説明

光学素子

【課題】高屈折率、低分散の光学特性を有する光学素子を提供する。
【解決手段】平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の成形体を、真空焼結してなる光学素子。前記LnがY,La,Gd,Yb,Luから選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。前記光学素子は、屈折率が1.8以上の透光性を有することが好ましい。前記セラミックス粒子が球形であることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は光学素子に関し、特にレンズ等に使用される高精度な光学素子に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、デジタルカメラを始めとするカメラの生産量が増し、より高性能の光学レンズが要求されている。特にカメラ等の光学性能を向上させるためには、高屈折低分散の光学材料が必要となってきている。
【0003】
結晶材料では、従来の光学ガラスには無い高屈折低分散の光学性能が実現できるが、光学用途に適した透過率の良い材料として使用するには、単結晶材料を使用するか、或いは結晶粒子を焼結させて使用する方法があった。
【0004】
単結晶材料は、非常に高価であり、また光学レンズに適した直径の大きな材料が得られ難いという問題があった。
結晶粒子を焼結させる方法では、粒子直径が大きいと、焼結時に大きな粒界が生じ、光学レンズとして透過率の低下が生じたり、レンズ形状に加工する際に粒界によりレンズ表面に欠陥が生じ、良好な光学レンズが得られ難いという問題があった。
【0005】
粒径の小さい結晶粒子として、特許文献1には、結晶粒子径が100nm以下の透光性セラミックスの例が開示されている。
【特許文献1】特開平6―56514号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1には、結晶粒径が100nm以下の透光性セラミックスの例が開示されているが、100nm以下の結晶粒子を焼結させる工程では、焼結前の予備成形体を形成する際に、嵩密度が小さいために取扱が非常に困難となる。
【0007】
一方、高屈折率、低分散の光学特性を有するセラミックスの中には、焼結温度が高く、焼結の工程でプロセス上の困難さを伴うものが多く存在する。
本発明は、この様な背景技術に鑑みてなされたものであり、高屈折率、低分散の光学特性を有する光学素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決する第一の光学素子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする。
【0009】
上記の課題を解決する第二の光学素子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の表面に、該セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスからなる被覆層を被覆してなる2層構造の粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、高屈折率、低分散の光学特性を有する光学素子を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明は、特定のセラミックス粒子を用いて、通常の焼結工程よりも低温で結晶粒子を真空焼結させ、欠陥の無い高屈折率、低分散の光学特性を有する光学素子を提供することを特徴とする。
【0012】
本発明の光学素子は、例えば光学系に用いられるレンズ、プリズムなどが挙げられる。
まず、本発明に係る第一の光学素子について説明する。
【0013】
本発明に係る第一の光学素子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする。
【0014】
セラミックス粒子は、LnAl〔x+y〕×1.5の粒子からなる。
前記Lnは希土類族元素からなり、具体的にはY,La,Ce,Pr,Nd、Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tm,Yb,Luが挙げられる。それらの希土類族元素のうち、特にY,La,Gd,Yb,Luから選ばれた少なくとも1種以上であることが好ましい。
【0015】
セラミックス粒子の平均粒子径は1μm以上10μm以下が望ましい。平均粒子径が0.1μm未満では、粒子が細かく、部分的な凝集が生じるので、加圧の際に充分に緻密化し難く、また焼結後の光学素子中に泡が残留し、光学素子としての使用に不適となる。平均粒子径が10μmをこえると、加圧の際に空隙が生じやすく、焼結後に得られた結晶に粒界が生じやすく、研磨時に粒子の脱落が生じ、良好な表面を有する光学素子が得られない。
【0016】
セラミックス粒子の形状は球形が好ましい。球形から不定形に移るほど、加圧の際に空隙が生じやすく、焼結後に得られた結晶に粒界が生じやすく、良好な光学素子が得られない。なお、球形とは、球の断面形状の縦径/横径=1±0.1が好ましい。
【0017】
前記光学素子は、屈折率が1.8以上の透光性をことが好ましい。
本発明の光学素子を製造する方法は、第1段階としてプラズマ溶融などの方法により、平均粒子径が1μm以上10μm以下の球状のセラミックス粒子を作製する。
【0018】
第2段階として、この球状のセラミックス粒子を、鋳込み成形、乾式成形あるいは湿式成形により予備成形体を作製する。
第3段階として、この予備成形体を真空中にて焼結させ、その後に、研削、研磨工程を経て、光学レンズ等の光学素子を得る。
【0019】
セラミックス粒子の成形体を真空焼結すると、セラミックス粒子間の隙間に存在する気泡を抜くこができるので好ましい。
本発明は、通常の焼結工程よりも低温で結晶粒子を真空焼結させ、欠陥の無い高屈折率、低分散の光学特性を有する光学素子を得ることができる。
【0020】
真空焼結の真空度は、0.1Pa以下が好ましい。
次に、本発明に係る第二の光学素子について説明する。
本発明に係る第二の光学素子は、平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の表面に、該セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスからなる被覆層を被覆してなる2層構造の粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする。
【0021】
本発明に係る第二の光学素子は、セラミックス粒子の表面に、該セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスからなる層を被覆した2層構造の粒子を用いることを特徴とする。セラミックス粒子は第一の光学素子のセラミックス粒子と同様のものが用いられる。
【0022】
前記セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスは、結晶またはガラスであるのが好ましい。
前記2層構造の粒子は、球形であることが好ましい。
【0023】
前記2層構造の粒子において、セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスからなる層を被覆した被覆層の厚さは、0.1μm以上1μm以下が好ましい。
また、セラミックス粒子の表面に被覆層を形成する方法は、プラズマ熔融法により行なわれる。
【0024】
本発明の光学素子を製造する方法は、第1段階としてプラズマ溶融などの方法により、平均粒子径が1μm以上10μm以下の球状のセラミックス粒子を作製する。第2の段階としてこの粒子を、鋳込み成形、乾式成形あるいは湿式成形により予備成形体を作製する。
【0025】
第2の方法として、プラズマ溶融などの方法により、平均粒子径が1μm以上10μm以下の球状のセラミックス粒子の表面に被覆層を有する2層構造の球形の粒子を作製する。第2の段階としてこの2層構造の粒子を、鋳込み成形、乾式成形あるいは湿式成形により予備成形体を作製する。
第3段階として、この予備成形体を真空中にて焼結させ、その後に、研削、研磨工程を経て、光学レンズ等の光学素子を得る。
【0026】
真空焼結の方法は、第一の光学素子の真空焼結の方法と同様である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明する。
実施例1
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表1の試料No.1から9に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0028】
この原料を熱プラズマ中に導入し、微粒子を得る熱プラズマ法にて、加熱、溶融させた後に冷却して平均粒子径が1μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3200℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3200℃をこえると原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0029】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃以上1500℃以下の下記の表に示す温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの光学素子を得た。
【0030】
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を測定した結果を表1に示す。なお、アッベ数は分散を示す値である。各光学素子は、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0031】
<測定方法>
(1)屈折率
屈折率は、プルフリッヒ法屈折率測定装置(商品名「KPR−2000」、島津デバイス製造株式会社)を用いて波長587nmで測定し求めた値(nd)を示す。
(2)アッベ数
アッベ数は、プルフリッヒ法屈折率測定装置を用いて、波長587nm,486nm,656nmの屈折率nd,nF,nCを求め、アッベ数νdをνd=(nd−1)/(nF−nC)の式で求めた値を示す。
【0032】
【表1】

【0033】
実施例2
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表1の試料No.1から9に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0034】
この原料を熱プラズマ中に導入し、微粒子を得る熱プラズマ法にて、加熱、溶融させた後に冷却して平均粒子径が3μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3000℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3000℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0035】
この球状粒子を実施例1と同様の方法で、乾式成形、真空中にて焼結し、得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの試料とした。
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を光学測定したところ、表1に示す結果と同様に、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0036】
実施例3
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表1の試料No.1から9に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0037】
この原料を熱プラズマ中に導入し、微粒子を得る熱プラズマ法にて、加熱、溶融させた後に冷却して平均粒子径が10μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3000℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3000℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0038】
この球状粒子を実施例1と同様の方法で、乾式成形、真空中にて焼結し、得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの試料とした。
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を光学測定したところ、表1に示す結果と同様に、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0039】
比較例1
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表1の試料No.1から9に示す化合物となる比率で原料を調整し、混合した。
【0040】
この原料を熱プラズマ中に導入し、微粒子を得る熱プラズマ法にて、加熱、溶融させた後に冷却して平均粒子径が0.1μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は3500℃以上とした。
【0041】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃以上1500℃以下の下記の表に示す温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの試料とした。
【0042】
得られた光学素子を光学顕微鏡で観察したところ、素子中に泡が多数観察され、光学素子としての使用には不適切であった。
【0043】
比較例2
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表1の試料No.1から9に示す化合物となる比率で原料を調整し、混合した。
【0044】
この原料を熱プラズマ中に導入し、微粒子を得る熱プラズマ法にて、加熱、溶融させた後に冷却して平均粒子径が100μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3200℃以下とした。
【0045】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃以上1500℃以下の下記の表に示す温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの試料とした。
【0046】
得られた光学素子の表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが多数存在し、光学素子としての使用には不適切であった。
【0047】
実施例4
純度99.9%のY、La、Gd、Yb、LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0048】
この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部にはGdとAlの1:1混合物を導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで、微粒子を得る熱プラズマ法にて、平均粒子径が1μm、被覆層であるGdAlOの平均厚さが0.1μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3200℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3200℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0049】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結温度は1100℃で、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの光学素子を得た。
【0050】
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を測定した結果を表2に示す。光学素子は高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0051】
焼結温度が、表2に示す様に、1150℃から1500℃のYAl12、LaAlO、La0.5Gd0.5AlO、YbAl12、LuAl12、LaAl12、YAl、La10Al21のセラミックス粒子の周囲に、焼結温度が1100℃のGdAlOを被覆層として設けることにより、焼結温度を1100℃に下げることができた。
【0052】
【表2】

【0053】
上記の表の焼結温度は全て1100℃とする。
【0054】
実施例5
純度99.9%のY、La、Gd、Yb、LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0055】
この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部にはGdとAlの1:1混合物を導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで微粒子を得る熱プラズマ法にて平均粒子径が3μm、被覆層であるGdAlOの平均厚さが0.3μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3000℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3000℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0056】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの光学素子とした。
【0057】
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を光学測定したところ、表2に示す結果と同様に、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0058】
焼結温度が1150℃から1500℃のYAl12、LaAlO、La0.5Gd0.5AlO、YbAl12、LuAl12、LaAl12、YAl、La10Al21の周囲に、焼結温度が1100℃のGdAlOを被覆層として設けることにより、焼結温度を1100℃に下げることができた。
【0059】
実施例6
純度99.9%のY、La、Gd、Yb、LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0060】
この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部にはGdとAlの1:1混合物を導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで微粒子を得る熱プラズマ法にて平均粒子径が10μm、被覆層であるGdAlOの平均厚さが1μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3000℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3000℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0061】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの光学素子とした。
【0062】
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を光学測定したところ、表2に示す結果と同様に、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0063】
焼結温度が1150℃から1500℃のYAl12、LaAlO、La0.5Gd0.5AlO、YbAl12、LuAl12、LaAl12、YAl、La10Al21の周囲に、焼結温度が1100℃のGdAlOを被覆層として設けることにより、焼結温度を1100℃に下げることができた。
【0064】
実施例7
純度99.9%のY、La、Gd、Yb、LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0065】
また、被覆層として、表3の組成で表4の特性を有するガラスを用意し、この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部には表3に示す組成で、表4に示す特性を有するガラスを導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで微粒子を得る熱プラズマ法にて平均粒子径が10μm、被覆層であるガラスの平均厚さが1μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は1500℃以上3000℃以下とした。1500℃未満では、熔融が充分に行われず、球状の粒子が得られず、3000℃をこえると、原料の揮発が生じ、粒子径の小さい球形粒子しか得られなかった。
【0066】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ5mmの予備成形体を得た。
この予備成形体を750℃以上の温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。焼結時間は1時間以上4時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ3mmの試料とした。
【0067】
得られた光学素子の屈折率およびアッベ数を光学測定したところ、表2に示す結果と同様に、高屈折で低分散の光学特性を有していた。また表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが無い良好な光学素子が得られた。
【0068】
焼結温度が高温であるセラミックスの周囲に、ガラス転移温度が600℃のガラスを被覆層として設けることにより、焼結温度を750℃に下げることができた。
【0069】
【表3】

【0070】
【表4】

【0071】
比較例3
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,Lu,およびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0072】
この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部にはGdとAlの1:1混合物を導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで微粒子を得る熱プラズマ法にて平均粒子径が0.1μm、被覆層であるGdAlOの平均厚さが0.01μmの球状粒子を得た。このとき、加熱温度は3500℃以上とした。
【0073】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ2mmの予備成形体を得た。予備成形体を1100℃以上1500℃以下の下記の表に示す温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。尚、焼結時間は6時間以上24時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ1mmの試料とした。
【0074】
得られた光学素子を光学顕微鏡で観察したところ、素子中に泡が多数観察され、光学素子としての使用には不適切であった。
【0075】
比較例4
純度99.9%以上のY,La,Gd,Yb,LuおよびAlの酸化物原料を用意し、表2の試料No.11から19に示す化合物のセラミックス粒子となる比率で原料を調整し、混合した。
【0076】
この原料を熱プラズマ中に中央部に導入し、周辺部には表3の組成で表4の特性を有するガラスを導入し、同時に加熱、溶融させた後に冷却することで微粒子を得る熱プラズマ法にて平均粒子径が100μm、被覆層であるガラスの平均厚さが10μmの球状粒子を得た。
【0077】
この球状粒子を9800000Pa(100kgf)から196000000Pa(2000kgf)の圧力で乾式成形し、直径20mm、厚さ5mmの予備成形体を得た。
この予備成形体を750℃以上の温度で10−1Pa以下の真空中にて焼結させた。焼結時間は1時間以上4時間以下とした。得られた焼結体を研削、研磨して厚さ3mmの試料とした。
【0078】
得られた光学素子の表面を光学顕微鏡で観察したところ、研磨工程において生ずる表面粒子の脱落や表面のキズが多数存在し、光学素子としての使用には不適切であった。
本発明において、中央部分と被覆層の光学物性はことなるが、被覆層の厚さが直径の十分の1であり、断面積比が1:100であるため、得られた光学素子の光学物性は、ほぼ中央のセラミックスに等しいものであった。
【0079】
本発明は上記実施例に限定されるものではない。原料に例えば、LaAl12のような複合合酸化物を用いてもよく、酸化物以外に炭酸塩、硝酸塩も用いることができる。予備成形体作製は鋳込み成形、湿式成形でも可能である。その際に少量の有機バインダーを加えることもできる。
【0080】
使用する希土類族元素はY,La,Gd,Yb,Luの他にも、Ce,Pr,Nd、Pm,Sm,Eu,Gd,Tb,Dy,Ho,Er,Tmを使用することも可能である。
また、乾式成形、真空加熱の2段階の工程に換えて、HIP(熱間静水圧成形)により加熱時間を3から24期間に短縮することが可能である。
【0081】
予備成形体、焼結体それぞれの直径は20mm以上、厚さは2mm以上の作製も可能である。
予備成形体、焼結体の大きさは、直径20mm以上、厚さ5mm以上のものの作製も可能であった。
【0082】
また被覆層として、本発明の実施例以外の組成のガラスの使用も可能である。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明の光学素子は、高屈折率、低分散の光学特性を有するので、レンズ、プリズムとして利用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする光学素子。
【請求項2】
前記LnがY,La,Gd,Yb,Luから選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学素子。
【請求項3】
前記光学素子は、屈折率が1.8以上の透光性を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光学素子。
【請求項4】
前記セラミックス粒子が球形であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかの項に記載の光学素子。
【請求項5】
平均粒子径が1μm以上10μm以下のLnAl〔x+y〕×1.5(Lnは希土類族元素、xは1≦x≦10、yは1≦y≦5を表す。)から成るセラミックス粒子の表面に、該セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスからなる被覆層を被覆してなる2層構造の粒子の成形体を、真空焼結してなることを特徴とする光学素子。
【請求項6】
前記セラミックス粒子よりも焼結温度が低いセラミックスがガラスであることを特徴とする請求項5に記載の光学素子。
【請求項7】
前記2層構造の粒子が球形であることを特徴とする請求項5または6に記載の光学素子。
【請求項8】
前記LnがY,La,Gd,Yb,Luから選ばれた少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項5乃至7のいずれかの項に記載の光学素子。
【請求項9】
前記光学素子は、屈折率が1.8以上の透光性を有することを特徴とする請求項5乃至8のいずれかの項に記載の光学素子。