13を介して樹脂組成物膜に照射する。すると、樹脂組成物膜には垂直方向の光が中心となって照射されるので、垂直方向(法線方向)に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。スリット13の幅や棒状の光源ランプ15から光硬化性樹脂膜までの距離、光硬化性樹脂膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域の大小が制御できる。
【0034】
次に、光散乱角度域の中心が光入射面の法線方向に対して偏った向きにある、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜の製造例を図5に基づいて説明する。同図(A)は、光硬化性樹脂組成物膜に対して斜め方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同図(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の移動方向上流側に離隔対向して配置された遮光板12と、さらに遮光板12の上方に所定距離隔てて配置された棒状の光源ランプ15とを備える。この例における遮光板12は、その端部が光源ランプ15の直下からコンベア10の移動方向側へ少しはみ出している。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を遮光板12側に向けて照射する。すると、樹脂組成物膜表面の法線に対して角度αをもった光が中心となって樹脂組成物膜に照射するので、この光の入射方向に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。光照射角度αを変化させることにより、光散乱角度域の中心値を変化させることができ、また、光源ランプ15から光硬化性樹脂膜までの距離や光硬化性樹脂膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域の大小が制御できる。
【0035】
本発明で使用する第2の光制御膜は、単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。第2の光制御膜として積層膜を用いる場合、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものが好ましい。ここで、単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、この2枚の単層膜を、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出射面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、積層状態での光散乱角度域が1枚のときよりも広がるようにするのがよい。こうすることで、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、左右又は上下方向の良視認領域、すなわち視野角を広げることができる。
【0036】
また、この2枚の単層膜の光散乱角度域が、互いに一部重なるようにすると共に、光出射面の法線方向を中心に対称となるようにすることのよって、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーン正面で明るい画像を得ることができる。前記2枚の単層膜の光散乱角度域のより好ましい重なりは5°以上である。
【0037】
本発明においては、以上説明したような方法によって得られる、曇価に角度依存性がない第1の光制御膜と、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層して光制御膜積層体とする。第1の光制御膜と第2の光制御膜を積層する方法としては、別々に作製した光制御膜を、粘着剤等の媒体を介して接着してもよいし、媒体を介さずに重ねてもよい。また、作製した光制御膜そのものを基材として、その上に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し硬化させて、もう一層の光制御膜を形成し、2つの光制御膜を積層構造としてもよい。
【0038】
1枚の第1の光制御膜と、2枚の単層膜が積層された第2の光制御膜とを積層して本発明の光制御膜積層体を得る例を、図6に基づいて説明する。この例では、単層膜22aが、光出射面の法線方向からやや右側に偏った向きに角度βの範囲で60%以上の曇価を示すものとする。一方、単層膜22bは、光出射面の法線方向からやや左側に偏った向きに角度βの範囲で60%以上の曇価を示すものとする。これらの角度βが光散乱角度域に相当する。そして、この光散乱角度域が延在する方向を、「光散乱角度域の方向」とする。単層膜22bは、単層膜22aの向きを逆にした状態(この図では左右を反転させた状態)に相当する。これら2枚の単層膜22a,22bをこの向きのまま積層して第2の光制御膜22とする。第2の光制御膜22は、それぞれの光散乱角度域βよりも広い角度γの範囲で60%以上の曇価を示すものとなる。
【0039】
一方、第1の光制御膜21は、法線方向を中心にいずれの入射角度範囲でも60%以上の曇価を示すものとし、第1の光制御膜21の光出射側に第2の光制御膜22が積層される。なお、第1の光制御膜21と第2の光制御膜22の積層順序を逆にして、第1の光制御膜21の光入射側に第2の光制御膜22を積層すると、スクリーンの右側と左側で視認特性が異なることになり好ましくない。
【0040】
このとき、単層膜22aの光散乱角度域と単層膜22bの光散乱角度域βとが、互いに5°以上の重なりを有していると、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーン正面でさらに明るい画像を得ることができ、有利である。一方で、2枚の単層膜22a,22bの光散乱角度域が重なる角度をあまり大きくすると、視野角拡大効果を犠牲にすることになるので、重ねる前の単層膜における光散乱角度域の広がり具合にもよるが、2枚重ねたときに光散乱角度域の重ならない領域が合計で40°以上、さらには50°以上存在するようにするのが好ましい。
【0041】
また、単層膜22aの光散乱角度域と単層膜22bの光散乱角度域とが、光出射面の法線方向を中心に互いに対称であると、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーンの右側と左側又は上側と下側で視認特性が同一となり、有利である。
【0042】
なお、図6では、2枚の単層膜22a,22bが同じ種類のもので、光散乱角度域も同じであることを前提に説明したが、異なる種類で光散乱角度域も異なるものを用いてももちろん構わない。
【0043】
さらに、図6では、第2の光制御膜22として2枚の単層膜22a,22bを積層したものを例に説明したが、3枚以上単層膜を積層したものを第2の光制御膜22として用いても構わない。例えば、図6に示した如き、2枚の単層膜22a,22bを積層した状態で、さらに多くの単層膜を積層する場合、積層する単層膜は、その光散乱角度域の方向が、例えば、単層膜22a,22bの光散乱角度域の方向とほぼ同じになるように積層してもよいし、ほぼ直交するように積層してもよい。この場合の積層順序は任意に選ぶことができる。
【0044】
以上のような多層積層構成とすることで、本発明の光制御膜積層体は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、画像表示ユニットから入射してくる光軸を、視認者側(つまりスクリーンに対して垂直な方向)へ曲げることができる最大入射角度を広くすることが可能となり、その結果として、視認者側ではスクリーン全体が一様に明るく見える領域、すなわち高感度領域が大幅に広がる効果をもたらす。
【0045】
一般に、使用する光源の強度は一定であるため、視野角を広げすぎると相対的に暗くなる一方、視野角が狭いと視認性の問題が生じる。よって、スクリーンの法線を90°とすると、水平方向への視野角は50°〜130°、好ましくは45°〜135°、より好ましく40°〜140°であればよく、垂直方向への視野角は70°〜110°、好ましくは65°〜115°、より好ましくは60°〜120°であればよい。さらに出射角度による強度が不連続であったり、凸凹が急峻であるとスジムラの原因となるため好ましくない。
【0046】
プロジェクション用スクリーンは、上記の光制御膜積層体を透明ガラスや透明プラスチック等の透明基材表面に被着させるか、あるいは複数の基材の間に介挿させた積層体として形成することができる。また、磨りガラスや、フィラー添加量が比較的少なく、光拡散性を低下させて全光線透過率を高めた光拡散板に、上記の光制御膜積層体を積層して用いることにより、光拡散性に優れ、かつ全光線透過率の高いプロジェクション用スクリーンとして用いることもできる。光制御膜を形成させる際に用いる基板を、そのまま、上記した透明又は光拡散性の基材とすることもできる。
【0047】
光制御膜積層体は、光制御膜を複数枚積層した状態の平板で用いてもよいし、最外層をレンチキュラーレンズ形状にしてもよい。レンズ曲面を形成する方法としては、レンズ曲面を有する基材に上記の光制御膜積層体を積層する方法のほか、レンズ曲面を有する光制御膜を形成する方法がある。後者の方法を採用する場合、例えば、レンズ曲面を有する鋳型を使用して、そこに光硬化性樹脂組成物を塗布し、さらに光照射して、硬化物にレンズ曲面をもたせることができる。さらにフレネルレンズとの積層構成としてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部は、重量基準である。
【0049】
(単層膜Aの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を混合した光硬化性化合物をガラス板上に240μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図3に示す装置を用いて紫外線を照射した。具体的には、コンベア10上に膜状組成物を塗布したガラス板20を載せ、矢印方向に一定のコンベア速度(1.0m/分)で移動させた。得られた単層膜Aはいずれの入射角度範囲においても高い曇価を示した。なお、ランプ光源15と膜状組成物との距離は80cm、遮光板14と膜状組成物との距離は40cmである。ランプ光源15は80W/cmの棒状水銀ランプである。また、遮光板14は、ガラス板20の移動方向の照射開始角度が−1.5°、照射終了角度が+25°となるように、移動方向に対して垂直方向に間隔(Ds)1cmで、移動方向に平行に配置されている。1枚の遮光板14の大きさは、20cm(長さ)×50cm(高さ)×0.1cm(厚さ)である。
【0050】
(単層膜Bの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を添加した光硬化性樹脂組成物を、ガラス板上に240μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図4に示す装置を用いて紫外線を照射した。ここで、図4の装置は、ガラス基板20の上方120cmの位置に、80W/cmのランプ光源(棒状高圧水銀ランプ)15が設置され、ランプ光源15には、波長313nmの紫外線を選択的に透過する干渉フィルター(不図示)が取り付けられている。そして、ランプ光源15からの光が膜状組成物にほぼ垂直にあたるようにスリット13が形成された遮光板12が、コンベア10の上方に離隔対向するように設けられている。ランプ光源15からの光は、遮光板12のスリット13によって、膜状組成物の法線方向から15°の角度で照射される。コンベア10の移動速度は0.7m/分である。得られた単層膜Bは、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は50°(80〜130°の範囲)であった。
【0051】
(単層膜Cの作製)
紫外線吸収剤としての2−(3−Tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール(住友化学社製「スミソルブ300」)を光硬化性組成物に0.20%添加した以外は単層膜Bの作製と同様に操作して、単層膜Cを作製した。60%以上の曇価を示す光散乱角度域は、72°(55〜127°の範囲)であっ
た。
【0052】
(単層膜Dの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を、ガラス板上に約220μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図4に示す装置を用いて紫外線を照射した。ここで、ガラス基板20とランプ光源15との距離は80cmであり、ランプ光源15として80W/cmの棒状高圧水銀ランプを用い、コンベア10の移動速度は1.0m/分である。得られた単層膜Dは、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は32°(74〜106°の範囲、中心:90°)であった。
【0053】
実施例1
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、二層構成の第2の光制御膜を作製した。
この第2の光制御膜の上に、第1の光制御膜としての単層膜Aを、ガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層し光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、そのままスクリーンとした。この際、そのコンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置した。
【0054】
実施例2
第2の光制御膜としての単層膜Cの上に、第1の光制御膜としての単層膜Aを、ガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層し、光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0055】
比較例1
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、二層構成の光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板上に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0056】
比較例2
単層体Aを、ガラス板上に形成された状態で、その光散乱角度域の方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0057】
比較例3
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層し、さらにその上に、単層膜Dをガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層して光制御膜積層体とした。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0058】
(評価法及び評価結果)
上記実施例1及び実施例2並びに比較例1〜3のスクリーンにつき、ゴニオフォトメータ((株)日本電色のGC−5000LT型)を用いて、スクリーンへの入射角度が±0°のときの出射角度が30〜150°の範囲の光散乱相対強度をガラス板を光出射側として測定した。測定結果を図6〜図9に示す。また、水平方向及び垂直方向の視野角特性並びに出射均一性を下記基準で評価し表1に示す。
【0059】
(視野角の判断基準)
「○」:水平方向への視野角が50°〜130°であり、垂直方向への視野角が70° 〜110°である。
「×」:上記以外の視野角を有する(画面視認性が低い)
【0060】
(出射均一性)
「○」:良好
「×」:スクリーン上に明暗が生じる。
【0061】
【表1】
【0062】
図7、図8から明らかなように、実施例1、2のスクリーンは、出射均一性が比較的なだらかで、視野角も十分に得られていた。一方、比較例1〜3のスクリーンは、図9〜図11から示すように、水平又は垂直の視野角特性が不十分であった。
【0063】
(プロジェクションディスプレイでの実装評価)
50型プロジェクションディスプレイ(「KDS−50A2500」ソニー社製)のフレネルレンズ及びレンチキュラーレンズに換えて、実施例1のスクリーンを装着し、映像を投影した結果、映像は鮮明で明るく、また水平方向、垂直方向とも良好な視野角特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る光制御積層体は、プロジェクション用スクリーンに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】プロジェクションディスプレイの例を概略的に示す縦断面図である。
【図2】曇価の角度依存性の測定方法を説明するための図である。
【図3】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して多方向から光を照射する場合の装置の例を示す斜視図である。
【図4】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して垂直方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【図5】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して斜め方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【図6】光制御膜3枚を積層して本発明の光制御膜積層体を得る場合の例を模式的に説明する縦断面図である。
【図7】実施例1のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図8】実施例2のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図9】比較例1のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図10】比較例2のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図11】比較例3のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 プロジェクションディスプレイ
3 光源ユニット
4 画像表示ユニット
5 投射レンズ
6 ミラー
7 スクリーン
8 曇価を測定する試験片
21 第1の光制御膜
22 第2の光制御膜
22a 単層膜
22b 単層膜
【技術分野】
【0001】
本発明は光制御膜積層体及びそれを用いたプロジェクション用スクリーンに関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロジェクションディスプレイは、背面投射型表示装置とも呼ばれるもので、その例を図1に基づいて説明する。この図に示すように、プロジェクションディスプレイ1は、光源ユニット3からの光を、画像表示ユニット4、さらに投射レンズ5を通してミラー6に当て、そこで反射させてスクリーン7に背面から画像を投影するものである。画像表示ユニット4には、液晶パネルや陰極線管(CRT)などが用いられる。また、画像表示ユニットからの画像を直接スクリーンに投射する方式もある。
【0003】
このようなプロジェクションディスプレイのスクリーン7には通常、フレネルレンズとレンチキュラーレンズとを組み合わせたものが用いられている。フレネルレンズは、光源からの又はミラーからの光を平行光に変え、かつレンチキュラーレンズにほぼ垂直に入射させる機能を有しており、一方レンチキュラーレンズは、フレネルレンズから入射した光を制御して散乱させる機能を有している。
【0004】
プロジェクション用スクリーンのレンチキュラーレンズやフレネルレンズの材料としては、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂などの透明な熱可塑性樹脂が使用され、なかでもアクリル樹脂が、透明性、硬度、耐久性、加工適性などから多く用いられている。また、レンチキュラーレンズには、上記の熱可塑性樹脂に、シリカ、アルミナ、粘土、ガラス、ビーズなどの光拡散性物質を混合して、光拡散性を付与したものが広範に用いられている。
【0005】
プロジェクション用スクリーンにおいては、光拡散性能と光線透過性能の両方が重要である。従来のプロジェクション用スクリーンは、光拡散性に優れるものの、全光線透過率が低く、スクリーン画面が暗くなるという問題点を有する。スクリーン画面を明るくするために、全光線透過率を上げようとすると、光拡散性を犠牲にすることになり、スクリーン画面の解像度が低下してしまう。このように、光拡散性能と光線透過性能の両方を同時に満足させることは難しかった。また、従来のプロジェクション用スクリーンは、フレネルレンズとレンチキュラーレンズのピッチに起因するモアレ模様が画面に発生しやすいという問題点も有していた。さらに、視認性の良好な画像を与える角度範囲が狭く、大型の高画質を目的としたテレビ用のスクリーンとしては満足のいくものではなかった。
【0006】
これらの問題点を改善するために、曇価に角度依存性のある光制御膜をプロジェクション用スクリーンに適用することが、これまでにもいくつか提案されている。例えば、特許文献1には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に平行光を照射することにより硬化してなる曇価に角度依存性のない光制御膜を、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。また特許文献2には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化してなる曇価に角度依存性のある光制御膜を複数枚積層して、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。さらに、特許文献3には、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを有する組成物に光を照射することにより硬化させた、曇価に角度依存性のある光制御膜を3枚以上積層してなる光制御膜積層体であって、うち2枚は光散乱角度域が法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層し、さらに別の1枚は、光散乱角度域の中心が法線方向にほぼ一致して、先の2枚の光制御膜に対して光散乱角度域の方向がほぼ平行になるように積層して、プロジェクション用スクリーンに適用することが提案されている。
【0007】
また、屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物を膜状とし、そこに特定方向から光を照射して硬化させ、曇価に角度依存性のある光制御膜を作製する方法及びそのための組成物は、例えば、特許文献4や特許文献5において提案されている。
【特許文献1】特開平4−77727号公報
【特許文献2】特開平4−77728号公報
【特許文献3】特開2006−84769号公報
【特許文献4】特開昭64−40906号公報
【特許文献5】特開平02−67501号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
これらの文献で提案される光制御膜をプロジェクション用スクリーンに適用すると、高い全光線透過率を保ちながら、明るい画像が得られるようにはなるが、大型のテレビ用として、広い角度範囲にわたって画質の高い画像を与えるという面では、必ずしも十分に満足できる状態に至っていない。例えば、スクリーンの水平方向、垂直方向ともに広い視認性(視野角)を有するためには、曇価に角度依存性を示す光制御膜のみで構成した場合、水平方向に広い角度範囲にわたって画像を与えうるために3枚、さらに垂直方向に広い角度範囲にわたって画像を与えるためにさらに1枚積層する必要があり、合計で少なくとも4枚の光制御膜を積層する必要がある(特許文献2、3)。また、曇価に角度依存性のない光制御膜で構成した場合、十分に広い視認性(視野角)は未だ得られていない。
【0009】
本発明は、現在の主流であるフレネルレンズとレンチキュラーレンズを組み合わせたスクリーン及び前記文献で提案されている光制御膜を用いたスクリーンにおける問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、広い角度範囲にわたって明るく高画質の画像を与えうる光制御膜積層体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、本発明に係る光制御膜積層体では、曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層した構成とした。
【0011】
この積層体において、第2の光制御膜として、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものを使用できる。前記単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が、光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出射面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層されているのが好ましい。また前記2枚の単層膜は、光散乱角度域が互いに5°以上の重なりを有しているのが好ましい。さらに、前記2枚の単層膜の光散乱角度域が、光出射面の法線方向を中心に互いに対称であるのが好ましい。
【0012】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜としては、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものが好ましい。
【0013】
そして、この積層体は、第1の光制御膜が光入射側となるように配置することによってプロジェクション用スクリーンに好適に適用される。
【0014】
なお、本明細書で「ほぼ平行」とか「ほぼ一致」とかというときの「ほぼ」は、そこに記載の配置(平行又は一致)を中心に、±10°程度までは許容されることを意味する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用することにより、広い角度範囲にわたって明るく高画質の画像を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係る光制御膜積層体についてさらに詳述する。本発明では、曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層して光制御膜積層体とする。ここでいう曇価とは、JIS K 7105に従い、積分球式光線透過率測定装置(例えば、スガ試験機株式会社製のヘーズメーター HGM-2DP型測定装置等)を用いて、光制御膜の全光線透過率及び拡散透過率を測定し、下式により求められる値である。
【0017】
【数1】
【0018】
また、光制御膜における曇価の角度依存性は、次のようにして測定される。すなわち、図2に示すように、光制御膜の試験片8への光の入射角度θを0〜180°の間で変化させて、それぞれの角度毎に上記の曇価を測定し、60%以上の曇価を示す角度範囲を光散乱角度域とする。ここで、角度θは、試験片8の光入射面と入射光とのなす角度であって、試験片8の回転は、曇価の角度依存性が最大となる方向に行う。図中に示すAとBは、図2(a)(試験片8に垂直方向から光を入射する場合:θ=90°)と図2(b)(試験片8に斜め方向から光を入射する場合)とで、試験片8の対応する部分がわかるように付した符号である。
【0019】
本発明の光制御膜積層体では、このようにして求められる曇価が、角度θが0〜180°の範囲全域で60%以上である、曇価に角度依存性のない第1の光制御膜と、角度θが0〜180°の範囲で60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜とを積層してなることが大きな特徴である。このような光制御膜を積層構成とすることで、本発明の光制御膜積層体は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、画像表示ユニットから入射してくる光軸を、視認者側(つまりスクリーンに対して垂直な方向)へ曲げることができる最大入射角度を広くすることが可能となり、その結果として、視認者側ではスクリーン全体が一様に明るく見える領域、すなわち高感度領域が大幅に広がる効果をもたらす。
【0020】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜は、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物を膜状に形成し、そこに特定方向から光を照射して硬化させることにより製造できる。第1の光制御膜及び第2の光制御膜の製造に用いられる光重合可能なモノマー又はオリゴマーは、分子内に、アクリロイル基〔CH2=CHCO-〕、メタクリロイル基〔CH2=C(CH3)CO-〕、ビニル基〔CH2=CH- 〕、アリル基〔CH2=CHCH2-〕などの重合可能な基を少なくとも1個有する化合物である。
【0021】
光重合可能なモノマーとしては、例えば、テトラヒドロフルフリルアクリレート、エチルカルビトールアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、ω−ヒドロキシヘキサノイルオキシエチルアクリレート、アクリロイルオキシエチルサクシネート、アクリロイルオキシエチルフタレート、イソボルニルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ラウリルアクリレート、2,2,3,3−テトラフルオロプロピルアクリレート、フェニルカルビトールアクリレート、ノニルフェノキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2,4,6−トリブロムフェノキシエチルアクリレート、2,4,6−トリブロムフェニルアクリレート、N−ビニルピロリドン、N−アクリロイルモルフォリン、2−フェニルフェニルアクリレート、p−クミルフェニルアクリレート、ジフェニルメチルアクリレート、3−フェノキシフェニルアクリレートこれらのアクリレートに対応するメタクリレートモノマーなどの分子内に1つの重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物が挙げられる。
【0022】
また、例えば、トリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、水添ジシクロペンタジエニルジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、エチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、トリスアクリロキシイソシアヌレート、多官能のエポキシアクリレート、多官能のウレタンアクリレート、これらのアクリレートに対応するメタクリレート、例えば、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、ジビニルベンゼン、トリアリルイソシアヌレート等の分子内に複数の重合性炭素−炭素二重結合を有する化合物も挙げられる。
【0023】
光重合可能なオリゴマーとしては、例えば、ポリエステルアクリレート、ポリオールポリアクリレート、変性ポリオールポリアクリレート、イソシアヌル酸骨格のポリアクリレート、メラミンアクリレート、ヒダントイン骨格のポリアクリレート、ポリブタジエンアクリレート、エポキシアクリレート、ウレタンアクリレートなどの多官能アクリレートや、これらのアクリレートに対応するメタクリレートなどが挙げられる。ウレタンアクリレートオリゴマーとしては、ポリイソシアネートとポリオールと2−ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの付加反応によって生成するものが例示される。ここで、ポリイソシアネートとしては、トルエンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。またポリオールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルポリオールなどが挙げられる。
【0024】
これらの光重合可能なモノマー又はオリゴマーは、少なくとも2種類の混合物からなる組成物として用いられる。ここで、使用するモノマー又はオリゴマーは、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差があるものを選択する。屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを混合した組成物に所定方向から光を照射して硬化させることで、光を散乱する領域、すなわち光散乱角度域が形成される。この組成物は、それを構成する複数の化合物相互の溶解性とそれぞれの屈折率差によって、曇価の角度依存性を発現するものであり、相溶性があまり良くない組合せで屈折率差が大きく、かつ反応速度が異なる場合に、光の散乱する度合い、すなわち曇価が大きくなる。この屈折率差は、0.01以上、とりわけ0.04以上であるのが好ましい。
【0025】
上記の組成物には通常、硬化性を向上させるために光重合開始剤が混合されて、光重合に供される。光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン、ベンジル、ミヒラーズケトン、2−クロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ジエトキシアセトフェノン、ベンジルジメチルケタール、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンなどが挙げられる。
【0026】
生成した光硬化膜は、屈折率の異なる樹脂が相分離して、特定の方向に回折格子状の層構造を形成しており、特定の角度から入射した光は、Bragg の回折条件に準じた原理にて散乱するものと考えられる。散乱の度合い及び選択的に散乱する入射光の角度は、使用する組成物及び照射条件によって調節することができ、特に硬化時に、膜状組成物試料面に対する照射光の入射角度を変えることによって、硬化したシートに入射する光がシートから出射する際に散乱又は直進透過するシート膜面との角度域が制御できる。
【0027】
光硬化の際、光の照射方向を中心に光散乱角度域が発現する。例えば、光硬化性樹脂組成物の膜面にほぼ垂直に光を照射すれば、当該垂直方向、すなわち法線方向を中心に、光散乱角度域が発現する。また、法線方向に対して所定角度傾いた斜め方向から光を照射すれば、その傾いた方向を中心に、光散乱角度域が発現する。
【0028】
硬化に用いる光は、前述の組成物を硬化させるものであればどのような波長を有していてもよく、例えば、可視光、紫外線などがよく用いられる。紫外線は、水銀ランプやメタルハライドランプなどから発せられるが、棒状のランプを用いた場合には、その照射条件を調節することにより、生成した光硬化膜が光源の長軸と短軸方向に対して異方性を示し、光源の長軸方向を軸として回転させた場合にのみ、特定角度の光を散乱するようになる。
【0029】
曇価に角度依存性がなく、光入射角度が0〜180°の間でいずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜は、屈折率に差がある少なくとも2種類のモノマー又はオリゴマーを含有する前述の光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布するか、又はセル中に封入して膜状とした後、点状光源又は点状光源からフレネルレンズを介して得られる平行光を照射することにより作製される。
【0030】
曇価に角度依存性のない第1の光制御膜の製造例を、図3に基づいて説明する。図3は、光硬化性樹脂組成物膜に対して多方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す斜視図である。この装置は、矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の上方に、コンベア10の移動方向と略垂直方向に配置された棒状の光源ランプ15と、コンベア10と光源ランプ15との間に、コンベア10の移動方向と平行に且つコンベア10の移動方向と垂直方向に所定間隔で並列に設置された複数枚の薄板状の遮光板14とを備える。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を樹脂組成物膜に照射する。
【0031】
このとき、光源ランプ15から出射した光は、コンベア10の移動方向と平行に設置された複数枚の遮光板14によって、コンベア10の移動方向と垂直方向に複数個に区分される。区分された光は、その区分内においてあたかも点状光源のような作用を奏する。これにより、樹脂組成物膜には種々の方向から光が照射され、種々の方向に屈折率の異なる相が交互に形成され、曇価に角度依存性のない第1の光制御膜が作製される。
【0032】
一方、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜は、第1の光制御膜と同様に、前述の光硬化性樹脂組成物を基板上に塗布するか、又はセル中に封入して膜状とした後、棒状光源から光を照射しながら徐々に硬化させることにより作製できる。
【0033】
光散乱角度域の中心が光入射面の法線方向とほぼ一致する、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜の製造例を図4に基づいて説明する。同図(A)は、光硬化性樹脂組成物膜に対して垂直方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同図(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の上方に離隔対向して配置された、コンベア10の移動方向に対して垂直方向に細長いスリット13が形成された遮光板12と、スリット13の上方に所定距離隔てて、スリット13の長手方向と略平行に配置された棒状の光源ランプ15とを備える。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を遮光板12のスリット13を介して樹脂組成物膜に照射する。すると、樹脂組成物膜には垂直方向の光が中心となって照射されるので、垂直方向(法線方向)に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。スリット13の幅や棒状の光源ランプ15から光硬化性樹脂膜までの距離、光硬化性樹脂膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域の大小が制御できる。
【0034】
次に、光散乱角度域の中心が光入射面の法線方向に対して偏った向きにある、曇価に角度依存性のある第2の光制御膜の製造例を図5に基づいて説明する。同図(A)は、光硬化性樹脂組成物膜に対して斜め方向から光を照射する場合に採用しうる装置の一例を模式的に示す側面図であり、同図(B)は、その装置の斜視図である。この装置は、白抜き矢印方向に移動するコンベア10と、コンベア10の移動方向上流側に離隔対向して配置された遮光板12と、さらに遮光板12の上方に所定距離隔てて配置された棒状の光源ランプ15とを備える。この例における遮光板12は、その端部が光源ランプ15の直下からコンベア10の移動方向側へ少しはみ出している。そして、光硬化性樹脂組成物膜が表面に形成された基板20をコンベア10上に載置し、一定速度で移動させながら、光源ランプ15からの光を遮光板12側に向けて照射する。すると、樹脂組成物膜表面の法線に対して角度αをもった光が中心となって樹脂組成物膜に照射するので、この光の入射方向に屈折率の異なる相が交互に形成され、その方向を中心に光散乱角度域が発現することになる。光照射角度αを変化させることにより、光散乱角度域の中心値を変化させることができ、また、光源ランプ15から光硬化性樹脂膜までの距離や光硬化性樹脂膜の厚さ、照射光量、照射光の波長などを制御することにより、曇価が大きくなる角度範囲、すなわち光散乱角度域の大小が制御できる。
【0035】
本発明で使用する第2の光制御膜は、単層膜であってもよいし、積層膜であってもよい。第2の光制御膜として積層膜を用いる場合、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものが好ましい。ここで、単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、この2枚の単層膜を、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出射面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、積層状態での光散乱角度域が1枚のときよりも広がるようにするのがよい。こうすることで、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、左右又は上下方向の良視認領域、すなわち視野角を広げることができる。
【0036】
また、この2枚の単層膜の光散乱角度域が、互いに一部重なるようにすると共に、光出射面の法線方向を中心に対称となるようにすることのよって、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーン正面で明るい画像を得ることができる。前記2枚の単層膜の光散乱角度域のより好ましい重なりは5°以上である。
【0037】
本発明においては、以上説明したような方法によって得られる、曇価に角度依存性がない第1の光制御膜と、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層して光制御膜積層体とする。第1の光制御膜と第2の光制御膜を積層する方法としては、別々に作製した光制御膜を、粘着剤等の媒体を介して接着してもよいし、媒体を介さずに重ねてもよい。また、作製した光制御膜そのものを基材として、その上に前記光硬化性樹脂組成物を塗布し硬化させて、もう一層の光制御膜を形成し、2つの光制御膜を積層構造としてもよい。
【0038】
1枚の第1の光制御膜と、2枚の単層膜が積層された第2の光制御膜とを積層して本発明の光制御膜積層体を得る例を、図6に基づいて説明する。この例では、単層膜22aが、光出射面の法線方向からやや右側に偏った向きに角度βの範囲で60%以上の曇価を示すものとする。一方、単層膜22bは、光出射面の法線方向からやや左側に偏った向きに角度βの範囲で60%以上の曇価を示すものとする。これらの角度βが光散乱角度域に相当する。そして、この光散乱角度域が延在する方向を、「光散乱角度域の方向」とする。単層膜22bは、単層膜22aの向きを逆にした状態(この図では左右を反転させた状態)に相当する。これら2枚の単層膜22a,22bをこの向きのまま積層して第2の光制御膜22とする。第2の光制御膜22は、それぞれの光散乱角度域βよりも広い角度γの範囲で60%以上の曇価を示すものとなる。
【0039】
一方、第1の光制御膜21は、法線方向を中心にいずれの入射角度範囲でも60%以上の曇価を示すものとし、第1の光制御膜21の光出射側に第2の光制御膜22が積層される。なお、第1の光制御膜21と第2の光制御膜22の積層順序を逆にして、第1の光制御膜21の光入射側に第2の光制御膜22を積層すると、スクリーンの右側と左側で視認特性が異なることになり好ましくない。
【0040】
このとき、単層膜22aの光散乱角度域と単層膜22bの光散乱角度域βとが、互いに5°以上の重なりを有していると、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーン正面でさらに明るい画像を得ることができ、有利である。一方で、2枚の単層膜22a,22bの光散乱角度域が重なる角度をあまり大きくすると、視野角拡大効果を犠牲にすることになるので、重ねる前の単層膜における光散乱角度域の広がり具合にもよるが、2枚重ねたときに光散乱角度域の重ならない領域が合計で40°以上、さらには50°以上存在するようにするのが好ましい。
【0041】
また、単層膜22aの光散乱角度域と単層膜22bの光散乱角度域とが、光出射面の法線方向を中心に互いに対称であると、得られる光制御膜積層体をプロジェクション用スクリーンに適用したときに、スクリーンの右側と左側又は上側と下側で視認特性が同一となり、有利である。
【0042】
なお、図6では、2枚の単層膜22a,22bが同じ種類のもので、光散乱角度域も同じであることを前提に説明したが、異なる種類で光散乱角度域も異なるものを用いてももちろん構わない。
【0043】
さらに、図6では、第2の光制御膜22として2枚の単層膜22a,22bを積層したものを例に説明したが、3枚以上単層膜を積層したものを第2の光制御膜22として用いても構わない。例えば、図6に示した如き、2枚の単層膜22a,22bを積層した状態で、さらに多くの単層膜を積層する場合、積層する単層膜は、その光散乱角度域の方向が、例えば、単層膜22a,22bの光散乱角度域の方向とほぼ同じになるように積層してもよいし、ほぼ直交するように積層してもよい。この場合の積層順序は任意に選ぶことができる。
【0044】
以上のような多層積層構成とすることで、本発明の光制御膜積層体は、プロジェクション用スクリーンに適用したときに、画像表示ユニットから入射してくる光軸を、視認者側(つまりスクリーンに対して垂直な方向)へ曲げることができる最大入射角度を広くすることが可能となり、その結果として、視認者側ではスクリーン全体が一様に明るく見える領域、すなわち高感度領域が大幅に広がる効果をもたらす。
【0045】
一般に、使用する光源の強度は一定であるため、視野角を広げすぎると相対的に暗くなる一方、視野角が狭いと視認性の問題が生じる。よって、スクリーンの法線を90°とすると、水平方向への視野角は50°〜130°、好ましくは45°〜135°、より好ましく40°〜140°であればよく、垂直方向への視野角は70°〜110°、好ましくは65°〜115°、より好ましくは60°〜120°であればよい。さらに出射角度による強度が不連続であったり、凸凹が急峻であるとスジムラの原因となるため好ましくない。
【0046】
プロジェクション用スクリーンは、上記の光制御膜積層体を透明ガラスや透明プラスチック等の透明基材表面に被着させるか、あるいは複数の基材の間に介挿させた積層体として形成することができる。また、磨りガラスや、フィラー添加量が比較的少なく、光拡散性を低下させて全光線透過率を高めた光拡散板に、上記の光制御膜積層体を積層して用いることにより、光拡散性に優れ、かつ全光線透過率の高いプロジェクション用スクリーンとして用いることもできる。光制御膜を形成させる際に用いる基板を、そのまま、上記した透明又は光拡散性の基材とすることもできる。
【0047】
光制御膜積層体は、光制御膜を複数枚積層した状態の平板で用いてもよいし、最外層をレンチキュラーレンズ形状にしてもよい。レンズ曲面を形成する方法としては、レンズ曲面を有する基材に上記の光制御膜積層体を積層する方法のほか、レンズ曲面を有する光制御膜を形成する方法がある。後者の方法を採用する場合、例えば、レンズ曲面を有する鋳型を使用して、そこに光硬化性樹脂組成物を塗布し、さらに光照射して、硬化物にレンズ曲面をもたせることができる。さらにフレネルレンズとの積層構成としてもよい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。例中、含有量ないし使用量を表す部は、重量基準である。
【0049】
(単層膜Aの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を混合した光硬化性化合物をガラス板上に240μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図3に示す装置を用いて紫外線を照射した。具体的には、コンベア10上に膜状組成物を塗布したガラス板20を載せ、矢印方向に一定のコンベア速度(1.0m/分)で移動させた。得られた単層膜Aはいずれの入射角度範囲においても高い曇価を示した。なお、ランプ光源15と膜状組成物との距離は80cm、遮光板14と膜状組成物との距離は40cmである。ランプ光源15は80W/cmの棒状水銀ランプである。また、遮光板14は、ガラス板20の移動方向の照射開始角度が−1.5°、照射終了角度が+25°となるように、移動方向に対して垂直方向に間隔(Ds)1cmで、移動方向に平行に配置されている。1枚の遮光板14の大きさは、20cm(長さ)×50cm(高さ)×0.1cm(厚さ)である。
【0050】
(単層膜Bの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を添加した光硬化性樹脂組成物を、ガラス板上に240μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図4に示す装置を用いて紫外線を照射した。ここで、図4の装置は、ガラス基板20の上方120cmの位置に、80W/cmのランプ光源(棒状高圧水銀ランプ)15が設置され、ランプ光源15には、波長313nmの紫外線を選択的に透過する干渉フィルター(不図示)が取り付けられている。そして、ランプ光源15からの光が膜状組成物にほぼ垂直にあたるようにスリット13が形成された遮光板12が、コンベア10の上方に離隔対向するように設けられている。ランプ光源15からの光は、遮光板12のスリット13によって、膜状組成物の法線方向から15°の角度で照射される。コンベア10の移動速度は0.7m/分である。得られた単層膜Bは、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は50°(80〜130°の範囲)であった。
【0051】
(単層膜Cの作製)
紫外線吸収剤としての2−(3−Tert−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル−5−クロロベンゾトリアゾール(住友化学社製「スミソルブ300」)を光硬化性組成物に0.20%添加した以外は単層膜Bの作製と同様に操作して、単層膜Cを作製した。60%以上の曇価を示す光散乱角度域は、72°(55〜127°の範囲)であっ
た。
【0052】
(単層膜Dの作製)
平均分子量約3,000のポリプロピレングリコールと、該ポリプロピレングリコール2モルあたり、0.3モルのトルエンジイソシアネート、2.7モルのヘキサメチレンジイソシアネート及び2モルの2−ヒドロキシエチルアクリレートとの反応によって得たポリエーテルウレタンアクリレート(屈折率1.460)40部に対して、2,4,6−トリブロモフェニルアクリレート(屈折率1.6以上)30部、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート(屈折率1.526)30部及び2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオフェノン1.5部を添加混合した光硬化性組成物を、ガラス板上に約220μmの厚さで塗布した。
得られた膜状組成物に、図4に示す装置を用いて紫外線を照射した。ここで、ガラス基板20とランプ光源15との距離は80cmであり、ランプ光源15として80W/cmの棒状高圧水銀ランプを用い、コンベア10の移動速度は1.0m/分である。得られた単層膜Dは、60%以上の曇価を示す光散乱角度域は32°(74〜106°の範囲、中心:90°)であった。
【0053】
実施例1
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、二層構成の第2の光制御膜を作製した。
この第2の光制御膜の上に、第1の光制御膜としての単層膜Aを、ガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層し光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、そのままスクリーンとした。この際、そのコンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置した。
【0054】
実施例2
第2の光制御膜としての単層膜Cの上に、第1の光制御膜としての単層膜Aを、ガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層し、光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0055】
比較例1
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層して、二層構成の光制御膜積層体を作製した。この光制御膜積層体がガラス板上に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0056】
比較例2
単層体Aを、ガラス板上に形成された状態で、その光散乱角度域の方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0057】
比較例3
前記作製した単層膜Bを2枚用い、1枚はガラス板に付いたままとし、その光制御膜側(ガラス板と反対側)に別の1枚をガラス板から剥がした状態で、光散乱角度域が法線方向を中心に互いに逆向きとなるように積層し、さらにその上に、単層膜Dをガラス板から剥がした状態で、コンベアの流れ方向が同じ方向となるよう積層して光制御膜積層体とした。この光制御膜積層体がガラス板に付いた状態のものを、コンベアの流れ方向が横(水平)方向となるように配置してスクリーンとした。
【0058】
(評価法及び評価結果)
上記実施例1及び実施例2並びに比較例1〜3のスクリーンにつき、ゴニオフォトメータ((株)日本電色のGC−5000LT型)を用いて、スクリーンへの入射角度が±0°のときの出射角度が30〜150°の範囲の光散乱相対強度をガラス板を光出射側として測定した。測定結果を図6〜図9に示す。また、水平方向及び垂直方向の視野角特性並びに出射均一性を下記基準で評価し表1に示す。
【0059】
(視野角の判断基準)
「○」:水平方向への視野角が50°〜130°であり、垂直方向への視野角が70° 〜110°である。
「×」:上記以外の視野角を有する(画面視認性が低い)
【0060】
(出射均一性)
「○」:良好
「×」:スクリーン上に明暗が生じる。
【0061】
【表1】
【0062】
図7、図8から明らかなように、実施例1、2のスクリーンは、出射均一性が比較的なだらかで、視野角も十分に得られていた。一方、比較例1〜3のスクリーンは、図9〜図11から示すように、水平又は垂直の視野角特性が不十分であった。
【0063】
(プロジェクションディスプレイでの実装評価)
50型プロジェクションディスプレイ(「KDS−50A2500」ソニー社製)のフレネルレンズ及びレンチキュラーレンズに換えて、実施例1のスクリーンを装着し、映像を投影した結果、映像は鮮明で明るく、また水平方向、垂直方向とも良好な視野角特性を示した。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係る光制御積層体は、プロジェクション用スクリーンに好適に適用される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】プロジェクションディスプレイの例を概略的に示す縦断面図である。
【図2】曇価の角度依存性の測定方法を説明するための図である。
【図3】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して多方向から光を照射する場合の装置の例を示す斜視図である。
【図4】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して垂直方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【図5】光硬化性樹脂組成物塗膜に対して斜め方向から光を照射する場合の装置の例を示す側面図(A)と斜視図(B)である。
【図6】光制御膜3枚を積層して本発明の光制御膜積層体を得る場合の例を模式的に説明する縦断面図である。
【図7】実施例1のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図8】実施例2のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図9】比較例1のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図10】比較例2のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【図11】比較例3のスクリーンの出射散乱特性を示したゴニオフォトメータのグラフである。
【符号の説明】
【0066】
1 プロジェクションディスプレイ
3 光源ユニット
4 画像表示ユニット
5 投射レンズ
6 ミラー
7 スクリーン
8 曇価を測定する試験片
21 第1の光制御膜
22 第2の光制御膜
22a 単層膜
22b 単層膜
【特許請求の範囲】
【請求項1】
曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層してなることを特徴とする光制御膜積層体。
【請求項2】
第2の光制御膜が、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものである請求項1記載の光制御膜積層体。
【請求項3】
前記単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が、光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出斜面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層されている請求項2記載の光制御膜積層体。
【請求項4】
前記2枚の単層膜は、光散乱角度域が互いに5°以上の重なりを有している請求項2又は3記載の光制御膜積層体。
【請求項5】
前記2枚の単層膜の光散乱角度域が、光出射面の法線方向を中心に互いに対称である請求項2〜4のいずれかに記載の光制御膜積層体。
【請求項6】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜は、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものである請求項1〜5のいずれかに記載の光制御膜積層体。
【請求項7】
第1の光制御膜が光入射側となるように配置した請求項1〜6のいずれかに記載の光制御膜積層体を有することを特徴とするプロジェクション用スクリーン。
【請求項1】
曇価に角度依存性がなく、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、いずれも60%以上の曇価を示す第1の光制御膜と、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が60°以上である第2の光制御膜とを積層してなることを特徴とする光制御膜積層体。
【請求項2】
第2の光制御膜が、曇価に角度依存性があり、その表面に対して0〜180°の角度で光を入射させたときに、60%以上の曇価を示す光散乱角度域が30°以上である単層膜を2枚以上積層したものである請求項1記載の光制御膜積層体。
【請求項3】
前記単層膜のうち2枚は、光散乱角度域が、光出射面の法線方向に対して偏った向きにあり、光散乱角度域の方向が互いにほぼ平行で、光散乱角度域が光出斜面の法線方向を中心に互いに逆向きとなるように、かつ光散乱角度域の一部が互いに重なる状態で積層されている請求項2記載の光制御膜積層体。
【請求項4】
前記2枚の単層膜は、光散乱角度域が互いに5°以上の重なりを有している請求項2又は3記載の光制御膜積層体。
【請求項5】
前記2枚の単層膜の光散乱角度域が、光出射面の法線方向を中心に互いに対称である請求項2〜4のいずれかに記載の光制御膜積層体。
【請求項6】
第1の光制御膜及び第2の光制御膜は、単独重合して得られる単独重合体の屈折率に差がある少なくとも2種類の光重合可能なモノマー又はオリゴマーを含有する組成物に光を照射して硬化させたものである請求項1〜5のいずれかに記載の光制御膜積層体。
【請求項7】
第1の光制御膜が光入射側となるように配置した請求項1〜6のいずれかに記載の光制御膜積層体を有することを特徴とするプロジェクション用スクリーン。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−157250(P2009−157250A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337726(P2007−337726)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】
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