説明

光学機器用セラミックスレンズ

【課題】 多結晶構造の透光性セラミックスを用い、光学機器に適した分解能を有するレンズとする。
【解決手段】 多結晶構造の透光性セラミックスのうち、粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材として研磨したセラミックスレンズとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にデジタルカメラのような小型撮像装置などに用いられる小型高性能の光学系レンズ群に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルスチルカメラやビデオプロジェクタなどの光学機器では、小型高性能のズームレンズが使用されている。
この光学機器のズームレンズなどの組合せレンズでは、小型で高解像度であることが要求される。
また、今日、透光性セラミックスが開発され、この透光性セラミックスは光学ガラスよりも高い屈折率を有し、硬度や曲げ強度の値も光学ガラスよりも高い数値であるため、光学系の小型化及び薄型化に適したレンズが製作されるようになってきた。
【0003】
この透光性セラミックスは、屈折率が高く、硬度や曲げ強度も大きいため、レンズとして使用すれば光学機器の光学系を小型化するには最適である。
しかし、この透光性セラミックスは、可視領域の波長における透過特性に差異があるため、僅かに黄色味を帯びて見えることになり、また、結晶粒界面にボイドと呼ばれる泡の存在あるため、セラミックスレンズは像の鮮明度が光学ガラスのレンズに比べて僅かに低下する問題があった。
【0004】
しかし、本件出願人は、ズームレンズを構成するレンズ枚数の少ない安価な組合せレンズであって、小型で高機能を有するデジタルスチルカメラ用ズームレンズとしての組合せ条件を特定する発明の出願(例えば特許文献1)を行った。
このような光学機器用レンズにおいて、各像点の主光線が重なる位置の近傍にセラミックスレンズを配置すれば、像面に結像する各像点の光線束がセラミックスレンズを通過する際の位置を共通とすることにより、セラミックスレンズによる着色やフレアの発生などの影響差を少なくすることができ、光学機器用のレンズ装置にセラミックスレンズを使用することができるようになった。
【特許文献1】特開2003−057542
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
セラミックスレンズは、屈折率が高くすることができ、硬度や曲げ強度も大きくすることができるため、光学機器用のレンズとして光学ガラスレンズよりも優れた利点を発揮させることができるものである。
しかし、レンズの材料に使用する透光性セラミックスの粒子径によってレンズの分解能が異なり、光学機器用のレンズとしては適さないものもある。
本発明は、このようなセラミックスレンズの欠点を抑制し、光学機器に適したセラミックスレンズを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、多結晶構造の透光性セラミックスのうち、粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材として研磨したセラミックスレンズとするものであり、好ましくは、粒子径が85μメートル以下の透光性セラミックスを硝材とするものである。
このように、粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材とすれば、30ライン・ペア/mmの正弦波格子に関してMTF値を70パーセント以上とすることができ、粒子径が85μメートル以下の透光性セラミックスを硝材とすれば、30ライン・ペア/mmの正弦波格子に関してMTF値を80パーセント以上とすることができる。
【0007】
また、このセラミックスレンズの分光透過率を420ナノメートルから700ナノメートルの範囲において、72パーセント以上とすることが好ましい。
このように、分光透過率を420ナノメートルから700ナノメートルの範囲において、72パーセント以上とすることにより、可視光領域の各波長の光を透過させて像を形成することができる。
【0008】
さらに、このセラミックスレンズは、屈折率が2.0以上の透光性セラミックスを硝材とするものである。
このように、屈折率が2.0以上であるから、光学ガラスよりも高屈折率のレンズとすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る光学機器用セラミックスレンズは、多結晶構造の透光性セラミックスの内、粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材とするものであり、30ライン・ペア/mmの正弦波格子に関してMTF値を70パーセント以上の分解能を有し、光学機器に合った解像度の高いレンズとすることができる。
【0010】
また、分光透過率を420ナノメートルから700ナノメートルの範囲において、72パーセント以上とするものであり、可視光線の透過率を確保してカメラなどの撮像機器やプロジェクタなどの投影機器のレンズとして利用することができるものである。
そして、屈折率が2.0以上のセラミックスレンズとすれば、一般的光学ガラスによるレンズよりも高屈折率のレンズとして、レンズ全体で小型で高性能のレンズ光学系を形成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係るセラミックスレンズは、屈折率が2.0以上にして粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材として切断、荒ずり、砂かけ、研磨などによりレンズとし、分光透過率を420ナノメートルから700ナノメートルの範囲において、72パーセント以上のセラミックスレンズとするものである。
【実施例】
【0012】
本発明は、d線に対する屈折率が2.08であり、アッベ数が30.4の透光性セラミックスを用い、タブレット状に成形されたものを荒ずりにより粗形状とし、砂かけにより仕上げ寸法に合わせ、研磨、芯とりを行って、厚さ0.4mm直径が4mmの凹メニスカスレンズを作成した。
なお、この透光性セラミックスは、直線透過率の光学特性としては、400ナノメートル付近の透過率が約70パーセントであり、450ナノメートルから700ナノメートルの透過率が約95パーセントであり、僅かに黄色味の色合いが着いたものである。
【0013】
そして、このセラミックスレンズを他の光学ガラスレンズと組み合せてデジタルスチルカメラ用ズームレンズとしたところ、鮮明度を維持し、従来の光学ガラスレンズと同等の性能を発揮しつつ光学ガラスレンズよりも強度の高いレンズとすることができた。
また、このセラミックスレンズを作成するに際し、透光性セラミックスの粒子径が70μメートルのもの、120μメートルのもの、150μメートルのものを用いて各々荒ずり、研磨などを行って光学レンズとした。
【0014】
そして、この粒子径の異なるセラミックスレンズを1ミリメートルに30本の線を引いた正弦波格子を用いてMTF(モジュレーショントランスファーファンクション)の測定を行ったところ、表1のようになった。
【0015】
【表1】

【0016】
そして、シミュレーションの結果、粒子径が約125μメートルであれば、MTF値を70パーセント以上とし、粒子径が約85μメートルであれば、MTF値を80パーセント以上とすることができることが判明した。
なお、現在の透光性セラミックスの最小粒子径は、15μメートル乃至20μメートル程度のものが製造されている。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明によれば、セラミックスレンズを用い、画質を低下させること無く小型で耐久性のある光学機器用のレンズ装置を製造することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
多結晶構造の透光性セラミックスのうち、粒子径が125μメートル以下の透光性セラミックスを硝材として研磨したことを特徴とするセラミックスレンズ。
【請求項2】
分光透過率を420ナノメートルから700ナノメートルの範囲において、72パーセント以上であることを特徴とする請求項1に記載したセラミックスレンズ。
【請求項3】
屈折率が2.0以上の透光性セラミックスを硝材としたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載したセラミックスレンズ。