説明

光学イメージング

本発明は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を使用して湿性加齢黄斑変性症(AMD)のイメージングを行う方法に関する。本発明はさらに、AMDの治療効果を監視するためのかかる方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を使用して湿性加齢黄斑変性症(AMD)のイメージングを行う方法に関する。本発明はさらに、AMDの治療効果を監視するためのかかる方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
加齢黄斑変性症(AMD)は、中心視力の進行性喪失を引き起こす網膜の退行変性疾患である。AMD発症のリスクは年齢と共に増加し、大抵は60代及び70代又はそれ以上の人々が罹患する。AMDは、65歳を超える患者では先進世界における法定失明原因の1位であり、45〜65歳では糖尿病性網膜症に次いで2位である。
【0003】
AMDによる中心視力の喪失は、黄斑部での光受容体の変性で引き起こされる。黄斑部は、微細な視覚的細部を知覚するために役立つ眼底及び網膜の中心部分であり、黄斑部は眼の最高光受容体密度を有している。眼底は眼の後方1/2〜1/3の部分であり、眼の残部と同じ3つの組織層(即ち、(前方から後方に向かって)網膜、脈絡膜及び強膜)を含んでいる。光受容体細胞として知られる網膜中の光感知細胞は、光を電気インパルスに変換し、次いで視神経を介してこれらのインパルスを脳に伝達する。
【0004】
本文全体を通じて以下の略語が使用される。
AMD 加齢黄斑変性症
CCD 電荷結合素子
CNV 脈絡膜血管新生
ICG インドシアニングリーン
NIR 近赤外
PDT 光力学的療法
RGD アルギニン−グリシン−アスパラギン酸
RPE 網膜色素上皮
SLO 走査レーザー検眼鏡検査
VEGF 血管内皮増殖因子
2つの型のAMD、即ち乾性及び湿性が存在する。乾性AMDは、萎縮性、非滲出性又はドルーゼノイド黄斑変性ともいわれる。乾性AMDでは、網膜廃棄物の蓄積の結果として、ドルーゼンといわれる黄白色の沈着物が網膜色素上皮(RPE)とブルーフ膜との間に蓄積する。ドルーゼン沈着物は白色光又は蛍光眼底イメージングで見ることができ、診断のために造影剤は不要である。ドルーゼン沈着物は、RPEで適正に取り扱われない、光受容体細胞からの廃棄産物からなる。RPE細胞は、通常は「門番」として作用し、ブルーフ膜を通して光受容体に栄養素を供給すると共に光受容体から廃棄産物を除去する。黄斑部の内部及び外部で生じるドルーゼン沈着物は、光受容体の正常な機能及び維持を妨げ、これらの細胞の進行変性を引き起こすと考えられる。しかし、ドルーゼン沈着物は視力喪失なしに多年にわたり網膜中に存在することもある。乾性AMDに原因する視力喪失は、長い年月の経過中に極めて徐々に起こる。
【0005】
湿性AMDは脈絡膜血管新生(CNV)及び新血管膜の存在で特徴づけられるが、これはCNVに加えて網膜下血管新生、滲出性変性又は円板状変性ともいわれる。湿性AMDでは、異常な新血管が脈絡膜から生じ、ブルーフ膜を貫通する。これらの新血管又は「新生」血管がRPEの後方に位置する場合には、いわゆるI型又は「潜在型」のAMDが形成される。新血管がRPEの前方に位置する場合には、いわゆるII型又は「古典型」のAMDが形成される。I型及びII型の組合せも生じる。これらの新血管及び増殖性RPE応答が「新血管膜」を形成し、これが血液及び体液を網膜下細胞中に漏出させる。新血管膜が漏出を起こす理由は、新生血管の内皮ライニング間の開口が正常血管より広く、高分子物質(血漿及び血液)の溢出を許す。新血管形成過程並びに血液及び体液の漏出は、光受容体細胞を傷つけ、さらに光受容体のRPE支持を損なう。フルオレセイン及びインドシアニングリーン(ICG)を用いる現行のAMD診断方法は、新生血管の漏出性に依存し、したがってこの形態学的/構造的異常に原因する蛍光の病巣蓄積に依存している。そのため、今日のAMD診断は、十分な新生血管膜が形成された比較的進んだ段階のAMDについてのみ可能である。今日利用できる診断薬での診断時期が比較的遅いため、湿性AMDは急速に進行する傾向があり、著しい視力障害を生じる最高度のリスクを伴う。大部分の湿性AMD患者では、特にAMDの初期段階において潜在病変が存在している。
【0006】
AMDの病理学に関する上記の知識にもかかわらず、CNVの多くの側面及び機構は十分に理解されていない。
【0007】
米国では、今日、約1500万人のAMD患者がいるが、90%が乾性型を有しており、10%が湿性型を有している。将来、米国では毎年200万人の新患者が生じると推定されている。
【0008】
一般に、新血管は2つの異なる機構、即ち脈管形成(vasculogenesis)又は血管新生(angiogenesis)で形成され得る。血管新生は既存の血管からの分枝による新血管の形成であり、胚発生及び健常状態での正常な現象として起こると共に、各種疾患過程の一部として起こる。このような過程をもたらす主な刺激は、組織中の細胞への栄養素及び酸素の不十分な供給(低酸素症)であり得る。細胞は多くの血管新生促進因子を分泌することで応答し得るが、しばしば言及されるその一例は血管内皮増殖因子(VEGF)である。これらの因子は、基底膜のタンパク質を分解するタンパク分解酵素並びにこれらの場合によっては有害な酵素の作用を制限する阻害物質の分泌を開始させる。血管新生促進因子の他の顕著な効果は、内皮細胞の移動及び分裂を引き起こすことである。基底膜に付着した内皮細胞は有糸分裂を受けない。付着の喪失及び血管新生促進因子に対するレセプターからの信号の総合効果は、内皮細胞の移動、増殖及び再配列を引き起こし、最終的に新血管の周囲に基底膜を合成することである。
【0009】
血管新生には、内皮細胞及び周囲の組織に特有のレセプターが関与する。これらの血管新生レセプターには、VEGFのような増殖因子レセプター及びインテグリンレセプターがある。免疫組織化学的研究によれば、各種のインテグリン(おそらく最も重要なのはαクラス)が血管の先端表面に発現され[Conforti,G.,et al.(1992)Blood,80:37−446]、循環リガンドによる標的化のために利用できる[Pasqualini,R.,et al.(1997)Nature Biotechnology 15:542−546]ことが実証された。
【0010】
インテグリンαvβ3及びαvβ5は、血管新生に関連することが知られているレセプターである。αvβ3インテグリンレセプターのアンタゴニストとリガンドとの相互作用がアポトーシスを誘起して血管増殖を抑制するので、刺激された内皮細胞はこれらのレセプターに頼って血管新生過程の臨界期に生き残るように思われる。
【0011】
インテグリンは、α及びβサブユニットが細胞膜の脂質二重層を貫通しているヘテロ二量体分子である。αサブユニットはその細胞外連鎖上に4つのCa2+結合ドメインを有し、βサブユニットは若干の細胞外富システインドメインを有している。
【0012】
細胞接着に関与する多くのリガンド(例えば、フィブロネクチン)は、トリペプチド配列アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)を含んでいる。RGD配列は、この配列を有するリガンドと細胞表面上のレセプターとの間の一次認識部位として作用するように思われる。一般に、リガンドとレセプターとの二次相互作用が相互作用の特異性を高めると考えられる。これらの二次相互作用は、リガンド及びレセプターのうちでRGD配列にすぐ隣接した部分の間又はRGD配列から遠く離れた部位で起こり得る。
【0013】
RGDペプチドは一定範囲のインテグリンレセプターに結合することが知られており、臨床環境で意義のある応用性をもった若干の細胞現象を調整し得る可能性を有する。おそらく、RGDペプチド及びその模倣体の最も広く研究されている効果は、血小板インテグリンGpIIbIIIaを標的とする抗血栓薬としての使用に関するものである。
【0014】
RGD含有ペプチド系造影剤の例は、国際公開第01/77145号、同第02/26776号及び同第03/006491号中に見出される。
【0015】
場合によっては、湿性AMDが早期に診断されれば、レーザー手術(光凝固術)で大規模な中心視力喪失を防止できる。この種の手術では、レーザービームが新血管膜の漏出性血管を焼灼する。レーザー手術が有効であるためには、大規模な視力喪失が起こる前に湿性AMDを診断することが重要である。
【0016】
湿性AMDに対する別の治療法は、光力学的療法(PDT)である。PDTは、レーザー治療と組み合わせて感光性薬物(例えば、Visudyne(商標)、リポソームBPD−MAベルテポルフィン)を使用する。静脈内投与した場合、感光性薬物は不活性であり、望まない新血管膜中に蓄積する。所定量の低エネルギーレーザー光を標的CNV組織に当てると、それは血管内に含まれる薬物を活性化する。感光性薬物と併用した場合、レーザー光は標的組織中に反応性の高い形態の酸素を生み出し、それが不必要な血管の閉鎖を引き起こす。PDT療法は極めて選択的であると共に、低レベルの非熱レーザーエネルギーを用いるこで周囲の網膜組織への損傷を最小限に抑える。操作手順全体は約30分で完了でき、外来ベースで実施される。通例、新血管は数週間又は数ヶ月間にわたって閉鎖状態に保たれるが、その後には再治療が必要なこともある。したがって、湿性AMDの診断方法及び該疾患の治療の監視方法に対するニーズが存在している。
【0017】
既存の湿性AMD検出方法は、フルオレセイン及び/又はICGの静脈内投与中に眼底カメラを用いて行う血管造影法である。両薬剤に関する診断原理は、新生血管からの漏出を引き起こす血管の形態学的/構造的変化の検出であり、ボーラス通過及び全身分布後の十分な組織濃度を得るための比較的高い投与量が要求される。静脈内投与後における短い動脈及び静脈ボーラス期の後、フルオレセインは比較的急速に細胞外体液空間に溢出して分布する。したがって、フルオレセインの投与から20〜30秒後には、脈絡膜血管系からの拡散性で支配的な蛍光信号が(解剖学的分解能なしに)認められる。かくして、新生血管は「過剰な」新血管膜によって識別され、局所的に増加した蛍光として存在する。古典型AMDでのフルオレセインの漏出は(RPEの前方に位置するので)診断が容易であり、過剰な蛍光及び均一な漏出を有する境界のはっきりした領域を示す。その名前で表されるように、潜在型AMDはフルオレセインによる診断が難しい。これは、RPEが励起光及び放出光の両方に対する極めて有効な光学バリヤーとして作用するからである。したがって、場合によっては初期に不規則な蛍光(「スティップリング」)及び後期に不均一な漏出が認められるものの、フルオレセインの使用は潜在型AMDに関しては信頼できない。フルオレセイン血管造影図の解析は、動静脈通過時間及び平均染料速度のような血流力学的情報を与えることができる。米国特許第6599891号は、フルオレセイン血管造影法を用いるPDT方法及びイメージング方法を開示する多くの例の1つである。
【0018】
ICGはアルブミンに極めて強く結合し、したがって多少とも血液プールトレーサーのような挙動を示す。ICGの最大励起及び発光波長はそれぞれ806nm及び830nmであり、RPEによる光の吸収が比較的少ない。RPEの光吸収は波長に依存し、近赤外域で最小となる。したがって、ICGは潜在型AMDの場合に重要な脈絡膜組織及びRPE層の後方の組織からの血管造影詳細情報を与える。しかし、フルオレセインの場合と同じく、血管の形態学的/構造的変化及び受動的な漏出がICGに関する診断原理であり、したがってICGの使用ではかなり進行した病巣新血管膜しか診断できない。米国特許出願公開第2004/0156782号は、ICGを用いてCNVの血管造影画像を得るための方法を開示している。
【0019】
フルオレセイン血管造影法もICG血管造影法も、実質的な量の新血管膜が形成されて視覚障害が始まる前の初期湿性AMDの検出方法を提供しない。
【0020】
国際公開第2004/034889号は、脈絡膜新血管系に関連する栄養補給血管の光力学的処置のための方法、装置及びシステムを開示しており、またかかる栄養補給血管の検出の必要性を記載している。この治療方法は、標的眼組織の特異的な表面成分に結合する結合リガンドに連結し得る光増感剤の使用を含んでいる。栄養補給血管を検出するためには、通常のフルオレセイン血管造影法及びICG血管造影法の使用が示唆されている。
【0021】
AMD用、特に湿性AMD及び潜在型脈絡膜血管新生用のさらに特異的な非侵襲的イメージング技術を開発することが臨床上から要望されている。既存の技術は背後にある病理学的変化を診断せず、新血管膜の形成及び量がかなり進行した場合に漏出性の新生血管によって形態学的/構造的変化を確認するのみである。湿性AMDの予後が比較的不良であるのは、特に現在利用できる方法で得られる診断が比較的遅いことに原因するから、小さくて初期の病変、好ましくは背後にある病理学的変化の性質を診断する能力をもった新しいイメージング方法は、初期段階でのAMDの発症を診断し監視する上で臨床的に有益であろう。かかるイメージング方法はまた、新しい抗血管新生療法を評価する上で中心的な役割を演じるであろう。
【特許文献1】国際公開第01/77145号パンフレット
【特許文献2】国際公開第02/26776号パンフレット
【特許文献3】国際公開第03/006491号パンフレット
【特許文献4】米国特許第6599891号明細書
【特許文献5】米国特許出願公開第2004/0156782号明細書
【特許文献6】国際公開第2004/034889号パンフレット
【非特許文献1】Conforti,G.,et al.(1992)Blood,80:37−446.
【非特許文献2】Pasqualini,R.,et al.(1997)Nature Biotechnology 15:542−546.
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0022】
本発明は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を使用して湿性AMDのイメージングを行う方法を提供する。新生血管膜形成の病理学的基礎である血管新生の検出は、既に確立されている病理学の間接的徴候(例えば、漏出)よりも早期の湿性AMD診断指標であることが判明している。インビボで血管新生及び湿性AMDに関連するレセプターの効率的な標的化及びイメージングを行うためには、化学的に頑強で安定な選択的で高親和性のベクターが要求される。上述のような造影剤の使用は、血管新生に特異的に関係する初期病理学的発症についての細胞レセプター情報を提供するので、従来の血管造影法に比べて高い価値を有することが判明している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
第一の態様に従えば、本発明は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を使用してヒト又は動物の身体の湿性AMDのイメージングを行う方法を提供する。
【0024】
本方法は、好ましくは、ヒト又は動物の身体に造影剤を投与し、眼又は眼の一部に光を照射し、前記造影剤が分布した眼又は眼の一部の画像を形成することを含む光学イメージングにより、ヒト又は動物の身体の眼又は眼の一部の画像を形成することを含んでなる。照射して画像を形成するための眼の好ましい部分は眼底である。かかるイメージング方法は、人間及び動物並びに(例えば、臨床前研究で使用されるような)動物モデルにおける湿性AMDの検出及び/又は診断に使用できる。
【0025】
造影剤は、好ましくは静脈内注射でヒト又は動物の身体の血管系に投与される。投与量は、フルオレセイン及びインドシアニングリーン血管造影法のために使用する投与量より少ないと予想される。典型的な投与量は、好ましくは1〜100nmol/kgである。
【0026】
前記方法は、好ましくは、細胞レセプター(好ましくは内皮細胞レセプター、特にインテグリンレセプターαvβ3及び/又はαvβ5)による前記造影剤の蓄積を検出することを含んでいる。蓄積とは、造影剤が血管新生に関連するレセプターに結合し、それと会合し、又はそれに取り込まれることを意味する。
【0027】
湿性AMDの画像を形成するためには、好ましくは400〜1300nm、さらに好ましくは600〜800nmの波長を有する光を眼又は眼の一部に照射する。放出される蛍光の検出で蛍光画像が形成される。したがって、画像の形成はデータの収集を含む検査段階を構成する。造影剤は、好ましくは、ある波長範囲内の光を吸収してそれより長い波長範囲で蛍光を放出する高蛍光性物質である。簡便には、フィルターを用いて発光が励起光から分離され、放出される光の画像が形成される。
【0028】
さらに別の実施形態では、本方法は、光学イメージングという用語の範囲内に含まれる、紫外線から近赤外線までの電磁スペクトル中の光との相互作用に基づいて画像を形成する光学イメージング技術の使用を含む。本方法で使用するための若干の造影剤は、スペクトルの可視域内で発光し、その場合には画像を形成するために通常の検眼装置が使用できる。一層敏感なタイプの眼底カメラであって定量的な血管造影法を可能にする共焦点走査レーザー検眼鏡(SLO)を用いて蛍光画像を記録することもできる。さらに、インビボ共焦点顕微鏡検査も適用できる。最近開発された時間ドメイン及び周波数ドメインイメージング技術も使用でき、これはレポーターの追加特性(例えば、寿命)を利用するものである。好ましくは、造影剤投与後の蛍光の連続写真を捕える特殊眼底カメラが使用される。さらに好ましくは、パルス光源と共に適合した1対のエキサイターフィルター及びバリヤーフィルターを備え、好ましくは毎秒1フレームでの捕獲速度を可能にする鋭敏な光検出装置(カメラ)を備えた特殊眼底カメラが使用される。透過曲線のクロスオーバーを最小にしながらピーク波長の最大透過を可能にするため、狭帯域干渉フィルターを含めることが好ましい。バリヤーフィルターは励起光を効果的に遮断するが、放出される蛍光の固有色は遮断しない。血管造影法用に装備された眼底カメラは、好ましくは、検査の各フレーム上に血管造影連続写真を記録するタイマーを有している。鋭敏な電荷結合素子(CCD)及びディジタルイメージング用の計算機システムにより、画像は電子的に捕えられる。
【0029】
形成される蛍光系列の連続撮影は、最大の診断情報を得るために好ましい。好ましい実施形態では、造影剤の投与前に、カラー眼底写真及び励起光でのモノクロ画像が基線図として撮影される。問題領域の最適評価のためには、様々な時点で画像を撮影することが好ましい。画像形成の初期段階は網膜及び脈絡膜循環のインビボ検査を容易にする一方、画像形成の後期段階は造影剤蓄積の可視化をもたらす。後期段階又は排出段階は、網膜及び脈絡膜の血管系からの造影剤の漸進的な排出を実証する。後期高度蛍光領域の着色は、画像化すべき異常の存在を示唆する。
【0030】
本方法は、ヒト又は動物の身体の眼における血管新生の画像を形成することによる湿性AMDの検出及び/又は診断を含んでいる。好ましくは、本方法は、湿性AMDの検出又は診断のためにヒト又は動物の身体の眼又は眼の一部における血管新生レベルを評価することを含む。形成された新血管(例えば、脈絡膜中の新血管及びブルーフ膜を貫通した新血管)の量又は存在は、本方法の使用で検出される。網膜色素上皮(RPE)の前方に位置する新血管(即ち、古典型AMD)及びRPEの後方に位置する新血管(即ち、潜在型AMD)の両方が検出できる。本発明に係る方法を潜在型CNV(即ち、潜在型AMD)の検出又は診断のために使用することは好ましい実施形態である。
【0031】
さらに、本発明の方法を使用することで、病理学的過程に関連する分子レベルの情報を得ることができる。好ましい実施形態では、本イメージング方法は血管新生に特異的に関係する初期病理学的発症についての細胞レセプター情報を提供する。
【0032】
本発明の方法は、小さな病変の検出を可能にすると共に、実質的な量の新血管膜が形成されて視覚障害が始まる前に、疾患の初期における湿性AMDの検出を可能にする。
【0033】
一実施形態では、本発明の方法は疾患進展の追跡調査又は疾患治療の追跡調査を包含する。かくして、本発明は、湿性AMDを処置するための薬物によるヒト又は動物の身体の治療効果を監視する方法、例えば血管新生抑制剤に対する治療応答を監視する方法を提供する。投与及び検出は、好ましくは、例えば前記薬物による処置前、処置中及び処置後に繰り返して行われる。好ましい実施形態では、イメージング方法は光力学的治療と組み合わせて使用される。本方法は、AMD用として可能性のある薬物の治療効果に関する代理終点として初期の非侵襲的イメージングツールを利用することを可能にし、後には臨床治験計画に際して関連する利益をもたらす。
【0034】
本発明はさらに下記の態様を含むが、これらはいずれも第一の態様に関して開示したものと同じ実施形態を包含している。
【0035】
本発明の好ましい態様は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる、湿性AMDの光学イメージングで使用するための造影剤である。かかる使用は、人間及び動物並びに動物モデルにおける湿性AMDの検出又は診断を含み得ると共に、製薬学的研究の範囲内における新薬の治療効果の監視も可能にする。
【0036】
さらに別の態様に従えば、本発明は、湿性AMDのイメージングで使用するためのコントラスト増強組成物の製造のための、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤の使用を提供する。かかるイメージングは、好ましくは、前記コントラスト増強組成物をヒト又は動物の身体に投与し、光学イメージングでヒト又は動物の身体の眼又は眼の一部の画像を形成することを含む。
【0037】
さらに別の態様に従えば、本発明は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を予め投与しておいたヒト又は動物の身体の眼の湿性AMDの画像を光学イメージングによって形成する方法を提供する。
【0038】
本発明はまた、光学イメージング用レポーター又はその塩に結合したベクターからなる造影剤の有効量(例えば、インビボイメージングでの画像コントラストを増強するのに有効な量)を1種以上の薬剤学的に許容し得る佐剤、賦形剤又は希釈剤と共に含んでなるコントラスト増強組成物を使用して湿性AMDのイメージングを行う方法及び使用も提供する。ベクターは、血管新生に関連するレセプターに親和性を有する。
【0039】
本発明の方法で使用する造影剤又はその生理学的に許容し得る塩は、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを1種以上の光学イメージング用レポーターに結合したものからなる。かかる造影剤は、血管内皮増殖因子(VEGF)レセプター(VEGFR−1/Flt−1、VEGFR−2/Flk−1/KDR、VEGFR−3/Flt−4のサブタイプが存在する)、胎盤増殖因子レセプター及び線維芽細胞増殖因子レセプター、血小板由来内皮細胞増殖因子、アンジオポエチン並びにインテグリンからなる群から選択されるレセプターに親和性を有する。上記のレセプタークラスのいずれかに親和性を有する関連ベクターは、光学イメージング用レポーターに結合した場合、本発明に関して有用であると考えられる。インテグリンに対して親和性を有するベクターを含む造影剤が好ましい。「結合」という用語は、レポーターとベクターとが化学結合によって直接に又はリンカーを介して互いに結合又は連結されていることを意味する。
【0040】
好ましくは、造影剤のベクターはインテグリンレセプターαvβ3及び/又はαvβ5に対して親和性を有する。ベクターは好ましくはペプチドベクターであり、アミノ酸配列X−G−Dを含む。その結果、造影剤は、前記ペプチドベクターを好ましくは共有結合で光イメージング用レポーターに連結したものからなることが好ましい。Xはアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体を表し、Gはグリシンを表し、Dはアスパラギン酸を表す。ペプチドベクターは、αvβ3レセプターのようなインテグリンレセプターに親和性を有する。造影剤は、好ましくは追加のアミノ酸及び任意には他の部分を含むが、X−G−D配列は、血管新生及びAMDに関連するインテグリン型レセプターへのベクター結合部位として機能するペプチドベクターの結合座である。
【0041】
血管新生過程を抑制することが証明され、本発明の造影剤用のベクターとして十分な特異性を有すると見なされる他の関連ベクターには、アンジオスタチン、エンドスタチン、バソスタチン、並びに血小板第4因子及び抗トロンビンIIIの開裂生成物のようなペプチドがある。
【0042】
また、RGD(アルギニン−グリシン−アスパラギン酸)トリペプチド配列の小分子非ペプチド模倣体、好ましくはイソキサゾリン、インダゾール、2−ベンズアゼピンRGD模倣体及び非ペプチドアザカルバ誘導体から導かれるベクターも有用と考えられる。その他の関連ベクターは国際公開第98/47541号に開示されている。
【0043】
RGDの小分子非ペプチド模倣体から導かれるかかるベクターの例を下記に示す。
【0044】
アザカルバ:
【0045】
【化1】

キナロン:
【0046】
【化2】

インダゾール:
【0047】
【化3】

式中、Lは、好ましくは正又は負の電荷を有する1種以上のアミノ酸(例えば、リシン又はシステイン酸)のようなリンカーであるか、或いは複数のエチレングリコール単位からなるスペーサーであるか、或いは共有結合であり、Zは光学イメージング用レポーターである。
【0048】
以下、光学イメージング用レポーターは文字Zで表される。Zは好ましくは蛍光染料である。レポーターは一定の波長で蛍光を生じると共に、大規模な共役電子系を有する。可視及び近赤外(NIR)スペクトル中に放射を生じるレポーターが好ましく、NIR発光レポーターが最も好ましい。光学イメージング用レポーターは、好ましくはRPEの光吸収による影響をほとんど受けない。レポーターZは、好ましくは、シアニン類、メロシアニン類、インドシアニン類、フタロシアニン類、ナフタロシアニン類、トリフェニルメチン類、ポルフィリン類、ピリリウム染料、チアピリリウム染料、スクアリリウム染料、クロコニウム染料、アズレニウム染料、インドアニリン類、ベンゾフェノキサジニウム染料、ベンゾチアフェノチアジニウム染料、アントラキノン類、ナフトキノン類、インダスレン類、フタロイルアクリドン類、トリスフェノキノン類、アゾ染料、分子内及び分子間電荷移動染料及び染料錯体、トロポン類、テトラジン類、ビス(ジチオレン)錯体、ビス(ベンゼンジチオレート)錯体、ヨードアニリン染料並びにビス(S,O−ジチオレン)錯体からなる群から選択される。さらに好ましくは、Zはフルオレセイン又はフルオレセイン誘導体或いはシアニン染料であり、最も好ましくは、Zはシアニン染料である。別のレポーター群は量子ドットである。
【0049】
シアニン染料(CyDye(商標))は、単結合及び多重(好ましくは二重)炭素−炭素結合で交互に結合された奇数の炭素原子を含むと共に、両端にアミノ基を有していてその一方が第四級化されているポリエン連鎖で定義される化合物である。シアニン及び類似のアリール−リンカー−アリール発色団は、任意にはペンダント置換基又は縮合環置換基を有する。シアニン染料及びその合成に関する一般的記載は、米国特許第6048982号及び同第5268486号(その開示内容は援用によって本明細書の内容の一部をなす)中に見出される。シアニン染料は、広範囲の分光特性及び構造変化が利用できるので特に有用である。一定範囲のシアニン染料が公知であって試験されているが、これらは低い毒性を有し、商業的に入手できる(GE Healthcare社(旧Amersham Biosciences社))。シアニン染料は、良好な水溶性を有する単一の高強度染料群である。これらは、pH3〜10の範囲でpH不感性を有し、低い非特異的結合を示し、フルオレセインより高い光安定性を有する。
【0050】
シアニン染料は、好ましくは、下記の一般式で示されるカルバシアニン類、オキサシアニン類、チアシアニン類及びアザシアニン類からなる群から選択される。
【0051】
【化4】

これらの構造中では、R1基は同一の又は異なる基であって、置換又は非置換アルキル基(好ましくはC1〜C6アルキル)であり、エーテル基又は−N−CO−N−基を含み得る。アルキル基は、任意にはカルボキシ基、スルホン酸基、アミン基、アンモニウム基又はエステル基で置換される。R1基は、例えば−N−CO−N−基又はエーテル基により、ポリエン連鎖の炭素原子のいずれかと架橋を形成し得る。R2基も同一の又は異なる基であって、置換又は非置換アルキル基である。アルキル基は任意にはカルボキシ基又はスルホン酸基で置換されるが、好ましくは、R2基はC1〜C6アルキルのような低級アルキル基であり、最も好ましくはメチル基である。任意の芳香族基は点線で示されていて、縮合ベンゾ環及び縮合ナフト環を含む構造の両方を包括している。これらの環は置換又は非置換のものである。これらの環は、スルホン酸基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、アルキル(スルホアルキル)アミノ基、ビス(スルホアルキル)アミノ基、スルホアルコキシ基、スルホアルキルスルホニル基、アルキル基又は置換アルキル基、或いはスルホアルキルアミノ基で置換され得る。アルキル基は、好ましくは(例えば炭素原子数1〜6の)低級アルキルである。Yは水素、ハライド基、アミン基又はスルホニル基から選択され、好ましくは水素である。シアニン染料のポリエン連鎖も、例えば、(スクアレイン染料の場合のように)連鎖中の2つの炭素原子間に−CO−基を含むことで、或いはアルキル架橋を含むことで、ポリエン連鎖中の2以上の炭素原子間に架橋を形成する1以上の環状化学基を含み得る。これらの架橋は、染料の化学的安定性及び光安定性を高めるために役立ち得る。
【0052】
式I〜IV中で、Iは1、2、3又は4の正整数であって、トリメチン、ペンタメチン、ヘプタメチン又はノナメチンシアニン染料を与える。好ましくは、シアニン染料はそれぞれ炭素原子数5〜7の炭素架橋を有するペンタメチン又はヘプタメチン染料である。
【0053】
式I〜IVについていえば、好ましい染料では、インドール環又はベンゾインドール環に結合したスルホン酸部分の数は全体として2、1又は0である。少ない数のスルホン酸部分を有する染料は、RGDペプチドのようなペプチドに結合した場合、低い血漿結合性及びバックグラウンド組織に対する非特異的結合の減少を示す。
【0054】
好ましい染料は、カルバシアニン類の群から選択される。なお一層好ましいのは、インドール型のカルバシアニン染料である。この種の好ましい染料は下記の式Vで例示される。
【0055】
【化5】

式中、Xはスルホン酸部分であるか、或いは存在しない。R1基は同一の又は異なる基であって、置換又は非置換低級アルキル基(例えば、任意に置換されるC1〜C6アルキル基)である。アルキル基は、例えば、カルボキシ基、スルホン酸基、アミン基、アンモニウム基又は(複素環式エステル基(例えば、NHSエステル基)のような)エステル基で置換される。R2基は、例えばカルボキシ基又はスルホン酸基で任意に置換される低級アルキル基(例えばC1〜C6アルキル基、好ましくはメチル基)である。Iは1〜3の整数である。
【0056】
R1基、R2基及びX基は、シアニン染料をベクターに結合するための可能な結合部位であり、R1基及びX基が好ましい結合部位である。好ましい態様では、一方のR1基がベクターに結合されるのに対し、他方のR1基は遊離低級アルキル基である。
【0057】
本発明の方法で使用するための造影剤を製造するために最も好ましい染料は、下記に示すCy5モノNHSエステルビスSO及びCY7モノNHSエステルビスSOであり、いずれもベクターと反応し得るN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステルで置換されたアルキル基からなるR1基を含んでいる。
【0058】
【化6】

好適なシアニン染料は、好ましくは500〜900nmの範囲内、さらに好ましくは650〜850nmの範囲内の可視又は近赤外域に発光スペクトルを有する。
【0059】
別法として、レポーターZはフルオレセイン染料(即ち、フルオレセイン又はフルオレセイン誘導体)からなる。フルオレセインは、可視光中で発光する黄色染料である。フルオレセインは、通例はアルゴンレーザーの488nm線で励起され、発光は530nmで捕集される。フルオレセイン及びその誘導体は、比較的高い吸光率、優れた蛍光量子収量及び良好な水溶性を有する。従来の広汎な使用の結果、これらは極めてよく特性決定されており、入手可能性も非常によく、しかも低コストである。
【0060】
下記の式(VI)はフルオレセインを示していて、炭素原子の様々な位置に番号が付けられている。
【0061】
【化7】

フルオレセインの好適な誘導体は、例えば、下記の式VIIで示される5−カルボキシフルオレセイン及び6−カルボキシフルオレセインである。
【0062】
【化8】

別の好適なフルオレセイン誘導体は、下記の式VIIIのフルオレセインイソチオシアネートである。
【0063】
【化9】

さらに好ましいのは、本発明の方法で使用するための造影剤の製造に際し、下記の式IXで示されるN−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル(フルオレセインNHSエステルという)のようなフルオレセインの活性化カルボキシレート誘導体を使用することである。スクシンイミドエステルは、アミド生成物が非常に安定であるので優れた反応剤である。
【0064】
【化10】

好ましくは、フルオレセインは、ベクターの適当なアミノ基とのアミド結合形成でベクターに連結される。式(IX)のNHSエステルのようなフルオレセインの活性エステルは商業的に入手可能であり(例えば、Pierce Catalogue製品番号46100)、造影剤を合成する場合に特に有用であると考えられる。フルオレセインの好ましい結合部位は5位及び6位である。
【0065】
ベクターがアミノ酸配列X−G−Dを含むペプチドベクターである好ましい態様に関しては、造影剤は、例えばペプチドベクター部分中に1以上の環化架橋を形成することで拘束できる。アミノ酸間にジスルフィド結合又はチオエーテル結合を形成することで単環式ペプチド造影剤が得られる。1つの環化架橋を含むペプチド系造影剤は、αvβ3に対する特異性が高く、線状ペプチドより好ましい。本発明の造影剤は、好ましくは、造影剤の異なるアミノ酸間に2つの環化架橋を含むベクターを有する。「環化架橋」という用語は、アミノ酸又はアミノ酸及び−(CH)−又は−(CH)−C−基と、架橋の導入を可能にする官能基との任意の組合せをいう。nは1〜10の正整数を表す。若干の好ましい例は、ジスルフィド、−(CH)−カルバ架橋のようなジスルフィド模倣体、チオアセタール架橋、チオエーテル架橋(シスタチオン又はランチオニン)、及びエステルやエーテルを含む架橋である。好ましくは、1つの架橋はジスルフィド結合を形成し、第二の架橋はチオエーテル(スルフィド)結合からなる。ペプチドの合成及び環化架橋の導入は、国際公開第01/77145号及び同第02/26776号に記載されているようにして実施できる。
【0066】
さらに別の実施形態では、本方法は下記の式(Xa)で定義される造影剤の使用を含む。
A−Z
(Xa)
式中、Aは下記の式(Xb)で定義され、Zは任意にはスペーサー基を介してAのX、X又はXの1以上に結合した1以上の光学イメージング用レポーターを表す。かかる造影剤は、さらに2つの環化架橋を含む。
−C(=O)−X−X−X−G−D−X−X−X−X
(Xb)
式中、X、G及びDは前記に定義した通りである。
【0067】
は、X、X又はXに結合する架橋の一部をなす−(CH)−又は−(CH)−C−基(式中、nは1〜10の正整数を表す。)を表す。
【0068】
は結合或いは1、2、3、4又は5のアミノ酸残基を表していて、1つのアミノ酸残基はスペーサー部分で任意に官能化されており、好ましくは前記アミノ酸残基は酸基又はアミン基のような官能性側鎖を有し、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ホモリシン、ジアミノアルシル酸及びジアミノプロピオン酸から選択される。
【0069】
及びXは独立に、ジスルフィド又はチオエーテル結合を形成するシステイン又はホモシステイン残基のような環化架橋を形成し得るアミノ酸残基、或いは環化架橋を形成し得る他のアミノ酸残基(例えば、アスパラギン酸及びリシン)を表す。好ましくはX及びXはシステイン又はホモシステインの残基を表し、好ましくはX及びXは両者間に或いはR又はXと共に環化架橋を形成する。
【0070】
は疎水性アミノ酸又はその誘導体を表し、好ましくはチロシン、フェニルアラニン、3−ヨードチロシン又はナフチルアラニン残基、さらに好ましくはフェニルアラニン又は3−ヨードチロシンを表す。
【0071】
は、環化架橋を形成し得るアミノ酸残基、好ましくはチオール含有アミノ酸残基(好ましくはシステイン又はホモシステイン)を表し、好ましくはXはR、X又はXと共に環化架橋を形成する。
【0072】
はスペーサー又はバイオモディファイアー部分を表すか、或いは存在しない。好ましくは、Xは単分散ポリエチレングリコール(PEG)構成ブロックからなり、前記構成ブロックの1〜10単位を含む。前記バイオモディファイアーは、前記造影剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整する機能を有する。加えてXは、好ましくはグリシン、リシン、アスパラギン酸又はセリンからなる1〜10のアミノ酸残基を表し得る。Xはまた、アミノ酸残基及びPEG様構造の両方を含むスペーサー又はバイオモディファイアー(好ましくはビスアミノエチルエチレングリコール−グリシンの組合せ)を表し得る。好ましい実施形態では、Xは、単分散PEG様構造からなる単位、即ち下記式(XI)の17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸を表す。
【0073】
【化11】

式中、mは1〜10の整数であり、C末端はアミド部分又は酸部分である。バイオモディファイアーXは、造影剤の薬物動態及び血中クリアランス速度を調整することが判明している。バイオモディファイアーは組織(即ち、筋肉、肝臓など)中への造影剤の取込みを減少させることで、バックグラウンド妨害を少なくして一層良好な診断画像を与える。排出は主に腎臓を通して行われるが、これはバイオモディファイアーのさらなる利点を表している。
【0074】
かくして、本発明の方法で使用するための造影剤は、好ましくは式XbのX、X、X、G、D、X、X及びXで形成されるアミノ酸配列で定義されるペプチドベクターを含み、このペプチドは血管新生及び湿性AMDに関連するインテグリンレセプターに親和性を有するベクターをなす。
【0075】
環化架橋の配置状態に応じ、造影剤は「離散型」、「入れ子型」又は「からみ合い型」の構造を有する。好ましくは、各造影剤中の2つの架橋は、RとXとの間及びXとXとの間に位置(して入れ子型構造を形成)するか、RとXとの間及びXとXとの間に位置(して離散型構造を形成)するか、RとXとの間及びXとXとの間に位置(してからみ合い型構造を形成)する。
【0076】
好ましい実施形態では、本発明の方法で使用する造影剤は、チオエーテル結合をなす第一の架橋及びジスルフィド結合をなす第二の架橋を含んでいる。
【0077】
さらに別の実施形態では、本発明の造影剤は下記の式のいずれかで同定される。式XIIの造影剤の製法は国際公開第01/77145号に記載されており、式XIIIの造影剤の製法は国際公開第02/26776号に記載されている。
【0078】
【化12】

式中、R、X、G、D、X及びXは式Xbに関して定義した通りである。
【0079】
X'は酸基又はアミン基のような官能性側鎖を有するアミノ酸残基からなる。かかるアミノ酸は、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、ホモリシン、及びリシン又はジアミノプロピオン酸のようなジアミノアルシル酸から選択され、さらに好ましくはアスパラギン酸又はリシンである。
【0080】
X'、X'及びX'は、システイン又はホモシステインのような、ジスルフィド又はチオエーテル結合を形成し得るアミノ酸残基を表し、かかるジスルフィド及びチオエーテル結合が示されている。
【0081】
はスペーサー部分であるか、或いは存在しない。好ましくは、Wはグルタル酸及び/又はコハク酸及び/又はレポーターをペプチドに結合するポリエチレングリコール系単位から導かれる。他の代表的なスペーサー(W)要素には、構造型多糖、貯蔵型多糖、ポリアミノ酸及びそのメチルエステルやエチルエステル、並びにポリペプチド、オリゴ糖及びオリゴヌクレオチドがあり、これらは酵素開裂部位を含んでいてもよいし、含まなくてもよい。スペーサー部分Wの役割は、かなり巨大なレポーターをペプチド成分のレセプター結合ドメインから遠ざけることにある。
【0082】
hは1又は2の正整数である。
【0083】
存在するZ基の1以上は光学イメージング用レポーターを表す。
【0084】
造影剤は、好ましくはただ1つのZ基を含む。
【0085】
Zで表されるレポーターは、アミド結合の形成によってX'は、W、X又はXに結合できる。NHSエステルのようなレポーターの活性エステルは、造影剤を合成する場合に特に有用であると考えられる。
【0086】
好ましい態様では、式XII〜XIVの造影剤又はその生理学的に許容し得る塩は下記の特性を有する。
【0087】
Raは−(CH)−を表す。
【0088】
さらに、X'は酸基又はアミン基のような官能性側鎖を有するアミノ酸残基からなる。かかるアミノ酸は、好ましくはアスパラギン酸、グルタミン酸、リシン、ホモリシン、ジアミノアルシル酸及びジアミノプロピオン酸から選択され、さらに好ましくはアスパラギン酸又はリシンである。
【0089】
X'、X'及びX'は、好ましくは、独立にシステイン又はホモシステイン残基を表す。
【0090】
は、好ましくはアルギニンを表す。
【0091】
は、好ましくはチロシン、フェニルアラニン、3−ヨードチロシン又はナフチルアラニン、さらに好ましくはフェニルアラニン又は3−ヨードチロシンを表す。
【0092】
及びWは式XIに関して定義した通りである。好ましくは、Xは単分散PEG構成ブロックの1〜10単位からなるか、或いは存在せず、Wは好ましくは存在しない。
【0093】
Zは、造影剤が1以上の光学イメージング用レポーターを含むことを条件にして、光学イメージング用レポーターを表すか、或いは存在しない。
【0094】
さらに好ましい実施形態では、本発明の方法で使用する造影剤は式XII(入れ子型)のもの又はその生理学的に許容し得る塩であって、上記の特性を有する。
【0095】
式Xaで定義されるアミノ酸残基のいずれもが、好ましくは天然に存在するアミノ酸を表す。大抵の場合、ペプチドベクター中のアミノ酸はすべてL形であることが好ましい。しかし、本発明の若干の実施形態では、ペプチド中のアミノ酸の1つ、2つ、3つ又はそれ以上が好ましくはD形である。かかるD形アミノ酸の含有は、造影剤の血清に対して顕著な効果を及ぼし得る。
【0096】
本発明の方法で使用される若干の造影剤は、高親和性RGD型ベクターを含んでいる。本明細書中で使用する「高親和性RGD型ベクター」という用語は、αvβ3インテグリンに関する競合的結合測定法で<10nM好ましくは<5nMのKiを有する造影剤をいう。この場合、Ki値は公知の高親和性リガンドであるエキスタチンとの競合で測定した。かかる競合測定を実施するための方法は当技術分野で公知である。
【0097】
本発明の方法で使用するための式Xaの造影剤の若干の例を下記に示す。
【0098】
造影剤A、B及びCは、それぞれ1、2又は4のスルホン酸基を有するペンタメチンカルバシアニンをRGD含有ペプチド(Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys)に結合したものからなる。造影剤A及びBはCy5染料を含む一方、造影剤CはCy5.5染料を含んでいる。
【0099】
造影剤A:
【0100】
【化13】

造影剤B:
【0101】
【化14】

造影剤C:
【0102】
【化15】

造影剤D:
下記に示すようなAsp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−CysペプチドからなるペプチドベクターDは、アスパラギン酸(X)をアミノ官能化シアニン染料に結合するか、或いはシアニン染料のNHSエステルをXに位置するアミノ−PEGと反応させることで、シアニン染料(例えば、Cy7)のような光学イメージング用レポーターに結合できる。
【0103】
【化16】

造影剤E:
造影剤Eは、RGD型ペプチド(Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys)を2つのシアニン染料基(Cy5.5)に結合したものからなる。
【0104】
【化17】

造影剤F:
造影剤Fは、RGD型ペプチド(Lys−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys−Gly)をCy5に結合したものからなる。
【0105】
【化18】

造影剤G:単環式RGD型ペプチドc[−Asp−D−Phe−Lys(Cy5.5)−Arg−Gly−]
【0106】
【化19】

造影剤H及びIは、RGD型ペプチド(Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys)を異なる部位でフルオレセインに結合したものからなる。
【0107】
造影剤H:
【0108】
【化20】

造影剤I:
【0109】
【化21】

造影剤J:
造影剤Jは、RGDペプチド(Lys−Asp−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys−Gly)をフルオレセインに結合したものからなり、「離散型」構造をなしている。
【0110】
【化22】

造影剤K:
造影剤Kは、RGDペプチド(Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys)を異なる部位でフルオレセインに結合したものからなり、「からみ合い型」構造をなしている。
【0111】
【化23】

上記造影剤のベクターはすべての公知化学合成方法を用いて合成できるが、特に有用なのは自動ペプチド合成機を用いるMerrifieldの固相法である(J.Am.Chem.Soc.,85:2149(1964))。
【0112】
ベクターへのレポーター(例えば、染料の活性エステル)の連結も自動的に実施してペプチドとレポーターとの間にアミド結合を生み出すことができ、或いは実施例1及び2に記載するようにしてレポーターをペプチドベクターに結合することができる。ペプチドベクター及びペプチド造影剤は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)を用いて精製でき、イン・ビトロスクリーンでの試験前に質量分析法及び分析HPLCで特性決定することができる。
【実施例】
【0113】
次に、以下の非限定的な実施例によって本発明をさらに例証する。
【0114】
図1及び2は実施例3に関するものであって、誘発CNVを有するLong Evansラットの眼の画像を示す。図1は造影剤Hを注射したラットの眼の画像であり、図2は陰性対照化合物を注射した眼の画像である。
【0115】
略語:
DMF N,N−ジメチルホルムアミド
DMSO ジメチルスルホキシド
Fmoc N−α−(9−フルオレニルメチルオキシカルボニル)
HATU 2−(1H−7−アザベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3− テトラメチルウロニウム
HPLC 高速液体クロマトグラフィー
LC_MS 液体クロマトグラフィー質量分析法
NMM N−メチルモルホリン
tBu tert−ブチル
TFA トリフルオロ酢酸
THF テトラヒドロフラン
実施例1:Cys2−6:c[CHCO−Lys(Cy5ビス−SO)−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−(PEG)−NH(n=1)(造影剤B)の合成
【0116】
【化24】

標準的な固相ペプチド合成方法を用いて上記のペプチドを組み立てた。クロロアセチル化ペプチドを固体担体から分離し、溶液中で環化することで、まずチオエーテル架橋を形成し、次いでジスルフィド架橋を形成した。DMF(2ml)中におけるCy5モノNHSエステルビス−SO(7.5mg、0.01mmol)の溶液に二環式ペプチド(24mg、0.02mmol)を固体として添加し、次いでNMM(0.01ml、0.09mmol)を添加した。光を避けながら、反応を1晩進行させた。DMFを減圧下で蒸発させ、粗生成物を逆相分取用クロマトグラフィー(Vydac C18カラム,218TP1022;溶媒,A=水/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA;勾配,60分間で10〜30%B;流量,10ml/分;254nmで検出)で精製することで、6.6mgの純生成物(分析用HPLC:Phenomenex Luna C18カラム,00G−4252−E0;溶媒,A=水/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA;勾配,20分間で15〜35%B;流量,1.0ml/分;保持時間,19.5分;214nm及び254nmで検出)を得た。質量分析法を用いて追加の特性決定を行うことで、949.1[MH2+]のm/z値を得た。
【0117】
実施例2:ジスルフィド[Cys2−6]チオエーテルシクロ[CHCO−Lys(フルオレセイン)−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−PEG−NH(n=1)(造影剤H)の合成
2a)17−(Fmoc−アミノ)−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸の合成
【0118】
【化25】

Fmoc化学を用いてこの構成ブロックを固相に結合した。この構成ブロックの結合形を簡単にPEGという。
【0119】
1,11−ジアジド−3,6,9−トリオキサウンデカン
乾燥THF(100ml)中における乾燥テトラエチレングリコール(19.4g、0.100mol)及びメタンスルホニルクロリド(25.2g、0.220mol)の溶液をアルゴン下に保ち、氷/水浴中で0℃に冷却した。フラスコに、乾燥THF(25ml)中におけるトリエチルアミン(22.6g、0.220mol)の溶液を45分かけて滴下した。1時間後、冷却浴を取り除き、撹拌を4時間続けた。水(60ml)を添加した。混合物に炭酸水素ナトリウム(6g、pH8)及びアジ化ナトリウム(14.3g、0.220mol)をこの順序で添加した。THFを留去し、水溶液を24時間還流した(2つの層が生じた)。混合物を冷却し、エーテル(100ml)を添加した。水性相を塩化ナトリウムで飽和させた。両相を分離し、水性相をエーテル(4×50ml)で抽出した。合わせた有機相をブライン(2×50ml)で洗い、乾燥した(MgSO)。濾過及び濃縮により、22.1g(91%)の黄色油を得た。それ以上の精製なしに生成物を次の段階で使用した。
【0120】
11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカナミン
塩酸(200ml)中における1,11−ジアジド−3,6,9−トリオキサウンデカン(20.8g、0.085mol)の懸濁液を機械的に激しく撹拌しながら、エーテル(150ml)中におけるトリフェニルホスフィン(19.9g、0.073mol)の溶液を室温で3時間かけて添加した。反応混合物をさらに24時間撹拌した。両相を分離し、水性相をジクロロメタン(3×40ml)で抽出した。水性相を氷/水浴中で冷却し、pHをKOHの添加で約12に調整した。生成物をジクロロメタン(5×50ml)で抽出した。合わせた有機相を乾燥した(MgSO)。濾過及び蒸発により、14.0g(88%)の黄色油を得た。MALDI−TOF質量分析法(マトリックス:α−シアノ−4−ヒドロキシケイ皮酸)による分析の結果、予想通り219にMHピークが得られた。H(500MHz)及び13C(125MHz)NMR分光法を用いた追加の特性決定により、構造が確認された。
【0121】
17−アジド−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸
ジクロロメタン(100ml)中における11−アジド−3,6,9−トリオキサウンデカナミン(10.9g、50.0mmol)の溶液に、無水ジグリコール酸(6.38g、55.0mol)を添加した。反応混合物を1晩撹拌した。HPLC分析(カラム,Vydac 218TP54、溶媒,A=水/0.1%TFA及びB=アセトニトリル/0.1%TFA;勾配,20分間で4〜16%B;流量,1.0ml/分;214nm及び284nmでUV検出)は、出発原料が18.3分の保持時間を有する生成物に完全に転化したことを示した。溶液を濃縮することで定量的収量の黄色シロップを得た。LC_MS(ESイオン化)で生成物を分析したところ、予想通り335に[MH]が得られた。H(500MHz)及び13C(125MHz)NMR分光法の結果は構造に一致していた。それ以上の精製なしに生成物を次の段階で使用した。
【0122】
17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸
(g)−Pd/C(10%)を用いて、水(100ml)中における17−アジド−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸(8.36g、25.0mmol)の溶液を還元した。反応は、LC−MS分析が出発原料の完全な転化を示すまで行った(カラム,Vydac 218TP54;溶媒,A=水/0.1%TFA及びB=アセトニトリル/0.1%TFA;勾配,20分間で4〜16%B;流量,1.0ml/分;214nm及び284nmでUV検出;ESイオン化は出発原料について335及び生成物について309にMHを与えた)。溶液を濾過し、次の段階ので直接使用した。
【0123】
17−(Fmoc−アミノ)−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸
(25.0mmolのアミノ酸に相当する)上記17−アミノ−5−オキソ−6−アザ−3,9,12,15−テトラオキサヘプタデカン酸の水溶液に、重炭酸ナトリウム(5.04g、60.0mmol)及びジオキサン(40ml)を添加した。ジオキサン中におけるFmocクロリド(7.11g、0.275mol)の溶液を滴下した。反応混合物を1晩撹拌した。ジオキサンを蒸発させて除去し(rotavapor)、水性相を酢酸エチレンで抽出した。水性相を塩酸の添加で酸性化し、沈殿した物質をクロロホルムで抽出した。有機相を乾燥し(MgSO)、濾過し、濃縮することで、11.3g(85%)の黄色シロップを得た。LC−MS分析(カラム,Vydac 218TP54;溶媒,A=水/0.1%TFA及びB=アセトニトリル/0.1%TFA;勾配,20分間で40〜60%B;流量,1.0ml/分;214nm及び284nmでUV検出;ESイオン化は5.8分の生成物ピークについて予想通り531にMHを与えた)で構造を確認した。分析結果は極めて低い副生物含有量を示し、それ以上の精製なしにこの物質を使用した。
【0124】
2b)ClCHCO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys−PEG−NHの合成
【0125】
【化26】

0.25mmolスケールで開始し、HATU活性化を介して、Rink Amide AM樹脂にPEG単位を手作業で結合した。残りのペプチドは、1mmolアミノ酸カートリッジを用いてABI 433A自動ペプチド合成機上で組み立てた。結合前に、HBTUを用いてアミノ酸を予備活性化した。DMF中のクロロ酢酸無水物溶液を用いて、N末端アミン基を30分間クロロアセチル化した。樹脂からのペプチド及び側鎖保護基(tBuを除く)の同時除去を、TIS(5%)、HO(5%)及びフェノール(2.5%)を含むTFA中で2時間実施した。処理後、322mgの粗ペプチドを得た(分析用HPLC:勾配,10分間で5〜50%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム,Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×4.6mm;流量,2mL/分;検出,UV214nm;生成物の保持時間,6.37分)。質量分析法を用いてさらに生成物の特性決定を行ったところ、MHの予想値は1409、実測値は1415であった。
【0126】
2c)チオエーテルシクロ[CHCO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys]−PEG−NHの合成
【0127】
【化27】

322mgのClCHCO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys−(PEG)−NHを水/アセトニトリルに溶解した。混合物をアンモニア溶液でpH8に調整し、16時間撹拌した。処理後、粗ペプチドを得た(分析用HPLC:勾配,10分間で5〜50%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム,Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×4.6mm;流量,2mL/分;検出,UV214nm;生成物の保持時間,6.22分)。質量分析法を用いてさらに生成物の特性決定を行ったところ、MHの予想値は1373、実測値は1378であった。
【0128】
2d)ジスルフィド[Cys2−6]チオエーテルシクロ[CHCO−Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−PEG−NHの合成
【0129】
【化28】

チオエーテルシクロ[CHCO−Lys−Cys(tBu)−Arg−Gly−Asp−Cys(tBu)−Phe−Cys]−(PEG)−NHを、アニソール(200μL)、DMSO(2mL)及びTFA(100mL)の溶液で60分間処理した。次いで、TFAを真空中で除去し、ジエチルエーテルの添加でペプチドを沈殿させた。分取用HPLC(Phenomenex Luna 5μ C18(2)250×21.20mmカラム)により、40分間で0〜30%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA)の勾配及び10mL/分の流量を用いて70mgの粗物質の精製を行った。凍結乾燥後、46mgの純物質を得た(分析用HPLC:勾配,10分間で0〜30%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム,Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×4.6mm;流量,2mL/分;検出,UV214nm;生成物の保持時間,6.80分)。質量分析法を用いてさらに生成物の特性決定を行ったところ、MHの予想値は1258.5、実測値は1258.8であった。
【0130】
2e)ジスルフィド[Cys2−6]チオエーテルシクロ[CHCO−Lys(フルオレセイン)−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−PEG−NHの合成
【0131】
【化29】

30mgの[Cys2−6]シクロ[CHCO−Lys−Cys−Arg−Gly−Asp−Cys−Phe−Cys]−PEG−NH、16.2mgのフルオレセインNHSエステル、及び4μLのN−メチルモルホリンをDMF(3mL)に溶解した。混合物を遮光し、1晩撹拌した。分取用HPLC(Vydac 218TP1022 C18カラム)により、40分間で20〜30%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA)の勾配及び10mL/分の流量を用いて反応混合物の精製を行った。凍結乾燥後、21.6mgの純物質を得た(分析用HPLC:勾配,10分間で10〜40%B(ここで、A=HO/0.1%TFA及びB=CHCN/0.1%TFA);カラム,Phenomenex Luna 3μ C18(2)50×4.6mm;流量,2mL/分;検出,UV214nm;生成物の保持時間,7.0分)。質量分析法を用いてさらに生成物の特性決定を行ったところ、MHの予想値は1616.5、実測値は1616.3であった。
【0132】
実施例3:CNVのイメージング
実施例2の造影剤(造影剤H)を光学イメージング用造影剤として用いて、ラットにおける脈絡膜血管新生のイメージングを行った。
【0133】
本研究には、体重350〜400gのLong−Evans色素沈着ラットを使用した。ラットをケタミン(100μl/100g)の筋肉内注射で麻酔し、1%トロピカミド点眼薬及び0.1%フェニレフリン点眼薬を用いて散瞳した後、光凝固術及びペプチド血管造影検査を行った。ダイオードレーザー間接検眼鏡送達系を用いて、下記の条件下でラットの右眼に眼底の光凝固を施した。出力は90mW、波長は810nm、持続時間は0.1秒、スポットサイズは75μmであった。各眼の視神経頭部の周囲に16回のレーザー焼灼を施した。レーザー(IRIS Medical社、OcuLight(商標)、S/N25745)を用いて、ブルーフ膜及び脈絡膜中に10の病変を作った。各病変は半径方向パターンで視神経頭部から約1mmの位置にあった。
【0134】
無菌水中の0.9%塩化ナトリウム溶液をビヒクルとして用いて投与溶液を調製した。適当量の造影剤を容器内に直接秤取し、適当な体積に合わせ、必要に応じて振り回すことで造影剤を溶解させた。かかる処方薬は室温で保存し、遮光し、振ってから投与し、毎日調製した。
【0135】
陰性対照:下記の化合物を陰性対照として使用した。陰性対照は造影剤Hと同じ分子量を有するが、RGD配列を含まないのでインテグリンに対する親和性をもたない。陰性対照化合物は、血管新生に関連するレセプターに親和性をもたない。
【0136】
【化30】

陰性対照:[Cys2−6]チオエーテルシクロ[CHCO−Lys(フルオレセイン)−Cys−Gly−Asp−Phe−Cys−Arg−Cys]−PEG−NH
造影剤溶液を静脈内注射(200μg/kg)することで、レーザー処置後0日目から14日目まで造影剤を用いた分子血管造影検査を行った。
【0137】
動物:
Harlan社から供給されるLong Evans(系統)ラットを投与前に最低1週間環境順化させた。本研究のためには、全部で27頭の雄及び0頭の雌を入手した。飼育のためには、Allentown固体底型ポリスルホンケージを個別に使用した。
【0138】
結果:
CNV誘発後1時間目(レーザー処置後0日目)に、造影剤溶液(造影剤H又は陰性対照)を20μg/kgの投与量でラットに注射した。投与直後に画像を撮影した。
【0139】
画像は、陰性対照(図2)に比べて、造影剤H(図1)を注射したラットの眼の誘発病変に関する信号強度が増加していることを示している。イメージングシステムのパラメーターは、図1及び2に示す画像について同一であった。
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】造影剤Hを注射したラットの眼の画像である。
【図2】陰性対照化合物を注射した眼の画像である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を使用してヒト又は動物の身体の湿性加齢黄斑変性症(AMD)のイメージングを行う方法。
【請求項2】
ヒト又は動物の身体に造影剤を投与し、ヒト又は動物の身体の眼又は眼の一部に光を照射し、前記造影剤が分布した眼又は眼の一部の画像を形成することを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
通常の検眼鏡検査、共焦点走査レーザー検眼鏡検査、インビボ共焦点顕微鏡検査、時間ドメイン及び周波数ドメインイメージング技術、並びに眼底カメラの使用からなる群から選択されるイメージング技術の使用で画像が形成される、請求項1又は請求項2記載の方法。
【請求項4】
ヒト又は動物の身体の眼又は眼の一部における血管新生レベルを評価することを含む、請求項1乃至請求項3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
潜在AMDの検出のための、請求項1乃至請求項4のいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
前記ベクターが、VEGFレセプター、胎盤増殖因子レセプター及び繊維芽細胞増殖因子レセプター、血小板由来内皮細胞増殖因子、アンジオポエチン、並びにインテグリンからなる群から選択されるレセプターのいずれかに親和性を有する、請求項1乃至請求項5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ベクターがインテグリンに対して親和性を有する、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
前記ベクターが、アンジオスタチン、エンドスタチン、バソスタチン、血小板第4因子及び抗トロンビンIIIの開裂生成物、RGDトリペプチド配列の小分子非ペプチド模倣体、並びにアミノ酸配列X−G−D(式中、Xはアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体を表し、Gはグリシンを表し、Dはアスパラギン酸を表す。)を含むペプチドからなる群から選択される、請求項1乃至請求項7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
造影剤が下記の式(Xa)で定義される、請求項1乃至請求項8のいずれか1項記載の方法。
A−Z (Xa)
(式中、Aは下記の式(Xb)で定義され、Zは任意にはスペーサー基を介してAのX、X又はXの1以上に結合した1以上の光学イメージング用レポーターを表し、Aは2つの環化架橋を含む。
−C(=O)−X−X−X−G−D−X−X−X−X
(Xb)
(式中、X、G及びDは請求項8に定義した通りであり、
はX、X又はXに結合する架橋の一部をなす−(CH)−又は−(CH)−C−基(式中、nは1〜10の正の整数を表す。)を表し、
は結合或いは1、2、3、4又は5のアミノ酸残基を表していて、1以上のアミノ酸残基はスペーサー部分で任意に官能化されているか、或いは前記アミノ酸残基は官能性側鎖を有しており、
及びXは独立に環化架橋を形成し得るアミノ酸残基を表し、
は疎水性アミノ酸又はその誘導体を表し、
は環化架橋を形成し得るアミノ酸残基を表し、
はスペーサー又はバイオモディファイアー部分を表すか、或いは存在しない。))
【請求項10】
AMDを処置するための薬物によるヒト又は動物の身体の湿性AMDの治療効果を監視するための、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
光学イメージング用レポーターがフルオレセイン又はフルオレセイン誘導体或いはシアニン染料である、請求項1乃至請求項9のいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
湿性AMDのイメージングで使用するためのコントラスト増強組成物の製造のための、血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤の使用。
【請求項13】
ベクターがアミノ酸配列X−G−Dを含んでいて、ベクターと光学イメージング用レポーターとは結合しており、式中のXはアルギニン、N−メチルアルギニン又はアルギニン模倣体を表し、Gはグリシンを表し、Dはアスパラギン酸又はその生理学的に許容し得る塩を表す、請求項12記載の造影剤の使用。
【請求項14】
血管新生に関連するレセプターに親和性を有するベクターを光学イメージング用レポーターに結合してなる造影剤を予め投与しておいたヒト又は動物の身体の眼の湿性AMDの画像を光学イメージングによって形成する方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2008−526352(P2008−526352A)
【公表日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−550320(P2007−550320)
【出願日】平成18年1月6日(2006.1.6)
【国際出願番号】PCT/NO2006/000005
【国際公開番号】WO2006/073314
【国際公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【出願人】(396019387)ジーイー・ヘルスケア・アクスイェ・セルスカプ (82)
【Fターム(参考)】