説明

光学活性カルボン酸の製造方法

【課題】 医薬品中間体として有用な光学活性カルボン酸を、入手容易な化合物から効率的に製造するプロセスを提供する。
【解決手段】 医薬品中間体として有用な光学活性カルボン酸を、入手容易なα―ヒドロキシメチルカルボン酸エステルから製造する。すなわち、光学活性α―ヒドロキシメチルカルボン酸エステルを、水酸基スルホニル化、エステル加水分解、環化を経て、光学活性なプロピオラクトンとし、これを遷移金属触媒存在下、有機金属化合物と反応させることにより、目的とする光学活性カルボン酸を製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医薬品分野をはじめ多方面において製造上の重要な中間体化合物となる光学活性カルボン酸の新規製法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光学活性カルボン酸は、特に医薬品の中間体として有用な化合物であり、例えばグルコースキナーゼ活性化剤(特許文献1、2)、アントロジェン受容体修飾物質(特許文献3)、CCR2阻害剤(非特許文献1)やアルツハイマー病治療薬(特許文献4)などの合成中間体となる。
【0003】
光学活性カルボン酸の製造法としては、1)対応するラセミ体のカルボン酸を光学活性なアミン化合物で光学分割する方法(特許文献5)、 2)エフェドリンなどの光学活性アミンとのアミド体を、強塩基存在、ジアステレオ選択的にα位アルキル化した後、酸または塩基処理をしてアミド体から該カルボン酸に変換する方法が知られている(特許文献1、4、6)。
【特許文献1】WO2000/58293
【特許文献2】WO2004/072031
【特許文献3】WO2006/060108
【特許文献4】WO2006/021441
【特許文献5】EP799828
【特許文献6】WO2004052869
【非特許文献1】J. Medicinal Chemistry 2006, 49(16), 4801
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ラセミ体を光学分割する方法(1)は、理論収率が50%を超えず、製造法としては効率的ではない。また、工業的規模で安価に入手可能な光学活性アミンの種類は決して豊富ではなく、従いこれらのアミンを用いて分割できるカルボン酸の種類にも適応限界がある。
【0005】
不斉補助基を用いる方法(2)は、エフェドリン等の高価な補助基やLDA等の高価な塩基を必要とし、また、高いジアステレオ選択性を発現するために、通常、アルキル化は−78℃の極低温で反応を行うことが望ましい、など経済面、設備面で問題のある方法である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上に述べた従来法の諸問題を鑑み、工業的に取り扱いが容易で、かつ安価に入手可能な原料、反応剤のみを用いて、大規模でも安全に操作することが可能な方法を鋭意検討した結果、本発明を開発するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、一般式(1);
【0008】
【化6】

(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。*は不斉炭素を表す。)で表されるプロピオラクトンを、一般式(2);
M (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。Mはアルカリ金属またはハロゲン化アルカリ土類金属を表す。)で表される有機金属化合物と反応させることを特徴とする一般式(3);
【0009】
【化7】

(式中、R、R、*は前記に同じ。)で表される光学活性カルボン酸誘導体の製造方法に関する。
【0010】
前記一般式(1)で表されるプロピオラクトンは、
I)一般式(4);
【0011】
【化8】

(式中、R、*は前記に同じ。Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。)で表される光学活性α−ヒドロキシメチルカルボン酸エステルを、塩基存在下
一般式(5);
SOCl (5)
(式中、Rは水素または炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。)で表されるスルホニルクロライドと反応させることにより、一般式(6);
【0012】
【化9】

(式中、R、R、R、*は前記に同じ。)で表されるα―スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルとする工程、
II)該α―スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルを加水分解することにより一般式(7);
【0013】
【化10】

(式中、R、R、*は前記に同じ。)で表されるα―スルホニルオキシメチルカルボン酸とする工程、
III)該α―スルホニルオキシメチルカルボン酸を塩基で処理する工程
により製造されるのが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明にかかる方法によれば、工業的に取り扱いが容易で、かつ安価に入手可能な原料および反応剤のみを用いて、医薬品中間体として有用な光学活性カルボン酸を効率的に製造することが可能である。従って、本発明にかかる方法は、従来の方法に比べて安全面やコスト面で有利であって、特に大規模な生産に好適に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に本発明を詳述する。
【0016】
まず、式(4)で表されるα−ヒドロキシメチルカルボン酸エステルと、式(5)で表されるスルホニルクロライドを反応させて式(6)で表されるα−スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルを製造する方法について説明する。
【0017】
本工程で使用される式(4)で表されるα−ヒドロキシメチルカルボン酸エステル(以下、化合物(4))は、例えば容易に入手可能なカルボン酸エステルのα−位をホルミル化し、該アルデヒドを不斉還元することにより得られる(WO2004180597、WO2006280207)。
【0018】
式中、Rは、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0019】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基などを挙げることができる。
【0020】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基等を挙げることができる。
【0021】
アリール基としては、たとえばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基等を挙げることができる。
【0022】
置換基としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲン基、シアノ基、ニトロ基、カルボキシル基、エステル基、水酸基、オキソ基、アミノ基などを挙げることができる。
【0023】
は、炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0024】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基などを挙げることができる。
【0025】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基等を挙げることができる。
【0026】
アリール基としては、たとえばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基等を挙げることができる。
【0027】
置換基としては、Rと同様のものを挙げることができる。
【0028】
*で表される不斉炭素は、S体の絶対配置を有するものであっても良く、R体の絶対配置を有するものであっても良い。
【0029】
式(5)中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0030】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基などを挙げることができる。
【0031】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基等を挙げることができる。
【0032】
アリール基としては、アリールオキシ基を表し、たとえばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基等を挙げることができる。
【0033】
置換基としては、Rと同様のものを挙げることができる。
【0034】
アルキル基として好ましいのはメチル基、アラルキル基として好ましいのはベンジル基、アリール基として好ましいのは4−メチルフェニル基であるが、さらに好ましいのはメチル基である。
【0035】
化合物(5)の使用量としては、化合物(4)に対し1モル倍以上であれば特に制限はないが、好ましくは1.0〜2.0モル倍である。
【0036】
本反応は、発生する塩化水素を中和するために塩基が使用される。塩基として好ましくは有機塩基であり、例えばトリエチルアミン、トリブチルアミン、トリヘキシルアミン、トリイソプロピルアミン、ジイソプロピルエチルアミン、N−メチルモルホリン、トリシクロヘキシルアミン、ピリジンなどの3級アミンを挙げることができるが、好ましいのはトリエチルアミンである。
【0037】
塩基の使用量は、化合物(2)に対し、0.5モル倍〜10.0モル倍、好ましくは0.8モル倍〜2.0モル倍である。
【0038】
反応に使用される溶媒としては、スルホニルクロライドと反応性を示さない非プロトン性溶媒の使用が好ましい。具体的には、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF),N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)を挙げることができる。これらの中で好ましいのはTHF、トルエンであり、さらに好ましくはトルエンである。なお、これらは、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0039】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常−50〜80℃であり、さらに好ましくは−20〜40℃である。
【0040】
反応時間は、反応温度ならびに使用されるスルホニルクロライドの量により異なるが、通常30分〜24時間、好ましくは1〜20時間である。
【0041】
本工程で生成した式(6)で表されるα−スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルは、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒から抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。また、精製することなく次工程に供しても良い。
【0042】
次に式(6)で表される化合物を加水分解することにより、式(7)で表されるα−スルホニルオキシメチルカルボン酸を製造する工程について述べる。
【0043】
本工程においては、通常エステルの加水分解反応に用いられる方法を特に制限することなく用いることができ、具体的には酸加水分解またはアルカリ加水分解が挙げられる。
【0044】
アルカリ加水分解に用いられる塩基としては、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物を挙げることができる。好ましくはアルカリ金属水酸化物であり、具体的には水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムである。
【0045】
塩基の使用量は、化合物(6)に対し1モル倍以上使用されれば特に制限されない。
【0046】
用いられる溶媒としては、特に限定されないが、通常有機溶媒と水の混合溶媒が用いられる。有機溶媒としては、例えばベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF),N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶媒を挙げることができる。これらのうち、水と相溶する溶媒が特に好ましい。なお、これらの有機溶媒は、単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0047】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常0〜160℃であり、さらに好ましくは10〜120℃である。
【0048】
また、酸加水分解に使用される酸としては、塩酸、硫酸、硝酸、酢酸、ギ酸などのプロトン酸を挙げることができる。使用量は特に制限されない。
【0049】
用いられる溶媒としては、特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF),N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水を挙げることができるが、上記酸を溶媒に用いても良い。また、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0050】
反応温度は、使用する酸や溶媒の種類により異なるが、通常0〜120℃であり、さらに好ましくは20〜100℃である。
【0051】
これら加水分解の中で、アルカリ加水分解は、脱スルホン酸反応が副反応として起こり、目的とする化合物(7)の収率が低い場合がある。従って、酸により加水分解を行うのが好ましい。
【0052】
本工程で生成した式(7)で表されるα―スルホニルオキシメチルカルボン酸は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒から抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。また、精製することなく次工程に供しても良い。
【0053】
次に、化合物(7)から化合物(1)への製造工程について述べる。
【0054】
本工程は塩基を用いて実施される。塩基としては、有機塩基、無機塩基のいずれを用いてもよいが、特に好ましくは無機塩基である。具体的には、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸リチウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素リチウムなどを挙げることができる。
【0055】
塩基の使用量としては、化合物(7)に対し1モル倍以上であれば特に制限はないが、好ましくは1.0〜50.0モル倍、特に好ましくは1.0〜20.0モル倍である。
【0056】
反応に使用される溶媒としては、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、ジメチルホルムアミド(DMF),N−メチルピロリドン等のアミド系溶媒、ジメチルスルホキシド(DMSO)、水が挙げられる。また、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0057】
反応温度は、使用する塩基や溶媒の種類により異なるが、通常0〜80℃であり、さらに好ましくは15〜50℃である。
【0058】
反応時間は通常30分〜48時間、好ましくは3〜30時間である。
【0059】
本工程で生成した式(1)で表されるプロピオラクトンは、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒から抽出することにより得ることができ、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。また、精製することなく次工程に供しても良い。
【0060】
最後に、化合物(1)と一般式(2);
M (2)
で表される化合物(2)を反応させて化合物(3)を製造する工程について述べる。なお、本発明において、化合物(1)は必ずしも上記方法によって得られたものでなくてもよい。
【0061】
式(2)中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基を表す。
【0062】
アルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、i-プロピル基、n-ブチル基、i-ブチル基、sec-ブチル基などを挙げることができる。
【0063】
アラルキル基としては、例えばベンジル基、4−メチルベンジル基、3−メチルベンジル基、2−メチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、3−メトキシベンジル基、2−メトキシベンジル基、4−クロロベンジル基、3−クロロベンジル基、2−クロロベンジル基等を挙げることができる。
【0064】
アリール基としては、たとえばフェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、2−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−クロロフェニル基、2−クロロフェニル基、4−ブロモフェニル基等を挙げることができる。
【0065】
置換基としては、Rと同様のものを挙げることができる。
【0066】
式中Mはアルカリ金属またはハロゲン化アルカリ土類金属を表す。具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化マグネシウムであり、さらに好ましくは塩化マグネシウム、臭化マグネシウムである。
【0067】
化合物(2)は、市販されているものもあり、また対応するハロゲン化物と金属または金属化合物から既知の方法(例えばテトラへドロンレターズ42、3331、2001)にて容易に調製することができる。
【0068】
本反応は、通常遷移金属化合物の存在下で行うことが好ましい。好ましい遷移金属としては、銅化合物、ニッケル化合物、亜鉛化合物、鉄化合物などが挙げられるが、銅化合物を用いると、通常収率よく反応が進行するので、銅化合物が特に好ましい。具体的な銅化合物としては、第一ヨウ化銅、第二ヨウ化銅、第一臭化銅、第二臭化銅、第一塩化銅、第二塩化銅、LiCuClなどが挙げられる。
【0069】
式(2)で表される有機金属化合物の使用量としては、化合物(1)に対し、通常1モル倍以上使用すれば特に制限されないが、好ましくは1.0〜4.0モル倍である。
【0070】
遷移金属化合物の使用量は化合物(1)に対し、通常0.001モル倍以上使用すればよいが、好ましくは0.01〜2.0モル倍、特に好ましくは0.02〜1.0モル倍である。
【0071】
反応に使用される溶媒としては、反応を阻害しないものや有機マグネシウム化合物と反応性を示さないものであれば特に限定されないが、ベンゼン、トルエン、n−ヘキサン、シクロヘキサン等の炭化水素系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、1,4−ジオキサン、tert−ブチルメチルエーテル、ジメトキシエタン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル系溶媒、塩化メチレン、クロロホルム、1,1,1−トリクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン系溶媒、が挙げられる。また、これらは単独で用いても2種以上を併用しても良い。
【0072】
反応温度は、高い立体選択性を得るために、極低温反応で行う必要はなく、通常−50〜50℃であり、さらに好ましくは−30〜30℃である。
【0073】
反応時間は通常5分〜24時間、好ましくは1〜20時間である。
【0074】
本工程で生成した式(3)で表されるカルボン酸は、酢酸エチル、エーテル、ヘキサン、トルエンなどの有機溶媒から抽出することにより得ることができる。
【0075】
反応は通常高立体選択的に進行し、非常に高い光学純度を有するカルボン酸化合物(3)が得られる。
【0076】
かくして得られた粗生成物は、必要に応じてクロマトグラフィー、結晶化、蒸留などの操作により精製単離することができる。この際、光学純度も向上することがある。
【実施例】
【0077】
(合成例1)(R)−3−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル
【0078】
【化11】

NaH(60wt%)610mmol(24.4g)をヘキサン200mlで3回洗浄し、THF200mlを加えた。ここにフェニル酢酸エチル122mmol(20.0g)を加え、40℃で1時間攪拌した。次にギ酸エチル1220mmol(90.3g)を加え、3時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した反応溶液をトルエン200ml/水300ml混合液中に注ぎ込んだ。濃塩酸を加えて水相をpH=2.0とし、トルエン相を分離した。トルエン相を無水NaSOにて乾燥、溶媒を減圧留去し、粗2−ホルミルフェニル酢酸エチルを得た。
【0079】
E.coli HB101(pNTOFG1)FERM BP−10231を、100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)60mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。この培養液400mlに、55%(w/v)のグルコース水溶液48.2ml、NADP20mg、2−ホルミルフェニル酢酸エチル20gを添加し、10Mの水酸化ナトリウムの滴下によりpH6.5に調整しつつ、30℃で20時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を19g(収率92%)得た(99%e.e.以上)。なお、上記のE.coli HB101(pNTOFG1)については、FERM BP−10231の受託番号で、平成17年2月9日付けで、日本国茨城県つくば市東1丁目1番地1中央第6にある独立行政法人産業技術総合研究所特許生物寄託センターに寄託されている。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALCELL OD−H、 移動相:ヘキサン/2−プロパノール=95/5、流速:0.5mL/min、カラム温度:30℃、検出器:UV220nm、保持時間18.7分(R)20.4分(S)
【0080】
(合成例2)(R)−3−ヒドロキシ−2−ベンジルプロピオン酸エチル
【0081】
【化12】

NaH(60wt%)60mmol(2.4g)をヘキサン10mlで3回洗浄し、THF20mlを加えた。ここに3−フェニルプロピオン酸エチル12.2mmol(2.2g)を加え、40℃で1時間攪拌した。次にギ酸エチル122mmol(9.1g)を加え、20時間反応させた。反応終了後、室温まで冷却した反応溶液をトルエン40ml/水40ml混合液中に注ぎ込んだ。濃塩酸を加えて水相をpH=2.0とし、トルエン相を分離した。トルエン相を無水NaSOにて乾燥、溶媒を減圧留去し、粗2−ホルミル−3−プロピオン酸エチルを得た。
E.coli HB101(pNTOFG1)FERM BP−10231を、100μg/mlのアンピシリンを含む2×YT培地(トリプトン1.6%、イーストエキス1.0%、NaCl0.5%、pH7.0)60mlに接種し、37℃で24時間振盪培養した。この培養液10mlに、55%(w/v)のグルコース水溶液8.5ml、NADP0.6mg、粗2−ホルミル−3−プロピオン酸エチル3.2gを添加し、10Mの水酸化ナトリウムの滴下によりpH6.5に調整しつつ、30℃で35時間攪拌した。反応終了後、酢酸エチルで抽出し、抽出物をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を3.2g(収率96%)得た(99%e.e.以上)。
【0082】
(実施例1)(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル
【0083】
【化13】

合成例1で得られた(R)−3−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル42.3mmol(8.22g)/トリエチルアミン50.8mmol(5.13g)/トルエン50ml溶液を−10℃に冷却し、メタンスルホニルクロライド50.8mmol(5.82g)/トルエン25ml溶液を滴下した。滴下終了後、さらに3時間反応させた後、水85mlを加え、反応を停止した。トルエン相を分離後、無水NaSOにて乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を9.56g(収率93%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.23(t,3H, J=7.3Hz),2.96(s,3H),4.00−4.03(m,1H),4.14−4.35(m,2H),4.36−4.38(m,2H), 4.72(t,1H, J=9.8Hz),7.23−7.39(m,5H)
【0084】
(実施例2)(R)−3−(p−トルエンスルホニルオキシ)−2−フェニルプロピオン酸エチル
【0085】
【化14】

合成例1で得られた(R)−3−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル5.1mmol(1.0g)/トリエチルアミン6.2mmol(0.63g)/トルエン30ml溶液を−10℃に冷却し、トルエンスルホニルクロライド6.2mmol(1.17g)/トルエン10ml溶液を滴下した。滴下終了後、さらに24時間反応させた後、水30mlを加え反応を停止した。トルエン相を分離後、無水NaSOにて乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにて精製し、表題化合物を1.12g(収率63%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.17(t,3H, J=7.3Hz),2.44(s,3H),3.94(dd,1H,J=5.9Hz,6.0Hz),4.08−4.20(m,3H),4.52(t,1H,J=9.3Hz), 7.17−7.20(m,2H),7.25−7.32(m,5H),7.70−7.72(m,2H)
【0086】
(実施例3)(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸n−ブチル
【0087】
【化15】

(R)−3−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸n−ブチル(例えば、Tetrahedron、Asymmetry2005、16、3892に記載の方法により得られる)47.0mmol(10.0g)/トリエチルアミン56.4mmol(5.70g)/トルエン75ml溶液を−10℃に冷却し、メタンスルホニルクロライド56.4mmol(6.46g)/トルエン25ml溶液を滴下した。滴下終了後さらに3時間反応させた後、水100mlを加え反応を停止した。トルエン相を分離後、無水NaSOにて乾燥し、溶媒を減圧留去した。残渣をシリカゲルカラムにて精製し、表題化合物を8.37g(収率89%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.23(t,3H, J=7.3Hz),2.96(s,3H),4.00−4.03(m,1H),4.14−4.35(m,2H),4.36−4.38(m,2H), 4.72(t,1H, J=9.8Hz),7.23−7.39(m,5H)
【0088】
(実施例4)(S)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸n−ブチル
【0089】
【化16】

(S)−3−ヒドロキシ−2−フェニルプロピオン酸n−ブチル(Tetrahedron、Asymmetry2005、16、3892)47.0mmol(10.0g)、メタンスルホニルクロライド56.4mmol(6.46g)を用いた以外は、実施例3と同様に反応を行い、表題化合物を10.8g(収率94%)得た。
【0090】
(実施例5)(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸
【0091】
【化17】

実施例1で得られた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル15.9mmol(4.34g)をギ酸16mlに溶解し、ここに96%濃硫酸を3.26g加えた溶液を60℃で22時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、ギ酸を留去した。残渣に酢酸エチル20ml、水20mlを加えて、粗生成物を酢酸エチル抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を3.45g(収率89%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.97(s,3H),4.08(dd,1H,J=10.5Hz,5.4Hz),4.40(dd,1H,J=10.5Hz,5.4Hz),4.71(t,1H、J=10.0Hz)
【0092】
(実施例6)(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸
実施例1で得られた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル3.5mmol(0.95g)をギ酸8mlに溶解し、96%濃硫酸を0.7g加えた溶液を90℃で18時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、ギ酸を留去した。残渣に酢酸エチル10ml、水10mlを加えて、粗生成物を酢酸エチル抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣にトルエン10mlを加え、40℃で1時間、次いで室温で1時間攪拌した。析出した結晶をろ別し、表題化合物を0.69g(収率81%)得た。
【0093】
(実施例7)(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸
実施例1でられた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸エチル2.0mmol(0.53g)をギ酸1.6ml、水0.4ml混合液に溶解し、60℃で18時間攪拌、ついで90℃で27時間攪拌した。t−ブチルメチルエーテル10mlを加えて、粗生成物を抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を0.401g(収率84%)得た。
【0094】
(実施例8)(S)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸
【0095】
【化18】

実施例4で得られた(S)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸ブチル44.2mmol(10.8g)をギ酸47mlに溶解し、96%濃硫酸を9.7g加えた。この溶液を60℃で24時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、ギ酸を留去した。残渣にt−ブチルメチルエーテル100ml、水100mlを加えて、粗生成物を抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を10.2g(収率95%)得た。
【0096】
(実施例9)(R)−3−フェニルオキセタン−2−オン
【0097】
【化19】

実施例5で得られた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸2.80mmol(0.68g)を酢酸エチル20mlに溶解し、ここに飽和NaHCO水溶液15mlを加え、室温で3日間攪拌した。有機相を分離、NaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をシリカゲルカラムにて精製し、表題化合物を0.28g(収率66%)得た(97.6%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALCELL OD−H、 移動相:ヘキサン/2−プロパノール=95/5、流速:0.5mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV220nm、保持時間27.5分(R)30.0分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ4.37(dd,1H,J=4.7,5.1Hz),4.67(dd,1H,J=5.1,6.8Hz),4.93(dd,1H,J=4.7,6.8Hz),7.25−7.41(m,5H)
【0098】
(実施例10)(R)−3−フェニルオキセタン−2−オン
実施例4で得られた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸23.3mmol(5.68g)をトルエン60ml、水30mlに溶解し、ここにNaHCO19.6gを加え、室温で22時間攪拌した。反応終了後、有機相を分離、NaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を2.70g(収率79%)得た(98.8%ee)。
【0099】
(実施例11)(R)−3−フェニルオキセタン−2−オン
実施例5で得られた(R)−3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸7.8mmol(1.89g)をt−ブチルメチルエーテル20ml、水10ml混合液に溶解し、NaHCO2.5g加えた。反応溶液を室温で3日間攪拌した。有機相を分離、NaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を0.97g(収率84%)得た。
【0100】
(実施例12)(S)−3−フェニルオキセタン−2−オン
実施例8で得られた3−メタンスルホニルオキシ−2−フェニルプロピオン酸11.6mmol(2.84g)をトルエン30ml、水15ml混合液に溶解し、NaOHを加え、水相のpH=10に調整し、室温で10時間攪拌した。有機相を分離、NaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を1.12g(収率66%)得た。
【0101】
(実施例13)(S)−2−フェニルヘキサン酸
【0102】
【化20】

実施例9で得られた(R)−3−フェニルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.293g)、CuI0.1mmol(0.02g)、THF5ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化n−ブチルマグネシウム(0.9M THF溶液)2.6mmol(2.9ml)を添加した。−20℃で30分間攪後、水15lmを加え反応を停止した。1M塩酸を加え、水相pH=2.0に調整し、生成物を酢酸エチル(25ml)抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。粗生成物をシリカゲルカラムにて分離精製し、表題化合物を0.35g(85%)得た(92.4%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALPAK AD−H、 移動相:ヘキサン/2−プロパノール=9/1、流速:0.5mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間11.4分(R)12.3分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.85(t,3H,J=7.8Hz),1.26−1.27(m,6H),1.75−1.80(m,1H),2.03−2.08(dd,1H,J=6.8Hz,7.8Hz),7.30−7.32(m,5H)
【0103】
(実施例14)(R)−2−フェニルヘプタン酸
【0104】
【化21】

実施例12で得られた(S)−3−フェニルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.293g)、LiCuCl(0.1MTHF)0.1mmol(1.0ml)、THF3ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化n−ブチルマグネシウム(0.9M THF溶液)4.4mmol(4.9ml)を添加した。−20℃で30分間攪後、水15mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。粗生成物はHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を0.384g(93%)得た(96.3%ee)。
【0105】
(実施例15)(S)−4−メチル−2−フェニルペンタン酸
【0106】
【化22】

実施例9で得られた(R)−3−フェニルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.293g)、LiCuCl(0.1MTHF)0.1mmol(1.0ml)、THF5ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化i―プロピルマグネシウム(2.0M THF溶液)6.0mmol(3.0ml)を添加した。−20℃で30分間攪後、水15mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。粗生成物はシリカゲルカラムにて分離精製し、表題化合物を0.31g(79%)得た(95.9%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALPAK AD−H、 移動相:ヘキサン/2−プロパノール=95/5、流速:0.5mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間13.9分(R)15.0分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.90(d,6H,J=6.6Hz),1.45−1.54(m,1H),1.66−1.73(m,1H),1.91−1.99(m,1H),7.26−7.32(m,5H)
【0107】
(実施例16)(R)−2−フェニル−4−ペンテン酸
【0108】
【化23】

実施例12で得られた(S)−3−フェニルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.293g)、LiCuCl(0.1M THF)0.1mmol(1.0ml)、THF3ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化ビニルマグネシウム(1.44M THF溶液)3.9mmol(5.6ml)を添加した。−20℃で30分間攪後、水15mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。粗生成物をシリカゲルカラムにより精製単離し、表題化合物を0.223g(63%)得た(98.2%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALPAK AD−H、 移動相:ヘキサン/2−プロパノール=95/5、流速:0.5mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間6.4分(R)7.5分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.50−2.57(m,1H),2.79−2.87(m,1H),3.64−3.69(m,1H),5.00−5.11(m,2H),5.67−5.77(m、1H),7.26−7.34(m,5H)
【0109】
(実施例17)(R)−2−メタンスルホニルオキシメチル−3−フェニルプロピオン酸エチル
【0110】
【化24】

合成例2で取得した(R)−2−ヒドロキシメチル−3−フェニルプロピオン酸エチル4.8mmol(1.0g)/トリエチルアミン7.2mmol(0.73g)/トルエン10ml溶液を0℃に冷却し、メタンスルホニルクロライド7.2mmol(0.82g)/トルエン3ml溶液を滴下した。滴下終了後さらに3時間反応させた後、水20mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を1.33g(収率97%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ1.23(t,3H, J=7.6Hz),2.91−2.96(m,1H),3.01(s,3H),3.00−3.21(m,2H),4.14−4.20(m,4H),7.20−7.33(m,5H)
【0111】
(実施例18)(R)−2−メタンスルホニルオキシメチル−3−フェニルプロピオン酸
【0112】
【化25】

実施例17で得られた(R)−2−メタンスルホニルオキシメチル−3−フェニルプロピオン酸エチル4.6mmol(1.33g)をギ酸10mlに溶解し、96%濃硫酸を0.9g加えた。この溶液を60℃で22時間攪拌した。反応溶液を減圧濃縮し、ギ酸を留去した。残渣に酢酸エチル10ml、水10mlを加えて、粗生成物を酢酸エチル抽出した。有機相をNaSOにて乾燥後、減圧濃縮した。残渣をHPLCにて定量分析を行い、表題化合物を0.96g(収率81%)得た。
H−NMR(400MHz,CDCl)δ2.88−2.94(m,1H),3.00(s,3H),3.10−3.17(m,2H),4.31(d,2H,J=5.4Hz),7.19−7.34(m,5H)
【0113】
(実施例19)(R)−3−ベンジルオキセタン−2−オン
【0114】
【化26】

実施例18で得られた(R)−2−メタンスルホニルオキシメチル−3−フェニルプロピオン酸5.8mmol(1.50g)、t−ブチルメチルエーテル25ml、水25ml混合溶媒中に、NaHCO23.2mmol(1.95g)を加え、室温で24時間攪拌した。有機相を分離後、NにてNaSO乾燥、減圧濃縮することにより表題化合物を0.836g(89%)得た(97.8%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALPAK OD−H、 移動相:ヘキサン/イソプロピルアルコール=98/2、流速:0.7mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間31.8分(S)33.4分(R)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ3.08(dd,1H,J=14.4Hz,8.8Hz),3.18(dd,1H,J=14.4Hz,8.8Hz),4.40−4.07(m,2H),4.33(dd,1H,J=6.1Hz,5.1Hz),7.18−7.34(m,5H)
【0115】
(実施例20)(S)−2−シクロヘキシルメチル−3−フェニルプロピオン酸
【0116】
【化27】

実施例19で得られた(R)−3−ベンジルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.324g)、CuI0.1mmol(0.02g)、THF5ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化シクロヘキシルマグネシウム(1.0M TTHF溶液)2.8mmol(2.8ml)を添加した。−20℃で1時間攪後、水15mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。粗生成物をシリカゲルカラムにて分離精製し、表題化合物を0.391g(80%)得た(100%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALCELL OJ−RH、 移動相:アセトニトリル/過塩素酸水溶液(pH=2.0)=1/1、流速:0.5mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間14.8分(R)15.7分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.74−0.93(m,2H),1.92−1.39(m,5H),1.62−1.87(m,6H),2.71−2.81(m,2H),2.87−2.97(m,1H),7.15−7.29(m,5H)
【0117】
(実施例21)(S)−2−ベンジル−4−メチルペンタン酸
【0118】
【化28】

実施例19で得られた(R)−3−ベンジルオキセタン−2−オン2.0mmol(0.324g)、CuI0.1mmol(0.02g)、THF5ml混合溶液を−20℃に冷却した。この溶液に塩化イソプロピルマグネシウム(2.0M THF溶液)3.6mmol(1.8ml)を添加した。−20℃で1時間攪後、水20mlを加え反応を停止した。実施例15と同様の後処理を行った。粗生成物をシリカゲルカラムにて分離精製し、表題化合物を0.273g(66%)得た(100%ee)。
光学純度分析HPLC条件 カラム:CHIRALCELL OJ−RH、 移動相:アセトニトリル/過塩素酸水溶液(pH=2.0)=1/1、流速:0.3mL/min、カラム温度:40℃、検出器:UV210nm、保持時間13.9分(R)14.9分(S)
H−NMR(400MHz,CDCl)δ0.89(t,6H,J=6.6Hz),1.28−1.31(m,1H),1.60−1.68(m,2H),2.71−2.78(m,2H),2.91−2.98(m,1H),7.16−7.29(m,5H)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1);
【化1】

(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。*は不斉炭素を表す。)で表されるプロピオラクトンを、一般式(2);
M (2)
(式中、Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。Mはアルカリ金属またはハロゲン化アルカリ土類金属を表す。)で表される有機金属化合物と反応させることを特徴とする一般式(3);
【化2】

(式中、R、R、*は前記に同じ。)で表される光学活性カルボン酸誘導体の製造方法。
【請求項2】
前記一般式(1)で表されるプロピオラクトンが、
I)一般式(4);
【化3】

(式中、R、*は前記に同じ。Rは炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。)で表される光学活性α−ヒドロキシメチルカルボン酸エステルを、塩基存在下
一般式(5);
SOCl (5)
(式中、Rは水素または炭素数1〜18の置換もしくは無置換のアルキル基、炭素数6〜20の置換もしくは無置換のアリール基または炭素数7〜20の置換もしくは無置換のアラルキル基を表す。)で表されるスルホニルクロライドと反応させることにより、一般式(6);
【化4】

(式中、R、R、R、*は前記に同じ。)で表されるα―スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルとする工程、
II)該α―スルホニルオキシメチルカルボン酸エステルを加水分解することにより一般式(7);
【化5】

(式中、R、R、*は前記に同じ。)で表されるα―スルホニルオキシメチルカルボン酸とする工程、
III)該α―スルホニルオキシメチルカルボン酸を塩基で処理する工程
により製造される請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記式(2)で表される有機金属化合物が、有機マグネシウム化合物である請求項1または2のいずれかに記載の製造方法。
【請求項4】
前記式(1)で表されるプロピオラクトンと前記式(2)で表される有機金属化合物の反応を、遷移金属触媒存在下で行う請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
遷移金属触媒が銅化合物である請求項4に記載の製造方法。
【請求項6】
前記式(5)で表されるスルホニルクロライドがメタンスルホニルクロライドである請求項2〜5のいずれか1項に記載の製造方法。
【請求項7】
エステル基の加水分解を酸で行う請求項2〜6のいずれか1項に記載の製造方法。

【公開番号】特開2009−35508(P2009−35508A)
【公開日】平成21年2月19日(2009.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−201165(P2007−201165)
【出願日】平成19年8月1日(2007.8.1)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】