説明

光学部材

【課題】低複屈折が極めて小さく、高耐熱性、透明性に優れた特定のポリカーボネート樹脂を成形材料として用いることによって、複屈折が低く、透明性に優れたレンズなどの光学部材を提供する事を課題とする。
【解決手段】4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンから誘導される構成単位(A)と、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、または4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールから誘導される構成単位(B)から実質的に構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が40〜90モル%であるポリカーボネート樹脂よりなる光学部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネート樹脂からなる光学部材及び複数の光学部材をホルダで一体化した光学ユニットに関する。詳しくは、複屈折が極めて小さく、且つ透明性に優れたポリカーボネート樹脂を使用することにより、複屈折や色収差に起因する解像度や画質低下の無い光学部材及び光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ポリメチルメタクリレート樹脂は良好な透明性と低い複屈折特性を有していることから、レンズや導光板などの光学材料として数多く使用されている。しかしながら、近年電子機器の高密度化や安全性の観点から樹脂への耐熱性向上の要求が高まる中で、ポリメチルメタクリレート樹脂は充分な耐熱性を有しているとは言い難い。一方、ビスフェノールAにカーボネート前駆物質を反応させて得られるポリカーボネート樹脂は透明性、耐熱性、機械的特性、寸法安定性が優れていることから、光学材料をはじめ様々な用途へ利用されている。しかしながら、光学的精度が要求されるレンズやプリズム,導光板,光導波路といった光学部材に要求される特性に対してポリカーボネート樹脂は、分子鎖の配向により生じる複屈折が大きく、また成形時の残留応力によって生じる光学歪みも大きいため、光学素子への展開が困難であった。
【0003】
このようなPC−Aの複屈折を改良する方法としてスチレン系樹脂とグラフト共重合する方法が提案されている。(例えば特許文献1、2参照)しかしながら、PC−Aとスチレン系樹脂とのグラフト共重合体は、機械強度が低く、極めて脆く、また熱安定性が悪い為に成形が困難であるため、機械強度をあげるためには分子量を高くする必要があるが、分子量を高くすると成形性や表面精度が悪化し、実用的なレンズは得られない。
【0004】
この点を改良したものとしてビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン等の芳香族ジヒドロキシ成分からなるポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−スチレン共重合体を混合する方法が提案されている。(例えば、特許文献3参照)しかしながら、この樹脂組成物は透明性や複屈折は改善されるものの、熱安定性が低く、成形が非常に困難であるという欠点があった。
【0005】
また、複数の異なる素材で形成されたレンズによって構成される光学ユニットとして、高アッベ数の脂環式ポリオレフィン樹脂からなるプラスチックレンズと低アッベ数のポリカーボネート樹脂からなるプラスチックレンズを組み合わせることで色収差を補正することが報告されている。(例えば、特許文献4参照)
このように、光学ユニットに使用される場合、低アッベ数を示すポリカーボネート樹脂の耐熱性、複屈折の改良が求められている。
【0006】
【特許文献1】特開昭61−19630号公報
【特許文献2】特開昭63−15822号公報
【特許文献3】特開平5−27101号公報
【特許文献4】特開2005−309109号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、色収差を補正し、高い解像度を実現できる光学部材及び複数の光学部材をホルダで一体化した光学ユニットを提供することである。そして、本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、低複屈折、且つ高耐熱性を示すポリカーボネート樹脂からなる光学部材及び少なくとも1以上の該光学部材を用いてこれらをホルダで一体化した光学ユニットが、複屈折や色収差に起因する解像度や画質低下の無い色収差・解像度に優れることを見出し、本発明に到達した。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決する為に、本発明によれば、
(1)(A)下記式[1]
【化1】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1〜9の炭化水素基、またはハロゲン原子である。)
で表される構成単位(A)と
(B)下記式[2]
【化2】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。Wは単結合、炭素原子数1〜15のアルキレン基、または炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよいアルキレン基、または酸素原子を表す。)
で表される構成単位(B)から構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が40〜90モル%からなるポリカーボネート樹脂から構成されることを特徴とする光学部材。
(2)全構成単位における構成単位(A)の割合が50〜80モル%からなる前項1記載の光学部材。
(3)構成単位(A)が4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンから誘導される構成単位である前項1または請求項2のいずれか1項に記載の光学部材。
(4)構成単位(B)が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、および4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物から誘導された構成単位である前項1〜3のいずれか1項に記載の光学部材。
(5)該光学部材の表面全面に反射防止膜及び防湿皮膜を有する前項1〜4のいずれか1項に記載の光学部材。
(6)前記反射防止膜及び防湿皮膜がスパッタリングによって形成され、且つシリコン系材質を含む膜である前項1〜5のいずれか1項に記載の光学部材。
(7)該光学部材を構成するポリカーボネート樹脂の波長589nm(Na−D線)における屈折率が1.600〜1.650であり、且つアッベ数が20〜35であることを特徴とする前項1〜6のいずれか1項に記載の光学部材。
(8)前記光学部材が射出成形法あるいは射出圧縮成形法により形成された前項1〜7のいずれか1項に記載の光学部材。
(9)該光学部材が、ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズからなる群より選ばれた少なくとも一種の光路変換部品、プリズム、光ファイバー、リフローハンダ付け部品、プラスチックミラー、導光板、または光導波路である前項1〜8のいずれか1項に記載の光学部材。
(10)前項1〜9のいずれか1項に記載の光学部材を少なくとも1以上含み、該1以上の光学部材をホルダで一体化した光学ユニット。
が提供される。
【0009】
本発明を以下に詳細に説明する。
複数のレンズをホルダで一体化した光学ユニットは、小型軽量化および/またはコストダウンが求められており、プラスチックレンズが好適に使用されている。特に、光学特性が良好な脂環式ポリオレフィン樹脂が用いられている。但し、脂環式ポリオレフィン樹脂からなるプラスチックレンズを用いて光学ユニットを形成する場合、アッベ数が大きく異なる素材からなるレンズと組み合わせて色収差を補正する光学設計を行う必要がある。脂環式ポリオレフィン樹脂は、アッベ数が45〜60程度であるから、アッベ数の低いポリカーボネート樹脂からなるレンズが好適に使用することができる。ポリカーボネート樹脂からなるプラスチックレンズは、一般的に射出成形および/または射出圧縮成形することによって作製される。この際に、強いせん断力の作用によりポリカーボネート樹脂の分子鎖が配向することによって生じる配向複屈折と熱応力によって生じる応力複屈折が発生する。本発明者が複屈折について詳細に検討したところ、上記式[1]で表される構成単位を使用することにより、従来のPC−Aよりも上記複屈折を低くすることが可能であることが判明した。
【0010】
即ち、本発明者の検討によれば、上記式[1]で表される二価フェノールから誘導される構成単位(A)と、 [2]で表される二価フェノールから誘導される構成単位(B)とを使用することにより、従来のPC−Aよりも低複屈折、高耐熱性を同時に発現できることが判明した。
【0011】
以上の知見から、全構成単位における構成単位(A)の割合が40〜90モル%からなるポリカーボネート樹脂が上記課題を満足する、即ち、低複屈折および高耐熱性を併せ持つポリカーボネート樹脂であること、並びに該ポリカーボネート樹脂は、アッベ数が低いことからアッベ数の異なる脂環式ポリオレフィン樹脂からなるプラスチックレンズと組み合わせることが可能であり、複数のプラスチックレンズをホルダで一体化した光学ユニットとして、解像度が高く、色収差が小さいことが判明した。
【0012】
構成単位(A)としては、下記式[1]においてR〜Rは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1〜9の炭化水素基、またはハロゲン原子である。更に好ましくは、同一もしくは異なり、水素原子、炭素原子数1〜3のアルキル基またはフェニル基である化合物が好ましい。かかる好ましい構成単位(A)の具体例としては、例えば4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン等から誘導されたカーボネート結合を有する構成単位が挙げられる。
【0013】
【化3】

【0014】
構成単位(B)としては、下記式[2]においてR〜Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。Wは単結合、炭素原子数1〜15のアルキレン基、または炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよいアルキレン基、または酸素原子を表す。かかる好ましい構成単位(B)の具体例としては、例えば2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、1,1−ビス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)デカン、及び1,1−ビス(2,3−ジメチルー4−ヒドロキシフェニル)デカン等が挙げられる。が挙げられる。
【0015】
【化4】

【0016】
その中でも特に、構成単位(A)成分は4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンから誘導されたカーボネート結合を有する構成単位であることが好ましく、構成単位(B)は1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、または4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールから誘導されたカーボネート結合を有する構成単位であることが好ましい。
【0017】
また、全構成単位における構成単位(A)の割合は40〜90モル%が好ましく、50〜80モル%が更に好ましくい。構成単位(A)のモル比が40モル%未満の場合、複屈折が大きくなり、且つガラス転移温度が低くなり耐熱性が劣るため好ましくない。
【0018】
<ポリカーボネート樹脂の製造方法>
上記ポリカーボネート樹脂は構成単位(A)を誘導する二価フェノール及び構成単位(B)を誘導する二価フェノールをカーボネート前駆体と溶液重合法または溶融重合法によって反応させることよって製造することができる。より好ましいポリカーボネート樹脂は、溶液重合法、即ち界面重合法により製造されたものである。かかる二種類の二価フェノールはカーボネート前駆体と同時に反応させても、種類毎に順次反応させてよい。
【0019】
また他の二価フェノールから誘導されるカーボネート結合構成単位を、本発明の目的および特性を損なわない限り、10モル%以下の割合、好ましくは5モル%以下の割合で共重合させてもよい。かかる他の二価フェノールの代表的な例としては、ハイドロキノン、レゾルシノール、4,4’−ジヒドロキシジフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール−A)、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−メチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチル)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(3−イソプロピル−4−ヒドロキシ)フェニル}プロパン、2,2−ビス{(4−ヒドロキシ−3−フェニル)フェニル}プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−3,3−ジメチルブタン、2,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−イソプロピルシクロヘキサン、1,1−(4−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−o−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−m−ジイソプロピルベンゼン、1,1’−ビス−(4−ヒドロキシフェニル)−p−ジイソプロピルベンゼン、1,3−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−5,7−ジメチルアダマンタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、4,4’−ジヒドロキシジフェニルケトン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエステル、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2−メチルプロパン、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン等が挙げられる、これらは単独で又は2種以上を混合して使用できる。
【0020】
カーボネート前駆体としてはカルボニルハライド、カーボネートエステルまたはハロホルメート等が挙げられ、具体的にはホスゲン、ジフェニルカーボネートまたは二価フェノールのジハロホルメート等が挙げられるが、ホスゲンまたはジフェニルカーボネートが好ましい。上記二価フェノールとカーボネート前駆体を界面重合法または溶融重合法によって反応させてポリカーボネート樹脂を製造するに当っては、必要に応じて触媒、末端停止剤、及び二価フェノールが酸化するのを防止するための酸化防止剤等を使用してもよい。
【0021】
界面重合法による反応は、通常二価フェノールとホスゲンとの反応であり、酸結合剤および有機溶媒の存在下に反応させる。酸結合剤としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属水酸化物またはピリジン等のアミン化合物が用いられる。有機溶媒としては、例えば塩化メチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素が用いられる。また、反応促進のために例えばトリエチルアミン、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルホスホニウムブロマイド等の第三級アミン、第四級アンモニウム化合物、第四級ホスホニウム化合物等の触媒を用いることもできる。その際、反応温度は通常0〜40℃、反応時間は10分〜5時間程度、反応中のpHは9以上に保つのが好ましい。
【0022】
<末端停止剤>
また、かかる重合反応において、通常末端停止剤が使用される。かかる末端停止剤として単官能フェノール類を使用することができる。単官能フェノール類は末端停止剤として分子量調節のために一般的に使用され、また得られたポリカーボネート樹脂は、末端が単官能フェノール類に基づく基によって封鎖されているので、そうでないものと比べて熱安定性に優れている。かかる単官能フェノール類としては、ポリカーボネート樹脂の末端停止剤として使用されるものであればよく、一般にはフェノール或いは低級アルキル置換フェノールであって、下記一般式で表される単官能フェノール類を示すことができる。
【0023】
【化5】

[式中、Aは水素原子または炭素数1〜9の直鎖または分岐のアルキル基あるいはアリールアルキル基を示し、rは1〜5、好ましくは1〜3の整数を示す。]
【0024】
前記単官能フェノール類の具体例としては、例えばフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−クミルフェノールおよびイソオクチルフェノールが挙げられる。
【0025】
また、他の単官能フェノール類としては、長鎖のアルキル基或いは脂肪族エステル基を置換基として有するフェノール類または安息香酸クロライド類、もしくは長鎖のアルキルカルボン酸クロライド類を使用することができ、これらを用いて芳香族ポリカーボネート樹脂の末端を封鎖すると、これらは末端停止剤または分子量調節剤として機能するのみならず、樹脂の溶融流動性が改良され、成形加工が容易となるばかりでなく、基板としての物性も改良される。特に樹脂の吸水率を低くする効果があり、好ましく使用される。これらは下記一般式[I−a]〜[I−h]で表される。
【0026】
【化6】

【化7】

【化8】

【化9】

【化10】

【化11】

【化12】

【化13】

【0027】
[各式中、Xは−R−O−、−R−CO−O−または−R−O−CO−である、ここでRは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Tは単結合または上記Xと同様の結合を示し、nは10〜50の整数を示す。
Qはハロゲン原子または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基を示し、pは0〜4の整数を示し、Yは炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Wは水素原子、−CO−R13、−CO−O−R14またはR15である、ここでR13、R14およびR15は、それぞれ炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。
lは4〜20、好ましくは5〜10の整数を示し、mは1〜100、好ましくは3〜60、特に好ましくは4〜50の整数を示し、Zは単結合または炭素数1〜10、好ましくは1〜5の二価の脂肪族炭化水素基を示し、Wは水素原子、炭素数1〜10、好ましくは1〜5の一価の脂肪族炭化水素基、炭素数4〜8、好ましくは5〜6の一価の脂環族炭化水素基または炭素数6〜15、好ましくは6〜12の一価の芳香族炭化水素基を示す。]
【0028】
これらのうち好ましいのは、[I−a]および[I−b]の置換フェノール類である。この[I−a]の置換フェノール類としては、nが10〜30、特に10〜26のものが好ましく、その具体例としては、例えばデシルフェノール、ドデシルフェノール、テトラデシルフェノール、ヘキサデシルフェノール、オクタデシルフェノール、エイコシルフェノール、ドコシルフェノールおよびトリアコンチルフェノールなどを挙げることができる。
【0029】
また、[I−b]の置換フェノール類としてはXが−R−CO−O−であり、Rが単結合である化合物が適当であり、nが10〜30、特に10〜26のものが好適であって、その具体例としては、例えばヒドロキシ安息香酸デシル、ヒドロキシ安息香酸ドデシル、ヒドロキシ安息香酸テトラデシル、ヒドロキシ安息香酸ヘキサデシル、ヒドロキシ安息香酸エイコシル、ヒドロキシ安息香酸ドコシルおよびヒドロキシ安息香酸トリアコンチルが挙げられる。
【0030】
前記一般式[I−a]〜[I−g]で示される置換フェノール類または置換安息香酸クロライドにおいて置換基の位置は、パラ位またはオルト位が一般的に好ましく、その両者の混合物が好ましい。
【0031】
前記単官能フェノール類は、得られた芳香族ポリカーボネート樹脂の全末端に対して少なくとも5モル%、好ましくは少なくとも10モル%末端に導入されることが望ましく、また単官能フェノール類は単独でもしくは2種以上混合して使用してもよい。
【0032】
溶融重合法による反応は、通常二価フェノールとカーボネートエステルとのエステル交換反応が代表的であり、不活性ガスの存在下に二価フェノールとカーボネートエステルとを加熱しながら混合して、生成するアルコールまたはフェノールを留出させる方法により行われる。反応温度は生成するアルコールまたはフェノールの沸点等により異なるが、通常120〜350℃の範囲である。反応後期には系を1,300Pa〜13Pa(10〜0.1Torr)程度に減圧して生成するアルコールまたはフェノールの留出を容易にさせる。反応時間は通常1〜4時間程度である。
【0033】
カーボネートエステルとしては、置換基を有していてもよい炭素原子数6〜10のアリール基、アラルキル基あるいは炭素原子数1〜4のアルキル基などのエステルが挙げられる。具体的にはジフェニルカーボネート、ジトリルカーボネート、ビス(クロロフェニル)カーボネート、m−クレジルカーボネート、ジナフチルカーボネート、ビス(ジフェニル)カーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネートなどが挙げられ、なかでもジフェニルカーボネートが好ましい。
【0034】
また、重合速度を速めるために重合触媒を用いることができる。重合触媒としては、例えば水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の水酸化物、ホウ素やアルミニウムの水酸化物、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、第4級アンモニウム塩、アルカリ金属やアルカリ土類金属のアルコキシド、アルカリ金属やアルカリ土類金属の有機酸塩、亜鉛化合物、ホウ素化合物、ケイ素化合物、ゲルマニウム化合物、有機錫化合物、鉛化合物、アンチモン化合物、マンガン化合物、チタン化合物、ジルコニウム化合物などの通常エステル化反応やエステル交換反応に使用される触媒があげられる。触媒は単独で使用してもよいし、2種以上組み合わせ使用してもよい。これらの重合触媒の使用量は、原料の二価フェノール1モルに対し、好ましくは1×10−9〜1×10−5当量、より好ましくは1×10−8〜5×10−6当量の範囲で選ばれる。
【0035】
また、かかる重合反応において、フェノール性の末端基を減少するために、重縮反応の後期あるいは終了後に例えば2−クロロフェニルフェニルカーボネート、2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートおよび2−エトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートを加えることが好ましく、特に2−メトキシカルボニルフェニルフェニルカーボネートが好ましく使用される。
【0036】
さらに溶融エステル交換法では触媒の活性を中和する失活剤を用いることが好ましい。かかる失活剤の量としては、残存する触媒1モルに対して0.5〜50モルの割合で用いるのが好ましい。また重合後の芳香族ポリカーボネート樹脂に対し、0.01〜500ppmの割合、より好ましくは0.01〜300ppm、特に好ましくは0.01〜100ppmの割合で使用する。失活剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸テトラブチルホスホニウム塩などのホスホニウム塩、テトラエチルアンモニウムドデシルベンジルサルフェートなどのアンモニウム塩などが好ましく挙げられる。
前記以外の反応形式の詳細についても、各種の文献および特許公報などで良く知られている。
【0037】
<樹脂ペレットの製造法>
本発明のポリカーボネート樹脂は、その使用目的がレンズなどの光学部材の製造であることを考えると、従来公知の常法(溶液重合法、溶融重合法など)により製造した後、溶液状態において濾過処理を行い未反応成分等の不純物や異物を除去することが好ましい。さらに、射出成形(射出圧縮成形を含む)に供するためのペレット状ポリカーボネート樹脂を得る押出工程(ペレット化工程)においても、溶融状態の時に、焼結金属フィルターを通すなどして異物を除去することが望ましい。該フィルターとしては濾過精度10μm以下のものが好ましく使用される。いずれにしても射出成形(射出圧縮成形を含む)前の原料樹脂は異物、不純物、溶媒などの含有量を極力低くしておくことが必要である。
【0038】
更にかかる低異物のペレットを製造するためには、上記以外にも押出機やペレタイザー等の製造装置を清浄な空気の雰囲気下に設置すること、冷却バス用の冷却水を異物量の少ないものにすること、並びに原料の供給ホッパー、供給流路、および得られたペレットの貯蔵タンク等をより清浄な空気等で満たすことが好ましい。例えば、特開平11−21357号公報に提案されているのと同様な方法をとることが適当である。また押出機内に窒素ガスに代表される不活性ガスを流し込み、酸素を遮蔽する方法も、色相の改善手段として好適に利用できる。
【0039】
更にかかるペレットの製造においては、光学成形材料用ポリカーボネート樹脂において既に提案されている様々な方法を用いて、ペレットの形状分布の狭小化、ミスカット物の更なる低減、運送または輸送時に発生する微小粉の更なる低減、並びにストランドやペレット内部に発生する気泡(真空気泡)の低減を適宜行うことができる。これらの処方により成形のハイサイクル化、およびシルバーの如き不良発生割合の低減を更に行うことができる。またペレットの形状は、円柱、角柱、および球状など一般的な形状を取り得るが、より好適には円柱(楕円柱を含む)である。かかる円柱の直径は好ましくは1〜5mm、より好ましくは1.5〜4mm、さらに好ましくは2〜3.3mmである。楕円柱において長径に対する短径の割合は、好ましくは60%以上、より好ましくは65%以上である。一方、円柱の長さは好ましくは1〜30mm、より好ましくは2〜5mm、さらに好ましくは2.5〜3.5mmである。
【0040】
<燐系安定剤>
本発明において、前記ポリカーボネート樹脂に、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物が、その樹脂に対して0.0001〜0.05重量%の割合で配合することができる。このリン化合物を配合することにより、かかる芳香族ポリカーボネート樹脂の熱安定性が向上し、成形時における分子量の低下や色相の悪化が防止される。
【0041】
かかるリン化合物としては、リン酸、亜リン酸、ホスホン酸、亜ホスホン酸およびこれらのエステルよりなる群から選択される少なくとも1種のリン化合物であり、好ましくは下記一般式(1)〜(4)よりなる群から選択された少なくとも1種のリン化合物である。
【0042】
【化14】

【化15】

【化16】

【化17】

【0043】
ここで、R〜R12は、それぞれ独立して、水素原子、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ドデシル、ヘキサデシル、オクタデシルなどの炭素数1〜20のアルキル基、フェニル、トリル、ナフチルなどの炭素数6〜15のアリール基またはベンジル、フェネチルなどの炭素数7〜18のアラルキル基を表している。また1つの化合物中に2つのアルキル基が存在する場合は、その2つのアルキル基は互いに結合して環を形成していてもよい。
【0044】
上記(1)式で示されるリン化合物としては、例えばトリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ホスファイト、トリデシルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジデシルモノフェニルホスファイト、ジオクチルモノフェニルホスファイト、ジイソプロピルモノフェニルホスファイト、モノブチルジフェニルホスファイト、モノデシルジフェニルホスファイト、モノオクチルジフェニルホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイトなどが挙げられ、上記(2)式で示されるリン化合物としては、例えばトリブチルホスフェート、トリメチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリエチルホスフェート、ジフェニルモノオルソキセニルホスフェート、ジブチルホスフェート、ジオクチルホスフェート、ジイソプロピルホスフェートなどが挙げられ、上記(3)式で示されるリン化合物としては、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4−ジフェニレンホスホナイトなどが挙げられ、また上記(4)式で示される化合物としては、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ベンゼンホスホン酸ジエチル、ベンゼンホスホン酸ジプロピルなどが挙げられる。なかでも、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、トリエチルホスフェート、ベンゼンホスホン酸ジメチル、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが好ましく使用される。
【0045】
かかるリン化合物の配合量は、該ポリカーボネート樹脂に対して0.0001〜0.05重量%であり、0.0005〜0.02重量%が好ましく、0.001〜0.01重量%が特に好ましい。配合量が0.0001重量%未満では上記効果が得られ難く、0.05重量%を超えると、逆に該ポリカーボネート樹脂の熱安定性に悪影響を与え、また耐加水分解性も低下するので好ましくない。
【0046】
<酸化防止剤>
本発明のポリカーボネート樹脂には、酸化防止の目的で通常知られた酸化防止剤を添加することができる。その例としてはフェノール系酸化防止剤やラクトン系酸化防止剤を示すことができる。フェノール系酸化防止剤としては、具体的には例えば、トリエチレングリコール−ビス(3−(3−tert−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、1,6−ヘキサンジオール−ビス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、ペンタエリスリトール−テトラキス(3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート)、オクタデシル−3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、N,N−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマイド)、3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−ベンジルホスホネート−ジエチルエステル、トリス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌレート、3,9−ビス{1,1−ジメチル−2−[β−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカンなどが挙げられる。またラクトン系酸化防止剤としては、具体的には例えば、5,7−ジ−t−ブチル−3−(3,4−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン、5,7−ジ−t−ブチル−3−(2,3−ジメチルフェニル)−3H−ベンゾフラン−2−オン等が挙げられる。これら酸化防止剤の好ましい添加量の範囲はポリカーボネート樹脂に対して、0.0001〜0.05重量%である。
【0047】
<離型剤>
さらに本発明のポリカーボネート樹脂には、必要に応じて一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを加えることもできる。この一価または多価アルコールの高級脂肪酸エステルを配合することにより、前記ポリカーボネート樹脂の成形時の金型からの離型性が改良され、光学部品の成形においては、離型荷重が少なく離型不良による成形品の変形を防止できる。また、ポリカーボネート樹脂の溶融流動性が改善される利点もある。
【0048】
かかる高級脂肪酸エステルとしては、炭素原子数1〜20の一価または多価アルコールと炭素原子数10〜30の飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルであるのが好ましい。
【0049】
また、かかる一価または多価アルコールと飽和脂肪酸との部分エステルまたは全エステルとしては、ステアリン酸モノグリセリド、ステアリン酸モノソルビテート、ベヘニン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、プロピレングリコールモノステアレート、ステアリルステアレート、パルミチルパルミテート、ブチルステアレート、メチルラウレート、イソプロピルパルミテート、2−エチルヘキシルステアレートなどが挙げられるが、なかでもステアリン酸モノグリセリド、ペンタエリスリトールテトラステアレートが好ましく用いられる。
【0050】
かかるアルコールと高級脂肪酸とのエステルの配合量は、該ポリカーボネート樹脂に対して0.01〜2重量%であり、0.015〜0.5重量%が好ましく、0.02〜0.2重量%がより好ましい。配合量が0.01重量%未満では上記効果が得られず、2重量%を越えると成形時における金型表面の汚れの原因ともなる。
【0051】
本発明のポリカーボネート樹脂には、さらに光安定剤、着色剤、帯電防止剤、滑剤などの添加剤を、耐熱性や透明性を損なわない範囲で加えることができる。本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂を上記添加剤を混合するには、任意の方法で実施することができる。例えばタンブラー、V型ブレンダー、ナウターミキサー、バンバリーミキサー、混練ロール、押出機などで混合する方法が適宜用いられる。
【0052】
<比粘度>
本発明のポリカーボネート樹脂はそのポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し、20℃で測定した比粘度が0.17〜0.55の範囲のものが好ましく、0.21〜0.45の範囲のものがより好ましい。比粘度が0.17未満では成形品が脆くなり、0.55より高くなると溶融粘度および溶液粘度が高くなり、取扱いが困難になるので好ましくない。
【0053】
<ガラス転移温度>
本発明の第1のレンズとして用いられるポリカーボネート樹脂は、昇温速度20℃/minにて測定したガラス転移温度(Tg)が120℃以上200℃未満であることが好ましい。さらには130℃以上195℃未満であることが好ましい。Tgが120℃未満では、該樹脂を用いて形成した光学部品の使用する用途によっては耐熱性が十分でなく、一方Tgが250℃以上では溶融粘度が高くなり、成形性が劣るため好ましくない。
【0054】
<光弾性係数>
本発明のポリカーボネート樹脂は、光弾性定数が50×1012Pa−1以下であることが好ましい。さらには45×1012 Pa−1以下であることが好ましい。光弾性定数が50×1012Pa−1より大きい場合、成形の際に生じる成形歪みが大きくなり、光学部材として使用することが困難となるため好ましくない。
【0055】
<吸水率>
本発明のポリカーボネート樹脂は、ASTM D−570に従い、φ45mm成形プレートを水中浸漬し重量変化率(重量%)により求められた24時間後における吸水率が0.25%以下であることが好ましい。0.25%より大きい場合、吸水によるレンズの寸法変化により画像低下が生じる為、好ましくない。
【0056】
<アッベ数>
本発明のポリカーボネート共重合体は、JIS−K7142に準拠して、光源に波長選択フィルターを有するアッベ屈折計を用い、波長をC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に変えて屈折率を測定し、得られた屈折率を用いて、測定した589nmにおける屈折率が1.600〜1.650であり、アッベ数が20〜35であることが好ましい。
【0057】
<光学部材>
本発明における光学部材とは、光学機器用の部品となる光学素子であるピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズからなる群より選ばれた少なくとも一種の光路変換部品、プリズム、光ファイバー、リフローハンダ付け部品、プラスチックミラー、導光板,または光導波路などを指す。
【0058】
具体的には、レンズとしては二つの球面もしくは非球面の屈折表面を持ち、光を透過させうるものを指し、これを満たすものであれば特に限定されるものではないが、例えば、球面レンズ,非球面レンズ,ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズ等の種類が挙げられる。また、プリズムとしては、少なくとも平行でなく、ある角度で構成された研磨面を二つ以上持つ成形体を指し、これを満たすものであれば特に限定されるものではないが、例を挙げるとすれば、直角プリズム,ポロプリズム,アミシプリズム,五角プリズム,ドーブレッスプリズム,ヘンゾルトプリズム,スプレングープリズム,メーラプリズム,ウォラストンプリズム,傾斜プリズム,アッベプリズムなどが挙げられる。
【0059】
前記の光学部材は、光学部材の表面全面に反射防止膜及び/又は防湿皮膜を有する場合がある。そして、この反射防止膜及び/又は防湿皮膜は、主にスパッタリングによって形成される。また、これらの膜は、チタン系やシリコン系材質を含む膜が挙げられる。例えば、酸化チタンや酸化ケイ素等が該当する。そして、これらの膜は、少なくとも1層以上であって2層から数十層形成される。たとえば、酸化チタン及び酸化ケイ素の膜が交互に形成されることが好ましい。
【0060】
<光学部材の成形方法>
本発明におけるポリカーボネート樹脂から形成される光学ユニットを構成する光学部材は、例えば射出成形法、圧縮成形法、射出圧縮成形法、押出成形法、溶液キャスティング法など任意の方法により成形される。成形の容易性やコストの面から特には射出成形法あるいは射出圧縮成形法により成形されることが好ましい。
【0061】
<光学部材の光線透過率>
本発明の光学ユニットを構成する光学部材は、成形板の550nmにおける透過率が80%以上であることが好ましい。更には85%以上であることが好ましい。透過率が80%より低いと、光学部材として使用することは困難である。
【0062】
<光学部材の複屈折>
また、本発明の光学ユニットを構成する光学部材は、成形板の550nmにおけるリターデーションをRe550(nm)、透過率およびリターデーションの測定部位の厚みをd(mm)としたとき、
Re550(nm)/d(mm)≦30を満たしていることが好ましい。一般的なビスフェノールAタイプのポリカーボネート樹脂からなる光学素子は通常リターデーションが大きく、成形条件によりその値を低減することは可能である場合もあるが、通常その条件幅は非常に小さく、したがって成形が非常に難しくなり、多くの場合上記式を満たすことができない。本発明のポリカーボネート樹脂は、樹脂の配向により生じるリターデーションが小さく、また成形歪みも小さいため、成形条件を厳密に設定しなくても良好な光学素子を得ることができる。
【0063】
<光学ユニット>
本発明の光学ユニットは、少なくとも1以上の光学部材をホルダで一体化した構成である。例えば、2枚の光学部材から構成される光学ユニットにおいては、本発明のポリカーボネート樹脂からなるレンズを第1のレンズとして用いる場合、第2のレンズとして、アッベ数が異なり、且つ複屈折の低いレンズを用いることにより、色収差を補正する効果が得られる。用いられる材料として、アッベ数が45〜60であることが好ましい。また、複屈折は、厚さ2.5mmの成形板の垂直入射による位相差が100nm以下であることが好ましい。このような素材として、脂環式ポリオレフィン樹脂、ポリメチルメタクリレート、オレフィン・マレイミド共重合体、ポリ(1,3−シクロヘキサンジエン)が好ましく、脂環式ポリオレフィン樹脂がより好ましい。また、プラスチックレンズ以外にもモールドガラスを使用してもよい。
【0064】
<光学ユニットの製造法>
本発明の光学ユニットは、例えば、射出成形時の配向による複屈折を相殺するために、複数のレンズの組合せ方向を設定した状態で筒状のホルダへ組みこむ方法がある。また、レンズをホルダへ組み込む際に新たな応力、例えば接着固定であれば接着剤の硬化収縮に伴う応力、またははめ込み固定であればホルダによる締め付け応力といったものが加わり、この応力に基づいて新たな複屈折が生じるため、第1のレンズが配置されるホルダと第2のレンズが配置されるホルダを別々に形成し、一方のホルダを他方のホルダに当接させ、次いでホルダの一方の光軸を回転軸として回転させ、配向複屈折を相殺させた後に両ホルダを接続固定する方法も利用できる。
【発明の効果】
【0065】
このように本発明における耐熱性および熱安定性が良好で、複屈折が極めて小さく、且つ透明性に優れたポリカーボネート樹脂により形成された光学部材及び光学ユニットは、良好な光学特性を有しているため、デジタルスチルカメラ等のカメラ,液晶ディスプレイ,液晶プロジェクター,複写機,光ディスク関連機器などの電気電子機器の光学ユニット、および光通信機器中の分波器や合波器などの光学ユニットとして好適に使用できる。
【実施例】
【0066】
以下、実施例を挙げて詳細に説明するが、本発明はその趣旨を超えない限り、何らこれに限定されるものではない。実施例及び比較例において「部」は重量部である。なお評価は下記の方法に従った。
【0067】
(1)比粘度
ポリマー0.7gを100mlの塩化メチレンに溶解し20℃の温度で測定した。
【0068】
(2)ガラス転移点(Tg)
ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)社製2910型DSCを使用し、昇温速度20℃/minにて測定した。
【0069】
(3)吸水率
ポリカーボネート樹脂4.0gを45mmφの金型に投入し、温度280℃の圧縮成形機に1分保持した後、加圧した状態で室温まで冷却し、45mmφ圧縮成形プレートを得た。その後、ASTM D−570に従い、φ45mm圧縮成形プレートを24時間、温度23℃の水中に浸漬し前後の重量変化率(重量%)により吸水率を測定した。
【0070】
(4)光弾性定数
塩化メチレン100mlにポリカーボネート樹脂組成物ペレット5gを溶解させ、その溶液を平坦なガラス板上にキャストして一晩放置し、キャストフィルムを作成した。該フィルムを60℃、2時間乾燥させた後、長さ50mm、幅20mm、平均厚み150μmのフィルムを作製し、日本分光(株)製エリプソメータM−220に光弾性ステージをセットして測定を行った。測定条件は、フィルムに1N以下の荷重をかけ、そのときの位相差を測定した。測定は5点行い、下記算出式により、光弾性係数を算出した。
Re=F×c×d
Re:位相差[nm]、F:応力[N/m]、c:光弾性定数[Pa−1]、
d:厚み[nm]
【0071】
(5)アッベ数
上記作成したキャストフィルムを用い、JIS−K7142に準拠して、光源に波長選択フィルターを有するアッベ屈折計を用い、波長をC線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)に変えて屈折率を測定し、得られた屈折率を用いて、アッベ数を測定した。
【0072】
(6)光線透過率(T550
日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて厚さ1.0mm、幅1.0mm、長さ2.0mmの成形片を射出成形した。作製した成形体の550nmにおける透過率を、日立製作所(株)製U−4001型分光光度計により測定した。
【0073】
(7)位相差(Re550
上記作成した試験片及び成形体の550nmにおける垂直入射複屈折を、日本分光(株)製M−220型エリプソメータにて測定した。
【0074】
(8)平凸レンズの複屈折評価
日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて表2に示す成形条件にて外径2.0mm、中心厚0.80mm、焦点距離2.0mmの平凸レンズを射出成形した。成形できたものについては、平凸レンズの前後に位相差を90°ずらした偏光板を配置し、一方の偏光板側から白色光を入射し、平凸レンズに現れる干渉色を目視にて観察することにより、複屈折の程度を評価した。評価は、◎:干渉縞模様なし、○:干渉縞一本、×:干渉縞二本以上、として行った。成形結果および評価結果を表3に示す。
【0075】
(9)レンズユニットの作成
図1に示す光学ユニットを、第1のレンズ(1)にポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。ホルダ(3)を分割し、分割したホルダ(4)、(5)毎にプラスチックレンズ(1)、(2)を組み込み、(4)と(5)を接合する構造とした。光軸(6)を中心軸として回転させることで2つのプラスチックレンズ(1)、(2)の組合せ、光学特性を最適化した後に、接着剤で接続固定し一体化した。得られたレンズユニットの仕様は、焦点距離5.8mm、F値2.0、受光サイズ直径7.2mm、レンズ全長15.4mm、レンズ直径14mmである。
【0076】
(10)レンズユニットの評価
図2に示す評価システムでレンズユニット(7)を1/3インチC−MOSセンサ(8)に組み込み、ITE規格の解像度チャート(11)を使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データ(10)をコンピュータ(9)で画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行った。(表4)
○:差分画像がほとんどない。
△:わずかに差分画像が認められる。
×:差分画像がはっきりと認められる。
【0077】
[実施例1]
温度計、撹拌機および還流冷却器の付いた反応器に、48%水酸化ナトリウム水溶液5553部およびイオン交換水24242部を仕込み、これに4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン5303部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール582部およびハイドロサルファイト11.76部を溶解した後、塩化メチレン18602部を加え、撹拌下、15〜25℃でホスゲン2000部を約60分かけて吹き込んだ。ホスゲンの吹き込み終了後、48%水酸化ナトリウム水溶液694部およびp−tert−ブチルフェノール101.01部を加え、撹拌を再開、乳化後トリエチルアミン8.02部を加え、さらに28〜33℃で1時間撹拌して反応を終了した。反応終了後生成物を塩化メチレンで希釈して水洗した後、塩酸酸性にして水洗し、さらに水相の導電率がイオン交換水とほぼ同じになるまで水洗を繰り返し、ポリカーボネート樹脂の塩化メチレン溶液を得た。次いで、この溶液を目開き0.3μmのフィルターに通過させ、さらに軸受け部に異物取出口を有する隔離室付きニーダー中の温水に滴下、塩化メチレンを留去しながらポリカーボネート樹脂をフレーク化し、引続き該含液フレークを粉砕・乾燥してパウダーを得た。その後、該パウダーにトリス(2,4−di−tert−ブチルフェニル)ホスファイトを0.0025重量%、ステアリン酸モノグリセリドを0.05重量%となるように添加し、均一に混合した後、かかるパウダーをベント式二軸押出機[(株)神戸製鋼所製KTX−46]により脱気しながら溶融混錬し、ポリカーボネート樹脂組成物ペレットを得た。かかるパウダーに、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト0.050%、ペンタエリスリトールテトラステアレートを0.10%加えて、ベント付きφ30mm単軸押出機を用いて、ペレット化した。このポリカーボネート樹脂(BisP−TP:BisP−M=90モル%:10モル%)から得られたペレットを用いて比粘度、ガラス転移温度、吸水率、光弾性定数、アッベ数を測定し、表1に記載した。
【0078】
その後、120℃で5時間乾燥後、日本製鋼所製射出成形機N−20Cを用いて厚さ1.0mm、幅1.0mm、長さ2.0mmの成形板を表2記載の成形条件にて成形した。成形板の光線透過率及び複屈折を測定し、表2に記載した。同成形機N−20Cを用いて表3に示す成形条件にて外径2.0mm、中心厚0.80mm、焦点距離2.0mmの平凸レンズを射出成形した。その後、平凸レンズの前後に位相差を90°ずらした偏光板を配置し、一方の偏光板側から白色光を入射し、平凸レンズに現れる干渉色を目視にて観察することにより、複屈折の程度を評価し、結果を表3に示した。また、同成形機N−20Cを用いて、図1に示す光学ユニットに使用するプラスチックレンズを、ポリカーボネート樹脂を用いて第1のレンズ(1)、非晶性ポリオレフィン樹脂(ZEONEX 480R、日本ゼオン製)を用いて第2のレンズ(2)を成形した。ホルダを分割し、分割したホルダ(3)、(4)毎にプラスチックレンズ(1)、(2)を組み込み、(3)と(4)を接合する構造とした。光軸(6)を中心軸として回転させることで2つのプラスチックレンズ(1)、(2)を組み合わせた光学特性を最適化した後に、接着剤で接続固定し一体化した。得られた光学ユニットの仕様は、焦点距離5.8mm、F値2.0、受光サイズ直径7.2mm、レンズ全長15.4mm、レンズ直径14mmであった。上記光学ユニットを1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0079】
[実施例2]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン4713部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール1164部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−M=80モル%:20モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0080】
[実施例3]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン2946部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール2912部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−M=50モル%:50モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0081】
[実施例4]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン2356部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール3494部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−M=40モル%:60モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0082】
[実施例5]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン4713部、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン767部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−A=80モル%:20モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0083】
[実施例6]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン2946部、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン1919部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−A=50モル%:50モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0084】
[実施例7]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン4713部、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン1097部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−DED=80モル%:20モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0085】
[実施例8]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン2946部、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン2744部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−DED=50モル%:50モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0086】
[比較例1]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン5892部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP=100モル%)さらに、成形を実施したが流動性が成形不可であった。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂を用いて射出成形を実施したが流動性が成形不可であった。成形不可の為、測定は行うことができなかった。
【0087】
[比較例2]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン1767部、4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール4077部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−M=30モル%:70モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0088】
[比較例3]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン1767部、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン2686部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−A=30モル%:70モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0089】
[比較例4]
4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン1767部、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン3841部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−TP:BisP−DED=30モル%:70モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0090】
[比較例5]
2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン3838部とした以外は全て実施例1と同様にし、表1に記載の特性を有するポリカーボネート樹脂のペレットを得た。(BisP−A=100モル%)さらに、表2および表3に記載の成形条件で成形板および平凸レンズを成形した以外は実施例1と同様にして評価し、結果を表2および表3に併記した。また、図1に示す光学ユニットを第1のレンズ(1)に上記ポリカーボネート樹脂、第2のレンズ(2)に非晶性ポリオレフィン樹脂を用いて射出成形によって作成した。作成した光学ユニットを、1/3インチC−MOSセンサに組み込み、ITE規格の解像度チャートを使用して、同一距離、同一倍率で1/3インチC−MOSセンサから取り込んだ画像データをコンピュータで画像処理し、元画像との差分画像から解像度の評価を行い、結果を表4に記載した。
【0091】
【表1】

【0092】
※1 BisP−TP
:4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタン
※2 BisP−M
:4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノール
※3 BisP−A
:2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン
※4 BisP−DED
:1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン
(以下表記載の記号も同じ物質を示す。)
【0093】
【表2】

【0094】
【表3】

【0095】
【表4】

【図面の簡単な説明】
【0096】
【図1】光学部材をホルダーにより一体化した光学ユニットを示す概略図である。
【図2】光学ユニットにおける解像度の評価システムである。
【符号の説明】
【0097】
1 第1のレンズ
2 第2のレンズ
3 第1のホルダ
4 第2のホルダ
5 接合面
6 光軸
7 レンズユニット
8 CMOSセンサ
9 コンピューター
10 ビデオ出力
11 評価用画像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記式[1]
【化1】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子、芳香族基を含んでもよい炭素原子数1〜9の炭化水素基、またはハロゲン原子である。)
で表される構成単位(A)と
(B)下記式[2]
【化2】

(式中、R〜Rは夫々独立して水素原子、炭素原子数1〜9の芳香族基を含んでもよいアルキル基、炭素原子数6〜10のアリール基、または炭素原子数1〜6のアルコキシ基を表す。Wは単結合、炭素原子数1〜15のアルキレン基、または炭素原子数1〜20の芳香族基を含んでもよいアルキレン基、または酸素原子を表す。)
で表される構成単位(A)から構成され、全構成単位における構成単位(A)の割合が40〜90モル%からなるポリカーボネート樹脂から構成されることを特徴とする光学部材。
【請求項2】
全構成単位における構成単位(A)の割合が50〜80モル%からなる請求項1記載光学部材。
【請求項3】
構成単位(A)が4,4’−ジヒドロキシテトラフェニルメタンから誘導される構成単位である請求項1または請求項2のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項4】
構成単位(B)が2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)デカン、および4,4’−(m−フェニレンジイソプロピリデン)ジフェノールからなる群より選ばれる少なくとも一種の化合物から誘導された構成単位である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項5】
該光学部材の表面全面に反射防止膜及び/又は防湿皮膜を有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項6】
前記反射防止膜及び/又は防湿皮膜がスパッタリングによって形成される膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載の光学光学部材。
【請求項7】
該光学部材を構成するポリカーボネート樹脂の波長589nm(Na−D線)における屈折率が1.600〜1.650であり、且つアッベ数が20〜35であることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項8】
前記光学部材が射出成形法あるいは射出圧縮成形法により形成された請求項1〜7のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項9】
該光学部材が、ピックアップレンズ、カメラレンズ、マイクロアレーレンズ、プロジェクターレンズ及びフレネルレンズからなる群より選ばれた少なくとも一種の光路変換部品、プリズム、光ファイバー、リフローハンダ付け部品、プラスチックミラー、導光板、または光導波路である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光学部材。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の光学部材を少なくとも1以上含み、該1以上の光学部材をホルダで一体化した光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−80425(P2009−80425A)
【公開日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−251275(P2007−251275)
【出願日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【出願人】(000215888)帝人化成株式会社 (504)
【Fターム(参考)】