説明

光学素子の製造方法、及び、光学素子の製造装置

【課題】光学素子の製造方法及び製造装置において、上型と、これに当接する上当接部材との当接状態の解除を、上当接部材から上型への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行う。
【解決手段】上型2と下型3とを有する型セット1に収容される光学素子材料5を加熱する加熱工程と、その後、光学素子材料5を加圧する加圧工程と、その後、光学素子材料5を冷却する冷却工程と、上型2に当接可能な上当接部材11の上型2との当接状態を解除する当接解除工程と、を含み、上記加熱工程、上記加圧工程、及び、上記冷却工程のうち少なくとも1つの工程は、上型2に上当接部材11が当接した状態で行われ、上記当接解除工程では、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量との合計よりも小さくなった後に、上当接部材11の上型2との当接状態を解除する、光学素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば熱可塑性部品である光学素子を製造する光学素子の製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上型と下型とを有する型セットに収容した光学素子材料に、加熱、加圧及び冷却の各工程を行うことにより、光学素子を製造する手法が知られている。このように光学素子を製造する場合、上型に上当接部材を当接させた状態で各工程を行うと、上当接部材と上型とを離す際に上当接部材と上型とが離れず上型が上当接部材と共に持ち上がることがあった。
【0003】
このように上型が持ち上がるのを防ぐために、特許文献1には、上当接部材である上側温度制御ブロックの上型との当接面に通気孔を設ける技術が記載されている。
また、上記特許文献1には、上記の通気孔が多孔質体のものである点、及び、上記の通気孔から流体を噴出させる点も記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−242152号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1のように上当接部材(上側温度制御ブロック)に多孔質体を用いる場合、通気孔の面積が大きいと、上当接部材から上型への熱伝導領域が減ることになる。また、通気孔の面積が小さいと、上型と上当接部材との当接を解除できなくなる。更には、上記特許文献1のように通気孔から流体を噴出させる場合、上型に温度変化をもたらす。
【0006】
本発明の目的は、上型と、これに当接する上当接部材との当接状態の解除を、上当接部材から上型への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行うことができる光学素子の製造方法及び製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の製造方法は、上型と下型とを有する型セットに収容される光学素子材料を加熱する加熱工程と、その後、上記光学素子材料を加圧する加圧工程と、その後、上記光学素子材料を冷却する冷却工程と、上記上型に当接可能な上当接部材の上記上型との当接状態を解除する当接解除工程と、を含み、上記加熱工程、上記加圧工程、及び、上記冷却工程のうち少なくとも1つの工程は、上記上型に上記上当接部材が当接した状態で行われ、上記当接解除工程では、上記上型に加わる上向きの気圧力がこの上型に加わる下向きの気圧力とこの上型の質量との合計よりも小さいときに、上記上当接部材の上記上型との当接状態を解除する。
【0008】
また、上記光学素子の製造方法において、上記当接解除工程では、上記上型に加わる下向きの気圧力が高まる位置に上記上当接部材と上記上型とを当接状態のまま相対的に移動させた後に、上記上当接部材の上記上型との当接状態を解除するようにしてもよい。
【0009】
また、上記光学素子の製造方法において、上記当接解除工程では、上記型セットが配置される空間を減圧した後に、上記上当接部材の上記上型との当接状態を解除するようにしてもよい。
【0010】
本発明の光学素子の製造装置は、上型と下型とを有する型セットに収容される光学素子材料を加熱する加熱部と、上記光学素子材料を加圧する加圧部と、上記光学素子材料を冷却する冷却部と、を備え、上記加熱部、上記加圧部、及び、上記冷却部のうち少なくとも1つは、上記上型に当接可能な上当接部材を有し、上記上当接部材の上記上型との当接状態は、上記上型に加わる上向きの気圧力がこの上型に加わる下向きの気圧力とこの上型の質量との合計よりも小さいときに解除される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上型と、これに当接する上当接部材との当接状態の解除を、上当接部材から上型への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置を示す要部断面図である。
【図2】図1のA−A断面図である。
【図3】本発明の第1実施形態の変形例に係る光学素子の製造装置を示す要部断面図である。
【図4A】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造装置を示す要部断面図(その1)である。
【図4B】本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造装置を示す要部断面図(その2)である。
【図5】本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造装置を示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法及び製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0014】
<第1実施形態>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学素子の製造装置10を示す要部断面図である。
図2は、図1のA−A断面図である。
【0015】
図1に示す光学素子の製造装置(以下、単に「製造装置」と記す。)10は、型セット1の上型2に当接可能な上当接部材11と、型セット1の下型3に当接可能な下当接部材12とを備える。
【0016】
型セット1は、対向して配置された上型2及び下型3と、これら上型2及び下型3の周囲に配置されたスリーブ4とを有し、上型2と下型3との間に光学素子材料5を収容する。なお、光学素子材料5は、例えば、ガラス、プラスチックであり、製造される光学素子は、例えばレンズである。
【0017】
上型2は、上端にツバ部2aが形成された円柱形状を呈する。上型2の下端中央には、光学素子材料5に凸形状を転写する凹成形面2bが形成されている。
【0018】
下型3は、下端にツバ部3aが形成された円柱形状を呈する。下型3の上端中央には、光学素子材料5に凸形状を転写する凹成形面3bが形成されている。
【0019】
スリーブ4は、円筒形状を呈し、上型2のツバ部2aと下型3のツバ部3aとの間に配置されている。上型2は、光学素子材料5の加圧時等において、スリーブ4の内周面を摺動する。
【0020】
なお、製造装置10が型セット1を加熱ステージ(加熱部)、加圧ステージ(加圧部)、冷却ステージ(冷却部)に順次移送しながら光学素子を製造する循環型の製造装置である場合には、上記の各ステージに図1に示す上当接部材11及び下当接部材12が配置される。但し、単一のステージが加熱部、加圧部及び冷却部を兼ねるようにしてもよい。
【0021】
上当接部材11及び下当接部材12は、図示しない熱源を有する温度制御部材と型セット1との間に配置される例えば板状の部材であるが、上当接部材11及び下当接部材12自体が熱源を有することにより温度制御部材として機能するようにしてもよい。
【0022】
上当接部材11は、当接解除手段としての例えば図示しないシリンダにより上下動する。上当接部材11の底面には、図2(図1のA−A断面図)に示すように、型セット1と当接した状態(当接面積Sの網掛け部分)においても外部(型セット1が配置される空間である成形室)に連通する開空間を構成する溝部11a,12aが形成されている。
【0023】
なお、開空間としては、外部に連通するものであればよく、図3に示す変形例に係る製造装置10´の上型2´上面に形成された溝部2c,2dにより構成されるものであってもよい。
【0024】
また、開空間としては、溝部のようなものではなく、上当接部材11及び上型2のうち少なくとも一方の当接面に拡がる微小凹凸部(粗面)により構成されるものや、管状の気体の流路により構成されるものなどであってもよい。
【0025】
開空間が、当接面に拡がる微小凹凸部により構成される場合には、上当接部材11と上型2との当接領域が偏らず、上当接部材11から上型2への熱伝導の際に熱分布が生じるのを抑えることができる。
【0026】
以下、本実施形態の光学素子の製造方法について説明する。なお、製造装置10の後述する動作は、図示しない制御部によって制御されている。
図1に示すように、光学素子材料5が収容された型セット1は、それぞれ1つ以上の加熱ステージ、加圧ステージ及び冷却ステージにおいて、各ステージの下当接部材12上で、上型2に上当接部材11が当接した状態で、光学素子材料5が加熱され(加熱工程)、加圧され(加圧工程)、又は、冷却され(冷却工程)、光学素子が製造される。なお、例えば加熱ステージなどの一部のステージにおいて上当接部材11が上型2に当接しなくともよい。
【0027】
なお、単一のステージにおいて加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる場合には、単一の下当接部材12上で、上型2に上当接部材11が当接した状態のまま、加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる。
【0028】
各ステージにおいて加熱工程、加圧工程又は冷却工程が行われた後、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(即ち、「Pd+M>Pu」の関係を満たすときに)、上当接部材11は、上記のシリンダ(当接解除手段)により上昇し、上当接部材11の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。
【0029】
例えば、上型2の質量がM(=0.1)[kgf]、型セット1が配置される空間である成形室内の大気圧力がP[kg/mm]、上型2と上当接プレート11との当接面積がS[mm]、上型2の直径φが30[mm]であるとき、上型2に加わる上向きの気圧力Pu(上型2の底面全面に大気圧が加わる場合である最大値)は「Pu=15×15×π×P」で表すことができる。また、上型2に加わる下向きの気圧力Pdは「Pd=(15×15×π−S)×P」で表すことができる。
【0030】
そのため、上述のように「Pd+M>Pu」の関係を満たすようにするためには、展開すると、「M>Pu−Pd」、「M>SP」、即ち「S<(M/P)」の関係を満たす必要がある。そのため、この関係を満たすように、開空間を構成する溝部11a,11bが形成され、上型2と上当接プレート11との当接面積Sが設定されればよい。
【0031】
但し、上型2に加わる上向きの気圧力Puを、厳密に、上型2の底面のうち光学素子材料5との接触面積を除いた面積に大気圧力を乗じて求める場合、上型2と光学素子材料5との接触面積が変動する。そのため、例えば、冷却ステージにおける当接解除工程の場合には、光学素子材料5と上型2との線膨張係数の違いによる冷却時の収縮差によって光学素子材料5と上型2との離型が進んで当接解除工程の段階で気圧力Puの値が大きくなっても、「Pd+M>Pu」の関係を満たすようにするなどの対応が必要である。
【0032】
以上説明した本実施形態では、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(Pd+M>Pu)、上当接部材11の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。
【0033】
そのため、上当接部材11の上型2との当接面積を小さくすると、上当接部材11から上型2への熱伝導領域が減ることになり、当接面積を大きくすると、上型2と上当接部材11との当接を解除できなくなるが、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいという判断を予め行うことにより、熱伝導性を考慮して例えば必要最低限の溝部11a,11b(開空間)を上当接部材11と上型2との間に形成することも可能となる。また、気圧力Pd,Puを条件とする判断を行うため、強制的に気体を供給して当接解除を行う場合のような、上型2への温度変化を生じさせなくともよい。
【0034】
よって、本実施形態によれば、上型2と上当接部材11との当接状態の解除を、上当接部材11から上型2への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行うことができる。
【0035】
<第2実施形態>
図4A及び図4Bは、本発明の第2実施形態に係る光学素子の製造装置20を示す要部断面図である。
【0036】
本実施形態では、上述の第1実施形態と相違する点について主に説明し、重複する点については説明を一部省略する。
本実施形態の製造装置20は、型セット1の上型2に当接可能な上当接部材21と、型セット1の下型3に当接可能な下当接部材22と、上当接部材21と上型2とを当接状態のまま相対的に移動させる相対移動手段としての型セット駆動部23とを備える。
【0037】
本実施形態の上当接部材21の底面には、型セット1と当接した状態においても外部(型セットが配置される空間である成形室)に連通する開空間を構成する溝部21aが形成されている。この溝部21aは、光学素子材料5の加熱、加圧、冷却等を行う際の型セット1(例えば、図4Aに示す中央の位置)に対向しない位置(或いは部分的に対向している位置)として、例えば上当接部材21の端部に形成されている。
【0038】
なお、上当接部材21及び型セット1の両方が開空間を生じさせないような鏡面に加工されている場合を除き、型セット1が上当接部材21の溝部21aに対向していない状態、即ち、型セット1が上型2の上面全体に亘って上当接部材21に当接していても、開空間は存在し、よって、上型2に加わる下向きの気圧力Pdは生じている。
【0039】
型セット駆動部23は、上当接部材21と下当接部材22とにより挟持された状態の型セット1を、上型2に加わる下向きの気圧力Pdが高まる位置、例えば、開空間を構成する溝部21aとの対向面積が増える位置へ水平方向に移動させる例えばサーボモータ等の駆動部である。
【0040】
以下、本実施形態の光学素子の製造方法について説明する。なお、製造装置20の後述する動作は、図示しない制御部によって制御されている。
図4Aに示すように、光学素子材料5が収容された型セット1は、それぞれ1つ以上の加熱ステージ、加圧ステージ及び冷却ステージにおいて、各ステージの下当接部材22上で、上型2に上当接部材21が当接した状態で、加熱され(加熱工程)、加圧され(加圧工程)、又は、冷却され(冷却工程)、光学素子が製造される。
【0041】
なお、単一のステージにおいて加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる場合には、単一の下当接部材22上で、例えば、上型2に上当接部材21が当接した状態のまま、加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる。
【0042】
各ステージにおいて加熱工程、加圧工程又は冷却工程が行われた後、型セット駆動部23は、型セット1を、加熱、加圧又は冷却を行う際の図4Aに示す中央の位置から、図4Bに示すように、上型2に加わる下向きの気圧力Pdが高まる位置、例えば、開空間を構成する溝部21aと対向する位置(対向面積が増える位置)に水平方向に移動させる。
【0043】
このように型セット1を移動させることで上型2に加わる下向きの気圧力Pdを大きくした後、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(即ち、「Pd+M>Pu」の関係を満たすときに)、上当接部材21は、上記のシリンダ(当接解除手段)により上昇し、上当接部材21の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。
【0044】
以上説明した本実施形態においても、上述の第1実施形態と同様に、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(Pd+M>Pu)、上当接部材21の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。
【0045】
そのため、本実施形態によっても、上述の第1実施形態と同様に、上型2と上当接部材21との当接状態の解除を、上当接部材21から上型2への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行うことができる。
【0046】
また、本実施形態においては、当接解除工程では、相対移動手段としての型セット駆動部23が、上型2に加わる下向きの気圧力Pdが高まる位置、例えば、開空間を構成する溝部21aとの対向面積が増える位置に、上当接部材21と上型2とを当接状態のまま相対的に移動させた後に、上当接部材21の上型2との当接状態が解除される。これにより、上当接部材21と上型2との当接面積が大きい状態で光学素子材料5の加熱、加圧、冷却等を行うことができるため、熱伝導性を良好に保つことができると共に、上型2と上当接部材21との当接状態の解除を確実に行うことができる。
【0047】
<第3実施形態>
図5は、本発明の第3実施形態に係る光学素子の製造装置30を示す要部断面図である。
本実施形態においても、上述の第1実施形態と相違する点について主に説明し、重複する点については説明を一部省略する。
本実施形態の製造装置30は、型セット1の上型2に当接可能な上当接部材31と、型セット1の下型3に当接可能な下当接部材32と、型セット1が配置される空間である成形室34を減圧する減圧手段としての減圧ポンプ33とを備える。
【0048】
なお、図5では、成形室34内に上当接部材31及び下当接部材32を1つずつのみ図示しているが、製造装置30が、型セット1を加熱ステージ(加圧部)、加圧ステージ(加圧部)、冷却ステージ(冷却部)に順次移送しながら光学素子を製造する循環型の製造装置である場合には、これらのステージが成形室34に配置される。
【0049】
本実施形態の上当接部材31の底面には、上述の第1実施形態及び第2実施形態で述べたような、開空間を構成する溝部は形成されていない。しかし、上当接部材31及び型セット1の両方が開空間を生じさせないような鏡面に加工されている場合を除き、開空間は存在し、よって、上型2に加わる下向きの気圧力Pdは生じている。
【0050】
減圧ポンプ33は、例えば、各ステージにおいて加熱工程、加圧工程及び冷却工程が終了したときなどの当接解除工程を行う段階において、成形室34内を減圧する。減圧ポンプ34が減圧を行う期間は、上当接部材31と上型2との当接状態を解除するときに成形室34が減圧されていればよいが、当接状態を解除するときのみに成形室34が減圧されるようにすることで光学素子の製造に影響を与えるのを抑えることができる。
【0051】
以下、本実施形態の光学素子の製造方法について説明する。なお、製造装置30の後述する動作は、図示しない制御部によって制御されている。
図5に示すように、光学素子材料5が収容された型セット1は、それぞれ1つ以上の加熱ステージ、加圧ステージ及び冷却ステージにおいて、各ステージの下当接部材22上で、上型2に上当接部材31が当接した状態で、加熱され(加熱工程)、加圧され(加圧工程)、又は、冷却され(冷却工程)、光学素子が製造される。
【0052】
なお、単一のステージにおいて加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる場合には、単一の下当接部材32上で、例えば、上型2に上当接部材31が当接した状態のまま、加熱工程、加圧工程及び冷却工程が行われる。
【0053】
各ステージにおいて加熱工程、加圧工程又は冷却工程が例えば同一のタイミングで終了した後、減圧ポンプ33は、成形室34内を減圧する。これにより、上型2に加わる下向きのPd及び気圧力Pd及び上型2に加わる上向きの気圧力Puの両方を小さくした後、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(即ち、「Pd+M>Pu」の関係を満たすときに)、上当接部材31は、上記のシリンダ(当接解除手段)により上昇し、上当接部材31の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。なお、当接状態が解除された後には、その都度、成形室34内を減圧前の状態に戻すようにするとよい。
【0054】
以上説明した本実施形態においても、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、上型2に加わる上向きの気圧力Puが上型2に加わる下向きの気圧力Pdと上型2の質量Mとの合計よりも小さいときに(Pd+M>Pu)、上当接部材31の上型2との当接状態が解除される(当接解除工程)。
【0055】
そのため、本実施形態によっても、上述の第1実施形態及び第2実施形態と同様に、上型2と上当接部材31との当接状態の解除を、上当接部材31から上型2への熱伝導が阻害されるのを抑えながら確実に行うことができる。
【0056】
また、本実施形態においては、当接解除工程では、減圧手段としての減圧ポンプ33が、型セット1が配置される空間である成形室34を減圧した後に、上当接部材31の上型2との当接状態が解除される。これにより、上当接部材31と上型2との当接面積が大きい状態で光学素子材料5の加熱、加圧、冷却等を行うことができるため、熱伝導性を良好に保つことができると共に、上型2と上当接部材31との当接状態の解除を確実に行うことができる。更には、開空間を構成する溝部等を予め計算して上当接部材31や上型2に加工する必要がなく、どのような型セット1にも対応させることができる。
【0057】
なお、第3実施形態の減圧ポンプ(減圧手段)33により減圧される成形室(型セットが配置される空間)に、第2実施形態の型セット駆動部(相対移動手段)23を配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0058】
1 型セット
2 上型
2a ツバ部
2b 凹成形面
2c,2d 溝部
3 下型
3a ツバ部
3b 凹成形面
4 スリーブ
5 光学素子材料
10 光学素子の製造装置
11 上当接部材
11a,11b 溝部
12 下当接部材
20 光学素子の製造装置
21 上当接部材
21a 溝部
22 下当接部材
23 型セット駆動部
30 光学素子の製造装置
31 上当接部材
32 下当接部材
33 減圧ポンプ
34 成形室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上型と下型とを有する型セットに収容される光学素子材料を加熱する加熱工程と、
その後、前記光学素子材料を加圧する加圧工程と、
その後、前記光学素子材料を冷却する冷却工程と、
前記上型に当接可能な上当接部材の前記上型との当接状態を解除する当接解除工程と、を含み、
前記加熱工程、前記加圧工程、及び、前記冷却工程のうち少なくとも1つの工程は、前記上型に前記上当接部材が当接した状態で行われ、
前記当接解除工程では、前記上型に加わる上向きの気圧力が該上型に加わる下向きの気圧力と該上型の質量との合計よりも小さいときに、前記上当接部材の前記上型との当接状態を解除する、光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造方法において、
前記当接解除工程では、前記上型に加わる下向きの気圧力が高まる位置に前記上当接部材と前記上型とを当接状態のまま相対的に移動させた後に、前記上当接部材の前記上型との当接状態を解除する、光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記当接解除工程では、前記型セットが配置される空間を減圧した後に、前記上当接部材の前記上型との当接状態を解除する、光学素子の製造方法。
【請求項4】
上型と下型とを有する型セットに収容される光学素子材料を加熱する加熱部と、
前記光学素子材料を加圧する加圧部と、
前記光学素子材料を冷却する冷却部と、を備え、
前記加熱部、前記加圧部、及び、前記冷却部のうち少なくとも1つは、前記上型に当接可能な上当接部材を有し、
前記上当接部材の前記上型との当接状態は、前記上型に加わる上向きの気圧力が該上型に加わる下向きの気圧力と該上型の質量との合計よりも小さいときに解除される、光学素子の製造装置。

【図1】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−126609(P2012−126609A)
【公開日】平成24年7月5日(2012.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279688(P2010−279688)
【出願日】平成22年12月15日(2010.12.15)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)