説明

光学機器

【課題】組み立て精度を向上させた光学機器を提供することを目的とする。
【解決手段】
光学機器は、少なくとも1つの光学素子と保持部材とラック部材30と送りねじ52とを備える。保持部材は、光学素子を保持する。ラック部材30は、少なくとも1ヵ所のラック33を有する。さらにラック部材30は、保持部材に取り付けられている。ラック部材30は、ラック33の歯筋と略平行である方向に送りねじ52へ挿入されている。送りねじ52は、ラック33に噛み合って回転することで保持部材を駆動する。ラック33は、ラック33の挿入方向Yの端面に行くに従い歯幅Wが狭くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、カメラ等に用いられる光学機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等に用いられる光学機器は、光学素子を保持したレンズ枠を鏡筒内に備える。このレンズ枠をズームモータで駆動することで、焦点距離を変えることができる。このレンズ枠とズームモータとは、レンズ枠に設けられたラックに、ズームモータに設けられた送りねじを挿入することにより、係合している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−139516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラックに送りねじを挿入する際、ラックの歯と送りねじのネジ山とが噛み合わず、ラックに送りねじが乗り上げることがあった。その場合、レンズ枠をズームモータにより駆動できないため、再度組み直しの工程が発生しなければならなかった。
【0005】
そこで、ここに開示された技術は、上記の問題を解決すべく、組み立て精度を向上させた光学機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、ここに開示された技術にかかる光学機器は、少なくとも1つの光学素子と保持部材とラック部材と送りねじとを備える。保持部材は、光学素子を保持する。ラック部材は、少なくとも1ヵ所のラックを有する。さらにラック部材は、保持部材に取り付けられている。ラック部材は、ラックの歯筋(延伸方向)と略平行である方向に送りねじへ挿入されている。送りねじは、ラックに噛み合って回転することで保持部材を駆動する。ラックは、ラックの挿入方向の端面に行くに従い歯幅が狭くなっている。
【発明の効果】
【0007】
上記の構成によれば、組み立て精度を向上させた光学機器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施の形態1にかかるレンズ鏡筒の分解斜視図
【図2】実施の形態1にかかる2群レンズ枠の斜視図
【図3】実施の形態1にかかるラック部材の斜視図
【図4】実施の形態1にかかる噛合部の上面図
【図5】実施の形態1にかかるズームモータの斜視図
【図6】実施の形態1にかかるラックと送りねじとの係合関係を示す図
【図7】比較例にかかるラック部材の噛合部の上面図
【発明を実施するための形態】
【0009】
(実施の形態1)
実施の形態1は、光学機器の一例であるレンズ鏡筒100について説明する。
【0010】
1.レンズ鏡筒100の構成
図1は、実施の形態1にかかるレンズ鏡筒100の分解斜視図である。ここで、説明の便宜上、被写体側と前側、撮像素子側を後側とする。
レンズ鏡筒100は、1群レンズ枠10と、2群レンズ枠20と、ラック部材30と、本体枠40と、ズームモータ50とを備える。レンズ鏡筒100の光軸Xは、レンズ鏡筒100内に設けられた複数のレンズ(光学素子の一例)で構成される光学系によって設定される。そして、レンズ鏡筒100内の光学系を通った光は、撮像素子上で結像される。
1群レンズ枠10は、少なくとも1つのレンズを備える。1群レンズ枠10は、レンズ鏡筒100に設けられるレンズのうち、最も被写体側に配置されるレンズを備える。1群レンズ枠10は、本体枠40の被写体側の端面に固定される。
2群レンズ枠20は、少なくとも1つのレンズ21(図2参照)を備える。2群レンズ枠20は、1群レンズ枠10より撮像素子側に配置される。2群レンズ枠20は、本体枠40内の2本のガイドポール(図示せず)で保持されている。2群レンズ枠20は、ラック部材30を有する。
ラック部材30は、2群レンズ枠20に支持されている。ラック部材30は、ズームモータ50と係合されている。ラック部材30は、ズームモータ50により光軸X方向に駆動される。そのため、2群レンズ枠20には、ズームモータ50の駆動力が伝わり、2群レンズ枠20は、光軸X方向に駆動される。これにより、レンズ鏡筒100の焦点距離が変更される。
本体枠40は、前側の端面と後側の端面に開口を有する直方形状である。前側の端面には、1群レンズ枠10がビスにより固定されている。後側の端面には、撮像素子を備えた板金が取り付けられている。本体枠40は、内部に、複数のレンズを有する。また、本体枠40は、内部に、絞り機構と、像ぶれ補正機構とを備える。これらにより、撮像素子上に光が結像される。
【0011】
2.2群レンズ枠とラック部材の構成
図2は、実施の形態1にかかる2群レンズ枠20の斜視図である。2群レンズ枠20は、少なくとも1つのレンズ21を保持する平面部22と、ガイドポールと係合される軸受け部23と、を備える。平面部22は、光軸Xと略垂直な面である。軸受け部23は、平面部22の外周側に光軸Xと略平行に形成されている。軸受け部23は、光軸X方向に貫通した孔部を有し、孔部には、ガイドポールが挿入されている。また、軸受け部23には、保持部24が形成されている。保持部24は、光軸X方向に配置された2箇所でラック部材30を保持する。2箇所の間には、バネ25が設けられる。バネ25は、ラック部材30を光軸X方向に保持部24に付勢する。また、バネ25は、ラック部材30を光軸Xと垂直方向に送りねじ52(図5参照)に付勢する。
【0012】
3.ラック部材の構成
図3は、実施の形態1にかかるラック部材30の斜視図である。ラック部材30は、係合部31と噛合部32とストッパー35とで構成される。
係合部31は、光軸X方向を中心軸とする2つの円柱形状の突起である。係合部31は、前側および後側に突出している。係合部31は、保持部24に形成された2つの穴部に挿入されることにより、保持部24と係合している。そして、2つの係合部31の間にはバネ25が設けられる(図2参照)。噛合部32は、光軸Xと平行な平面形状である。噛合部32の少なくとも1箇所には、後述する送りねじ52(図5参照)と噛み合う複数のラック33が形成されている。実施の形態1にかかるラック33は、噛合部32に形成されている。ラック33は、噛合部32から突出した複数の歯34で構成されている。ラック33の複数の歯34は、それぞれ平行に形成されている。ストッパー35は、ラック33と対向する位置に設けられている。ストッパー35は、ラック33との間に送りねじ52(図5参照)が位置するように設けられる。これにより、ストッパー35はラック33と送りねじ52の位相ズレを抑制することが出来る。
【0013】
図4は、実施の形態1にかかる噛合部32の上面図である。ラック33の歯34は、ラック33の延伸方向の端面に行くに従い歯幅Wが狭くなる形状を有する。歯幅Wは、後述する送りねじ52(図5参照)のネジ山と噛み合う幅で形成される。ラック33の歯34における延伸方向の端面は、噛合部32の面内におけるラック33の延伸方向に対して略45度の角度でカットされている。また、ラック33の歯34における延伸方向の端面は、高さ方向に対して略45度の角度でカットされている。
【0014】
4.ズームモータの構成
図5は、実施の形態1にかかるズームモータ50の斜視図である。ズームモータ50は、本体部51と送りねじ52と取付部53とで構成される。本体部51は、送りねじ52を回転駆動するモータである。送りねじ52は、光軸Xと略平行に延伸する軸に、ラック33と噛み合うネジ山を有する。送りねじ52のネジ山とラック33の歯34が噛み合うことにより、送りねじ52とラック33とが係合される。本体部51の駆動軸と送りねじ52の回転軸とは一致する。送りねじ52の一端は、本体部51と直結している。取付部53は、一端が本体部51に固定され、他端で送りねじ52の他端を保持している。取付部53は、本体枠40の側面にビスにより取り付けられる。
【0015】
5.ラック33と送りねじ52の係合関係
図6は、実施の形態1にかかるラック33と送りねじ52との係合関係を示す図である。ズームモータ50は、送りねじ52の回転軸が光軸Xと平行となるように、本体枠40の側面に取り付けられる(図1参照)。本体枠40の側面には、ズームモータ50の送りねじ52が進入できる開口が形成されている。ズームモータ50は、送りねじ52がラック33と噛み合うように、本体枠40内部のラック部材30と係合される。ズームモータ50は、本体部51が撮像素子側、送りねじ52が被写体側となるように本体枠40に取付けられる。
次に、ラック部材30とズームモータ50との組立について、詳述する。ラック部材30は、送りねじ52に対して、ラック33の延伸方向と略並行である方向に組みつけられる。実施の形態1では、送りねじ52が、ラック部材30に対して、ラック33の延伸方向に挿入される。送りねじ52の挿入方向は、図6において方向Yで示される。このとき、送りねじ52は、噛合部32とストッパー35との間に挿入される。
ラック部材30を係合した2群レンズ枠20を本体枠40内部に保持した後に、ズームモータ50を本体枠40側面に取付けることでラック部材30と送りねじ52が係合する。
ここで、比較例にかかるラック部材60と送りねじ52との係合関係について説明する。図7は、比較例にかかるラック部材60の噛合部62の上面図である。図7に示すように、従来のラック部材60は、ラック63の延伸方向に対してラック63の歯幅Wが一定である。つまり、ラック63は、ラック部材60の挿入方向Yの端面に行くに従い歯幅Wが狭くなっていない。このため、ラック部材60とズームモータ50とを組み付ける場合、ラック63と送りねじ52とが噛み合わない位置で組みつけられると、ラック63の歯64が送りねじ52のネジ山に乗り上げる組立不良が発生することがある。
一方、実施の形態1におけるラック33は、ラック部材30の挿入方向Yの端面に行くに従い歯幅Wが狭くなっている。そのため、ラック部材30と送りねじ52の係合時には、ラック33は送りねじ52のネジ山に倣う。つまり、ラック部材30を係合した2群レンズ枠20が光軸X方向に移動することにより、ラック33と送りねじ52との噛み合いの位置が調整される。これにより、レンズ鏡筒100は、組付け時にラック33の歯34が送りねじ52のネジ山に乗り上げることを抑制できる。
したがって、レンズ鏡筒100は、組み立て精度を向上させた光学機器を提供することができる。
そして、本体部51が駆動されることで、送りねじ52は回転する。送りねじ52が回転されることにより、本体部51の駆動力がラック33に伝わる。これにより、ズームモータ50は、ラック部材30を介して2群レンズ枠20を光軸X方向に駆動させる。このようにして、レンズ鏡筒100の焦点距離が変更される。
5.まとめ
実施の形態1のレンズ鏡筒100(光学機器の一例)は、少なくとも1つのレンズ21と2群レンズ枠20(保持部材の一例)とラック部材30と送りねじ52とを備える。2群レンズ枠20は、レンズ21を保持する。ラック部材30は、少なくとも1ヵ所のラック33を有する。さらにラック部材30は、2群レンズ枠20に取り付けられている。ラック部材30は、ラック33の歯筋(延伸方向)と略平行である方向Yに送りねじ52へ挿入されている。送りねじ52は、ラック33に噛み合って回転することで2群レンズ枠20を駆動する。ラック33は、ラック33の挿入方向Yの端面に行くに従い歯幅Wが狭くなっている。
この構成によれば、レンズ鏡筒100は、組み立て精度を向上させた光学機器を提供することができる。
【0016】
(他の実施の形態)
ここに開示された技術にかかる実施の形態として、実施の形態1を例示した。しかし、ここに開示された技術はこれには限らない。そこで、ここに開示された技術の他の実施の形態を以下まとめて説明する。なお、ここに開示された技術は、これらには限定されず、適宜修正された実施の形態に対しても適用可能である。
実施の形態1において、ラック33は、ラック部材30の1箇所に形成されているが、これに限られない。ラック33は、ラック部材30の少なくとも1箇所に形成されていればよい。ラック33は、例えば、噛合部32に対向する位置に設けられたストッパー35に形成されていてもよい。
実施の形態1において、ラック33は、突出した複数の歯34で構成されているが、これに限られない。ラック33の歯34は、少なくとも1つあればよい。ただし、ラック33の歯34は、複数形成されることが好ましい。また、実施の形態1におけるラック33の歯34における延伸方向の端面は、噛合部32の面内におけるラック33の延伸方向に対して略45度の角度でカットされているが、これに限られない。ただし、ラック33の歯34における延伸方向の端面は、噛合部32の面内におけるラック33の延伸方向に対して60度以下でカットされることが好ましい。また、ラック33の歯34における延伸方向の端面は、高さ方向に対して略45度の角度でカットされているが、これに限られない。ただし、ラック33の歯34における延伸方向の端面は、高さ方向に対して60度以下でカットされることが好ましい。
実施の形態1において、ラック部材30にはストッパー35が設けられているが、ストッパー35は、形成されなくてもよい。ただし、ストッパー35が設けられることにより、ラック33と送りねじ52の位相ズレを抑制することが出来るため、ストッパー35が形成されることが好ましい。
実施の形態1において、ラック部材30と送りねじ52とは、送りねじ52がラック部材30に対してラック33の延伸方向に挿入されることにより組み付けされるが、これに限られない。ラック部材30は、ラック33の歯筋(延伸方向)と略並行である方向に送りねじ52へ挿入されてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0017】
ここに開示された技術は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、カメラ付き端末等に適用できる。
【符号の説明】
【0018】
10 1群レンズ枠
20 2群レンズ枠(保持部材の一例)
21 レンズ(光学素子の一例)
22 平面部
23 軸受け部
24 保持部
25 バネ
30 ラック部材
31 係合部
32 噛合部
33 ラック
34 歯
35 ストッパー
40 本体枠
50 ズームモータ
51 本体部
52 送りねじ
53 取付部
60 ラック部材
62 噛合部
63 ラック
64 歯
100 レンズ鏡筒(光学機器の一例)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの光学素子と保持部材とラック部材と送りねじとを備え、
前記保持部材は前記光学素子を保持し、
前記ラック部材は少なくとも1ヵ所のラックを有し、さらに前記ラック部材は前記保持部材に取り付けられ、
前記ラック部材は前記ラックの歯筋と略平行である方向に前記送りねじへ挿入され、
前記送りねじは、前記ラックに噛み合って回転することで前記保持部材を駆動し、
前記ラックはラック挿入方向の端面に行くに従い歯幅が狭くなっている
ことを特徴とする光学機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−104941(P2013−104941A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247185(P2011−247185)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】