説明

光情報記録媒体

【目的】 喫煙雰囲気下や自動車の排気ガスが充満する雰囲気下で使用されても情報信号の読み取りにエラーが起き難い光情報記録媒体を提供することである。
【構成】 基板及び記録層を有する光情報記録媒体であって、この光情報記録媒体には含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層が構成されてなる光情報記録媒体。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、レーザー光による情報の書き込み及び/又は読み取りが可能な光情報記録媒体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、光ディスクや光カード、大容量コンピュータ用ディスクメモリ等に代表される光情報記録媒体が開発され、商品化されている。尚、これらの光情報記録媒体は、一般的には、射出成形やフォトポリマー法によって信号が書き込まれたポリカーボネート樹脂やアクリル樹脂製の基板の信号側の表面に、スパッタリングや蒸着などの薄膜形成手段で金属薄膜や保護膜が設けられている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種の光情報記録媒体はクリーンな環境下で使用されるとは限らない。例えば、喫煙雰囲気下で使用されたり、自動車の排気ガスが充満する雰囲気下で使用されることもある。そして、このような雰囲気下での使用が繰り返して行われていると、情報信号の読み取りにエラーの多発することが認められた。
【0004】従って、本発明の目的は、喫煙雰囲気下や自動車の排気ガスが充満する雰囲気下で使用されても情報信号の読み取りにエラーが起き難い光情報記録媒体を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記本発明の目的は、基板及び記録層を有する光情報記録媒体であって、この光情報記録媒体には含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層が構成されてなることを特徴とする光情報記録媒体によって達成される。尚、本発明で用いられるフッ素系樹脂は、繰り返し単位中に脂肪族環構造を有し、かつ、環構成原子のうち少なくとも2原子が重合体主鎖に含まれ、そしてフッ素含有量が30重量%以上のものであることが好ましい。
【0006】又、含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層は、光情報記録媒体の表面、裏面あるいは端面といった最外面に設けられていることが好ましい。尚、これは全外面でなくても良い。このフッ素系樹脂層が最外面に設けられる場合、含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層の厚さは約0.1〜10μmであることが好ましい。
【0007】そして、上記の含フッ素脂肪族環構造を有するフッ素系樹脂は、その表面エネルギーが低いものであって、粘着性が低いものであり、又、耐溶剤性に富み、腐食され難いものであり、かつ、耐湿性に富み、水分が内部に侵入し難いものであり、従ってこのようなフッ素系樹脂で覆われてなる光情報記録媒体が喫煙雰囲気下や自動車の排気ガスが充満する雰囲気下で使用されても情報信号の読み取りにエラーが起き難いものとなる。
【0008】本発明で用いられるフッ素系樹脂としては下記のような樹脂が挙げられる。
【0009】
【化1】


【0010】〔但し、lは0〜5、mは0〜4、nは0又は1、l+m+nが1〜6、RはF又はCF3 などのフッ化アルキル基〕の環構造を主鎖に有するフッ素系樹脂
【0011】
【化2】


【0012】〔但し、o,p,qは0〜5、o+p+qが1〜6〕の環構造を主鎖に有するフッ素系樹脂
【0013】
【化3】


【0014】〔但し、R1 ,R2 はF又はCF3 などのフッ化アルキル基〕の環構造を主鎖に有するフッ素系樹脂又、上記の〔化1〕〜〔化3〕の一般式で表されるものにおいて、フッ素原子の一部が水素原子やその他の有機基で置換されたものとか、下記の〔化4〕や〔化5〕の如きの環構造を有するものが用いられても良い。
【0015】
【化4】


【0016】
【化5】


【0017】その他、シクロペンテン、シクロヘキサン、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプト−2−エン、ビシクロ〔2,2,1〕ヘプタ−2,5−ジエンといったシクロ又はビシクロオレフィンの水素原子の一部あるいは全てがフッ素原子で置換された含フッ素シクロあるいはビシクロオレフィンの重合、又は非環オレフィンとの共重合によって得られるものを用いることも出来る。尚、環状オレフィンはビシクロのものに限られず、トリシクロ、テトラシクロ、……などのオレフィンであっても良い。
【0018】このような含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層を設ける手段としては、上記のような樹脂を適当な溶剤に溶かし、これを塗布すれば良い。塗布方法としては、スピンコート、ロールコート、ディッピング、エアードクターコート、ブレードコート、エアナイフコート、含浸コート、リバースロールコート、トランスファーロールコート、グラビアコート、キスコート、キャスコート、スプレーコートなどの手段を用いることが出来る。溶剤としては、パーフルオロヘキサン、パーフルオロヘプタン等のパーフルオロアルカンやパーフルオロシクロアルカン、パーフルオロベンゼンなどの二重結合を有するパーフルオロアルケン、パーフルオロ(2−ブチルテトラヒドロフラン)、パーフルオロテトラヒドロフラン、パーフルオロテトラヒドロピラン等のパーフルオロ環状エーテル、パーフルオロトリブチルアミン、パーフルオロテトラベンジルアミン、パーフルオロテトラヘキシルアミン等のパーフルオロアルキルアミン等が用いられる。勿論、これらに限られるものではない。例えば、前記の溶剤に炭化水素系、アルコール系などの有機溶剤を併用しても良い。溶液中におけるフッ素系樹脂の濃度は、例えば0.01〜50重量%、望ましくは約0.1〜20重量%のものとすることが好ましい。
【0019】含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層の密着性を向上させる為に、カップリング剤を用いることが好ましい。例えば、シランカップリング剤〔R1 −Si(R2 3-n (R3 n 式中、R1 は塩素原子、アミノ基、アミノアルキル基、ウレイド基、グリシドキシ基、エポキシ基、シクロヘキシル基、アクリロキシ基、メタクリロキシ基、メルカプト基、ビニル基など。R2 及びR3は塩素原子、水酸基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜15のアルコキシ置換アルコキシ基、炭素数2〜4のヒドロキシアルキルオキシ基、炭素数2〜15のアルキルオキシ基など。〕、T(OR)4 〔式中、Tはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、トリウム。Rはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基〕で表されるオルト酸エステル、及びこれに少なくとも一個の官能基を有する化合物の一個以上を反応させて得られる誘導体、その他アルミニウムイソプロピレート、モノsec−ブトキシアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムsec−ブチレート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムトリス(エチルアセトアセテート)等を用いることが出来る。中でも、シランカップリング剤、特にアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチル−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノ基を有するシランカップリング剤、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン等のエポキシ基を有するシランカップリング剤が好ましく用いられる。
【0020】本発明における光情報記録媒体には硬化性皮膜を、特に引っ張り強度(温度20℃)が100Kg/cm2 以上、及び/又は伸び率(温度20℃)が20%以下、及び/又は弾性率(温度25℃、振動数3.5Hz)が1×109 dyne/cm以上の硬化性皮膜を設けることが好ましい。又、この硬化性皮膜は、その表面硬度(鉛筆硬度)がHB以上、さらにはH以上、及び/又は摩耗試験後の曇り度が20%以下、さらには10%以下、及び/又はスチールウール試験で殆ど傷が付かないものであることが、耐傷性に富んでいることから好ましい。又、硬化性皮膜は、その透湿度(膜厚100μm、温度60℃、相対湿度90%)が400g/m2 ・24Hr以下のものであると、外界からの水分や不純物による記録膜の劣化が防止されることから好ましい。
【0021】このような硬化性皮膜は、紫外線硬化型樹脂皮膜、熱硬化型樹脂皮膜、電子線硬化型樹脂皮膜あるいはプラズマ重合膜などの中から適宜選択することが可能であるものの、実用性、作業性及び生産性などの観点から、紫外線硬化型樹脂皮膜であることが好ましい。中でも、1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレート、1官能又は2官能(メタ)アクリレート又はN−ビニルラクタム、及び光重合開始剤を用いて構成された紫外線硬化型樹脂皮膜が好ましい。
【0022】1分子内に3個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ペンタグリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等の多価アルコールのポリ(メタ)アクリレート、ポリイソシアネート1分子当り3モル以上の水酸基を有する(メタ)アクリルモノマーとの生成物であるウレタンアクリレート等が挙げられる。尚、これらの多官能モノマーは2種以上混合して使用することもできる。
【0023】1官能又は2官能(メタ)アクリレートとしては、例えば2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、フェノキシヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。N−ビニルラクタムとしては、例えばN−ビニル−2−ピペリドン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−5−メチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−4,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5,5−ジメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,5,5−トリメチル−2−ピロリドン、N−ビニル−5−メチル−5−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−3,4,5−トリメチル−3−エチル−2−ピロリドン、N−ビニル−6−メチル−2−ピペリドン、N−ビニル−6−エチル−2−ピペリドン、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−4,4−ジメチル−2−ピペリドン、N−ビニル−7−メチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−7−エチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−4,6−ジメチル−2−カプロラクタム、N−ビニル−3,5,7−トリメチル−2−カプロラクタム等が挙げられる。尚、1官能又は2官能(メタ)アクリレート及びN−ビニルラクタムは2種以上混合して使用することもできる。
【0024】光重合開始剤としては、ラジカルを発生する化合物であればよく、分子内結合解裂型及び/又は分子間水素引き抜き型の開始剤を用いることができる。例えば、クロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルホリノ−プロパン−1−オン、ベンジルメチルケタール、ベンゾフェノン、チオキサンソン等が挙げられる。
【0025】そして、上記多官能(メタ)アクリレートと1官能又は2官能(メタ)アクリレートあるいはN−ビニルラクタムとの割合は1対2〜2対1(モル比)であることが好ましく、これらによって構成される紫外線硬化型樹脂皮膜の膜厚は1〜30μm、より望ましくは3〜15μm程度であることが好ましい。すなわち、このような構成の紫外線硬化型樹脂皮膜は耐擦傷性及び耐摩耗性に優れ、かつ、密着性にも優れ、剥離が起きにくく、さらには膜に亀裂が起きにくいものである。
【0026】本発明の光情報記録媒体においては、基板側から硬化性皮膜及び含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂膜の順で積層し、含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂膜が最外表面であることが好ましい。本発明の光情報記録媒体の具体例の一つを図1に示す。図1に示す光情報記録媒体は、基板1の一方の面上に金属薄膜2が形成され、基板1の他方の面上に硬化性皮膜3が設けられている。そして、これらの最外面に含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂膜からなる保護膜4が設けられている。
【0027】所定の情報信号が形成された基板1上に設けられる金属薄膜2は、下記に示されるような金属あるいは合金を用いて蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、分子線エピタキシー、ケミカルベーパーデポジションといった乾式メッキ手段、あるいは湿式メッキ手段で形成される。
■ 光反射性の優れた金属、例えばAl,Ni,Cr,Ag,Au及びこれらを主体とする合金。
■ 光磁気記録材料であるGdCo,TbCo,GdFe,DyFe,TbFeCo,GdTbFe,GdFeBi,TbDyFe,MnCuBi,TbFeCoCr等。
■ レーザービーム等の照射により相転移が生じ、光の反射率が変化するTe酸化物、Sb酸化物、Mo酸化物、Ge酸化物、V酸化物、Sm酸化物、あるいはTe酸化物−Ge、Te−Sn等の化合物。
【0028】このような金属薄膜2の厚さは200〜10000Å、好ましくは1000〜2000Åである。
【0029】
【実施例】
〔実施例1〕
含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の合成方法パーフルオロアリルビニルエーテル35g、トリクロロトリフルオロエタン5g、イオン交換水150g、重合開始剤35mgを、内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れ、系内を窒素置換し、26℃で23時間かけて懸濁重合を行い、25gの含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂(フッ素含有量が32重量%)を得た。
【0030】光磁気ディスクの作製射出成形により得たポリカーボネート基板1上にAlSiN/TbFeCoCr/AlSiNの三層からなる金属薄膜(記録層)2を構成し、又、金属薄膜2が構成された面と対向する他方の基板1面上に下記の紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液Aをスピンコート法で塗布し、高圧水銀ランプの照射により5μm厚の硬化性皮膜3を構成した。
【0031】
〔紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液A〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 25重量部 N−ビニル−2−ピロリドン 25重量部 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部この後、下記の塗布液Bをスピンコート法で塗布、硬化させ、3μm厚の保護膜4を構成した。
【0032】
〔含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の塗布液B〕
上記含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂 9重量部 アフルードE−10(旭硝子製のパーフルオロ溶剤) 90重量部 アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤 1重量部〔実施例2〕
含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の合成方法パーフルオロブテニルビニルエーテル35g、トリクロロトリフルオロエタン5g、イオン交換水150g、メタノール20g、重合開始剤(ジイソプロピルパーオキシジカーボネート)90mgを、内容積200mlの耐圧ガラス製オートクレーブに入れ、系内を窒素置換し、40℃で23時間かけて懸濁重合を行い、28gの含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂(フッ素含有量が32重量%)を得た。
【0033】光磁気ディスクの作製射出成形により得たポリカーボネート基板1上にAlSiN/TbFeCoCr/AlSiNの三層からなる金属薄膜2を構成し、又、金属薄膜2が構成された面と対向する他方の基板1面上に下記の紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液Aをスピンコート法で塗布し、高圧水銀ランプの照射により5μm厚の硬化性皮膜3を構成した。
【0034】
〔紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液A〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 25重量部 N−ビニル−2−ピロリドン 25重量部 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部この後、下記の塗布液Bをディプコート法で塗布、硬化させ、5μm厚の保護膜4を構成した。
【0035】
〔含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の塗布液B〕
上記含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂 7重量部 フロリナートFC−72(3M社のパーフルオロ溶剤) 92重量部 アミノエチル−アミノプロピルトリメトキシシランカップリング剤 1重量部〔実施例3〕
含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の合成方法1,1,2,4,4,5,5−ヘプタフルオロ−3−オキサ−1,6−ヘプタジエン20g、トリクロロトリフルオロエタン40g、重合開始剤 mgを窒素置換した三ツ口フラスコに入れ、系内を窒素置換し、18℃で10時間かけて重合を行い、10gの含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂(フッ素含有量が40重量%)を得た。
【0036】光磁気ディスクの作製射出成形により得たポリカーボネート基板1上にAlSiN/TbFeCoCr/AlSiNの三層からなる金属薄膜2を構成し、又、金属薄膜2が構成された面と対向する他方の基板1面上に下記の紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液Aをスピンコート法で塗布し、高圧水銀ランプの照射により5μm厚の硬化性皮膜3を構成した。
【0037】
〔紫外線硬化型樹脂皮膜の塗布液A〕
ペンタエリスリトールテトラアクリレート 50重量部 ペンタエリスリトールトリアクリレート 25重量部 N−ビニル−2−ピロリドン 25重量部 1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン 4重量部この後、下記の塗布液Bをスピンコート法で塗布、硬化させ、3μm厚の保護膜4を構成した。
【0038】
〔含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂の塗布液B〕
上記含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂 7重量部 フロリナートFC−72(3M社のパーフルオロ溶剤) 92重量部 グリシドキシプロピルトリエトキシシランカップリング剤 1重量部〔比較例1〕実施例1において、保護膜4を設けず、代わりに硬化性皮膜3の厚みを10μm(実施例1における硬化性皮膜3の厚み+保護膜4の厚み)とした以外は同様に行い、光情報記録媒体を得た。
【0039】〔比較例2〕実施例1において、保護膜4を設けず、代わりに硬化性皮膜3の厚みを10μm(実施例1における硬化性皮膜3の厚み+保護膜4の厚み)とし、かつ、この硬化性皮膜3をウレタン樹脂で構成した以外は同様に行い、光情報記録媒体を得た。
【0040】〔比較例3〕実施例1において、保護膜4を設けず、代わりに硬化性皮膜3の厚みを10μm(実施例1における硬化性皮膜3の厚み+保護膜4の厚み)とし、かつ、この硬化性皮膜3をシリコーン樹脂で構成した以外は同様に行い、光情報記録媒体を得た。
【0041】〔特性〕上記各例で得られた光情報記録媒体を煙草の煙中に24時間放置した後、布で表面をクリーニングし、これを再生装置にかけてバイトエラーレートを調べたので、その結果を表1に示す。又、NOx やSOx 中に100時間放置し、同様にしてバイトエラーレートを調べたので、その結果を併せて表1に示す。
【0042】
表 1(バイトエラーレート)
煙草の煙 NOx SOx 実施例1 1 1 1実施例2 1 1 1実施例3 1 1 1比較例1 85 100 95比較例2 280 580 300比較例3 55 30 35*バイトエラーレートは煙草の煙中、NOx やSOx に放置前の値との比で表示これによれば、含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層で保護されてなる光情報記録媒体は情報信号の読み取りにエラーが起き難いものであり、信頼性に富むのみでなく、使用環境に影響され難いことから手軽な使用を期待出来ることが判る。
【図面の簡単な説明】
【図1】光情報記録媒体の概略断面図である。
【符号の説明】
1 基板
2 金属薄膜
3 硬化性皮膜
4 保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】 基板及び記録層を有する光情報記録媒体であって、この光情報記録媒体には含フッ素脂肪族環構造を有する透明なフッ素系樹脂層が構成されてなることを特徴とする光情報記録媒体。
【請求項2】 フッ素系樹脂層の厚さが約0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1の光情報記録媒体。
【請求項3】 フッ素系樹脂は、繰り返し単位中に脂肪族環構造を有し、かつ、環構成原子のうち少なくとも2原子が重合体主鎖に含まれ、そしてフッ素含有量が30重量%以上のものであることを特徴とする請求項1または請求項2の光情報記録媒体。

【図1】
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【公開番号】特開平5−290407
【公開日】平成5年(1993)11月5日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−94135
【出願日】平成4年(1992)4月14日
【出願人】(000001085)株式会社クラレ (1,607)