説明

光変調素子および光変調素子の製造方法

【課題】所望の強度分布を有する光を生成するための光変調素子を提供する。
【解決手段】変調マスク21は、光を第1の位相変調量で変調する複数の第1変調領域25aと、各第1位相変調領域間25aに配置され、光を第2の位相変調量で変調する第2位相変調領域25bと、を備えている。各第1位相変調領域25aの輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びている。また、各第1位相変調領域25aのうち少なくとも1つの第1位相変調領域25aは、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに第1位相変調領域25aに包含される長方形領域26と、長方形領域26の少なくとも1辺に形成された凸部領域27と、を有している。そして、凸部領域27の幅は、凸部領域27の高さの自然数倍となっており、長方形領域26の各辺の長さは、それぞれ凸部領域27の高さの自然数倍となっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源からの光を変調する光変調素子に関する。また本発明は、当該光変調素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器などで用いられる部品において、部品(被照射物)を様々な形状に高精度で光加工することが求められている。例えば、プリンタなどに使用されるインクジェットヘッドにおいては、良好なインクの吐出性能を得るために、インクジェットヘッドのノズルまたはインク流路などを精密に光加工することが求められる。
【0003】
被照射物を精密に加工する方法として、変調マスクなどの光変調素子によって変調された光を被照射物に照射する方法が知られている。例えば特許文献1および特許文献2において、光源と、光源からの光を整形するビーム整形光学系と、被照射物の加工形状に対応した所定のパターンを有する変調マスクと、変調マスクのパターン像を被照射物の照射面上に所定の倍率で結像させる結像光学系と、を用いた光加工方法が提案されている。
【0004】
ところで、一般に変調マスクは、所定の加工分解能を有する加工装置を用いて製造される。例えば、所定の最小構成単位(以下、グリッド)に基づいてパターンを描画する描画装置を用いて製造される。一方、変調マスクの設計段階においては、変調マスクのパターンの面積などが被照射物の加工形状に応じて算出される。この場合、設計データにおける変調マスクのパターンが、描画装置のグリッドでは表現できないような微細な形状を有することが考えられる。このため変調マスクの製造の際、設計データにおける変調マスクのパターンが、描画装置のグリッドに対応するよう適宜修正されることになる。この結果、設計データにおける変調マスクのパターンと、実際に製造された変調マスクのパターンとの間には、所定の誤差が存在している。
【0005】
設計データにおける変調マスクのパターンと、実際に製造された変調マスクのパターンとの間の誤差が大きくなると、変調マスクを用いた光加工方法における加工精度が劣化してしまう。このため、変調マスクを用いた光加工方法においては、設計データにおける変調マスクのパターンと実際に製造された変調マスクのパターンとの間の誤差を小さくすることが重要となる。
【0006】
上記誤差を小さくする方法の1つとして、描画の際のグリッドを小さく設定することが考えられる。しかしながら、描画の際のグリッドが過度に小さくなると、描画に要する時間が長くなり、これによって変調マスクの製造効率が悪化してしまう。また、描画の際のグリッドを小さくするためには、高精度の描画性能を有する複雑な描画装置が必要になる。
【0007】
このような課題を解決するため、描画の際のグリッドを過度に小さくすること無く上記誤差を小さくする方法が提案されている。例えば非特許文献において、変調マスクのパターンの一端部に、描画装置のグリッドに対応する追加領域を適切な数だけ設ける方法が提案されている。追加領域の数は、設計データにおける変調マスクのパターンの面積と製造される変調マスクのパターンの面積との間の差を補償するよう設定されている。これによって、設計データにおける変調マスクのパターンの面積と製造される変調マスクのパターンの面積とを一致させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−118782号公報
【特許文献2】特開2010−188418号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Alfred Kwok-kit Wong, "Resolution Enhancement Techniques in Optical Lithography", Tutorial Texts in Optical Engineering, USA, SPIE Press, Volume TT47, pages 94 to 97
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
変調マスクなどの光変調素子を用いて精度良く光加工を行うためには、用いられる光変調素子のパターンの面積だけでなくパターンの配置も設計データに精密に一致していることが好ましい。しかしながら、非特許文献1に記載の方法においては、得られる変調マスクのパターンの面積を設計データにおける変調マスクのパターンの面積に一致させる点のみが考慮されている。このため非特許文献1に記載の方法により得られる光変調素子によっては、光加工の精度を十分に高くすることができないと考えられる。
【0011】
本発明は、このような課題を効果的に解決し得る光変調素子および光変調素子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明による第1の光変調素子は、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を備え、各第1変調領域の輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びており、各第1変調領域のうち少なくとも1つの第1変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに前記第1変調領域に包含される長方形領域と、前記長方形領域の少なくとも1辺に形成された凸部領域と、を有し、前記凸部領域の幅は、前記凸部領域の高さの自然数倍となっており、前記長方形領域の各辺の長さは、それぞれ前記凸部領域の高さの自然数倍となっていることを特徴とする光変調素子である。
【0013】
本発明による第1の光変調素子によれば、凸部領域の大きさおよび位置を適切に設定することにより、光変調素子の第1変調領域の形状を柔軟に調整することができる。従って、光源からの光を光変調素子によって変調することにより、所望の強度分布を有する光を得ることができる。
【0014】
本発明による第1の光変調素子において、前記凸部領域は、前記長方形領域の辺の中点近傍に配置されていてもよい。
【0015】
本発明による第1の光変調素子において、前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置されていてもよい。この場合、前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記凸部の高さは、好ましくは前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも小さくなっている。
【0016】
本発明による第2の光変調素子は、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を備え、各第1変調領域の輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びており、各第1変調領域のうち少なくとも1つの第1変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに前記第1変調領域を包含する長方形領域と、前記長方形領域の少なくとも1辺に形成された凹部領域と、を有し、前記凹部領域の幅は、前記凹部領域の深さの自然数倍となっており、前記長方形領域の各辺の長さは、それぞれ前記凹部領域の深さの自然数倍となっていることを特徴とする光変調素子である。
【0017】
本発明による第2の光変調素子によれば、凹部領域の大きさおよび位置を適切に設定することにより、光変調素子の第1変調領域の形状を柔軟に調整することができる。従って、光源からの光を光変調素子によって変調することにより、所望の強度分布を有する光を得ることができる。
【0018】
本発明による第2の光変調素子において、前記凹部領域は、前記長方形領域の辺の中点近傍に配置されていてもよい。
【0019】
本発明による第2の光変調素子において、前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置されていてもよい。この場合、前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記凹部の深さを前記結像光学系の結像面に換算することにより得られる寸法は、好ましくは前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも小さくなっている。
【0020】
本発明による第1および第2の光変調素子において、前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置されていてもよい。この場合、前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記第1変調領域を前記結像光学系の結像面に換算した領域は、前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも少なくとも一方向に関して小さくなっていてもよい。
【0021】
本発明による第1および第2の光変調素子において、前記第1変調領域は、第1の位相変調量を有する第1位相変調領域からなり、前記第2変調領域は、第2の位相変調量を有する第2位相変調領域からなっていてもよい。この場合、前記第1位相変調領域の第1の位相変調量と、前記第2位相変調領域の第2の位相変調量とが、互いに180度の奇数倍だけ異なっていてもよい。
【0022】
本発明による第1および第2の光変調素子において、前記第1変調領域は、第1の振幅変調量を有する第1振幅変調領域からなり、前記第2変調領域は、第2の振幅変調量を有する第2振幅変調領域からなっていてもよい。この場合、前記第1振幅変調領域または前記第2振幅変調領域のいずれか一方が、光を遮蔽する光遮蔽層を含んでいてもよい。
【0023】
本発明による第1の光変調素子の製造方法は、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を含む光変調素子の製造方法において、加工されることにより前記第1変調領域および前記第2変調領域が形成される基材を準備する工程と、前記第1変調領域が形成されるべき領域に対応する複数の実形状が示されている加工図面であって、前記基材を加工する際に参照される加工図面を準備する図面準備工程と、所定の加工分解能を有する加工装置を用いて、前記加工図面に基づいて前記基材を加工する加工工程と、を備え、前記加工図面は、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、x方向に延びる複数のx方向グリッド線と、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、前記x方向に直交するy方向に延びる複数のy方向グリッド線と、を含み、前記加工図面の前記実形状は、その輪郭線が前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に重なるよう配置されており、前記図面準備工程は、形成される各第1変調領域の理想的な面積および配置を算出する工程と、算出された理想的な面積を有する複数の理想矩形形状であって、前記x方向および前記y方向に沿って延びる矩形状の理想矩形形状を、算出された配置に従って前記加工図面上に配置する工程と、各理想矩形形状に包含されるとともに前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に沿って延びる長方形を、前記加工図面上に生成する工程と、前記長方形の各辺と前記理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、前記長方形の辺ごとに算出する工程と、前記中間領域に対応する面積を有する凸部を前記長方形の対応する辺に配置し、これによって、前記長方形および前記凸部からなる前記実形状を生成する工程と、を有することを特徴とする光変調素子の製造方法である。
【0024】
本発明による第1の光変調素子の製造方法によれば、理想矩形形状に包含される長方形を加工図面上に生成し、次に、長方形の各辺と理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、長方形の辺ごとに算出し、その後、中間領域に対応する面積を有する凸部を長方形の対応する辺に配置することによって、加工図面の実形状が生成される。このため、理想矩形形状の面積および配置と、実形状の面積および配置とを精度良く一致させることができる。
【0025】
本発明による第1の光変調素子の製造方法において、好ましくは、前記図面準備工程において、前記凸部は、前記理想矩形形状の重心と前記実形状との重心が略一致するよう前記長方形の辺に配置される。
【0026】
本発明による第2の光変調素子の製造方法は、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を含む光変調素子の製造方法において、加工されることにより前記第1変調領域および前記第2変調領域が形成される基材を準備する工程と、前記第1変調領域が形成されるべき領域に対応する複数の実形状が示されている加工図面であって、前記基材を加工する際に参照される加工図面を準備する図面準備工程と、所定の加工分解能を有する加工装置を用いて、前記加工図面に基づいて前記基材を加工する加工工程と、を備え、前記加工図面は、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、x方向に延びる複数のx方向グリッド線と、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、前記x方向に直交するy方向に延びる複数のy方向グリッド線と、を含み、前記加工図面の前記実形状は、その輪郭線が前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に重なるよう配置されており、前記図面準備工程は、形成される各第1変調領域の理想的な面積および配置を算出する工程と、
算出された前記理想的な面積に対応する面積を有する複数の理想矩形形状であって、前記x方向および前記y方向に沿って延びる矩形状の理想矩形形状を、算出された理想的な配置に従って前記加工図面上に配置する工程と、各理想矩形形状を包含するとともに前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に沿って延びる長方形を、前記加工図面上に生成する工程と、前記長方形の各辺と前記理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、前記長方形の辺ごとに算出する工程と、前記中間領域に対応する面積を有する凹部を前記長方形の対応する辺に形成し、これによって、前記長方形に前記凹部を設けてなる前記実形状を生成する工程と、を有することを特徴とする光変調素子の製造方法である。
【0027】
本発明による第2の光変調素子の製造方法によれば、理想矩形形状を包含する長方形を加工図面上に生成し、次に、長方形の各辺と理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、長方形の辺ごとに算出し、その後、中間領域に対応する面積を有する凹部を長方形の対応する辺に配置することによって、加工図面の実形状が生成される。このため、理想矩形形状の面積および配置と、実形状の面積および配置とを精度良く一致させることができる。
【0028】
本発明による第2の光変調素子の製造方法において、好ましくは、前記図面準備工程において、前記凹部は、前記理想矩形形状の重心と前記実形状との重心が略一致するよう前記長方形の辺に配置される。
【発明の効果】
【0029】
本発明によれば、低解像度の描画装置を用いて製造される場合であっても、所望の光強度分布を正確に生成する光変調素子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態における変調マスクを備えた光照射装置を示す図。
【図2】図2(a)は、被照射物に形成されるテーパ穴を示す平面図、図2(b)は、図2(a)のテーパ穴をIIb−IIb方向から見た断面図。
【図3】図3(a)(b)は、被照射物に照射される光の強度分布を示す図。
【図4】図4は、本発明の第1の実施の形態における変調マスクを示す平面図。
【図5】図5は、図4の変調マスクの変調領域を拡大して示す図。
【図6】図6は、図5の変調領域をVI−VI方向から見た断面図。
【図7】図7(a)は、結像光学系から出射された光の被照射物に対する結像面を示す図、図7(b)は、結像面における点像分布関数を示す図、図7(c)は、結像面における点像分布関数と、変調マスクの変調領域における変調単位領域との関係を示す図。
【図8】図8(a)は、エアリーディスクと領域A,Bとの関係を示す図、図8(b)は、領域Bの配置が変化した場合を示す図、図8(c)は、領域Bの面積が変化した場合を示す図。
【図9】図9は、変調マスクの変調領域を設計する手順全体を示すフローチャート。
【図10】図10は、本発明の第1の実施の形態における第1位相変調領域の形状を設計する手順を示すフローチャート。
【図11】図11は、加工図面上に配置された理想矩形形状を示す図。
【図12】図12は、図11の理想矩形形状を拡大して示す図。
【図13】図13は、加工図面上に内側長方形を生成する工程を示す図。
【図14】図14は、内側長方形の辺に凸部を配置する工程を示す図。
【図15】図15は、本発明の第1の実施の形態における第1位相変調領域の形状を示す図。
【図16】図16(a)(b)は、被照射物に照射される光の強度分布を示す図。
【図17】図17は、比較の形態における実形状を示す図。
【図18】図18(a)(b)は、比較の形態において、被照射物に照射される光の強度分布を示す図。
【図19】図19は、本発明の第2の実施の形態における理想矩形形状を示す図。
【図20】図20は、加工図面上に外側長方形を生成する工程を示す図。
【図21】図21は、外側長方形の辺に凹部を配置する工程を示す図。
【図22】図22は、本発明の第2の実施の形態における第1位相変調領域の形状を示す図。
【図23】図23は、本発明の第3の実施の形態における変調領域を示す断面図。
【図24】図24は、本発明の第4の実施の形態における理想矩形形状を示す図。
【図25】図25は、加工図面上に近接長方形を生成する工程を示す図。
【図26】図26は、近接長方形の辺に凸部および凹部を配置する工程を示す図。
【図27】図27は、本発明の第4の実施の形態における第1位相変調領域の形状を示す図。
【図28】図28は、変形例における実形状を示す図。
【図29】図29は、その他の変形例における実形状を示す図。
【図30】図30は、その他の変形例における実形状を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0031】
第1の実施の形態
以下、図1乃至図16を参照して、本発明の第1の実施の形態について説明する。
【0032】
(被照射物およびテーパ穴)
はじめに図2を参照して、本実施の形態における光変調素子を備えた光照射装置10を用いた加工方法により被照射物18に形成されるテーパ穴20について説明する。本実施の形態においては、アブレーションにより被照射物18が加工されてテーパ穴20が形成されることが想定されている。図2(a)は、被照射物18に形成されるテーパ穴20を示す平面図であり、図2(b)は、被照射物18に形成されるテーパ穴20を示す縦断面図である。
【0033】
図2(a)(b)に示すように、被照射物18に形成されるテーパ穴20は、貫通部20aと、テーパ穴20の基端部20dから先端部20cに向って貫通部20aが先細となるよう傾斜した面からなる傾斜部20bとを有している。ここで傾斜部20bの傾斜角度は、図2(b)に示すように角度φとなっている。また図2(a)に示すように、平面図におけるテーパ穴20の輪郭は略円形となっている。
【0034】
図3(a)(b)は、被照射物18に照射される光の強度分布を示す図である。このうち図3(a)は、被照射物18に照射される光の強度分布を等強度線により示す図である。本実施の形態においては、被照射物18に照射される光のうちImaxの強度を有する光により、テーパ穴20の貫通部20aが形成される。また、被照射物18に照射される光のうちImaxからIminに連続的に減少する強度を有する光により、テーパ穴20の傾斜部20bが形成される。一方、強度Iminは被照射物18のアブレーション閾値よりも小さくなっており、このため、強度Iminの光によっては被照射物18は加工されない。
【0035】
図3(a)から明らかなように、略円形の輪郭を有するテーパ穴20を得るためには、被照射物18に照射される光の等強度線が円形であることが求められる。また、得られるテーパ穴20の傾斜部20bの傾斜角度φを精密に調整するためには、傾斜部20bに照射される光の強度をImaxからIminに連続的に精密に減少させることが重要となる。すなわち、所望の輪郭および傾斜角度φを有するテーパ穴20を得るためには、被照射物18に照射される光の強度分布を精密に調整することが重要となる。
【0036】
(光照射装置)
次に、図1を参照して、被照射物18に照射される光を生成する光照射装置10全体について説明する。図1に示すように、光照射装置10は、被照射物18を載置する載置台19と、光を出射するマスク照明系11と、マスク照明系11の出射側に設けられ、マスク照明系11からの光を変調して出射する光変調素子と、光変調素子の出射側に設けられ、光変調素子により変調された光を結像して、略円形の等強度線を有する光を被照射物18に照射する結像光学系17と、を備えている。なお本実施の形態においては、光変調素子として変調マスク21が用いられる例について説明する。
【0037】
このうちマスク照明系11は、パルス状のレーザ光を出射するレーザ光源12と、レーザ光源12からのレーザ光の光強度分布を均一化する照明光学系13とを有している。具体的には、レーザ光源12は、308nmの波長を有する光を供給するXeClエキシマレーザ光源12からなる。また照明光学系13は、レーザ光源12からの光の面内強度分布を均一化するとともに、照明光学系13から変調マスク21に入射される光の入射角度分布を均一化するものであり、フライアイレンズ(図示せず)と、コンデンサ光学系(図示せず)とを有している。
【0038】
変調マスク21は、前述のとおり、マスク照明系11の出射側に設けられ、マスク照明系11からの光を変調して出射するものである。詳細については後述する。
【0039】
変調マスク21において変調されたレーザ光は、変調マスク21の出射側に設けられた結像光学系17に入射される。結像光学系17は、変調マスク21により変調された光を結像して被照射物18に照射するものであり、図1に示すように、凸レンズ17aと、凸レンズ17bと、両レンズ17a、17bの間に設けられた開口絞り17cとを有している。なお開口絞り17cの開口部17kの大きさは、実質的に結像光学系17の像側開口数NAに対応している。後述するように、当該開口部17kの大きさは、被照射物18において所要の光強度分布を発生させるように設定されている。
【0040】
結像光学系17により結像されたレーザ光は、被照射物18に照射される。被照射物18は、レーザ光によるアブレーションにより加工しやすい物質から形成されており、例えばポリイミドなどの高分子材料から形成されている。なお被照射物18は、変調マスク21と光学的に共役な面、すなわち結像光学系17の後述する結像面17f上に配置されている。
【0041】
(変調マスク)
次に図4乃至図6を参照して、本実施の形態における変調マスク21について説明する。図4は、変調マスク21を示す平面図であり、図5は、図4に示される変調マスク21の変調領域22の左上部分を拡大して示す平面図である。図6は、図5に示される変調領域22をVI−VI方向から見た断面図である。
【0042】
図4に示すように、変調マスク21は、円形の輪郭からなる変調領域22と、変調領域22の周縁に形成された非変調領域23と、を有している。このうち変調領域22は、変調マスク21に入射される光を変調して、円形の等強度線を有する光を生成するための領域である。一方、非変調領域23は、非変調領域23に入射した光を遮蔽するよう構成されている。例えば非変調領域23は、クロム、アルミニウム、シリコン酸化物または誘電体多層膜などの遮光材料を含む領域となっている。
【0043】
(変調領域)
以下、変調領域22について詳細に説明する。図4に示すように、変調領域22は、略円形の輪郭を有する変調マスク傾斜部32と、変調マスク傾斜部32の外縁32bに位置するとともに、略円形の輪郭を有する変調マスク周縁部33と、変調マスク傾斜部32の内縁32aに位置するとともに、略円形の輪郭を有する変調マスク中央部34と、を有している。変調マスク中央部34は、被照射物18のうちテーパ穴20の貫通部20aが形成される領域に照射される光を変調するものである。また、変調マスク傾斜部32は、被照射物18のうちテーパ穴20の傾斜部20bが形成される領域に照射される光を変調するものである。また変調マスク周縁部33は、被照射物18に照射される光の強度が被照射物18のアブレーション閾値以下となるよう光を変調するものである。
【0044】
変調領域22の変調マスク傾斜部32、変調マスク周縁部33および変調マスク中央部34はそれぞれ、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を含んでいる。後述するように、変調領域22の所定の位置における光の変調率は、当該位置における第1変調領域と第2変調領域の面積比率により決定される。なお本実施の形態においては、図5に示すように、第1変調領域が、光を第1の位相変調量で変調する第1位相変調領域25aからなり、第2変調領域が、光を第2の位相変調量で変調する第2位相変調領域25bからなる例について説明する。
【0045】
ここで、円周方向に規則的に並べられ、各々が1つの第1位相変調領域25aを含み、かつ各々が等しい面積からなる複数の変調単位領域24eによって変調領域22が仮想的に区画される場合を考える。この場合、任意の円周方向線(例えば図5に示す円周方向線29)に沿って規則的に並べられた各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの占有率を一定にし、かつ各第1位相変調領域25aを円周方向線29上に規則的に並べることによって、略円形の等強度線を有する光が得られることが、本願の発明者により見いだされた。従って、略円形の等強度線を有する光を得るためには、変調領域22における各第1位相変調領域25aの面積および配置を精密に調整することが重要となる。
【0046】
次に、図6を参照して、変調領域22の第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bの構造について説明する。図6に示すように、変調領域22の第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bは、石英ガラスなどからなる光透過性の基材21aに凹凸を形成することにより構成されている。
【0047】
図6に示すように、第1位相変調領域25aに対応する領域における基材21aの高さと、第2位相変調領域25bに対応する領域における基材21aの高さとは異なっている。ここで、高さの差をΔhとし、空気の屈折率を1とし、基材21aの屈折率をnとする。この場合、第1位相変調領域25aにおける変調マスク21の入射面から出射面までの光学距離と、第2位相変調領域25bにおける変調マスク21の入射面から出射面までの光学距離との差はΔh×(n−1)になる。
【0048】
本実施の形態においては、前記の光学距離の差Δh×(n−1)が{λ/2}の奇数倍となるよう、すなわち、第1位相変調領域25aにおける位相変調量と第2位相変調領域25bにおける位相変調量との差が180度の奇数倍となるよう、Δhが設定されている。例えば、マスク照明系11から出射されるレーザ光の中心波長λが308nm、基材21aを形成する石英ガラスの屈折率nが1.49の場合、Δhが317nmとなるよう基材21aの表面の凹凸形状が設計されている。
【0049】
(光強度分布の生成原理)
次に、図7および図8を参照して、変調マスク21の変調領域22により位相変調され出射された光が、結像光学系17の結像面に、各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの占有率に基づく光強度分布を生成する原理について説明する。
【0050】
はじめに、レーザ光の強度とアブレーション深さとの関係について説明する。被照射物18に照射されるレーザ光の強度と、被照射物18のうちアブレーションにより除去される部分の深さ(アブレーションレート)との間には、一般に〔数1〕の関係式が成り立つことが知られている。
【数1】

ここで、dはパルス状のレーザ光を被照射物18に一回照射したときのアブレーションレート、αは被照射物18の光吸収率、Iはレーザ光のエネルギー密度、Ithは被照射物18におけるアブレーション閾値を示す。
【0051】
〔数1〕により明らかなように、アブレーションレートdはレーザ光のエネルギー密度Iに依存する。また、レーザ光照射を複数回繰り返した場合、被照射物18のうちレーザ光照射によって除去される部分の深さの合計は、レーザ光の照射回数に比例することが知られている。従って、被照射物18に照射されるレーザ光のエネルギー密度Iを被照射物18の場所に応じて任意に設定することにより、被照射物18を任意の形状に加工することが可能となる。
【0052】
次に、結像光学系17における物体面(変調マスク21)と結像面17f(被照射物18)との関係について説明する。
【0053】
結像光学系17における物体面分布と結像面分布の関係は、一般にフーリエ結像論により扱うことができる。また、コヒーレンスファクタが0.5程度以下の場合は、コヒーレント結像として近似できる。この場合、結像面、すなわち被照射物18における複素振幅分布U(x,y)は、以下の〔数2〕に示すように、変調マスク21の複素振幅透過率分布T(x,y)と、結像光学系17の複素振幅点像分布関数ASF(x,y)との畳み込み積分で与えられる
【数2】

ここで、*はコンボリューション(たたみ込み積分)を表す。
【0054】
上記の点像分布関数ASF(x,y)は、結像光学系17の瞳関数のフーリエ変換で与えられる。この場合、瞳が円形で無収差の場合は、良く知られたエアリーパターンとなる(〔数3〕)。
【数3】

ここで、Rは点(x,y)からの距離である。また、Jはベッセル関数、λは光の波長、NAは結像光学系17の結像側開口数を表す。
【0055】
本実施の形態においては、上述のように、変調マスク21の変調領域22は、第1位相変調領域25aと第2位相変調領域25bとからなっている。また、第1位相変調領域25aにおける位相変調量と第2位相変調領域25bにおける位相変調量との差が180度の奇数倍となっている。この場合、第2位相変調領域25bおよび第1位相変調領域25aにおける複素振幅透過率分布T(x,y)は以下の〔数4〕および〔数5〕のように表される。
【数4】

【数5】

【0056】
従って、第2位相変調領域25bに対応する領域を領域A、第1位相変調領域25aに対応する領域を領域Bとする場合、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)は以下の〔数6〕により表される。
【数6】

〔数6〕において、第1項の積分範囲が領域A、第2項の積分範囲が領域Bとなっている。積分範囲は、点像分布関数ASF(x,y)が最初に0となるまでの中央領域の範囲内、いわゆるエアリーディスクの内側で十分である。図8(a)において、エアリーディスク17lと領域Aおよび領域Bとの関係が示されている。
【0057】
なおエアリーディスクの半径Rは、以下の〔数7〕により与えられる。
【数7】

本実施の形態において、例えばレーザ光の波長λ=308nm、結像光学系17の結像側の開口数NA=0.15とすると、R=1.25μmとなっている。
【0058】
変調領域22の変調単位領域24eがエアリーディスクの半径Rよりも光学的に小さい場合、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)は、各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの面積および配置に応じて決定されることになる。すなわち、各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの面積および配置を調整することにより、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)を任意に設定することが可能となる。従って、変調領域22の変調単位領域24eがエアリーディスクの半径Rよりも光学的に小さいことが好ましい。なお、「変調単位領域24eがエアリーディスクの半径Rよりも光学的に小さい」とは、変調単位領域24eを結像光学系17の結像面17fに換算した変調単位換算領域が、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも少なくとも一方向に関して小さいことを意味している。
【0059】
例えば結像光学系17の倍率が1/5である場合、変調単位領域24eを結像光学系17の結像面17fに換算した変調単位換算領域が、結像光学系17の点像分布範囲の半径R=1.25μmよりも少なくとも一方向に関して小さくなるよう、変調マスク21の変調領域22が設計される。すなわち、このような条件を満たす変調単位領域24eによって変調領域22が区画され得るよう、第1位相変調領域25aの面積および配置が設定される。
【0060】
各変調単位領域24eに対応する結像光学系17の結像面17fにおけるレーザ光の強度Iは、以下のように求められる。
【数8】

【0061】
被照射物18に形成するテーパ穴20の大きさ、傾斜部20bの傾斜角度などに応じて、〔数1〕に基づき、被照射物18に照射されるレーザ光強度分布Iが設定される。さらに、所望のレーザ光強度分布Iが得られるよう、〔数8〕に従い、各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの面積および配置が設定される。これによって、所望の大きさ、傾斜角度などを有するテーパ穴20を被照射物18に形成することができる。
【0062】
ところで点像分布関数ASF(x,y)は、図8(a)に示されるように、エアリーディスク17lの中心から外方に向かうにつれて減少する関数となっている。すなわち、エアリーディスク17l内で点像分布関数ASF(x,y)の重みが変化している。このため、変調マスク21の第1位相変調領域25aの面積および配置が設計データから相違する場合、得られるレーザ光の強度と設計段階でのレーザ光の強度とが、点像分布関数ASF(x,y)の重みの相違に応じてずれることになる。
【0063】
例えば第1位相変調領域25aの配置が、図8(a)に示される第1位相変調領域25aの理想的な配置に比べて所定の方向に変位する場合について考える。具体的には、図8(b)に示すように、第1位相変調領域25aの配置が右方向に変位している場合を考える。この場合、図8(a)に示される第1位相変調領域25aの面積と図8(b)に示される第1位相変調領域25aの面積とが仮に同一であるとしても、エアリーディスク17l内での点像分布関数ASF(x,y)の重みの相違のため、得られるレーザ光の強度が設計段階でのレーザ光の強度からずれてしまう。具体的には、図8(b)に示される例においては、〔数6〕の第2項の絶対値が減少し、第1項の絶対値が増加し、結果として〔数6〕から算出される値が増加することになる。
【0064】
その他の例として、第1位相変調領域25aの面積が、図8(a)に示される第1位相変調領域25aの理想的な面積に比べて拡大または縮小される場合について考える。具体的には、図8(c)に示すように、第1位相変調領域25aの配置が拡大される場合を考える。この場合、図8(a)に示される第1位相変調領域25aの重心と図8(c)に示される第1位相変調領域25aの重心とが仮に同一であるとしても、エアリーディスク17l内での点像分布関数ASF(x,y)の重みの相違のため、得られるレーザ光の強度が設計段階でのレーザ光の強度からずれてしまう。具体的には、図8(c)に示される例においては、〔数6〕の第2項の絶対値が増加し、第1項の絶対値が減少し、結果として〔数6〕から算出される値が減少することになる。
【0065】
以上のことから、本発明者は、得られるレーザ光の強度と設計段階でのレーザ光の強度とを精度良く一致させるためには、製造される変調マスク21における第1位相変調領域25aの面積および配置を、設計段階における第1位相変調領域25aの面積および配置に一致させることが重要であることを見いだした。以下、面積および配置が精密に調整された第1位相変調領域25aを有する変調マスク21を製造する方法について説明する。
なお「配置を一致させる」とは、製造される変調マスク21における第1位相変調領域25aの面積と設計段階における第1位相変調領域25aの面積とが同一となっている場合に、得られるレーザ光の強度が設計段階でのレーザ光の強度に一致するよう、製造段階において第1位相変調領域25aが位置づけられることを意味している。例えば、製造される変調マスク21における第1位相変調領域25aの重心を、設計段階における第1位相変調領域25aの重心に一致させることが考えられる。なお「重心」とは、点像分布関数ASF(x,y)の重みを考慮することなく第1位相変調領域25aの形状のみを考慮して算出される第1位相変調領域25aの質量中心のことである。
【0066】
変調マスクの製造方法
はじめに、変調マスク21の変調領域22の設計手順について説明する。図9は、変調マスク21の変調領域22を設計する手順全体を示すフローチャートであり、図10は、第1位相変調領域25aの具体的な形状を設計する手順を詳細に示す図である。
【0067】
(変調領域の設計手順)
はじめに図9を参照して、変調領域22を設計する手順全体について説明する。
【0068】
まず、被照射物18に形成するテーパ穴20の形状を入力する(S101)。例えば、被照射物18のうちレーザ光が入射される側の面における位置を(x,y)座標で表す場合の、位置(x,y)における加工深さS(x,y)を入力する。加工深さS(x,y)は、各テーパ穴20の基端部20dおよび先端部20cの直径、傾斜部20bの傾斜角度φなどに応じて決定される。次に、レーザ光の照射回数mを入力する(S102)。この結果、加工深さS(x,y)とレーザ光の照射回数mとに基づき、アブレーションレートd(x,y)が算出される(S103)。
【0069】
次に、アブレーションレートd(x,y)と〔数1〕とに基づき、テーパ穴20を形成するために被照射物18に照射されるレーザ光の強度分布I(x,y)が算出される(S104)。強度分布I(x,y)のうちテーパ穴20の貫通部20aが形成される部分に対応する強度分布は、Imaxとなっている。また強度分布I(x,y)のうちテーパ穴20の傾斜部20bが形成される部分に対応する強度分布は、ImaxからIminに連続的に減少している。ここでIminは、被照射物18のアブレーション閾値よりも低い値となっている。また強度分布I(x,y)のうちテーパ穴20が形成されない部分に対応する強度分布は、被照射物18のアブレーション閾値よりも低い値となっている。
【0070】
その後、レーザ光の強度分布I(x,y)と〔数8〕とに基づき、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)が算出される(S105)。そして、複素振幅分布U(x,y)に基づき、各変調単位領域24eにおける第1位相変調領域25aの理想的な面積および配置が算出される(S106)。その後、算出された理想的な面積および配置に基づいて、各第1位相変調領域25aの具体的な形状が決定される(S107)。
【0071】
なお、変調マスク21を製造するために用いられる加工装置、例えば描画装置は、所定の加工分解能を有している。例えば、比較的低解像度のレーザ描画装置において、その加工分解能は100nmとなっている。以下、このような加工分解能を考慮して各第1位相変調領域25aの具体的な形状を決定する方法について、図10を参照して説明する。
【0072】
(第1位相変調領域の形状の設計手順)
まず、描画装置の加工分解能に対応する間隔で並べられたグリッド線を有する加工図面40を準備する。以下、この加工図面40上において各第1位相変調領域25aの形状を設定する手順について説明する。
【0073】
はじめに、理想的な面積および配置を有する第1位相変調領域25aに対応する理想矩形形状41が加工図面40上に配置される(S111)。図11は、加工図面40上に配置された理想矩形形状41を示す図であり、図12は、加工図面40に配置された理想矩形形状41を拡大して示す図である。なお「理想矩形形状」は、第1位相変調領域25aが矩形状の形状を有するという前提のもとで、上述の〔数6〕に基づいて算出される面積および配置を有する第1位相変調領域25aの形状を意味している。また加工図面40の寸法は、実際に得られる変調マスク21の寸法に一致するよう表されている。
【0074】
図11に示すように、各理想矩形形状41は、x方向、およびx方向に直交するy方向に沿って延びる矩形状の形状を有している。また図11に示すように、変調マスク21の変調マスク傾斜部32に対応する領域に配置される理想矩形形状41は、外方に向かうにつれてその面積が大きくなるよう設定されている。また、変調マスク21の変調マスク周縁部33に対応する領域に配置される理想矩形形状41は、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)がほぼゼロとなるよう面積および配置が設定されている。
【0075】
また理想矩形形状41は、図12に示すように、x方向に延びる第1辺41aおよび第3辺41cと、y方向に延びる第2辺41bおよび第4辺41dとからなっている。また図12において、理想矩形形状41の重心が符号41eにより表されている。
【0076】
なお図12において、符号47で表され、x方向に延びるx方向グリッド線と、符号48で表され、y方向に延びるy方向グリッド線とは、それぞれ描画装置の加工分解能に対応する間隔で並べられている。例えば、描画装置の加工分解能dが100nmとなっている場合、各x方向グリッド線47の間隔dおよび各y方向グリッド線48の間隔dはそれぞれ100nmとなっている。なおx方向グリッド線47およびy方向グリッド線48は、仮想的な構成要素であり、必ずしも加工図面40に現実にx方向グリッド線47およびy方向グリッド線48が表示されている必要はない。
【0077】
図12に示すように、一般に、理想矩形形状41の各辺41a,41b,41c,41dは、x方向グリッド線47上またはy方向グリッド線48上には配置されていない。このため描画装置は、理想矩形形状41の形状に完全に一致する第1位相変調領域25aを製造することができない。従って、理想矩形形状41が、その輪郭線がx方向グリッド線47およびy方向グリッド線48に重なるよう配置された実形状に変形されることが求められる。以下、実形状を設計する手順について説明する。
【0078】
はじめに、理想矩形形状41に包含されるとともにx方向グリッド線47およびy方向グリッド線48に沿って延びる内側長方形43を加工図面40上に生成する(S112)。図13において、内側長方形43が二点鎖線にて表されている。内側長方形43は、x方向に延びる第1辺43aおよび第3辺43cと、y方向に延びる第2辺43bおよび第4辺43dとからなっている。なお本実施の形態において、内側長方形43は、理想矩形形状41に包含され得る長方形のうち最大の面積を有する長方形となっている。
【0079】
次に、理想矩形形状41の第1辺41aと内側長方形43の第1辺43aとの間に位置する第1中間領域42aの面積Mを、以下の[数9]により算出する(S113)。
【数9】

[数9]において、sが理想矩形形状41の第1辺41aの長さとなっており、tが内側長方形43の第1辺43aの長さとなっており、uが第1辺41aと第1辺43aとの間の距離となっている。
【0080】
次に、図14に示すように、第1中間領域42aに対応する面積を有する第1凸部45aを内側長方形43の第1辺43aに配置する(S114)。好ましくは、第1凸部45aは、内側長方形43の第1辺43aの中点近傍に配置される。これによって、理想矩形形状41の重心41eと後述する実形状46の重心46eとをより一致させることができる。なお「中点近傍に配置される」とは、第1凸部45aが、図14において符号43fで表される内側長方形43の第1辺43aの中点に接するよう配置されるという意味である。
【0081】
図14に示すように、第1凸部45aの高さhは、描画装置の加工分解能dに対応している。一方、第1凸部45aの幅wは、〔数10〕により表されるように、第1凸部45aの高さhの自然数倍、すなわち描画装置の加工分解能dの自然数倍になっている。
【数10】

〔数10〕において、kは所定の自然数を表している。この場合、第1凸部45aの面積はk×dとなっている。
【0082】
上記kは、第1凸部45aの面積が第1中間領域42aの面積に対応するよう、以下の〔数11〕が満たされるよう定められる。
【数11】

〔数11〕は、自然数kが、第1凸部45aの面積を描画装置の加工分解能dに対応する面積dによって規格化して四捨五入することにより算出されることを意味している。
【0083】
次に、理想矩形形状41の第2辺41bと内側長方形43の第2辺43bとの間に位置する第2中間領域42bの面積Mを算出する。面積Mの算出式は、上述の[数9]におけるM、s、tおよびuをM、s、tおよびuに置き換えることにより得られる式である。
【0084】
図13に示される例において、面積Mは、0.5×dよりも小さくなっている。このため、第1凸部45aの場合と同様にして[数11]に面積Mを挿入すると、得られる自然数kは0となる。このため、図14に示されるように、内側長方形43の第2辺43bには凸部が配置されない。
【0085】
次に、理想矩形形状41の第3辺41cと内側長方形43の第3辺43cとの間に位置する第3中間領域42cの面積Mを算出する。同様に、理想矩形形状41の第4辺41dと内側長方形43の第4辺43dとの間に位置する第4中間領域42dの面積Mを算出する。また、面積Mに対応する面積を有する第3凸部45cを、内側長方形43の第3辺43cの中点近傍に配置する。同様に、面積Mに対応する面積を有する第4凸部45dを、内側長方形43の第4辺43dの中点近傍に配置する。面積Mおよび面積Mの算出方法や、第3凸部45cおよび第4凸部45dの生成方法および配置方法は面積Mおよび第1凸部45aの場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0086】
このようにして、図14に示されるように、内側長方形43と、第1凸部45a,第3凸部45cおよび第4凸部45dとからなる実形状46が加工図面40上に生成される。
【0087】
本実施の形態によれば、上述のように、理想矩形形状41と内側長方形43との間の面積の相違が、内側長方形43の各辺43a,43b,43c,43dに凸部を配置することにより調整される。このため、描画装置の加工分解能を過度に高くすること無く、理想矩形形状41の面積および重心と実形状46の面積および重心とを精度良く一致させることができる。
【0088】
具体的には、上述の説明から明らかなように、理想矩形形状41の各辺41a,41b,41c,41dにおいて生じうる理想矩形形状41と実形状46との間の面積の相違は−0.5d〜+0.5dの範囲内となっている。従って、理想矩形形状41の面積と実形状46の面積との間の相違は、−2d〜+2dの範囲内となっている。また一般に、各辺41a,41b,41c,41dにおいて生じうる理想矩形形状41と実形状46との間の面積の相違は互いに打ち消し合うことが想定されるので、理想矩形形状41の面積と実形状46の面積との間の相違が−2dや+2dのような大きな値になることはほとんどないと考えられる。
【0089】
また具体的には、図13および図14から明らかなように、第2辺43bまたは第4辺43dに配置される凸部の面積を最小単位d分だけ変化させることによる、x方向における実形状46の重心46eの変化量は、(d/t)×dとなっている。また図13に示される例において、t=10dとなっている。このため本実施の形態によれば、x方向における実形状46の重心46eを、(1/10)×dの単位で調整することができる。例えばd=100nmの場合、x方向における実形状46の重心46eを10nm単位で調整することができる。同様に、y方向における実形状46の重心46eを10nm単位で調整することもできる。このように本実施の形態によれば、加工分解能dよりも小さい単位で実形状46の重心46eを調整することができる。このことにより、図14に示されるように、理想矩形形状41の重心41eと実形状46の重心46eとを略一致させることができる。
【0090】
なお本実施の形態において、重心が「略一致」しているというのは、x方向およびy方向における内側長方形43の長さがそれぞれk×dおよびk×dで表される場合に、理想矩形形状41の重心と実形状46の重心との間の距離がx方向およびy方向においてそれぞれ(1/k)×d以下および(1/k)×d以下になっていることを意味している。
【0091】
(変調マスクの製造)
次に、加工図面40に基づいて変調マスク21を製造する方法について説明する。はじめに、基材21aを加工して変調領域22の第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bを形成する方法について説明する。
【0092】
まず、石英ガラスなどからなる光透過性の基材21aを準備する。次に、基材21a上に光溶解性の感光層を設け、その後、感光層が設けられた基材21aを描画装置内の描画ステージに載置する。次に、加工図面40に基づいて、基材21aのうち第1位相変調領域25aが形成されるべき領域に光を照射する。その後、感光層に対して現像処理を施し、次に、基材21aのうち第1位相変調領域25aが形成されるべき領域をエッチングなどにより切削する。これによって、図6に示される第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bが形成される。
【0093】
なお、基材21aに第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bを形成する方法が上述の方法に限られることはない。例えば、感光層として光硬化型の感光層が用いられてもよい。また、機械的切削方法により第1位相変調領域25aが形成されてもよい。さらに、第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bの形態が図6に示されるような凹凸形状による形態に限られることはない。すなわち、その他の形態によって、所定の光学距離の差を有する第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bが実現されてもよい。例えば、所定の光学距離を有する層を基材21a上に部分的に形成することにより、所定の光学距離の差を有する第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bが実現されてもよい。従って、本実施の形態において、「基材21aを加工して第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bを形成する」とは、基材21aを切削して第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bを形成することだけでなく、基材21a上に新たな層を設けることにより第1位相変調領域25aおよび第2位相変調領域25bを形成することも含んでいる。
【0094】
また、光を利用する描画装置が用いられる例を示したが、これに限られることはなく、光の替わりにEB(電子線)やその他のエネルギー線、または粒子線等によりパターン形成するような描画装置を用いてもよい。
【0095】
次に、基材21aのうち非変調領域23に対応する領域に遮光材料を設ける。これによって、変調領域22と非変調領域23とからなる変調マスク21が得られる。
【0096】
(得られる変調マスクの特徴)
図15は、得られる変調マスク21の変調領域22の第1位相変調領域25aを拡大して示す図である。図15に示すように、第1位相変調領域25aは、実形状46の内側長方形43に対応する長方形領域26と、実形状46の凸部45a〜45dに対応する凸部領域27とを有している。第1位相変調領域25aの輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びている。
【0097】
長方形領域26は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに第1変調領域25aに包含され得る長方形のうち最大の面積を有する長方形となっている。また凸部領域27の高さHは、描画装置の加工分解能dに一致している。さらに、図12乃至図14に示される加工図面40から明らかなように、各凸部領域27の幅W〜Wは、凸部領域27の高さHの自然数倍となっている。また、長方形領域26の各辺の長さL〜Lは、それぞれ凸部領域27の高さHの自然数倍となっている。このような長方形領域26および凸部領域27によって第1位相変調領域25aを構成することにより、変調マスク21の第1位相変調領域25aの形状を柔軟に調整することができる。これによって、変調マスク21における各第1位相変調領域25aの面積および配置を、設計データにおける各第1位相変調領域25aの面積および配置に精度良く一致させることができる。このことにより、所望の強度分布を有する光を得ることが可能となる。
【0098】
また、各凸部領域27は、長方形領域26の辺の中点近傍に配置されている。これによって、得られる強度分布を設計値により一致させることができる。なお「中点近傍に配置される」とは、各凸部領域27が、長方形領域26の対応する辺の中点に接するよう配置されるという意味である。
【0099】
好ましくは、凸部領域27の高さHを結像光学系17の結像面17fに換算することにより得られる寸法は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも小さくなっている。この場合、凸部領域27の面積は被照射物18に照射される光の強度分布に反映されるが、凸部領域27の具体的な形状は被照射物18に照射される光の強度分布にされなくなる。
【0100】
さらに好ましくは、第1位相変調領域25aを結像光学系17の結像面17fに換算した領域は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも少なくとも一方向に関して小さくなっている。例えば、第1位相変調領域25aのx方向における長さL+Hを結像光学系17の結像面17fに換算した寸法は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも小さくなっている。
【0101】
(得られる光強度分布の特徴)
図16(a)は、変調マスク21により変調されて被照射物18に照射される光の強度分布を等強度線により示す図であり、図16(b)は、図16(a)を線XVIb−XVIb方向から見た場合のグラフである。図16(a)に示すように、本実施の形態による変調マスク21を用いることにより、被照射物18に照射される光の等強度線を略円形にすることができる。また図16(b)に示すように、傾斜部20bに照射される光の強度分布の傾斜を一定にすることができる。これによって、所望の輪郭および傾斜角度φを有するテーパ穴20を得ることができる。
【0102】
(比較の形態)
次に、図17および図18を参照して、本実施の形態の効果を、比較の形態と比較して説明する。図17は、比較の形態における変調マスクの加工図面40に生成される実形状146を示す図であり、図18(a)は、比較の形態における変調マスクにより変調されて被照射物18に照射される光の強度分布を等強度線により示す図であり、図18(b)は、図18(a)を線XVIIIb−XVIIIb方向から見た場合のグラフである。実形状146は、比較の形態における変調マスクの第1位相変調領域に対応している。
【0103】
図17および図18に示す比較の形態は、実形状の凸部が内側長方形の所定の一辺にのみ配置される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図16に示す第1の実施の形態と略同一である。図17および図18に示す比較の形態において、図1乃至図16に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0104】
図17に示すように、実形状146は、内側長方形43と、内側長方形43の一辺に配置され、理想矩形形状41の面積と内側長方形43の面積の差に相当する面積を有する複数の凸部145と、を有している。このように比較の形態においては、凸部145が内側長方形43の一辺にのみ配置されている。このため、理想矩形形状41の重心と実形状146の重心との間の距離が、x方向において(1/10)×dよりも大きくなっており、例えば約(4/10)×dになっている。このため、比較の形態においては、製造される変調マスクの各第1位相変調領域の重心が、設計データにおける各第1位相変調領域の重心から大きくずれている。
【0105】
このため比較の形態においては、図18(a)に示すように、被照射物18に照射される光の等強度線は、円形から歪んだ形になっている。また図18(b)に示すように、被照射物18のうちテーパ穴の傾斜部に照射される光の強度分布の傾斜が一定になっていない。このため、形成されるテーパ穴の輪郭および傾斜角度は、設計値から逸脱していると考えられる。
【0106】
これに対して本実施の形態によれば、実形状46は、内側長方形43と、内側長方形43の辺43a〜43dに配置され、各中間領域42a〜42dに対応する面積を有する凸部45a〜45dと、を有している。これによって、変調マスク21における各第1位相変調領域25aの面積および配置を、設計データにおける各第1位相変調領域25aの面積および配置に精度良く一致させることができる。このことにより、所望の強度分布を有する光を得ることができる。
【0107】
第2の実施の形態
次に図19乃至図22を参照して、本発明の第2の実施の形態について説明する。図19乃至図22に示す第2の実施の形態において、第1位相変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに第1変調領域を包含する長方形領域と、長方形領域の少なくとも1辺に形成された凹部領域と、を有している。図19乃至図22に示す第2の実施の形態において、図1乃至図16に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。なお図19乃至図22は、それぞれ第1の実施の形態における図12乃至図15に対応する図となっている。
【0108】
(第1位相変調領域の形状の設計手順)
以下、本実施の形態における第1位相変調領域25aの形状の設計手順について説明する。はじめに、図19に示すように、理想的な面積および配置を有する第1位相変調領域25aに対応する理想矩形形状41が加工図面40上に配置される。次に図20に示すように、理想矩形形状41を包含するとともにx方向グリッド線47およびy方向グリッド線48に沿って延びる外側長方形53を加工図面40上に生成する。図20において、外側長方形53が二点鎖線にて表されている。外側長方形53は、x方向に延びる第1辺53aおよび第3辺53cと、y方向に延びる第2辺53bおよび第4辺53dとからなっている。なお本実施の形態において、外側長方形53は、理想矩形形状41を包含し得る長方形のうち最小の面積を有する長方形となっている。
【0109】
次に、理想矩形形状41の第1辺41aと外側長方形53の第1辺53aとの間に位置する第1中間領域42aの面積Mを、上述の[数9]に基づいて算出する。なお本実施の形態においては、[数9]のtが外側長方形53の第1辺53aの長さとなっており、uが第1辺41aと第1辺53aとの間の距離となっている。
【0110】
次に、図21に示すように、第1中間領域42aに対応する面積を有する第1凹部55aを外側長方形53の第1辺53aに配置する。なお上述の第1の実施の形態においては内側長方形43に第1凸部45aが付加されて実形状46が構成されるが、本実施の形態においては外側長方形53から第1凹部55aが除去されて後述する実形状46が構成される。後述する第3凹部55cおよび第4凹部55dについても同様である。
【0111】
好ましくは、第1凹部55aは、外側長方形53の第1辺53aの中点近傍に配置される。これによって、理想矩形形状41の重心41eと後述する実形状46の重心46eとをより一致させることができる。なお「中点近傍に配置される」とは、第1凹部55aが、図21において符号53fで表される外側長方形53の第1辺53aの中点に接するよう配置されるという意味である。
【0112】
図21に示すように、第1凹部55aの深さdは、描画装置の加工分解能dに対応している。一方、第1凹部55aの幅wは、上述の第1の実施の形態における第1凸部45aの場合と同様に、第1凹部55aの深さdの自然数倍、すなわち描画装置の加工分解能dの自然数倍になっている(〔数10〕参照)。
【0113】
次に、理想矩形形状41の第2辺41bと外側長方形53の第2辺53bとの間に位置する第2中間領域42bの面積Mを算出する。図21に示される例において、面積Mは、0.5×dよりも小さくなっている。このため、外側長方形53の第2辺53bには凹部が配置されない。
【0114】
次に、理想矩形形状41の第3辺41cと外側長方形53の第3辺53cとの間に位置する第3中間領域42cの面積Mを算出する。同様に、理想矩形形状41の第4辺41dと外側長方形53の第4辺53dとの間に位置する第4中間領域42dの面積Mを算出する。また、面積Mに対応する面積を有する第3凹部55cを、外側長方形53の第3辺53cの中点近傍に配置する。同様に、面積Mに対応する面積を有する第4凹部55dを、外側長方形53の第4辺53dの中点近傍に配置する。面積Mおよび面積Mの算出方法や、第3凹部55cおよび第4凹部55dの生成方法および配置方法は面積Mおよび第1凹部55aの場合と同様であるので、詳細な説明は省略する。
【0115】
このようにして、図21に示されるように、外側長方形53と、第1凹部55a,第3凹部55cおよび第4凹部55dとからなる実形状46が加工図面40上に生成される。
【0116】
本実施の形態によれば、上述のように、理想矩形形状41と外側長方形53との間の面積の相違が、外側長方形53の各辺53a,53b,53c,53dに凹部を配置することにより調整される。このため、描画装置の加工分解能を過度に高くすること無く、理想矩形形状41の面積および配置と実形状46の面積および配置とを精度良く一致させることができる。
【0117】
図22は、本実施の形態により得られる変調マスク21の変調領域22の第1位相変調領域25aを拡大して示す図である。図22に示すように、第1位相変調領域25aは、実形状46の外側長方形53に対応する長方形領域26と、実形状46の凹部55a〜55dに対応する凹部領域28とを有している。第1位相変調領域25aの輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びている。
【0118】
長方形領域26は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに第1変調領域25aを包含し得る長方形のうち最小の面積を有する長方形となっている。また凹部領域28の深さDは、描画装置の加工分解能dに一致している。さらに、図19乃至図21に示される加工図面40から明らかなように、各凹部領域28の幅W〜Wは、凹部領域28の深さDの自然数倍となっている。また、長方形領域26の各辺の長さL〜Lは、それぞれ凹部領域28の深さDの自然数倍となっている。このような長方形領域26および凹部領域28によって第1位相変調領域25aを構成することにより、変調マスク21の第1位相変調領域25aの形状を柔軟に調整することができる。これによって、変調マスク21における各第1位相変調領域25aの面積および配置を、設計データにおける各第1位相変調領域25aの面積および配置に精度良く一致させることができる。このことにより、所望の強度分布を有する光を得ることが可能となる。
【0119】
また、各凹部領域28は、長方形領域26の辺の中点近傍に配置されている。これによって、得られる強度分布を設計値により一致させることができる。なお「中点近傍に配置される」とは、各凹部領域28が、長方形領域26の対応する辺の中点に接するよう配置されるという意味である。
【0120】
好ましくは、凹部領域28の深さDを結像光学系17の結像面17fに換算することにより得られる寸法は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも小さくなっている。この場合、凹部領域28の面積は被照射物18に照射される光の強度分布に反映されるが、凹部領域28の具体的な形状は被照射物18に照射される光の強度分布にされなくなる。
【0121】
さらに好ましくは、第1位相変調領域25aを結像光学系17の結像面17fに換算した領域は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも少なくとも一方向に関して小さくなっている。例えば、第1位相変調領域25aのx方向における長さL−Dを結像光学系17の結像面17fに換算した寸法は、結像光学系17の点像分布範囲の半径Rよりも小さくなっている。
【0122】
第3の実施の形態
次に、図23を参照して、本発明の第3の実施の形態について説明する。図23に示す第3の実施の形態は、変調マスク21の変調領域22の第1変調領域および第2変調領域が、光を振幅変調する第1振幅変調領域と第2振幅変調領域とからなる点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図16に示す第1の実施の形態または図19乃至図22に示す第2の実施の形態と略同一である。図23に示す第3の実施の形態において、図1乃至図16に示す第1の実施の形態または図19乃至図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0123】
本実施の形態においては、変調領域22の第1変調領域が、光を第1の振幅変調量で変調する第1振幅変調領域36aからなり、第2変調領域が、光を第2の振幅変調量25bで変調する第2振幅変調領域36bからなっている。これら第1振幅変調領域36aおよび第2振幅変調領域36bは、石英ガラスなどからなる光透過性の基材21a上に遮光性を有する光遮蔽層21bを設けることにより構成されている。図23に示すように、光遮蔽層21bを含む領域が第2振幅変調領域36bとなっており、光遮蔽層21bを含まない領域が第1振幅変調領域36aとなっている。
【0124】
第2振幅変調領域36bおよび第1振幅変調領域36aにおける複素振幅透過率分布T(x,y)は、点(x,y)が第2振幅変調領域36b内にある場合はT(x,y)=0、点(x,y)が第1振幅変調領域36a内にある場合はT(x,y)=1となる。従って、第2振幅変調領域36bに対応する領域を領域A、第1振幅変調領域36aに対応する領域を領域Bとする場合、被照射物18における複素振幅分布U(x,y)は以下の〔数12〕により表される。
【数12】

【0125】
(第1振幅変調領域の形状の設計手順)
本実施の形態においても、理想的な面積および配置を有する第1振幅変調領域36aに対応する理想矩形形状41が加工図面40上に配置される。なお本実施の形態において、「理想矩形形状」は、第1振幅変調領域36aが矩形状の形状を有するという前提のもとで、上述の〔数12〕に基づいて算出される面積および配置を有する第1振幅変調領域36aの形状を意味している。理想矩形形状41に基づいて加工図面40上に実形状46を生成し、そして実形状46に基づいて第1振幅変調領域36aを形成する方法は、上述の第1または第2の実施の形態の場合と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0126】
なお本実施の形態において、光遮蔽層21bを含む領域が第2振幅変調領域36bとなっており、光遮蔽層21bを含まない領域が第1振幅変調領域36aとなっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、光遮蔽層21bを含む領域が第1振幅変調領域36aとなっており、光遮蔽層21bを含まない領域が第2振幅変調領域36bとなっていてもよい。この場合、複素振幅透過率分布T(x,y)は、点(x,y)が第2振幅変調領域36b内にある場合はT(x,y)=1、点(x,y)が第1振幅変調領域36a内にある場合はT(x,y)=0となる。
【0127】
第4の実施の形態
次に、図24乃至図27を参照して、本発明の第4の実施の形態について説明する。図24乃至図27に示す第4の実施の形態において、第1位相変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなる長方形領域と、長方形領域の少なくとも1辺に形成された凸部領域と、長方形領域の少なくとも1辺に形成された凹部領域と、を有している。図24乃至図27に示す第4の実施の形態において、図1乃至図16に示す第1の実施の形態または図19乃至図22に示す第2の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。なお図24乃至図27は、それぞれ第1の実施の形態における図12乃至図15に対応する図となっている。
【0128】
(第1位相変調領域の形状の設計手順)
以下、本実施の形態における第1位相変調領域25aの形状の設計手順について説明する。はじめに、図24に示すように、理想的な面積および配置を有する第1位相変調領域25aに対応する理想矩形形状41が加工図面40上に配置される。次に図25に示すように、x方向グリッド線47およびy方向グリッド線48に沿って延びる長方形のうち理想矩形形状41の各辺に最も近接する辺からなる長方形を加工図面40上に生成する。本実施の形態において、このような長方形が近接長方形と称され、また符号63で表される。
【0129】
図25において、近接長方形63が二点鎖線にて表されている。近接長方形63は、x方向に延びる第1辺63aおよび第3辺63cと、y方向に延びる第2辺63bおよび第4辺63dとからなっている。
【0130】
本実施の形態においては、近接長方形63の辺のうち理想矩形形状41の内側に位置する辺においては、当該辺に凸部が配置される。一方、近接長方形63の辺のうち理想矩形形状41の外側に位置する辺においては、当該辺に凹部が配置される。以下、詳細について説明する。
【0131】
まず、理想矩形形状41の第1辺41aと近接長方形63の第1辺63aとの間に位置する第1中間領域42aの面積Mを、以下の[数13]に基づいて算出する。
【数13】

[数13]において、sが理想矩形形状41の第1辺41aの長さとなっており、uが第1辺41aと第1辺63aとの間の距離となっている。
【0132】
次に、図26に示すように、第1中間領域42aに対応する面積を有する第1凸部45aを近接長方形63の第1辺63aに配置する。第1凸部45aは、上述の第1の実施の形態における凸部と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0133】
次に、理想矩形形状41の第2辺41bと近接長方形63の第2辺63bとの間に位置する第2中間領域42bの面積Mを、以下の[数14]に基づいて算出する。
【数14】

[数14]において、tが近接長方形63の第2辺63bの長さとなっており、uが第2辺41bと第2辺63bとの間の距離となっている。
【0134】
次に、図26に示すように、第2中間領域42bに対応する面積を有する第2凹部55bを近接長方形63の第2辺63aに配置する。第2凹部55bは、上述の第2の実施の形態における凹部と同一であるので、詳細な説明は省略する。
【0135】
近接長方形63の第3辺63cおよび第4辺63dに関しても、上述の場合と同様にして、第3中間領域42cおよび第4中間領域42dに対応する面積を有する第3凸部45cおよび第4凹部55dが生成される。このようにして、図26に示されるように、近接長方形63と、第1凸部45a,第2凹部55b,第3凸部45cおよび第4凹部55dとからなる実形状46が加工図面40上に生成される。
【0136】
本実施の形態によれば、上述のように、理想矩形形状41と近接長方形63との間の面積の相違が、近接長方形63の各辺63a,63b,63c,63dに凸部または凹部を配置することにより調整される。このため、描画装置の加工分解能を過度に高くすること無く、理想矩形形状41の面積および重心と実形状46の面積および重心とを精度良く一致させることができる。また本実施の形態によれば、理想矩形形状41の形状に応じて、近接長方形63の各辺63a,63b,63c,63dに凸部が配置されるか凹部が配置されるかが適宜判断される。このため、より柔軟に実形状46の形状を調整することができる。
【0137】
図27は、本実施の形態により得られる変調マスク21の変調領域22の第1位相変調領域25aを拡大して示す図である。図27に示すように、第1位相変調領域25aは、実形状46の近接長方形63に対応する長方形領域26と、実形状46の凸部45a,45cに対応する凸部領域27と、実形状46の凹部55b,55dに対応する凹部領域28と、を有している。第1位相変調領域25aの輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びている。
【0138】
図24乃至図26に示される加工図面40から明らかなように、各凸部領域27の幅W,Wは、凸部領域27の高さHの自然数倍となっており、各凹部領域28の幅W,Wは、凹部領域28の深さDの自然数倍となっている。また、長方形領域26の各辺の長さL〜Lは、それぞれ凸部領域27の高さHの自然数倍または凹部領域28の深さDの自然数倍となっている。このような長方形領域26、凸部領域27および凹部領域28によって第1位相変調領域25aを構成することにより、変調マスク21の第1位相変調領域25aの形状を柔軟に調整することができる。これによって、変調マスク21における各第1位相変調領域25aの面積および配置を、設計データにおける各第1位相変調領域25aの面積および配置に精度良く一致させることができる。このことにより、所望の強度分布を有する光を得ることが可能となる。
【0139】
なお本実施の形態においても、上述の第3の実施の形態の場合と同様に、第1変調領域および第2変調領域が第1振幅変調領域36aおよび第2振幅変調領域36bからなっていてもよい。
【0140】
(変形例)
なお上記各実施の形態による実形状46において、凸部または凹部が長方形43,53,63の辺の中点に接するよう配置される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、理想矩形形状41の重心と実形状46との重心が略一致する限りにおいて、凸部または凹部が長方形43,53,63の辺の中点に接しない位置に設けられてもよい。
【0141】
また上記各実施の形態による実形状46において、中間領域の面積に対応する1個の凸部または凹部が長方形43,53,63の辺に配置される例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、例えば図28に示すように、理想矩形形状41の重心と実形状46との重心が略一致する限りにおいて、内側長方形43の第1辺43a,第3辺43cおよび第4辺43dにそれぞれ2個の第1凸部45a,第3凸部45c,第4凸部45dが配置されていてもよい。各辺の凸部が2個より多くなっていてもよい。同様に、図示はしないが、理想矩形形状41の重心と実形状46との重心が略一致する限りにおいて、長方形53,63の辺に2個以上の凸部または凹部が配置されていてもよい。
【0142】
また上記各実施の形態による実形状46において、変調マスク21を製造するために用いられる描画装置の加工分解能が、x方向およびy方向においてともにdとなっている例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、x方向における加工分解能とy方向における加工分解能とが異なる描画装置が用いられてもよい。この場合、図29に示すように、各x方向グリッド線47の間隔dと各y方向グリッド線48の間隔dとが異なっている。この場合、図29に示すように、y方向に突出する第1凸部45aの高さha1は、描画装置のy方向における加工分解能に対応している。そして第1凸部45aの幅wa1は、第1凸部45aの高さha1の自然数倍になっている。一方、x方向に突出する第4凸部45dの高さha2は、描画装置のx方向における加工分解能に対応している。そして第4凸部45dの幅wa2は、第4凸部45dの高さha2の自然数倍になっている。
【0143】
また上記各実施の形態において、光変調素子が、光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域とを備えた変調マスク21からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、複数種類の変調領域の形状および配置に応じて出力光の強度分布が決定される様々な光変調素子において、上記各実施の形態に表されている技術思想が用いられ得る。
【0144】
また上記各実施の形態において、変調マスク21を備えた光照射装置10が被照射物18を加工するために用いられる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、上記各実施の形態による変調マスク21を備えた光照射装置10は、様々な用途に用いられ得る。例えば、変調マスク21を備えた光照射装置10が、感光材料に対する露光や、材料改質などの用途において用いられてもよい。
【0145】
また上記各実施の形態において、理想矩形形状41が1個の矩形形状からなる例を示した。しかしながら、これに限られることはなく、図30に示すように、理想矩形形状41が、複数個の矩形形状を組み合わせることにより構成されていてもよい。この場合、図30に示すように複数の近接長方形63が配置され、そして近接長方形63の辺に凸部45および凹部55が配置される。このようにして、複数の近接長方形63と、凸部45および凹部55とからなる実形状46が構成され得る。
【符号の説明】
【0146】
10 光照射装置
11 マスク照明系
12 レーザ光源
13 照明光学系
17 結像光学系
18 被照射物
19 載置台
20 テーパ穴
21 変調マスク
21a 基材
22 変調領域
23 非変調領域
24e 変調単位領域
25a 第1位相変調領域
25b 第2位相変調領域
26 長方形領域
27 凸部領域
28 凹部領域
29 円周方向線
32 変調マスク傾斜部
33 変調マスク周縁部
34 変調マスク中央部
36a 第1振幅変調領域
36b 第2振幅変調領域
40 加工図面
41 理想矩形形状
41e 重心
42a〜42d 第1中間領域〜第4中間領域
43 内側長方形
45a〜45d 第1凸部〜第4凸部
46 実形状
46e 重心
47 x方向グリッド線
48 y方向グリッド線
53 内側長方形
55a〜55d 第1凹部〜第4凹部
63 近接長方形

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、
各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を備え、
各第1変調領域の輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びており、
各第1変調領域のうち少なくとも1つの第1変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに前記第1変調領域に包含される長方形領域と、前記長方形領域の少なくとも1辺に形成された凸部領域と、を有し、
前記凸部領域の幅は、前記凸部領域の高さの自然数倍となっており、
前記長方形領域の各辺の長さは、それぞれ前記凸部領域の高さの自然数倍となっていることを特徴とする光変調素子。
【請求項2】
前記凸部領域は、前記長方形領域の辺の中点近傍に配置されることを特徴とする請求項1に記載の光変調素子。
【請求項3】
前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置され、
前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記凸部の高さを前記結像光学系の結像面に換算することにより得られる寸法は、前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項1または2に記載の光変調素子。
【請求項4】
光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、
各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を備え、
各第1変調領域の輪郭線は、x方向またはx方向に直交するy方向のいずれかに延びており、
各第1変調領域のうち少なくとも1つの第1変調領域は、x方向またはy方向に延びる4辺からなるとともに前記第1変調領域を包含する長方形領域と、前記長方形領域の少なくとも1辺に形成された凹部領域と、を有し、
前記凹部領域の幅は、前記凹部領域の深さの自然数倍となっており、
前記長方形領域の各辺の長さは、それぞれ前記凹部領域の深さの自然数倍となっていることを特徴とする光変調素子。
【請求項5】
前記凹部領域は、前記長方形領域の辺の中点近傍に配置されることを特徴とする請求項4に記載の光変調素子。
【請求項6】
前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置され、
前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記凹部の深さを前記結像光学系の結像面に換算することにより得られる寸法は、前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも小さくなっていることを特徴とする請求項4または5に記載の光変調素子。
【請求項7】
前記光変調素子は、光を出射する光源と、光を結像して被照射物に照射する結像光学系と、の間に配置され、
前記結像光学系の点像分布範囲の半径Rを、光の中心波長λ、結像光学系の出射側の開口数NAを用いてR=0.61λ/NAと定義したとき、前記第1変調領域を前記結像光学系の結像面に換算した領域は、前記結像光学系の点像分布範囲の半径よりも少なくとも一方向に関して小さくなっていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項8】
前記第1変調領域は、第1の位相変調量を有する第1位相変調領域からなり、
前記第2変調領域は、第2の位相変調量を有する第2位相変調領域からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項9】
前記第1位相変調領域の第1の位相変調量と、前記第2位相変調領域の第2の位相変調量とが、互いに180度の奇数倍だけ異なっていることを特徴とする請求項8に記載の光変調素子。
【請求項10】
前記第1変調領域は、第1の振幅変調量を有する第1振幅変調領域からなり、
前記第2変調領域は、第2の振幅変調量を有する第2振幅変調領域からなることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の光変調素子。
【請求項11】
前記第1振幅変調領域または前記第2振幅変調領域のいずれか一方が、光を遮蔽する光遮蔽層を含むことを特徴とする請求項10に記載の光変調素子。
【請求項12】
光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を含む光変調素子の製造方法において、
加工されることにより前記第1変調領域および前記第2変調領域が形成される基材を準備する工程と、
前記第1変調領域が形成されるべき領域に対応する複数の実形状が示されている加工図面であって、前記基材を加工する際に参照される加工図面を準備する図面準備工程と、
所定の加工分解能を有する加工装置を用いて、前記加工図面に基づいて前記基材を加工する加工工程と、を備え、
前記加工図面は、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、x方向に延びる複数のx方向グリッド線と、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、前記x方向に直交するy方向に延びる複数のy方向グリッド線と、を含み、
前記加工図面の前記実形状は、その輪郭線が前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に重なるよう配置されており、
前記図面準備工程は、
形成される各第1変調領域の理想的な面積および配置を算出する工程と、
算出された理想的な面積を有する複数の理想矩形形状であって、前記x方向および前記y方向に沿って延びる矩形状の理想矩形形状を、算出された配置に従って前記加工図面上に配置する工程と、
各理想矩形形状に包含されるとともに前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に沿って延びる長方形を、前記加工図面上に生成する工程と、
前記長方形の各辺と前記理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、前記長方形の辺ごとに算出する工程と、
前記中間領域に対応する面積を有する凸部を前記長方形の対応する辺に配置し、これによって、前記長方形および前記凸部からなる前記実形状を生成する工程と、を有することを特徴とする光変調素子の製造方法。
【請求項13】
前記図面準備工程において、前記凸部は、前記理想矩形形状の重心と前記実形状との重心が略一致するよう前記長方形の辺に配置されることを特徴とする請求項12に記載の光変調素子の製造方法。
【請求項14】
光を第1の変調量で変調する複数の第1変調領域と、各第1変調領域間に配置され、光を第2の変調量で変調する第2変調領域と、を含む光変調素子の製造方法において、
加工されることにより前記第1変調領域および前記第2変調領域が形成される基材を準備する工程と、
前記第1変調領域が形成されるべき領域に対応する複数の実形状が示されている加工図面であって、前記基材を加工する際に参照される加工図面を準備する図面準備工程と、
所定の加工分解能を有する加工装置を用いて、前記加工図面に基づいて前記基材を加工する加工工程と、を備え、
前記加工図面は、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、x方向に延びる複数のx方向グリッド線と、前記加工分解能に対応する間隔で並べられ、前記x方向に直交するy方向に延びる複数のy方向グリッド線と、を含み、
前記加工図面の前記実形状は、その輪郭線が前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に重なるよう配置されており、
前記図面準備工程は、
形成される各第1変調領域の理想的な面積および配置を算出する工程と、
算出された前記理想的な面積に対応する面積を有する複数の理想矩形形状であって、前記x方向および前記y方向に沿って延びる矩形状の理想矩形形状を、算出された理想的な配置に従って前記加工図面上に配置する工程と、
各理想矩形形状を包含するとともに前記x方向グリッド線および前記y方向グリッド線に沿って延びる長方形を、前記加工図面上に生成する工程と、
前記長方形の各辺と前記理想矩形形状の各辺との間に位置する中間領域の面積を、前記長方形の辺ごとに算出する工程と、
前記中間領域に対応する面積を有する凹部を前記長方形の対応する辺に形成し、これによって、前記長方形に前記凹部を設けてなる前記実形状を生成する工程と、を有することを特徴とする光変調素子の製造方法。
【請求項15】
前記図面準備工程において、前記凹部は、前記理想矩形形状の重心と前記実形状との重心が略一致するよう前記長方形の辺に配置されることを特徴とする請求項14に記載の光変調素子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公開番号】特開2012−159659(P2012−159659A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−18769(P2011−18769)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】