説明

光弾性応力付加ステージおよびそれを用いた光弾性測定装置

【課題】 ガラスに代表されるヤング率の高い被測定材料の応力を求める場合、それに対応する歪量は微少である。高分解機能な付加応力と光弾性位相差信号強度の関係を検量線として求め応力測定に活用する光弾性測定装置を提供する。
【解決手段】 被測定材料に応力を付加する応力付加ステージに対し、応力を付加する機構にバネ又はその他の弾性体を介在させて応力を付加することで、ガラス材料のようなヤング率が高い被測定材料に対して、付加応力と光弾性位相差信号強度の関係を検量線として求めることができる高分解機能な応力付加ステージを提供する。また、該高分解機能な応力付加ステージの該検量線を関連する被測定材料用の光弾性測定装置に具備し、物性値である光弾性定数が未知であっても光弾性位相差信号強度から応力に換算し応力値を得る光弾性測定装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
光弾性測定装置おいて、ヤング率の高い透過性を有する被測定材料に対して、応力付加の微細変動に高分解機能に応答したキャリブレーションができる高分解機能な光弾性応力付加ステージを具備して光弾性位相差信号強度を応力値に変換して、応力値として測定できる光弾性測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
あらゆる分野で用いられるヤング率の高い透過性を有する被測定材料については、多くガラス製品として製造した場合にそのガラス製品の中に残留応力が無いことが好ましい。従い、多く製品の製造過程でガラスの応力を測定することが望まれている。例えばガラスを貼り合わせた状態のFPDパネル切断時の条件出しや、貼り合わせガラスの上下各々のガラスの残留応力測定などが挙げられる。
【0003】
また、ガラスの場合、測定する応力が0.1メガパスカル(MPa)程度の微細なレベル毎での応力測定が必要になるため、高分解機能な応力測定装置が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−185547号
【特許文献2】特開平9−250978号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
光弾性測定装置を用いて、あらゆる分野で用いられるヤング率の高い透過性を有する被測定材料については、多くガラス製品として製造した場合にそのガラス製品の中に残留応力が無いか否か製造過程の中の検査工程で判別しようとする場合、光弾性の性質を利用して測定し判別される場合が多い。
【0006】
上記製造上の判別工程においては、測定装置に光弾性の性質を利用して測定できる光弾性測定ヘッドを用いた装置が多く用いられるが、その場合、光弾性装置の偏光板を用いて、光弾性位相差信号強度を測定し、被測定材料内部の光弾性位相差信号強度の値をもって判別する場合が多い。
【0007】
また、ヤング率の高い透過性を有する被測定材料としてガラスの内部応力をを測定しようとする場合、0.1メガパスカル(MPa)程度の精度で応力値を測定する必要がある。
従い、測定した位相差信号強度と付加した応力値との関係の検量線を求める際には、0.1メガパスカル(MPa)程度の微少に段階を追った既知の応力が付加されている測定物を測定する必要がる。
従い、0.1メガパスカル(MPa)程度の緻密な変動精度ごとに応力が測定できる高分解機能な光弾性応力付加ステージが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ヤング率の高い透過性を有する被測定材料については、多くガラス製品として製造した場合にそのガラス製品の中に残留応力が無いか否か製造中の検査工程で判別しようとする場合、多く光弾性測定装置の偏光板を用いて光弾性位相差信号強度を測定している。
【0009】
本願発明では、被測定材料内部の光弾性位相差信号強度の値を用いて判別するのではなく、そこに、光弾性応力付加ステージを準備し、測定した光弾性位相差信号強度と付加した応力値との関係の検量線を求め、測定した光弾性位相差信号強度に対応する応力に換算して、被測定材料内部の残留応力を応力値で示す。
【0010】
すなわち、第1の発明は、「ヤング率の高い透過性を有する被測定材料の光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定装置において、
前記被測定材料を保持する保持手段と、
前記被測定材料に向けて光を照射し、光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定ヘッドと該測定データを格納するデータ処理手段とを
設けた前記光弾性測定装置の光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に、検量線取得用試料片に応力を付加することができる光弾性応力付加ステージを搭載し、
前記検量線取得用試料片に微少な分解能で応力を付加して得られる光弾性位相差信号強度と付加応力の検量線を得ることで、前記検量線を用いて前記測定した前記被測定材料の位相差信号強度を応力値に変換し前記被測定材料の被測定箇所毎の残留応力値として測定できる」ことを特徴とする。
【0011】
(作用・効果)第1の発明に係る光弾性測定装置によれば、高いヤング率の材料に応力を付加する場合、応力を付加したとしてもそれに対応する歪量は微少である。従って、該ガラス材料に応力を付加し、それをガラス応力測定装置で測定した際の光弾性位相差信号強度との関係の検量線を得る場合にも、付加する応力を微細に制御する必要がある。通常、被測定材料に応力を付加する場合には、駆動源としての駆動モータなどを用いて稼働させて、軸方向に引張力や圧縮力の応力を付加することになるが、ヤング率の高い被測定材料については、付加した応力と信号強度との関係からなる検量線の感度が要求され、付加する微少応力に対し、高レベルの制御が要求される。
【0012】
高レベルの制御を可能とするために、直接駆動モータの力を付加するのでは無く、駆動モータの力による軸力と付加する応力との間に、高分解機能なレベルの応力をリニアーに付加するため、その間の構成として、バッファーとなるバネあるいはそれに類するその他弾性体を介在させて負荷を与える機構を設けることによって、微少応力変動に対する光弾性位相差信号強度が得られ、そのデータ間の関係を検量線として得ることができる。
【0013】
本願発明では、光弾性測定装置を用いて、被測定材料内に潜む残留応力の有無を測定するに際し、光弾性測定ヘッドを用いて測定される。データとして、被測定材料内のX軸ステージ及びY軸ステージで定められた位置に存在する応力を測定したい場合でも、主応力差からなる光弾性位相差信号強度が求まる。しかし、実際に求めたい値は、該被測定材料の定められた位置ごとの残留応力である。その為に、本願発明で提唱している光弾性位相差信号強度と応力との間の検量線が求められていれば、該被測定材料の光弾性係数が未知であっても、容易に、光弾性位相差信号強度を応力に換算でき、その値をデータとして保持し、その被測定材料の残留応力有無の評価値とすることができる。
【0014】
次に、第2の発明は、「前記光弾性測定装置において、前記検量線取得用の光弾性応力付加ステージを、前記光弾性測定装置の光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に設けることにより、前記被測定材料の光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定ヘッドを併用できる構成としたことを特徴とする。」というものである。
【0015】
(作用・効果)被測定材料の内部に存在する応力について測定する場合、上記の様に光弾性測定装置を用いて、測定結果として得られた光弾性位相差信号強度を予め被測定材料と同じ材質の試料片を用いて、得られた位相差信号強度とその時付加した応力との検量線を設けておいて、換算して、被測定材料内の残留応力値が求められる。
【0016】
本願発明では、光弾性測定装置を用いて光弾性位相差信号強度を測定するに留まらず、測定された光弾性位相差信号強度を前記検量線取得用の光弾性応力付加ステージを前記光弾性測定装置の光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に設け、被測定材料を実際に測定する時に用いる光弾性測定ヘッドを併用して、被測定材料で得られた光弾性位相差信号強度を応力に換算して求める。これにより、被測定材料に内在する残留応力を単に光弾性位相差信号強度ではなく本来の応力値としてデータを求めることを可能にする。
【0017】
また、第3の発明は、「前記光弾性応力付加ステージにおいて、前記検量線取得用試料片の両端を把持し応力を付加する場合に、応力を付加する機構部分に弾性体を設けることにより、高分解機能に応力を付加することができる構成とした」ことを特徴とする。
【0018】
(作用・効果)本願発明で主に対象としている被測定材料は、ヤング率の高い透過性を有するガラス材料である。しかるに、付加された応力に対し、弾性域における実際の被測定材料の変位量は微々たるものである。本願記載の光弾性応力付加ステージにおいて、光弾性位相差信号強度と付加応力との関係の検量線を求めようとすると、付加を加える上での量的目盛りのステップを微細に段階的に付加していかなければ、光弾性位相差信号強度と付加応力との間の検量線を求めることができない。
【0019】
本願発明では、被測定材料の弾性域に微少な付加を加えて行く手段として、応力を付加する機構部分に弾性体を設けることにより、付加応力の微細な変化ごとにそれに応じた光弾性位相差信号強度間の検量線を得て、被測定材料の光弾性位相差信号強度を得た場合にそれに相応する応力値を求めることを可能とした。
【0020】
また、第4の発明は、「前記光弾性応力付加ステージにおいて、付加する応力の高分解機能のレベルが、0.1メガパスカル(MPa)以下である」ことを特徴とする。
【0021】
(作用・効果)本願発明の第4の発明によると、第1ないし第3の発明に記載の光弾性応力付加ステージの分解機能のレベルが、ヤング率の高い透過性を有する材料の弾性域での光弾性位相差信号強度と付加応力との関係を求める検量線を得るには、高分解機能のレベルがそれ相応に細かなレベルごとに応力を変動させて付加しなければならない。その適正な高分解能のレベルを得る為には、0.1MPa以下であることが有効である。
【発明の効果】
【0022】
本発明に係る光弾性測定装置によると、光弾性測定装置で光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に光弾性応力付加ステージを設け、光弾性測定装置の光弾性測定ヘッドを用いて、光弾性位相差信号強度と付加応力間の検量線を求め、被測定材料の光弾性位相差信号強度の値を該検量線を用いて、応力値に換算することにより、被測定材料の残留応力の状態を得ることができる。
【0023】
また、上記光弾性応力付加ステージにて、被測定材料と同材料の検量線取得用試料片を用いて、応力を付加すると同時に光弾性測定装置に付随の光弾性ヘッドを併用し、光弾性位相差信号強度と付加応力との関係を表す検量線を当該光弾性測定時に、並行して得ることができる。
【0024】
本願での対象被測定材料は、ガラスに例示されるように、ヤング率が高く応力に相応する変形量が小さい材料である。従い、検量線を得る場合の光弾性位相差信号強度と付加応力との関係を得るためには、高分解機能を有する必要があり、その為に相応するように、光弾性応力付加ステージの付加を加える部分に弾性体を設け、高分解機能に対応するようにしてある。
【0025】
その高分解機能のレベルは、本願発明として記載の様に、適正な高分解能のレベルを得る為に、0.1MPa以下となるように構成されている。
【0026】
これにより、本願発明の光弾性測定装置を用いて、ヤング率の高い透過性を有する被測定材料の測定をおこなうに際し、光弾性測定装置に本願発明の光弾性応力付加ステージを付加することにより、光弾性位相差信号強度と付加応力の関係の検量線を用いることにより、得られた光弾性位相差信号強度を応力値に換算し、被測定材料が持つ残留応力値として測定結果を得て、被測定材料の良否を判定することを可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本願発明の微細制御が可能な高分解機能な光弾性応力付加ステージ。
【図2】本願発明の高分解機能な光弾性応力付加ステージから得られる検量線。
【図3】本願発明の光弾性応力付加ステージを備えた光弾性測定装置。
【図4】本発明の光弾性測定装置の概念図。
【図5】本発明の被測定材料の測定時の流れのフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0029】
図1に示すように、本願発明の微細制御が可能な高分解機能な光弾性応力付加ステージ1は、チルトステージ51上のベースプレート47上に検量線取得用試料片46を稼動側試料片取付板44と把持側試料片取付板45とで検量線取得用試料片46を保持する。該稼動側試料片取付板44は稼動側スライドブロック48が支えており、該稼動側スライドブロック48は、スライドガイド50上で自在にスライドするように構成されている。クッションスライドブロック49は、駆動モータ41と連結され、駆動モータ41の駆動による引張および/または圧縮に対し、駆動モータ41と軸52との間のネジ機構による移動により負荷を与える様に、バネ42が設定されている。応力荷重を被測定材料nの検量線取得用試料片46に付加し、光弾性応力付加ステージ1でそれぞれの微少変動する応力値を付加することができるように構成されている。
【0030】
また、稼動側試料片取付板44に取り付けたロードセル43は、クッションスライドブロック49と接しており、クッションスライドブロック49に付加される荷重がロードセル43を介して、被測定材料nの検量線取得用試料片46に付加され、光弾性応力付加ステージ1でそれぞれの微少変動する応力値を付加することができるように構成されている。
【0031】
具体的には、検量線取得用試料片46を稼動側試料片取付板44および把持側試料片取付板45に接着して固定する。検量線取得用試料片46を接着後、図3に示す光弾性測定装置20のコラム28上の測定ヘッド22を防振台21上に載置した光弾性応力付加ステージ1上の検量線取得用試料片46に所定の外力を逐次段階的に付加し、付加した外力を検量線取得用試料片片46の断面積で除し、個々に応力値に換算し、その時の光弾性位相差信号強度をプロットして、応力値と光弾性位相差信号強度との検量線を算出する。
【0032】
検量線について記載する。寸法的には、まず、被測定材料nと同材質からなる検量線取得用試料片46のヤング率は、通常50ギガパスカル(GPa)ないし90ギガパスカル(GPa)である。当該測定に用いた検量線取得用試料片46の条件は、ヤング率が、70.9ギガパスカル(GPa)、寸法が長さ60mm、幅4mm、厚み0.5mmのものを用いた。当該実施例では、被測定材料nの断面が矩形のものを用いたが、当該断面形状に制限されるものではない。その時、図2に示すように、検量線取得用試料片46への応力と得られる信号強度との関係が比例の関係である検量線が得られる。
【0033】
図2のグラフから、検量線取得用試料片46に示す様に0.1MPa以下のピッチで応力を付加した場合でも、得られる光弾性位相差信号強度との関係が比例の関係になっていることがわかる。従い、ガラスに代表されるヤング率が高い材料からなる被測定材料nについて測定する場合、当該発明に基づく微細な制御が可能で高分解機能な制御の光弾性応力付加ステージ1を用いる事が好ましいことが確認された。
【0034】
すなわち、断面積が2mmの検量線取得用試料片46に0.1メガパスカル(MPa)ピッチごとの応力を付加した場合でも、得られる信号強度とは比例の関係になっている。このように、付加加重を検量線取得用試料片46に応力加重をネジ軸52および稼動側試料片取付板44と把持側試料片取付板45の構成を用いて付加する場合に、その間にバネを付加することによって、分解機能1ミクロンメータ(μm)の光弾性応力付加ステージ1でも、得られる光弾性位相差信号強度と応力値とが比例関係になる検量線が図2として得られた。
【0035】
当該検量線を用いて、例えば、式(1)において、検量線取得用試料片46の物性値である光弾性係数Cが未知であっても、信号強度が得られれば、上記図2の検量線を用いて、容易に応力値に換算することができる。
【0036】
次に、図3は、前記光弾性応力付加ステージ1を載置した光弾性測定装置20の全体図である。光弾性測定装置20は、防振台21上にコラム28が門構状に載置され、防振台21上にはX軸ステージ25、及びコラム28上にはY軸ステージ23が備えられ、X軸ステージ25上には被測定材料を載置する為のテーブル24が備えられている。また、検量線取得用試料片46を備える光弾性応力付加ステージ1は、防振台21上に備えられている。また、被測定材料nの光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定装置20の機能を準備作動させる周辺機器として、パソコン29、記憶媒体26及びX軸ステージ25上のテーブル24およびY軸ステージ23上の光弾性測定ヘッド22を制御し駆動させる機能として制御盤27が備えられディスプレー30を用いて稼動制御される様に構成されている。
【0037】
次に、上記光弾性測定装置20に関して、図4のブロック図を用いて全体構成を説明する。図4に示す様に、光弾性測定装置20では、被測定材料nを測定するために、X軸ステージ25Y軸ステージ23によりテーブル24は、被測定材料n上をY軸ステージ23に設けられた光弾性測定ヘッド22が制御盤27にコントロールされて自在に移動するように設定されている。それにより、Y軸ステージ23上に準備された、光弾性測定ヘッド22は被測定材料n上の光弾性位相差信号強度をパソコン29からの指令に基づき制御盤27から指令を受け測定点ごとに測定できる様に構成されている。また、光弾性応力付加ステージ1も上記X軸ステージ25Y軸ステージ23により移動可能なテーブル24の移動可能範囲内に設置されており、光弾性応力付加ステージ1に備えられた検量線取得用試料片46の光弾性位相差信号強度を測定する場合にも、光弾性測定装置20の光弾性測定ヘッド22を流用することができる様に構成されている。
【0038】
従い、被測定材料nと同材料の検量線取得用試料片46に応力が付加され、個々の応力に相当する光弾性位相差信号強度が求められ、そのデータは検量線取得用データとして、パソコン29に送付され、当該被測定材料nごとに、検量線が格納され、その検量線を用いることにより、被測定材料nの測定された光弾性位相差信号強度のデータが応力値に変換されて、個々の被測定材料nごとの残留応力値が検査データとしてパソコン29を通じて記憶媒体26に格納される。
【0039】
続いて、当該光弾性測定装置20全体の被測定材料nの測定工程を図5に示すフローチャートを用いて説明する。ステップ0をスタートとして、ステップ1では被測定材料nの準備をおこなう。また、ステップ2からステップ7までは、被測定材料nと同じ材質の検量線取得用試料片46の準備から検量線のデータをパソコン29への格納するまでを示す。さらに、ステップ8からステップ11までが、実際に被測定材料nを測定する工程である。ステップ11では、被測定材料nの内部残留応力値の大きさの限度の値が設定されていて、その値を超えるものは不良として分別され、時に排出される。
【0040】
被測定材料nについては、被測定材料nのロット数をすべて終了するまで、ステップ8からステップ12までの工程が繰り返され、すべて完了後、ステップ13にてデータが整理され、ステップ14にて良品が製品として、次工程へ送られるか、又は集荷準備され出荷される。以降、次のロットの作業開始からは、被測定材料nと同材料の場合は、ステップ8から繰り返され、被測定材料nの材料がが異なる場合は、ステップ2の検量線取得工程から開始され、被測定材料nと同材料の検量線取得用試料片46の準備から繰り返される。
【0041】
実際に、前記光弾性応力付加ステージ1を用いて得られた「検量線」を用いて、前記被測定材料nとしてのガラスを貼り合わせた状態の、例としてFPDパネル切断時の条件抽出や、貼合せガラスの上下各々のガラスの残留応力測定にあたっては、測定対象物nを載置しているテーブル24上の応力測定箇所を選出して、光弾性測定ヘッド22をY軸ステージ23および/またはX軸ステージ25を用いて位置合わせをおこない、テーブル24の被測定材料nの測定箇所に合わせて、その箇所の光弾性位相差信号強度を求める。また、前記同様、図2に示す検量線を用いて、該測定箇所の応力値を換算して求める。
【0042】
上記手法を用いて、上記請求項1または請求項2に示す光弾性応力付加ステージ1を検量線取得用試料片46を用いて、前記事例として示した貼り合わせた状態のFPDパネル切断時の条件抽出や、貼合せガラスの上下各々のガラスの残留応力値測定に適用することができる。
【0043】
ここで、比較検討として、応力を付加する機構部分に弾性体を設けない、光弾性応力付加ステージ1を用いて、実施例1と同様に光弾性応力付加ステージ1の両端の把持機構にて検量線取得用試料片46を把持し、該駆動モータ41を駆動することによって、軸52のネジ機構を用いて応力付加荷重を検量線取得用試料片46に付加した場合の、応力とステージの移動量について検討した。
【0044】
検量線取得用試料片46は、通常ヤング率は、50ギガパスカル(GPa)ないし90ギガパスカル(GPa)である。当該検討に用いた検量線取得用試料片46の条件は、ヤング率が、70.9ギガパスカル(GPa)、寸法が長さ60mm、幅4mm、厚み0.5mmのものとなる。その時の試算される応力と歪と変位量を表1に示した。この結果に基づき検討すると、表1に示すように、0.1メガパスカル(MPa)の分解機能で応力を付加するには、分解機能が84nm以下の光弾性応力付加ステージ1の分解機能の準備が必要となり、当該制御精度の性能が得られる光弾性応力付加ステージ1を準備し用いるには、精度的に困難であることがわかった。
【0045】
【表1】

【0046】
上記実施例および比較検討の結果により、本願発明に提唱されているような、簡単な構造からなる高分解機能な光弾性応力付加ステージ1を用いることにより、要求されるレベルの応力値測定が容易におこなわれる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
ガラスに代表される高いヤング率を保持する被測定材料に対し、高分解機能な制御が可能な応力を付加する本願発明の光弾性応力付加ステージを被測定材料の応力と光弾性位相差信号強度を換算する検量線の取得用ステージとして活用することができる。従い、該光弾性応力付加ステージを用いて精度の良い光弾性測定装置の検量線取得用として、高いヤング率である被測定材料用の装置として有効に活用することができる。
【0048】
本願発明の簡易な構造からなる光弾性応力付加ステージの両端の稼動側試料片取付板と把持側試料片取付板にて検量線取得用試料片を把持し、バネを介して軸を設け、該駆動モータを駆動することによって、応力付加荷重を検量線取得用試料片に付加し、応力と光弾性位相差信号強度に対する検量線を求め、被測定材料の応力値を測定する装置として、光弾性測定装置に具備し物性値である光弾性係数を求めなくても、応力値と比例関係に得られる光弾性位相差信号強度を測定することにより、被測定材料の応力値が容易に測定することができる。
【符号の説明】
【0049】
1 光弾性応力付加ステージ
n 被測定材料
20 光弾性測定装置
21 防振台
22 光弾性測定ヘッド
23 Y軸ステージ
24 テーブル
25 X軸ステージ
26 記憶媒体
27 制御盤
28 コラム
29 パソコン
30 ディスプレー
41 駆動モータ
42 バネ
43 ロードセル
44 稼動側試料片取付板
45 把持側試料片取付板
46 検量線取得用試料片
47 ベースプレート
48 稼動側スライドブロック
49 クッションスライドブロック
50 スライドガイド
51 チルトステージ
52 軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヤング率の高い透過性を有する被測定材料の光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定装置において、
前記被測定材料を保持する保持手段と、
前記被測定材料に向けて光を照射し、光弾性位相差信号強度を測定する光弾性測定ヘッドと該測定データを格納するデータ処理手段とを
設けた前記光弾性測定装置の光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に、検量線取得用試料片に応力を付加することができる光弾性応力付加ステージを搭載し、
前記検量線取得用試料片に微少な分解能で応力を付加して得られる光弾性位相差信号強度と付加応力の検量線を得ることで、前記検量線を用いて前記測定した前記被測定材料の位相差信号強度を応力値に変換し前記被測定材料の被測定箇所毎の残留応力値として測定できることを特徴とする光弾性測定装置。
【請求項2】
前記光弾性測定装置において、前記検量線取得用の光弾性応力付加ステージを、前記光弾性測定装置の光弾性位相差信号強度を測定可能な位置に設けることにより、前記被測定材料の光弾性信号強度を測定する光弾性測定ヘッドを併用できる構成としたことを特徴とする請求項1に記載の光弾性測定装置。
【請求項3】
前記光弾性応力付加ステージにおいて、
前記検量線取得用試料片の両端を把持し応力を付加する場合に、
応力を付加する機構部分に弾性体を設けることにより、
高分解機能に応力を付加することができる構成としたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の光弾性測定装置に設けた光弾性応力付加ステージ。
【請求項4】
前記光弾性応力付加ステージにおいて、
付加する応力の高分解機能のレベルが、0.1メガパスカル(MPa)以下であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか一つに記載の光弾性応力付加ステージ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−75293(P2011−75293A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−224059(P2009−224059)
【出願日】平成21年9月29日(2009.9.29)
【出願人】(000219314)東レエンジニアリング株式会社 (505)