説明

光照射装置

【課題】小型化できる光照射装置を提供する。
【解決手段】本発明は、作用光を生体表面に照射する光照射部3と、この光照射部3から作用光が照射された生体表面からの反射光を検出する反射光検出部17とを備え、前記光照射部3は、作用光を断続的に生体表面に照射する構成とし、前記反射光検出部17は、前記光照射部3から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部3から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療用や美容用等に用いられる光照射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
治療用や美容用等に用いる光照射装置が提案されており、その構造は以下のようになっていた。すなわち、生体表面の温度を検出する温度検出部と、前記生体表面に作用光を照射する光照射部とを備え、例えば血行障害等で皮膚温度が低い部分を温度検出部により検出し、その部分に光照射部から作用光を照射するようになっていた(例えば下記特許文献1)。また、作用光を照射した生体表面からの反射光を反射光検出部で検出し、皮膚色による作用光の照射制御を行うものも提案されていた。
すなわち、皮膚色が白いと反射光は多くなり、逆に皮膚色が黒いと、反射光は少なくなるので、皮膚色による作用光の照射制御を行うようにしているのである(例えば下記特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−95520号公報
【特許文献2】特開2006−149847号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献1、2からも明らかなように、従来の光照射装置においては、生体表面の温度を検出には温度検出部が、また皮膚色による作用光の照射制御を行うためには反射光検出部を設けなければならず、したがって、これら両者の検出を行おうとすると、温度検出部と反射光検出部を設けなければならず、この結果として光照射装置が大型化してしまう。
【0005】
そこで、本発明は小型化を図ることを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
そして、この目的を達成するために本発明は、作用光を生体表面に照射する光照射部と、この光照射部から作用光が照射された生体表面からの反射光を検出する反射光検出部とを備え、前記光照射部は、作用光を断続的に生体表面に照射する構成とし、前記反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成とし、これにより所期の目的を達成するものである。
【発明の効果】
【0007】
以上のように本発明は、作用光を生体表面に照射する光照射部と、この光照射部から作用光が照射された生体表面からの反射光を検出する反射光検出部とを備え、前記光照射部は、作用光を断続的に生体表面に照射する構成とし、前記反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成としたものであるので、小型化を図ることが出来る。
すなわち、本発明の反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成としたものであるので、一つの反射光検出部により、生体表面の温度検出と、皮膚色による作用光の照射制御を行うことが出来、その結果として小型化を図ることが出来るのである。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の一実施形態にかかる光照射装置の断面図
【図2】同下面図
【図3】同上面図
【図4】同制御ブロック図
【図5】同動作状態を示すフローチャート
【図6】(a)〜(e)は、同動作状態を説明する特性図
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の一実施形態を、添付図面を用いて説明する。
【0010】
(実施の形態)
図1〜図3は本発明の一実施形態を示し、ハンディータイプの治療用光照射装置を示している。これらの図1〜図3において1は、握り手部分となる本体ケースで、この本体ケース1の前方には、角度調整機構2を介して光照射部3が設けられている。
また、図1に示すように、本体ケース1内には、充電タイプの電池4と、制御部5が収納されており、さらに前記電池4への充電を行うために、図2に示すように本体ケース1の下面には充電端子6が設けられ、さらにまたこの本体ケース1の後端面には落下防止用のストラップ7が取り付けられている。また、図3に示すように、本体ケース1の上面には、電源スイッチ8と、電源ランプ9と、充電ランプ10と、残り時間表示部11と、照射・警告ランプ12とが設けられている。この内、電源スイッチ8は動作を開始するためのもので、これを押せば、電源ランプ9が点灯し、後述する作用光の照射が開始されると共に、その動作残り時間は、残り時間表示部11に表示される。
【0011】
本実施形態では、後述するように、作用光の照射時間は5分としているので、この5分からの減少時間が残り時間表示部11に表示される。そして、この5分が経過すると、電源ランプ9は消灯することになるが、この5分経過前に、使用者が電源ランプ9を押せば、その時点で作用光の照射が停止されると共に、電源ランプ9が消灯することになる。
なお、充電ランプ10は、電池4への充電中には点灯し、この充電動作が終了した場合には消灯するようになっている。また、照射・警告ランプ12は、作用光の照射時には点灯しているが、異常時には点滅するようになっており、この点は後で詳述する。
【0012】
再び、図1、図2に戻って、光照射部3について説明する。光照射部3は、下面に円形(直径6センチ)の照射口13を有し、上面は閉口された円筒状の照射部ケース14を備えている。また、この照射部ケース14内で、照射口13とは非対向部分(照射口13の外側)には、LEDからなる発光素子15を4個、90度間隔で配置している。さらに、これら4個の発光素子15は、照射口13外に向けて傾斜状態で取り付け、これにより、照射口13から直接目視出来ない構成として安全性を高めている。しかし、そのために照射部ケース14内面を反射面16とし、これにより発光素子15からの作用光が反射面16で反射し、照射口13から生体表面に照射することが出来るようになっている。なお、本実施形態の発光素子15は治療用であるので、定格が5Wで、中心波長が830nmのものを用いている。また、この照射部ケース14内で、照射口13に対向する上面部分には、反射光検出部17が設けられている。この反射光検出部17は、下面が開口した断熱材料製のケース18内に、図1に示すように、下から上に向けて、透明カバー19、光学フィルタ20、レンズ21、受光素子22を設けることで構成されている。この内、光学フィルタ20は、光照射部3から生体表面に照射される作用光の波長と、この生体表面から放射される放射赤外線の波長とを通過させる特性を有しており、本実施形態では具体的には、700nm〜900nmと、5μm〜14μmまでがその通過帯域となっている。
【0013】
また、この光学フィルタ20は、光照射部3から照射される作用光の波長の透過率を、生体表面から放射される放射赤外線の波長の透過率よりも小さくしており、この点は後で詳述する。なお、透明カバー19は保護用として設けたもの、またレンズ21は、一つの受光素子22で、直径6センチの照射口13の範囲において、生体表面からの反射光と、放射される放射赤外線を検出するために設けた赤外線センサーである。
【0014】
照射部ケース14の照射口13部分には、生体表面への接触検出部23が装着されている。この接触検出部23は、例えば、生体への当接により、断面円形状態が、横長の楕円に変形することで、生体への接触を検出する構造となっている。また、照射部ケース14内のケース18外方には、放熱を考慮してアルミニューム製の取付体24が設けられ、この取付体24に上述した発光素子15、及びケース18が取り付けられている。さらに、この取付体24には、加速度センサーなどにより構成された落下検知素子25が設けられており、この落下検知素子25による落下検知時には、後述するように、光照射部3の光照射動作を停止する構成としている。
【0015】
図4は制御ブロックを示しており、電池4と充電端子6間には充電回路26が設けられ、さらにまた発光素子15と制御部5間には駆動回路27が設けられている。図5は動作状態を示すフローチャートで、先ず電源スイッチ8をオンの状態(S1)とし、次に本体ケース1を握り手部分として活用し、照射部ケース14の照射口13を生体に当てる。
すると、(S2)では、接触検出部23により生体表面への接触が検出され、この状態では、制御部5、駆動回路27により、発光素子15から、図6(e)のごとく、検証用光(パルス)を一度だけ照射する。
【0016】
この図6(e)のごとく、検証用光(パルス)はワンパルスであり、しかも作用光(パルス)よりも光強度を小さくしている。そして、この検証用光(パルス)の照射により、(S3)では、検証用光(パルス)を照射した生体表面の反射率を求める。この点を、作用光の説明をする図6(a)〜(e)を用いて説明する。
【0017】
図6(a)は図からも理解されるように、検証用光(パルス)を照射した生体表面からは二つの帯域の光が反射波として存在する。つまり、発光素子15から照射された検証用光(パルス)は、中心波長が830nmであるので、生体からの反射波はこの830nm付近の波長が最も多くなる。また、生体表面の温度に対応した波長5μm〜14μmの赤外線が生体表面から放射される。この放射光も反射波に含まれている。図6(b)は、発光素子15からの照射が無い状態の反射波を示している。受光素子22は図6(a)、(b)の状態における光情報を検出している。そして、この検出による、図6(a)のデータから、図6(b)のデータを差し引くと、図6(c)のごとく生体表面の反射波の状態を検出することができる。なお、このような引き算を適切に行うために、光学フィルタ20は、光照射部3から照射される作用光の波長(830nm付近)の透過率を、生体表面から放射される放射赤外線の波長(2μm〜14μm)の透過率よりも小さくした。
具体的には、図6(d)のごとく、光学フィルタ20は、光照射部3から照射される作用光の波長(830nm付近)の透過率を、生体表面から放射される放射赤外線の波長(2μm〜14μm)の透過率に比べて1/10000と、小さくした。このため、上述した生体表面の反射波の状態を検出することができるようになり、この反射が、予め設定していた通常値よりも10%を超えて低いと判定された時には、そこに例えば10円玉よりも大きなほくろやアザがあると仮定し、その時には(S4)で図6(b)のデータから生体表面温度を検出する。
【0018】
そして、このようにして検出した生体表面温度が40℃を超えていれば、S5において、照射部ケース14の照射口13が生体以上の高温物体に接触していると判断し、図4のブザー28で警報を発すると共に、図6(e)で示したこの検証用光(パルス)以降の作用光(断続的なパルス)への移行を停止する。また、検出した生体表面温度が30℃〜40℃であれば、(S6)において、照射部ケース14の照射口13が、例えば10円玉よりも大きなほくろやアザがある部分に対応していると仮定し、図4のブザー26で警報を発すると共に、図6(e)で示したこの検証用光(パルス)以降の作用光(断続的なパルス)への移行を停止する。さらに、検出した生体表面温度が30℃よりも低ければ、(S7)において、照射部ケース14の照射口13が生体に対応していないと判断し、(S2)へと戻る。
【0019】
一方(S3)において、生体表面からの反射光の状態が、予め設定していた通常値の90%以上あると判定された時には、(S8)で、その反射の大きさに対応して、後で発する図6(e)で示した作用光(断続的なパルス)のピーク値を予め設定する。
この設定は、生体表面からの反射光の大きさが大きい時には、作用光(断続的なパルス)のピーク値も大きく、生体表面からの反射光の大きさが小さい時には、作用光(断続的なパルス)のピーク値も小さくする。つまり、生体表面が光を反射しやすい状態(通常の問題の無い状態)では、作用光(断続的なパルス)のピーク値も大きくするが、生体表面が光を反射しにくい状態(例えば色が通常よりも黒い状態など)では、作用光(断続的なパルス)のピーク値も小さくし、これにより安全性を高めるものである。次に、(S9)で、落下検知素子25による落下検知を行い、この落下検知が無ければ、次に(S10)で、接触検出部23による生体表面への接触を判断する。そして、この(S10)で、接触検出部23による生体表面への接触が判断されると、(S11)で図6(e)で示したように断続的なパルス波を、作用光として生体表面に照射する。
【0020】
この作用光は図6(e)で示したように断続的なパルス波であるので、上記図6(a)〜図6(c)により、生体表面の反射波の状態を検出しており(S12)、反射量が減少すると、(S13)において、ほくろやアザを検出したと判定し、(S14)で図4のブザー28で警報を発し、(S2)へと戻る。(S12)で反射量の減少が無いと判定されて時には、(S15)で図6(b)の生体表面温度を検出する。温度上昇があれば(S16)で、図6(e)に示した作用光の断続周期を伸ばして、実質的な出力減少化を図り、この状態で(S17)により作用光の照射を継続する。
【0021】
そして、(S15)で温度変化が無かった場合、また(S17)を経由した場合であっても、(S18)で設定している5分間の作用光照射が行われ、つまり本実施形態では、5分間の生体の光治療が行われる。そして、この5分の治療が終了すると、(S19)において全ての動作が終了する。
【0022】
以上のごとく本実施形態では、一つの受光素子22で、作用光を照射する生体表面の温度や、皮膚の色等の状態を検出することができるので、光照射部3の小型化が図れ、これにより光照射装置としての小型化も図れ、これによってハンディータイプの治療用光照射装置の使い勝手も良くすることが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0023】
以上のように本発明は、作用光を生体表面に照射する光照射部と、この光照射部から作用光が照射された生体表面からの反射光を検出する反射光検出部とを備え、前記光照射部は、作用光を断続的に生体表面に照射する構成とし、前記反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成としたものであるので、小型化を図ることが出来る。
すなわち、本発明の反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成としたものであるので、一つの反射光検出部により、生体表面の温度検出と、皮膚色による作用光の照射制御を行うことが出来、その結果として小型化を図ることが出来るのである。
このため、各種光照射装置として、広く活用が期待される。
【符号の説明】
【0024】
1 本体ケース
2 角度調整機構
3 光照射部
4 電池
5 制御部
6 充電端子
7 ストラップ
8 電源スイッチ
9 電源ランプ
10 充電ランプ
11 残り時間表示部
12 照射・警告ランプ
13 照射口
14 照射部ケース
15 発光素子
16 反射面
17 反射光検出部
18 ケース
19 透明カバー
20 光学フィルタ
21 レンズ
22 受光素子
23 接触検出部
24 取付体
25 落下検知素子
26 充電回路
27 駆動回路
28 ブザー




【特許請求の範囲】
【請求項1】
作用光を生体表面に照射する光照射部と、この光照射部から作用光が照射された生体表面からの反射光を検出する反射光検出部とを備え、前記光照射部は、作用光を断続的に生体表面に照射する構成とし、前記反射光検出部は、前記光照射部から生体表面への作用光の光照射時には、この生体表面からの反射光を検出する構成とし、前記照射部から生体表面への作用光の非照射時には、この生体表面から放射される放射赤外線を検出する構成とした光照射装置。
【請求項2】
反射光検出部は、光照射部から照射される作用光の波長と、生体表面から放射される放射赤外線の波長とを通過させる光学フィルタを有する請求項1に記載の光照射装置。
【請求項3】
光学フィルタは、光照射部から照射される作用光の波長の透過率を、生体表面から放射される放射赤外線の波長の透過率よりも小さくした請求項2に記載の光照射装置。
【請求項4】
光照射部は、照射口を有する照射部ケースと、この照射部ケース内に配置した発光素子とを有し、前記照射部ケース内において、反射光検出部を前記照射口に対向配置した請求項1から3のいずれか一つに記載の光照射装置。
【請求項5】
発光素子は、照射部ケース内の照射口とは非対向部分に配置し、この照射部ケース内面を反射面とした請求項4に記載の光照射装置。
【請求項6】
照射部ケースの照射口部分には、生体表面への接触検出部を設けた請求項1から5のいずれか一つに記載の光照射装置。
【請求項7】
落下検知素子を設け、この落下検知素子による落下検知時には、光照射部の光照射動作を停止する構成とした請求項1から6のいずれか一つに記載の光照射装置。
【請求項8】
光照射部は、検証用光を照射後、作用光を照射する構成とした請求項1から7のいずれか一つに記載の光照射装置。
【請求項9】
検証用光は、作用光よりも光強度を小さくした請求項1から8のいずれか一つに記載の光照射装置


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−10940(P2011−10940A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158739(P2009−158739)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】