説明

光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の製造法

【課題】簡便な操作で、低コスト、低リスク、且つ、温和な条件により、高収率、高度に光学選択的に環状エポキシオレフィン化合物の誘導体を製造する方法を提供する。
【解決手段】環状エポキシオレフィン化合物を、N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を触媒として用いて、有機過酸化物と反応させ、選択的不斉酸化反応を行うことによる、下記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の製造法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、前記式(1)の化合物からN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子触媒を使用して前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明に関わる光学活性な環状アリールエステル誘導体の製造方法として、後述する様に、様々な例が報告されているが、収率、光学純度及び反応条件で満足すべき報告は一切されていない。これまでに、下記式(8)、下記式(9)、下記式(10)、下記式(11)、下記式(12)、下記式(13)、下記式(14)及び下記式(15)で示される、銅触媒と過安息香酸tert−ブチルを使用する方法が報告されている。
【0003】
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【0004】
しかしながら、これらの反応は、環状オレフィン化合物へのアリール位の不斉収率が40%eeと著しく低く、工業化に適する光学活性な環状アリールエステル誘導体の製造方法には全く適さない方法であることは明白である。
【0005】
環状オレフィン化合物へのアリール位の不斉収率を増大させるために、下記式(13)で示される、銅(II)トリフルオロメタンスルホネートとトリスオキサゾリン錯体を使用する方法が報告されている。
【化6】


しかしながら、この反応の代表例であるシクロペンテンの反応において、0℃で93e.e.%という高い不斉化を達成しているが、収率が30%と低く、反応時間が200時間と長時間を必要としている。シクロヘプテンの反応においても−20℃で69e.e.%の不斉化を達成しているが、収率が10%と低く、反応時間が670時間と長時間を必要としている。従って、低温が必要であり、収率が低く、長時間の反応時間が必要であるために、この反応は工業化に適した光学活性な環状アリールエステル誘導体の製造法とは言い難い。
【0006】
上記の反応が長時間を要するため、反応時間を短縮すべく、下記式(14)で示されるフェニルヒドラジンを使用する方法が報告されている。
【化7】


この反応においては、光学純度86%ee、収率88%とある程度満足すべき結果が得られてはいるが、反応時間が20日もの長時間を必要としているため、工業化に適する光学活性な環状アリールエステル誘導の製造方法とは言い難い。
【0007】
また他の研究者から下記式(15)から式(17)で示される類似反応が報告されているが、不斉収率が17〜65%eeであり、光学純度では満足すべき結果を得られておらず、工業化に適する光学活性な環状アリールエステル誘導体の製造法とは言い難い。
【0008】
【化8】


【化9】


【化10】

【先行技術文献】
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】エム エス カラシュ;ジィ ソスノブスキィー;ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティー 1958年 80巻 p.756(M. S. Kharasch, G. Sosnovsky, J. Am. Chem. Soc. 1958, 80, 756)
【非特許文献2】エム エス カラシュ;ジィ ソスノブスキィー;エヌ シィ ヤング;ジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイアティー 1959年 81巻 p.5819−5824(M. S. Kharasch, G. Sosnovsky, N. C. Yang, J. Am. Chem. Soc. 1959, 81 5819−5824)
【非特許文献3】ディ ビィ デニィ;アール ナピアー;エイ カンマラタ ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー 1965年 30巻 p.3151−3153(D. B. Denney, R. Napier, A. Cammarata, J. Org. Chem. 1965, 30, 3151−3153)
【非特許文献4】エイ レヴィナ;ジェイ ムザート テトラヘドロン アシメトリー 1995年 6巻 p.147−156(A. Levina, J. Muzart, Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6, 147−156)
【非特許文献5】エイ レヴィナ;エッチ フランコイセ;ジェイ ムザート ジャーナル オブ オルガノメタリック ケミストリー 1995年 494巻 p.165−168(A. Levina, H. Francoise, J. Muzart, J. Organomet. Chem. 1995, 494, 165−168)
【非特許文献6】エム ティ リスペンス;シィ ゾンダーヴァン;ビィ エル フェリンガ テトラへドロン アシメトリー 1995年 6巻 p.661−664(M. T. Rispens, C. Zondervan, B. L. Feringa, Tetrahedron: Asymmetry 1995, 6, 661−664)
【非特許文献7】ケイ カワサキ;エス ツムラ;ティ カツキ シンセテックレター 1995年 p.1245−1246(K. Kawasaki, S. Tsumura, T. Katasuki, Synlett 1995, 1245−1246)
【非特許文献8】ジィ セカー;エイ ダッタグプタ;ブィ ケイ シン ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー 1998年 63巻 p.2961−2967(G. Sekar, A. Dattagupta, V. K. Singh, J. Org. Chem. 1998, 63, 2961−2967)
【非特許文献9】エイ ブィ マルコフ;エム ベラ;ブィ ランガー;ピィー ココブスキー;オーガニック レター 2000年 2巻 p.3047−3049(A. V. Malkov, M, Bella, V. Langer, P. Kocovsky, Org. Lett. 2000, 2, 3047−3049)
【非特許文献10】ダブリュー エス リィー;エッチ エル クオング;エッチ エル チャン;ダビュル ダビュル チョイ;エル ワイ ニィギー テトラへドロン アシメトリー 2001年 12巻 p.1007−1013(W. S. Lee, H. L. Kwong, H. L. Chan, W. W. Choi, L. Y. Ng, Tetrahedron: Asymmetry 2001, 12, 1007−1013)
【非特許文献11】シィ ボロム;ジェイ シィ フリンソン;ジェイ エルパイフ;シィ モエスナー;テトラヘドロン レター(C. Bolm, J. C. Frison, J. L. Paih, C. Moesner, Tetrahedron Lett. 2004年 45巻 p.5019−5021.2004, 45, 5019−5021)
【0010】
前記式(3)で示されるラセミ体の環状エポキシアリールエステル誘導体はサイクロペンタ−1,3−ジエンとp−ベンゾキノリンを反応させ、さらに5工程を経て、ラセミ体を取得する方法が報告されている。しかしながら前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を製造する製造方法としては現在まで十分満足のいく製造方法は一切報告されていない。
【0011】
【化11】

【0012】
【非特許文献12】グウスケ エフブッシュル;スタン グロサイス;レネ ディ ゲルデアー;フロリス ピィ ジェイ ティ ルテジェス;フロリス エル ヴァン デルフト;ジャーナル オブ オーガニック ケミストリー(Guuske F. Busscher, Stan Groothuys, Rene de Gelder, Floris P. J. T. Rutjes, and Floris L. van Delft J. Org. Chem., 2004年 69巻(13)p.4477−4481.2004, 69 (13), 4477-4481)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
前記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を簡便な操作で、低コスト、低リスク、且つ、温和な条件により、高収率、高光学選択的に前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を製造する方法を開発し、この製造方法を確立することが望まれている。
従来報告されている環状オレフィン化合物から光学活性な環状アリールエステル誘導体を製造する方法はいろいろ報告されているが、反応原料がエポキシドを有している化合物から光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を製造する方法は未だ開発されてはいない。
前述の目的は、前記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を、前記式(2)で示されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を触媒として用いて、有機過酸化物と反応させ、選択的不斉酸化反応を行うことにより前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の製造法について鋭意研究した結果、前記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を、前記式(2)で示されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を触媒として用いて、有機過酸化物と反応させ、選択的不斉酸化反応を行うことにより、前記式(3)を効率良く得ることに成功し、本発明を完成するに至った。
本発明は、前記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を簡便な操作で、低コスト、低リスク、且つ、温和な条件により、高収率、高光学選択的に前記式(3)式で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の製造方法に関する。従って、本発明は以下の通りである。
【0015】
1.下記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を、下記式(2)で示されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を触媒として用いて、有機過酸化物と反応させ、選択的不斉酸化反応を行うことを特徴とする下記式(3)で示される光学活性な不斉環状エポキシアリールエステル誘導体の製造法:
【化12】


【化13】


【化14】


上記式(2)において、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であり、Rはフェニル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するフェニル基;又はα又はβのナフチル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するα又はβのナフチル基;又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びtert−ブチル基からなる群から選ばれる低級アルキル基を示す。上記式(3)において、Rは水素原子、ニトロ基、又はエステル基である。
【0016】
2.前記有機過酸化物が、下記式(4)で表される、過安息香酸tert−ブチルである、上記1.に記載の製造法。
【化15】

【0017】
3.前記銅化合物が、下記式(5)で示される六フッ化リン銅テトラアセトニトリル又は下記式(6)で示される銅(I)トリフルオロメタンスルホネートである、上記1.又は上記2.記載の製造法。
【化16】


【化17】

【0018】
4.前記銅化合物が、下記式(7)で示される銅(II)トリフルオロメタンスルホネートであり、反応時にフェニルヒドラジンを添加する、上記1.又は上記2.記載の製造法。
【化18】

【0019】
5.前記式(2)のRは水素原子、メチル基又はエチル基であり、Rはフェニル基、α又はβのナフチル基又はtert−ブチル基である、上記1.〜4.のいずれか一項記載の製造法。
【0020】
6.前記式(2)のRはメチル基であり、Rはtert−ブチル基である、上記1.〜5.のいずれか一項記載の製造法。
【0021】
7.アセトン及びメチルエチルケトンから成る群から選択される脂肪族ケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルから成る群から選択される脂肪族ニトリル系溶媒;塩化メチレン及びクロロホルムから成る群から選択されるハロゲン系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルから成る群から選択される脂肪族エーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンから成る群から選択される芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピルから成る群から選択される脂肪族炭化水素系エステル溶媒;又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドから成る群から選択される水溶性極性溶媒を反応溶媒として用いる、上記1.〜6.のいずれか一項記載の製造法。
【発明の効果】
【0022】
本発明により、光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を簡便な操作で、低コスト、低リスク、高収率、高光学選択的に製造することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明を実施するための最良の形態(以下、本実施の形態)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0024】
本発明の製造法は、下記式(19)で示されるスキームに従った方法である。
【0025】
【化19】

【0026】
この方法においては、N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅触媒を溶媒に溶解し、これを触媒として用いる。この銅触媒はCu(CH3CN)4PF4に代表される銅触媒(I)を使用するのが必須である。
次に反応系に環状エポキシオレフィン化合物を加え、有機過酸化物を反応させることにより前記式(3)で示される光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体を得ることができる。
【0027】
以下、本工程における一態様について説明する。
前記式(2)で表されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅触媒を先ずは溶媒に溶解する。
【0028】
N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子としては、前記式(2)のRが水素原子、メチル基又はエチル基であることが好ましく、Rがフェニル基、α又はβのナフチル基又はtert−ブチル基であることが好ましい。N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子としては、前記式(3)のRがメチル基であり、Rがtert−ブチル基であることが最も好ましい。
【0029】
銅触媒としては、六フッ化リン銅テトラアセトニトリルで代表される銅(I)触媒又は、銅(II)トリフルオロメタンスルホネートで代表される銅(II)触媒を用いることができる。
銅触媒として、銅(II)トリフルオロメタンスルホネートに代表される銅(II)触媒を用いる場合は、更に、還元剤であるフェニルヒドラジンを添加する。なお、この場合、フェニルヒドラジンを加えることにより、液の色は暗赤色から透明な赤色の反応液に変化する。これは、銅(II)触媒が銅(I)触媒へと反応系中で変化していることを示す。
フェニルヒドラジンの使用量は、銅(II)触媒に対して、好ましくは1.0〜1.5倍当量、より好ましくは約1.0倍当量である。
なお、銅触媒として六フッ化リン銅テトラアセトニトリルで代表される銅(I)触媒を用いる場合は、フェニルヒドラジンを添加する必要はない。
【0030】
反応溶媒としては、特に限定されないが、アセトン、メチルエチルケトン等の脂肪族ケトン系溶媒、アセトニトリル、プロピオニトリル、ブチロニトリル等の脂肪族ニトリル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム等のハロゲン系溶媒、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル等の脂肪族エーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸プロピル等の脂肪族炭化水素系エステル溶媒、又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド等の水溶性極性溶媒である。好ましくは、脂肪族ケトン系溶媒である。
【0031】
脂肪族ケトン系溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルプロピルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチル−sec−ブチルケトン、ジイソブチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、エチルプロピルケトン、ブチルエチルケトン等を用いることができ、好ましくは、アセトン、メチルエチルケトンである。さらに好ましいのはアセトンである。
アセトン等の反応溶媒の使用量は、銅触媒に対し通常50〜200倍容量であり、好ましくは90〜130倍容量であり、より好ましくは約110倍容量である。
【0032】
次に、アルゴン気流下で環状エポキシオレフィン化合物及び有機過酸化物を加え、反応を実施する。
【0033】
環状エポキシオレフィン化合物としては、例えば、7−オキサービシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エン、6−オキサービシクロ[3.1.0]ヘキサ−3−エン、8−オキサービシクロ[5.1.0]オクタ−3−エン等が挙げられる。
環状エポキシオレフィン化合物の使用量は、銅触媒に対して、好ましくは80〜150倍当量、より好ましくは約100倍当量である。
【0034】
有機過酸化物としては過安息香酸エステルが好ましく用いられ、過安息香酸tert−ブチルが特に好ましく用いられる。
有機過酸化物の使用量は、銅触媒に対して、好ましくは10〜30倍当量、より好ましくは約20倍当量である。
【0035】
この時の反応温度は、通常15〜50℃であり、好ましくは10〜30℃、より好ましくは15℃〜25℃である。また、反応時間は、通常0.5〜3時間であり、より好ましくは1.0〜1.5時間である。
【0036】
光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体の単離、精製は常法により行うことができる。例えば、溶媒による抽出、シリカゲルカラムを用いたクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、減圧蒸留、再結晶等の当該分野で公知の方法によって、光学活性な環状エポキシアリールエステル誘導体のラセミ体を単離、精製することができる。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明をより詳細に説明するが、本発明はこの実施例により何ら限定されるものではない。
【0038】
全ての反応はシュレンク チューブ(Schlenk tubes)技法と、新たに蒸留した溶媒を使用してアルゴン気流下で実施した。融点は、柳本製作所製のYanaco MP−500dで測定した。H(400MHz)及び13C NMR(100.6MHZ)スペクトルは、内部標準(0ppm)としてテトラメチルシラン(MeSi)を使用して日本電子株式会社製のJEOL JNM−LA 4002により測定した。NMRの記載で使用される略語として、Sはシングレット(singlet)、dはダブレット(doublet)、Tはトリプレット(triplet)、qはカルテット(quartet)、mはマルチプレット(multiplet)を意味する。IRスペクトルは、パーキンエルマー社製のPERKIN ELMER FT−IR Spectrometer SPECTRUM 1000を使用して測定した。元素分析は、柳本製作所製のYanaco CHN Corder MT−5を使用して測定した。MASSスペクトルは、サーモ社製のThermo Quest LCQ DECA plusを使用して測定した。光学純度は、試料を1dm cellの溶液に調製して堀場製作所製のHORIBA SEPA−300 Polarimeterを使用して測定した。シリカゲルカラムは、フジデビィソン社製のFuji Silysia BW−820MH又はYMC*GEL Silica(6nm I−40−63 um)を用いて分離した。薄層カラムクロマトグラフィー(TLC)は、メルク社製のMerck 25 TLC aluminum sheets Silica gel 60 F254を用いて分離した。光学分割液体クロマトグラフィー(HPLC)は、l−に455 Diode Array Detectorを装備した日立製作所(製)HITACHI l−2000で測定した。
【0039】
(参考例1)
(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミンの製造
(S)−1−フェニル−エチルアミン133.2mg(1.10mmol)、ピリジン−2−カルボアルデヒド(107.1mg(1.00mmol)をトルエン5mLに溶解し、硫酸ナトリウム1.0gを加え、この反応溶液を12時間110℃で攪拌した。反応液をろ過後、反応液を減圧留去すると目的物の(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミン178.7mg(収率85%)が得られた。分析用のサンプルとして事前にトリエチルアミンで中性にしたシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=5/1)を使用して精製した。
(S)−1−フェニル−N−(ピリジン−2−イルメチレン)エチルアミン分析値:僅かな黄色オイル;[α]25:+38(c 1.0,CHCl);IR(Nujol):νmax=3060,2971,1645,1586,1493,1467,1436,1371,1080,762,700,612cm−1;1H NMR(400MHz,CDCl3):δ=1.61(d,J=6.8Hz,3H),4.65(q,J=6.8Hz,1H),7.2−7.4(m,6H),7.72(dt,J=7.2Hz,1.6Hz,1H),8.09(d,J=7.6Hz,1H),8.46(S,1H),8.63(d,J=4.8Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.5,69.5,121.4,124.6,126.6,126.9,128.5,136.4,144.5,149.3,154.8,160.4。
【0040】
(参考例2)
各種アルドイミンズ配位子(Aldimins Ligands)の製造
対応するキラルアミン化合物(1.10mmol)及びアルデヒド化合物(1.00mmol)以外は全く参考例1と同様にして各種アルドイミンズ配位子(Aldimins Ligands)を合成した。
(S)−N−[(6−メチルピリジン−2−イル)メチレン]−1−フェニルエチルアミン:収率83%;僅かな黄色オイル;[α]25:+5.6(c 1.0,CHCl);IR(Nujol):νmax=2971,2862,1646,1591,1456,1369,1085,792,764,699cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.60(d,J=6.8Hz,3H),2.58(S,3H),4.62(q,J=6.8Hz,1H),7.16(d,J=7.2Hz,1H),7.23(d,J=6.8Hz,1H),7.34(T,J=7.2Hz,2H),7.4−7.5(m,2H),7.61(t,J=7.8Hz,1H),7.92(d,J=7.8Hz,1H),8.45(S,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.3,24.5,69.5,118.4,124.3,126.7,126.9,128.5,136.7,144.6,154.3,158.0,160.8。
(S)−1−フェニル−N−(キノリン−2−イルメチレン)−エチルアミン:収率82%;黄色固体(再結晶溶媒:アセトニトリル);融点90−92℃;[α]26:−54(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2966,2860,1633,1596,1504,1452,1367,1086,835,774,759,706cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.65(d,J=7.2Hz,3H),4.72(q,J=7.2Hz,1H),7.2−7.3(m,1H),7.3−7.4(m,2H),7.48(d,J=7.2Hz,2H),7.5−7.6(m,1H),7.7−7.8(m,1H),7.83(d,J=10.4Hz,1H),8.13(d,8.4Hz,1H),8.17(d,J=8.4Hz,1H),8.26(d,J=8.4Hz,1H),8.64(S,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.6,69.6,118.6,126.7,127.0,127.4,127.7,128.5,128.8,129.6,129.7,136.4,144.5,147.8,155.1,160.9。
(S)−1−(ナフタレン−1−イル)−N−(キノリン−2−イルメチレン)−エチルアミン:収率84% 黄色オイル;[α]26:+152(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(Nujol):νmax=2977,2864,1649,1595,1502,1429,1369,1304,1119,959,837,778,753,619cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.79(d,J=6.8Hz,3H),5.54(q,J=6.8Hz,1H),7.5−7.6(m,4H),7.7−7.9(m,5H),8.10(d,J=8.4Hz,1H),8.18(d,J=8.4Hz,1H),8.27(d,J=8.4Hz,1H),8.31(d,J=8.4Hz,1H),8.68(S,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=24.1,65.3,118.6,123.6,124.1、125.4,125.6,125.9,127.3,127.6,127.7,128.8,128.9,129.5,129.7,130.7,134.0,136.4,140.3,147.7,155.1,161.2。
(S)−3,3−ジメチル−N−(キノリン−2−イルメチレン)ブタン−2−アミン: 収率81%;黄色オイル;[α]26:+152(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(thin film):νmax=2958,2866,1646,1595,1502,1458,1393,1364,1204,1121,961,834,750,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.98(S,9H),1.20(d,J=6.4Hz,3H),3.15(q,J=6.4Hz,1H),7.5−7.6(m,1H),7.7−7.8(m,1H),7.83(d,J=8.4Hz,1H),8.1−8.2(m,3H),8.50(S,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=17.3,26.6,34.3,75.3,118.6,127.2,127.7,128.7,129.5,129.6,136.3,147.8,155.3,160.0;MS(ESI)m/z=241.4(M+H),263.3(M+Na);Anal.calcd.for C1620:C 79.96,H 8.39,N 11.66;Found:C 79.89,H 8.33,N 11.40。
【0041】
(参考例3)
メチル2−キノリイルケトンの製造
無水エーテル50mLに2−キノリンカルボニトリル2.0g(13.0mmol)を溶解した溶液に、事前にマグネシウム0.343g(14.3mmol)とヨウ化メチル2.05g(14.3mmol)を無水ジエチルエーテル30mL中で反応させて得たヨウ化マグネシウムメチル溶液を0℃で冷やしながら滴下した。滴下終了後、反応液を室温まで戻し、一晩攪拌した。0℃に冷却し、反応液を水氷で反応を停止させ、かつ2モル硫酸(25mL、50mmoL)で完全に停止させた。反応液は室温にて5時間攪拌し、水酸化ナトリウム水溶液で洗浄した。有機層と水層を分離して、さらに水層をジエチルエーテル30mLで3回抽出した。これらの有機層は水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥した。ろ過後有機層を留去して、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=20/1)にて分離して目的物の無色固体のメチル2−キノリイルケトン1.25g(収率56%)を得た。融点:50−51℃ IRスペクトル(KBr):νmax=3012,1691,1592,1504,1355,1306,1287,1123,942,838,756,658cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.88(S,3H),7.65(td,J=8.0Hz,1.2Hz,1H),7.79(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.87(d,J=8.0Hz,1H),8.13(d,J=8.8Hz,1H),8.20(d,J=8.8Hz,1H),8.27(d,J=8.0Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl3):δ=25.5,117.9,127.6,128.5,129.5,130.0,130.6,136.8,147.3,153.3,200.7。
【0042】
(参考例4)
エチル2−キノリイルケトンの製造
ヨウ化マグネシウムエチル溶液(1.0Mテトラヒドロフラン)を用いる以外は参考例3のメチル2−キノリイルケトン製造と全く同様にして反応を実施した。
収率 62%;無色固体;融点;56−57℃;IR スペクトル(KBr):νmax=2977,1692,1560,1460,1399,1358,1115,968,935,806,789,753,621cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.28(t,J=7.6Hz,3H),3.43(q,J=7.6Hz,2H),7.64(td,J=8.0Hz,0.8Hz,1H),7.78(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.87(d,J=8.4Hz,1H),8.14(d,J=8.4Hz,1H),8.20(d,J=8.4Hz,1H),8.26(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl3):δ=8.1,30.9,118.2,127.7,128.4,129.6,129.9,130.5,136.9,147.2,153.1,203.2。
【0043】
(参考例5)
各種N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子の製造
(S)−3,3−ジメチル−N−{1−(キノリンル−2−イル)エチルイデン}ブタン−2−アミンの製造
対応するケトン化合物(2.0mmol)及びキラルアミン化合物(3.2mmol)及びトリエチルアミン404.8mg(4.0mmol)をトルエン20mLに溶解した。この溶液に3mLのトルエンに溶解したテトラクロロチタン(135μl,1.2mmol)を滴下した。室温にてさらに一時間攪拌後、反応液を90℃にて24時間攪拌した。この溶液を0℃まで冷却し、1Mの水酸化ナトリウム水溶液10mLを加えて反応を停止した。酢酸エチル20mLで3回抽出した。有機層は1Mの水酸化ナトリウム水溶液10mL及び水10mLで3回洗浄後、硫酸ナトリムで乾燥した。ろ過後溶媒を留去して、N,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子を合成した。
(S)−3,3−ジメチル−N−{1−(キノリンル−2−イル)エチルイデン}ブタン−2−アミン 収率:92%;無色の針状結晶(再結晶溶媒;アセトニトリル);融点;97−99℃;[α]27:+105(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2970,2867,1633,1596,1558,1499,1366,1127,842,763,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.98(S,9H),1.08(d,J=6.4Hz,3H),2.49(S,3H),3.50(q,J=6.4Hz,1H),7.52(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.68(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.80(d,J=8.4Hz,1H),8.0−8.1(M,2H),8.33(d,J=8.8Hz,1H).13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=12.9,15.5,26.5,34.8,65.0,119.0,126.7,127.5,128.3,129.1,129.8,135.7,147.2,158.2,163.4;MS(ESI)m/z=255.3(M+H),277.3(M+Na);計算値 C1722:C 80.27,H 8.72,N 11.01;実測値:C 79.97,H 8.89,N 11.01.
(S)−1−(ナフタレン−1−イル)−N−{1−(キノリンル−2−イル)エチルイデン}エチルアミン
収率:80%;黄色の針状結晶(再結晶溶媒;メタノール);融点 :111−112℃;[α]26:+215.4(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2971,1640,1593,1559,1501,1445,1353,1129,837,800,781,758,736,624cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=1.76(d,J=6.4Hz,3H),2.53(S,3H),5.70(q,J=6.4Hz,1H),7.5−7.6(M,4H),7.70(qt,J=6.8Hz,1H),7.75(d,J=8.0Hz,1H),7.82(d,J=8.0Hz,1H),7.8−7.9(M,2H),8.11(d,J=8.4Hz,1H),8.16(d,J=8.8Hz,1H),8.34(d,J=8.0Hz,1H),8.49(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=14.0,24.3,57.3,119.1,123.6,124.1、125.3,125.8,126.9,127.2,127.5,128.5,129.0,129.2,129.9,134.1,135.9,142.0,147.2,165.9;MS(ESI)m/z=325.3(M+H),347.3(M+Na)
(S)−3,3−ジメチル−N−{1−(キノリンル−2−イル)プロピルイデン}ブタン−2−アミン
収率:89%;無色の針状結晶(再結晶溶媒;アセトニトリル);融点;64−65℃;[α]21:+108(c 1.0,CHCl);IRスペクトル(KBr):νmax=2967,2866,1630,1558,1500,1455,1361,1130,835,761,620cm−1H NMR(400MHz,CDCl):δ=0.99(S,9H),1.10(d,J=6.8Hz,3H),1.15(t,J=7.2Hz,3H),2.9−3.0(M,1H),3.2−3.3(M,1H),3.54(q,J=6.8Hz,1H),7.52(td,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),7.69(td,J=6.8Hz,1.2Hz,1H),7.80(dd,J=8.4Hz,0.8Hz,1H),8.10(d,J=8.4Hz,2H),8.28(d,J=8.4Hz,1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=12.4,16.5,19.6,26.5,34.6,64.2,119.6,126.6,127.4,128.3,129.0,129.9,135.6,147.3,157.3,168.2;MS(ESI)m/z=269.4(M+H),291.3(M+Na);計算値 C1824:C 80.55,H 9.01,N 10.44;実測値:C 80.23,H 9.00,N 10.64。
【0044】
(実施例1)
【化20】


4,5−エポキシーシクロヘキセンの合成
水150mLに水溶性炭酸水素ナトリウム(25.2g、300mL)溶液に、1,4−シクロヘキサジエン16.0g(200mmol)及びメタクロロ過安息香酸50.5g(190mmol)を溶解した塩化メチレン250mLを数回に分けて、氷で冷やしながら加えた。0℃で1時間及び室温で3時間反応液を攪拌した。その後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液を加えて、1時間室温で反応液を攪拌した。有機層を分液し、水層は塩化メチレン50mLで2回抽出した。先程の有機層とこの抽出した塩化メチレンを合わせて、この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリムで乾燥した。塩化メチレンを減圧下(40KPa、55℃)で留去し、素生成物の無色液体の4,5−エポキシーシクロヘキセン15.3g(160mmmol)を得た。収率80%。H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.42−2.59(m、4H)、3.24(m、2H)、5.43(s、2H) 13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,51,0,121.6.
trans−4−ニトローベンゾイックアッシド−7−オキサービシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンー2−イルエステルの合成
【化21】


(S)−3,3−ジメチル−N−{1−(キノリンル−2−イル)エチルイデン}ブタン−2−アミン610mg(2.40mmol)と六フッ化リン銅テトラアセトニトリル760mg(0.20mmol)をアセトン100mLに溶解し、室温で1時間攪拌後、反応液は暗赤色の反応液に変化した。次にアルゴン気流下で4,5−エポキシーシクロヘキセン15.4g(160mmol)を滴下した。過安息香酸tert−ブチル15.6g(80.0mmol)をアセトン20mLに溶解し滴下した。反応液は緑色に変化した。反応温度を25℃、120分間放置した。アセトンを減圧留去し、残渣に酢酸エチル200mLを加えた。この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水30mLで2回洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥した。濾過後溶媒を留去し、この残渣を短いシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製を行うと、オイル状の素(1S,2S,6S)−7−オキサービシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンー2−イルベンゾエイト((1S, 2S, 6S)-7-oxa-bicyclo[4.1.0]hept-3-en-2-yl benzoate)12.5gを得た。この化合物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶で精製した。Rf=0.4(ヘキサン/酢酸エチル=3/1);融点 60−62℃;[α]21:+201(c 0.3,CHCl)85%e.e;H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.60−2.71(m、2H)、3.38(m、2H)、5.70−5.80(m、3H)、7.40−7.50(m、2H)、7.50−7.60(m、1H)、8.00−8.10(m、2H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,50.0,51.4,65.5,120.9、126.9、128.4、129.7、130.0、133.2、165.9;MS(ESI)m/z=217.2(M+H);計算値 C1312:C 72.21,H 5.59,;実測値:C72.21,H 5.59.
このオイル状化合物にメタノール100mL、ナトリム65mg(2.82mmol)及びメタノール6mLで合成したナトリウムメトキシド溶液を加え、室温で2時間攪拌した。原料は無くなった事をTLCで確認し、酢酸0.18g(3.0mmol)を含むメタノールで反応を停止した。(1S,2S,6S)−7−オキサービシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンー2−オール((1S, 2S, 6S)-7-oxa-bicyclo[4.1.0]hept-3-en-2-ol)をシリカゲルカラムクロマトグラフィー及び再結晶で精製した。無色液体; Rf=0.18(ヘキサン/酢酸エチル=1/1);;融点 60−62℃;[α]21:+119(c 0.5,CHCl)99.1%e.e.{ガスクロマトグラフィーで光学純度を決定。測定条件:カラム β-DEX−225(SUPELCO) カラムオーブン温度(150℃) (1R,2S,6S)異性体(主要化合物)の保持時間:7.17分, (1S,2R,6R)異性体(副化合物)の保持時間:8.57分 ;H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.03(brs 1H),2.55−2.59(m、2H),3.25(brs 1H),3.32(brs 1H),4.48(brs 1H),5.58−5.62(m、1H)、5.67−5.71(m、1H);13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,50.2,53.6,62.8,124.6、124.7;MS(ESI)m/z=113.0(M+H)
メタノールを完全に留去し、残渣を塩化メチレン150mL及びトリエチルアミン10mL(71mmol)を加えた。その後、塩化メチレン50mLの4−ニトロ塩化ベンゾイル10.8g(57mmmol)を30分間で滴下した。反応液を一晩室温にて放置して、飽和炭酸水素ナトリウム水を反応液に加え、反応を停止した。有機層を分液し、水層は塩化メチレン30mLで2回抽出した。先程の有機層とこの抽出した塩化メチレンを合わせて、この有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水及び飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリムで乾燥した。塩化メチレンを減圧下で留去し、濾過後溶媒を留去し、この残渣を短いシリカゲルカラムクロマトグラフィー(展開溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=8/1)にて精製を行い、白色固体を得た。熱したヘキサン/酢酸エチル(120mL/30mL)でこの白色固体を再結晶すると無色結晶のtrans−4−ニトローベンゾイックアッシド−7−オキサービシクロ[4.1.0]ヘプタ−3−エンー2−イルエステル4.8g(23%)得た。融点;125−127℃;[α]21:+209(c 0.5,CHCl);99.0%ee{HPLC測定で決定 HPLC条件 Chirapak ASカラム(展開溶媒 ヘキサン:2−プロパノール=90:10)、流速 1.0mL/min}H NMR(400MHz,CDCl):δ=2.60−2.70(m、2H)、3.30−3.34(m、2H)、5.70−5.80(m、3H)、8.24(d、J=9.6Hz、2H)、8.31(d、J=9.6Hz)13C NMR(100.6MHz,CDCl):δ=25.0,49.9,51.2,120.3、123.6、127.7、130.9、135.3、150.7、164.1;MS(ESI)m/z=262.0(M+H);計算値 C1311NO:C 59.77,H 4.24,N 5.36;実測値:C 59.72,H 4.27,N 5.37.

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で示される環状エポキシオレフィン化合物を、下記式(2)で示されるN,N−二座型光学活性シッフ塩基配位子及び銅化合物を触媒として用いて、有機過酸化物と反応させ、選択的不斉酸化反応を行うことを特徴とする下記式(3)で示される光学活性な不斉環状エポキシアリールエステル誘導体の製造法:
【化1】


【化2】


【化3】


上記式(2)において、Rは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基からなる群から選ばれる低級アルキル基であり、Rはフェニル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するフェニル基;又はα又はβのナフチル基;p−メチル及びp−メトキシからなる群から選ばれる置換基を有するα又はβのナフチル基;又はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、及びtert−ブチル基からなる群から選ばれる低級アルキル基を示す。上記式(3)において、Rは水素原子、ニトロ基、又はエステル基である。
【請求項2】
前記有機過酸化物が、下記式(4)で表される、過安息香酸tert−ブチルである、請求項1記載の製造法。
【化4】

【請求項3】
前記銅化合物が、下記式(5)で示される六フッ化リン銅テトラアセトニトリル又は下記式(6)で示される銅(I)トリフルオロメタンスルホネートである、請求項1又は2記載の製造法。
【化5】


【化6】

【請求項4】
前記銅化合物が、下記式(7)で示される銅(II)トリフルオロメタンスルホネートであり、反応時にフェニルヒドラジンを添加する、請求項1又は2記載の製造法。
【化7】

【請求項5】
前記式(2)のRは水素原子、メチル基又はエチル基であり、Rはフェニル基、α又はβのナフチル基又はtert−ブチル基である、請求項1〜4のいずれか一項記載の製造法。
【請求項6】
前記式(2)のRはメチル基であり、Rはtert−ブチル基である、請求項1〜5のいずれか一項記載の製造法。
【請求項7】
アセトン及びメチルエチルケトンから成る群から選択される脂肪族ケトン系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル及びブチロニトリルから成る群から選択される脂肪族ニトリル系溶媒;塩化メチレン及びクロロホルムから成る群から選択されるハロゲン系溶媒;ジメチルエーテル、ジエチルエーテルから成る群から選択される脂肪族エーテル系溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレンから成る群から選択される芳香族炭化水素系溶媒;酢酸エチル、酢酸プロピルから成る群から選択される脂肪族炭化水素系エステル溶媒;又はジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドから成る群から選択される水溶性極性溶媒を反応溶媒として用いる、請求項1〜6のいずれか一項記載の製造法。

【公開番号】特開2010−215552(P2010−215552A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−62952(P2009−62952)
【出願日】平成21年3月16日(2009.3.16)
【出願人】(504150450)国立大学法人神戸大学 (421)
【出願人】(303046314)旭化成ケミカルズ株式会社 (2,513)
【Fターム(参考)】