光源装置および照明装置
【課題】 従来に比べて十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置を提供する。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板6を備え、蛍光体層2は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料からなる接合部7で基板6に接合されている。
【解決手段】 紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れた位置にあり、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射した側の面から蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板6を備え、蛍光体層2は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料からなる接合部7で基板6に接合されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置は広く普及しているが、近年では高輝度化が進み、一般照明や自動車のヘッドランプなどその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も高輝度化することで、さらに多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
このような光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するための手段として、光半導体に大電流を投入し光半導体からの励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体層において樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまう。このため、結果として、発光強度は飽和、減少し、光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置の高輝度化は困難であった。
【0004】
ここで、蛍光体層内の樹脂成分の変色とは、通常、蛍光体層は一定の形状に再現性良く形成するため、蛍光体粉末を樹脂成分と混練してペースト状に調製し、印刷法等を用いて塗布形成しており、この樹脂成分が加熱され200℃程度以上になると変色してしまう現象のことである。樹脂成分は本来透明であるため、熱により樹脂成分に変色が起きると、光半導体からの励起光や蛍光体層からの蛍光の一部を吸収してしまい、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0005】
また、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このため、熱により発生する蛍光体の温度消光も、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、蛍光体層に樹脂を含まない蛍光体層を用いた光源が提案されている。この場合、蛍光体層は、樹脂成分を含まないため、変色は起こらず、さらに蛍光体層を温度感受性の低い蛍光体のセラミックス層とするために温度消光が起きないので高輝度化が可能である。また図1のように蛍光体層92を光半導体(固体光源)95と直接接合することで、蛍光体層92で発生した熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−005367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の図1に示すような光半導体(固体光源)95と蛍光体層92とが直接接合された光源装置では、光半導体(固体光源)95からの励起光によって励起された蛍光体層92からの発光(蛍光)のうち光半導体(固体光源)95側とは反対側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに蛍光体層92を透過する光半導体(固体光源)95からの励起光とを用いている。つまり、図1の光源装置は、蛍光体層92を透過する光を利用する透過方式のものとなっている。
【0009】
ここで、蛍光体層92からの出射光を考えると、上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて光半導体(固体光源)95側へ戻って行く光、つまり反射光も存在しており、この光(反射光)は、光半導体(固体光源)95に再吸収されるため、照明光として利用できない光となってしまうという問題があった。
【0010】
また、図1の光源装置では、蛍光体層92の熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図しているが、光半導体(固体光源)95の励起光強度を高めた場合、蛍光体層92のみならず光半導体(固体光源)95でも発熱が起きるため、蛍光体層92の発熱を同じく発熱している光半導体(固体光源)95の側から放散させることとなり、熱放散の効率が良くないという問題があった。
【0011】
このように、図1の光源装置では、透過方式のものとなっていることと、蛍光体層92の発熱に対する熱放散の効率が良くないということとから、高輝度化に限界があった。
【0012】
本発明は、従来に比べて十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、前記蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜が形成されており、前記蛍光体層および前記光反射膜は、接合部により基板に接合されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の光源装置において、前記接合部は、熱伝導性および流動性を有する材料で形成されており、前記基板は、熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至請求項7記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出すので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0021】
特に、請求項1、請求項2記載の発明によれば、蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層であり、蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されているので、蛍光体層からの熱放散(放熱)の効率を、より一層高めることができ、より一層高輝度化を図ることができる。また、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)は、流動性を有する材料で前記基板に接合されていることにより、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)が基板および基板との接合部との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止できる。
【0022】
また、請求項3、請求項4記載の発明によれば、蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射層が形成されているので、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0023】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられているので、蛍光体層と基板との接合部が流動性を有する材料で形成されていても、蛍光体層を基板に対して固定することができる。
【0024】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えているので、固体光源に対して蛍光体層を回転させることにより、固体光源からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の光源装置を示す図である。
【図2】本発明の光源装置の第1の構成例を示す図である。
【図3】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の一例を示す図である。
【図4】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図5】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図6】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての構成例を示す図である。
【図7】本発明の光源装置の第2の構成例を示す図である。
【図8】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の一例を示す図である。
【図9】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図10】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図11】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての構成例を示す図である。
【図12】光反射膜に対する保護膜を示す図である。
【図13】蛍光体層と光反射膜との間に設けられる熱応力の緩衝材を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図2(a),(b)は、本発明の光源装置の第1の構成例を示す図である。なお、図2(a)は全体の正面図、図2(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図である。図2(a),(b)を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0028】
ここで、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられる。
【0029】
また、蛍光体層2の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側には光反射性と熱伝導性を有する基板(放熱基板)6が設けられており、蛍光体層2は、放熱基板6に接合部7によって接合されている。ここで、接合部7には、後述のように、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料(例えば熱伝導性グリース)が用いられるのが良い。
【0030】
また、この光源装置10では、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光(励起光、蛍光)を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。
【0031】
このように、この光源装置10は、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用することを特徴としている。
【0032】
すなわち、図1に示した従来の光源装置のように、蛍光体層92が固体光源95と接している場合には、高輝度化をしようとしても、蛍光体層92と固体光源95との両方とも加熱されてしまうため、蛍光体層92からの熱放散の効率が悪かったが、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2を固体光源5から離して配置することで、高輝度化をする場合にも、蛍光体層2からの熱を、接合部7を介して低温の放熱基板6へ放散させることが可能となり、蛍光体層2からの熱放散の効率を、図1に示した従来の光源装置に比べて、著しく高めることができる。
【0033】
また、図1に示した従来の光源装置では、固体光源95からの励起光と蛍光体層92からの蛍光のうち、固体光源95とは反対の側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに透過する固体光源95からの励起光とを用いている。つまり透過方式を使用している。ここで、透過方式では、蛍光体層92からの出射光を考えると、励起光については上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く発光、つまり反射光も存在しており、この反射光は固体光源95に再吸収されるため照明光として利用できない光となってしまう。また、蛍光体層92からの蛍光は、蛍光体層92の両面から出射するため、やはり固体光源95側に出射する光は利用できない。このように、透過方式では、光の利用効率が低下してしまう。また、透過方式では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、蛍光体層92から固体光源95までの距離が長くなるため、蛍光体層92からの熱を固体光源95に放散する上で不利であった。
【0034】
これに対し、図2(a),(b)の光源装置10では、固体光源5とは反対の側に出射する光(励起光、蛍光)を反射面(例えば基板6の反射面)で固体光源5側に反射する反射方式を採用しているので、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)の全て(すなわち、固体光源5側に出射する蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの励起光の全て(すなわち、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光の反射光)とを照明光として利用できるため(すなわち、励起光、蛍光とも効率よく照明光として利用できるため)、光の利用効率を著しく高めることができ、高輝度化が可能となる。また、透過型に対し、反射型では、蛍光体層2の厚みが半分以下でも蛍光体層2内の光路長が等しくなり、同じ色度の光が得られるため、蛍光体層2を薄くすることができ、蛍光体層2から基板6までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0035】
このように、図2(a),(b)の光源装置10では、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用するので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0036】
さらに、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられるので、熱による変色がなく、光の吸収が少ないことから、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0037】
ここで、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層2とは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。このような蛍光体層を実現するものとして蛍光体粉末をガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスと称す)などが挙げられる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設けて有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、ここに挙げた蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に、樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体層2から基板6への熱放散においても有利である。特に蛍光体セラミックスは、一般的に、ガラスよりもさらに熱伝導率が高く、単結晶より製造コストが安いため、これを蛍光体層2に用いるのが好適である。
【0038】
また、蛍光体層2は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。具体的には、固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、青、緑、赤色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、青、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(青、緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの紫外光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色の照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、緑、赤、黄色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、黄色の蛍光体だけを含んでいるときには、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0039】
また、図2(a),(b)の光源装置10において、放熱基板6は、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層2から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この放熱基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0040】
また、蛍光体層2と放熱基板6との接合部7も、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層から熱を放散させる役割とを担うものであるから、高い光反射特性と伝熱特性を併せ持つ金属(金属のろう付け)が用いられるのが望ましく、接合部7としては、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などを用いることができる。しかしながら、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含まないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられる場合、接合部7を有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などの流動性の無いもので形成すると、蛍光体層2と接合部7と放熱基板6の熱膨張係数を一致させることが難しいため、蛍光体層2に励起光が入射し蛍光体層2が加熱されるとき、加熱によって発生した熱応力によって蛍光体層2が割れてしまうという問題が生じる。蛍光体層2に割れが発生すると発光強度が変わってしまうため、光源装置として使用する際に大きな問題となっていた。この問題を解決するために、図2(a),(b)の光源装置10では、接合部7に光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料を用いている。
【0041】
ここで、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料としては、熱伝導性グリースなどが用いられる。熱伝導性グリースは、炭化水素系油もしくはシリコーン油に光反射性と熱伝導性を高めるために光反射性と熱伝導性を有する金属のフィラーを混合したものであり、樹脂とは異なり加熱による硬化が見られない物質である。従って樹脂と比較して接着性は劣るものの、流動性があるため、蛍光体層2の熱膨張を吸収し、結果的に蛍光体層2の割れを防ぐ効果を有するものである。
【0042】
このように、図2(a),(b)の光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層2とを備え、前記固体光源5と前記蛍光体層2とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層2の面のうち前記固体光源5からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板(放熱基板)6を備え、前記蛍光体層2は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料(例えば熱伝導性グリース)からなる接合部7で前記基板6に接合されていることを特徴としている。
【0043】
これにより、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2が基板6および基板6との接合部7との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止できる。
【0044】
なお、図2(a),(b)の光源装置10では、接合部7に流動性を有する材料が用いられることにより、このままでは、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2が基板6に対して動いてしまう。すなわち、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2は基板6に対してしっかりと固定されている必要がある。換言すれば、蛍光体層2を基板6に対して固定する固定手段がさらに設けられる必要がある。
【0045】
図3(a),(b)には、図2(a),(b)の光源装置10において、蛍光体層2を基板6に対して固定する固定手段9の一例が示されている。なお、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図である。図3(a),(b)を参照すると、固定手段9は、蛍光体層2を上部から覆う固定部材11と、固定部材11を基板6に対してネジ止めすることで蛍光体層2を基板6に対して固定するネジ12とを有している。図3(a),(b)の例では、固定部材11は、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられている。また、図4、図5は固定手段9の他の例を示す図である。図4の例では、固定部材11には平板が用いられている。ただし、図4の例のように固定部材11に平板を用いる場合に比べ、図3(a),(b)の例のように、固定部材11として、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられているものを用いる場合には、蛍光体層2の端面からの光の出射成分を反射することができるため高輝度化につながり望ましい。さらに図5の例のように凸型の基板6の上に蛍光体層2を固定部材11で固定する構造とすれば、固定部材11へ伝導してくる熱を基板6へと効率よく熱放散することができるため、より一層の発光装置の高信頼性化と高輝度化が実現可能である。固定部材11は、熱伝導性の観点からは金属製が望ましいが、蛍光体層で発生する応力緩和と固定部材取り付けの簡便さの観点からはゴム製が望ましい。特に固定部材11がゴム製の場合には、接合部7であるグリースからオイルが出てくるブリードアウトという現象が装置に及ぼす影響を防止できるため望ましい。詳しく説明すると、グリースを長時間高温下においた場合、そのグリースのオイル成分が表面からにじみ出る現象、ブリードアウトが良く知られている。図2(a),(b)の光源装置10の構成では、接合部7であるグリースは蛍光体層2の直下に置かれており、熱放散の主たる経路であるため蛍光体層2と同様に高温にさらされることが予想される。その場合、ブリードアウトが発生し、にじみでたオイルが蛍光体層2の上面(励起光で励起される面)に回りこみ、その表面を曇らせ、結果的に輝度を低下させる問題が発生する恐れがある。固定部材11にゴムを使用した場合には、金属に比べて蛍光体層2や接合部7と固定部材11の隙間をなくしやすいため、上記の問題を抑制することが出来る。この固定部材11を放熱基板6と固定することで、蛍光体層2も放熱基板6上に固定する。金属製の固定部材11の固定方法としては図3(a),(b)や図4のようなねじ止めが考えられ、それ以外にも、ばねやかしめなどによる固定方法が採用可能である。また、ゴム製の固定部材11の場合には、図5のように蛍光体層2の上から固定部材11を被せることでねじ等を使用せずに放熱基板6に固定することができる。
【0046】
また、上述した第1の構成例の光源装置10において、蛍光体層2は、固定されていてもよいが、蛍光体層2を移動可能に構成することもできる。例えば、図6(a),(b)に示すように(図6(a)は正面図、図6(b)は平面図である)、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体1は、蛍光体層2と放熱基板6を接合部7で接合したものをモーター4等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体1において、放熱基板6や接合部7が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、放熱基板6の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。このように、固体光源5に対して蛍光体層2を回転させることで、励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができる。この蛍光回転体1を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることが出来るため、より一層の高輝度が可能となる。
【0047】
また、図7(a),(b)は、本発明の光源装置の第2の構成例を示す図である。なお、図7(a)は全体の正面図、図7(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図であり、図7(a),(b)において図2(a),(b)と同様の箇所には同じ符号を付している。図7(a),(b)を参照すると、この光源装置20は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0048】
ここで、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられるのが好ましい。
【0049】
また、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜21が形成されている。ここで、光反射膜21は、蛍光体層2上に、例えばAg(銀)やAl(アルミニウム)などの材料で、数10nm〜数μm程度の厚さに、蒸着法やスパッタ法などにより形成されている。なお、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に、光反射膜21が形成されていることにより、蛍光体層2を透過しようとする励起光成分や蛍光成分を反射することで、蛍光体層2からの光取り出し効率を向上させるものである。換言すれば、図7(a),(b)の光源装置20も、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光(励起光、蛍光)を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。なお一般に、鏡面状態まで研磨した蛍光体層2には、高い光反射率を有する光反射膜21を形成可能であり、蛍光体層2に光反射膜21を形成するときには、図2(a),(b)の光源装置10の基板6や接合部7による反射よりも高い光反射率を実現することができ、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0050】
また、蛍光体層2および光反射膜21の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側には熱伝導性を有する基板(放熱基板)26が設けられており、蛍光体層2は、基板26に接合部27によって接合されている。
【0051】
ここで、基板26は、蛍光体層2および光反射膜21から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2および光反射膜21の支持基板の役割も担うものである。このため、高い伝熱特性、加工性が求められる。この基板26には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0052】
また、蛍光体層2および光反射膜21と放熱基板26との接合部27も、蛍光体層2から熱を放散させる役割を担うものであるから、高い伝熱特性を持つ金属(金属のろう付け)が用いられるのが望ましく、接合部27としては、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などを用いることができる。しかしながら、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含まないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられる場合、接合部27を有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などの流動性の無いもので形成すると、蛍光体層2および光反射膜21と接合部27と放熱基板26の熱膨張係数を一致させることが難しいため、蛍光体層2に励起光が入射し蛍光体層2が加熱されるとき、加熱によって発生した熱応力によって蛍光体層2が割れてしまうという問題が生じる。蛍光体層2に割れが発生すると発光強度が変わってしまうため、光源装置として使用する際に大きな問題となっていた。この問題を解決するために、図7(a),(b)の光源装置20では、接合部27には、熱伝導性と流動性とを有する材料が用いられるのが好ましい。熱伝導性と流動性とを有する材料としては、前述したように熱伝導性グリースなどが用いられる。熱伝導性グリースは、炭化水素系油もしくはシリコーン油に熱伝導性を高めるために酸化物や金属のフィラーを混合したものであり、樹脂とは異なり加熱による硬化が見られない物質である。従って樹脂と比較して接着性は劣るものの、流動性があるため、蛍光体層2の熱膨張を吸収し、蛍光体層2が例えば実質的に樹脂成分を含んでいないもの(例えば蛍光体セラミックス)である場合に、蛍光体層2の割れを防ぐ効果を有するものである。
【0053】
換言すれば、この第2の構成例では、反射機能は、基板26や接合部27ではなく、光反射膜21に持たせ、放熱機能は、基板26および接合部27に持たせ、蛍光体層2が実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)である場合に、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)が基板26および基板26との接合部27との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止する機能は、接合部27に持たせている。
【0054】
すなわち、図1に示した従来の光源装置のように、蛍光体層92が固体光源95と接している場合には、高輝度化をしようとしても、蛍光体層92と固体光源95との両方とも加熱されてしまうため、蛍光体層92からの熱放散の効率が悪かったが、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2を固体光源5から離して配置することで、高輝度化をする場合にも、蛍光体層2からの熱を、接合部27を介して低温の放熱基板26へ放散させることが可能となり、蛍光体層2からの熱放散の効率を、図1に示した従来の光源装置に比べて、著しく高めることができる。
【0055】
また、図1に示した従来の光源装置では、固体光源95からの励起光と蛍光体層92からの蛍光のうち、固体光源95とは反対の側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに透過する固体光源95からの励起光とを用いている。つまり透過方式を使用している。ここで、透過方式では、蛍光体層92からの出射光を考えると、励起光については上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く発光、つまり反射光も存在しており、この反射光は固体光源95に再吸収されるため照明光として利用できない光となってしまう。また、蛍光体層92からの蛍光は、蛍光体層92の両面から出射するため、やはり固体光源95側に出射する光は利用できない。このように、透過方式では、光の利用効率が低下してしまう。また、透過方式では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、蛍光体層92から固体光源95までの距離が長くなるため、蛍光体層92からの熱を固体光源95に放散する上で不利であった。
【0056】
これに対し、図7(a),(b)の光源装置20では、固体光源5とは反対の側に出射する光(励起光、蛍光)を反射面(光反射膜21)で固体光源5側に反射する反射方式を採用しているので、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)の全て(すなわち、固体光源5側に出射する蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの励起光の全て(すなわち、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光の反射光)とを照明光として利用できるため(すなわち、励起光、蛍光とも効率よく照明光として利用できるため)、光の利用効率を著しく高めることができ、高輝度化が可能となる。また、透過型に対し、反射型では、蛍光体層2の厚みが半分以下でも蛍光体層2内の光路長が等しくなり、同じ色度の光が得られるため、蛍光体層2を薄くすることができ、蛍光体層2から基板26までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0057】
このように、図7(a),(b)の光源装置20では、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用するので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0058】
さらに、図7(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられる場合には、熱による変色がなく、光の吸収が少ないことから、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0059】
なお、図7(a),(b)の光源装置20では、接合部27に流動性を有する材料が用いられる場合には、このままでは、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2および光反射膜21が基板26に対して動いてしまう。すなわち、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2および光反射膜21は基板26に対してしっかりと固定されている必要がある。換言すれば、蛍光体層2および光反射膜21を基板26に対して固定する固定手段がさらに設けられる必要がある。
【0060】
図8(a),(b)には、図7(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2および光反射膜21を基板26に対して固定する固定手段29の一例が示されている。なお、図8(a)は正面図、図8(b)は平面図である。図8(a),(b)を参照すると、固定手段29は、蛍光体層2を上部から覆う固定部材31と、固定部材31を基板26に対してネジ止めすることで蛍光体層2を基板26に対して固定するネジ32とを有している。図8(a),(b)の例では、固定部材31は、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられている。また、図9、図10は固定手段29の他の例を示す図である。図9の例では、固定部材31には平板が用いられている。ただし、図9の例のように固定部材31に平板を用いる場合に比べ、図8(a),(b)の例のように、固定部材31として、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられているものを用いる場合には、蛍光体層2の端面からの光の出射成分を反射することができるため高輝度化につながり望ましい。さらに図10の例のように凸型の基板26の上に蛍光体層2および光反射膜21を固定部材31で固定する構造とすれば、固定部材31へ伝導してくる熱を基板26へと効率よく熱放散することができるため、より一層の発光装置の高信頼性化と高輝度化が実現可能である。固定部材31は、熱伝導性の観点からは金属製が望ましいが、蛍光体層で発生する応力緩和と固定部材取り付けの簡便さの観点からはゴム製が望ましい。特に固定部材31がゴム製の場合には、接合部27であるグリースからオイルが出てくるブリードアウトという現象が装置に及ぼす影響を防止できるため望ましい。詳しく説明すると、グリースを長時間高温下においた場合、そのグリースのオイル成分が表面からにじみ出る現象、ブリードアウトが良く知られている。図7(a),(b)の光源装置20の構成では、接合部27であるグリースは蛍光体層2および光反射膜21の直下に置かれており、熱放散の主たる経路であるため蛍光体層2および光反射膜21と同様に高温にさらされることが予想される。その場合、ブリードアウトが発生し、にじみでたオイルが蛍光体層2の上面(励起光で励起される面)に回りこみ、その表面を曇らせ、結果的に輝度を低下させる問題が発生する恐れがある。固定部材31にゴムを使用した場合には、金属に比べて蛍光体層2や接合部27と固定部材31の隙間をなくしやすいため、上記の問題を抑制することが出来る。この固定部材31を放熱基板26と固定することで、蛍光体層2および光反射膜21も放熱基板26上に固定する。金属製の固定部材31の固定方法としては図8(a),(b)や図9のようなねじ止めが考えられ、それ以外にも、ばねやかしめなどによる固定方法が採用可能である。また、ゴム製の固定部材31の場合には、図10のように蛍光体層2の上から固定部材31を被せることでねじ等を使用せずに放熱基板26に固定することができる。
【0061】
また、上述した第2の構成例の光源装置20において、蛍光体層2は、固定されていてもよいが、蛍光体層2を移動可能に構成することもできる。例えば、図11(a),(b)に示すように(図11(a)は正面図、図11(b)は平面図である)、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体41として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体41は、蛍光体層2および光反射膜21と放熱基板26を接合部27で接合したものをモーター4等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体41において、光反射膜21が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、放熱基板26の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。このように、固体光源5に対して蛍光体層2を回転させることで、励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができる。この蛍光回転体41を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることが出来るため、より一層の高輝度が可能となる。
【0062】
次に、図2(a),(b)の光源装置10、および、図7(a),(b)の光源装置20をより詳細に説明する。
【0063】
図2(a),(b)の光源装置10、図7(a),(b)の光源装置20において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0064】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約380nmないし約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、La2O2S:Eu3+、KSiF6:Mn4+、 KTiF6:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Lu3Al5O12:Ce3+、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+等を用いることができ、青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+、LaAl(Si,Al)6(N,O)10:Ce3+等を用いることができる。
【0065】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nmの青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、KSiF6:Mn4+、KTiF6:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Lu3Al5O12:Ce3+、Y3(Ga,Al)5O12:Ce3+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、CaSc2O4:Eu2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ba3Si6O12N2:Eu2+、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+等を用いることができる。また、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、Y3Al5O12:Ce3+ (YAG)、(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の黄色蛍光体を用いることができる。
【0066】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末をガラス中に分散させたものや、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP2O3、SiO2、B2O3、Al2O3などの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce3+やEu2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。これらの中でも透光性を有する蛍光体セラミックスを使用することが望ましい。これは、焼結体中に光の散乱の原因となるポアや粒界の不純物がほとんど存在しないために透光性を有するに至った蛍光体セラミックスである。ポアや不純物は熱拡散を妨げる原因にもなるため、透光性セラミックスは高い熱伝導率を示す。このため蛍光体層として利用した場合には励起光や蛍光を拡散により失うことなく蛍光体層から取り出して利用でき、さらに蛍光体層で発生した熱を効率良く放散することができる。透光性を示さない焼結体でも出来るだけポアや不純物の少ないものが望ましい。ポアの残存量を評価する指標としては蛍光体セラミックスの比重の値を用いることができ、その値が計算される理論値に対して95%以上のものが望ましい。
【0067】
ここで、青色励起の黄色発光蛍光体であるY3Al5O12:Ce3+蛍光体を例に、透光性を有する蛍光体セラミックスの製造方法を説明する。蛍光体セラミックスは出発原料の混合工程、成形工程、焼成工程、加工工程を経て製造される。出発原料には、酸化イットリウムや酸化セリウムやアルミナ等、Y3Al5O12:Ce3+蛍光体の構成元素の酸化物や、焼成後に酸化物となる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いる。出発原料の粒径はサブミクロンサイズのものが望ましい。これらの原料を化学量論比となるように秤量する。このとき焼成後のセラミックスの透過率向上を目的として、カルシウムやシリコンなどの化合物を添加することも可能である。秤量した原料は、水もしくは有機溶剤を用い、湿式ボールミルにより十分に分散、混合を行う。次に混合物を所定の形状に成形する。成形方法としては、一軸加圧法、冷間静水圧法、スリップキャスティング法や射出成形法等を用いることができる。得られた成形体を1600〜1800℃で焼成する。これにより、透光性のY3Al5O12:Ce3+蛍光体セラミックスを得ることができる。
【0068】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて、厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらに、ダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより、円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。
【0069】
ここで、蛍光体セラミックスは、空気に対して屈折率が高く、さらに、内部にポアなどの散乱の原因となるものが少なく、光がセラミックス内部を導波するため、板状に成形した場合には側面から出射される発光成分が増加し、正面方向へ出射される発光成分が減少してしまう。この問題を解決するために、セラミックスの表面にエッチングにより凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、側面に反射層を設けることで、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。また、蛍光体セラミックスの励起光入射面に、酸化物の多層膜からなるARコート(反射防止機能を有する膜)を施しても良い。
【0070】
また、光反射膜21は、銀やアルミニウムに代表される金属膜や、種々の酸化物膜を周期的に積層させた多層膜などが使用可能である。また、これらの単独ではなく、増反射膜として多層膜をつけ、その後に金属膜をつけても良い。また、光反射膜21の腐食などによる劣化を防止するために、図12に示すように、水や腐食性ガスに対してバリア性を有する保護膜44を形成しても良い。保護膜44としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等の酸化物や、窒化珪素などの窒化物、さらにサイアロン等の酸窒化物膜などが挙げられる。また、光反射膜21は、スパッタ法や蒸着法等で蛍光体層2上に作製可能である。また、図13に示すように、蛍光体層2と光反射膜21との熱膨張係数の差異による熱応力によって、光反射膜21が蛍光体層2から剥れるのを防止するため、蛍光体層2と光反射膜21との間に、熱応力の緩衝材45として、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等を設けても良い。
【0071】
また、接合部7、27に用いられる熱伝導性グリースとしては、油成分としてシリコーン油を用いるシリコーン系グリース、炭化水素系油を用いる非シリコーン系グリースの両方とも使用可能である。また、グリース中に混入されるフィラーとしては、アルミナや酸化亜鉛などの酸化物微粒子や銀などの金属微粒子などが挙げられる。特に、接合部7は光反射性が要求されるため、フィラーとしては、光反射性を有する材料(シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等)が使用される。
【0072】
また、放熱基板6、26には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどを使用可能であるが、特に放熱基板6には、高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としては、Al、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体や、それらを含む合金が使用可能である。また、放熱基板6、26の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。また、放熱基板6、26には、放熱性を高めるために、フィンなどの構造を設けても良い。
【0073】
また、固定部材11、31は、大きく分けて、無機物質製のものとゴム製のものが使用可能である。無機物質製の場合には、放熱基板6、26と同じく金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどが使用可能である。熱膨張を考慮すると、固定部材11、31と放熱基板6、26は同じ材質であることが望ましい。また、固定部材11、31として、蛍光体層2を押さえるために凹部を設ける場合には、加工性に優れる金属基板を使用することが望ましい。一方、ゴム製の場合には、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、クロロプレーンゴム、アクリルゴムなどが使用可能であるが、中でも耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの使用が望ましい。固定部材11、31も接合層7、27と同様、熱伝導率が高いほうが蛍光体層2からの熱放散が促進できるため望ましい。また、蛍光体層2の端面から放出される蛍光を蛍光体層2の上面から効率良く取り出すために、固定部材11、31は光反射率が高いほうが望ましい。これらの観点から、固定部材11、31がゴム製の場合、ゴムの中に熱伝導性や光反射率を高めるためシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等のフィラーを入れても良い。
【0074】
また、図2(a),(b)の光源装置10、図7(a),(b)の光源装置20では、1つの蛍光体層2だけが設けられている構成となっているが、2種類以上の蛍光体層を使用することもできる。2種類以上の蛍光体層を使用する場合には、蛍光体層を水平方向に並べて配置しても良いし、垂直方向に重ねて配置しても良い。
【0075】
上述したように、本発明では、固体光源5と蛍光体層2を放熱基板6、26に対して同じ側に設置することで、反射型の光源装置となる。もちろん必要であれば、固体光源5と蛍光体層2との間にレンズなどの光学素子を入れることもできる。
【0076】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、高輝度化が可能な照明装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、照明一般などに利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、41 蛍光回転体
2 蛍光体層
4 モーター
5 固体光源
6、26 放熱基板
7、27 接合部
9、29 固定手段
11、31 固定部材
10、20 光源装置
21 光反射膜
12、32 ネジ
44 保護膜
45 緩衝材
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源装置および照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LED等の光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置は広く普及しているが、近年では高輝度化が進み、一般照明や自動車のヘッドランプなどその応用範囲が広がってきている。このような光源装置は、今後も高輝度化することで、さらに多様な用途での普及が進むと考えられている。
【0003】
このような光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置を高輝度化するための手段として、光半導体に大電流を投入し光半導体からの励起光強度を強めることが考えられるが、実際には蛍光体層で熱が発生し、蛍光体層において樹脂成分の変色や蛍光体の温度消光による蛍光強度の低下が生じてしまう。このため、結果として、発光強度は飽和、減少し、光半導体と蛍光体層を組み合わせた光源装置の高輝度化は困難であった。
【0004】
ここで、蛍光体層内の樹脂成分の変色とは、通常、蛍光体層は一定の形状に再現性良く形成するため、蛍光体粉末を樹脂成分と混練してペースト状に調製し、印刷法等を用いて塗布形成しており、この樹脂成分が加熱され200℃程度以上になると変色してしまう現象のことである。樹脂成分は本来透明であるため、熱により樹脂成分に変色が起きると、光半導体からの励起光や蛍光体層からの蛍光の一部を吸収してしまい、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0005】
また、蛍光体の温度消光とは、蛍光体を加熱すると蛍光強度が低下する現象のことである。温度消光により蛍光強度が低下すると、蛍光に変換されなかったエネルギーが熱となるため蛍光体の発熱量が増加し、さらに蛍光体の温度が上昇して温度消光が進み、蛍光強度もさらに低下するという現象が起きる。このため、熱により発生する蛍光体の温度消光も、高輝度化を妨げる要因となっていた。
【0006】
これらの問題を解決するために、特許文献1には、蛍光体層に樹脂を含まない蛍光体層を用いた光源が提案されている。この場合、蛍光体層は、樹脂成分を含まないため、変色は起こらず、さらに蛍光体層を温度感受性の低い蛍光体のセラミックス層とするために温度消光が起きないので高輝度化が可能である。また図1のように蛍光体層92を光半導体(固体光源)95と直接接合することで、蛍光体層92で発生した熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−005367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、従来の図1に示すような光半導体(固体光源)95と蛍光体層92とが直接接合された光源装置では、光半導体(固体光源)95からの励起光によって励起された蛍光体層92からの発光(蛍光)のうち光半導体(固体光源)95側とは反対側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに蛍光体層92を透過する光半導体(固体光源)95からの励起光とを用いている。つまり、図1の光源装置は、蛍光体層92を透過する光を利用する透過方式のものとなっている。
【0009】
ここで、蛍光体層92からの出射光を考えると、上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて光半導体(固体光源)95側へ戻って行く光、つまり反射光も存在しており、この光(反射光)は、光半導体(固体光源)95に再吸収されるため、照明光として利用できない光となってしまうという問題があった。
【0010】
また、図1の光源装置では、蛍光体層92の熱を光半導体(固体光源)95側に放散することを意図しているが、光半導体(固体光源)95の励起光強度を高めた場合、蛍光体層92のみならず光半導体(固体光源)95でも発熱が起きるため、蛍光体層92の発熱を同じく発熱している光半導体(固体光源)95の側から放散させることとなり、熱放散の効率が良くないという問題があった。
【0011】
このように、図1の光源装置では、透過方式のものとなっていることと、蛍光体層92の発熱に対する熱放散の効率が良くないということとから、高輝度化に限界があった。
【0012】
本発明は、従来に比べて十分な高輝度化を図ることの可能な光源装置および照明装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、前記蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されていることを特徴としている。
【0014】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴としている。
【0015】
また、請求項3記載の発明は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜が形成されており、前記蛍光体層および前記光反射膜は、接合部により基板に接合されていることを特徴としている。
【0016】
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の光源装置において、前記接合部は、熱伝導性および流動性を有する材料で形成されており、前記基板は、熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴としている。
【0017】
また、請求項5記載の発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられていることを特徴としている。
【0018】
また、請求項6記載の発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴としている。
【0019】
また、請求項7記載の発明は、請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置である。
【発明の効果】
【0020】
請求項1乃至請求項7記載の発明によれば、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出すので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0021】
特に、請求項1、請求項2記載の発明によれば、蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層であり、蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されているので、蛍光体層からの熱放散(放熱)の効率を、より一層高めることができ、より一層高輝度化を図ることができる。また、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)は、流動性を有する材料で前記基板に接合されていることにより、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)が基板および基板との接合部との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止できる。
【0022】
また、請求項3、請求項4記載の発明によれば、蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射層が形成されているので、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0023】
また、請求項5記載の発明によれば、請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられているので、蛍光体層と基板との接合部が流動性を有する材料で形成されていても、蛍光体層を基板に対して固定することができる。
【0024】
また、請求項6記載の発明によれば、請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えているので、固体光源に対して蛍光体層を回転させることにより、固体光源からの励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができ、これにより、より一層の高輝度化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】従来の光源装置を示す図である。
【図2】本発明の光源装置の第1の構成例を示す図である。
【図3】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の一例を示す図である。
【図4】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図5】図2の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図6】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての構成例を示す図である。
【図7】本発明の光源装置の第2の構成例を示す図である。
【図8】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の一例を示す図である。
【図9】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図10】図7の光源装置において、蛍光体層を基板に対して固定する固定手段の他の例を示す図である。
【図11】反射型蛍光回転体の蛍光体層についての構成例を示す図である。
【図12】光反射膜に対する保護膜を示す図である。
【図13】蛍光体層と光反射膜との間に設けられる熱応力の緩衝材を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0027】
図2(a),(b)は、本発明の光源装置の第1の構成例を示す図である。なお、図2(a)は全体の正面図、図2(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図である。図2(a),(b)を参照すると、この光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0028】
ここで、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられる。
【0029】
また、蛍光体層2の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側には光反射性と熱伝導性を有する基板(放熱基板)6が設けられており、蛍光体層2は、放熱基板6に接合部7によって接合されている。ここで、接合部7には、後述のように、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料(例えば熱伝導性グリース)が用いられるのが良い。
【0030】
また、この光源装置10では、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光(励起光、蛍光)を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。
【0031】
このように、この光源装置10は、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用することを特徴としている。
【0032】
すなわち、図1に示した従来の光源装置のように、蛍光体層92が固体光源95と接している場合には、高輝度化をしようとしても、蛍光体層92と固体光源95との両方とも加熱されてしまうため、蛍光体層92からの熱放散の効率が悪かったが、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2を固体光源5から離して配置することで、高輝度化をする場合にも、蛍光体層2からの熱を、接合部7を介して低温の放熱基板6へ放散させることが可能となり、蛍光体層2からの熱放散の効率を、図1に示した従来の光源装置に比べて、著しく高めることができる。
【0033】
また、図1に示した従来の光源装置では、固体光源95からの励起光と蛍光体層92からの蛍光のうち、固体光源95とは反対の側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに透過する固体光源95からの励起光とを用いている。つまり透過方式を使用している。ここで、透過方式では、蛍光体層92からの出射光を考えると、励起光については上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く発光、つまり反射光も存在しており、この反射光は固体光源95に再吸収されるため照明光として利用できない光となってしまう。また、蛍光体層92からの蛍光は、蛍光体層92の両面から出射するため、やはり固体光源95側に出射する光は利用できない。このように、透過方式では、光の利用効率が低下してしまう。また、透過方式では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、蛍光体層92から固体光源95までの距離が長くなるため、蛍光体層92からの熱を固体光源95に放散する上で不利であった。
【0034】
これに対し、図2(a),(b)の光源装置10では、固体光源5とは反対の側に出射する光(励起光、蛍光)を反射面(例えば基板6の反射面)で固体光源5側に反射する反射方式を採用しているので、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)の全て(すなわち、固体光源5側に出射する蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの励起光の全て(すなわち、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光の反射光)とを照明光として利用できるため(すなわち、励起光、蛍光とも効率よく照明光として利用できるため)、光の利用効率を著しく高めることができ、高輝度化が可能となる。また、透過型に対し、反射型では、蛍光体層2の厚みが半分以下でも蛍光体層2内の光路長が等しくなり、同じ色度の光が得られるため、蛍光体層2を薄くすることができ、蛍光体層2から基板6までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0035】
このように、図2(a),(b)の光源装置10では、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用するので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0036】
さらに、図2(a),(b)の光源装置10では、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられるので、熱による変色がなく、光の吸収が少ないことから、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0037】
ここで、樹脂成分を実質的に含まない蛍光体層2とは、蛍光体層の形成に通常使用される樹脂成分が蛍光体層の5wt%以下であるものを意味する。このような蛍光体層を実現するものとして蛍光体粉末をガラス中に分散させたもの、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、蛍光体の単結晶や蛍光体の多結晶体(以下、蛍光体セラミックスと称す)などが挙げられる。蛍光体セラミックスは、蛍光体の製造過程において、焼成前に材料を任意の形状に成形し、焼成した蛍光体の塊である。蛍光体セラミックスは、その製造工程のうち、成形工程においてバインダーとして有機物を使用する場合があるが、成形後に脱脂工程を設けて有機成分を焼き飛ばすため、焼成後の蛍光体セラミックスには有機樹脂成分は5wt%以下しか残留しない。したがって、ここに挙げた蛍光体層は、実質的に樹脂成分を含まず、無機物質のみから構成されているため、熱による変色が発生することがない。また、無機物質のみからなるガラスやセラミックスは、一般に、樹脂よりも熱伝導率が高いため、蛍光体層2から基板6への熱放散においても有利である。特に蛍光体セラミックスは、一般的に、ガラスよりもさらに熱伝導率が高く、単結晶より製造コストが安いため、これを蛍光体層2に用いるのが好適である。
【0038】
また、蛍光体層2は、固体光源5からの励起光により励起され固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。具体的には、固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、青、緑、赤色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が紫外光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、青、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(青、緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの紫外光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色の照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2は、例えば、緑、赤、黄色などの蛍光体のうち、少なくとも1種類の蛍光体を含んでいる。固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、緑、赤色の蛍光体を含んでいるときには(緑、赤色の蛍光体のそれぞれが例えば均一に分散されて混合されたものとなっているときには)、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。また、固体光源5が可視光として青色光を発光するものである場合、蛍光体層2が、例えば、黄色の蛍光体だけを含んでいるときには、固体光源5からの青色光を蛍光体層2に照射するとき、反射光として白色などの照明光を得ることができる。
【0039】
また、図2(a),(b)の光源装置10において、放熱基板6は、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層2から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2の支持基板の役割も担うものである。このため、高い光反射特性、伝熱特性、加工性が求められる。この放熱基板6には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0040】
また、蛍光体層2と放熱基板6との接合部7も、光(固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光)に対する反射面の役割と、蛍光体層から熱を放散させる役割とを担うものであるから、高い光反射特性と伝熱特性を併せ持つ金属(金属のろう付け)が用いられるのが望ましく、接合部7としては、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などを用いることができる。しかしながら、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含まないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられる場合、接合部7を有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などの流動性の無いもので形成すると、蛍光体層2と接合部7と放熱基板6の熱膨張係数を一致させることが難しいため、蛍光体層2に励起光が入射し蛍光体層2が加熱されるとき、加熱によって発生した熱応力によって蛍光体層2が割れてしまうという問題が生じる。蛍光体層2に割れが発生すると発光強度が変わってしまうため、光源装置として使用する際に大きな問題となっていた。この問題を解決するために、図2(a),(b)の光源装置10では、接合部7に光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料を用いている。
【0041】
ここで、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料としては、熱伝導性グリースなどが用いられる。熱伝導性グリースは、炭化水素系油もしくはシリコーン油に光反射性と熱伝導性を高めるために光反射性と熱伝導性を有する金属のフィラーを混合したものであり、樹脂とは異なり加熱による硬化が見られない物質である。従って樹脂と比較して接着性は劣るものの、流動性があるため、蛍光体層2の熱膨張を吸収し、結果的に蛍光体層2の割れを防ぐ効果を有するものである。
【0042】
このように、図2(a),(b)の光源装置10は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層2とを備え、前記固体光源5と前記蛍光体層2とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層2の面のうち前記固体光源5からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板(放熱基板)6を備え、前記蛍光体層2は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料(例えば熱伝導性グリース)からなる接合部7で前記基板6に接合されていることを特徴としている。
【0043】
これにより、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2が基板6および基板6との接合部7との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止できる。
【0044】
なお、図2(a),(b)の光源装置10では、接合部7に流動性を有する材料が用いられることにより、このままでは、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2が基板6に対して動いてしまう。すなわち、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2は基板6に対してしっかりと固定されている必要がある。換言すれば、蛍光体層2を基板6に対して固定する固定手段がさらに設けられる必要がある。
【0045】
図3(a),(b)には、図2(a),(b)の光源装置10において、蛍光体層2を基板6に対して固定する固定手段9の一例が示されている。なお、図3(a)は正面図、図3(b)は平面図である。図3(a),(b)を参照すると、固定手段9は、蛍光体層2を上部から覆う固定部材11と、固定部材11を基板6に対してネジ止めすることで蛍光体層2を基板6に対して固定するネジ12とを有している。図3(a),(b)の例では、固定部材11は、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられている。また、図4、図5は固定手段9の他の例を示す図である。図4の例では、固定部材11には平板が用いられている。ただし、図4の例のように固定部材11に平板を用いる場合に比べ、図3(a),(b)の例のように、固定部材11として、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられているものを用いる場合には、蛍光体層2の端面からの光の出射成分を反射することができるため高輝度化につながり望ましい。さらに図5の例のように凸型の基板6の上に蛍光体層2を固定部材11で固定する構造とすれば、固定部材11へ伝導してくる熱を基板6へと効率よく熱放散することができるため、より一層の発光装置の高信頼性化と高輝度化が実現可能である。固定部材11は、熱伝導性の観点からは金属製が望ましいが、蛍光体層で発生する応力緩和と固定部材取り付けの簡便さの観点からはゴム製が望ましい。特に固定部材11がゴム製の場合には、接合部7であるグリースからオイルが出てくるブリードアウトという現象が装置に及ぼす影響を防止できるため望ましい。詳しく説明すると、グリースを長時間高温下においた場合、そのグリースのオイル成分が表面からにじみ出る現象、ブリードアウトが良く知られている。図2(a),(b)の光源装置10の構成では、接合部7であるグリースは蛍光体層2の直下に置かれており、熱放散の主たる経路であるため蛍光体層2と同様に高温にさらされることが予想される。その場合、ブリードアウトが発生し、にじみでたオイルが蛍光体層2の上面(励起光で励起される面)に回りこみ、その表面を曇らせ、結果的に輝度を低下させる問題が発生する恐れがある。固定部材11にゴムを使用した場合には、金属に比べて蛍光体層2や接合部7と固定部材11の隙間をなくしやすいため、上記の問題を抑制することが出来る。この固定部材11を放熱基板6と固定することで、蛍光体層2も放熱基板6上に固定する。金属製の固定部材11の固定方法としては図3(a),(b)や図4のようなねじ止めが考えられ、それ以外にも、ばねやかしめなどによる固定方法が採用可能である。また、ゴム製の固定部材11の場合には、図5のように蛍光体層2の上から固定部材11を被せることでねじ等を使用せずに放熱基板6に固定することができる。
【0046】
また、上述した第1の構成例の光源装置10において、蛍光体層2は、固定されていてもよいが、蛍光体層2を移動可能に構成することもできる。例えば、図6(a),(b)に示すように(図6(a)は正面図、図6(b)は平面図である)、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体1として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体1は、蛍光体層2と放熱基板6を接合部7で接合したものをモーター4等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体1において、放熱基板6や接合部7が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、放熱基板6の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。このように、固体光源5に対して蛍光体層2を回転させることで、励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができる。この蛍光回転体1を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることが出来るため、より一層の高輝度が可能となる。
【0047】
また、図7(a),(b)は、本発明の光源装置の第2の構成例を示す図である。なお、図7(a)は全体の正面図、図7(b)は蛍光体層が設けられている部分の平面図であり、図7(a),(b)において図2(a),(b)と同様の箇所には同じ符号を付している。図7(a),(b)を参照すると、この光源装置20は、紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源5と、該固体光源5からの励起光により励起され該固体光源5の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類の蛍光体を含む蛍光体層2とを備え、固体光源5と蛍光体層2とが空間的に離れて配置されている。
【0048】
ここで、蛍光体層2には、実質的に樹脂成分を含んでいないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられるのが好ましい。
【0049】
また、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜21が形成されている。ここで、光反射膜21は、蛍光体層2上に、例えばAg(銀)やAl(アルミニウム)などの材料で、数10nm〜数μm程度の厚さに、蒸着法やスパッタ法などにより形成されている。なお、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に、光反射膜21が形成されていることにより、蛍光体層2を透過しようとする励起光成分や蛍光成分を反射することで、蛍光体層2からの光取り出し効率を向上させるものである。換言すれば、図7(a),(b)の光源装置20も、蛍光体層2の面のうち固体光源5からの励起光が入射する側の面とは反対側に設けられた反射面による反射を用いて蛍光などの光(励起光、蛍光)を取り出す方式(以下、反射方式と称す)が採用されている。なお一般に、鏡面状態まで研磨した蛍光体層2には、高い光反射率を有する光反射膜21を形成可能であり、蛍光体層2に光反射膜21を形成するときには、図2(a),(b)の光源装置10の基板6や接合部7による反射よりも高い光反射率を実現することができ、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0050】
また、蛍光体層2および光反射膜21の前記励起光が入射する側の面とは反対の面側には熱伝導性を有する基板(放熱基板)26が設けられており、蛍光体層2は、基板26に接合部27によって接合されている。
【0051】
ここで、基板26は、蛍光体層2および光反射膜21から放散してきた熱を外部へ放散させる役割と、蛍光体層2および光反射膜21の支持基板の役割も担うものである。このため、高い伝熱特性、加工性が求められる。この基板26には、金属基板やアルミナなどの酸化物セラミックス、窒化アルミニウムなどの非酸化セラミックスなどが使用可能であるが、特に高い伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板が使用されるのが望ましい。
【0052】
また、蛍光体層2および光反射膜21と放熱基板26との接合部27も、蛍光体層2から熱を放散させる役割を担うものであるから、高い伝熱特性を持つ金属(金属のろう付け)が用いられるのが望ましく、接合部27としては、有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などを用いることができる。しかしながら、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含まないもの(例えば蛍光体セラミックス)が用いられる場合、接合部27を有機接着剤、無機接着剤、低融点ガラス、金属(金属のろう付け)などの流動性の無いもので形成すると、蛍光体層2および光反射膜21と接合部27と放熱基板26の熱膨張係数を一致させることが難しいため、蛍光体層2に励起光が入射し蛍光体層2が加熱されるとき、加熱によって発生した熱応力によって蛍光体層2が割れてしまうという問題が生じる。蛍光体層2に割れが発生すると発光強度が変わってしまうため、光源装置として使用する際に大きな問題となっていた。この問題を解決するために、図7(a),(b)の光源装置20では、接合部27には、熱伝導性と流動性とを有する材料が用いられるのが好ましい。熱伝導性と流動性とを有する材料としては、前述したように熱伝導性グリースなどが用いられる。熱伝導性グリースは、炭化水素系油もしくはシリコーン油に熱伝導性を高めるために酸化物や金属のフィラーを混合したものであり、樹脂とは異なり加熱による硬化が見られない物質である。従って樹脂と比較して接着性は劣るものの、流動性があるため、蛍光体層2の熱膨張を吸収し、蛍光体層2が例えば実質的に樹脂成分を含んでいないもの(例えば蛍光体セラミックス)である場合に、蛍光体層2の割れを防ぐ効果を有するものである。
【0053】
換言すれば、この第2の構成例では、反射機能は、基板26や接合部27ではなく、光反射膜21に持たせ、放熱機能は、基板26および接合部27に持たせ、蛍光体層2が実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)である場合に、実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)が基板26および基板26との接合部27との熱膨張係数の差異によって割れるのを有効に防止する機能は、接合部27に持たせている。
【0054】
すなわち、図1に示した従来の光源装置のように、蛍光体層92が固体光源95と接している場合には、高輝度化をしようとしても、蛍光体層92と固体光源95との両方とも加熱されてしまうため、蛍光体層92からの熱放散の効率が悪かったが、図7(a),(b)の光源装置20では、蛍光体層2を固体光源5から離して配置することで、高輝度化をする場合にも、蛍光体層2からの熱を、接合部27を介して低温の放熱基板26へ放散させることが可能となり、蛍光体層2からの熱放散の効率を、図1に示した従来の光源装置に比べて、著しく高めることができる。
【0055】
また、図1に示した従来の光源装置では、固体光源95からの励起光と蛍光体層92からの蛍光のうち、固体光源95とは反対の側に出射する蛍光と、蛍光体層92で吸収されずに透過する固体光源95からの励起光とを用いている。つまり透過方式を使用している。ここで、透過方式では、蛍光体層92からの出射光を考えると、励起光については上記透過光とともに蛍光体層92との界面で反射されて固体光源95側へ戻って行く発光、つまり反射光も存在しており、この反射光は固体光源95に再吸収されるため照明光として利用できない光となってしまう。また、蛍光体層92からの蛍光は、蛍光体層92の両面から出射するため、やはり固体光源95側に出射する光は利用できない。このように、透過方式では、光の利用効率が低下してしまう。また、透過方式では、目的の色度の照明光を得るためには蛍光体層92の厚みを厚くする必要があり、蛍光体層92から固体光源95までの距離が長くなるため、蛍光体層92からの熱を固体光源95に放散する上で不利であった。
【0056】
これに対し、図7(a),(b)の光源装置20では、固体光源5とは反対の側に出射する光(励起光、蛍光)を反射面(光反射膜21)で固体光源5側に反射する反射方式を採用しているので、固体光源5からの励起光によって励起された蛍光体層2からの発光(蛍光)の全て(すなわち、固体光源5側に出射する蛍光)と、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの励起光の全て(すなわち、蛍光体層2で吸収されなかった固体光源5からの光の反射光)とを照明光として利用できるため(すなわち、励起光、蛍光とも効率よく照明光として利用できるため)、光の利用効率を著しく高めることができ、高輝度化が可能となる。また、透過型に対し、反射型では、蛍光体層2の厚みが半分以下でも蛍光体層2内の光路長が等しくなり、同じ色度の光が得られるため、蛍光体層2を薄くすることができ、蛍光体層2から基板26までの距離が短くなるので、熱放散の面でも有利である。
【0057】
このように、図7(a),(b)の光源装置20では、基本的には、固体光源5と蛍光体層2とを空間的に離して配置し、発光を反射方式で利用するので、従来に比べて十分な高輝度化を図ることができる。
【0058】
さらに、図7(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2に実質的に樹脂成分を含んでいないものが用いられる場合には、熱による変色がなく、光の吸収が少ないことから、より一層の高輝度化を図ることができる。
【0059】
なお、図7(a),(b)の光源装置20では、接合部27に流動性を有する材料が用いられる場合には、このままでは、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2および光反射膜21が基板26に対して動いてしまう。すなわち、蛍光体層(例えば蛍光体セラミックス)2および光反射膜21は基板26に対してしっかりと固定されている必要がある。換言すれば、蛍光体層2および光反射膜21を基板26に対して固定する固定手段がさらに設けられる必要がある。
【0060】
図8(a),(b)には、図7(a),(b)の光源装置20において、蛍光体層2および光反射膜21を基板26に対して固定する固定手段29の一例が示されている。なお、図8(a)は正面図、図8(b)は平面図である。図8(a),(b)を参照すると、固定手段29は、蛍光体層2を上部から覆う固定部材31と、固定部材31を基板26に対してネジ止めすることで蛍光体層2を基板26に対して固定するネジ32とを有している。図8(a),(b)の例では、固定部材31は、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられている。また、図9、図10は固定手段29の他の例を示す図である。図9の例では、固定部材31には平板が用いられている。ただし、図9の例のように固定部材31に平板を用いる場合に比べ、図8(a),(b)の例のように、固定部材31として、蛍光体層2を覆う部分に凹部が設けられているものを用いる場合には、蛍光体層2の端面からの光の出射成分を反射することができるため高輝度化につながり望ましい。さらに図10の例のように凸型の基板26の上に蛍光体層2および光反射膜21を固定部材31で固定する構造とすれば、固定部材31へ伝導してくる熱を基板26へと効率よく熱放散することができるため、より一層の発光装置の高信頼性化と高輝度化が実現可能である。固定部材31は、熱伝導性の観点からは金属製が望ましいが、蛍光体層で発生する応力緩和と固定部材取り付けの簡便さの観点からはゴム製が望ましい。特に固定部材31がゴム製の場合には、接合部27であるグリースからオイルが出てくるブリードアウトという現象が装置に及ぼす影響を防止できるため望ましい。詳しく説明すると、グリースを長時間高温下においた場合、そのグリースのオイル成分が表面からにじみ出る現象、ブリードアウトが良く知られている。図7(a),(b)の光源装置20の構成では、接合部27であるグリースは蛍光体層2および光反射膜21の直下に置かれており、熱放散の主たる経路であるため蛍光体層2および光反射膜21と同様に高温にさらされることが予想される。その場合、ブリードアウトが発生し、にじみでたオイルが蛍光体層2の上面(励起光で励起される面)に回りこみ、その表面を曇らせ、結果的に輝度を低下させる問題が発生する恐れがある。固定部材31にゴムを使用した場合には、金属に比べて蛍光体層2や接合部27と固定部材31の隙間をなくしやすいため、上記の問題を抑制することが出来る。この固定部材31を放熱基板26と固定することで、蛍光体層2および光反射膜21も放熱基板26上に固定する。金属製の固定部材31の固定方法としては図8(a),(b)や図9のようなねじ止めが考えられ、それ以外にも、ばねやかしめなどによる固定方法が採用可能である。また、ゴム製の固定部材31の場合には、図10のように蛍光体層2の上から固定部材31を被せることでねじ等を使用せずに放熱基板26に固定することができる。
【0061】
また、上述した第2の構成例の光源装置20において、蛍光体層2は、固定されていてもよいが、蛍光体層2を移動可能に構成することもできる。例えば、図11(a),(b)に示すように(図11(a)は正面図、図11(b)は平面図である)、蛍光体層2を回転軸Xの周りに回転させる(モーター4等によって回転させる)反射型蛍光回転体41として構成することもできる。すなわち、反射型蛍光回転体41は、蛍光体層2および光反射膜21と放熱基板26を接合部27で接合したものをモーター4等と連結することで実現できる。また、この反射型蛍光回転体41において、光反射膜21が、励起光および蛍光の反射面として機能している。なお、放熱基板26の形状は、円盤状や四角形などが考えられる。また回転の安定性を確保するために、円盤の一部を切り欠いたり、逆におもりをつけた形状とすることも可能である。このように、固体光源5に対して蛍光体層2を回転させることで、励起光が当たる場所を分散させ、光照射部での発熱を抑えることができる。この蛍光回転体41を用いることで、そもそも蛍光体の発熱を抑えることが出来るため、より一層の高輝度が可能となる。
【0062】
次に、図2(a),(b)の光源装置10、および、図7(a),(b)の光源装置20をより詳細に説明する。
【0063】
図2(a),(b)の光源装置10、図7(a),(b)の光源装置20において、固体光源5には、紫外光から可視光領域に発光波長をもつ発光ダイオードや半導体レーザーなどが使用可能である。
【0064】
より具体的に、固体光源5には、例えば、InGaN系の材料を用いた発光波長が約380nmの近紫外光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約380nmないし約400nmの紫外光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、La2O2S:Eu3+、KSiF6:Mn4+、 KTiF6:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Lu3Al5O12:Ce3+、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+,Mn2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+等を用いることができ、青色蛍光体には、(Sr,Ca,Ba,Mg)10(PO4)6Cl2:Eu2+、BaMgAl10O17:Eu2+、LaAl(Si,Al)6(N,O)10:Ce3+等を用いることができる。
【0065】
また、固体光源5には、例えば、GaN系の材料を用いた発光波長が約460nmの青色光を発光する発光ダイオードや半導体レーザーなどを用いることができる。この場合、蛍光体層2の蛍光体としては、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、赤色蛍光体には、CaAlSiN3:Eu2+、Ca2Si5N8:Eu2+、KSiF6:Mn4+、KTiF6:Mn4+等を用いることができ、緑色蛍光体には、Lu3Al5O12:Ce3+、Y3(Ga,Al)5O12:Ce3+、Ca3Sc2Si3O12:Ce3+、CaSc2O4:Eu2+、(Ba,Sr)2SiO4:Eu2+、Ba3Si6O12N2:Eu2+、(Si,Al)6(O,N)8:Eu2+等を用いることができる。また、波長が約440nmないし約470nmの青色光により励起されるものとして、例えば、Y3Al5O12:Ce3+ (YAG)、(Sr,Ba)2SiO4:Eu2+、Cax(Si,Al)12(O,N)16:Eu2+等の黄色蛍光体を用いることができる。
【0066】
蛍光体層2としては、これらの蛍光体粉末をガラス中に分散させたものや、ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体、樹脂などの結合部材を含まない蛍光体セラミックス等を用いることができる。蛍光体粉末をガラス中に分散させたものの具体例としては、上に列挙した組成の蛍光体粉末をP2O3、SiO2、B2O3、Al2O3などの成分を含むガラス中に分散したものが挙げられる。ガラス母体に発光中心イオンを添加したガラス蛍光体としては、Ce3+やEu2+を付活剤として添加したCa−Si−Al−O−N系やY−Si−Al−O−N系などの酸窒化物系ガラス蛍光体が挙げられる。蛍光体セラミックスとしては、上に列挙した組成の蛍光体組成からなり、樹脂成分を実質的に含まない焼結体が挙げられる。これらの中でも透光性を有する蛍光体セラミックスを使用することが望ましい。これは、焼結体中に光の散乱の原因となるポアや粒界の不純物がほとんど存在しないために透光性を有するに至った蛍光体セラミックスである。ポアや不純物は熱拡散を妨げる原因にもなるため、透光性セラミックスは高い熱伝導率を示す。このため蛍光体層として利用した場合には励起光や蛍光を拡散により失うことなく蛍光体層から取り出して利用でき、さらに蛍光体層で発生した熱を効率良く放散することができる。透光性を示さない焼結体でも出来るだけポアや不純物の少ないものが望ましい。ポアの残存量を評価する指標としては蛍光体セラミックスの比重の値を用いることができ、その値が計算される理論値に対して95%以上のものが望ましい。
【0067】
ここで、青色励起の黄色発光蛍光体であるY3Al5O12:Ce3+蛍光体を例に、透光性を有する蛍光体セラミックスの製造方法を説明する。蛍光体セラミックスは出発原料の混合工程、成形工程、焼成工程、加工工程を経て製造される。出発原料には、酸化イットリウムや酸化セリウムやアルミナ等、Y3Al5O12:Ce3+蛍光体の構成元素の酸化物や、焼成後に酸化物となる炭酸塩、硝酸塩、硫酸塩等を用いる。出発原料の粒径はサブミクロンサイズのものが望ましい。これらの原料を化学量論比となるように秤量する。このとき焼成後のセラミックスの透過率向上を目的として、カルシウムやシリコンなどの化合物を添加することも可能である。秤量した原料は、水もしくは有機溶剤を用い、湿式ボールミルにより十分に分散、混合を行う。次に混合物を所定の形状に成形する。成形方法としては、一軸加圧法、冷間静水圧法、スリップキャスティング法や射出成形法等を用いることができる。得られた成形体を1600〜1800℃で焼成する。これにより、透光性のY3Al5O12:Ce3+蛍光体セラミックスを得ることができる。
【0068】
以上のようにして作製した蛍光体セラミックスは、自動研磨装置などを用いて、厚さ数十〜数百μmの厚みに研磨し、さらに、ダイアモンドカッターやレーザーを用いたダイシングやスクライブにより、円形や四角形や扇形、リング形など任意の形状の板に切り出して使用する。
【0069】
ここで、蛍光体セラミックスは、空気に対して屈折率が高く、さらに、内部にポアなどの散乱の原因となるものが少なく、光がセラミックス内部を導波するため、板状に成形した場合には側面から出射される発光成分が増加し、正面方向へ出射される発光成分が減少してしまう。この問題を解決するために、セラミックスの表面にエッチングにより凹凸の光取出し構造を設けたり、レンズを実装したり、側面に反射層を設けることで、正面方向へ出射される発光成分を増加させることも可能である。また、蛍光体セラミックスの励起光入射面に、酸化物の多層膜からなるARコート(反射防止機能を有する膜)を施しても良い。
【0070】
また、光反射膜21は、銀やアルミニウムに代表される金属膜や、種々の酸化物膜を周期的に積層させた多層膜などが使用可能である。また、これらの単独ではなく、増反射膜として多層膜をつけ、その後に金属膜をつけても良い。また、光反射膜21の腐食などによる劣化を防止するために、図12に示すように、水や腐食性ガスに対してバリア性を有する保護膜44を形成しても良い。保護膜44としては、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等の酸化物や、窒化珪素などの窒化物、さらにサイアロン等の酸窒化物膜などが挙げられる。また、光反射膜21は、スパッタ法や蒸着法等で蛍光体層2上に作製可能である。また、図13に示すように、蛍光体層2と光反射膜21との熱膨張係数の差異による熱応力によって、光反射膜21が蛍光体層2から剥れるのを防止するため、蛍光体層2と光反射膜21との間に、熱応力の緩衝材45として、シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等を設けても良い。
【0071】
また、接合部7、27に用いられる熱伝導性グリースとしては、油成分としてシリコーン油を用いるシリコーン系グリース、炭化水素系油を用いる非シリコーン系グリースの両方とも使用可能である。また、グリース中に混入されるフィラーとしては、アルミナや酸化亜鉛などの酸化物微粒子や銀などの金属微粒子などが挙げられる。特に、接合部7は光反射性が要求されるため、フィラーとしては、光反射性を有する材料(シリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等)が使用される。
【0072】
また、放熱基板6、26には、金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどを使用可能であるが、特に放熱基板6には、高い光反射特性、伝熱特性、加工性を併せ持つ金属基板を使用するのが望ましい。金属としては、Al、Cu、Ti、Si、Ag、Au、Ni、Mo、W、Fe、Pdなどの単体や、それらを含む合金が使用可能である。また、放熱基板6、26の表面に増反射や腐食防止を目的としたコーティングを施しても良い。また、放熱基板6、26には、放熱性を高めるために、フィンなどの構造を設けても良い。
【0073】
また、固定部材11、31は、大きく分けて、無機物質製のものとゴム製のものが使用可能である。無機物質製の場合には、放熱基板6、26と同じく金属基板や酸化物セラミックス、非酸化セラミックスなどが使用可能である。熱膨張を考慮すると、固定部材11、31と放熱基板6、26は同じ材質であることが望ましい。また、固定部材11、31として、蛍光体層2を押さえるために凹部を設ける場合には、加工性に優れる金属基板を使用することが望ましい。一方、ゴム製の場合には、シリコーンゴム、フッ素ゴム、ブチルゴム、二トリルゴム、クロロプレーンゴム、アクリルゴムなどが使用可能であるが、中でも耐熱性に優れるシリコーンゴムやフッ素ゴムの使用が望ましい。固定部材11、31も接合層7、27と同様、熱伝導率が高いほうが蛍光体層2からの熱放散が促進できるため望ましい。また、蛍光体層2の端面から放出される蛍光を蛍光体層2の上面から効率良く取り出すために、固定部材11、31は光反射率が高いほうが望ましい。これらの観点から、固定部材11、31がゴム製の場合、ゴムの中に熱伝導性や光反射率を高めるためシリカ(SiO2)やアルミナ(Al2O3)等のフィラーを入れても良い。
【0074】
また、図2(a),(b)の光源装置10、図7(a),(b)の光源装置20では、1つの蛍光体層2だけが設けられている構成となっているが、2種類以上の蛍光体層を使用することもできる。2種類以上の蛍光体層を使用する場合には、蛍光体層を水平方向に並べて配置しても良いし、垂直方向に重ねて配置しても良い。
【0075】
上述したように、本発明では、固体光源5と蛍光体層2を放熱基板6、26に対して同じ側に設置することで、反射型の光源装置となる。もちろん必要であれば、固体光源5と蛍光体層2との間にレンズなどの光学素子を入れることもできる。
【0076】
また、本発明の上述した種々の光源装置を所定のレンズ系などの光学部品と組み合わせることで、高輝度化が可能な照明装置を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、照明一般などに利用可能である。
【符号の説明】
【0078】
1、41 蛍光回転体
2 蛍光体層
4 モーター
5 固体光源
6、26 放熱基板
7、27 接合部
9、29 固定手段
11、31 固定部材
10、20 光源装置
21 光反射膜
12、32 ネジ
44 保護膜
45 緩衝材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、前記蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜が形成されており、前記蛍光体層および前記光反射膜は、接合部により基板に接合されていることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項3記載の光源装置において、前記接合部は、熱伝導性および流動性を有する材料で形成されており、前記基板は、熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。
【請求項1】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む実質的に樹脂成分を含まない蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面に光反射性と熱伝導性を有する基板を備え、前記蛍光体層は、光反射性と熱伝導性と流動性とを有する材料で前記基板に接合されていることを特徴とする光源装置。
【請求項2】
請求項1記載の光源装置において、前記蛍光体層は、蛍光体セラミックスであることを特徴とする光源装置。
【請求項3】
紫外光から可視光までの波長領域のうちの所定の波長の光を発光する固体光源と、該固体光源からの励起光により励起され該固体光源の発光波長よりも長波長の蛍光を発光する少なくとも1種類以上の蛍光体を含む蛍光体層とを備え、前記固体光源と前記蛍光体層とが空間的に離れた位置にあり、前記蛍光体層の面のうち前記固体光源からの励起光が入射した側の面から少なくとも蛍光を反射方式で取り出す光源装置であって、前記蛍光体層の面のうち励起光が入射する側とは反対の面には、光反射膜が形成されており、前記蛍光体層および前記光反射膜は、接合部により基板に接合されていることを特徴とする光源装置。
【請求項4】
請求項3記載の光源装置において、前記接合部は、熱伝導性および流動性を有する材料で形成されており、前記基板は、熱伝導性を有する材料で形成されていることを特徴とする光源装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載の光源装置において、前記蛍光体層を前記基板に対して固定する固定手段がさらに設けられていることを特徴とする光源装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の光源装置において、該光源装置は、前記蛍光体層と前記基板とを有する蛍光回転体を備えていることを特徴とする光源装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の光源装置が用いられていることを特徴とする照明装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−226986(P2012−226986A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−93722(P2011−93722)
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月20日(2011.4.20)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]