説明

光学式自動認識コード及びその読み取り方法

【課題】「軌跡(連続した線分)」により容易にマーキングすることができ、かつ、コードの光学的読み取りによるデータ認識(デコード)が容易な光学式自動認識コードを新たに提供することを目的とする。
【解決手段】1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、前記各辺の方向又は長さ又は曲率又は頂点に接続する2つの前記辺の間の相対角度によってデータが表される。一筆書きのような連続した線により構成されるので、軌跡(連続した線分)により容易にマーキングすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学式自動認識コード、及び光学式自動認識コードを読み取り、デコードする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の光学的自動認識コード(以下単に「コード」ともいう)のうち、代表的なものを大別すると概ね以下の3種に分けることができる。
【0003】
1 バーコード、2次元コードのようにマーキング(主に明暗)されたパターンの位置関係と寸法にデータを担持させるもの(以下「バーコード」という)
2 色彩の配列順にデータを担持させるもの(以下「色彩配列コード」という)
3 線画パターンによるもの(以下「線画コード」という)
これらのうち、上記1のバーコードは、パターンの幅や白黒バーの位置関係でデータを表す。また、このタイプの変形として、パターンの傾きを利用するものや有彩色を施したもの(カラーバーコード)も知られている。
【0004】
上記2の色彩配列コードは、本願出願人が特願2007−123788等にて既に複数出願済みであるように、色彩の配列順序によりデータを表す。
【0005】
上記3の線画コードは、線(ライン)の向きやそれらのなす角度によりデータを表す。線画が分岐するタイプのものもある。
【0006】
ここで、「パターン」とは光学式自動認識コードにおいて、マーキングされた1つ1つのバーやセルのことをいう。
【0007】
上記3の線画コードについては、以下に示すような様々な先行特許文献がある。
【0008】
先行特許文献の例
例えば、下記特許文献1には、スラッシュのような傾きのある線によるコードに、自己クロッキングアドレスパターンを持たせる技術が開示されている。これによれば、コードの外観を保持しながら、ひずみや物理的損傷に対して耐性のあるコードとすることができるとされている。
【0009】
また、下記特許文献2及び3には、光学式自動認識コードを用いた、光学式読み取り装置用記録用紙やマルチファンクション機の動作指示フォームが開示されている。
【0010】
また、下記特許文献4には、情報を示す第1グループのバーコードパターンに、これと異なるバーコードパターンからなる第2グループのバーコードパターンを組み合わせる技術が開示されている。これにより、バーコードの種類を増加することなく、情報量を増加させることができる。
【0011】
また、下記特許文献5には、機械可読なN次元アドレス空間を構築する方法が開示されており、下記特許文献6には、角度によりデータを表すグリフを含む画像領域ディジタル通信チャネルが開示されている。
【0012】
下記特許文献7には、シンボルの各コーナーを定義することにより、機械可読を容易と
するバイナリーコードが開示されており、下記特許文献8には、碁盤目上に配置した縦・横の罫線を、その「有」「無」によりデータを表す2次元バーコードが開示されている。
【0013】
下記特許文献9には、360°の円を2N等分した角度を2直線で表示し、その角度によりデータを表す2次元図形コードカードが開示されており、下記特許文献10には、コードの形状を扇形にした例が開示されており、下記特許文献11には、180°の半円を2N等分した角度で表示される太字の基準線と、細字の方向線とを組み合わせ、その交差の組み合わせによりデータを表す2次元コードカードが開示されている。
【0014】
下記特許文献12及び13には、長方形と斜線、横線を組み合わせたコードが開示されている。
【0015】
また、下記特許文献14には、データコードに、そのデータのビットをシフトさせるシフトコードを組み合わせることで、目視によるデータの認識を困難にしたコードシステムが開示されている。
【0016】
下記特許文献15には、多重円と円の中心を視点とした線に囲まれた部分を2進法によって2通りに色分けしたコードが開示されている。
【0017】
下記特許文献16には、コード形状を直角三角形とし、その回転角度でデータを表す図形記号コードが開示されている。これによれば、スキャンエラーがあった場合も確実に復号化することができる。
【0018】
下記特許文献17には、線の長短により2値を表現するバーを複数本並列に組み合わせるコードが開示されている。これによれば、表面が粗い物品に表記しても判読が容易となる。さらに、下記特許文献18には、6方向の回転対称性を有し、この回転対称中心の周りで1/6回転ずつ離間した6つの同じサブレイアウトを含むコードが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】特許第3715339号
【特許文献2】WO00/079477
【特許文献3】特開平11−232408
【特許文献4】特開平10−275204
【特許文献5】特開平10−187912
【特許文献6】特許第3920407号
【特許文献7】特表平10−503304
【特許文献8】特開平9−212613
【特許文献9】特開平8−212318
【特許文献10】特開平8−212317
【特許文献11】特開平8−212316
【特許文献12】特開平8−44808
【特許文献13】特開平8−44808
【特許文献14】特開平8−16691
【特許文献15】特開平6−309518
【特許文献16】特開平5−274494
【特許文献17】特開平5−40861
【特許文献18】特表2006−508454
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本願発明者は、従来技術を検討し、それらの問題点を解決するために、特に以下の点に着目して新しい技術の開発を行った。
【0021】
1−1 コードのマーキング方法についての検討
従来のコードはいずれも、「領域」の塗りつぶしやドット単位の管理が必要なため、マーキング方法はこれらが可能な方法(例えば通常のプリンタや印刷など)によらざるを得ない。そのため、マーキングできる対象や環境が、プリンタ等を使用できる場合に限られてしまう。これに対し、本願発明者はこれまでに、プリンタ等を使用しなくてもマーキングが可能で、かつ読み取り精度もよい光学式自動認識コードの発明を行ってきた。例えば、特願2007−191901においては、有色固形物(例えばビーズなど)を用いてマーキングすることができる色彩配列コードを、特願2007−124282においてはLEDによる発光を応用した色彩配列コードを提案している。これらは、「領域」の塗りつぶしによるマーキングに利用可能である。
【0022】
さらに本願発明者は、より多様なマーキング方法について鋭意研究を重ね、今回特に、ペン画やけがきなどの「線画」による描画が従来技術として一般的であることに着目した。「線画」によるマーキングは、「領域」の塗りつぶしに比べて、より少ない面積でマーキングが可能であり、かつ、より早くマーキングすることができる。そして本願発明者は、この「線画」に「連続性」を持たせることにより、「軌跡(連続した線分)による描画」が可能となるのではないかとの着想を得た。これが実現すれば、「軌跡」によって描画を行う「レーザービーム」や「ミシンのステッチング」によりマーキングすることが可能となる。すなわち、ビルの壁面など通常のインクの塗布が困難なものへのマーキングや、布などへの直接的なマーキングが可能となるのである。
【0023】
ここで、上記1〜3の従来のコードのうち上記3の線画コードについては、「軌跡による描画」によってもマーキングすることができるとも考えられる。しかし、上記先行技術文献に開示されている従来の線画コードは、いずれも着想的にはマーキングに言及しておらず、単に独立した線分の集合となっている。すなわち、複数の線分が連続的に描画されているわけではないので、「軌跡」によって描画を行う「レーザービーム」や「ミシンのステッチング」によってマーキングを行うことは妥当ではないと考えられる。つまり、上記3の従来の線画コードをマーキングするには、結局は通常のプリンタのような手段が適していると言える。
【0024】
これに対し本願発明者は、レーザービームなどの「軌跡」による描画が可能な新しい線画コードについて研究開発を重ね、「線画」かつ「一筆書き」で構成される新しい光学式自動認識コード(以下「一筆書きコード」ともいう)を開発するに至った。すなわち、本発明は、「線画」かつ「一筆書き」で構成されるコードを実現し、「軌跡」により容易にマーキングすることができる新しい光学式自動認識コードを提供するものである。
【0025】
1−2 データの担持方法についての検討
一般的な画像処理技術においては、線の向きやそれらのなす角度を認知することは、ボケやにじみ、かすれ、ノイズ、明暗差などの画像の質に対して、比較的許容範囲が広いことが知られている。すなわち、線の向きやそれらのなす角度にデータを担持させることにより、画像に多少のボケやにじみ等があっても、コードを切り出すことができるのである。
【0026】
そこで、本願発明者は、1−1で述べたような「一筆書きコード」において、線の方向や長さ、曲率などの「線の形態」や「線分間の相対的な角度」にデータを担持させることとした。なお、本発明は一筆書きのような1本の線で構成されることを特徴とするため、各頂点において接続する線分を「辺」ということもできる。以下、各辺が接続する箇所を「頂点」といい、「辺」が集まって構成される線全体を「線」という。「頂点」には、主に、2辺に接続しているものと、1辺にのみ接続しているものがある。1辺にのみ接続している頂点は、線の端部となる。
【0027】
このように本発明は、「一筆書きコード」において「辺の形態」又は「各頂点において接続している各辺の相対角度」にデータを担持させることにより、「軌跡」により容易にマーキングでき、かつ、コードの光学的読み取りによるデータ認識(デコード)が容易な光学式自動認識コードを実現したものである。
【0028】
2 3次元空間への応用についての検討
これまで述べた一筆書きコードは、基本的には2次元平面上における一筆書きコードを説明してきた。すなわち、平面上に複数の辺を所定の方向や相対角度等で連ねて一筆書きコードを構成し、この方向や相対角度等でデータを表現したものである。
【0029】
ところで、この一筆書きコードのうち特に「各頂点において接続している各辺の相対角度」にデータを担持させるものは、2次元平面だけでなく、3次元空間へ応用することも好適である。このような3次元空間上に配置された一筆書きコードは、各辺の相対角度も空間上の相対角度として表現することが可能である。このような3次元空間上の一筆書きコードは、原理的には、3方向(x方向、y方向、z方向)からそれぞれこの一筆書きコードを撮像し、3方向から得られたこれらの画像データについて所定の演算を行うことにより、3次元空間上における一筆書きコードの接続構造を把握することが可能である。すなわち、各頂点において接続している各辺の相対角度を認識することができるのである。
【0030】
このように、3次元空間に応用が可能であることは、すなわち、偽造の防止に有効なコードとすることができる。なぜなら、3面全ての画像を演算して初めて相対角度が分かるのであるから、2面以下の画像のみでは、もとの一筆書きコードを正確に把握することができず、各頂点において接続している各辺の相対角度を認知することは困難になると想定されるからである。
【0031】
そこで、本発明は、「一筆書きコード」を3次元空間へ応用することで、偽造の防止に有効な光学式自動認識コードを提供するものである。
【0032】
3 曲線の活用についての検討
一般的に、線画を描く手段によって「曲線」を描画するのは比較的容易であるケースが多い。例えば、レーザービームで円や扇形を描画することは容易である。また、マーキングとして曲線を有効に活用することができれば、スペース効率を高めることも期待できる。しかし、上記先行技術文献に開示されている線画コードには、曲線を有効に活用している例は知られておらず、それらが解決すべき課題から考えてもあえて曲線を使用するモチベーションはなかったと考えられるものが多い。
【0033】
そこで、本発明は曲線を有効に活用することのできる光学式自動認識コードを新たに提案するものである。
【0034】
本発明は、以上の検討に基づきなされたものであり、第一に、「軌跡(連続した線分)」により容易にマーキングすることができ、かつ、コードの光学的読み取りによるデータ認識(デコード)が容易な光学式自動認識コードを新たに提供するものである。
【0035】
第二に、このような光学式自動認識コードを3次元空間へ応用し、偽造の防止に有効な光学式自動認識コードを提供するものである。
【0036】
第三に、線画として「曲線」を活用することにより、マーキングスペースの効率を高めることのできる光学式自動認識コードを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0037】
(1)本発明は、上記目的を達成するために、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、前記辺と辺が接続する頂点において、その頂点に接続する2つの前記辺の相対角度によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0038】
(2)また、本発明は、(1)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各頂点において接続している前記各辺の前記相対角度はn種類以上あり、それぞれ異なるn種以上の値を担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。なお、nは2以上の整数を表す。
【0039】
(3)また、本発明は、(2)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各頂点において接続している前記各辺は、直線又は予め与えられた曲率以下の曲線であることを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0040】
(4)また、本発明は、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、前記各辺の形態によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0041】
(5)また、本発明は、(4)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各辺の形態とは、前記光学式自動認識コードが配置される平面上の座標系に対する前記各辺の角度であり、前記各辺は、前記角度が表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0042】
(6)また、本発明は、(4)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各辺の形態とは、前記各辺の表す方向ベクトルであり、前記各辺は、前記方向ベクトルが表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0043】
(7)また、本発明は、(4)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各辺の形態は、前記辺の長さであり、前記各辺はその辺の前記座標系に対する長さによりデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0044】
(8)また、本発明は、(4)に記載の光学式自動認識コードにおいて、前記各辺の形態は、前記各辺の前記座標系に対する曲率であり、前記各辺はその辺の曲率によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0045】
(9)また、本発明は、(1)から(8)のいずれかに記載の光学式自動認識コードにおいて、前記頂点には、曲率が所定の基準値以上の箇所が含まれていることを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0046】
(10)また、本発明は、(1)から(9)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、前記辺と辺が接続する箇所の曲率が、前記所定の基準値以下の場合は、エラーとする又は読み取りを中止することを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0047】
(11)また、本発明は、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、前記各頂点において、その頂点に接続する2つの前記辺の3次元空間における相対角度によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0048】
(12)また、本発明は、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、前記各辺はその辺の方向ベクトルが表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0049】
(13)また、本発明は、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、前記各辺はその辺の3次元空間における曲率によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0050】
(14)また、本発明は、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、前記各辺はその辺の前記座標系に対する長さによりデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0051】
(15)また、本発明は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、異なる複数の方向から光学式自動認識コードの画像を撮像するステップと、前記画像に基づいて演算処理を行うことにより光学式自動認識コードを認識するステップと、を有することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0052】
(16)また、本発明は、(15)に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、前記異なる複数の方向における前記立体形状の位置が予め定められており、前記異なる複数の方向から撮像された画像における前記立体形状の位置が、前記予め定められた位置と、複数の位置において合致する場合に読み取りを行うことを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0053】
(17)また、本発明は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、レーザースキャンにより光学式自動認識コードを読み取ることを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0054】
(18)また、本発明は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの表示方法において、前記線を表すデータが格納された記憶手段から、前記線のデータを取り出すデータ取り出しステップと、前記取り出したデータに基づき、所定の方向から見たならば得られたであろう画像を演算により算出するステップと、前記ステップにおいて得られた画像を表示手段に表示するステップと、を含むことを特徴とする光学式自動認識コードの表示方法である。
【0055】
(19)また、本発明は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードを表示する装置において、前記線のデータを保存する記憶手段と、前記記憶手段から前記線のデータを取り出し、前記線を所定の方向から見たであれば得られたであろう画像を演算により算出する算出手段と、前記算出手段が算出した画像を表示する表示手段と、
を含むことを特徴とする光学式自動認識コードの表示装置である。
【0056】
(20)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、データを担持する前記辺又は前記頂点の数が予め定められていることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0057】
(21)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、前記線は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上の特徴が予め定められており、前記線が前記特徴と一致する特徴を有する場合に正規の値と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0058】
(22)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、前記線の始点の特徴が予め定められており、前記線における前記特徴を有する部分を始点と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0059】
(23)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、前記線の終点の特徴が予め定められており、前記線における前記特徴を有する部分を終点と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法である。
【0060】
(24)また、本発明は、(22)に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、前記線の始点の前記特徴が、前記線の始点にさらに接続する追加辺を設け、前記追加辺と、前記線の始点に接続する既存の前記辺と、がなす角度、又は、前記追加辺の方向、のいずれか1種又は2種であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0061】
(25)また、本発明は、(22)に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、前記線の始点の前記特徴が、前記追加辺の色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0062】
(26)また、本発明は、(23)に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、前記線の終点の前記特徴が、前記追加辺と、前記線の終点に接続する既存の前記辺と、がなす角度、又は、前記追加辺の方向、のいずれか1種又は2種であって、前記始点と異なる特徴であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0063】
(27)また、本発明は、(23)に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、前記線の終点の前記特徴が、前記追加辺の色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であって、前記始点と異なる特徴であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法である。
【0064】
(28)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードにおいて、前記線の始点と終点がつながり、全体として環状であり、前記始点は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上の特徴が付され、この特徴によって始点であることを表し、前記終点は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であって前記始点の特徴とは異なる特徴が付され、この特徴によって終点であることを表すことを特徴とする光学式自動認識コードである。
【0065】
(29)また、本発明は、(1)から(9)のいずれか、又は、(11)から(14)のいずれかに記載の光学式自動認識コードが付された物品である。
【発明の効果】
【0066】
以上述べたように、本発明は、一筆書きのような1本の線画で構成される光学式自動認識コード(一筆書きコード)であり、辺の形態又は各頂点において接続している各辺の相対角度によりデータを担持させる。これにより、通常のプリンタや印刷等によらなくても、「軌跡」により容易にコードをマーキングすることができ、かつ、デコードも容易な光学式自動認識コードを実現することができる。
【0067】
また、本発明は、3次元空間に応用することができる。すなわち、通常のコピー技術(2次元画像)によって偽造が困難なコピー防止シンボルを実現することができる。
【0068】
さらに、本発明によれば、曲線を用いてコードをマーキングすることが可能となる。これにより、スペース効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】「辺の方向」でデータを表す例を示した説明図である。
【図2】「辺の方向」でデータを表す例において、3方向により3値を表す例を示した説明図である。
【図3】分岐を許容できる場合の例を示した説明図である。
【図4】「辺の長さ」でデータを表す例を示した説明図である。
【図5】「辺の曲率」でデータを表す例を示した説明図である。
【図6】「各頂点において接続している各辺の相対角度」によりデータを表す例を示した説明図である。
【図7】3次元アングルデータ担持コードの例を示した3面図である。
【図8】実体による3次元アングルデータ担持コードの例を示した説明図である。
【図9】一筆書きコードの線画が重なった場合の例を示した説明図である。
【図10】始点及び終点を明示的に表した場合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0070】
以下、本発明の好適な実施の形態を図面に基づき説明する。
【0071】
第一 マーキング方法について
これまで述べてきたように、本発明は、線画コードに連続性を持たせた「一筆書きコード」を新しく提案するものである。一筆書きコードは、1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードであって、複数の辺が一連なりに接続することによって構成されている。
【0072】
一般的に、プリンタ等を使用せずに「線画」を描画する方法としては、筆記用具、ミシンのステッチング、レーザービーム等が考えられる。なお、本実施の形態では筆記用具、ミシンのステッチング、レーザービームについて説明するが、もちろん通常のプリンタで本発明の一筆書きコードをマーキングすることもできる。
【0073】
1 筆記用具によるマーキングについて
筆記用具は日常的に使用されるものであるので、これによりコードをマーキングすることができればプリンタ等を使用しなくても容易にマーキングを行える。
【0074】
通常、筆記用具を用いて描画する場合、線画となるから、従来の線画コードも筆記用具により描画することが可能であるとも考えられる。しかし、従来の線画コードは、独立した線分の集合や、線分が分岐したものであるので、これを筆記用具で描画しようとすると、いったん筆記用具を紙などの対象物から離さなければならない。この際、離した後、再び線画を開始する開始点は先に描かれている線画に対して位置関係が決まっており、(離れる、交わる、あるいはちょうど線上から開始する等)これを正確に行うためには非常に精密な線画描画の制御精度が要求されることが想定される。従って、筆記用具で従来の線画コードをマーキングすることは適していないと考えられる。
【0075】
一方、本発明は、一筆書きのような連続した線分であることから、筆記用具をいったん紙などの対象物から離す必要はなく連続的に描画することができる。すなわち、本発明は一般的な筆記用具によってマーキングすることにも適していると言える。
【0076】
ここで筆記用具と説明したが、一般的にはいわゆるプロッター装置を用いて対象物にコードをマーキングすることが好ましい。このプロッター装置は、一般には専用ペンを装備し、この専用ペンを用いて対象物に線画を描画していくものである。もちろん、人間が用いるような筆記用具を取り付けるための狭持手段を有している場合が多く、この狭持手段を用いて人間が手で通常用いる筆記用具を利用し、一筆書きコードを対象物にマーキングすることも好ましい。色は、背景と区別できれば無彩色であっても有彩色であっても構わない。また、マーキングのしやすさを考えれば、通常は単色であることが想定されるが、デザイン性を考えて複数の色彩を途中で交換する等して組み合わせても構わない。さらに、線分の太さはデータに影響を与えないので、読み取りができる限りにおいて、どのような太さの先端であっても構わない。なお、コードの切り出し・読み取りを容易にするために、線の色彩、太さ、模様を予め定めておくことも好適である。マーキングする対象物は、紙に限られない。使用する筆記用具が描画することができる対象物であればよい。また、対象物に直接マーキングする場合以外にも、下げ札やシール等に描いた一筆書きコードを、対象物に貼付する又は掛ける等することも好適である。
【0077】
2 ミシンのステッチングによるマーキングについて
ミシンのステッチングによりコードをマーキングすることができれば、布などの柔軟で凹凸のある素材や革などにも、直接的にコードをマーキングすることができる。
【0078】
従来のバーコードをミシンのステッチングによってマーキングしようとすると、バーコードパターンのような面積を縫うことから、糸を多量に使わねばならない。また、通常、ミシンは糸がつながって現れるので、ミシンのステッチングによると、各パターンが一部必ずつながってしまう。従って、バーコードや、従来の線画コードのような独立した線分をステッチングや刺繍することは好適とはいえない。
【0079】
一方、本発明は、一筆書きのような連続した線画であり、太さや面積は基本的には関係ないので、使用する糸は少なくて済む。また、「一筆書き」であるので、糸がつながって現れることは、マーキングに影響を及ぼさない。よって、本発明によれば、ミシンのステッチングによりマーキングを行うことは好適である。
【0080】
ミシンは一般的なものを使用すればよく、マーキングを行う対象物は布や、革などミシンで縫うことが可能なものであればよい。また、対象物に直接マーキングする場合以外にも、下げ札やシール等に描いた一筆書きコードを、対象物に貼付する又は掛ける等することも好適である。1と同様に、糸の色は背景と区別できれば無彩色であっても有彩色であっても構わない。また、マーキングのしやすさを考えれば、通常は単色であることが想定されるが、デザイン性を考えて複数の色の糸を途中で交換する等して組み合わせても構わない。この場合も、コードの切り出し・読み取りを容易にするために、線の色彩、太さ、模様を予め定めておくことも好適である。
【0081】
3 レーザービームによるマーキングについて
レーザービームで「軌跡」を描画する方法が広く知られている。レーザービームで描画するのは、通常は「点」であるが、これをスクリーン上で迅速に移動させることによって
人の目の残像効果によってつながった「軌跡」として認識させるものである。カメラにおいても露出時間を多く取る等で同様の「軌跡」として認識することができるから、これをコードのマーキングに活用できれば、ビルの壁面など通常のインクの塗布が困難なものへのマーキングが実現できる。
【0082】
従来のバーコードをレーザービームで描画するためには、バーコードパターンの面積を描かなければならず、線を描く場合より多くの点を、高速に移動しなければならないから、これをバーコードの描画に使用することは好適とは言えない。また、レーザービームで描画される線は一筆書きのような線であることから、従来の線画コードのように連続性のない独立した線分を描くためには、余分な線を消すブランキング処理等が必要となり、レーザービームにより従来の線画コードをマーキングすることも好適とは言えない。
【0083】
一方、本発明は一筆書きのような1本の線により構成されるから、このような特徴を有するレーザービームよってマーキングすることも適していると言える。
【0084】
レーザービームの波長は、使用するカメラの性能に応じたものとすることが妥当である。可視光線レーザーとすることも好ましいし、人間の目に見えない赤外線レーザーとすることなども好適である。このような赤外線レーザーを用いれば、肉眼では見えないため秘密裏にデータを相手に送信する場合等に利用することが可能である。
【0085】
また、マーキングする対象物は、レーザービームを反射する面を有するものであればよい。また、透過スクリーンを有していても良い。なお、撮像装置については以下の第六にて説明するが、特に、レーザービームでマーキングを行う際には、動画で撮像するか、静止画で撮像する場合は少なくとも描画時間の間はシャッターを開けておく等の工夫が必要になる。
【0086】
第二 データの担持方法について
本発明は、1本の線画で構成される一筆書きコードであり、辺の形態又は各頂点において接続している各辺の相対角度によりデータを表す。以下、データの担持方法を各方法ごとに分けて説明する。
【0087】
1 辺の形態によりデータを表す方法
辺の形態にデータを担持させる方法としては、(1)辺の「方向」にデータを担持させる、(2)辺の「長さ」にデータを担持させる、(3)辺の「曲率」にデータを担持させることが考えられる。以下、データの担持方法を各方法ごとに分けて説明する。
【0088】
1−1 辺の「方向」でデータを表す方法
本実施の形態では、各辺の方向(ディレクション)、すなわち本光学式自動認識コードが配置される平面上の座標系に対する角度の方向(絶対角度)にデータを担持させた場合について説明する。ここで、角度は0°から359°であるが、例えば90°と270°を同じ値とすることもできる。このようなコードを以下、「ディレクションデータ担持コード」という。
【0089】
コードの読み取りを行う際の画像処理において、どの程度の辺の方向を区別できるかは画像精度やマーキング精度、読み取り時のアライメント精度による。本実施の形態では、実用面を考えてラフな場合を想定し、0°、45°、90°を見分けられる場合を想定して説明する。この場合、たとえば垂直及び水平方向を「0」、右45°及び左45°方向を「1」とおけば図1(1)のようなパターンが考えられる。もちろん、識別が可能な範囲において、上記以外の方向にデータを担持させることも可能である。なおこれは、垂直、水平、右45°、左45°の4方向に「0」又は「1」の2値を担持させた例である。また、基本的に数値はディレクションのみに依存するので、長さは無関係となる。従って図1(2)の様なパターンも可能である。
【0090】
図1の例は、上述のように、垂直、水平、右45°、左45°の4方向に「0」又は「1」の2値を担持させた例であるが、図2のように、水平方向を「0」、右45°方向を「1」、左45°方向を「2」とおくことで3値を表現することができ、情報密度を高めることができる(この場合3進数)。
【0091】
さらに、用途によっては、プリンタ等の印刷により線の分岐を許容できる場合には、図3のようにすることも考えられる。つまり、このようにすれば、次の線はその前の線の始点から描画してもよいし、終点から描画してもよく、限られたスペースに効率的にマーキングすることが可能となる。
【0092】
なお、本実施の形態では辺の「方向」を、光学式自動認識コードが配置される平面上の座標系に対する角度(0°から359°等)により表す例を説明したが、「方向ベクトル」により、(x、y)=(1、0)、(0、1)等で表すことも好適である。もちろん、(x、y)=(0.7、0.9)等でもよい。
【0093】
1−2 辺の「長さ」によりデータを表す方法
本実施の形態では、各辺の長さ(レングス)にデータを担持させた場合について説明する。このようなコードを以下、「レングスデータ担持コード」という。
【0094】
この場合も、コードの読み取りを行う際の画像処理において、どの程度の辺の長さを区別できるかは画像精度やマーキング精度、読み取り時のアライメント精度による。図4(1)では、マーキングしやすさを考えて1cmと2cmを見分けられる場合を想定し、垂直及び水平方向に伸びる1cmの線分を「0」、垂直及び水平方向に伸びる2cmの線分を「1」とおいた例を示す。もちろん、識別が可能な範囲において、上記以外の長さにデータを担持させることも可能である。また、基本的に数値は線の長さにのみ依存するので、線の伸びる方向とは無関係となる。従って、図4(1)と同様のデータを表すパターンとして、図4(2)の様なパターンを採用することも好ましい。
【0095】
1−3 辺の「曲率」でデータを表す方法
本実施の形態では、辺を曲線で実現し、各辺の曲率にデータを担持させた場合について説明する。なお、曲率は通常、1/曲率半径(アール)で表される。このようなコードを以下、「アールデータ担持コード」という。
【0096】
この場合も、コードの読み取りを行う際の画像処理において、どの程度の曲率を区別できるかは画像精度やマーキング精度、読み取り時のアライメント精度による。本実施の形態では、曲率が大きい(すなわち、曲率半径が小さい急峻な)ものを「0」とし、曲率が小さい(すなわち、曲率半径が大きいゆるやかな)ものを「1」とする場合を説明する。なお、この「曲率」にデータを担持させる場合、描かれる線は曲線のみならず、曲率が0である場合、すなわち「直線」も含む。
【0097】
このアールデータ担持コードをマーキングする場合、前の線の延長線上に次の線をマーキングすると値の境目が不明確となるので、図5のように、前の線の延長線上とは異なる方向に次の線をマーキングすることが好ましい。これは、すなわち、なめらかに接続するのではなく、「辺」の接線ベクトルの方向が非連続になるように接続することを意味する。すなわち、その接続点においては、「線分」としては、接続しているが傾きの変化が非連続となり、いわゆる「角」がそこに生ずるような状態となる。この結果、値の境目が明確となるのである。また、言い換えれば、その線分の微分値が非連続となるように線を接続していくことである。線分の「方向」はデータとは無関係であるので、マーキングスペースに合わせてどの方向にマーキングしてもよい。すなわち、マーキングスペース効率を高めることもできるのである。
【0098】
2 各頂点において接続している各辺の相対角度によりデータを表す方法
本実施の形態では、各頂点において接続している各辺の相対角度(アングル)にデータを担持させた場合について説明する。このようなコードを以下、「アングルデータ担持コード」という。
【0099】
上で述べたディレクションデータ担持コード等においては、座標に対する絶対的な値であるため、座標を正確に認識する必要がある。言い換えれば、対象物を正しい向きにおき、正しい向きにおかれたこの対象物を撮像し、画像を得る必要がある。
【0100】
これに対して、各辺がなす角度を読み取る本実施の形態によれば、各辺の絶対的な向きはデータに影響を及ぼさないため、対象物の向きを気にせずに撮像し、画像データを得ることが可能となる。このため、物流などの分野において、対象物が様々な方向を向いている場合にもデータを読み取ることができるので、好ましい光学式自動認識コードを提供することが可能である。
【0101】
この場合も、コードの読み取りを行う際の画像処理において、どの程度の相対角度を認識できるかは、画像精度やマーキング精度、読み取り時のアライメント精度に依存する。そのため、読み取り時の条件や精度によって細かく認識できることも考えられるが、本実施例では、最も粗く撮像した場合を想定して、90°と45°の2種類を認識できる場合について説明する。もちろん、識別が可能な範囲で上記以外の角度にデータを担持させることも可能である。なお、ここでは2種類の相対角度に対して、それぞれ異なる2種の値を担持させることで2値を表現したが、もちろん、3種以上の相対角度に対してそれぞれ異なる値を担持させれば、3値以上を表現することができ、情報密度を高めることができる。
【0102】
また、各頂点において接続している各辺の相対角度とは、その各辺の各頂点の近傍の方向を取り出し、この方向の差を相対角度として認識するものである。従って、各頂点から十分に離れた場所における各辺の方向は、どのような方向でも構わない。例えば、各頂点から十分に離れた場所における各辺は、ゆるやかな曲線として構成することも可能である。従って、図6に示すように、各頂点近傍の部分の各辺の向きを上記のようにデータによって規定し、その間は緩やかな曲線で構成することも好適である。このように、曲線によりパターンをマーキングすることができれば、スペース効率を高めることができる。例えば、図6(1)の例を直線のみで表現する場合、値「0」の後に「1」を表現しようとすれば、90°の頂点から伸びる辺の方向は上45°方向か下45°方向となる。一方、曲線を用いて「45°」の頂点を表現できれば、自由な方向に曲線を描いた後、45°の角度とすればよく、辺の伸びる方向は制限されない。すなわち、スペース効率を高めることができる。
【0103】
また、本実施の形態では、各線分間の相対的な角度にデータを担持させているので、図6(2)のように、全体が傾いたり一部が変形しても、データは変化しない。
【0104】
なお、このような頂点間の曲線の曲率を所定の曲率以下(ゆるい曲率)とすることで、読み取り時に頂点(きつい曲率)と区別することが容易となる。
【0105】
第三 3次元空間への応用
上記アングルデータ担持コードは、各頂点において接続している各辺の相対角度(アングル)でデータを担持することを特徴とするため、3次元空間に応用することもできる。このようなコードを「3次元アングルデータ担持コード」という。例えば、上記の例を応用して、各辺の相対角度が90°及び45°の2種類にデータを担持させることも可能である。この例における3面図(正面、平面、左側面)を図7に示す。
【0106】
3次元アングルデータ担持コードは、簡易的には針金のような物体を折り曲げることで表すこともできるため、3次元的な形態を有し、その形態でデータを表す「物体タグ(以下「立体タグ」や「立体コード」ともいう)」が実現可能となる。また、このような物体タグを何らかの透明物質内に固定することで、変形が防止された実用的なタグを実現することができる。例えば、透明なレジン中にこのような針金等の立体構造を封入することが好適な一例である。具体的には、液状のアクリルや液状のポリエステルの中に、この立体構造を沈め、その後固化させることにより固体の透明物質の固まりを構成することが可能である。図8に、針金を曲げて作成した3次元アングルデータ担持コードの例を示す。なお、図8における例は図7とは別形状のものである。このように作成された立体タグを、ストラップのようなひも状のものやリング等に付し、これを対象物に取り付ければ、偽造が困難な光学式自動認識コードを対象物に付すことができる。
【0107】
一方、昨今では3次元レーザーマーキング技術により、ガラスやプラスチックなどの透明部材内に3次元パターンを作成することが可能である。本実施例における3次元アングルデータ担持コードは、この3次元レーザーマーキング技術によりマーキング可能なコードとして応用することができる。このようにしてマーキングされた立体タグを、針金等により作成した場合と同様に、ストラップやリング等に付し、それを対象物に取り付けることにより、偽造が困難な光学式自動認識コードを対象物に付すことができる。また、マーキング対象物がガラスやプラスチックなど透明部材の場合は、その内部に直接的にマーキングすることもできる。
【0108】
なお、このような3次元レーザーマーキングのマーキングの可能性を考慮すると、この3次元レーザーマーキングを用いて、通常の2次元バーコードをマーキングすることは十分に可能である。しかしながら、このような2次元のバーコードは、たとえ3次元物体にマーキングした場合であっても、複写機等でコピーすることができ、偽造が容易である。一方、偽造を防ぐために、例えば、二次元バーコードを複数枚マークすることも可能であるが、これらが重なったような場合ではお互いに陰になって画像を取り込むことが困難となってしまう。反対に、すべてが陰にならないようなケースでは(たとえば上面、側面、下面に向かって正対しているような例)それぞれの面から通常にコピーすれば偽造ができてしまうことになる。
【0109】
ところが、線画の場合、通常お互いが完全に陰になる(線と線が完全に重なる)ことはまれである。仮に互いが陰になってしまった場合でも、カメラに対するアングルを変えるだけで画像を読み取ることができる。また、3面すべての画像を演算してはじめて角度関係が判るので、2面以下のコピーではもとの立体コードを認識することは難しいと想定される。特に、複数の角度から撮像した複数の画像を必須読み取りデータとすることによって、原立体コードの偽造の困難性は格段に増すものと考えられる。すなわち、偽造はより一層困難になり正当性の証明をより強くすることができる。本実施例における三次元アングルデータ担持コードは、このような線画によってマーキングするものであるので、上述した3次元アングルデータ担持コードは、偽造に対して強いコードであると言える。
【0110】
三次元アングルデータ担持コードは、図6の例と同様に、各折り曲げ位置間は必ずしも直線である必要はなく、また長さについても特段の規定は設けられていない。さらに、各折り曲げも同一平面内である必要がない(ひねり等でねじれの位置に配置することができる)。
【0111】
このような形状の自由度は上記、線と線が重なる様なケースを極力防ぐことに有効である。通常、これを読み取るには3方向からのコードの読み取りと画像の空間認識が必要であるが、逆にいうと、2方向以下からのコードの読み取りでは一般にはコピーできないという利点が生じる。すなわち、偽造に対して強いコードが実現できるのである。
【0112】
もちろん、データに対応する角度の種類の数を増加させたり(たとえば30°=0、60°=2、90°=3、120°=4)、角度間の長さをデータと関連づけたり、曲線の曲率や曲線の曲がり角度をデータと関連づけることにより、コピー防止能力の向上を図ることが可能である。同時に、データ量を増加させることも可能になる。
【0113】
また、撮像する3方向におけるコードの位置を予め定めておき、この位置が複数の方向において一致した場合にのみ、偽造でない正当なコードであると認識させることも好適である。このようにすれば、仮に3面から不正に撮影した画像を用いて立体形状を合成したような場合でも、不正なコードとして読み込みを行わないようにすることができ、偽造防止の観点から好ましい効果を得ることができる。
【0114】
なお、これらの関連づけは、いずれもアプリケーションの要求に応じて種々のものを採用することができる。
【0115】
ここまでは、アングルデータ担持コードを3次元空間に応用した例を説明したが、辺の「長さ」や「曲率」についても、2次元平面上のみでなく3次元空間上において認識、測定することができるパラメータであるから、レングスデータ担持コードやアールデータ担持コードを上記と同様に3次元空間に応用することも可能である。また、辺の「方向」を方向ベクトルで表す場合は、3次元空間上において認識、測定することができるから、ディレクションデータ担持コードのうち、方向ベクトルによって方向を表すものについても3次元空間に応用することが可能である。
【0116】
変形例
なお、上で述べた実施例においては、3次元空間上における立体タグを、例えば針金を所定の角度で折り曲げるなど、具体的な物体で表現した。また、透明部材内にレーザービームによって気泡を発生させ、外部から観察できる線状のイメージを透明部材中に浮かび上がらせる手法が知られており、このような手法でも立体タグを実現することが可能である。これらは、いずれにしても、3次元空間上に所定の物体を配置する必要がある。
【0117】
これに対して、実体のないバーチャルデータによる立体タグを実現することも好適である。すなわち、このような立体タグは、データとしてコンピュータ内部に保存され、そのデータに基づいて、所定の角度から撮影したならば得られたであろう画像を演算により算出し、モニターに表すことが考えられる。例えば、このようなモニターを複数台配用意し、前方向、後ろ方向、右方向、左方向に向けて配置することも好適である。この場合、前方向のディスプレイには、前方向から撮影したならば得られたであろう画像を表示し、後ろ方向のディスプレイには、後ろ方向から撮影したならば得られたであろう画像を表示するのである。同様に、右方向、左方向の画像も演算により算出し、各ディスプレイに表示すれば、各4方向から見たであれば得られたであろう画像が肉眼により確認することが可能である。このように、必ずしも具体的な物体ではなく、仮想的な画像としてモニターを通じて立体タグを表示することも可能である。
【0118】
なお、ここでは4台のディスプレイを用いる例を説明したが、もちろん1台のディスプレイを用いて操作者の操作により各方向からの画像を1台のディスプレイに表示し得るように構成することも好適である。
【0119】
このようなマーキング方法・マーキング装置によれば、具体的な3次元の物体を用いないので、立体タグの盗難等の恐れが極めて少ないという効果を奏する。
【0120】
このような実体のないバーチャルデータで表現した立体タグの読み取りには、各方向から撮影したならば得られたであろう画像をモニターに表示し、そのモニターの画像を一般的な2次元カメラで撮影し、得られた画像をデコードすることにより原データを復号することが考えられる。
【0121】
例えば、1台のモニターで立体タグを表現している場合、操作者は所望の角度になるようにキーボードやマウスなどを操作し、立体タグを動かし、所望の角度からの画像をモニターに表示させた後、その画像を2次元カメラで撮影する。次に、他の角度からの画像が欲しい場合には、操作者はキーボードやマウス等を操作することにより、所望の方向の向きに立体タグを向ける。そして得られたモニター画像を再び2次元カメラで撮影し、所望の角度からの画像を得るのである。このようにして、複数種類の方向を異ならせた画像を入手し、この画像を既に述べたような方法でデコードすれば、原データを復号することができる。
【0122】
このように、実体のないバーチャルデータを用いた立体タグによれば、具体的な物質が存在しないため、物質の盗難などによる被害を最小限度に抑えることができ、セキュリティー上好ましい効果を奏するものである。
【0123】
第四 線画の重ね合わせ
ここまで述べてきたように、本実施の形態における一筆書きコードは、基本的に1つの連続した線で描画される。従って、ノイズや他のコードが重なったとしても交叉点においては線がこれまで延びてきた方向(同一直線上又は同一曲線上)を前提に追跡することも可能である。そのため、複数の一筆書きコードや1つの一筆書きコードが折り曲がって重なる様なケースも許容することができる。図9に、アングルデータ担持コードの線画を重ね合わせた場合の例を示す。
【0124】
第五 コード切り出し方法
本実施の形態における一筆書きコードは、2次元画像で取り込まれ、コード部分を画像処理で切り出し、データに復号される。以下、データの担持方法ごとに分けて、コード部分の切り出し方法を説明する。
【0125】
1 ディレクションデータ担持の場合
ディレクションデータ担持の場合は、線(ライン)の方向が決まっている(例えば0°、45°、90°など)。従って、これに基づいて以下のような処理によりコード部分を切り出すことができる。なお、データを担持する辺の数を予め定め、表すデータの桁数kを予め定めておくことにより、コード部分の切り出しを容易にすることができる。このように、「データ桁数kを予め定める」ことは、請求項における「データを担持する辺の数が予め定められていること」に相当する。
【0126】
(1)まず、予め与えられたラインの条件(色彩、濃度、長さ、太さ、エッジ特性)に適合したライン画像を抜き出す。
【0127】
(2)そのうち、予め与えられた方向成分を持つラインを抜き出す。
【0128】
(3)これらが交わるポイント「P」(折り曲がり点、すなわち頂点)を抜きだす。
【0129】
(4)上記複数のポイント「P(1〜n)」から予め定められたデータ桁数kに相当するk個の辺を抽出する。
【0130】
このようなコードの切り出しは、基本的に、ノイズラインが存在しなければ、ラインの追跡で行うことができる。ラインの追跡は、通常、ラインの始点から終点に向けて画像を読み込むことで行う。可能な場合は、始点及び終点を明らかにするために、先端、終端部分に特殊なマーク(切り出しマーク)を施し、切り出しの補助に使うことも好ましい。例えば、始点及び終点を特殊な色彩にしたり、ラインの太さを変更する等により他と区別する方法が考えられる。
【0131】
頂点(ポイント)の抽出を容易にするために、辺と辺が接続する部分(頂点、ポイント)の曲率に予め基準値を定めておき、この基準値以上(きつい曲率)である場合は頂点(ポイント)と認識させることも好適である。これは、請求項における「辺と辺が接続する頂点には、曲率が所定の基準値以上の箇所が含まれている」場合の一例である。また、この基準値以下のゆるい曲率のものについては、エラーとするか、読み取りを中止することも好適である。
【0132】
また、一筆書きコードの途中に画像のかすれがあった場合は仮想ラインで連結する。すなわち、一筆書きコードは基本的に1本の線分で構成されるので、かすれによってラインがとぎれた(頂点が見つからずに終わった)場合でも、かすれ前後のラインは連続しているものと擬制して追跡を継続する。
【0133】
さらに、ノイズラインがある場合は、疑似頂点(ポイント)がある。このとき、これらの頂点の連絡したラインでデータ桁数kに相当する場合が1つの場合これを採用する。すなわち、ラインの数がデータ桁数kと一致する場合は、抽出したラインをそのまま採用する。但し、交叉点においては線がこれまで延びてきた方向(同一直線上又は同一曲線上)に追跡することを前提とし、ノイズラインを選別、除去する。
【0134】
また、それ以外の場合を加味して、データの誤り検出計算を行い、合致したものを採用する。複数が合致もしくは合致なしの場合は不読とする。
【0135】
2 アングルデータ担持の場合
アングルデータ担持の場合も、上記1と同様に、データを担持する頂点の数を予め定め、表すデータの桁数kを予め定めておくことにより、コード部分の切り出しを容易にすることができる。このように、「データ桁数kを予め定める」ことは、請求項における「データを担持する頂点の数が予め定められていること」に相当する。
【0136】
アングルデータ担持の場合は、次のように切り出しを行う。
【0137】
(1)まず、予め与えられたラインの条件(色彩、濃度、長さ、太さ、エッジ特性)に適合したライン画像を抜き出す。
【0138】
(2)これらが交わるポイント「P」(折り曲がり点、すなわち頂点)を抜きだす。
【0139】
(3)上記複数のポイント「P(1〜n)」から予め定められたデータ桁数kに相当するポイントk個のポイント「P」を抽出する。
【0140】
このようなコードの切り出しは、1と同様に、基本的に、ノイズラインが存在しなければ、ラインの追跡で行うことができる。ラインの追跡も1と同様に、通常、ラインの始点から終点に向けて画像を読み込むことで行う。可能な場合は、始点及び終点を明らかにするために、先端、終端部分に特殊なマーク(切り出しマーク)を施し、切り出しの補助に使うことも好ましい。例えば、始点及び終点を特殊な色彩にしたり、ラインの太さを変更する等により他と区別する方法が考えられる。
【0141】
頂点(ポイント)の抽出を容易にするために、辺と辺が接続する部分(頂点、ポイント)の曲率に予め基準値を定めておき、この基準値以上(きつい曲率)である場合は頂点(ポイント)と認識させることも好適である。これは、請求項における「辺と辺が接続する頂点には、曲率が所定の基準値以上の箇所が含まれている」場合の一例である。また、この基準値以下のゆるい曲率のものについては、エラーとするか、読み取りを中止することも好適である。
【0142】
また、一筆書きコードの途中に画像のかすれがあった場合は仮想ラインで連結する。すなわち、一筆書きコードは基本的に1本の線分で構成されるので、かすれによってラインがとぎれた場合でも、かすれ前後のラインは連続しているものと擬制して追跡を継続する。
【0143】
さらに、ノイズラインがある場合は、疑似頂点(ポイント)がある。このとき、これらの頂点の連絡でデータ桁数kに相当する場合が1つの場合これを採用する。すなわち、頂点の数がデータ桁数kと一致する場合はこれを採用する。但し、交叉点においては線がこれまで延びてきた方向(同一直線上又は同一曲線上)に追跡することを前提とし、ノイズラインを選別、除去する。
【0144】
また、それ以外の場合を加味して、データの誤り検出計算を行い、合致したものを採用する。複数が合致もしくは合致なしの場合は不読とする。
【0145】
なお、アングル情報担持の場合、線分は曲線を使うことができるから、曲線の使用箇所を予め定めておいて、これに合致しないラインを除去することもできる。また、これを用いて誤り検出を行うこともできる。
【0146】
なお、ここまでは、ディレクションデータ担持の場合とアングルデータ担持の場合について説明したが、レングスデータ担持、アールデータ担持についても、上記アングルデータ担持の場合と同様の流れで切り出しを行うことが可能である。
【0147】
この場合、アングルデータ担持の場合とほぼ同様の処理を行うが、上記ポイントPを抽出した際に、予め定められたデータ桁数kに相当するk個の辺も抽出する。そして、この抽出した辺のレングス(長さ)、抽出した辺のアール(曲率)をそれぞれ取り出すことによってデータを復元することが可能である。その他の処理については、上記アングルデータ担持のアルゴリズムと同様である。
【0148】
3 始点及び終点について
上で述べたように、「頂点」には、主に、2辺に接続しているものと、1辺にのみ接続しているものがある。1辺にのみ接続している頂点は、線の端部となり、通常はこの端部が始点又は終点となる。しかし、一筆書きコードにおいては、この始点及び終点が不明確なものが存在し得る。例えば、リング状のものや、非常に長くて始点終点が明確でないものなどである。これらは描画された2次元のコードに限られず、ワイヤ(針金)などの実体的な3次元のコードの場合でも考えられるケースである。この様な場合は、始点や終点を明示的に示すことが好適である。例えば、線の端部(始点・終点)にさらに辺を設けて、始点や終点となる頂点を特別な変曲点として構成することを提案する。ここで変曲点としたのは、その頂点に接続する辺のなす角度を、データを表す角度とは異なる角度にするという意味である。このように、データを表す角度とは異なる変曲点で頂点を構成することにより、始点や終点を表すことが好適である。なお、この場合、新たに頂点に対して付加した辺を「追加辺」と呼ぶ。図10には、始点及び終点に接続するこの「追加辺(10a、10b)」の様子を表す説明図が示されている。図10に示しているように、始点となる頂点において接続する追加辺10aと、既存の辺とのなす角度を例えば65°とし、始点であることを表すことが好適である。一方、終点となる頂点においては、接続する追加辺10bと、既存の辺とのなす角度を35°とする場合の例が示されている。このように、追加辺と既存の辺とのなす角度を35°とすることによって、終点であることが表されているのである。このように、データを表すための角度とは異なる角度を構成するために追加辺を設け、この追加辺が設けられた始点・終点はいわば変曲点として構成されることとなる。
【0149】
ここまでは、変曲点におけるアングルを、データを表すアングルとは異なるアングルとすることで、始点及び終点を表すことを説明した。これに対し、始点や終点に付加した上記追加辺のディレクション(方向)を、特別な「方向」にすることも好適である。すなわち、この「方向」とは、データを表す方向とは異なる方向とするのである。
【0150】
このような始点パターンや終点パターンを予め定めておくことにより、始点及び終点を明示的に表すことが可能である。
【0151】
また、このように、データでは用いていないアングル又はディレクションを備えた中間点を用いることも好適である。頂点を、このような中間点を表すようなアングル又はディレクションに設定することによって、いわばデータの切れ目・区切りを表すことが可能である。その結果、光学式自動認識コードの一部のみを抜き出してデコードすることが可能となる。例えば、始点から中間点までのデータをデコードすることや、又は中間点から終点までのデータをデコードする、等である。
【0152】
これまで、始点や終点にさらに接続する追加辺のアングルやディレクションによって、始点又は終点を表すことを説明したが、この追加辺の色彩、太さ、模様などを他と区別し得るものとすることも好適である。このように、色彩、太さ、模様などを特別な値とすることで、始点又は終点であることを明示的に表示することも好適である。
【0153】
第六 装置について
1 撮像装置及び読み取り装置(デコード装置)
今まで述べた読み取りアルゴリズムを実現する装置としては、CCDカメラなどの撮像装置と、これらCCDカメラなどから得られた画像データを入力し、原データを出力する画像処理装置と、から構成することが好ましい。また、この画像処理装置において復号して得られた原データを表示出力するディスプレイや印刷装置も備えていることが好ましい。このうち特に、CCDカメラ等の撮像装置による撮像方法について、2次元平面上における場合と3次元空間における場合に分けて以下説明する。
【0154】
2−1 2次元平面上における一筆書きコードの撮像方法
2次元平面においてマーキングされた一筆書きコードのうち、ディレクションデータ担持コードの場合には、各辺の絶対角度に基づきデータを復号するため、撮像手段であるCCDカメラなどは常に正しい水平方向垂直方向に配置する必要がある。もし、正確な水平を出すことが困難な場合には、画像処理装置において画像を回転させ、正確な角度になるように画像を調整する必要がある。
【0155】
一方、アングルデータ担持コードの場合には、各頂点に接続する各辺のなす相対的な角度によりデータを復号するため、上記ディレクションデータ担持コードとは異なり、CCDカメラの位置や向きについて正確な配置は原理的には必要がない。また、同様の理由により、対象物である商品等が斜めに傾いている場合であっても問題はない。
【0156】
また、レーザービームによってマーキングを行う場合は、レーザービームの「軌跡」を読み取るために、上の第一「マーキング方法について」にて説明したように、動画として撮像するか、あるいは静止画で撮像する場合は少なくとも描画時間の間はシャッターを開けておく等の工夫が必要になる。
【0157】
2−2 3次元空間における一筆書きコードの撮像方法
3次元空間における実体による立体タグをCCDカメラ等により撮像する場合は、3方向に3台のCCDカメラを用いてもよいし、1台のカメラを用いて、カメラの位置を変えて3方向から撮像する方法でもよい。また、カメラを1台として対象物を回転させる手段を設けてもよい。また、立体形状をレーザースキャンで読み取る方法も広く知られており、これを用いて立体タグを読み取ることも好適である。
【0158】
なお、実体のないバーチャルデータで立体タグを表現した場合の撮像方法については、上の第三「3次元空間への応用」で説明した通りである。
【0159】
2−3 画像処理装置について
画像処理装置としては、一般的にはコンピュータを用いることが好ましく、撮像装置から入力された画像データ上のラインを画像処理技術により追跡し、もとのデータを復号することが好ましい。具体的には、画像処理技術により、辺の方向、長さ、曲率や、頂点における各辺の相対角度など、データの担持方法によって、予め定められた特徴に合致するものについて読み取りを行いデータを復号する。
【0160】
3次元空間で実現した立体タグの場合には、3方向から3台のCCDカメラによって3種の画像データを得る。これは、上述したように、1台のカメラで3方向から撮像して3種類の画像データを得てもよい。いずれにしても、このようにして得られた3種の画像データについて、それぞれ線画を表すラインデータを抽出する。抽出して得られたラインデータを立体空間上で合成することにより、立体空間におけるラインのデータを構成する。このようにして得られた立体空間上のラインのデータについて始点からそのラインを追跡し、3次元アングルデータ担持コートの場合は、各頂点におけるその頂点に接続する2辺の3次元空間上においてなす角度を求め、その角度からデータをデコードする。ディレクションデータ担持、レングスデータ担持、アールデータ担持の場合は、それぞれ3次元空間上における各辺の方向ベクトル、長さ、曲率を求め、それらからデータをデコードする。
【符号の説明】
【0161】
A 始点
B 頂点
C 頂点
D 頂点
E 頂点
F 終点
10a 追加辺
10b 追加辺

【特許請求の範囲】
【請求項1】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
前記辺と辺が接続する頂点において、その頂点に接続する2つの前記辺の相対角度によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項2】
請求項1に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各頂点において接続している前記各辺の前記相対角度はn種類以上あり、それぞれ異なるn種以上の値を担持することを特徴とする光学式自動認識コード。なお、nは2以上の整数を表す。
【請求項3】
請求項2に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各頂点において接続している前記各辺は、直線又は予め与えられた曲率以下の曲線であることを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項4】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
前記各辺の形態によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項5】
請求項4に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各辺の形態とは、前記光学式自動認識コードが配置される平面上の座標系に対する前記各辺の角度であり、
前記各辺は、前記角度が表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項6】
請求項4に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各辺の形態とは、前記各辺の表す方向ベクトルであり、
前記各辺は、前記方向ベクトルが表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項7】
請求項4に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各辺の形態は、前記辺の長さであり、
前記各辺はその辺の前記座標系に対する長さによりデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項8】
請求項4に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記各辺の形態は、前記各辺の前記座標系に対する曲率であり、
前記各辺はその辺の曲率によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記頂点には、曲率が所定の基準値以上の箇所が含まれていることを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
前記辺と辺が接続する箇所の曲率が、前記所定の基準値以下の場合は、エラーとする又は読み取りを中止することを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項11】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、
前記各頂点において、その頂点に接続する2つの前記辺の3次元空間における相対角度によってデータが表されることを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項12】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、
前記各辺はその辺の方向ベクトルが表す方向によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項13】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、
前記各辺はその辺の3次元空間における曲率によってデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項14】
1本の連続した線から構成される光学式自動認識コードにおいて、
複数の前記辺が一連なりに接続して前記線が構成されており、
かつ、前記一連なりの線は3次元空間における立体形状を構成し、
前記各辺はその辺の前記座標系に対する長さによりデータを担持することを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項15】
請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
異なる複数の方向から光学式自動認識コードの画像を撮像するステップと、
前記画像に基づいて演算処理を行うことにより光学式自動認識コードを認識するステップと、
を有することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項16】
請求項15に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
前記異なる複数の方向における前記立体形状の位置が予め定められており、
前記異なる複数の方向から撮像された画像における前記立体形状の位置が、前記予め定められた位置と、複数の位置において合致する場合に読み取りを行うことを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項17】
請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
レーザースキャンにより光学式自動認識コードを読み取ることを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項18】
請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの表示方法において、
前記線を表すデータが格納された記憶手段から、前記線のデータを取り出すデータ取り出しステップと、
前記取り出したデータに基づき、所定の方向から見たならば得られたであろう画像を演算により算出するステップと、
前記ステップにおいて得られた画像を表示手段に表示するステップと、
を含むことを特徴とする光学式自動認識コードの表示方法。
【請求項19】
請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードを表示する装置において、
前記線のデータを保存する記憶手段と、
前記記憶手段から前記線のデータを取り出し、前記線を所定の方向から見たであれば得られたであろう画像を演算により算出する算出手段と、
前記算出手段が算出した画像を表示する表示手段と、
を含むことを特徴とする光学式自動認識コードの表示装置。
【請求項20】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
データを担持する前記辺又は前記頂点の数が予め定められていることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項21】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
前記線は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上の特徴が予め定められており、
前記線が前記特徴と一致する特徴を有する場合に正規の値と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項22】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
前記線の始点の特徴が予め定められており、
前記線における前記特徴を有する部分を始点と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項23】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードの読み取り方法において、
前記線の終点の特徴が予め定められており、
前記線における前記特徴を有する部分を終点と認識することを特徴とする光学式自動認識コードの読み取り方法。
【請求項24】
請求項22に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、
前記線の始点の前記特徴が、
前記線の始点にさらに接続する追加辺を設け、
前記追加辺と、前記線の始点に接続する既存の前記辺と、がなす角度、
又は、前記追加辺の方向、
のいずれか1種又は2種であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項25】
請求項22に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、
前記線の始点の前記特徴が、
前記追加辺の色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項26】
請求項23に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、
前記線の終点の前記特徴が、
前記追加辺と、前記線の終点に接続する既存の前記辺と、がなす角度、
又は、前記追加辺の方向、
のいずれか1種又は2種であって、前記始点と異なる特徴であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項27】
請求項23に記載の光学式自動認識コード読み取り方法において、
前記線の終点の前記特徴が、
前記追加辺の色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であって、前記始点と異なる特徴であることを特徴とする光学式自動認識コード読み取り方法。
【請求項28】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードにおいて、
前記線の始点と終点がつながり、全体として環状であり、
前記始点は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上の特徴が付され、この特徴によって始点であることを表し、
前記終点は、色彩、太さ、模様のいずれか1種又は2種以上であって前記始点の特徴とは異なる特徴が付され、この特徴によって終点であることを表すことを特徴とする光学式自動認識コード。
【請求項29】
請求項1から9のいずれか1項、又は、請求項11から14のいずれか1項に記載の光学式自動認識コードが付された物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−53753(P2011−53753A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−199644(P2009−199644)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(506226175)ビーコア株式会社 (39)
【Fターム(参考)】