説明

光学素子の製造方法、及び、光学素子の製造装置

【課題】光学素子の製造方法及び光学素子の製造装置において、光学素子の外周粗面を成形により確実に形成する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、光学素子材料100を加熱する加熱工程と、光学素子材料100を挟んで対向して配置される第1の成形型(11)及び第2の成形型(12)と、光学素子200の外周部となる部分に粗面形状を転写する第3の成形型(13)とが、光学素子材料100に形状を転写するように、加熱された光学素子材料100を加圧する加圧工程と、加圧された光学素子材料100を冷却させる冷却工程と、を含み、上記加圧工程において光学素子材料100が第3の成形型(13)の成形面13aに到達した後に、光学素子材料100を第1の成形型(11)及び第2の成形型(12)により挟持した状態で振動させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学素子を製造する光学素子の製造方法及び光学素子の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、心取り工程の削減を図るべく、外周成形型を使用して光学素子の外周粗面を成形する技術がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
光学素子の外周を粗面にする理由は、フレア・ゴーストを防止するためである。フレア・ゴーストは、例えば、撮像光学系において光学素子の外周に入射する迷光を散乱させて迷光の正反射の強度を減少させることで防止することができる。なお、フレア・ゴースト防止の目的で黒色塗料を光学素子の外周面に塗布することがあるが、光学素子の外周面が粗面でないと塗布の作業性が落ちるので、粗面が望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−196857号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、外周粗面を成形で製造する場合、外周成形型の成形面の凹凸の谷底に光学素子材料であるガラスが到達できず外周面に確実に粗面が形成されないことがある。
例えば、光学素子材料が上記の谷底に到達できずに表面張力で丸まるために局所的に鏡面になってしまうことがある。これは、通常使用するガラスプリフォームが鏡面であり、その鏡面が局所的に残ってしまうことによるものである。但し、その局所的な鏡面は顕微鏡で見なければわからないようなものであり、肉眼で見る限り、外周面は粗面にしか見えない。なお、砥石でガラスを研削して外周面に粗面を形成する場合、粗面を形成するのに手間がかかる。
【0006】
上述のように局所的に鏡面となっている外周粗面を持つ光学素子を光学系に使用する場合、光学系によっては、フレア・ゴーストのリスクがある。フレア・ゴースト防止効果を得るには鏡面のない外周粗面が望ましい。
【0007】
また、成形によって心取り工程を削減する場合、従来技術では外周面とその他の面とのつなぎ目(稜線部分)が鏡面になってしまい確実に外周粗面が形成されないことがある。これは、外周面を成形する型に対して、その他の面を成形する型が摺動するため、型間のクリアランスが必要になることによるものである。
【0008】
心取り工程を採用する場合、研削による面取り加工を行い稜線部分は粗面となるが、心取り工程を省略した成形技術では上述のように稜線部分が鏡面となる。このような光学素子を光学系に使用する場合、光学系によっては、フレア・ゴーストのリスクがある。そのため、フレア・ゴースト防止効果を得るには鏡面のない稜線部分が望ましい。
【0009】
以上のように、従来の成形では、光学素子の外周面及び稜線部分に鏡面部が生じてしまうことで外周粗面を確実に形成することができず、例えばフレア・ゴースト防止効果を光学素子へ有効に付与することはできなかった。
【0010】
本発明の目的は、光学素子の外周粗面を成形により確実に形成することができる光学素子の製造方法及び光学素子の製造装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子材料を加熱する加熱工程と、上記光学素子材料を挟んで対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型と、光学素子の外周部となる部分に粗面形状を転写する第3の成形型とが、上記光学素子材料に形状を転写するように、加熱された上記光学素子材料を加圧する加圧工程と、加圧された上記光学素子材料を冷却させる冷却工程と、を含み、上記加圧工程において上記光学素子材料が上記第3の成形型の成形面に到達した後に、上記光学素子材料を上記第1の成形型及び上記第2の成形型により挟持した状態で振動させる。
【0012】
また、上記光学素子の製造方法において、上記振動付与工程では、上記第1の成形型と上記第2の成形型との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向の両方に変化させるように上記光学素子材料を振動させるようにしてもよい。
【0013】
また、上記光学素子の製造方法において、上記振動付与工程では、上記第1の成形型と上記第2の成形型との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向のうち一方に断続的に変化させるように上記光学素子材料を振動させるようにしてもよい。
【0014】
また、上記光学素子の製造方法において、上記振動付与工程では、上記第1の成形型を移動させる第1の駆動部及び上記第2の成形型を移動させる第2の駆動部のうち少なくとも一方によって、上記光学素子材料を振動させるようにしてもよい。
【0015】
本発明の光学素子の製造方法は、光学素子材料を加熱する加熱部と、加熱された上記光学素子材料を加圧して、上記光学素子材料を挟んで対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型と、光学素子の外周部となる部分に粗面形状を転写する第3の成形型とにより、上記光学素子材料に形状を転写する加圧部と、上記光学素子材料を上記第1の成形型及び上記第2の成形型により挟持した状態で振動させる振動付与部と、を含む。
【0016】
また、上記振動付与部は、上記第1の成形型を移動させる第1の駆動部及び上記第2の成形型を移動させる第2の駆動部のうち少なくとも一方であるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、光学素子の外周粗面を成形により確実に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1A】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置を示す断面図である。
【図1B】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置を示す断面図である。
【図2】本発明の一実施の形態における外周成形型を示す断面図である。
【図3A】図2のA部拡大図(その1)である。
【図3B】図2のA部拡大図(その2)である。
【図3C】図2のA部拡大図(その3)である。
【図3D】図2のA部拡大図(その4)である。
【図3E】図2のA部拡大図(その5)である。
【図4A】図1BのB部拡大図(その1)である。
【図4B】図1BのB部拡大図(その2)である。
【図4C】図1BのB部拡大図(その3)である。
【図4D】図1BのB部拡大図(その4)である。
【図5】本発明の一実施の形態の第1変形例に係る光学素子の製造装置を示す断面図である。
【図6A】本発明の一実施の形態の第2変形例に係る光学素子の製造装置を示す断面図(その1)である。
【図6B】本発明の一実施の形態の第2変形例に係る光学素子の製造装置を示す断面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法及び光学素子の製造装置について、図面を参照しながら説明する。
【0020】
図1A及び図1Bは、本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造装置1を示す断面図である。
図1A及び図1Bに示す光学素子の製造装置1は、上当接プレート(第1の当接部材)2と、下当接プレート(第2の当接部材)3と、加圧部及び振動付与部の一例である上側駆動部(第1の駆動部)4及び下側駆動部(第2の駆動部)5とを備える。
【0021】
上当接プレート2は、後述する型セット10の上面に当接する。上当接プレート2には、光学素子材料100を加熱する例えば2本のヒータ(加熱部)2a,2aが挿入されている。光学素子材料100は、例えば、ガラス、プラスチック等であり、レンズ等の光学素子を製造するのに用いられる材料である。なお、上型12は、上当接プレート2に固定されるようにしてもよい。
【0022】
下当接プレート3は、型セット10の底面に当接する。下当接プレート3には、光学素子材料100を加熱する例えば2本のヒータ(加熱部)3a,3aが挿入されている。また、下当接プレート3には、上下方向に延びる貫通孔3bが中央に形成されている。この貫通孔3bは、下側駆動部5により貫通される。
【0023】
上側駆動部4及び下側駆動部5は、例えば、エアシリンダのピストンである。上側駆動部4は、上当接プレート2に連結され、この上当接プレート2を上下に移動させる。下側駆動部5は、上述のように下当接プレート3の貫通孔3bを貫通し、下型11を下方から押圧する。上側駆動部4及び下側駆動部5は、加熱された光学素子材料100を加圧して、後述する型セット10の下型11と上型12と外周成形型13とにより、光学素子材料100に形状を転写する。詳しくは後述するが、上側駆動部4及び下側駆動部5は、光学素子材料100を振動させる。
【0024】
型セット10は、下型(第1の成形型)11と、上型(第2の成形型)12と、外周成形型(第3の成形型)13と、スリーブ14と、位置決めリング15と、を備える。
下型11と上型12とは、光学素子材料100を挟んで対向して配置されている。下型11の上端中央には、光学素子材料100に凹形状を転写する凸形状の成形面11aが形成されている。また、下型11には、上記の成形面11aが設けられた細径部11bと、この細径部11bの根元部分に連続し且つこの根元部分よりも太径のベース部11cと、が形成されている。
【0025】
上型12の下端中央には、光学素子材料100に凸形状を転写する凹形状の成形面12aが形成されている。また、上型12には、上記の成形面12aが設けられた小径部12bと、この小径部12bの上部に設けられた中径部12cと、この中径部12cの上部に設けられた大径部12dと、が形成されている。
【0026】
外周成形型13は、円筒形状を呈し、後述するスリーブ14の中肉部14bに載置され、薄肉部14aの内周面に対し摺動可能となっている。また、図1B及び図2に示すように、外周成形型13の内周面には、光学素子材料100のうちの光学素子200の外周部202となる部分に凹凸形状等(凹部13a−1)の粗面形状を転写する成形面13aが形成されている。
【0027】
スリーブ14は、外径が一定の円筒形状を呈する。スリーブ14には、上から順に、薄肉部14a,中肉部14b,厚肉部14cが形成されているため、内径は一定ではない。
スリーブ14の薄肉部14aの内周面には、上型12が中径部12cにおいて摺動すると共に、外周成形型13が外周面において摺動する。スリーブ14の中肉部14bの内周面には、後述する位置決めリング15がフランジ部15cにおいて摺動する。スリーブ14の厚肉部14cの内周面には、下型11がベース部11cにおいて摺動する。
【0028】
位置決めリング15の貫通孔15aには、下方から下型11の細径部11bが挿入される。位置決めリング15は、図1Aに示すように貫通孔15aの上端に載置される光学素子材料100を位置決めする。
【0029】
位置決めリング15の上面には、光学素子材料100に凹凸形状を転写する成形面15bが形成されている。また、位置決めリング15の下端には、フランジ部15cが形成されている。
【0030】
以下、本実施の形態に係る光学素子の製造方法について説明する。
まず、図1Aに示すように、スリーブ14内に下型11、外周成形型13及び位置決めリング15が配置された状態で、図示しないロボットがボール状の光学素子材料100を位置決めリング15の貫通孔15a上に載置する。この位置決めリング15の貫通孔15aの上端によって、ガラス100の位置が位置決めされる。
【0031】
また、図示しないロボットは、光学素子材料100に上型12を載置する。図1Bに示すように、下側駆動部5は、下型11を上方に押圧し、下型11の細径部11bを位置決めリング15の貫通孔15aに貫通させ、下型11の成形面11aを光学素子材料100に当接させる。
【0032】
下型11と上型12との間に配置された光学素子材料100は、上当接プレート2及び下当接プレート3のヒータ2a,2a,3a,3aからの熱伝導によって加熱される(加熱工程)。そして、光学素子材料100は、例えばガラス転移温度以上にまで加熱され軟化する。
【0033】
加熱された光学素子材料100は、図1Bに示すように下側駆動部5によって下型11が上方に押圧されることで加圧される(加圧工程)。本実施形態では、下型11の細径部11bが位置決めリング15の貫通孔15aを貫通し、下型11が成形面11aにおいて光学素子材料100を加圧する。これにより、光学素子材料100は、下型11、上型12、外周成形型13及び位置決めリング15の成形面11a,12a,13a,15bにより形状を転写される。なお、加熱工程及び加圧工程は、異なるステージにおいて行うようにしてもよい。ステージは、例えば、それぞれが上当接プレート2と、下当接プレート3と、上側駆動部4と、下側駆動部5とを有するものである。
【0034】
ここで、加圧工程において光学素子材料100が外周成形型13の成形面13aに到達した後に、上側駆動部4及び下側駆動部5の少なくとも一方は、光学素子材料100を下型11及び上型12により挟持した状態で振動(或いは、揺動,微動)させる(振動付与工程)。
【0035】
振動付与工程では、上側駆動部4及び下側駆動部5の少なくとも一方により、下型11と上型12との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向の両方に周期的(交互)に変化させるように光学素子材料100を振動させる。このとき、光学素子材料100は、例えば1Hz以上で振動させることが望ましいが、それ以下としてもよい。
【0036】
図3A〜図3Eは、図2のA部拡大図である。
図2に示すように、外周成形型13の内周面に形成された成形面13aは、図3A等に拡大して示す複数の凹部13a−1を有する。
【0037】
図3Aに示すように、下型11と上型12との間で光学素子材料100を加圧するだけでは、光学素子材料100は、凹部13a−1の奥まで入らず先端が丸くなる。また、この光学素子材料100の先端が、局所的に残った鏡面となる。
【0038】
図3Bに示すように、光学素子材料100は、振動時に上方に移動すると、凹部13a−1の上部に接触し、形状を転写される。また、この接触時には、光学素子材料100は、凹部13a−1に進入する。本実施の形態では、外周成形型13が光学素子材料100と一体に(光学素子材料100に追従して)移動しうるが、一体に移動する場合でも、光学素子材料100は、上方への移動が開始することにより働く慣性によって、凹部13a−1に進入していく。
【0039】
図3Cに示すように、光学素子材料100は、振動時に下方に移動すると、凹部13a−1の下部に接触し、形状を転写される。また、この接触時にも、光学素子材料100は、凹部13a−1に進入する。このときに働きうる慣性は、上方への移動が停止すること及び下方への移動が開始することによるものである。
【0040】
図3Dに示すように、光学素子材料100は、振動時に再び上方に移動すると、凹部13a−1に更に進入し、より複雑な形状が転写されることも可能になる。
図3Eに示すように、光学素子材料100は、上述のように振動することにより、局所的な鏡面がなくなる。
【0041】
なお、光学素子材料100は、凹部13a−1のピッチP以下の振り幅で振動するようにするとよいが、本実施の形態では光学素子材料100と一体に外周成形型13が移動しうるため、凹部13a−1のピッチP以上の振り幅で光学素子材料100を振動させてもよい。凹部13a−1のピッチPが例えば10μm〜30μmの場合、超音波振動子等の振動付与部を製造装置1或いは型セット10に配置することで、光学素子材料100を振動させるとよい。
【0042】
なお、図3A〜図3Eのように光学素子材料100が凹部13a−1内で上下動しない場合でも、光学素子材料100は、振動により凹部13a−1内に進入していく。
【0043】
図4A〜図4Dは、図1BのB部拡大図である。
図4Aに示すように、下型11と上型12との間で光学素子材料100を加圧するだけでは、光学素子材料100の外周面と、その他の面である上面及び下面とのつなぎ目(稜線部分)が鏡面部100aになる。これは、光学素子材料100の外周面を成形する外周成形型13に対して、光学素子材料の上面及び下面を成形する型(図4A等では、下面を成形する位置決めリング15)が摺動するため、型間のクリアランスが必要になることによるものである。
【0044】
この鏡面部100aは、図4Bに示すように光学素子材料100が振動時に外周成形型13の成形面13aに進入すること、図4Cに示すように外周成形型13がスリーブ14とのクリアランス分だけ左右に動けること、図4Dに示すように位置決めリング15が外周成形型13とのクリアランス分だけ左右に動けることなどによって、小さくなる或いは消滅する。これにより、光学素子材料100の上記の稜線部分に粗面が形成される。
【0045】
振動付与工程の途中で、或いは、振動付与工程が終了した後、光学素子材料100は、上当接プレート2及び下当接プレート3のヒータ2a,2a,3a,3aの温度が降下することにより或いは自然冷却により冷却される(冷却工程)。この冷却工程において、光学素子材料100は、外周成形型13よりも収縮し、外周成形型13から取り出すことが可能になる。
【0046】
冷却工程終了後、図示しないロボットは、上型12をスリーブ14の中から取り出した後、製造された光学素子200を取り出す。なお、振動付与工程は、冷却工程終了時点(光学素子200の取り出し可能時点)までに終了させることができる。
【0047】
なお、振動付与工程では、下型11と上型12との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向のうち一方に断続的に変化させるように光学素子材料100を振動させるようにしてもよい。
【0048】
また、光学素子材料100は、上下方向(下型11と上型12とが接近する方向及び遠ざかる方向)ではなく、横方向、斜め方向、回転方向等に振動させてもよい。更には、これらのうちの複数の方向に振動させてもよい。
【0049】
また、光学素子材料100の温度がガラス転移点温度以上で且つ成形温度(例えば、屈伏温度+10〜30°)以下の間に光学素子材料100を振動させるとよい。なお、光学素子材料100が成形温度以上の温度で振動すると、面精度や肉厚制度が不安定になる。また、冷却工程において、光学素子材料100がガラス転移点温度未満の温度下、即ち硬化した状態で振動させても、光学素子材料100が外周成形型13の成形面13aに進入しなくなる。そのため、振動付与工程のタイミングは、光学素子材料100の光学面や中心部が先に冷えて面精度と肉厚が安定するが、まだ外周面は柔らかいという状況が理想的である。
【0050】
また、光学素子材料100は、上側駆動部4及び下側駆動部5のうちの一方で振動させるようにしても、超音波振動子等の他の振動付与部により振動させるようにしてもよい。
【0051】
以上説明した本実施の形態においては、振動付与工程では、加圧工程において光学素子材料100が外周成形型(第3の成形型)13の成形面13aに到達した後に、光学素子材料100を下型(第1の成形型)11及び上型(第2の成形型)12により挟持した状態で振動させる。そのため、光学素子材料100の外周面、或いは、この外周面と他の面との稜線部に、確実に粗面を形成することができる。よって、本実施の形態によれば、光学素子の外周粗面を成形により確実に形成することができる。
【0052】
また、本実施の形態においては、振動付与工程では、下型(第1の成形型)11を移動させる下側駆動部5と、上型(第2の成形型)12を移動させる上側駆動部(第2の駆動部)4の少なくとも一方(両方)によって、光学素子材料100を振動させる。そのため、簡素な構成で外周粗面を成形により確実に形成することができる。
【0053】
図5は、第1変形例に係る光学素子の製造装置1−1を示す断面図である。
本変形例の光学素子の製造装置1−1では、光学素子材料100を収容する型セット20のみ図1及び図1Bに示す光学素子の製造装置1(型セット10)と相違する。
【0054】
型セット20は、下型(第1の成形型)21と、上型(第2の成形型)22と、スリーブ(第3の成形型)24と、位置決めリング25と、を備える。型セット20は、型セット10の外周成形型13を備えていない。
【0055】
下型21と上型22とは、光学素子材料100を挟んで対向して配置されている。下型21は、型セット10の下型11と同一であり、成形面21aと、細径部21bと、ベース部21cとが形成されている。
【0056】
上型22の下端中央には、光学素子材料100に凸形状を転写する凹形状の成形面22aが形成されている。また、上型22は、成形面22aが設けられた小径部22bと、この小径部22bの上部に設けられた大径部22cとを有する。
【0057】
スリーブ24は、外径が一定の円筒形状を呈する。スリーブ24の上部には薄肉部24bが形成され、スリーブ24の下部には厚肉部24cが形成されている。そのため、スリーブ24の内径は一定ではない。
【0058】
スリーブ24の薄肉部24bの内周面には、光学素子材料100の外周部分に凹凸形状等の粗面形状を転写する成形面24aが形成されている。また、スリーブ24の薄肉部24bの内周面には、上型22が小径部22bにおいて摺動し、位置決めリング25が外周面において摺動する。スリーブ24の厚肉部24cの内周面には、下型21がベース部21cにおいて摺動する。
【0059】
スリーブ24は、上述の外周成形型13のようには光学素子材料100と一体に(光学素子材料100に追従して)移動しないため、図3A〜図3Dに示す凹部13a−1のピッチP以下の振り幅で振動させるとよい。
【0060】
位置決めリング25の貫通孔25aには、下方から下型21の細径部21bが挿入される。位置決めリング25は、貫通孔25aの上端に載置される光学素子材料100を位置決めする。
【0061】
位置決めリング25の上面には、光学素子材料100に凹凸形状を転写する成形面25bが形成されている。また、位置決めリング25の下端には、フランジ部25cが形成されている。
【0062】
本変形例においては、外周成形型13を省略する例を説明したが、位置決めリング15,25を省略して、光学素子材料100の下面全体に下型11,21により形状を転写するようにしてもよい。
【0063】
図6A及び図6Bは、第2変形例に係る光学素子の製造装置1−2を示す断面図である。
本変形例では、加圧工程において上型32により光学素子材料100を押圧する点、及び、それに付随する構成において図1及び図1Bに示す光学素子の製造装置1と相違する。
【0064】
図6A及び図6Bに示す光学素子の製造装置1−2は、上当接プレート(第1の当接部材)2と、下当接プレート(第2の当接部材)3と、振動付与部の一例である上側駆動部(駆動部)4を備える。本変形例では、下側駆動部5が配置されないため、下当接プレート3には下側駆動部5を貫通させる貫通孔3bは形成されていない。
【0065】
型セット30は、第1の成形型の一例である下型31と、第2の成形型の一例である上型32と、第3の成形型の一例である外周成形型33と、スリーブ34と、位置決めリング35と、を備える。
【0066】
下型31の上端中央には、光学素子材料100に凸形状を転写する凹形状の成形面31aが形成されている。
上型32の下端中央には、光学素子材料100に凹形状を転写する凸形状の成形面32aが形成されている。また、上型32には、上記の成形面32aが設けられた細径部32bと、この細径部32bの根元部分に連続し且つこの根元部分よりも太径のベース部32cと、が形成されている。
【0067】
外周成形型33は、円筒形状を呈し、下型31上の成形面31aの周囲に配置されている。また、外周成形型33の内周面には、光学素子材料100の外周部分に粗面形状を転写する成形面33aが形成されている。
【0068】
スリーブ34は、外径及び内径が一定の円筒形状を呈し、下型31及び上型32の外周に配置されている。また、スリーブ34は、その内周面において外周成形型33の外周面に当接している。
【0069】
位置決めリング35は、上方から上型32の細径部32bに貫通される貫通孔35aが形成された円筒形状を呈する。また、位置決めリング35は、下型31と上型32との間に配置され、貫通孔35aの下端において光学素子材料100を位置決めする。
【0070】
位置決めリング35の底面には、光学素子材料100に凹凸形状を転写する成形面35bが形成されている。また、位置決めリング35の上端には、大径のフランジ部35cが形成され、位置決めリング35は、フランジ部35cの外周面においてスリーブ34の内周面に摺動可能に当接している。
【0071】
本変形例のように、上型(第2の成形型)32を移動させる上側駆動部(第2の駆動部)4のみによって光学素子材料100を振動させるようにすることも可能である。
【符号の説明】
【0072】
1 光学素子の製造装置
2 上当接プレート
2a ヒータ
3 下当接プレート
3a ヒータ
3b 貫通孔
4 上側駆動部
5 下側駆動部
10 型セット
11 下型
11a 成形面
11b 細径部
11c ベース部
12 上型
12a 成形面
12b 小径部
12c 中径部
12d 大径部
13 外周成形型
13a 成形面
13a−1 凹部
14 スリーブ
14a 薄肉部
14b 中肉部
14c 厚肉部
15 位置決めリング
15a 貫通孔
15b 成形面
15c フランジ部
20 型セット
21 下型
21a 成形面
21b 細径部
21c ベース部
22 上型
22a 成形面
22b 小径部
22c 大径部
24 スリーブ
24a 成形面
24b 薄肉部
24c 厚肉部
25 位置決めリング
25a 貫通孔
25b 成形面
25c フランジ部
30 型セット
31 下型
31a 成形面
32 上型
32a 成形面
32b 細径部
32c ベース部
33 外周成形型
33a 成形面
34 スリーブ
35 位置決めリング
35a 貫通孔
35b 成形面
35c フランジ部
100 光学素子材料
100a 鏡面部
200 光学素子
202 外周部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学素子材料を加熱する加熱工程と、
前記光学素子材料を挟んで対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型と、光学素子の外周部となる部分に粗面形状を転写する第3の成形型とが、前記光学素子材料に形状を転写するように、加熱された前記光学素子材料を加圧する加圧工程と、
加圧された前記光学素子材料を冷却させる冷却工程と、を含み、
前記加圧工程において前記光学素子材料が前記第3の成形型の成形面に到達した後に、前記光学素子材料を前記第1の成形型及び前記第2の成形型により挟持した状態で振動させる、光学素子の製造方法。
【請求項2】
前記振動付与工程では、前記第1の成形型と前記第2の成形型との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向の両方に変化させるように前記光学素子材料を振動させる、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項3】
前記振動付与工程では、前記第1の成形型と前記第2の成形型との相対位置を、接近する方向及び遠ざかる方向のうち一方に断続的に変化させるように前記光学素子材料を振動させる、請求項1記載の光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記振動付与工程では、前記第1の成形型を移動させる第1の駆動部及び前記第2の成形型を移動させる第2の駆動部のうち少なくとも一方によって、前記光学素子材料を振動させる、請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素子の製造方法。
【請求項5】
光学素子材料を加熱する加熱部と、
加熱された前記光学素子材料を加圧して、前記光学素子材料を挟んで対向して配置される第1の成形型及び第2の成形型と、光学素子の外周部となる部分に粗面形状を転写する第3の成形型とにより、前記光学素子材料に形状を転写する加圧部と、
前記光学素子材料を前記第1の成形型及び前記第2の成形型により挟持した状態で振動させる振動付与部と、を含む、光学素子の製造装置。
【請求項6】
前記振動付与部は、前記第1の成形型を移動させる第1の駆動部及び前記第2の成形型を移動させる第2の駆動部のうち少なくとも一方である、請求項5記載の光学素子の製造装置。

【図1A】
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【図1B】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図3E】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2012−180253(P2012−180253A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45560(P2011−45560)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)