説明

光学要素アレイの製造方法、光学要素アレイ、レンズユニット、及びカメラモジュール

【課題】リフロー工程のような高温環境下を経ても反射防止効果に劣化がなく、全体に均質な反射防止構造体を付与した光学要素アレイの製造方法を提供すること。
【解決手段】微細な凹凸形状を有する反射防止構造体51が安定した状態である光学要素アレイ100を製造することができる。具体的には、反射防止構造体51が第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されるため、クラックが発生せず、かつ反射防止構造体51部分に剥離が発生しない光学要素アレイ100を作製することができる。また、エネルギー状態の制御されたイオンビームが光学要素アレイ100表面全体に均一に照射されるため、光学要素アレイ100上の反射防止構造体51を均質なものとすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に撮像レンズ等に用いるための光学要素アレイの製造方法、当該方法によって製造された光学要素アレイ、及び当該光学要素アレイを用いて作製したレンズユニット、並びにカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロカメラモジュールのような複数枚のレンズやCCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等を積層する小型のカメラレンズを大量かつ低コストで作製する手法として、WLO(Wafer Level Optics:ウェハレベルオプティクス)技術がある(例えば、特許文献1及び2参照)。WLO技術では、1枚のウェハ上に数千個というレンズを形成し、これらのウェハを積層後に切断することによって、大量のレンズユニットが軸調整を行うことなく作製される。これらのレンズユニットをCCD等と組み合わせ、はんだを用いたリフローと呼ばれる加熱接着工程を通して接合することによりカメラモジュールが作製される。
【0003】
ここで、一般的にカメラモジュールに用いられる光学レンズは表面反射によるゴーストやフレアを低減させるために反射防止加工がされている。最も一般的な反射防止加工としては、反射防止膜と呼ばれる光学薄膜を設ける方法がある(例えば、特許文献3参照)。反射防止膜は、光の干渉を用いて反射光を低減するものであり、例えばレンズ材料よりも低い屈折率を有する材料をレンズ表面にλ/4(ここで、λは反射を防止させたい波長の光であり、可視光であれば350nm〜800nm程度である。)程度の膜厚で形成し、膜表面の反射光とレンズ表面の反射光とを打ち消すように作用させることで反射光を低減させる。
【0004】
また、別の反射防止加工として、反射防止機能を有する反射防止構造体を設ける方法がある。反射防止構造体は、レンズ等の光学素子の表面に光の波長スケールの凹凸形状や巨視的に見て密度の小さい部分を作製することで反射を低減する。反射防止構造体の作製法には、成形を行う金型に反射防止構造のネガ型を作製しておき、成形時に反射防止構造を転写する方法がある(例えば、特許文献4参照)。また、反射防止構造体の作製法には、レンズ表面に皮膜を形成した後に、この皮膜を反射防止構造体に加工する方法がある(例えば、特許文献5参照)。ここで、皮膜形成後の後加工には、プラズマ及びプラズマ源から引き出したイオン衝突を用いたエッチング等が存在する(例えば、特許文献6参照)。また、撮像素子上のオンチップレンズのような小型の光学要素アレイを作製するにあたって、マイクロレンズ上に設けた平坦層の表面に酸素(O)を用いたドライエッチングによって反射防止構造体を作製する手法も存在する(例えば、特許文献7参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献3、5、及び7の方法では、リフロー工程と呼ばれる高温下に置かれた場合、レンズと薄膜との間の線膨脹係数の差から膜のクラックや剥離が発生してしまうという問題が生じ得る。特に、レンズ材料として樹脂を用いた場合、樹脂材料はガラス材料に比べ膨張率が大きく、リフローに限らず高温下に置かれた際にクラックや剥離といった問題がより発生しやすくなる。
【0006】
また、特許文献4の方法のように、構造体を作製する手法として金型を用いた場合、樹脂との接着面積が増加することによって離形不良や金型の劣化による光学素子の不均質さが生じる、金型作製が複雑になりコストが非常に高くなる、等の問題がある。
【0007】
また、特許文献6の方法のように、プラズマによる加工処理では、被処理対象物に対してプラズマ密度を均一に保つ必要がある。これにより、光学要素アレイのような比較的大きい面積のものが被処理対象物になる場合、光学要素アレイ内の位置によって処理の効果にムラができてしまう。そのため、均質な反射防止構造体を得ることが困難である。また、均質にプラズマ処理を行うためには装置内の電解分布を調整する必要があり、その設計には困難が生じ、規模も大型のものになってしまう。また、エッチング処理の前後において、マスク層や保護層等を形成するために薄膜を堆積させる場合、プラズマ処理と薄膜堆積という2つの工程を行わなければならない。そのため、光学要素アレイの搬送、設置に加えて、プラズマ処理及び薄膜堆積の両工程でそれぞれ真空引きしなければならず、工数がかかってしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特表2010−519881号公報
【特許文献2】特開2010−266815号公報
【特許文献3】特開昭60−129701号公報
【特許文献4】特開2005−31538号公報
【特許文献5】特開2010−48896号公報
【特許文献6】米国特許2005−0233083号公報
【特許文献7】特開2007−242771号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、リフロー工程のような高温環境下を経ても反射防止効果に劣化がなく、全体に均質な反射防止構造体を付与した光学要素アレイの製造方法を提供することを目的とする。
【0010】
また、本発明は、上記光学要素アレイの製造方法によって製造された光学要素アレイ、及び当該光学要素アレイを用いて作製したレンズユニット、並びにカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するため、本発明に係る光学要素アレイの製造方法は、光学機能部を有する樹脂製の光学要素が複数形成された光学要素アレイの製造方法であって、成形された光学要素アレイの光学機能部にマスクパターンを形成するパターニング工程と、光学機能部にイオンビームによるエッチングにより反射防止構造体を設けるエッチング工程と、を備える。
【0012】
上記光学要素アレイの製造方法によれば、微細な凹凸形状を有する反射防止構造体が安定した状態である光学要素アレイを製造することができる。具体的には、反射防止構造体が光学機能部と同じ材質で形成されるため、反射防止構造体と光学機能部との線膨脹係数の差が小さくクラックが発生しない光学要素アレイを作製することができる。また、反射防止構造体が光学機能部と同じ材質で形成されるため、反射防止構造体と光学機能部との間に界面が存在しない。そのため、反射防止構造体部分に剥離が発生しない光学要素アレイを作製することができる。また、エネルギー状態の制御されたイオンビームがイオン照射口より放出され、光学要素アレイ表面全体に均一に照射されるため、光学要素アレイ上の反射防止構造体を均質なものとすることができる。
【0013】
本発明の具体的な態様又は観点では、上記光学要素アレイの製造方法において、エッチング工程において、光学要素アレイの光学要素が配置されている部分で最大のエッチングレートと最小のエッチングレートとの差が最大のエッチングレートの10%以内である。この場合、上記光学要素アレイの光学要素が配置されている部分でのエッチングレートのうち、最大のエッチングレートと最小のエッチングレートとの差が最大のエッチングレートの10%以内であれば、光学的に略同等の反射防止効果を有するレンズを作製することができる。
【0014】
本発明の別の観点では、光学機能部のマスクパターンは微細な島状に形成されている。この場合、パターンの配置や大きさ等を調整することにより、反射防止構造体の微細な凹凸形状の特性を簡易に調整することができる。
【0015】
本発明のさらに別の観点では、エッチング工程において、不活性ガスと反応性ガスとを用いる。この場合、エッチングレートを調整することができ、反射防止構造体の微細な凹凸形状の特性を簡易に調整することができる。
【0016】
本発明のさらに別の観点では、エッチング工程後、反射防止構造体上に反射防止構造体を保護する保護層を設けるコーティング工程を備える。この場合、反射防止構造体の微細な凹凸形状を傷、埃、汚れ等から保護することができる。
【0017】
上記課題を解決するため、本発明に係る光学要素アレイは、光学機能部を有する樹脂製の光学要素が複数形成された光学要素アレイであって、光学機能部に、イオンビームを用いることにより形成された微細な凹凸形状の反射防止構造体を有する。
【0018】
上記光学要素アレイによれば、これに設けた微細な凹凸形状を有する反射防止構造体が安定した状態である。具体的には、反射防止構造体が光学機能部と同じ材質で形成されるため、反射防止構造体と光学機能部との線膨脹係数の差が小さくクラックが発生しない。また、反射防止構造体が光学機能部と同じ材質で形成されるため、反射防止構造体と光学機能部との間に界面が存在せず、剥離も発生しない。さらに、反射防止構造体を形成する際に、エネルギー状態の制御されたイオンビームが光学要素アレイ表面全体に均一に照射されるため、光学要素アレイ上の反射防止構造体が均質なものとなる。これにより、光学要素アレイを積層し、切断した光学要素をカメラモジュールに組み込んだ際にも、カメラモジュールの性能のばらつきを小さく抑えることができる。
【0019】
本発明の具体的な態様又は観点では、上記光学要素アレイにおいて、反射防止構造体の凹凸形状の深さは、50nm以上1000nm以下である。ここで、反射防止構造体は、入射光側から光学素子中心側に向かうにつれて微細な凹凸形状の体積密度が増加するような先細りの構造となる傾向がある。また、反射防止構造体において深さ方向で屈折率が徐々に変化することにより波長依存性が小さくなる。そのため、反射防止構造体を表面に有する光学機能部は、反射防止膜と比較して入射光の角度依存性を低下させることができる。
【0020】
本発明の別の観点では、樹脂は、200℃以上の耐熱性を有する。この場合、リフローを行う際に熱による反射防止構造体の形状や色等の変化を抑えることができる。
【0021】
本発明のさらに別の観点では、反射防止構造体は、表面に保護層を有する。この場合、反射防止構造体の微細な凹凸形状を傷、埃、汚れ等から保護することができる。
【0022】
本発明のさらに別の観点では、光学要素は、複数の光電変換素子を有する撮像素子自体に光を導くためのものである。この場合、撮像素子自体に光を導く光学要素は、直径0.5mm〜10mm程度となる。このような光学要素が複数形成された光学要素アレイ全体は比較的大きいものとなる。光学要素アレイが比較的大きくなっても、イオンビームを用いて反射防止構造体として均質な微細な凹凸形状を形成することにより、均一な精度を有する反射防止構造体とすることができる。
【0023】
上記課題を解決するため、本発明に係るレンズユニットは、上記光学要素アレイから分離される光学要素を有する。
【0024】
上記レンズユニットによれば、光学要素に膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体を有する光学要素アレイを用いることにより、高精度な光学性能を有するレンズユニットを提供することができる。
【0025】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1のカメラモジュールは、上記光学要素アレイから分離される光学要素と撮像素子とを組み合わせて製造される。
【0026】
上記第1のカメラモジュールによれば、光学要素に膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体を有する光学要素アレイを用いることにより、高精度な光学性能を有するカメラモジュールを提供することができる。
【0027】
上記課題を解決するため、本発明に係る第2のカメラモジュールは、上記光学要素アレイと、撮像素子が複数形成された撮像素子アレイとを組み合わせたものから取り出される。
【0028】
上記第2のカメラモジュールによれば、光学要素に膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体を有する光学要素アレイを用いることにより、高精度な光学性能を有するカメラモジュールを提供することができる。また、多数の撮像素子とレンズユニットとを一度に組み合わせることにより、単体の撮像素子とレンズユニットとを組み合わせるよりも作業工程が短縮できるため、コストの削減をすることができる。
【0029】
上記課題を解決するため、本発明に係る第3のカメラモジュールは、上記光学要素アレイから分離される光学要素と撮像素子とを組み合わせた状態でリフロー工程を経て製造される。
【0030】
上記第3のカメラモジュールによれば、リフロー工程を経ても光学要素に膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体を有する光学要素アレイを用いることにより、高精度な光学性能を有するカメラモジュールを提供することができる。また、リフロー工程を通すことで、より強固に接着されたカメラモジュールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(A)は、第1実施形態の光学要素アレイの平面図であり、(B)は、(A)に示す光学要素アレイのAA矢視断面図であり、(C)は、(A)に示す光学要素アレイを積層し、分離したレンズユニットの拡大断面図である。
【図2】図1の光学要素アレイの反射防止構造体等について説明する部分拡大図である。
【図3】図1の光学要素アレイの製造に用いる成形金型を説明する断面の概念図である。
【図4】図1の光学要素アレイの製造に用いる加工装置を説明する概念図である。
【図5】(A)〜(D)は、図1の光学要素アレイの成形工程を説明するための図である。
【図6】図1の光学要素アレイの製造工程を説明するフローチャートである。
【図7】(A)は、図1の光学要素アレイの製造工程中のパターニング工程を説明する図であり、(B)、(C)は、エッチング工程を説明する図であり、(D)は、コーティング工程を説明する図である。
【図8】図1(C)のレンズユニットを組み込んだカメラモジュールを説明する断面図である。
【図9】図8のカメラモジュールの製造工程を説明するフローチャートである。
【図10】(A)は、第2実施形態のカメラモジュールを説明する図であり、(B)は、(A)のカメラモジュールを切断する前の構造体を説明する図である。
【図11】図10(A)のカメラモジュールの製造工程を説明するフローチャートである。
【図12】第3実施形態の光学要素アレイを説明する図である、
【発明を実施するための形態】
【0032】
〔第1実施形態〕
図面を参照して、本発明の第1実施形態に係る光学要素アレイ、光学要素アレイの製造方法等について説明する。
【0033】
光学要素アレイ
図1(A)及び1(B)に示すように、光学要素アレイ100は、円盤状であり、基板101と、第1レンズアレイ層102と、第2レンズアレイ層103とを有する。光学要素アレイ100は、後述する複合レンズ10をマトリックス状に配列して一体化した構造を有する。説明の都合上、4つの複合レンズ10のみを図示しているが、実際の光学要素アレイ100は、多数の複合レンズ10を含むものとなっている。光学要素アレイ100を積層し、分離することで、複合レンズ10の軸合わせ等の後工程を短縮することができる。ここで、第1及び第2レンズアレイ層102,103は、軸AXに垂直なXY面内での並進及び軸AXのまわりの回転に関して相互にアライメントされて基板101に接合されている。
【0034】
光学要素アレイ100のうち基板101は、XY面に沿って延びる円形の平板である。基板101は、樹脂、ガラス、フォトニック結晶、及びこれらに添加物を加えたもの等で形成されている。特に、光透過性に優れるガラスや透明樹脂、及びこれらに添加物を加えたものが好ましい。基板101の厚さは、基本的には光学的仕様によって決定されるが、光学要素アレイ100の離型時において破損しない程度の厚さとなっている。具体的には、例えば0.25mm以上1mm以下となっている。基板101は、光学要素アレイ100の形状を安定させる目的、及び成形を容易にする目的で用いられる。基板101の表面積は、使用用途に応じて選択可能であり、10cm〜20000cmの範囲となっている。なお、基板101の表面積は、基板101上に形成する後述する第1及び第2レンズ素子11,12の個数を考慮すると100cm以上が好ましい。さらに、基板101の表面積は、取り扱いの良さを考慮すると100cm以上2000cmがより好ましい。基板101の片面又は両面には、洗浄や表面改質等の目的に応じて、プラズマ、イオンビーム、研磨、熱処理、ドライエッチング、ウェットエッチング等の表面処理が施されていてもよい。また、基板101の片面又は両面には、保護膜、レジスト処理、光学薄膜の堆積等の処理が施されていてもよいし、切削、モールド、ダイシング、研磨、ブラスト等によって表面加工、形状加工が行われてもよい。例えば、黒い樹脂材料を用いたレジスト処理によって、レンズ絞りのパターニング等を行うことができる。また、基板101の片面又は両面に赤外カットフィルタ膜を設けることにより、撮像素子へのノイズを減少させることができ、光学要素アレイ100を用いて作製されるカメラモジュールの性能を向上させることができる。
【0035】
第1レンズアレイ層102は、樹脂製であり、基板101の一方の面101b上に形成されている。第1レンズアレイ層102は、成形の容易さを考慮して基板101の全面を覆うように形成されている。第1レンズアレイ層102は、平面視において円形の外形を有し、多数の第1レンズ素子11を有する。第1レンズ素子11は、第1レンズ本体11aと第1フランジ部11bとを一組としている。第1レンズ素子11は、後述するカメラモジュール70,270の組み立て時の容易さ、完成品の均質さからXY面内で2次元的に互いに等間隔に配列している。これらの第1レンズ素子11は、平坦な連結部11cを介して一体に成形されている。各第1レンズ素子11の形状は略同一となっている。第1レンズ素子11と連結部11cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第1成形面102aとなっている。第1レンズ本体11aは、例えば非球面型のレンズ部であり、光学機能部として凸状の第1光学面11dを有している。第1光学面11dは、光学要素であり、例えば複数の光電変換素子を有する撮像素子自体に光を導くためのものである。本実施形態の場合、第1光学面11dの直径は、0.5mm〜10mm程度となっている。周囲の第1フランジ部11bは、第1光学面11dの周囲に広がる平坦な第1フランジ面11gを有し、第1フランジ部11bの外周は、連結部11cともなっている。第1フランジ面11gは、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。
【0036】
第1レンズアレイ層102に用いられる材料として、例えば熱硬化樹脂、光硬化樹脂、有機無機ハイブリッド材料等が用いられる。具体的には、光硬化性樹脂として、例えばアクリル樹脂、アリル樹脂、エポキシ系樹脂、フッ素系樹脂等があり、熱硬化性樹脂として、例えばフッ素系樹脂、シリコーン系樹脂等がある。有機無機ハイブリッド材料として、例えばポリイミド・チタニアハイブリッド等がある。第1レンズアレイ層102に用いられる材料は、特に耐熱性と作業性の良さを考慮すると、熱硬化樹脂及び紫外線硬化樹脂が好ましい。融点が200℃以上である樹脂や200℃以上の加熱時にクラック等の劣化が起きにくい樹脂を用いることにより、成形後のリフロー工程において第1光学面11dの劣化や後述する反射防止構造体の形状、色等の変化を抑えることができる。
【0037】
図2に拡大して示すように、第1レンズ素子11の第1光学面11d上には、反射防止構造体51と保護層52とが設けられている。なお、図2おいて、実際には、第1光学面11dと反射防止構造体51との境界が明確に存在しないが、便宜上点線で示している。
【0038】
反射防止構造体51は、第1光学面11d等の面内において、ランダムに配置された微細な凹凸形状を有する。反射防止構造体51は、入射光側から光学素子中心側に向かうにつれて凹凸形状の体積密度が増加するような先細りの構造となっている。つまり、反射防止構造体51は、略錐体状の微細突起を集めたものとなっている。反射防止構造体51の粗さ(Rz:十点平均粗さ)は、10nm以上1000nm以下となっている。なお、反射防止構造体51の粗さRzは、50nm以上800nm以下が好ましく、さらに、250nm以上800nm以下がより好ましい。反射防止構造体51は、イオンビームを用いることにより形成される。ここで、一般に、ある界面での反射率は、界面を挟む二空間の屈折率の差で決定され、その差が大きいほど表面反射率が増加する。反射防止構造体51は、第1光学面11d上に形成された使用波長レベル以下の凹凸形状であるため、反射防止構造体51と第1光学面11dとの間には、急激な屈折率変化がある界面が存在しない。これにより、反射防止構造体51における屈折率変化が緩やかなものとなり、表面反射率が低下する。この効果は、波長や入射角に依存するものではない。そのため、反射防止構造体51は、低屈折率層等を有する従来型の構造体に比較して波長依存性と角度依存性とを抑えることができる。なお、低屈折率層等を有する従来型の構造体による反射防止の原理は、光の干渉によるものである。光が低屈折率層等を有する構造体に垂直入射する場合、膜厚の4倍の波長において最も反射率が低減され、入射角θの光に対しては、見掛け上の膜厚が実質の膜厚とcosθとの積として現れる。その結果、低屈折率層等を有する構造体の場合、本実施形態の場合と異なり、波長依存性、入射角依存性が現れる。
【0039】
保護層52は、第1レンズアレイ層102の表面全体にコーティングされており、反射防止構造体51上にもむらなく形成されている。保護層52は、塗布、蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリング等を用いることにより形成される。なお、広面積に均質かつ正確な膜厚制御が行えるため、蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングを用いることが好ましい。保護層52の材料として、例えばSiO、Al等が用いられる。保護層52の厚みは、約5nm〜50nmとなっている。保護層52を設けることにより、反射防止構造体51、延いては第1光学面11dや第1フランジ面11gに防塵、防汚、耐摩耗性、耐静電性等を付与することができる。
【0040】
図1(B)に戻って、第2レンズアレイ層103も同様に、樹脂製であり、基板101の他方の面101c上に形成されている。第2レンズアレイ層103は、平面視において円形の外形を有し、第2レンズ本体12aと第2フランジ部12bとを一組とする多数の第2レンズ素子12をXY面内で2次元的に互いに等間隔に配列している。これらの第2レンズ素子12は、平坦な連結部12cを介して一体に成形されている。各第2レンズ素子12と連結部12cとを合わせた表面は、転写によって一括成形される第2成形面103aとなっている。第2レンズ本体12aは、例えば非球面型のレンズ部であり、光学機能部として凹状の第2光学面12dを有している。周囲の第2フランジ部12bは、第2光学面12dの周囲に広がる平坦な第2フランジ面12gを有し、第2フランジ部12bの外周は、連結部12cともなっている。第2フランジ面12gは、光軸OAに垂直なXY面に対して平行に配置されている。第2レンズ素子12の第1光学面12d上には、図2に拡大して示す反射防止構造体51と保護層52とが設けられている。第2レンズアレイ層103の形状、材料等は第1レンズアレイ層102と同様であるため、説明を省略する。
【0041】
なお、光学要素アレイ100において、基板101と第1レンズアレイ層102との間、或いは基板101と第2レンズアレイ層103との間に絞りを設けてもよい。この場合、絞りの開口部が各第1及び第2レンズ本体11a,12aにアライメントして配置される。
【0042】
光学要素アレイの製造方法
以下、図3及び図4を参照しつつ、図1(A)等に示す光学要素アレイ100を製造するためのレンズ製造装置の一例について説明する。レンズ製造装置は、図3に示す成形装置(成形金型40のみ図示)と、図4に示す加工装置60とを備える。
【0043】
成形装置は、流動体状の樹脂を成形金型40に流し込み、固化させ光学要素アレイ100の成形を行うためのものである。図示は省略するが、成形装置は、主要な部材である成形金型40の他に、成形金型40に移動、開閉動作等を行わせるための金型昇降装置、樹脂を基板101に塗布するための樹脂塗布装置、樹脂を固化させるためのUV光発生装置、成形した光学要素アレイ100を取り出すための離型装置、これらの装置を駆動するための制御駆動装置等を備える。
【0044】
図3に示すように、成形金型40は、第1金型41と、第2金型42と、スペーサ43とを備える。第1レンズアレイ層102及び第2レンズアレイ層103は、基板101の両面101b,101cに順次成形され、離型の際に、第1金型41は基板101の上側となる一方の面101b側に第1レンズアレイ層102に密着して配置され、第2金型42は基板101の下側となる他方の面101c側に第2レンズアレイ層103に密着して配置された状態となる。
【0045】
第1金型41は、光学要素アレイ100の第1成形面102aを成形するためのものである。第1金型41は、光透過性のガラス製であり、肉厚の円板状の外形を有する。第1金型41は、基板101側の端面41aに、第1レンズアレイ層102の第1成形面102aに対応する第1転写面41bを有する。つまり、端面41aには複数の第1転写面41bが形成されている。第1転写面41bは、第1成形面102aのうち第1光学面11dを形成するための第1光学面転写面41cと、第1フランジ面11gを形成するための第1フランジ面転写面41dとを含む。第1光学面転写面41cは、第1光学面11dの形状に対応して凹状となっており、第1フランジ面転写面41dは、第1フランジ面11gの形状に対応して平坦状となっている。
【0046】
第2金型42は、光学要素アレイ100の第2成形面103aを成形するためのものである。第2金型42も、第1金型41と同様に、光透過性のガラス製であり、肉厚の円板状の外形を有する。第2金型42は、基板101側の端面42aに、第2レンズアレイ層103の第2成形面103aに対応する第2転写面42bを有する。第2転写面42bは、第2成形面103aのうち第2光学面12dを形成するための第2光学面転写面42cと、第2フランジ面12gを形成するための第2フランジ面転写面42dとを含む。第2光学面転写面42cは、第2光学面12dの形状に対応して凸状となっており、第2フランジ面転写面42dは、第2フランジ面12gの形状に対応して平坦状となっている。
【0047】
スペーサ43は、光学要素アレイ100の側面100aを形成するとともに、第1及び第2レンズアレイ層102,103の厚みを規定するものである。スペーサ43は、第1金型41と第2金型42との間に挟まれており、環状の外形を有する。
【0048】
図4に示すように、加工装置60は、真空チャンバー61と、ステージ62と、イオンガン63と、中和ガン64と、蒸着装置65と、ガス供給部66,67と、ガス排出部68と、制御部69とを備える。
【0049】
真空チャンバー61は、加工装置60内を気密に保つためのものである。真空チャンバー61内には、ステージ62と、イオンガン63と、中和ガン64と、蒸着装置65とが設けられている。また、真空チャンバー61は、ポート61aを介してガス供給部66,67と連通し、ポート61bを介してガス排出部68と連通している。
【0050】
ステージ62は、真空チャンバー61の上部に設けられており、X方向、Y方向、Z方向に移動可能となっている。ステージ62のイオンガン63等に対向するステージ面62aには、光学要素アレイ100が載置、固定されている。ステージ62の位置調整により、光学要素アレイ100の位置調整がされる。
【0051】
イオンガン63は、光学要素アレイ100の第1及び第2光学面11d,12d上に反射防止構造体51を形成するためのものである。イオンガン63は、プラズマ中のイオンを電圧印加等によって抽出し、イオンガン63の外部に放出する。具体的には、イオンガン63は、供給されたガスをイオン化し、イオンガン63の陽極63aと陰極63bとの間にビーム電圧を印加する。イオンガン63は、イオン化したガス(例えば、正イオン)を陰極63b側に接近、通過させ、イオンビームとして真空チャンバー61内に放出する。放出されたイオンビームは、ステージ62上の光学要素アレイ100の第1及び第2光学面11d,12dに照射される。これにより、第1及び第2光学面11d,12dのうち後述するマスクパターンMAが形成されていない露出した樹脂部分がエッチングされる。
【0052】
中和ガン64は、イオンビーム中のイオンを中和させて電解分布の影響を抑えるためのものである。中和ガン64には、不図示のガス導入源から電離用のガスが導入されており、導入されたガスが電離される。電離によって生成された電子を真空チャンバー61に放出させると、イオンガン63によってイオン化したガスが電子によって中和される。なお、中和ガン64の代わりに中和グリッドを用いてもよい。
【0053】
蒸着装置65は、光学要素アレイ100上に後述するマスクパターンMAを形成したり、保護層52を形成したりするためのものである。蒸着装置65は、例えばSiO、Al、MgF、ZrO、TiO、CeO等の真空蒸着を行う。これにより、光学要素アレイ100の第1及び第2光学面11d,12dにマスクパターンMAとなる島状パターンや保護層52となる薄膜を形成することができる。なお、蒸着装置65の代わりに、スパッタリング装置やイオンビームスパッタリング装置を設ければ、スパッタリング、イオンビームスパッタリング等を行うこともできる。
【0054】
ガス供給部66,67は、イオンビームを照射するための導入ガスを供給するものである。導入ガスとして、不活性ガスと反応性ガスとが用いられる。不活性ガスとして、例えばアルゴン(Ar)、窒素(N)、ヘリウム(He)、クリプトン(Kr)、ネオン(Ne)、及びこれら混合ガスがある。また、反応性ガスとして、例えば酸素(O)がある。ここで、Ar、O、N、及びこれら混合ガスは、比較的安価であるため好ましい。その中でも、O及びこれを含んだ混合ガスは、第1及び第2光学面11d,12dのエッチングの際に反応性エッチングを同時に行うことができるため特に好ましい。
【0055】
ガス排出部68は、真空チャンバー61内の真空度を調整するためのものである。ガス排出部68によって、真空チャンバー61内を所定の真空度まで排気する。
【0056】
制御部69は、ステージ62、イオンガン63、中和ガン64、蒸着装置65、及びガス排出部68の動作を制御するためのものである。
【0057】
加工装置60によって生成されるイオンビームは、プラズマ中のイオンに高運動エネルギーを与えて放出させたものである。放出されたイオンは電荷を有しているものの、イオンの質量が大きいため電界の影響を受けにくく、高い直進性を持って放出される。その結果、被対象物への一様なエネルギー及び密度のイオン分布での照射が実現されるため、上記の比較的大きな光学要素アレイ100のエッチングに用いると効果的である。一方、プラズマでは電界分布やプラズマ密度の影響により、被対象物の突起部分から優先的にエッチングされる傾向等がある。そのため、突起部分や角の部分を有した第1及び第2光学面11d,12dに対して均一なエッチングレートが保てず、第1及び第2光学面11d,12dの形状によって第1及び第2光学面11d,12d上に作製された反射防止構造体51の反射防止効果に偏りが生じ得る。なお、突起部分や角の部分とは、例えば回折構造、第2光学面12dと第2フランジ面12gとの境目、スペーサを一体成形する場合はスペーサの部分である。
【0058】
以下、図5(A)〜5(D)及び図6を参照しつつ、図1(A)等に示す光学要素アレイ100の製造工程について説明する。ウェハレンズの100の製造工程は、大まかに、基板101に樹脂を塗布して成形する成形工程と、成形された光学要素アレイ100にマスクパターンを形成するパターニング工程と、光学要素アレイ100の第1及び第2光学面11d,12dに反射防止構造体51を形成するエッチング工程と、反射防止構造体51に保護層52を設けるコーティング工程とで構成される。
【0059】
〔成形工程〕
成形工程は、図3に示す第1及び第2金型41,42を用いつつ、不図示の金型昇降装置と、樹脂塗布装置と、UV光発生装置とを動作させることで行われる。
【0060】
まず、基板101の一方の面101b上に第1レンズアレイ層102を成形する(ステップS11)。具体的には、図5(A)に示すように、予め基板101の側面101aをスペーサ43で固定する。ここで、基板101は、ステージSS上に載置され、下方の面となる他方の面101cをステージSSの上面に密着させるので、基板101の反りが防止される。樹脂塗布装置を動作させ、ステージSS上に固定した基板101の上方の面となる一方の面101b上に樹脂を塗布する。金型昇降装置を動作させ、第1金型41をステージSS等に対してアライメントさせた状態で、樹脂を塗布した基板101に向けて降下させる。スペーサ43の端面43aが基板101に当接し、スペーサ43の端面43aに垂直な端面43bが第1金型41の外縁部41eに当接した状態で、基板101と第1金型41との間の樹脂厚、すなわち第1レンズアレイ層102の連結部11c(第1フランジ部11b)の厚さが規定される。UV光発生装置を動作させ、第1金型41の上側からUV光を照射し、基板101の一方の面101bと第1金型41の端面41aとの間に挟まれた樹脂を固化させる。
【0061】
次に、基板101の他方の面101c上に第2レンズアレイ層103を成形する。図5(B)に示すように、金型昇降装置を動作させ、基板101と第1金型41とを第1レンズアレイ層102を介して一体化させた状態で反転させ、基板101の他方の面101cが上側になるように固定する。樹脂塗布装置を動作させ、固定した基板101の他方の面101c上に樹脂を塗布する。金型昇降装置を動作させ、第2金型42を第1金型41等に対してアライメントさせた状態で、樹脂を塗布した基板101に向けて降下させる。スペーサ43の端面43aが基板101に当接し、スペーサ43の端面43aに垂直な端面43cが第2金型42の外縁部42eに当接した状態で、基板101と第2金型42との間の樹脂厚、すなわち第2レンズアレイ層103の連結部12c(第2フランジ部12b)の厚さが規定される。UV光発生装置を動作させ、第2金型42の上側からUV光を照射し、基板101の他方の面101cを第2金型42の端面42aとの間に挟まれた樹脂を固化させる。
【0062】
第1及び第2レンズアレイ層102,103を形成する樹脂が固化した後、図5(C)に示すように、基板101、第1及び第2金型41,42からスペーサ43を取り外す。
【0063】
最後に、図5(D)に示すように、第1及び第2金型41,42から光学要素アレイ100を離型する(ステップS12)。
【0064】
〔パターニング工程〕
以下、図6及び図7(A)〜7(C)を参照しつつ、光学要素アレイ100の第1及び第2光学面11d,12dに反射防止構造体51を形成するためのパターニング工程とエッチング工程とについて説明する。なお、第1及び第2光学面11d,12dに対する処理工程は同様であるため、便宜上、第1光学面11dに反射防止構造体51を形成する場合についてのみ説明する。
【0065】
パターニング工程は、光学要素アレイ100にイオンビームを照射する前処理として行われ、第1光学面11d上にマスクパターンMAを形成する(ステップS13)。マスクパターンMAは、図7(A)に拡大して示すように、微細な島状のパターンとなっている。マスクパターンMAは、ランダムに配置された複数の島IMを有している。パターニング工程は、フォトレジストの塗布、膜堆積、エッチング等の手法を用いて行われる。例えば、膜堆積の手法を用いる場合、薄膜成長の初期過程を利用する。薄膜の初期成長過程において、膜の成長核が島IMとなって成長する状態、すなわち島成長が起こる。膜が層状になる前の島成長の状態では、島IMが存在している部分と第1光学面11dが露出している部分とが存在するため、マスクパターンとして機能する。
【0066】
膜堆積の手法を用いる場合、加工装置60内でパターニング工程を行う。マスクパターンMAの島IMの数密度や大きさは、膜の成長条件を調整することによって適宜変更することができる。堆積される島IMの高さは、例えば0.1nm〜30nmが好ましく、1nm〜10nmがより好ましい。マスクの材料は、例えば低屈折透明材料、高屈折透明材料等がある。具体的には、低屈折透明材料として、SiO、Al、MgFがある。また、高屈折透明材料として、ZrO、TiOがある。特に、低屈折透明材料の場合、反射防止構造体51上に残留しても反射の要因になりくい。マスクパターンMAのパターニングを施すことにより、第1光学面11dの面上の位置に応じてエッチング速度の違いが生じ、後述するエッチング工程において微細な凹凸形状を形成することができる。
【0067】
なお、マスクパターンMAを膜堆積、エッチングで形成する場合、図4に示すように、加工装置60内に例えば蒸着装置65を配置することでエッチング工程を行う前にパターニング工程を行うことができる。これにより、エッチング工程のための真空排気時間を省略することができる。
【0068】
〔エッチング工程〕
エッチング工程は、図4に示す加工装置60を用いることで行われる。
【0069】
まず、加工装置60のイオンガン63から放出されるイオンビームが光学要素アレイ100の目的とする面、すなわち第1光学面11dに照射されるように、光学要素アレイ100をステージ62上に配置する。
【0070】
次に、ガス排出部68によって真空チャンバー61内の気体を排気する。排気によって維持される排圧は、1×10−1Pa以下となっている。なお、排圧は、1×10−3Pa以下がより好ましい。また、排圧は、後述する導入ガスの1/10以下の圧力である必要がある。
【0071】
次に、真空チャンバー61内に導入ガスを導入する。導入ガスは、例えばAr、O、N、He、Kr、Ne、及びこれらの混合ガスのいずれかが用いられる。ここで、導入ガスに、不活性ガスと反応性ガスとを用いると、エッチングレートを簡単に調整することができる。導入ガスの圧力は、1Pa以下となっている。なお、導入ガスの圧力は、1×10−2Pa以下がより好ましい。より低いガス圧でエッチングを行うことにより、イオンの平均自由工程が長くなる。そのため、イオンの運動エネルギーが第1光学面11dに衝突するまでに失われにくくなり、エッチングレートが上昇する。よって、イオンの平均自由工程が光学要素アレイ100とイオンガン63と間の距離と同じ又は1/10程度になるように全圧を設定することにより、エッチングレートの上昇が見込まれる。エッチング工程において、第1光学面11dが配置されている部分での最大のエッチングレートと最小のエッチングレートとの差は、最大のエッチングレートの10%以内となっている。
【0072】
以上の真空チャンバー61の状態でイオンビームを放出し、第1光学面11dにイオン照射を行う。この際、イオンの加速エネルギーは1W〜100kWである。なお、イオンの加速エネルギーは、10W〜10kWが好ましく、50W〜1kWがより好ましい。
【0073】
イオンビームの照射により、図7(B)に示すように、マスクパターンMAの島IMとともに、光学要素アレイ100の樹脂が露出した部分がエッチングされる。これにより、入射光側から光学素子中心側に向かうにつれて凹凸形状の体積密度が増加するような構造を有する反射防止構造体51が形成される(ステップS14)。
【0074】
なお、エッチング工程終了後、マスクパターンMAの島IMが完全に無くならない場合、図7(C)の示すように、イオンビームの調整によりマスクパターンMAの除去処理を行ってもよい。
【0075】
〔コーティング工程〕
以下、図6及び図7(D)を参照しつつ、保護層52を形成するコーティング工程について説明する。
【0076】
図7(D)に示すように、コーティング工程では、反射防止構造体51上に保護層52をコーティングする(ステップS15)。コーティングの手法として、蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングリング、塗布等が用いられる。なお、これらのコーティング手法のうち、蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングは、広面積に均質かつ正確な膜厚制御が行えるため好ましい。ここで、通常、蒸着、スパッタリング、イオンビームスパッタリングは真空排気による時間が必要である。図4に示すように、加工装置60内に例えば蒸着装置65を配置することでエッチング工程を行った後に連続してコーティング工程を行うことができる。これにより、コーティング工程のための真空排気時間を省略することができる。
【0077】
以上説明した光学要素アレイの製造方法及び光学要素アレイ100によれば、微細な凹凸形状を有する反射防止構造体51が安定した状態である光学要素アレイ100を製造することができる。具体的には、反射防止構造体51が光学機能部である第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されるため、反射防止構造体51と第1及び第2光学面11d,12dとの線膨脹係数の差が小さくクラックが発生しない光学要素アレイ100を作製することができる。また、反射防止構造体51が第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されるため、反射防止構造体51と第1及び第2光学面11d,12dとの間に界面が存在しない。そのため、反射防止構造体51部分に剥離が発生しない光学要素アレイ100を作製することができる。また、エネルギー状態の制御されたイオンビームがイオン照射口より放出され、光学要素アレイ100表面全体に均一に照射されるため、光学要素アレイ100上の反射防止構造体51を均質なものとすることができる。
【0078】
レンズユニット
以下、図1(C)等を参照しつつ、光学要素アレイ100から分離されたレンズユニット200について説明する。
【0079】
レンズユニット200は、例えば撮像レンズとして用いられる。レンズユニット200は、第1複合レンズ10と第2複合レンズ110とを有する。レンズユニット200は、2枚の光学要素アレイ100を積層、接合した後、ダイシングによって切り出すことによって得る。ここで、切り出す前の光学要素アレイ100を示している図1(A)の点線は、格子点に配置された多数の複合レンズ10の外縁を示している。各複合レンズ10の境界線を挟んだ複合レンズ10の外側が連結部11c,12cとなる。なお、第1及び第2複合レンズ10,110の構成は略同様であるため、説明の都合上、主に第1複合レンズ10について述べる。
【0080】
図1(C)に示すように、複合レンズ10は、四角柱状の部材であり、光軸OA方向から見て四角形の輪郭を有する。複合レンズ10は、既に説明した第1レンズ素子11と、第2レンズ素子12と、これらの間に挟まれた平板部13とを備える。平板部13は、基板101を切り出した部分である。なお、複合レンズ10は、例えば別途準備したホルダに収納され、撮像レンズとして撮像回路基板に接着される。第1レンズ素子11において、第1レンズ本体11aは、複合レンズ10の光軸OA周辺の中央部に設けられ、円形輪郭を有する。第1フランジ部11bは、第1レンズ本体11aの周辺に延在し、方形輪郭を有する。第2レンズ素子12においても、第2レンズ本体12aは、複合レンズ10の光軸OA周辺の中央部に設けられ、円形輪郭を有する。第2フランジ部12bは、第2レンズ本体12aの周辺に延在し、方形輪郭を有する。
【0081】
第2複合レンズ110も同様に、第1レンズ素子111と、第2レンズ素子112と、平板部113とを備える。
【0082】
以上のレンズユニット200によれば、反射防止構造体51が第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されているため、膜剥がれやクラックといった不良が発生することを防ぐことができる。また、均質な反射防止構造体51を有する光学要素アレイ100を用いることにより、高精度な光学特性を有するレンズユニット200となる。
【0083】
カメラモジュール
以下、図8を参照しつつ、レンズユニット200を組み付けたカメラモジュール70について説明する。
【0084】
カメラモジュール70は、イメージセンサとレンズとを組み合わせた小型のカメラ部分であり、撮像対象の画像取込ができるようになっている。図8に示すように、カメラモジュール70は、本体モジュール71とレンズモジュール72とを備える。カメラモジュール70は、撮像装置300において、携帯電話等の移動情報端末機器の電子回路を構成する電子部品が実装される回路基板BB上に組み込まれる。具体的には、本体モジュール71を回路基板BBに実装することにより、カメラモジュール70全体が回路基板BBに実装される。
【0085】
本体モジュール71は、CCDやCMOS等の撮像素子であるイメージセンサ73をサブ基板SB上に予め実装した受光モジュールである。イメージセンサ73の上部は、封止部74で封止されている。イメージセンサ73の上面には、光電変換を行う画素が多数格子状に配列された受光部73aが形成されている。この受光部73aにレンズモジュール72によって光学画像を結像させることにより、各画素での光電変換によって得た画像信号が出力される。サブ基板SBは、鉛フリーのはんだ75によって回路基板BBに実装されている。これにより、サブ基板SBを含むカメラモジュール70が回路基板BBに固定される。この際、サブ基板SBの接続用電極(図示略)と回路基板BB上面の回路電極(図示略)とが電気的に接続される。
【0086】
レンズモジュール72は、結像レンズとしてのレンズユニット200を支持する筒状のホルダである外枠77を備えている。外枠77の上部にはレンズユニット200が保持されている。また、外枠77の下部はサブ基板SBに設けられた装着孔IS内に挿通されてレンズモジュール72をサブ基板SBに固定する装着部77bとなっている。この固定には、装着部77bを装着孔ISに圧入して固定する方法や、接着材によって接着する方法などが用いられる。
【0087】
レンズユニット200は、既述のように第1及び第2複合レンズ10,110により構成され(図1(C)参照)、被写体からの反射光をイメージセンサ73の受光部73a上に結像する。
【0088】
なお、レンズユニット200上に絞り部材を設けてもよい。
【0089】
カメラモジュールの製造方法
以下、図9を参照しつつ、カメラモジュール70の製造方法について説明する。
【0090】
まず、レンズユニット200を作製する。レンズユニット200の作製にあたって、光学要素アレイ100を積層し、仮止めをする(ステップS21)。この際、光学要素アレイ100の一部に目印をつけておき、例えば2枚の光学要素アレイ100をアライメントして積層する。この光学要素アレイ100は積層した際に光学特性が表れるように設計されている。そのため、光学調整の必要がなく、コストを削減することができる。
【0091】
次に、積層した光学要素アレイ100を切断する(ステップS22)。この切断工程は、レーザによるもの、回転のこぎりによるもの等がある。
【0092】
このようにして作製されたレンズユニット200にイメージセンサ73及び外枠77を取り付け、接合を行う(ステップS23)。当該レンズユニット200をイメージセンサ73の受光部73a上に結像させるように外枠77内の適所位置に組み込む。
【0093】
次に、外枠77の装着部77bをサブ基板SBの装着孔ISに挿通・固定し、カメラモジュール70を形成する。その後、予めはんだ75が塗布(ポッティング)された回路基板BBの所定の実装位置にカメラモジュール70やその他の電子部品を載置する。
【0094】
その後、カメラモジュール70やその他の電子部品を載置した回路基板BBをベルトコンベア等でリフロー炉(図示略)に移送し、当該回路基板BBをリフロー処理に供して260℃程度の温度で加熱する(ステップS24)。その結果、はんだ75が溶融してカメラモジュール70がその他の電子部品と一緒に回路基板BBに実装され撮像装置300が形成される。
【0095】
なお、光学要素アレイ100を耐熱性の樹脂で形成すれば、さらに耐熱性に優れたカメラモジュール70とすることができる。
【0096】
以上説明したカメラモジュールの製造方法及びカメラモジュール70によれば、反射防止構造体51が第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されるため、リフロー工程を経ても膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体51を有する光学要素アレイ100を用いることができる。これにより、鮮明な画像を得る等の高精度な光学性能を有するカメラモジュール70を提供することができる。特に、第1及び第2光学面11d,12dが略錐体状の微細な凹凸形状を有する反射防止構造体51を有することにより、角度依存が小さく、映像の周辺と中心において光度の差の小さなカメラモジュール70となる。また、リフロー工程を通すことで、より強固に接着されたカメラモジュール70となる。
【実施例1】
【0097】
以下、イオンビームによるエッチングレートについて説明する。
表1は、エッチング対象の材料とエッチングレートとの関係を示す。
【0098】
Arが66.6%、Oが33.3%の混合ガスを用いてイオンビームを樹脂、ガラスにそれぞれ照射し、エッチングを行った。樹脂は、樹脂材料(zeonex:登録商標、日本ゼオン格式会社製)、アクリル樹脂を用いた。また、ガラスは、BK7を用いた。なお、樹脂、ガラスには、事前にカバーガラスで一部マスクをしている。エッチングレートは、段差を測定する手法で算出した。
【表1】

【0099】
ここで、被処理対象物のエッチングレートが低い場合、反射防止構造体51が形成される前に、マスクパターンMAが消えてしまう可能性がある。表1に示すように、樹脂のエッチングレートはガラスのエッチングレートよりも高くなっている。そのため、光学要素アレイ100の第1及び第2レンズアレイ層102,103の材料には、樹脂が好ましいことがわかる。
【0100】
〔第2実施形態〕
以下、第2実施形態に係るカメラモジュール等について説明する。なお、第2実施形態のカメラモジュール等は第1実施形態のカメラモジュール等を変形したものであり、特に説明しない部分は第1実施形態と同様であるものとする。
【0101】
図10(A)に示すように、カメラモジュール270は、イメージセンサチップ271と、レンズユニット200と、IRカットフィルタ278とを備える。
【0102】
レンズユニット200は、第2複合レンズ110の第1フランジ部11bから延びるレンズ支持体277を有する。レンズ支持体277は、矩形の外形を有し、第2複合レンズ110の第1レンズ本体11aより光軸OAに平行な方向に張り出している。レンズ支持体277の底面はイメージセンサチップ271の対応する位置にIRカットフィルタ278を介して貼り付けられている。なお、IRカットフィルタ278の側面に遮光層を形成してもよい。
【0103】
イメージセンサチップ271は、シリコンチップ273と、支持ガラス基板274とを有する。シリコンチップ273の表面には、CCDやCMOS等が形成されている。シリコンチップ273の表面周辺部には、電極パッド273a,273bが形成されている。これらの電極パッド273a,273bは、イメージセンサチップ271の入出力回路と接続されている。電極パッド273a,273bの下面には、シリコンチップ273を貫通してイメージセンサチップ271の裏面に達する再配線273c,273dが接続されている。再配線273c,273dは、シリコンチップ273の裏面周辺部に表出している。シリコンチップ273の裏面の再配線273c,273d上には、バンプ電極273e,273fが形成されている。
【0104】
支持ガラス基板274は、シリコンチップ273を支持するためのものであり、CCDやCMOS等の上に設けられている。
【0105】
IRカットフィルタ278は、レンズユニット200からの入射光のうち赤外光を反射し可視光を透過する部材である。
【0106】
なお、レンズユニット200上に絞り部材を設けてもよい。
【0107】
以下、図10(B)及び図11を参照しつつ、カメラモジュール270の製造方法について説明する。第2実施形態のカメラモジュール270は、光学要素アレイ100と、撮像素子であるCCDやCMOS等が複数形成された後述する撮像素子アレイ400とを組み合わせたものから分離されて製造される。
【0108】
まず、光学要素アレイ100を2枚と、IRカットフィルタウェハ500と、撮像素子アレイ400とを作製する。ここで、IRカットフィルタウェハ500は、平板状の部材となっている。また、撮像素子アレイ400は、積層した光学要素アレイ100のレンズユニット200の位置に対応してイメージセンサチップ271が複数個配置されている。
【0109】
次に、作製した光学要素アレイ100と、IRカットフィルタウェハ500と、撮像素子アレイ400とを積層し、構造体CSを作製する(ステップS31)。構造体CSは、接着剤によって固定される。
【0110】
光学要素アレイ100と、IRカットフィルタウェハ500と、撮像素子アレイ400とを接着した後、隣接する2つのイメージセンサチップ271の境界に沿って構造体CSをレーザ、回転のこぎり等で切断する(ステップS32)。これにより、カメラモジュール270が作製される。
【0111】
その後、カメラモジュール270は、イメージセンサチップ271の裏面のバンプ電極273e,273fを介して不図示の回路基板に実装される。具体的には、予めはんだが塗布(ポッティング)された回路基板の所定の実装位置にカメラモジュール70やその他の電子部品を載置する。カメラモジュール270やその他の電子部品を載置した回路基板をベルトコンベア等でリフロー炉(図示略)に移送し、当該回路基板をリフロー処理に供して260℃程度の温度で加熱する(ステップS33)。その結果、はんだが溶融してカメラモジュール270がその他の電子部品と一緒に回路基板に実装され撮像装置が形成される。
【0112】
以上説明したカメラモジュールの製造方法及びカメラモジュール270によれば、反射防止構造体51が第1及び第2光学面11d,12dと同じ材質で形成されるため、リフロー工程を経ても膜剥がれやクラックといった不良が発生せず、かつ均質な反射防止構造体51を有する光学要素アレイ100を用いることができる。これにより、鮮明な画像を得る等の高精度な光学性能を有するカメラモジュール70を提供することができる。また、撮像素子であるCCDやCMOS等を設けたイメージセンサチップ271とレンズユニット200とウェハの状態で積層した後にカメラモジュール270を分離することにより、1つ1つのイメージセンサチップ271とレンズユニット200とを組み合わせる工程が短縮できるため、コストの削減をすることができる。
【0113】
〔第3実施形態〕
以下、第3実施形態に係る光学要素アレイ等について説明する。なお、第3実施形態の光学要素アレイ等は第1実施形態の光学要素アレイ等を変形したものであり、特に説明しない部分は第1実施形態と同様であるものとする。
【0114】
図12に示すように、第3実施形態の光学要素アレイ310には、基板101が設けられていない。すなわち、光学要素アレイ310は、第1レンズアレイ層102と第2レンズアレイ層103とを有する。このように、成形される第1及び第2レンズアレイ層102,103自体が形状的に安定であり、成形も簡単に行える場合、基板101を用いなくてもよい。なお、図12において、便宜上、第1レンズアレイ層102と第2レンズアレイ層103との境界を点線で示しているが、第1及び第2レンズアレイ層102,103は一体的に成形することができる。
【0115】
以上、本実施形態に係る光学要素アレイの製造方法等について説明したが、本発明に係る光学要素アレイの製造方法等は上記のものには限られない。例えば、上記実施形態において、第1及び第2光学面11d,12dの形状、大きさは、用途や機能に応じて適宜変更することができる。
【0116】
また、上記実施形態において、光学要素アレイ100は、レンズ以外にも、ミラー、回折構造、照明部品、光伝送部品等の様々な目的で用いられる。
【0117】
また、上記実施形態において、光学要素アレイ100は、円盤状である必要はなく、楕円形等の各種輪郭を有するものとできる。例えば光学要素アレイ100を当初から四角板状に成形することで、ダイシング工程を簡略化することができる。
【0118】
また、上記実施形態において、光学要素アレイ100内に形成される第1及び第2レンズ素子11,12の数も、図示の4つに限らず、2つ以上の複数とすることができる。この際、第1及び第2レンズ素子11,12の配置は、ダイシングの都合から格子点上が望ましい。さらに、隣接する第1及び第2レンズ素子11,12の間隔も、図示のものに限らず、加工性等を考慮して適宜設定することができる。
【0119】
また、上記実施形態において、基板101の形状は、円形に限らず、例えば楕円形、多角形、ロール形状とすることができる。また、第1及び第2レンズアレイ層102,103は、基板101の面101b,101c上の全面ではなく、一部の面を覆うものでもよい。また、基板101の両面に第1及び第2レンズアレイ層102,103を設けず、片面のみに第1又は第2レンズアレイ層102,103を設けてもよい。
【0120】
また、上記実施形態において、第1及び第2レンズ素子11,12は、光学要素アレイ100において、ランダムに配置されていてもよい。また、1つの光学要素アレイ100において、形状や大きさの異なる第1及び第2レンズ素子11,12を配置してもよい。
【0121】
また、上記実施形態において、基板101の一方の面101b及び他方の面101cに樹脂を塗布したが、第1及び第2金型41,42の第1及び第2転写面41b,42bに樹脂を塗布してもよい。
【0122】
また、上記実施形態において、基板101の一方の面101b及び他方の面101cに予めカップリング剤を塗布してもよい。また、第1及び第2金型41,42の第1及び第2転写面41b,42bに予め離型剤を塗布してもよい。
【0123】
また、上記実施形態において、光学要素アレイ100の成形手法は、樹脂を成形金型40に流し込み、固化させるようなモールドを用いた手法以外にも様々な手法を用いることができる。例えば、熱融着、熱処理、蒸着、射出成形、塗布、堆積後のエッチング等を用いて光学要素アレイ100を作製してもよい。なお、第1及び第2光学面11d,12dの形状精度と成形時間を考慮すると、射出成形やモールドを用いる手法が好ましい。
【0124】
また、上記実施形態において、ガス供給部66,67は2つ設けられているが、1つでも3つ以上でもよい。
【0125】
また、上記実施形態において、マスクパターンMAの島IMはランダムに配置されていなくてもよい。
【0126】
また、上記実施形態において、レンズユニット200の取り付けには、接着剤の他に、はんだ、融着、組み立て、突き合わせ等が用いられる。光学要素アレイ100から分離されたレンズユニット200は、はんだ付けのような加熱工程においにも膜の剥離やクラックが起きない。そのため、レンズユニット200の取り付けにはんだ付けを用いれば、より強固で簡易な接着工程ができる。
【0127】
また、上記実施形態において、カメラモジュール70,270に組み込む複合レンズ10が1つのみの場合は、光学要素アレイ100の積層を行わなくてよい。
【0128】
また、上記実施形態において、光学要素アレイ100の製造工程の際に、第1及び第2レンズアレイ層102,103を先に成形してから離型したが、第1レンズアレイ層102の成形及び離型後に第2レンズアレイ層103の成形及び離型を行ってもよい。また、第1及び第2レンズアレイ層102,103に対して連続して各工程を行ってもよいし、第1レンズアレイ層102に対して各工程を行ってから第2レンズアレイ層103に対して各工程を行ってもよい。
【0129】
また、第2実施形態において、光学要素アレイ100等の積層、切断、接合の各工程の順序は自由に入れ替えることができる。例えば、光学要素アレイ100を切断後、シート等に張り付け、分離した光学要素アレイ100ごと仮止めした後、積層、接合を行ってもよい。この場合、光学要素アレイ100が予め切断されているため、構造体CSを精度よく容易に切断することができる。
【符号の説明】
【0130】
10,110…複合レンズ、 11,12,111,112…レンズ素子、 11a,12a…レンズ本体、 11b,12b…フランジ部、 11c,12c 連結部、 11d,12d…光学面、 11g,12g…フランジ面、 40…成形金型、 41,42…金型、 51…反射防止構造体、 52…保護層、 60…加工装置、 61…真空チャンバー、 62…ステージ、 63…イオンガン、 64…中和ガン、 65…蒸着装置、 66,67…ガス供給部、 68…ガス排出部、 69…制御部、 70,270…カメラモジュール、 71…本体モジュール、 72…レンズモジュール、 73…イメージセンサ、 100,310…光学要素アレイ、 101…基板、 102,103…レンズアレイ層、 200…レンズユニット、 271…イメージセンサチップ、 273…シリコンチップ、 278…IRカットフィルタ、 300…撮像装置、 400…撮像素子アレイ、 500…カットフィルタウェハ、 AX…軸、 BB…回路基板、 CS…構造体、 IM…島、 MA…マスクパターン、 OA…光軸、 SS…ステージ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学機能部を有する樹脂製の光学要素が複数形成された光学要素アレイの製造方法であって、
成形された前記光学要素アレイの前記光学機能部にマスクパターンを形成するパターニング工程と、
前記光学機能部にイオンビームによるエッチングにより反射防止構造体を設けるエッチング工程と、
を備えることを特徴とする光学要素アレイの製造方法。
【請求項2】
前記エッチング工程において、前記光学要素アレイの前記光学要素が配置されている部分で最大のエッチングレートと最小のエッチングレートとの差が前記最大のエッチングレートの10%以内であることを特徴とする請求項1に記載の光学要素アレイの製造方法。
【請求項3】
前記光学機能部の前記マスクパターンは微細な島状に形成されていることを特徴とする請求項1及び2のいずれか一項に記載の光学要素アレイの製造方法。
【請求項4】
前記エッチング工程において、不活性ガスと反応性ガスとを用いることを特徴とする請求項1から3までのいずれか一項に記載の光学要素アレイの製造方法。
【請求項5】
前記エッチング工程後、前記反射防止構造体上に当該反射防止構造体を保護する保護層を設けるコーティング工程を備えることを特徴とする請求項1から4までのいずれか一項に記載の光学要素アレイの製造方法。
【請求項6】
光学機能部を有する樹脂製の光学要素が複数形成された光学要素アレイであって、
前記光学機能部に、イオンビームを用いることにより形成された微細な凹凸形状の反射防止構造体を有することを特徴とする光学要素アレイ。
【請求項7】
前記反射防止構造体の前記凹凸形状の深さは、50nm以上1000nm以下であることを特徴とする請求項6に記載の光学要素アレイ。
【請求項8】
前記樹脂は、200℃以上の耐熱性を有することを特徴とする請求項6及び7のいずれか一項に記載の光学要素アレイ。
【請求項9】
前記反射防止構造体は、表面に保護層を有することを特徴とする請求項6から8までのいずれか一項に記載の光学要素アレイ。
【請求項10】
前記光学要素は、複数の光電変換素子を有する撮像素子自体に光を導くためのものであることを特徴とする請求項6から9までのいずれか一項に記載の光学要素アレイ。
【請求項11】
請求項6から10までのいずれか一項に記載の光学要素アレイから分離される光学要素を有することを特徴とするレンズユニット。
【請求項12】
請求項6から10までのいずれか一項に記載の光学要素アレイから分離される光学要素と撮像素子とを組み合わせて製造されることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項13】
請求項6から10までのいずれか一項に記載の光学要素アレイと、撮像素子が複数形成された撮像素子アレイとを組み合わせたものから取り出されることを特徴とするカメラモジュール。
【請求項14】
請求項6から10までのいずれか一項に記載の光学要素アレイから分離される光学要素と撮像素子とを組み合わせた状態でリフロー工程を経て製造されることを特徴とするカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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