説明

光学素子の製造方法

【課題】光学素子の製造方法において、使用する型セットの数を減らすと共に、少量生産に対応する。
【解決手段】光学素子の製造方法は、型セットに収容された光学素子材料を加熱ステージにおいて加熱する加熱工程と、加熱した上記光学素子材料を加圧ステージにおいて加圧する加圧工程と、加圧した上記光学素子材料を冷却ステージにおいて冷却する冷却工程と、を含み、上記加熱ステージ及び上記加圧ステージのうちの少なくとも1つのステージについて、上記型セットに当接する伝熱部材の温度H1,H3,H5、上記型セットに加える荷重P1,P2,P3、及び、上記光学素子材料を加熱又は加圧する時間t−2,t−4,t−6のうちの少なくとも1つの条件を型セット1個ずつ変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、レンズ、プリズム、ミラー等の光学素子を製造する光学素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、製造工程順に配置された複数のステージにより一対の成形型を有する複数の型セットに対し加熱・加圧・冷却の工程を順次行って、型セットに収容した光学素子材料を基に光学素子を製造する製造方法が用いられている。
【0003】
このように光学素子を製造する連続成形装置では通常、同じ部品(光学素子)を製造するための型セットを連続的に投入して光学素子を製造していた。
尚、ステージを1個置きに空けながら複数の型セットの移動を行うことで、型セットの加圧開始可能な温度にステージの温度を回復させる成形方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−256139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、型セットは、一般に高価であり、型セットの数を増やせば増やすほどコストがかかる。
また、少量生産の世界では1個の生産にも対応が望まれる。かつ、成形装置の稼働率は常に最高の状態を維持したい。
【0006】
本発明の目的は、使用する型セットの数を減らすことができると共に、少量生産に対応することができる光学素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の光学素子の製造方法は、型セットに収容された光学素子材料を加熱ステージにおいて加熱する加熱工程と、加熱した上記光学素子材料を加圧ステージにおいて加圧する加圧工程と、加圧した上記光学素子材料を冷却ステージにおいて冷却する冷却工程と、を含み、上記加熱ステージ及び上記加圧ステージのうちの少なくとも1つのステージについて、上記型セットに当接する伝熱部材の温度、上記型セットに加える荷重、及び、上記光学素子材料を加熱又は加圧する時間のうちの少なくとも1つの条件を上記型セット1個ずつ変更する。
【0008】
また、上記光学素子の製造方法において、上記条件の変更が完了した上記加熱ステージ又は上記加圧ステージに次の上記型セットを移動させるようにしてもよい。
また、上記光学素子の製造方法において、上記加熱ステージ、上記加圧ステージ、及び上記冷却ステージを1つ置きに空けながら複数の上記型セットを順次移動させるようにしてもよい。
【0009】
また、上記光学素子の製造方法において、複数種類の光学素子を製造するためのそれぞれ1つずつの複数種類の上記型セットを上記加熱ステージに順次供給し、上記加熱ステージに供給された上記型セットを上記加圧ステージ及び上記冷却ステージに順次移動させるようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の光学素子の製造方法によれば、使用する型セットの数を減らすことができると共に、少量生産に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1A】本発明の一実施の形態における型セットを示す断面図である。
【図1B】本発明の一実施の形態における成形室を示す概略図である。
【図2A】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図(その1)である。
【図2B】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図(その2)である。
【図2C】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図(その3)である。
【図2D】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図(その4)である。
【図2E】本発明の一実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図(その5)である。
【図3】本発明の一実施の形態における加圧ステージの上下の熱プレート(伝熱部材)の温度変化を縦に、時間の経過を横に示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係る光学素子の製造方法について、図面を参照しながら説明する。
図1Aは、本発明の一実施の形態における型セット1を示す断面図である。
【0013】
図1Bは、本実施の形態における成形室2を示す概略図である。
図1Aに示すように、型セット1は、先ず、上部にフランジを有し、下部面中央に成形用凸部を有する基本的には円柱状の上型3と、上面中央に成形用凹部を形成され、周面に2つの段差部を有する下型4を備えている。
【0014】
そして、下型4の下の段差部には円筒状のスリーブ5が係合して立設され、このスリーブ5の内側で、下型4の上の段差部には、上部内側にフランジを有する円環状の外周型6が係合して立設されている。そして、下型4の上面中央の成形用凹部には、光学素子材料7が載置・設定されている。
【0015】
また、図1Bに示すように、成形室2には、左から右へ工程順に3個のステージ8(加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8c)が配置されている。第1軸となる加熱ステージ8aは加熱工程用の軸部であり、第2軸となる加圧ステージ8bは加圧工程用の軸部であり、第3軸となる冷却ステージ8cは冷却工程用の軸部である。
【0016】
各ステージ8は、下部には、光学素子の製造装置本体の下フレーム9に固設され、ヒータ11を内蔵した固定熱プレート12を備え、上部には、ヒータ11を内蔵した可動熱プレート13を備えている。可動熱プレート13は、製造装置本体の上フレーム14に固設された不図示のシリンダ装置から上下に進退するピストン15の下端部に固定されている。なお、固定熱プレート12及び可動熱プレート13は、型セット1に当接する伝熱部材の一例である。
【0017】
光学素子材料7を成形するに際しては、成形室2に、型セット1を搬入し、第1軸の加熱工程の加熱ステージ8a、第2軸の加圧工程の加圧ステージ8b、第3軸の冷却工程の冷却ステージ8cと、順次搬送して成形品である光学素子を生産する。
【0018】
図2A〜図2Eは、本実施の形態に係る光学素子の製造方法を説明するための部分断面図である。図2Aには、型セット1が成形室2の加熱ステージ8aに既に搬入された状態を示している。
尚、図2A〜図2Eにおいては、図1A及び図1Bを参照しながら説明した構成の符号のうち説明に必要な部分の符号のみを付与している。
【0019】
加熱ステージ8a、加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cには、型セット1が矢印a、矢印b及び矢印cで示すように順次搬送され、成形完成品である光学素子が矢印dで示すように成形室2の外に排出される。
【0020】
尚、本実施の形態では、加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8cの順に、伝熱部材としての、固定熱プレート12及び可動熱プレート13の温度が中温、高温、低温と初期設定されている。
【0021】
以下、本実施の形態における光学素子の製造装置の成形室2における加熱→加圧→冷却という3軸構成において、型セット1に収容した光学素子材料7を基に光学素子を製造する光学素子の製造方法を説明する。
【0022】
先ず、図2Aに示すように、常温の最初の型セット1(1)を矢印aのように搬送して加熱ステージ8aに供給する。加熱ステージ8aのピストン15が降下して可動熱プレート13が型セット1(1)の上型3の上面を押圧して上型3に熱を伝達して上型3を加熱し、下部では固定熱プレート12が型セット1(1)の下型4の下面に密着して熱を伝達して下型4を加熱する。
【0023】
これにより、最初の型セット1(1)が加熱ステージ8aの上下の熱プレート12及び13から受熱して加熱され、中温に近づいていく。このようにして、最初の型セット1(1)に収容された光学素子材料7(1)が加熱ステージ8aにおいて加熱される(加熱工程)。この加熱時間は、本実施の形態では、例えば、型セット1ごとに異なる。この加熱工程において、加熱ステージ8aの熱プレート12及び13は型セット1(1)に熱を奪われて、中温より低い温度になる。
【0024】
また、この間、加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cのピストン15は上方の待機位置に退縮しており、これにより可動熱プレート13が上部の待機位置に在って、固定熱プレート12と可動熱プレート13の間には、型セット1(1)が搬送されるだけの間隙が形成されている。
【0025】
次に、図2Bに示すように、加熱ステージ8aの可動熱プレート13が上に移動して押圧を解除して型セット1(1)を解放する。中温近傍に温度が高まって解放された最初の型セット1(1)は矢印bで示すように、加圧ステージ8bの高温の固定熱プレート12に移送される。
【0026】
ここで、加圧ステージ8bのピストン15が下方へ進出し、高温の可動熱プレート13が型セット1(1)の上型を加熱しながら押圧する。下部からは高温の固定熱プレート12が型セット1(1)の下型4の下面に密着して下型4を加熱する。
【0027】
これにより、型セット1(1)は上下の熱プレート12及び13から受熱して高温に近づいていく。そして、光学素子材料7(1)が上下から押圧されて圧縮変形されていく。このようにして、最初の型セット1(1)に収容された光学素子材料7(1)が加圧ステージ8bにおいて荷重P1で加圧される(加圧工程)。この圧縮変形の処理時間は、詳しくは後述するが、本実施の形態では型セット1ごとに異なる。
【0028】
また、この加圧工程の間に加圧ステージ8bの上下の熱プレート12及び13の温度は加圧工程前よりも低くなる。
上記に続いて、加圧ステージ8bの可動熱プレート13が上に移動して押圧を解除して型セット1(1)を解放する。最初の型セット1(1)は、ほぼ変形が完了し、高温の近傍の温度まで高められた状態で、矢印cで示すように、加圧ステージ8bから冷却ステージ8cに搬送され、低温の冷却ステージ8cの固定熱プレート12上に移送される。
【0029】
最初の型セット1(1)は、冷却ステージ8c上で、適度の温度差で温度低下をしながら、例えば型セット1ごとに異なる時間で徐々に冷却されながら、加圧して最終変形(精度出し加圧)を行いつつ変形を完了させる。光学素子材料7(1)は、例えば、温度低下により形状が固まるまで、冷却される(冷却工程)。
【0030】
形状が固まるまで冷却された最初の型セット1(1)は、矢印dで示すように、冷却ステージ8cから成形室2の外に排出される。
また、これと並行して同時に、図2Cに示すように、次の型セット1(2)が矢印aで示すように加熱ステージ8aに供給され、図2Aで説明したように、次の型セット1(2)が加熱ステージ8aにおいて加熱されることで、加熱工程が行われる。
【0031】
尚、次の型セット1(2)は、最初の型セット1(1)とは異なる光学素子を製造するためのものであり、例えば、型セット1の成形面形状等が異なる。次の型セット1(2)は、本実施の形態では、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bのうちの少なくとも1つのステージとしての両方のステージについて、最初の型セット(1)から条件が変更される。
【0032】
この条件は、型セット1(1),1(2)に当接する伝熱部材(固定熱プレート12,可動熱プレート13)の温度、型セット1(1),1(2)に加える荷重、及び、光学素子材料7(1),7(2)を加熱又は加圧する時間のうちの少なくとも1つの条件として、本実施の形態では全ての条件が最初の型セット1(1)から変更される。尚、後述する3番目の型セット1(3)についても、同様に、次の型セット1(2)から全ての条件が変更されている。更には、最初の型セット1(1)は、3番目の型セット1(3)から全ての条件が変更されている。条件の変更は、例えば、本実施形態の光学素子の製造装置が備える制御部(図示せず)から各ステージへの指令により行われる。
【0033】
次の型セット1(2)が加熱される間、加圧ステージ8bは空き軸となっている。そして、この加圧ステージ8bの空き時間帯に、加圧ステージ8bの上下の熱プレート12及び13に対し、内蔵のヒータによる加熱が行われて、最初の型セット1(1)の成形により熱が失われて低下した温度が、次の型セット1(2)の加圧開始が可能な温度にまで回復する。
【0034】
一方、次の型セット1(2)は、加熱ステージ8aの固定熱プレート12及び可動熱プレート13が第1の型セット1(1)を加熱するときよりも例えば低い温度に変更されているため、第1の型セット1(1)の光学素子材料7(1)が加熱される温度よりも低い温度に光学素子材料7(2)が加熱される。
【0035】
続く図2Dに示す状態は、最初の型セット1(1)と次の型セット1(2)とが入れ替わっただけであり、これは図2Bに示した状態と同一である。但し、本実施の形態では、加圧工程が行われる加圧ステージ8bにおいて第1の型セット1(2)に加える荷重P2は、第1の型セット1(1)に加える荷重P1から変更されている。
【0036】
図2Eに示す状態は、次の型セット1(2)と3番目の型セット1(3)とが入れ替わり、最初の型セット1(1)と次の型セット1(2)とが入れ替わっているだけであり、これは図2Cに示す状態と同一である。
【0037】
図3は、本実施の形態における加圧ステージ8bの伝熱部材としての上下の熱プレート12及び13の温度変化を縦に、時間の経過を横に示したグラフである。
図3に示すように、加圧ステージ8bの熱プレート12,13の温度は、初期加熱工程t−1(図2A参照)で加圧開始温度H1に到達し、加圧1回目の工程t−2(図2B参照)で第1の加圧後温度H2まで低下する。
【0038】
尚、初期加熱工程t−1(並びに後述する温度回復温度t−3及びt−5)で熱プレート12,13を何度に設定するかは、図示しない検知手段による検知結果に基づき判断すればよい。この検知方法は、例えば、光学素子の製造装置に投入される前の型セット1と光学素子材料7とが載置されたトレイのバーコード等を検知すること、或いは、型セット1自体を識別して検知することなどが挙げられる。
【0039】
また、上記の検知結果に基づき、後述する荷重の設定及び加圧時間の設定も行われる。更には、変更する条件が温度である場合には、上記の検知結果に基づき、条件変更の時間が割り出され、型セット1の移動タイミングが決定される。
【0040】
加圧1回目の工程t−2においては、熱プレート12,13がこれらよりも高温の最初の型セット1(1)に当接することで工程の開始直後は温度が上昇するが、その後徐々に温度が低下し、安定加圧温度H2まで低下する。尚、加圧1回目の工程t−2における荷重はP1である。
【0041】
次の温度復帰期間t−3(図2C参照)では、熱プレート12,13の温度は、最初の型セット1(1)の加圧開始温度H1とは異なる次の型セット1(2)の加圧開始温度H3に回復し、加圧2回目の工程t−4(図2D参照)で第2の加圧後温度H4まで低下する。この加圧2回目の工程t−4における荷重P2は、加圧1回目の工程t−2における荷重P1とは異なる。
【0042】
そして、熱プレート12,13の温度は、次の温度復帰期間t−5(図2E参照)で、3番目の型セット1(3)の加圧開始温度H5に回復する。この加圧開始温度H5は、最初の型セット1(1)及び次の型セット1(2)の加圧開始温度H1,H2とは異なる。
【0043】
また、熱プレート12,13の温度は、加圧3回目の工程t−6で第3の加圧後温度H6まで低下する。この加圧3回目の工程t−6における荷重P3は、加圧1回目の工程t−2及び加圧2回目の工程t−4における荷重P1,P2とは異なる。
【0044】
以降、温度復帰期間t−1,加圧工程t−2、温度復帰期間t−3、加圧工程t−4、温度復帰期間t−5、加圧工程t−6が繰り返されて、それぞれ1つずつの型セット1(1)〜1(3)で3種類の光学素子が連続的に製造される。
【0045】
尚、加熱ステージ8aにおいても、型セット1ごとに異なる加熱開始温度が設定され、異なる温度で光学素子材料7が加熱される。また、加熱ステージ8aにおける荷重及び加熱時間の条件も型セット1個ごとに変更されている。
【0046】
また、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bに最初の型セット1(1)に続いて、すぐに次の型セット1(2)を入れたのでは、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bの温度の回復が間に合わない。
【0047】
そのため、ステージ8(加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8c)を1つ置きに空けることで加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bが温度を回復する時間をおいたのち、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bに次の型セット1(2)を移動するようにしているが、変更条件に温度を加えない場合や、温度回復にほとんど時間を要さない或いは時間を多く要する場合などには、ステージ8を1つ置きに空けない構成、或いは、ステージ8を2個以上空ける構成を採用することも可能ではある。また、各工程の時間が一致しない場合には、一時的に型セット1がステージを空けずに連続したり、一時的にステージ2個以上の間隔があいたりすることもある。したがって、本実施の形態の「ステージを1つ置きに空けながら」とは、少なくとも一時的にステージを1つ置きに空けることを意味するものとする。
【0048】
本実施の形態では、上述したように、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bの温度回復の時間を確保するために、型セット1を、型セット1(1)〜1(3)で3ステージ全部を埋めるように搬送せず、ステージ8(加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8c)を1つ置きに空けて搬送する。そして、その空きが加熱ステージ8a又は加圧ステージ8bの空きとなったときにその空き時間帯を、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bの温度を回復させる時間に充てるようにする。
【0049】
尚、各ステージで熱の授受関係に差はあるものの、この差の発生は、加熱ステージ8a、加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cの全てに共通の条件である。加圧ステージ8bが工程の処理中であるときは、加熱ステージ8aのみならず冷却ステージ8cも空いているので、この空き時間帯に、冷却ステージ8cにおいても型セット1ごとに異なる温度に温度を回復することができる。また、冷却ステージ8cについて、他の条件である荷重及び時間を型セット1個ごとに変更してもよい。
【0050】
また、本実施の形態では、加熱ステージ8a、加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cがそれぞれ1つずつの場合を例に説明しているが、それぞれ2つ以上のステージを配置してもよい。
【0051】
また、本実施の形態では、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bの両方について条件変更を行っているが、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bのうちの少なくとも1つのステージにおいて条件を変更するようにしてもよい。
【0052】
また、本実施の形態では、変更する条件を、型セット1に当接する伝熱部材(固定熱プレート12,可動熱プレート13)の温度、型セット1に加える荷重P1〜P3、及び、光学素子材料7を加熱又は加圧する時間t−2,t−4,t−6、の全ての条件としているが、これらのうちの少なくとも1つの条件を変更するようにしてもよい。
【0053】
また、本実施の形態では、違う部品(光学素子)を製造するための3種類の型セット1(1)〜(3)を次々と成形室2(光学素子の製造装置)に投入し、予め条件を変更して次々と光学素子を製造しているが、同一の型セット1に異なる条件を設定することで違う部品(光学素子)を製造してもよい。
【0054】
また、本実施の形態では、3種類の型セット1(1)〜1(3)を、1(1),1(2),1(3)の順に加熱ステージ8aに順次供給し、加熱ステージ8aに順次供給し、加熱ステージ8aに供給された型セット1(1)〜1(3)を加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cに順次移動させているが、例えば、1(1),1(2),1(1),1(3)の順に入れ替わりに移動させる構成を採用することも可能である。
【0055】
また、本実施の形態では、3種類の型セット1(1)〜1(3)を用いているが、2種類又は4種類以上の型セット1を用いてもよい。また、上述のように1種類の型セット1を用いて違う光学素子を製造してもよい。
【0056】
また、本実施の形態では、加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8cの3軸の温度設定が中温、高温、低温である場合を例に説明したが、順に、高温、中温、低温の温度設定としてもよい。その場合、加圧ステージ8b(加圧工程)の温度回復期間t−1,t−3,t−5においては、高温の加熱ステージ8aで加熱された型セット1からの熱伝導により上昇した温度を元の温度に回復させるために温度を低下させることになる。
【0057】
尚、上述した加圧工程等で用いた高温とは、光学素子材料7が軟化して加圧により容易に変形出来る温度であり、例えば、「転移点」から「屈服点」までの間の温度をいう。
また、中温とは、変形がなんとか出来るぎりぎりの温度をいい、例えば、「転移点」から「転移点−10℃」までの間の温度をいう。
【0058】
また、低温とは、成形素材が固化して変形しなくなる温度であり、急冷防止効果も含まれるもので、例えば、「常温25℃から転移点までの中間近傍の温度±20℃」の温度をいう。
【0059】
また、本発明は、本実施の形態に限定されるものでなく、実施段階では、その要旨を変更しない範囲で種々変形することが可能である。
【0060】
以上説明した本実施の形態では、光学素子の製造方法は、型セット1に収容された光学素子材料7を加熱ステージ8aにおいて加熱する加熱工程と、加熱した光学素子材料7を加圧ステージ8bにおいて加圧する加圧工程と、加圧した光学素子材料7を冷却する冷却工程と、を含み、加熱ステージ8a及び加圧ステージ8bのうちの少なくとも1つのステージ(本実施の形態では両方のステージ)について、型セット1に当接する熱プレート(伝熱部材)12,13の温度H1,H3,H5、型セット1に加える荷重P1,P2,P3、及び、光学素子材料7を加圧(加熱又は加圧)する時間t−2,t−4,t−6のうちの少なくとも1つの条件を型セット1個ずつ変更する。
【0061】
そのため、各部品(光学素子)の型セット1を例えば1個だけ準備し何個も準備する必要がなく複数必要なときは製造終了後、他の部品の製造を完了した後に製造できる。
よって、本実施の形態の光学素子の製造方法によれば、使用する型セット1の数を減らすことができると共に、少量生産に対応することができる。
【0062】
また、本実施の形態の光学素子の製造方法では、上記の条件の変更が完了した加熱ステージ8a又は加圧ステージ8bに次の型セット1を移動させる。そのため、光学素子を高精度に製造することができる。
【0063】
また、本実施の形態の光学素子の製造方法では、ステージ8(加熱ステージ8a、加圧ステージ8b、冷却ステージ8c)を1つ置きに空けながら複数の型セット1を順次移動させる。そのため、加熱ステージ8a又は加圧ステージ8bの温度を型セット1の空き時間帯に回復させることができ、光学素子を高精度に製造することができる。
【0064】
また、本実施の形態の光学素子の製造方法では、複数種類の光学素子を製造するためのそれぞれ1つずつの複数種類の型セット1(1)〜1(3)を加熱ステージ8aに順次供給し、加熱ステージ8aに供給された型セット1を加圧ステージ8b及び冷却ステージ8cに順次移動させる。そのため、各品種に1個の型セットで多品種少量生産に対応することができる。また、光学素子1個だけの生産にも対応することができる。
【符号の説明】
【0065】
1 型セット
2 成形室
3 上型
4 下型
5 スリーブ
6 外周型
7 光学素子材料
8 ステージ
8a 加熱ステージ
8b 加圧ステージ
8c 冷却ステージ
9 下フレーム
11 ヒータ
12 固定熱プレート
13 可動熱プレート
14 上フレーム
15 ピストン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
型セットに収容された光学素子材料を加熱ステージにおいて加熱する加熱工程と、
加熱した前記光学素子材料を加圧ステージにおいて加圧する加圧工程と、
加圧した前記光学素子材料を冷却ステージにおいて冷却する冷却工程と、を含み、
前記加熱ステージ及び前記加圧ステージのうちの少なくとも1つのステージについて、前記型セットに当接する伝熱部材の温度、前記型セットに加える荷重、及び、前記光学素子材料を加熱又は加圧する時間のうちの少なくとも1つの条件を前記型セット1個ずつ変更する、光学素子の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の光学素子の製造方法において、
前記条件の変更が完了した前記加熱ステージ又は前記加圧ステージに次の前記型セットを移動させる、光学素子の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は請求項2記載の光学素子の製造方法において、
前記加熱ステージ、前記加圧ステージ、及び前記冷却ステージを1つ置きに空けながら複数の前記型セットを順次移動させる、光学素子の製造方法。
【請求項4】
請求項1から請求項3のいずれか1項記載の光学素子の製造方法において、
複数種類の光学素子を製造するためのそれぞれ1つずつの複数種類の前記型セットを前記加熱ステージに順次供給し、
前記加熱ステージに供給された前記型セットを前記加圧ステージ及び前記冷却ステージに順次移動させる、光学素子の製造方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図2E】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−72035(P2012−72035A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−219398(P2010−219398)
【出願日】平成22年9月29日(2010.9.29)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)