説明

光回線ユニット、光アクセス終端装置および通信制御方法

【課題】上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制する。
【解決手段】光回線ユニット12は、宅側装置から受信した通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能である。光回線ユニット12は、宅側装置から受信した通信信号の送信先の通信経路、および優先度に基づいて、通信信号を振り分けてバッファに蓄積するための受信振り分け部21と、通信信号の優先度に基づいてバッファから通信信号を取り出し、送信先の通信経路へ出力するための送信振り分け部22とを備える。送信振り分け部22は、通信経路への通信信号の送信停止要求を上位ネットワークから受けて、送信停止要求の示す通信経路に対応するバッファに蓄積された通信信号の取り出しおよび通信経路への出力を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光回線ユニット、光アクセス終端装置および通信制御方法に関し、特に、宅側装置からの通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能な光回線ユニット、光アクセス終端装置および通信制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、インターネットが広く普及しており、利用者は世界各地で運営されているサイトの様々な情報にアクセスし、その情報を入手することが可能である。これに伴って、ADSL(Asymmetric Digital Subscriber Line)およびFTTH(Fiber To The Home)等のブロードバンドアクセスが可能な装置も急速に普及してきている。
【0003】
IEEE Std 802.3ah(登録商標)−2004(非特許文献1)には、複数の宅側装置(ONU:Optical Network Unit)が光通信回線を共有して局側装置(OLT:Optical Line Terminal)とのデータ伝送を行なう媒体共有形通信である受動的光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)の1つの方式が開示されている。すなわち、PONを通過するユーザ情報およびPONを管理運用するための制御情報を含め、すべての情報がイーサネット(登録商標)フレームの形式で通信されるEPON(Ethernet(登録商標) PON)と、EPONのアクセス制御プロトコル(MPCP(Multi-Point Control Protocol))およびOAM(Operations Administration and Maintenance)プロトコルとが規定されている。局側装置と宅側装置との間でMPCPフレームをやりとりすることによって、宅側装置の加入、離脱、および上りアクセス多重制御などが行なわれる。また、非特許文献1では、MPCPメッセージによる、新規宅側装置の登録方法、帯域割り当て要求を示すレポート、および送信指示を示すゲートについて記載されている。
【0004】
なお、1ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONであるGE−PON(Giga Bit Ethernet(登録商標) Passive Optical Network)の次世代の技術として、IEEE802.3av(登録商標)−2009として標準化が行なわれた10G−EPONすなわち通信速度が10ギガビット/秒相当のEPONにおいても、アクセス制御プロトコルはMPCPが前提となっている。
【0005】
ところで、一般的にビジネス向けのネットワークサービスでは、高品質サービスを提供するためにシステムの二重化(冗長化)が必須である。また、音声/映像配信サービスでも二重化システムを用いることにより信頼性の高いシステムを提供することができる。二重化システムでは、装置、部品およびネットワークの各々が必要に応じて運用系および待機系を有する冗長構成がとられる。運用しているシステムの一部に障害が発生した場合には、運用系から待機系への冗長切り替えを行なうことにより、障害によるシステム停止時間をできるだけ短くすることが可能となる。
【0006】
また、障害が顕在化していなくても、特性の劣化傾向および部品の寿命等を勘案して、モジュールを予防的に交換する場合がある。システムがモジュールについて冗長構成を有していれば、このような保守作業によるシステム停止時間をできるだけ短くすることが可能となる。
【0007】
ここで、局側装置から上位ネットワークへのサービスノードインタフェース(SNI)が二重化されたPONシステムが検討されている。このようなPONシステムの一例として、たとえば、特開2009−284179号公報(特許文献1)には、以下のような技術が開示されている。すなわち、光アクセス終端装置は、電気信号と光信号を互いに変換する複数の光送受信手段と、PONの制御プロトコル情報を挿入、抽出する複数のPONプロトコル終端手段と、上位ネットワークに接続するための複数のサービスノードインタフェースとを備える。光アクセス終端装置は、さらに、上記複数のサービスノードインタフェースに係る通信の正常/異常を監視するリンク監視手段を備える。上記複数の光送受信手段と上記複数のPONプロトコル終端手段との間の上り信号経路に第1の電気回路を配置する。上記第1の電気回路は、上記複数のサービスノードインタフェースに係る通信が正常な場合には、各光送受信手段から入力される上り信号を、光送受信手段に対応する上記PONプロトコル終端手段に出力する。上記第1の電気回路は、上記複数のサービスノードインタフェースのいずれかに係る通信が異常となった場合には、異常側に対応する光送受信手段から入力される上り信号、および正常側に対応する光送受信手段から入力される上り信号のいずれかを動的に選択して、正常側に対応する上記PONプロトコル終端手段に出力する。また、上記第1の電気回路では、光送受信手段ごとに設けられたバッファにおいて上り信号を一時的に蓄積した上で、いずれかのPONプロトコル終端手段へ出力する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】IEEE Std 802.3ah(登録商標)-2004
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2010−147801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1に記載の技術では、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が発生すると、局側装置が備えるフレーム蓄積用のバッファに空きがあるにも関わらず、フレームの損失が発生してしまう。
【0011】
この発明は、上述の課題を解決するためになされたもので、その目的は、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することが可能な光回線ユニット、光アクセス終端装置および通信制御方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる光回線ユニットは、1または複数の宅側装置と通信信号を送受信し、上記宅側装置から受信した上記通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能な光回線ユニットであって、上記通信経路および上記通信信号の優先度ごとに設けられ、上記宅側装置から受信した上記通信信号を蓄積するための複数のバッファと、上記宅側装置から受信した上記通信信号の送信先の上記通信経路、および優先度に基づいて、上記通信信号を振り分けて上記バッファに蓄積するための受信振り分け部と、上記通信信号の優先度に基づいて上記バッファから上記通信信号を取り出し、送信先の上記通信経路へ出力するための送信振り分け部とを備え、上記送信振り分け部は、上記通信経路への上記通信信号の送信停止要求を上記上位ネットワークから受けて、上記送信停止要求の示す上記通信経路に対応する上記バッファに蓄積された上記通信信号の取り出しおよび上記通信経路への出力を停止する。
【0013】
このような構成により、光回線ユニットからの通信信号の過剰な送信による上位ネットワーク側の上位装置での通信信号の廃棄を抑制することができる。たとえば、上位ネットワーク側の上位装置における通信信号用のバッファに空きがなく、光回線ユニット側のバッファに余裕があるにも関わらず、光回線ユニットから通信信号を送信してしまい、上位装置側で当該通信信号が廃棄されてしまうことを防ぐことができる。したがって、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することができる。また、通信経路ごとにバッファを設け、受信振り分け部が、宅側装置から受信した通信信号を各バッファに振り分ける構成により、受信振り分け部を備えず、各通信経路で共通のバッファを設ける構成と比べて、通信信号の送信のスループットの低下を防ぐことができる。すなわち、通信経路ごとに通信信号の送信を制御することができるため、ある通信経路への通信信号の送信レートを抑制する際に、他の通信経路への通信信号の送信レートが抑制されてしまうことを防ぐことができる。
【0014】
好ましくは、上記送信停止要求は、上記通信信号の送信を停止すべき上記通信経路、および送信を停止すべき上記通信信号の優先度を示し、上記送信振り分け部は、上記送信停止要求の示す上記通信経路および上記優先度に対応する上記バッファに蓄積された上記通信信号の取り出しおよび上記通信経路への出力を停止する。
【0015】
このような構成により、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が発生した場合において、上位装置からの送信停止要求に従って、通信信号の優先度に応じた通信信号の損失の抑制を行なうことができる。すなわち、優先度の低いバッファのみ送信停止を行なう等の優先度別のフロー制御が可能となるため、優先度の高い通信信号の損失を抑制することができる。
【0016】
好ましくは、上記送信振り分け部は、上記バッファに対応する上記通信経路とは異なる上記通信経路を選択し、選択した上記通信経路へ上記バッファから取り出した上記通信信号を出力する他経路選択動作を行なうことが可能である。
【0017】
このような構成により、通信経路の一部が使用できない場合に、使用不可の通信経路が送信先となる通信信号の損失を防ぐことができる。また、受信振り分け部ではなく、送信振り分け部22においてこのような通信経路の切り替えを行なう構成により、振り分け処理を行なう部分の集中化による構成の簡易化を図ることができる。
【0018】
より好ましくは、上記送信振り分け部は、上記他経路選択動作を行っている状態において上記送信停止要求を受けた場合には、上記送信停止要求の示す上記通信経路に対応する上記バッファおよび選択中の上記通信経路に対応する上記バッファに蓄積された上記通信信号の取り出しおよび上記通信経路への出力を停止する。
【0019】
このような構成により、通信経路の使用可否の状態を監視し、当該状態に応じて動的にバックプレッシャをかけるバッファの範囲を変更することができるため、通信経路の切替等、通信信号の出力先が変わる場合でも、通信信号の取り出しおよび送信を停止するバッファを適切に選択することができる。また、上位装置の制約などにより、強制的に1つの通信経路へ通信信号を送信する構成としたい場合に、通信信号の出力先の設定が可能となる。
【0020】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる光アクセス終端装置は、1または複数の宅側装置と通信信号を送受信するための複数の光回線ユニットと、上記複数の光回線ユニットが上記宅側装置から受信した上記通信信号を上位ネットワークへ送信するための集線部とを備える光アクセス終端装置であって、上記光回線ユニットは、上記宅側装置から受信した上記通信信号を複数の通信経路を介して上記集線部へ出力可能であり、上記光回線ユニットが各上記宅側装置から所定時間あたりで受信可能な上記通信信号のデータ量は、上記集線部が上記上位ネットワークへ上記所定時間あたりで送信可能な上記通信信号のデータ量以上であり、上記光回線ユニットは、上記通信経路および上記通信信号の優先度ごとに設けられ、上記宅側装置から受信した上記通信信号を蓄積するための複数のバッファと、上記宅側装置から受信した上記通信信号の送信先の上記通信経路、および優先度に基づいて、上記通信信号を振り分けて上記バッファに蓄積するための受信振り分け部と、上記通信信号の優先度に基づいて上記バッファから上記通信信号を取り出し、送信先の上記通信経路へ出力するための送信振り分け部とを含み、上記送信振り分け部は、上記通信経路への上記通信信号の送信停止要求を上記集線部または上記上位ネットワークから受けて、上記送信停止要求の示す上記通信経路に対応する上記バッファに蓄積された上記通信信号の取り出しおよび上記通信経路への出力を停止する。
【0021】
このような構成により、光回線ユニットからの通信信号の過剰な送信による上位ネットワーク側の上位装置での通信信号の廃棄を抑制することができる。たとえば、上位ネットワーク側の上位装置における通信信号用のバッファに空きがなく、光回線ユニット側のバッファに余裕があるにも関わらず、光回線ユニットから通信信号を送信してしまい、上位装置側で当該通信信号が廃棄されてしまうことを防ぐことができる。したがって、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することができる。また、通信経路ごとにバッファを設け、受信振り分け部が、宅側装置から受信した通信信号を各バッファに振り分ける構成により、受信振り分け部を備えず、各通信経路で共通のバッファを設ける構成と比べて、通信信号の送信のスループットの低下を防ぐことができる。すなわち、通信経路ごとに通信信号の送信を制御することができるため、ある通信経路への通信信号の送信レートを抑制する際に、他の通信経路への通信信号の送信レートが抑制されてしまうことを防ぐことができる。また、一般に、各宅側装置から局側装置への通信帯域の合計は、局側装置から上位ネットワークへの通信帯域よりも大きくなる場合が多く、さらに、各宅側装置から1つの光回線ユニットへの通信帯域が、局側装置から上位ネットワークへの通信帯域よりも大きくなる場合もある。上記のように光回線ユニットにおけるバッファを有効に利用して上りフレームの送信停止制御を行なう構成により、上記のような局側装置から上位ネットワークへの通信帯域の不足によるフレーム損失を抑制することができる。
【0022】
上記課題を解決するために、この発明のある局面に係わる通信制御方法は、1または複数の宅側装置と通信信号を送受信し、上記宅側装置から受信した上記通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能な光回線ユニットにおける通信制御方法であって、上記通信経路および上記通信信号の優先度ごとに設けられた複数のバッファに、上記宅側装置から受信した上記通信信号の送信先の上記通信経路、および優先度に基づいて、上記通信信号を振り分けて蓄積するステップと、上記通信信号の優先度に基づいて上記バッファから上記通信信号を取り出し、送信先の上記通信経路へ出力するステップと、上記通信経路への上記通信信号の送信停止要求を上記上位ネットワークから受けて、上記送信停止要求の示す上記通信経路に対応する上記バッファに蓄積された上記通信信号の取り出しおよび上記通信経路への出力を停止するステップとを含む。
【0023】
このような構成により、光回線ユニットからの通信信号の過剰な送信による上位ネットワーク側の上位装置での通信信号の廃棄を抑制することができる。たとえば、上位ネットワーク側の上位装置における通信信号用のバッファに空きがなく、光回線ユニット側のバッファに余裕があるにも関わらず、光回線ユニットから通信信号を送信してしまい、上位装置側で当該通信信号が廃棄されてしまうことを防ぐことができる。したがって、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することができる。また、通信経路ごとにバッファを設け、受信振り分け部が、宅側装置から受信した通信信号を各バッファに振り分ける構成により、受信振り分け部を備えず、各通信経路で共通のバッファを設ける構成と比べて、通信信号の送信のスループットの低下を防ぐことができる。すなわち、通信経路ごとに通信信号の送信を制御することができるため、ある通信経路への通信信号の送信レートを抑制する際に、他の通信経路への通信信号の送信レートが抑制されてしまうことを防ぐことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【図3】本発明の実施の形態に係るOSUにおけるバッファおよびSNIポート間の通信経路を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態に係るOSUにおける、送信停止要求の示す優先度とバッファとの対応付けを示す図である。
【図5】本発明の実施の形態に係るOSUにおける、送信停止要求の示す優先度とバッファとの対応付けを示す図である。
【図6】本発明の実施の形態に係るOSUにおいて、送信停止要求に従ったフレーム送信停止制御の一例を示す図である。
【図7】本発明の実施の形態に係るOSUにおいて、送信停止要求に従ったフレーム送信停止制御の一例を示す図である。
【図8】本発明の実施の形態に係るOSUにおける、送信停止要求の内容および各SNIポートの使用状況に応じた送信停止対象のバッファを示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係るOSUがフレーム送信停止制御を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【図10】本発明の実施の形態に係るOSUがフレーム送信再開制御を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。なお、図中同一または相当部分には同一符号を付してその説明は繰り返さない。
【0027】
[構成および基本動作]
図1は、本発明の実施の形態に係るPONシステムの概略構成を示す図である。
【0028】
図1を参照して、PONシステム301は、局側装置(光アクセス終端装置)201と、光ファイバであるm本のPON回線1〜m(203−1〜203−m)と、m個の光カプラ204−1〜204−mと、複数の宅側装置(ONU)202とを備える。局側装置201は、光回線ユニット(以下、OSU(Optical Subscriber Unit)とも称する)1〜m(12−1〜12−m)と、集線部11とを含む。ここで、mは1以上の整数である。また、ONUから上位ネットワークへの方向を上り方向と称し、上位ネットワークからONUへの方向を下り方向と称する。
【0029】
PONシステム301において、たとえば、各PON回線は10ギガビット/秒の通信速度を実現するEPONである10G−EPONに対応しており、上位ネットワークは10ギガビット/秒の通信速度を実現するイーサネット(登録商標)に対応する。また、たとえば、MPCPフレームによってONUの登録、離脱、ONUへの帯域割り当て、ONUからの帯域要求、通信速度の切り替え指示およびONUへのスリープ(動作停止)指示などが行なわれる。
【0030】
局側装置201は、10G−EPONに対応するPON回線を複数回線収容する。1本のPON回線には1または複数のONUが接続される。局側装置201は、これらのPON回線からのデータを上位ネットワークに多重する。また、局側装置201は、上位ネットワークからのデータを振り分けて各PON回線における各ONUへ送信する。また、局側装置201は、PON回線の上り帯域を各ONUに割り当てる。
【0031】
より詳細には、局側装置201は、m本のPON回線1〜mに接続され、このm本のPON回線を終端する。各OSUは、PON回線に対応して設けられ、対応のPON回線に接続された1または複数のONUとフレームを含む通信信号を送受信する。PON回線1〜mは、光カプラ204−1〜204−mにそれぞれ接続されており、これらの光カプラを介して各ONU202に接続されている。各ONU202とOSU12とは、PON回線203および光カプラ204を介して接続され、互いに通信信号として光信号を送受信する。PONシステム301では、各ONU202からOSU12への光信号が共通のPON回線203において時分割多重される。
【0032】
集線部11は、複数のOSU経由で各ONUから受信した上りフレームを上位ネットワークへ送信する。具体的には、集線部11は、OSU1〜m(12−1〜12−m)からの上りフレームを多重して上位ネットワークに送信するとともに、上位ネットワークから受信した下りフレームを適切なOSUに振り分ける処理を行なう。
【0033】
ここで、OSU12が各ONU202から所定時間あたりで受信可能な上りフレームのデータ量は、集線部11が上位ネットワークへ所定時間あたりで送信可能な上りフレームのデータ量以上である。
【0034】
たとえば、各ONU202からの上りフレームを受信するためのOSU12の帯域は10Gビット/秒であり、集線部11から上位ネットワークへ上りフレームを送信するための帯域は10Gビット/秒、20Gビット/秒、1Gビット/秒または2Gビット/秒である。
【0035】
また、局側装置201では、SNIが多重化されている。すなわち、冗長化のためにOSUごとに複数のSNIが設けられている。
【0036】
より詳細には、OSU12は、1または複数のONU202とフレームを送受信し、ONU202から受信した上りフレームを複数の通信経路すなわちSNIポートを介して集線部11へ出力可能である。
【0037】
また、OSU12は、ONU202から受信したフレームを蓄積するための、SNIごとに設けられたバッファを備える。
【0038】
図2は、本発明の実施の形態に係る局側装置におけるOSUの構成を示す図である。
【0039】
図2を参照して、OSU12は、受信振り分け部21と、バッファA1,A2,B1,B2と、送信振り分け部22と、SNI−Aインタフェース部23と、SNI−Bインタフェース部24と、集線部11と、PON受信部26と、PON送信部27と、制御部28とを含む。送信振り分け部22は、フレーム取り出し部31と、スケジューラ32と、バッファ監視部33と、停止要求処理部34と、SNI状態監視部35とを含む。なお、ここでは、OSU12が4つのバッファおよび2つのSNIインタフェース部を含んでいるが、バッファおよびSNIインタフェース部の数はこれに限定されるものではなく、種々の組み合わせが可能である。
【0040】
PON受信部26およびPON送信部27は、PON回線の親局側起点として、対応のPON回線である1本の光ファイバと接続される。この光ファイバを介して各ONUと双方向通信が行なえるように、PON受信部26は、特定の波長、たとえば1310nm帯の上り光信号を受信して10Gビット/秒の電気信号に変換し、また、PON送信部27は、下りフレームを別波長の下り光信号に変換する。たとえば、PON送信部27は、制御部28から受けた下り制御フレームを10Gビット/秒の電気信号に変換し、そして1570nm帯の下り光信号に変換する。
【0041】
また、PON受信部26は、変換した電気信号からフレームを再構成するとともに、フレームの種別に応じて制御部28または受信振り分け部21にフレームを振り分ける。具体的には、データフレームを受信振り分け部21に出力し、MPCPレポートフレーム等の制御フレームを制御部28に出力する。
【0042】
OSU12において、ONU202から受信した上りフレームを蓄積するためのバッファは、SNIポートおよび上りフレームの優先度ごとに設けられる。たとえば、OSU12は、2系統のSNIポートすなわちSNIインタフェース部ごと、かつ2つの優先度ごとに設けられた4つのバッファA1,A2,B1,B2を備える。
【0043】
受信振り分け部21は、PON受信部26から受けた上りフレームを、たとえば上りフレームのヘッダ情報を参照することにより解析し、解析結果に基づいてバッファA1,A2,B1,B2に振り分けて出力する。より詳細には、受信振り分け部21は、ONU202から受信した上りフレームの送信先のSNIポート、および優先度に基づいて、上りフレームを振り分けてバッファA1,A2,B1,B2に蓄積する。
【0044】
バッファA1,A2,B1,B2は、受信振り分け部21から受けた上りフレームを蓄積する。
【0045】
送信振り分け部22は、上りフレームの優先度に基づいてバッファA1,A2,B1,B2から上りフレームを取り出し、送信先のSNIインタフェース部へ出力する。
【0046】
送信振り分け部22において、フレーム取り出し部31は、バッファA1,A2,B1,B2に蓄積された上りフレームを取り出し、SNI−Aインタフェース部23またはSNI−Bインタフェース部24に振り分けて出力する。
【0047】
SNI−Aインタフェース部23およびSNI−Bインタフェース部24は、集線部11と所定の通信処理を行なうことにより、フレーム取り出し部31から受けた上りフレームを集線部11へ出力する。
【0048】
集線部11は、上位ネットワークにおける他の装置と所定の通信処理を行なうことにより、SNI−Aインタフェース部23およびSNI−Bインタフェース部24から受けた上りフレームを上位ネットワークへ出力する。
【0049】
制御部28は、MPCPおよびOAMなど、PON回線の制御および管理に関する局側処理を行なう。すなわち、PON回線に接続されている各ONUとMPCPメッセージおよびOAMメッセージをやりとりすることによって、ONUの登録、離脱および帯域割り当てを含めた上りアクセス制御、ならびにONUへのスリープ指示を含めたONUの運用管理などを行なう。制御部28は、MPCPゲートフレーム等、各種制御メッセージを含む制御フレームをPON送信部27へ出力する。
【0050】
送信振り分け部22において、バッファ監視部33は、バッファA1,A2,B1,B2の空き容量等の使用状態を監視し、監視結果を示す情報をスケジューラ32へ出力する。
【0051】
停止要求処理部34は、集線部11から受けた送信停止要求を解析し、上りフレームの送信を停止すべきバッファを示す情報をスケジューラ32へ出力する。
【0052】
SNI状態監視部35は、集線部11がSNI−Aインタフェース部23およびSNI−Bインタフェース部24とそれぞれ通信可能であるか否か、ならびにSNI−Aインタフェース部23およびSNI−Bインタフェース部24と集線部11との間の通信異常等を監視し、監視結果を示す情報をスケジューラ32へ出力する。
【0053】
スケジューラ32は、バッファ監視部33、停止要求処理部34およびSNI状態監視部35から受けた情報に基づいて、フレーム取り出し部31による上りフレームの取り出しおよび振り分けを制御する。
【0054】
OSU12では、集線部11からの送信停止要求に従い、任意のバッファからのフレーム取り出しおよびSNIインタフェース部への出力を停止できる。この送信停止要求については、一般に使用されている通信プロトコルを利用することができる。たとえば、IEEE802.1Qbb規格に従うPriority Flow Control(PFC)、およびIEEE802.3x規格に従うポーズ制御フレーム等によるフロー制御などを利用することができる。なお、集線部11からの送信停止要求は、OSU12における特定のバッファを指定する形式であるとは限らない。また、送信停止要求は、集線部11において生成されてもよいし、上位ネットワークにおける他の装置において生成されてもよい。
【0055】
図3は、本発明の実施の形態に係るOSUにおけるバッファおよびSNIポート間の通信経路を示す図である。
【0056】
図3を参照して、バッファA1はSNIポートA宛かつ低優先度のフレーム用のバッファであり、バッファA2はSNIポートA宛かつ高優先度のフレーム用のバッファである。また、バッファB1はSNIポートB宛かつ低優先度のフレーム用のバッファであり、バッファB2はSNIポートB宛かつ高優先度のフレーム用のバッファである。ここで、SNIポートAはSNI−Aインタフェース部23に対応し、SNIポートBはSNI−Bインタフェース部24に対応する。
【0057】
受信振り分け部21は、SNIポートA宛の上りフレームをバッファA1,A2に蓄積し、SNIポートB宛の上りフレームをバッファB1,B2に蓄積する。
【0058】
送信振り分け部22は、通常時、バッファA1,A2から取り出したフレームをSNIポートAへ出力する。また、送信振り分け部22は、通常時、バッファB1,B2から取り出したフレームをSNIポートBへ出力する。
【0059】
また、OSU12における送信振り分け部22は、バッファに対応するSNIポートとは異なるSNIポートを選択し、選択したSNIポートへ当該バッファから取り出した上りフレームを出力する他経路選択動作を行なうことが可能である。
【0060】
すなわち、OSU12は、一方のSNIにおいて異常が発生しても上り通信が遮断されることを防ぐため、図3の破線矢印で示すように、通常時と異なるSNIポートへ上りフレームを出力する冗長経路を有している。
【0061】
この冗長経路により、一方のSNIを使用しない、または使用できない場合には、上りフレームは、他方のSNIポートに集められる。
【0062】
具体的には、送信振り分け部22は、SNIポートAが使用できない場合にはバッファA1,A2,B1,B2の蓄積フレームをSNIポートBへ出力し、SNIポートBが使用できない場合にはバッファA1,A2,B1,B2の蓄積フレームをSNIポートAへ出力する。
【0063】
図4および図5は、本発明の実施の形態に係るOSUにおける、送信停止要求の示す優先度とバッファとの対応付けを示す図である。
【0064】
送信振り分け部22は、SNIポートへの上りフレームの送信停止要求を集線部11から受けて、送信停止要求の示すSNIポートに対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0065】
また、たとえば、送信停止要求は、上りフレームの送信を停止すべきSNIポート、および送信を停止すべき上りフレームの優先度を示す。送信振り分け部22は、送信停止要求の示すSNIポートおよび優先度に対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0066】
具体的には、図4および図5を参照して、PONシステム301では、たとえば、集線部11からの送信停止要求として、8つの優先度を指定可能なPFCを用いる。PFCでは、特定の優先度の上りフレームについて、指定された期間だけ送信停止させるような要求がなされる。
【0067】
一方、ONU12の備えるバッファは、SNIポートおよび優先度ごとの4つである。そこで、ONU12では、送信停止要求の示すフレームに対応するバッファがどれであるかを判別するため、SNIポートおよび優先度とバッファとの対応付けを行ない、この対応関係をたとえば停止要求処理部34における図示しない記憶部に保存しておく。
【0068】
停止要求処理部34は、集線部11から受けた送信停止要求の示すSNIポートがAであり、優先度が0〜3の場合には、バッファA1の蓄積フレームの送信を停止する旨を示す情報をスケジューラ32へ出力する。また、停止要求処理部34は、集線部11から受けた送信停止要求の示すSNIポートがBであり、優先度が4〜7の場合には、バッファA2の蓄積フレームの送信を停止する旨を示す情報をスケジューラ32へ出力する。
【0069】
また、停止要求処理部34は、集線部11から受けた送信停止要求の示すSNIポートがBであり、優先度が0〜3の場合には、バッファB1の蓄積フレームの送信を停止する旨を示す情報をスケジューラ32へ出力する。また、停止要求処理部34は、集線部11から受けた送信停止要求の示すSNIポートがBであり、優先度が4〜7の場合には、バッファB2の蓄積フレームの送信を停止する旨を示す情報をスケジューラ32へ出力する。
【0070】
このように、優先度の数XとSNIポートごとのバッファの数Yとは、必ずしも1:1に対応付けられる必要はない。すなわち、送信停止要求の指定する優先度の数とバッファの数が一致しない場合があり得、また、ポーズ制御フレームのように、送信停止要求が優先度を示さない場合もあり得る。
【0071】
図6は、本発明の実施の形態に係るOSUにおいて、送信停止要求に従ったフレーム送信停止制御の一例を示す図である。図6は、SNIポートAおよびSNIポートBの両系が使用可能な場合における制御を示している。
【0072】
図6を参照して、送信振り分け部22は、たとえば、SNIポートA宛の優先度0のフレームに対して送信停止が要求された場合、図4の太枠で示すように、SNIポートA宛の優先度0に対応するフレームが蓄積されているバッファA1を送信停止対象とする、すなわち当該バッファからのフレームの取り出しおよび出力を停止する。
【0073】
同様に、送信振り分け部22は、たとえば、SNIポートB宛の優先度0および4のフレームに対して送信停止が要求された場合、図5の太枠で示すように、SNIポートB宛の優先度0に対応するフレームが蓄積されているバッファB1、およびSNIポートB宛の優先度4に対応するフレームが蓄積されているバッファB2を送信停止対象とする。
【0074】
このように、停止要求処理部34において優先度とバッファとを対応付けておく構成により、優先度別のフロー制御、たとえば低優先度フレームまたは高優先度フレームの送信のみを停止する制御が可能となる。
【0075】
図7は、本発明の実施の形態に係るOSUにおいて、送信停止要求に従ったフレーム送信停止制御の一例を示す図である。図7は、SNIポートBが使用不可の場合における制御を示している。
【0076】
図7を参照して、送信振り分け部22は、たとえばSNIポートの使用可否に応じて、送信停止対象のバッファを変更する。
【0077】
すなわち、送信振り分け部22は、他経路選択動作を行っている状態において送信停止要求を受けた場合には、送信停止要求の示すSNIポートに対応するバッファ、および他経路選択動作によって選択したSNIポートに対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0078】
具体的には、送信振り分け部22は、たとえばSNIポートA宛の優先度0のフレームに対して送信停止が要求された場合、前述のようにバッファA1を送信停止対象とすることになる。
【0079】
しかしながら、送信振り分け部22は、SNIポートBが使用不可であるため、他経路選択動作により、バッファB1,B2の蓄積フレームをSNIポートAへ出力している状態である。このため、バッファA1からのフレームの取り出しおよび出力を停止するだけでは、優先度0のフレームのSNIポートAへの出力を完全に停止することができない。
【0080】
そこで、送信振り分け部22は、バッファA1に加えてバッファB1も送信停止対象とする。
【0081】
より詳細には、送信振り分け部22におけるSNI状態監視部35が各SNIインタフェース部の使用可否を監視することにより、スケジューラ32が送信停止対象のバッファを動的に変更することが可能である。これにより、各SNIインタフェース部と集線部11との間の通信の異常時等において、上りフレームの通信経路切替を行なうことができる。
【0082】
なお、送信振り分け部22は、送信停止対象のバッファを固定的に設定することも可能である。たとえば、局側装置201が集線部11を備えず、OSU12と上位装置とが1系統のSNIポートのみを用いて直接接続される構成をとる場合には、各バッファの出力先を1つのSNIインタフェース部に固定することが可能である。
【0083】
図8は、本発明の実施の形態に係るOSUにおける、送信停止要求の内容および各SNIポートの使用状況に応じた送信停止対象のバッファを示す図である。
【0084】
図8を参照して、送信停止要求がSNIポートA宛の優先度0のフレームを示す場合であって、SNIポートAおよびSNIポートBの両方が使用可能であるときには、バッファA1が送信停止対象となる。送信停止要求がSNIポートA宛の優先度4のフレームを示す場合であって、SNIポートAおよびSNIポートBの両方が使用可能であるときには、バッファA2が送信停止対象となる。送信停止要求がSNIポートA宛の優先度0のフレームを示す場合であって、SNIポートAが使用可能であり、かつSNIポートBが使用不可であるときには、バッファA1およびB1が送信停止対象となる。送信停止要求がSNIポートA宛の優先度4のフレームを示す場合であって、SNIポートAが使用可能であり、かつSNIポートBが使用不可であるときには、バッファA2およびB2が送信停止対象となる。送信停止要求がSNIポートB宛の優先度0のフレームを示す場合であって、SNIポートAおよびSNIポートBの両方が使用可能であるときには、バッファB1が送信停止対象となる。送信停止要求がSNIポートB宛の優先度4のフレームを示す場合であって、SNIポートAが使用不可であり、かつSNIポートBが使用可能であるときには、バッファA2およびB2が送信停止対象となる。
【0085】
[動作]
次に、本発明の実施の形態に係るOSUがフレーム送信停止制御を行なう際の動作について図面を用いて説明する。
【0086】
図9は、本発明の実施の形態に係るOSUがフレーム送信停止制御を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【0087】
図9を参照して、まず、送信振り分け部22は、集線部11から送信停止要求を受けるまで通常のフレーム送信動作を行ない(ステップS1でNO)、送信停止要求を受けると(ステップS1でYES)、SNIポートの使用状況を確認する(ステップS2)。
【0088】
そして、送信振り分け部22は、SNIポートAおよびSNIポートBの両方を使用中である場合には(ステップS2でYES)、送信停止要求の示す停止対象ポートおよび停止対象優先度に対応するバッファからのフレーム送信を停止する。なお、送信振り分け部22は、送信停止要求としてポーズ制御フレームを受信した場合には、停止対象ポートに対応するすべての優先度のバッファを送信停止対象とする(ステップS3)。
【0089】
一方、送信振り分け部22は、SNIポートAおよびSNIポートBの一方を使用中である場合には(ステップS2でNO)、SNIポートAおよびSNIポートB、ならびに停止対象優先度に対応するバッファからのフレーム送信を停止する。なお、送信振り分け部22は、送信停止要求としてポーズ制御フレームを受信した場合には、各停止対象ポートに対応するすべての優先度のバッファを送信停止対象とする(ステップS4)。
【0090】
次に、送信振り分け部22は、フレーム送信の停止時間を設定する(ステップS5)。送信振り分け部22は、この停止時間経過後、送信停止を解除し、送信停止対象となっていたバッファからのフレーム送信を再開する。
【0091】
なお、送信振り分け部22は、あるバッファからのフレーム送信の停止中に、集線部11から新たな送信停止要求を受けて、他のバッファを新たに送信停止対象としてもよいし、送信停止対象となっているバッファのフレーム送信停止時間を延長してもよい。
【0092】
図10は、本発明の実施の形態に係るOSUがフレーム送信再開制御を行なう際の動作手順を示すフローチャートである。
【0093】
図10を参照して、まず、送信振り分け部22は、バッファからのフレーム送信を停止している状態において、送信再開要求を集線部11から受信すると(ステップS11でYES)、SNIポートの使用状況を確認する(ステップS12)。
【0094】
そして、送信振り分け部22は、SNIポートAおよびSNIポートBの両方を使用中である場合には(ステップS12でYES)、送信再開要求の示す再開対象ポートおよび再開対象優先度に対応するバッファからのフレーム送信を再開する(ステップS13)。
【0095】
一方、送信振り分け部22は、SNIポートAおよびSNIポートBの一方を使用中である場合には(ステップS12でNO)、SNIポートAおよびSNIポートB、ならびに再開対象優先度に対応するバッファからのフレーム送信を再開する(ステップS14)。
【0096】
ところで、特許文献1に記載の技術では、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が発生すると、局側装置が備えるフレーム蓄積用のバッファに空きがあるにも関わらず、フレームの損失が発生してしまう。
【0097】
これに対して、本発明の実施の形態に係るOSUでは、バッファA1,A2,B1,B2は、通信経路すなわちSNIポート、および上りフレームの優先度ごとに設けられ、ONU202から受信した上りフレームを蓄積する。受信振り分け部21は、ONU202から受信した上りフレームの送信先のSNIポート、および優先度に基づいて、上りフレームを振り分けてバッファA1,A2,B1,B2に蓄積する。送信振り分け部22は、上りフレームの優先度に基づいてバッファA1,A2,B1,B2から上りフレームを取り出し、送信先のSNIポートへ出力する。そして、送信振り分け部22は、SNIポートへの上りフレームの送信停止要求を集線部11または上位ネットワークから受けて、送信停止要求の示すSNIポートに対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0098】
このように、OSU12では、多重化された通信経路すなわちSNIを持つOSUにおいて、上位装置からの各SNIに対する送信停止要求に従い、任意のバッファに対してバックプレッシャをかけることができる。すなわち、OSU12は、バッファから上りフレームを取り出す際に、当該フレームの送信先となる上位装置のバッファ残量等に応じてバッファからの上りフレームの取り出しおよび送信を停止する。
【0099】
このような構成により、OSU12からの上りフレームの過剰な送信による上位装置でのフレーム廃棄を抑制することができる。たとえば、上位ネットワーク側の上位装置における上りフレーム用のバッファに空きがなく、OSU側のバッファに余裕があるにも関わらず、OSUから上りフレームを送信してしまい、上位装置側で当該フレームが廃棄されてしまうことを防ぐことができる。
【0100】
したがって、本発明の実施の形態に係るOSUでは、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が生じた場合でも、上位ネットワークへ送信すべき通信信号の損失を効果的に抑制することができる。
【0101】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、上記のように、SNIポートごとにバッファを設け、受信振り分け部21が、ONU202から受信した上りフレームを各バッファに振り分ける。このような構成により、受信振り分け部21を備えず、各SNIポートで共通のバッファを設ける構成と比べて、フレーム送信のスループットの低下を防ぐことができる。すなわち、SNIポートごとに上りフレームの送信を制御することができるため、あるSNIポートへのフレームの送信レートを抑制する際に、他のSNIポートへのフレームの送信レートが抑制されてしまうことを防ぐことができる。
【0102】
また、特許文献1に記載の技術では、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が発生した場合において、フレームの優先度に関わらず一律にフレームの損失が発生してしまう。
【0103】
これに対して、本発明の実施の形態に係るOSUでは、送信停止要求は、上りフレームの送信を停止すべきSNIポート、および送信を停止すべき上りフレームの優先度を示す。送信振り分け部22は、送信停止要求の示すSNIポートおよび優先度に対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0104】
このような構成により、上位ネットワークにおいてトラフィックの輻輳が発生した場合において、上位装置からの送信停止要求に従って、フレームの優先度に応じたフレーム損失の抑制を行なうことができる。すなわち、優先度の低いバッファのみ送信停止を行なう等の優先度別のフロー制御が可能となるため、優先度の高いフレームの損失を抑制することができる。
【0105】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、送信振り分け部22は、バッファに対応するSNIポートとは異なるSNIポートを選択し、選択したSNIポートへバッファから取り出した上りフレームを出力する他経路選択動作を行なうことが可能である。
【0106】
このような構成により、通信経路の一部が使用できない場合に、使用不可の通信経路が送信先となる上りフレームの損失を防ぐことができる。また、受信振り分け部21ではなく、送信振り分け部22においてこのような通信経路の切り替えを行なう構成により、振り分け処理を行なう部分の集中化による構成の簡易化を図ることができる。
【0107】
また、本発明の実施の形態に係るOSUでは、送信振り分け部22は、他経路選択動作を行っている状態において送信停止要求を受けた場合には、送信停止要求の示すSNIポートに対応するバッファおよび他経路選択動作によって選択したSNIポートに対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0108】
このような構成により、SNIポートの使用可否の状態を監視し、当該状態に応じて動的にバックプレッシャをかけるバッファの範囲を変更することができるため、通信経路の切替等、フレームの出力先が変わる場合でも、バックプレッシャを適切なバッファにかけることができる。また、上位装置の制約などにより、強制的に1つの通信経路へフレームを送信する構成としたい場合に、フレームの出力先の設定が可能となる。
【0109】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置は、1または複数のOSU12と、集線部11とを備える。OSU12では、バッファA1,A2,B1,B2は、SNIポートおよび上りフレームの優先度ごとに設けられ、ONU202から受信した上りフレームを蓄積する。受信振り分け部21は、ONU202から受信した上りフレームの送信先のSNIポート、および優先度に基づいて、上りフレームを振り分けてバッファA1,A2,B1,B2に蓄積する。送信振り分け部22は、上りフレームの優先度に基づいてバッファA1,A2,B1,B2から上りフレームを取り出し、送信先のSNIポートへ出力する。そして、送信振り分け部22は、SNIポートへの上りフレームの送信停止要求を集線部11または上位ネットワークから受けて、送信停止要求の示すSNIポートに対応するバッファに蓄積された上りフレームの取り出しおよびSNIポートへの出力を停止する。
【0110】
このように、OSU12では、多重化された通信経路すなわちSNIを持つOSUにおいて、上位装置からの各SNIに対する送信停止要求に従い、任意のバッファに対してバックプレッシャをかけることができる。すなわち、OSU12は、バッファから上りフレームを取り出す際に、当該フレームの送信先となる上位装置のバッファ残量等に応じてバッファからの上りフレームの取り出しおよび送信を停止する。
【0111】
このような構成により、OSU12からの上りフレームの過剰な送信による上位装置でのフレーム廃棄を抑制することができる。たとえば、上位ネットワーク側の上位装置における上りフレーム用のバッファに空きがなく、OSU側のバッファに余裕があるにも関わらず、OSUから上りフレームを送信してしまい、上位装置側で当該フレームが廃棄されてしまうことを防ぐことができる。
【0112】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置では、そして、OSU12が各ONU202から所定時間あたりで受信可能な上りフレームのデータ量は、集線部11が上位ネットワークへ所定時間あたりで送信可能な上りフレームのデータ量以上である。
【0113】
一般に、各ONUから局側装置への通信帯域の合計は、局側装置から上位ネットワークへの通信帯域よりも大きくなる場合が多く、さらに、各ONUから1つのOSUへの通信帯域が、局側装置から上位ネットワークへの通信帯域よりも大きくなる場合もある。本発明の実施の形態に係る局側装置では、OSUにおけるバッファを有効に利用して上りフレームの送信停止制御を行なう構成により、上記のような局側装置から上位ネットワークへの通信帯域の不足によるフレーム損失を抑制することができる。
【0114】
なお、本発明の実施の形態に係るOSUでは、2つのSNIポートA,Bが設けられ、送信振り分け部22は、SNIポートAおよびSNIポートBの一方が使用不可の場合、他方のSNIポートへ上りフレームを出力する構成であるとしたが、これに限定するものではない。OSU12において3つ以上のSNIポートが設けられる構成であってもよい。OSU12においてたとえば3つのSNIポートが設けられる場合には、あるSNIポートが使用不可のとき、たとえば、他のSNIポートを選択して使用不可ポート宛の上りフレームを出力し、他のもう1つのSNIポートは選択せずに通常通り使用する。
【0115】
また、本発明の実施の形態に係る局側装置は、集線部11を備える構成であるとしたが、これに限定するものではない。集線部11は、局側装置201ではなく、上位ネットワーク側に設けられてもよい。この場合、送信停止要求は、上位ネットワークからOSU12へ直接送信される。
【0116】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記説明ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0117】
11 集線部
12,12−1〜12−m 光回線ユニット
21 受信振り分け部
22 送信振り分け部
23 SNI−Aインタフェース部
24 SNI−Bインタフェース部
26 PON受信部
27 PON送信部
28 制御部
31 フレーム取り出し部
32 スケジューラ
33 バッファ監視部
34 停止要求処理部
35 SNI状態監視部
201 局側装置(光アクセス終端装置)
202 宅側装置(ONU)
203−1〜203−m PON回線
204−1〜204−m 光カプラ
301 PONシステム
A1,A2,B1,B2 バッファ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1または複数の宅側装置と通信信号を送受信し、前記宅側装置から受信した前記通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能な光回線ユニットであって、
前記通信経路および前記通信信号の優先度ごとに設けられ、前記宅側装置から受信した前記通信信号を蓄積するための複数のバッファと、
前記宅側装置から受信した前記通信信号の送信先の前記通信経路、および優先度に基づいて、前記通信信号を振り分けて前記バッファに蓄積するための受信振り分け部と、
前記通信信号の優先度に基づいて前記バッファから前記通信信号を取り出し、送信先の前記通信経路へ出力するための送信振り分け部とを備え、
前記送信振り分け部は、前記通信経路への前記通信信号の送信停止要求を前記上位ネットワークから受けて、前記送信停止要求の示す前記通信経路に対応する前記バッファに蓄積された前記通信信号の取り出しおよび前記通信経路への出力を停止する、光回線ユニット。
【請求項2】
前記送信停止要求は、前記通信信号の送信を停止すべき前記通信経路、および送信を停止すべき前記通信信号の優先度を示し、
前記送信振り分け部は、前記送信停止要求の示す前記通信経路および前記優先度に対応する前記バッファに蓄積された前記通信信号の取り出しおよび前記通信経路への出力を停止する、請求項1に記載の光回線ユニット。
【請求項3】
前記送信振り分け部は、前記バッファに対応する前記通信経路とは異なる前記通信経路を選択し、選択した前記通信経路へ前記バッファから取り出した前記通信信号を出力する他経路選択動作を行なうことが可能である、請求項1または請求項2に記載の光回線ユニット。
【請求項4】
前記送信振り分け部は、前記他経路選択動作を行っている状態において前記送信停止要求を受けた場合には、前記送信停止要求の示す前記通信経路に対応する前記バッファおよび選択中の前記通信経路に対応する前記バッファに蓄積された前記通信信号の取り出しおよび前記通信経路への出力を停止する、請求項3に記載の光回線ユニット。
【請求項5】
1または複数の宅側装置と通信信号を送受信するための複数の光回線ユニットと、
前記複数の光回線ユニットが前記宅側装置から受信した前記通信信号を上位ネットワークへ送信するための集線部とを備える光アクセス終端装置であって、
前記光回線ユニットは、前記宅側装置から受信した前記通信信号を複数の通信経路を介して前記集線部へ出力可能であり、
前記光回線ユニットが各前記宅側装置から所定時間あたりで受信可能な前記通信信号のデータ量は、前記集線部が前記上位ネットワークへ前記所定時間あたりで送信可能な前記通信信号のデータ量以上であり、
前記光回線ユニットは、
前記通信経路および前記通信信号の優先度ごとに設けられ、前記宅側装置から受信した前記通信信号を蓄積するための複数のバッファと、
前記宅側装置から受信した前記通信信号の送信先の前記通信経路、および優先度に基づいて、前記通信信号を振り分けて前記バッファに蓄積するための受信振り分け部と、
前記通信信号の優先度に基づいて前記バッファから前記通信信号を取り出し、送信先の前記通信経路へ出力するための送信振り分け部とを含み、
前記送信振り分け部は、前記通信経路への前記通信信号の送信停止要求を前記集線部または前記上位ネットワークから受けて、前記送信停止要求の示す前記通信経路に対応する前記バッファに蓄積された前記通信信号の取り出しおよび前記通信経路への出力を停止する、光アクセス終端装置。
【請求項6】
1または複数の宅側装置と通信信号を送受信し、前記宅側装置から受信した前記通信信号を複数の通信経路を介して上位ネットワークへ送信可能な光回線ユニットにおける通信制御方法であって、
前記通信経路および前記通信信号の優先度ごとに設けられた複数のバッファに、前記宅側装置から受信した前記通信信号の送信先の前記通信経路、および優先度に基づいて、前記通信信号を振り分けて蓄積するステップと、
前記通信信号の優先度に基づいて前記バッファから前記通信信号を取り出し、送信先の前記通信経路へ出力するステップと、
前記通信経路への前記通信信号の送信停止要求を前記上位ネットワークから受けて、前記送信停止要求の示す前記通信経路に対応する前記バッファに蓄積された前記通信信号の取り出しおよび前記通信経路への出力を停止するステップとを含む、通信制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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