説明

光学装置及びカメラ

【課題】光学装置内部の温度上昇を防止する光学装置を提供する。
【解決手段】
光が通過可能な光通過領域(3,30)の外側に備えられ、樹脂(32)と当該樹脂中に分散されており内部に空洞(34,34a)が形成された中空粒子(33,33a)とを含む中空粒子入り樹脂部材(31)が、少なくとも一部に備えられる光学装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学装置及びカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに備えられるレンズ鏡筒等の光学装置は、太陽光を多量に照射される環境下で使用される場合がある。従来技術に係る光学装置では、太陽光が多量に照射される環境下で用いられた場合、照射熱によって光学装置内部の温度が上昇し、光学装置内部に備えられる光学部材等へ悪影響を及ぼすという問題が発生している。
【0003】
光学装置の温度上昇を防止するための従来技術としては、例えば三脚等に取り付ける日除けカバーとして、空気が封入された袋状のシート材を用いるものが知られている。しかしながら、従来技術に係る日除けカバーは、光学装置表面の操作スイッチや操作環等の円滑な操作を妨げるという問題があり、また、袋状のシート材は、光学装置に取り付けて用いるには、強度等の面から問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平6−38376号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、光学装置内部の温度上昇を防止する光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明に係る光学装置は、
光が通過可能な光通過領域(3,30)の外側に備えられ、樹脂(32)と当該樹脂中に分散されており内部に空洞(34,34a)が形成された中空粒子(33,33a)とを含む中空粒子入り樹脂部材(31)が、少なくとも一部に備えられる。
【0007】
また、例えば、本発明に係る光学装置は、前記光通過領域の外側に備えられ、内部に光学部材を備える筒状の鏡筒筐体(2)を有しても良く、
前記中空粒子入り樹脂部材は筒状であり、前記鏡筒筐体の一部又は全部であっても良い。
【0008】
また、例えば、前記中空粒子は、シリコンを含有するガラス、セラミック及び合成樹脂のうちいずれか一つからなるものであっても良い。
【0009】
また、例えば、前記中空粒子の平均粒径は、10〜200μmであっても良い。
【0010】
また、例えば、前記中空粒子の前記空洞の圧力は、大気圧より小さくても良い。
【0011】
本発明に係るカメラは、上記いずれかに記載の光学装置を含む。
【0012】
なお上述の説明では、本発明をわかりやすく説明するために実施形態を示す図面の符号に対応づけて説明したが、本発明は、これに限定されるものでない。後述の実施形態の構成を適宜改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替させてもよい。さらに、その配置について特に限定のない構成要件は、実施形態で開示した配置に限らず、その機能を達成できる位置に配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に係るレンズ鏡筒の全体図である。
【図2】図2は、図1に示すレンズ鏡筒における鏡筒筐体の部分断面図である。
【図3】図3(a)は、図2に示す中空粒子の模式断面図であり、図3(b)は変形例に係る中空粒子の模式断面図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態に係るカメラを正面側から見た斜視図である。
【図5】図5は、図4に示すカメラを背面側から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る光学機器であるレンズ鏡筒1の全体図である。図1に示すレンズ鏡筒1は、いわゆる一眼レフレックスカメラのカメラボディに対して着脱可能な望遠型交換レンズ鏡筒である。レンズ鏡筒1は、レンズ鏡筒1の外周を構成する鏡筒筐体2を有している。鏡筒筐体2は、略円筒形状を有しており、略円筒形状の鏡筒筐体2の中心軸に沿う方向に、光が通過可能な光通過領域3が形成されている。
【0015】
鏡筒筐体2の内部に形成されている光通過領域3には、光学レンズ群(不図示)が備えられている。光学レンズ群は、レンズ鏡筒1の一方である被写体側から入射した光を、レンズ鏡筒1の他方である撮像面側(カメラ本体側)に出射する。また、本実施形態に係るレンズ鏡筒1は、被写体側から入射した光の像を、当該光を撮像面側に出射した後の所定の位置で、形成することができる。なお、鏡筒筐体2の内部には、光学レンズ群の他に、絞り等の他の光学部材や、これらの光学部材の位置を変化させるための駆動部や制御部等が備えられている。
【0016】
レンズ鏡筒1を使用する際には、鏡筒筐体2の撮像面側に、不図示のカメラボディが取り付けられる。カメラボディは、レンズ鏡筒1に備えられる光学レンズ群によって形成される光の像を記録する記録媒体等を有する。また、鏡筒筐体2の被写体側の端部には、レンズ鏡筒1の光通過領域3に不要な光が入射することを防止するために、レンズフードが取り付けられても良い。
【0017】
なお、実施形態では主としてレンズ鏡筒1を例に挙げて説明を行うが、本発明に係る光学装置としてはこれに限定されない。本発明に係る光学装置としては、レンズ鏡筒1の他に、例えばレンズフード、カメラボディおよびカメラ(レンズ鏡筒とカメラとが一体化したもの)等が挙げられる。また、本発明に係る光学装置は、スチルカメラや、スチルカメラに備えられるレンズ鏡筒に限定されるものではなく、ビデオカメラ、テレコンバータ、望遠鏡、双眼鏡、単眼鏡を含む。
【0018】
鏡筒筐体2は、互いに外径の異なる3つの部分から構成される。すなわち、鏡筒筐体2は、第1の部分2a、第2の部分2b及び第3の部分2cを有し、被写体側から撮像面側に向かって、第1の部分2a、第2の部分2b、第3の部分2cの順に配置される。鏡筒筐体2の外径は、被写体側から撮像面側に向かって段階的に小さくなっており、第1の部分2aの外径が最も大きく、第3の部分2cの外径が最も小さい。
【0019】
鏡筒筐体2の第2の部分2bの外側には、ズーム環5が取り付けられている。ズーム環5は、鏡筒筐体2の内部に備えられる光学レンズ群の位置を変化させ、レンズ鏡筒1の焦点距離を調整するための操作部である。ズーム環5は、鏡筒筐体2に対して相対回転自在であり、使用者はズーム環5を回転させることによって、レンズ鏡筒1の焦点距離を変更することができる。
【0020】
鏡筒筐体2の第3の部分2cの外側には、フォーカス環7が取り付けられている。フォーカス環7は、鏡筒筐体2の内部に備えられる光学レンズ群の位置を変化させ、焦点調整を行うための操作部である。フォーカス環7は、ズーム環5と同様に、鏡筒筐体2に対して相対回転自在であり、使用者はフォーカス環7を回転させることによって、レンズ鏡筒1の焦点調整を行うことができる。
【0021】
鏡筒筐体2の第2の部分2bは、第1及び第3の部分2a,2cとは異なる材料を用いて作製されている。すなわち、第1の部分2aと第3の部分2cは、Mg、Al等を含む金属材料を用いて作製されているのに対して、第2の部分2bは、中空粒子入り樹脂部材(図2参照)を用いて作製されている。
【0022】
図2は、図1に示す鏡筒筐体2の第2の部分2bの部分断面図である。第2の部分2bは、中空粒子入り樹脂部材31によって構成されている。中空粒子入り樹脂部材31によって構成される第2の部分2bは、光通過領域3の外側に備えられ、不図示の光学部材等を内部に収納している。中空粒子入り樹脂部材31は、樹脂32と、樹脂32中に分散されている中空粒子33とを含む。
【0023】
中空粒子入り樹脂部材31の樹脂32としては、ポリカーボネイトやABS等が挙げられるが、特に限定されない。
【0024】
中空粒子入り樹脂部材31の樹脂32の中には、中空粒子33が分散されている。中空粒子33は、中空粒子入り樹脂部材31の表面方向に関しては、略均一に分散されていることが好ましい。また、中空粒子33は、図2に示すように、中空粒子入り樹脂部材31の外側表面には露出しない構成としても良いが、特に限定されない。
【0025】
それぞれの中空粒子33の内部には空洞34が形成されている。図3(a)は、図2に示す中空粒子33を模式的に表した拡大断面図である。中空粒子33の形状は、略球形であり、中空粒子33の内部には、1つの略球状の空洞34が形成されている。ただし、空洞34を含む中空粒子33の形状はこれに限定されず、多面体その他の形状であっても良い。
【0026】
また、図3(b)は、変形例に係る中空粒子33aを表したものであり、中空粒子入り樹脂部材31の内部には、中空粒子33の代わりに、中空粒子33aが分散されていても良い。図3(b)に示すように、中空粒子33aの内部には、複数の空洞34aが形成されている。このように、中空粒子の内部に形成される空洞の数についても、特に限定されない。
【0027】
さらに、図3(a)に示す空洞34は、外部と連通していても良いが、中空粒子33aによって外部に対して密閉されていることが好ましい。空洞34が外部に対して密閉されていることによって、図2に示す中空粒子入り樹脂部材31を形成する際に、空洞34の内部に樹脂32の材料が侵入し、空洞34の容積の減少又は消失が起こることを、確実に防止することができる。
【0028】
また、空洞34の圧力は、特に限定されないが、大気圧とほぼ等しい、もしくは大気圧より小さいことが好ましい。これにより、中空粒子入り樹脂部材31の熱伝導性を抑制し、中空粒子入り樹脂部材31の断熱性能を高めることができるからである。なお、空洞34には、空気、窒素又はアルゴン等の気体が存在しても良いが、特に限定されない。
【0029】
中空粒子33の材質は、樹脂32の形成温度より高い融点を有し、適切な強度を有するものが好ましく、シリコンを含むガラスもしくはセラミックが好ましく、あるいは合成樹脂でもよい。また、中空粒子33の大きさは、10〜200μmであることが好ましい。中空粒子33の大きさを10〜200μmとすることによって、中空粒子入り樹脂部材31を複雑な形状(表面形状等)とすることができ、また、中空粒子入り樹脂部材31全体に均質な断熱性を持たせることができる。
【0030】
図2に示す中空粒子入り樹脂部材31は、樹脂32の原材料に中空粒子33を混合した組成物を用いて、成型等によって製造する。中空粒子入り樹脂部材31の厚さは、特に限定されないが、0.5〜3mm程度とすることができる。
【0031】
図1に示すように、本実施形態に係るレンズ鏡筒1は、鏡筒筐体2の第2の部分2b(図1において網掛けで表される部分)に、中空粒子入り樹脂部材31が備えられる。図2に示すように、中空粒子入り樹脂部材31は、熱伝導率の低い空洞34が内部に形成された中空粒子33を含む。従って、中空粒子入り樹脂部材31は、断熱材として好適に作用し、レンズ鏡筒1が野外等で使用された場合にも、照射熱によって鏡筒筐体2の内部の温度が上昇することを防止できる。
【0032】
また、レンズ鏡筒1では、鏡筒筐体2の一部のみを中空粒子入り樹脂部材31とし、他の部分は金属材料によって構成した。金属材料は強度面で有利であるため、レンズ鏡筒1は、適度な断熱性能を確保しつつ、レンズ鏡筒1の堅牢さを確保できる。なお、鏡筒筐体2の全体を中空粒子入り樹脂部材31で構成しても良く、この場合は、より高い断熱効果を奏する。
【0033】
さらに、中空粒子入り樹脂部材31は、表面形状が複雑であるために厚さが薄い部分を有するような場合や、全体の厚さが薄い場合にも、発泡材料などと比較して、好適な断熱効果を奏する。中空粒子入り樹脂部材31は、発泡材料とは異なり、図2に示すように外側表面へ開く開気孔が形成されない構成であるため、設計上の厚さが薄い場所に開気孔が配置されること等によって実質の厚さが極端に薄い場所が発生する心配がなく、断熱効果を発揮する領域の厚さを、安定して確保することができるからである。また、中空粒子入り樹脂部材31を用いた鏡筒筐体2は、発泡材料を用いる鏡筒筐体と比較して、強度確保の観点からも有利である。
【0034】
第2実施形態
図4は、本発明の第2実施形態に係る光学機器であるカメラボディ22を、正面側から見た斜視図である。カメラボディ22は、レンズ鏡筒を交換可能な一眼レフレックスカメラのカメラボディであり、カメラボディ22の表面部分は、本体外装23によって構成される。カメラボディ22の本体外装23の正面部23aには、レンズ鏡筒を取り付けるためのマウント9が備えられる。本体外装23の内部には、レンズ鏡筒からの光が通過可能な光通過領域30が形成される。
【0035】
本体外装23の上面部分(カメラボディ22を正位置に構えた場合に上を向く部分)である最上カバー部23bには、表示パネル24等が備えられる。図4において網掛けで表す最上カバー部23bは、図2等で説明した中空粒子入り樹脂部材31と同様の中空粒子入り樹脂部材で構成される。野外撮影時等において、最上カバー部23bは日射を受け易いが、この部分を中空粒子入り樹脂部材で構成することにより、カメラボディ22は、内部の温度上昇を効果的に防止できる。
【0036】
図5は、カメラボディ22を背面側から見た斜視図であり、カメラボディの背面には、背面液晶27やファインダー接眼窓29が備えられる。本体外装23のうち、ファインダー接眼窓29の周辺部分である接眼周辺部23c(図5において網掛けで表す部分)は、図2等で説明した中空粒子入り樹脂部材31と同様の中空粒子入り樹脂部材によって構成される。
【0037】
図4に示す最上カバー部23bや図5に示す接眼周辺部23cは、曲面又は比較的複雑な表面形状を有するが、このような部分を中空粒子入り樹脂部材とすることにより、本体外装23は、強度を確保しつつ優れた断熱効果を奏する。また、中空粒子入り樹脂部材を用いる本体外装23は、軽量化の観点からも有利である。
【0038】
図2等で説明した中空粒子入り樹脂部材は、上述の実施形態で説明した場所に限定されず、光学装置のその他の部分、特に光学装置の表面部分において、好適に使用される。
【符号の説明】
【0039】
1… レンズ鏡筒
2… 鏡筒筐体
2a〜2c… 第1部分〜第3部分
3,30… 光通過領域
5… ズーム環
7… フォーカス環
9… マウント
22… カメラボディ
23… 本体外装
23a… 正面部
23b… 最上カバー部
23c… 接眼周辺部
24… 表示パネル
27… 背面液晶
29… ファインダー接眼窓
31… 中空粒子入り樹脂部材
32… 樹脂
33,33a… 中空粒子
34,34a… 空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光が通過可能な光通過領域の外側に備えられ、樹脂と当該樹脂中に分散されており内部に空洞が形成された中空粒子とを含む中空粒子入り樹脂部材が、少なくとも一部に備えられた光学装置。
【請求項2】
前記光通過領域の外側に備えられ、内部に光学部材を備える筒状の鏡筒筐体を有し、
前記中空粒子入り樹脂部材は筒状であり、前記鏡筒筐体の一部又は全部であることを特徴とする請求項1に記載の光学装置。
【請求項3】
前記中空粒子は、シリコンを含有するガラス、セラミック及び合成樹脂のうちいずれか一つからなることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学装置。
【請求項4】
前記中空粒子の平均粒径は10〜200μmであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の光学装置。
【請求項5】
前記中空粒子の前記空洞の圧力は、大気圧とほぼ等しい、もしくは、大気圧より小さいことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の光学装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれかに記載の光学装置を含むカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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