説明

光照射型培養装置

【課題】 培養液の濁度にかかわらず光合成の促進を図る。
【解決手段】 培養槽1の中央部に、内筒部材10と外筒部材11の間に内部空間14を有するエアリフト用の仕切筒3を配置する。仕切筒3の内部空間14に、光源となる蛍光灯18を配置する。内筒部材10と外筒部材11には、周壁を平凸レンズとして機能させるための凸部10a,11aと、周壁を平凹レンズとして機能させるための凹部10b,11bとを、上下方向に交互に設ける。仕切筒3の内側と外周側の領域に、蛍光灯18の光を内筒部材10と外筒部材11の凸部10a,11aを設けた部分で集光して照射する明部と、暗部とを交互に形成させる。培養槽1内で形成させる培養液2の循環流と共に移動する微細藻類が明部と暗部を順次通過するようにさせて、フラッシングライト効果により光合成を促進させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類等の光合成生物を培養するために用いる光照射型培養装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
微細藻類等の光合成生物を培養液中に懸濁した状態で培養を行う培養手法の1つとして、エアリフト型の培養槽を用いることが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
又、藻類等の光合成生物を培養液中に懸濁した状態で培養を行う際に、照明光の明暗を交互に与えることで、フラッシングライト効果(光合成の明反応、暗反応サイクル効果)により光合成の効率を高めて、上記光合成生物の増殖の促進化を図るようにすることは、従来提案されている(たとえば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特表2002−541788号公報、図2
【特許文献2】特開2007−43909号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記特許文献1に示されたような従来のエアリフト型の培養槽は、通常、該培養槽の周囲に配置した外部の光源が発する光を、上記培養槽の光透過性を有する周壁を単に透過させて該培養槽内の光合成生物が懸濁された培養液に対して照射させるようにしてある。そのため、上記光源からの光は、培養時間の経過に伴って上記培養液の濁度が増加してきたときに、該培養液を透過しにくくなる。
【0006】
したがって、上記培養液の濁度が増加した状態では、光源からの光は、上記培養槽の周壁近傍の培養液中に含まれている光合成生物にしか当たらない。このため、上記従来のエアリフト型の培養槽は、光エネルギーが効率よく利用されていないというのが実状である。
【0007】
しかも、上記特許文献1には、光合成生物の光合成をフラッシングライト効果により促進する考えは何ら示されていない。
【0008】
一方、上記特許文献2には、光合成生物の光合成をフラッシングライト効果により促進する考えは示されている。
【0009】
しかし、上記特許文献2に示されている上記光合成生物に光の明暗を与える手段は、培養容器内で発生させるゲルトラー渦により、光合成生物が培養容器の周壁近傍の明部と、容器中央部の暗部を交互に移動することで実現されている。そのため、培養初期の培養液のように、懸濁されている光合成生物の量(濃度)が少なくて培養液の濁度が低い場合は、照射される光が培養容器の容器中央部まで容易に到達するため、該培養容器の周壁近傍と、容器中央部での光量の差(明暗の差)が少ない。よって、上記特許文献2に示された手法は、培養液の濁度が低い場合に光合成生物に与える上記フラッシングライト効果が小さくなってしまう。
【0010】
そこで、本発明は、培養液の濁度にかかわらず、該培養液中に懸濁された光合成生物に効率よくフラッシングライト効果を与えて、該光合成生物の増殖の促進化を図ることができる光照射型培養装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記課題を解決するために、請求項1に対応して、光合成生物を懸濁する培養液を貯留する培養槽と、該培養槽の内側に設けた光透過性を有する仕切筒と、上記仕切筒の下端側開口部の下方に設けてガスの気泡を上記培養槽内に貯留した培養液に吹き込むための散気管と、上記培養槽内の培養液を照明するための照明手段を備え、且つ該照明手段は、上記仕切筒の内側の領域及び外周側の領域に、光源からの照明光を集光して照射する明部と、暗部とを上下方向に交互に配列して形成するようにしたことを特徴とする光照射型培養装置とする。
【0012】
又、上記構成において、照明手段を、仕切筒の内側の領域及び外周側の領域に照明光を照射する光源と、該光源の培養液に臨む側に配置した明部暗部交互形成手段とを備えてなるものとした構成とする。
【0013】
更に、上記構成において、明部暗部交互形成手段を、凸レンズ又はスリットを上下方向に配列して備えてなるものとした構成とする。
【0014】
更に又、上記構成において、明部暗部交互形成手段を、内筒部材と外筒部材との間に光源を収納する内部空間を備えた中空二重筒構造としてある仕切筒の上記内筒部材と外筒部材の壁面に、水平方向に延びる凸レンズ又はスリットを上下方向に複数配列して設けてなるものとした構成とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光照射型培養装置によれば、以下のような優れた効果を発揮する。
(1)光合成生物を懸濁する培養液を貯留する培養槽と、該培養槽の内側に設けた光透過性を有する仕切筒と、上記仕切筒の下端側開口部の下方に設けてガスの気泡を上記培養槽内に貯留した培養液に吹き込むための散気管と、上記培養槽内の培養液を照明するための照明手段を備え、且つ該照明手段は、上記仕切筒の内側の領域及び外周側の領域に、光源からの照明光を集光して照射する明部と、暗部とを上下方向に交互に配列して形成するようにした構成としてあるので、散気管より吹き込まれて仕切筒の内側を上昇する気泡によるエアリフト効果によって培養槽内で培養液を循環させるときに、該培養液に懸濁されている光合成生物を、予め形成してある明部と暗部を交互に通過させることができて、フラッシングライト効果による光合成の促進を図って、該光合成生物の増殖の促進化を図ることができる。
(2)又、上記明部は、光源からの照明光を集光して照射することで形成してあるため、上記培養液の濁度が高まっていても、該培養液の奥深くまで明部を形成させることができる。よって、光エネルギーの利用効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の光照射型培養装置の実施の一形態を示す概略切断側面図である。
【図2】図1のA−A方向矢視図である。
【図3】図1の装置の照明手段に備えた明部暗部交互形成手段の詳細な構成を示す断面図である。
【図4】本発明の実施の他の形態として、照明手段の明部暗部交互形成手段の別の例を示す図3に対応する図である。
【図5】本発明の実施の更に他の形態として、照明手段の明部暗部交互形成手段の更に別の例を示す図3に対応する図である。
【図6】本発明の実施の更に他の形態を示す概略切断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照して説明する。
【0018】
図1乃至図3は本発明の光照射型培養装置の実施の一形態として、光合成生物としての微細藻類を培養対象とする場合の例を示すもので、以下のようにしてある。
【0019】
すなわち、培養対象である上記微細藻類を懸濁する培養液2を貯留するための培養槽1は、その中央部分に、上下方向に延びる筒形としたエアリフト用の仕切筒3を設ける。
【0020】
上記培養槽1は、その底部における上記仕切筒3の下方に、散気管4を設ける。
【0021】
上記散気管4は、培養槽1の外部に設けた図示しないガス供給部より加圧されたガスを導くためのガス供給ライン5に接続する。なお、上記したように培養対象とする光合成生物が微細藻類の場合は、その光合成の際に二酸化炭素を必要とする。そこで、本実施の形態では、上記ガス供給ライン5を通して上記散気管4へ供給するガスは、培養液2中にて気泡を形成できるガスであって、且つ二酸化炭素を含むガスとして、たとえば、空気6を用いるようにしてある。
【0022】
これにより、上記散気管4は、図示しないガス供給部よりガス供給ライン5を通して導かれる加圧された空気6を、上記培養槽1内に貯留されている培養液2に対して上記散気管4を通して気泡として吹き込むことができるようにしてある。更に、この散気管4より上記培養液2中を浮上する気泡は、上記仕切筒3の内側を通って上昇するようにしてある。したがって、この仕切筒3の内側を上記空気6の気泡が上昇することに伴って、該仕切筒3の内側に存在する培養液2は、エアリフト効果により図1に矢印aで示すような上昇流(以下、上昇流aと云う)となるようにしてある。又、上記仕切筒3の内側での上昇流aに起因して、該仕切筒3の外側に存在する培養液2は、図1に矢印bで示す如き下降流(以下、下降流bと云う)となるようにしてある。よって、上記培養槽1は、貯留された培養液2全体に、上記仕切筒3の内側から順に、該仕切筒3の上側、外側、下側を通って再び該仕切筒3の内側に戻る循環流を形成させることができるように構成されている。
【0023】
更に、上記培養槽1は、上記培養液2を照明するための照明手段7を備える。該照明手段7は、上記培養槽1内における上記仕切筒3の内側に形成される培養液2の上昇流a、及び、該仕切筒3の外側に形成される培養液2の下降流bに対し、その流れ方向、すなわち、上下方向に、光源からの照明光を集光して照射する明部と、暗部を交互に形成することができるように構成されている。
【0024】
詳述すると、上記培養槽1は、たとえば、ステンレス製として上端側に開口を有し、下端を閉塞した円筒状の槽本体8と、該槽本体8の開口を塞ぐための蓋9とから構成されている。上記槽本体8は、上端側開口の周縁にフランジ部8aが設けてある。該フランジ部8aは、上記蓋9の外周部をボルト、ナットやバックル等の図示しない固定手段を介して取り外し可能に固定できるようにしてある。
【0025】
更に、上記槽本体8は、少なくとも内周面(内側面)が鏡面加工してあり、これにより、後述するように上記照明手段7による照明光を有効利用できるようにしてある。
【0026】
上記仕切筒3は、光透過性を有する素材製の透明な内筒部材10と、その外側に所定の隙間を隔てて同心状に配置した光透過性を有する素材製の透明な外筒部材11の各上端部同士と各下端部同士の間に、それぞれリング状の天井部材12と底部材13を水密に取り付けて、上記内筒部材10と外筒部材11との間に内部空間14を有する中空二重筒構造としてある。
【0027】
更に、上記天井部材12は、周方向の複数個所に、上下に貫通する開口部15が設けてある。該周方向に複数個の開口部15は、上記照明手段7を構成するために後述するように該仕切筒3の内部空間14に周方向所定間隔で配列させて収納すべき複数の光源としての蛍光灯18を配置するときの周方向配置に対応するように設定してある。
【0028】
上記仕切筒3の天井部材12の上記各開口部15の周縁部には、上下方向に所定寸法延びる支持部材としての個別の筒部材16の下端部が水密に取り付けてある。
【0029】
更に、上記各筒部材16は、上記培養槽1の蓋9を貫通させて上端側を上方へ突出させるようにする。そのために、上記蓋9には、各筒部材16にそれぞれ対応する配置で上下方向に貫通する開口部17が設けてあり、該各開口部17の下面側周縁部に、該開口部17に挿通させた上記各筒部材16が気密に取り付けてある。
【0030】
これにより、上記蓋9には、上記仕切筒3が、上記各筒部材16を介して支持されるようにしてある。更に、該蓋9の各開口部17に取り付けてある各筒部材16は、その内側を通して、上記仕切筒3の内部空間14を外部に連通させることができるようにしてある。
【0031】
したがって、上記仕切筒3を支持させた状態の蓋9は、上記槽本体8の上端側開口に取り付けて培養槽1を形成することにより、上記仕切筒3を、上記培養槽1の中央部分に、槽本体8と同心状配置で、且つ該仕切筒3の下端と、上記培養槽1の内底面となる槽本体8の内底面との間に所定の隙間を隔てた状態に配置して固定できるようにしてある。なお、この際、上記培養槽1の中央部分に配置された上記仕切筒3の上端は、該培養槽1に所定量の培養液2を貯留するときの液面レベルよりも所定寸法下方に配置できるように、上記仕切筒3の上下寸法、及び、各筒部材16の上下寸法が設定してあるものとする。
【0032】
これにより、上記培養槽1の内部に上記所定の液面レベルまで貯留された培養液2は、液面下に所定寸法没する該仕切筒3の上側に周方向に取り付けられている各筒部材16の間の隙間を通して、該仕切筒3の内外方向に自在に流通できるようにしてある。
【0033】
又、上記のように培養液2の液面下に没するように配置された仕切筒3は、内部空間14を備えた中空二重筒構造としてあるため、該仕切筒3に浮力が作用するようになる。そのため、この浮力は、上記各筒部材16を介して上記蓋9へ伝えて受けさせることができるようにしてある。
【0034】
上記培養槽1の槽本体8の内底部の中央部分には、上記仕切筒3の下端開口部の平面形状以内となる領域に対応させて散気管4が設置してある。該散気管4のガス入口4aは、上記槽本体8の底板を内外方向に貫通させて外方へ突出させてあり、このガス入口4aに、上記ガス供給ライン5が接続してある。これにより、散気管4には、上記培養槽1内に貯留された培養液2によって該培養槽1の底部に作用している水圧よりも高い圧力まで加圧した空気6が、上記ガス供給ライン5を経て上記散気管4のガス入口4aより供給されることになる。上記散気管4より培養槽1内の培養液2に対して吹き込まれた空気6は、気泡として上記仕切筒3の内側を上昇させられるようにしてある。
【0035】
上記散気管4より培養液2に吹き込む空気6の量は、調整することができ、該散気管4より上記仕切筒3の内側を上昇させる気泡の量を調整することにより、上記仕切筒3の内側に存在する培養液2に対して作用させるエアリフト効果の強度を変化させることができるようにしてある。これにより、上記培養槽1では、貯留された培養液2全体を、上記仕切筒3の内側から順に該仕切筒3の上側、外側、下側に通して再び該仕切筒3の内側に戻す循環流とさせるときの速さ(強度)を制御することができ、上記培養槽1内での培養液2の局所的な滞留や、培養対象である微細藻類の滞積を防止して、該培養槽1内の培養液2の懸濁状態を均一に保持することができるようにしてある。
【0036】
更に、上記培養液2に空気6を吹き込むときは、吹き込まれる空気6の気泡より、該培養液2に対して、微細藻類の光合成の際に消費される二酸化炭素を供給できるようにしてある。
【0037】
上記照明手段7は、図1に示すように、上記蓋9の開口部17に取り付けてある筒部材16に挿入可能な太さで上下方向に延びる蛍光灯ホルダ19を備えている。該蛍光灯ホルダ19は、その下端側に、蛍光灯18の一端を取り付けて、蛍光灯18が上下に延びる姿勢で保持できるようにしてある。該蛍光灯ホルダ19は該蛍光灯18に電力供給して点灯させることができるようにしてある。
【0038】
上記蛍光灯18を保持させた蛍光灯ホルダ19は、上記培養槽1の蓋9の各開口部17に取り付けてある各筒部材16に、該蓋9の上方より個別に差し込んで該各筒部材16の内側に装着するようにしてある。上記各蛍光灯ホルダ19に保持してある各蛍光灯18は、上記蓋9の各開口部17と、各筒部材16の内側、及び、上記仕切筒3における天井部材12の各開口部15を通して、該仕切筒3の内部空間14へ挿入して配置できるようにしてある。これにより、上記仕切筒3の内部空間14には、周方向に所定の間隔で、複数の蛍光灯18が光源として配置されることになる。
【0039】
したがって、上記仕切筒3の内部空間14に周方向に複数配置された各蛍光灯18は、点灯させることにより、光が発せられる。該各蛍光灯18より発せられる光は、仕切筒3の透明な内筒部材10を透過させて、該内筒部材10の内側となる仕切筒3の内側(軸心側)に存在する培養液2に対して照射できるようにしてある。同時に、上記各蛍光灯18より発せられる光は、透明な外筒部材11を透過させて、該外筒部材11の外周側となる仕切筒3の外周側に存在する培養液2に対しても照射できるようにしてある。
【0040】
又、本発明の光照射型培養装置は、微細藻類の培養中において、上記仕切筒3の内部空間14に複数配置された上記各蛍光灯18のうち、いずれかの蛍光灯18が寿命に達して点滅が生じたり、点灯しなくなった場合は、該寿命に達した蛍光灯18の蛍光灯ホルダ19を、上記筒部材16より培養槽1の蓋9の上方へ抜き出すようにして取り外すことができるようにしてある。したがって、本発明の光照射型培養装置は、培養槽1内での培養を一時中断したり、培養槽1の蓋9を取り外す作業を必要とすることなく、培養を継続しながら上記寿命に達した蛍光灯18の交換作業を実施することができるようにしてある。
【0041】
更に、本実施の形態における照明手段7は、上記培養槽1内で仕切筒3の内側と外側に形成される培養液2の上昇流aと下降流bに対して、その流れ方向である上下方向に、照明光を集光して照射する明部と、暗部を交互に形成するために、明部暗部交互形成手段を備える。
【0042】
上記明部暗部交互形成手段は、上記仕切筒3の透明な内筒部材10と透明な外筒部材11に設けるようにしてある。すなわち、上記内筒部材10は、内周面に、水平方向となる周方向に連続して軸心側へ突出する凸部10aと、周方向に連続して軸心より離反する側へ凹む凹部10bとを、上下方向に後述する所定の間隔で交互に設けて、該内筒部材10の内周面の断面が上下方向に波型形状となるようにした構成としてある。更に、上記外筒部材11は、外周面に、水平方向となる周方向に連続して軸心より離反する側へ突出する凸部11aと、周方向に連続して軸心に近接する側へ凹む凹部11bとを、上下方向に後述する所定の間隔で交互に設けて、該外筒部材11の外周面の断面が上下方向に波型形状となるようにした構成としてある。
【0043】
なお、上記構成としてある明部暗部交互形成手段は、上記内筒部材10の凸部10aと凹部10bが設けてある内周面、及び、上記外筒部材11の凸部11aと凹部11bが設けてある外周面が、共に培養液2に接する面になる。この点に鑑みて、上記内筒部材10を構成する光透過性を有する透明な素材と、上記外筒部材11を構成する光透過性を有する透明な素材は、共に上記培養液2との間で屈折率に差がある素材としてある。
【0044】
これにより、上記内筒部材10は、図3に示すように、内周面に上記各凸部10aが設けてある部分の周壁が、周方向に連続する平凸レンズになる。このため、上記仕切筒3の内部空間14に設置してある各蛍光灯18より発せられた光は、上記各凸部10aが設けてある部分の内筒部材10の周壁を透過すると、該内筒部材10の素材と上記培養液2との屈折率の差に基づく屈折により、該各凸部10aの頂点を含む水平面に存在する焦点f1へ向けて上下両側より集光されるようになる。
【0045】
一方、上記内筒部材10の内周面に上記各凹部10bが設けてある部分の周壁は、周方向に連続する平凹レンズになる。このため、上記仕切筒3の内部空間14に設置してある各蛍光灯18より発せられた光は、上記各凹部10bが設けてある部分の周壁を透過すると、上下方向への拡散が行われるようになる。
【0046】
よって、上記仕切筒3の内側の領域には、仕切筒3の内筒部材10の内周面に上記各凸部10aが設けてある位置に対応する上下方向所定間隔個所毎に、上記各蛍光灯18より発せられる光が集光された状態で照射される明部が形成され、且つ上記内筒部材10の内周面に上記各凹部10bが設けてある位置に対応する上下方向所定間隔個所毎に、上記各明部に比して光量が低下した暗部が形成されるようになる。したがって、該仕切筒3の内側の領域には、上下方向に上記明部と暗部が交互に形成されるようになる。
【0047】
なお、図3に示すように、上記内筒部材10の内周面に上記各凸部10aが設けてある部分の周壁が平凸レンズとして機能するときの焦点f1は、図3に一点鎖線で示す如き該内筒部材10の軸心位置Oに配置されるように設定することが望ましい。このようにすれば、上記内筒部材10の内周面に上記各凸部10aが設けてある部分の周壁の周方向の一個所で集光された光は、上記焦点f1を通過した後に拡散するときには、同じ凸部10aが設けてある部分の周壁の周方向の180度反対側の個所で集光されて上記焦点f1へ向かう光の経路とほぼ同じ経路を反対向きに通るようになる。このため、仕切筒3の内側の領域は、上記内筒部材10の各凸部10aが設けてある上下方向位置(高さ位置)毎に形成する明部に光をより効率よく集めることができて、該明部と暗部との光量の差をより大きくすることができる。
【0048】
又、上記外筒部材11には、上記内筒部材10と同様に、図3に示すように、該外筒部材11の外周面に上記各凸部11aが設けてある部分の周壁が、周方向に連続する平凸レンズになる。このため、上記仕切筒3の内部空間14に設置してある各蛍光灯18より発せられた光は、上記各凸部11aが設けてある部分の周壁を透過すると、該外筒部材11の素材と上記培養液2との屈折率の差に基づく屈折により、該各凸部11aの頂点を含む水平面に存在する焦点f2へ向けて上下両側より集光されるようになる。
【0049】
一方、上記外筒部材11の外周面に上記各凹部11bが設けてある部分の周壁は、周方向に連続する平凹レンズになる。このため、上記仕切筒3の内部空間14に設置してある各蛍光灯18より発せられた光は、上記各凹部11bが設けてある部分の周壁を透過すると、上下方向への拡散が行われるようになる。
【0050】
よって、上記仕切筒3の外周側の領域には、仕切筒3の外筒部材11の外周面に上記各凸部11aが設けてある位置に対応する上下方向所定間隔個所毎に、上記各蛍光灯18より発せられる光が集光された状態で照射される明部が形成され、且つ上記外筒部材11の外周面に上記各凹部11bが設けてある位置に対応する上下方向所定間隔個所毎に、上記明部に比して光量が低下した暗部が形成されるようになる。したがって、該仕切筒3の外周側の領域には、上下方向に上記明部と暗部が交互に形成されるようになる。
【0051】
なお、図3に示すように、上記外筒部材11の外周面に上記各凸部11aが設けてある部分の周壁が平凸レンズとして機能するときの焦点f2は、該外筒部材11を取り囲むように配置されている培養槽1の槽本体8の内周面(内側面)の位置に配置されるように設定することが望ましい。このようにすれば、上記外筒部材11の外周面に上記各凸部11aが設けてある部分の周壁で集光された光は、上記焦点f2を通過すると同時に、前述したように鏡面加工してある上記槽本体8の内周面で反射されるようになるため、該焦点f2を通過した後に拡散するときには、外筒部材11の外周面に上記各凸部11aが設けてある部分の周壁で集光されてそれぞれ対応する焦点f2へ向かう光の経路とほぼ同じ経路を反対向きに通るようになる。このため、仕切筒3の外周側の領域は、上記外筒部材11の各凸部11aが設けてある上下方向位置(高さ位置)毎に形成する明部に光をより効率よく集めることができて、該明部と暗部との光量の差をより大きくすることができる。
【0052】
上記仕切筒3の内筒部材10の内周面に設ける凸部10aと凹部10bの上下方向の配列間隔、及び、外筒部材11の外周面に設ける凸部11aと凹部11bの上下方向の配列間隔は以下のように設定すればよい。
【0053】
すなわち、前述したように培養槽1内に貯留されている培養液2は、散気管4より吹き込む空気6の気泡によるエアリフト効果によって該培養槽1内に貯留した培養液2全体に循環流が形成させられる。このときに、培養槽1内での培養液2の局所的な滞留や、培養対象である微細藻類の滞積を防止するという観点、及び、散気管4より培養槽1内の培養液2に対して吹き込む気泡の量は培養液2に過剰なバブリングが生じないように設定するという観点から考えると、上記培養槽1内の培養液2に形成させる上記循環流の流速は、或る程度の範囲に定まる。よって、この循環流に伴って仕切筒3の内側の領域に生じる培養液2の上昇流aの流速もある程度定まるようになる。
【0054】
そこで、上記仕切筒3の内筒部材10の内周面に設ける各凸部10a及び各凹部10bの上下方向の配列間隔は、上記仕切筒3の内側の領域に生じる培養液2の上昇流aに伴われて該上昇流aの流速で移動する微細藻類が、上記内筒部材10の内周面に設けた各凸部10aと各凹部10bによって該領域に形成される明部と暗部を交互に通るときの時間間隔が、予め実験等により得られる上記微細藻類の光合成の促進に最適なフラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を与える光の明滅サイクルに一致するように、適宜設定するようにすればよい。
【0055】
又、上記培養槽1内の培養液2に形成させる上記循環流の流速は、上記のように或る程度の範囲に定まるようになることから、該循環流に伴って仕切筒3の外周側の領域に生じる培養液2の下降流bの流速もある程度定まるようになる。
【0056】
そこで、上記仕切筒3の外筒部材11の外周面に設ける各凸部11a及び各凹部11bの上下方向の配列間隔は、上記仕切筒3の外周側の領域に生じる培養液2の下降流bに伴われて該下降流bの流速で移動する微細藻類が、上記外筒部材11の外周面に設けた各凸部11aと各凹部11bによって該領域に形成される明部と暗部を交互に通るときの時間間隔が、上記微細藻類の光合成の促進に最適なフラッシングライト効果を与える光の明滅サイクルに一致するように、適宜設定するようにすればよい。
【0057】
なお、図示してないが、上記培養槽1は、培養対象である光合成生物としての微細藻類の種培養と培養液2を供給するための共通あるいは個別の供給ライン、微細藻類が懸濁された培養液を取り出すための培養液排出ライン、排気ライン、培養途中で微細藻類が懸濁された培養液2をサンプルとして取り出すためのサンプル採取手段、培養液2を目視により観察できるようにするための観察窓、培養液2の濁度を測定する手段や、培養液2の温度を調整するための温度調整手段、更には、上記微細藻類の培養プロセスで必要とされる薬品等を培養液2へ投入するための投入手段等、上記培養槽1内における微細藻類の培養の過程で必要とされる作業を実施するための機器が装備してあるものとする。
【0058】
以上の構成としてある本発明の光照射型培養装置は、これを使用する場合、培養槽1には、培養対象となる上記微細藻類の種培養と、培養液2を供給して、該培養槽1内に、該微細藻類を懸濁してなる培養液2を貯留させ、この培養液2中に仕切筒3を没水させるようにする。
【0059】
その後、上記仕切筒3の内部空間14に配置してある各蛍光灯18は、光源として点灯させると共に、上記仕切筒3には、散気管4に加圧されて導かれた空気6が培養槽1内の培養液2中に気泡として吹き込まれるようにする。培養液2中に吹き込まれた空気6は、気泡として上記仕切筒3の内側を上昇するときにエアリフト効果を生じさせる。該エアリフト効果により、上記培養槽1内の培養液2は、上記仕切筒3の内側では上昇流aとなり、該仕切筒3の上側では隣接する筒部材16同士の間を通して該仕切筒3の内側から外側へ移動し、該仕切筒3の外周側では下降流bとなり、その後、該仕切筒3の下側を通って該仕切筒3の内側へ再び戻るという図1に矢印で示す如き流路を循環流として循環させられる。
【0060】
この際、上記仕切筒3の内側の領域には、該仕切筒3の内筒部材10の内周面に上下方向に交互に設けてある凸部10aと凹部10bにより、上記各蛍光灯18の光を集光して照射した明部と、暗部が、上下方向に交互に形成されているため、上記仕切筒3の内側の領域で上昇流aとなる培養液2に含まれている上記微細藻類は、該領域の明部と暗部とを交互に通過することでフラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を受けるようになる。
【0061】
又、上記仕切筒3の外周側の領域には、該仕切筒3の外筒部材11の外周面に上下方向に交互に設けてある凸部11aと凹部11bにより、上記各蛍光灯18の光を集光して照射した明部と、暗部が、上下方向に交互に形成されているため、上記仕切筒3の外周側の領域で下降流bとなる培養液2に含まれている上記微細藻類は、該領域の明部と暗部とを交互に通過することでフラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を受けるようになる。
【0062】
上記仕切筒3は、内側の領域、及び、外周側の領域に上下方向に交互に配置された明部と暗部は予め形成してあるため、該各領域で上昇流aや下降流bとなる培養液2の濁度にかかわらず、該上昇流aや下降流bとなっている培養液2中に含まれている微細藻類は、上記フラッシングライト効果を受けて増殖が促進されるようになる。
【0063】
よって、培養液2に懸濁されている光合成生物としての微細藻類は、その量が少なくて、該培養液2の濁度が低い培養初期であっても、上記フラッシングライト効果により光合成が促進される。このため、上記微細藻類の増殖を促すことができる。
【0064】
又、上記仕切筒3の内側及び外周側に形成してある各明部は、光源である蛍光灯18の光を集光して照射することで形成してある。このため、上記各明部では、上記培養液2に懸濁されている上記微細藻類の量が増加して該培養液2の濁度が高まっていても、上記集光された光を照射することで、該濁度の高い培養液2の奥深くまで明部を形成させることができる。よって、光エネルギーの利用効率を高めることができる。
【0065】
このように、本発明の光照射型培養装置によれば、微細藻類の培養液2が、培養初期の濁度が低い状態、及び、該培養液の濁度が高まった状態のいずれにおいても、該培養液中の微細藻類に対してフラッシングライト効果による増殖の促進を図ることができるため、該微細藻類の増殖効率を高めることができる。
【0066】
次に、図4は本発明の実施の他の形態として、図1乃至図3の実施の形態と同様の構成における照明手段7の明部暗部交互形成手段の別の例を示すものである。
【0067】
すなわち、図4に示す照明手段7は、図1乃至図3に示したものと同様に、中空二重筒構造とした仕切筒3の内部空間14に、周方向所定間隔で複数の蛍光灯18を収納してなる構成において、明部暗部交互形成手段として、上記仕切筒3の内筒部材10の内周面と、外筒部材11の外周面に、それぞれ凸部10a,11aと凹部10b,11bを上下方向に所定間隔で交互に配列して設けた構成としてあることに代えて、上記内筒部材10は、上記仕切筒3の内部空間14に臨む外周面に、周方向に連続して軸心より離反する側へ突出する凸部10cと、周方向に連続して軸心に近接する側へ凹む凹部10dとを、上下方向に所定の間隔で設けて、該内筒部材10の外周面の断面が上下方向に波型形状となるようにしてある。
【0068】
更に、上記外筒部材11は、上記仕切筒3の内部空間14に臨む内周面に、周方向に連続して軸心側へ突出する凸部11cと、周方向に連続して軸心より離反する側へ凹む凹部11dとを、上下方向に所定の間隔で設けて、該外筒部材11の内周面の断面が上下方向に波型形状となるようにした構成としてある。
【0069】
なお、上記内筒部材10の内周面と、外筒部材11の外周面は、それぞれ凹凸のない単純な円筒面としてある。
【0070】
その他の構成は図1乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0071】
以上の構成としてある本実施の形態の照明手段7における明部暗部交互形成手段によれば、上記仕切筒の内筒部材10の上下方向における外周面に各凸部10cが設けてある部分の周壁は、周方向に延びる平凸レンズとして機能して、蛍光灯18の光を該各凸部10cの頂点を含む平面内に存在する焦点f1に向けて集光させることができる。
【0072】
一方、上記仕切筒の内筒部材10の上下方向における外周面に各凹部10dが設けてある部分の周壁は、周方向に延びる平凹レンズとして機能して、蛍光灯18の光を上下方向に拡散させることができる。
【0073】
又、上記仕切筒の外筒部材11においても、内周面に各凸部11cが設けてある部分の周壁は、周方向に延びる平凸レンズとして機能して、蛍光灯18の光を該各凸部11cの頂点を含む平面内に存在する焦点f2に向けて集光させることができる。
【0074】
一方、上記仕切筒の外筒部材11の上下方向における内周面に各凹部11dが設けてある部分の周壁は、周方向に延びる平凹レンズとして機能して、蛍光灯18の光を上下方向に拡散させることができる。
【0075】
したがって、上記蛍光灯18の光を上記内筒部材10を透過させることにより、上記仕切筒3の内側の領域には、上記内筒部材10における凸部10cと凹部10dの上下方向の配置に対応して、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部と、暗部とが上下方向に交互に形成されるようになる。
【0076】
又、上記蛍光灯18の光を上記外筒部材11を透過させることにより、上記仕切筒3の外周側の領域には、上記外筒部材11における凸部11cと凹部11dの上下方向の配置に対応して、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部と、暗部とが上下方向に交互に形成されるようになる。
【0077】
したがって、上記図1乃至図3の実施の形態と同様に、上記培養槽1内の培養液2は、上記仕切筒3の内側では上昇流aとなり、該仕切筒3の上側では隣接する筒部材16同士の間を通して該仕切筒3の内側から外側へ移動し、該仕切筒3の外周側では下降流bとなり、その後、該仕切筒3の下側を通って該仕切筒3の内側へ再び戻るという流路を循環流として循環させられる。この間に、上記仕切筒3の内側の領域、及び、外周側の領域では、それぞれ上昇流a、及び、下降流bとなる培養液2に含まれている微細藻類に対して、上記各領域の明部と暗部とを交互に通過することによるフラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を与えることができる。
【0078】
よって、本実施の形態によっても、上記図1乃至図3に示す実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0079】
更に、上記仕切筒3は、内筒部材10における培養液2と接する内周面、及び、外筒部材11における培養液2に接する外周面に、凹凸がない。このため、上記仕切筒3では、内筒部材10の内周面に接する培養液2の流れ、及び、外筒部材11の外周面に接する側での培養液2の流れが乱されなくなるため、上記培養槽1内における培養液2の循環をより円滑に行わせることができて、該循環流を形成させるために散気管4(図1参照)より培養液2に気泡として吹き込むことが必要とされる空気6の使用量を低減させることができる。
【0080】
次いで、図5は本発明の実施の更に他の形態として、図1乃至図3の実施の形態と同様の構成における照明手段7の明部暗部交互形成手段の別の例を示すものである。
【0081】
すなわち、本実施の形態における照明手段7は、図1乃至図3に示したものと同様に、中空二重筒構造とした仕切筒3の内部空間14に、周方向所定間隔で複数の蛍光灯18を収納してなる構成において、明部暗部交互形成手段として、上記仕切筒3の内筒部材10の内周面と、外筒部材11の外周面に、それぞれ凸部10a,11aと凹部10b,11bを上下方向に所定間隔で交互に配列して設けた構成としてあることに代えて、上記仕切筒3の内筒部材10と外筒部材11は、凹凸のない単純な円筒形状とする。更に、後述する所定幅の帯状とし且つ少なくとも一方の面を鏡面のような反射面21としてなる反射部材20a及び20bが、上記内筒部材10及び外筒部材11の上下方向所定間隔の複数個所に、上記反射面21を仕切筒3の内部空間14の内側に臨ませた姿勢で水平方向となる周方向の全周に亘り取り付けてある。この際、上記内筒部材10に上下方向に配列して取り付けられた各反射部材20aと、上記外筒部材11に上下方向に配列して取り付けられた各反射部材20bは、上下方向に互い違いの配置となるようにする。
【0082】
なお、上記各反射部材20a,20bは、培養槽1内での培養液2の循環流の流れに影響が生じないようにするという観点、及び、上記各反射部材20a,20bの反射面21の汚れを防止するという観点から考えると、図5に示すように、内筒部材10では、仕切筒3の内部空間14に臨む外周面に取り付け、又、外筒部材11では上記仕切筒3の内部空間14に臨む内周面に取り付けるようにすることが望ましい。
【0083】
なお、上記反射部材20aと20bは、一方、又は、双方について、上記反射部材20aを上記内筒部材10の内周面に取り付ける構成や、上記反射部材20bを上記外筒部材11の外周面に取り付ける構成を採用することが可能であることは勿論である。
【0084】
これにより、上記内筒部材10には、上下方向に配列して取り付けられた各反射部材20aの上下方向に隣接するもの同士の間に、それぞれ光を通過させることが可能なスリット22aを形成する。上記内筒部材10の各スリット22aは、上記仕切筒3の内部空間14に設けてある各蛍光灯18より発せられた後に該各スリット22aへ直接向かう直接光と、上記各蛍光灯18より発せられた光が上記外筒部材11に取り付けてある各反射部材20bの反射面21で反射された後に上記内筒部材10のスリット22aへ向かう反射光が集光されて、該スリット22aを透過して上記仕切筒3の内側の領域へ照射させられるようにしてある。
【0085】
したがって、該仕切筒3の内側の領域には、上記内筒部材10の各スリット22aが設けてある高さ位置毎に、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部が形成され、該各明部同士の間に、上記内筒部材10に取り付けてある反射部材20aにより上記蛍光灯18の光が遮られる暗部が形成されるようになる。
【0086】
又、上記外筒部材11には、上下方向に配列して取り付けられた各反射部材20bの上下方向に隣接するもの同士の間に、それぞれ光を通過させることが可能なスリット22bを形成する。上記外筒部材11の各スリット22bは、上記仕切筒3の内部空間14に設けてある各蛍光灯18より発せられた後に該各スリット22bへ直接向かう直接光と、上記各蛍光灯18より発せられた光が上記内筒部材10に取り付けてある各反射部材20aの反射面21で反射された後に上記外筒部材11のスリット22bへ向かう反射光が集光されて、該スリット22bを透過して上記仕切筒3の外周側の領域へ照射させられるようにしてある。
【0087】
したがって、該仕切筒3の外周側の領域には、上下方向における上記外筒部材11の各スリット22bが設けてある高さ位置毎に、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部が形成され、該各明部同士の間に、上記外筒部材11に取り付けてある反射部材20bにより上記蛍光灯18の光が遮られる暗部が形成されるようになる。
【0088】
ところで、上記内筒部材10の各スリット22aの上下方向の配列間隔と、上記外筒部材10の各スリット22bの上下方向の配列間隔は、上記内筒部材10と外筒部材11に取り付ける各反射部材20a,20bの幅寸法に応じて定まる。
【0089】
そこで、上記各反射部材20a,20bの幅寸法は、上記内筒部材10のスリット22a及び上記外筒部材11のスリット22bの上下方向の配列間隔を、図1乃至図3の実施の形態にて仕切筒3の内筒部材10と外筒部材11にそれぞれ設けた各凸部10a,11aの上下方向の配列間隔と同様の配列間隔とさせることができるように設定すればよい。
【0090】
なお、本実施の形態では、上記内筒部材10に取り付ける反射部材20aと、上記外筒部材11に取り付ける反射部材20bとを、上下方向に互い違いの配置にすることから、上記培養槽1については、仕切筒3の内側の領域での培養液2の流路断面積と、該仕切筒3の外周側の領域での培養液2の流路断面積がほぼ同様となるように設計して、上記仕切筒3の内側の領域に生じる培養液2の上昇流aの流速と、該仕切筒3の外周側の領域に生じる培養液2の下降流bの流速がほぼ同様となるようにしてある。
【0091】
又、図示する便宜上、図5では、上記蛍光灯18より発せられた光が各反射部材20a,20bの反射面21で反射されるときの経路を屈曲させて記載してある。
【0092】
その他の構成は図1乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0093】
以上の構成としてある本実施の形態の照明手段7における明部暗部交互形成手段によっても、上記仕切筒3の内側の領域には、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部と、暗部とを上下方向に交互に形成することができ、又、上記仕切筒3の外周側の領域には、上記蛍光灯18の光が集光されて照射される明部と、暗部とを上下方向に交互に形成することができる。
【0094】
したがって、上記図1乃至図3の実施の形態と同様に、上記培養槽1内の培養液2は、循環させると、上記仕切筒3の内側の領域、及び、外周側の領域では、それぞれ上昇流a、及び、下降流bとなる培養液2に含まれている微細藻類に対して、上記各領域の明部と暗部とを交互に通過することによるフラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を与えることができる。
【0095】
よって、本実施の形態によっても、図1乃至図3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0096】
図6は本発明の更に他の形態として、培養槽の外部に光源を設ける場合の例を示すものである。
【0097】
すなわち、本実施の形態の光照射型培養装置は、培養槽1aの槽本体23として、光透過性を有する素材により製作された槽本体23を用いる。
【0098】
上記培養槽1aの中央部には、光透過性を有する素材製で且つ上下方向に延びる単純な円筒形状としてある仕切筒24を配置する。該仕切筒24は、上端部における周方向の複数個所に取り付けた支柱部材25の上端部を上記培養槽1aの蓋9の下面側に取り付けて支持するようにしてある。
【0099】
又、本実施の形態の光照射型培養装置は、照明手段7aの光源として、上記培養槽1aの槽本体23の外周位置に、周方向に所定間隔で複数の蛍光灯18を、上下方向に延びる姿勢で配置する。なお、上記各蛍光灯18は、該各蛍光灯18への電力供給を行うための図示しないホルダに保持させてあるものとする。
【0100】
更に、本実施の形態の光照射型培養装置は、上記照明手段7aに備える明部暗部交互形成手段として、上記光透過性を有する槽本体23の側壁部の外周面に、水平方向となる周方向に連続して軸心より離反する側へ突出する凸部23aと、周方向に連続して軸心に近接する側へ凹む凹部23bとを、上下方向に交互に設けて、該槽本体23の外周面の断面が上下方向に波型形状となるようにしてある。
【0101】
これにより、上記槽本体23の上下方向における外周面に上記各凸部23aが設けてある部分の周壁は、周方向に連続する平凸レンズになる。このため、上記蛍光灯18より発せられた光は、該各凸部23aが設けてある部分の周壁を透過すると、該各凸部23aの頂点を含む水平面に存在する焦点へ向けて上下両側より集光されるようになる。
【0102】
一方、上記槽本体23の上下方向における外周面に上記各凹部23bが設けてある部分の周壁は、周方向に連続する平凹レンズになる。このため、上記蛍光灯18より発せられた光が、該各凹部10bが設けてある部分の周壁を透過するときには、上下方向への拡散が行われるようになる。
【0103】
なお、本実施の形態では、上記槽本体23の外周面の上記各凸部23aが設けてある部分の周壁を透過するときに集光される蛍光灯18の光は、上記光透過性を有する仕切筒24の周壁を更に透過した後、該各凸部23aの頂点を含む水平面における該仕切筒24の軸心位置に焦点を結ぶように設定してある。
【0104】
これにより、本実施の形態の光照射型培養装置は、上記照明手段7aの各蛍光灯18を点灯すると、上記培養槽1a内における仕切筒24の内側の領域と外周側の領域に対して、槽本体23の外周面に各凸部23aが設けてある高さ位置毎に、上記蛍光灯18の光が集光された明部を形成でき、又、槽本体23の外周面に各凹部23bが設けてある高さ位置毎に暗部を形成することができるようになる。よって、上記培養槽1a内における仕切筒24の内側の領域と外周側の領域には、上下方向に明部と暗部が交互に形成されるようになる。
【0105】
なお、本実施の形態では、上記槽本体23の外周面に設ける凸部23aの上下方向の配列間隔は、図1乃至図3の実施の形態にて仕切筒3の内筒部材10と外筒部材11にそれぞれ設けた各凸部10a,11aの上下方向の配列間隔と同様の配列間隔とさせることができるように設定すればよい。
【0106】
なお、本実施の形態の場合には、図5の実施の形態の場合と同様に、上記仕切筒24の内側の領域に生じる培養液2の上昇流aの流速と、該仕切筒24の外周側の領域に生じる培養液2の下降流bの流速がほぼ同様となるようにしてあるものとする。
【0107】
その他の構成は図1乃至図3に示したものと同様であり、同一のものには同一の符号が付してある。
【0108】
以上の構成としてある本実施の形態の光照射型培養装置によれば、上記培養槽1a内で循環させる培養液2が、仕切筒24の内側の領域と外周側の領域をそれぞれ上昇流aと下降流bとして流れるときに、上記明部と暗部を交互に通過する該培養液2中の微細藻類に対し、フラッシングライト効果(明反応、暗反応サイクル効果)を与えることができる。
【0109】
よって、本実施の形態によっても、図1乃至図3の実施の形態と同様の効果を得ることができる。
【0110】
なお、本発明は上記実施の形態のみに限定されるものではなく、培養槽1,1aの径寸法と高さ、及び、該培養槽1,1a内に設ける仕切筒3,24の径寸法と高さは、いずれも図示するための便宜的な寸法や形状であって実際の寸法や形状を反映したものではない。
【0111】
図1乃至図3の実施の形態、及び、図4の実施の形態における仕切筒3の内筒部材10と外筒部材11に設ける凸部10a,11aと凹部10b,11b、並びに、図6の実施の形態における培養槽1aの槽本体23に設ける凸部23aと凹部23bの曲率と、上下方向の配列間隔と、配列数は、いずれも図示するための便宜的なものであって実際の装置の構成を反映したものではない。
【0112】
又、図1乃至図3の実施の形態、及び、図4の実施の形態の応用例として、上記仕切筒3の内筒部材10と外筒部材11の双方の内周面に凸部10a,11cと凹部10b,11dを上下方向に交互に設けるようにしたり、内筒部材10と外筒部材11の双方の外周面に凸部10c,11aと凹部10d,11bを上下方向に交互に設けるようにした構成を採用してもよい。
【0113】
更には、上記仕切筒3の内筒部材10及び外筒部材11は、内周面と外周面の両面に、上下方向に交互に配列される凸部と凹部を同位相で設けて、該内筒部材10と外筒部材11の周壁に、両凸レンズとして機能する部分と、両凹レンズとして機能する部分を、上下方向に交互に形成させてなる構成としてもよい。
【0114】
図6の実施の形態では、培養槽1aの槽本体23の内周面、あるいは、内周面と外周面の双方に、凸部と凹部10を上下方向に交互に設けた構成としてもよい。
【0115】
照明手段7,7aにて周方向に配置する蛍光灯18の本数は、培養槽1,1a内で培養対象とする光合成生物の培養に必要とされる光の強度、及び、培養槽1,1aのサイズに応じて適宜変更してよい。
【0116】
本発明の光照射型培養装置は、培養槽1に貯留する培養液2に懸濁させた状態で培養することができる光合成生物であれば、微細藻類以外のいかなる光合成生物を培養する場合に適用してもよい。
【0117】
又、培養対象とする光合成生物に対応させて、培養液2に散気管4より気泡を吹き込むためガスとして、空気以外のガスを使用するようにしてもよい。
【0118】
その他本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0119】
1 培養槽
2 培養液
3 仕切筒
4 散気管
6 空気(ガス)
7,7a 照明手段
18 蛍光灯(光源)
22a,22b スリット
24 仕切筒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光合成生物を懸濁する培養液を貯留する培養槽と、該培養槽の内側に設けた光透過性を有する仕切筒と、上記仕切筒の下端側開口部の下方に設けてガスの気泡を上記培養槽内に貯留した培養液に吹き込むための散気管と、上記培養槽内の培養液を照明するための照明手段を備え、且つ該照明手段は、上記仕切筒の内側の領域及び外周側の領域に、光源からの照明光を集光して照射する明部と、暗部とを上下方向に交互に配列して形成するようにしたことを特徴とする光照射型培養装置。
【請求項2】
照明手段を、仕切筒の内側の領域及び外周側の領域に照明光を照射する光源と、該光源の培養液に臨む側に配置した明部暗部交互形成手段とを備えてなるものとした請求項1記載の光照射型培養装置。
【請求項3】
明部暗部交互形成手段を、凸レンズ又はスリットを上下方向に配列して備えてなるものとした請求項2記載の光照射型培養装置。
【請求項4】
明部暗部交互形成手段を、内筒部材と外筒部材との間に光源を収納する内部空間を備えた中空二重筒構造としてある仕切筒の上記内筒部材と外筒部材の壁面に、水平方向に延びる凸レンズ又はスリットを上下方向に複数配列して設けてなるものとした請求項3記載の光照射型培養装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−21981(P2013−21981A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−160474(P2011−160474)
【出願日】平成23年7月22日(2011.7.22)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】