説明

光触媒機能を付与した紫外線吸収繊維製品、およびその製造方法

【課題】
本発明は、長期に安定した光触媒機能を有する繊維製品を提供することである。
【解決手段】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンの光触媒機能を有する超微細粒子を含む水溶液に下着の繊維素材をコーティングし、または、下着に該水溶液を噴霧し、自己結着させることとによって、長期的に安定した、光触媒作用を有し、染色した発色が退色しにくく、容易に汚れを洗浄できる繊維製品とすることで課題を解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光触媒機能や超親水性機能を有し、抗菌効果、消臭効果、防カビ効果、防汚効果を示す水溶性コーティング剤を繊維糸、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品に結着させた繊維製品、およびその製法に関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来、消臭繊維製品では、バチラス・ズブチリス・クボタを水又は糊料含有液に含有させてなる消臭剤を含有させた下着(特許文献:特開平成09−275975)、または、セルロース繊維にメタクリル酸をグラフト共重合させた改質セルロース繊維を原料とする消臭糸塩基性悪臭物質を吸着脱臭する消臭糸を含有することを特徴とする消臭下着(特許文献番号:特開2004−091935などがある。
また、弊社では、光触媒機能を有し、自己結着性を有する超微細粒子を含む水溶性コーティング剤を発明した(ゆかコラボレーション株式会社出願:特願2006−139720)。本発明は、その発明の応用特許となるものである。
【特許文献1】特開平成09−275975号公報
【特許文献2】特開2004−091935号公報
【特許文献3】特願2006−139720号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
繊維製品は、利用者の肌に直接触れるもの多いため、汗や、その排出物や老化物などが付着しやすく、また生活上の環境から様々な臭いなども繊維に吸着し、染み込み易いものである。体から排出された、もしくは体の老化物質は、タンパクや油脂などを主成分とし、繊維質に染み込み、繊維製品そのものの変色や臭気原因となることが多く、また、その成分が雑菌、病原菌などの繁殖を促す原因となることもある。それら汚れ物質を洗浄するために、洗剤と水などで洗い落とすが、長時間使用した下着やスポーツを行った後の繊維製品などでは泥の汚れなども付着し、容易に洗浄しきれないことが多く、また、その多量の汚れの除去のために洗剤を多量に使用した場合や、長時間洗濯機を使用した場合は、環境により大きな負荷をかけ、また、繊維そのものを傷めることとなるので、汚れをいかに落としやすくするか、繊維製品に繁殖する菌類をいかに滅菌するか、さらに、繊維製品に付着した臭気を抑制し、消去するかが課題であった。
【0004】
さらに、特に天然繊維では、染色した後の発色は、洗濯により色落ちしたり、天日干しによって、紫外線の影響によって退色したりするため、洗濯後の品質の劣化を防ぐことが困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶
性コーティング剤を、繊維製品の素材である繊維糸、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品に自己結着させて、概物質の持つ光触媒効果によって、繊維に付着してくる汚れを分解し、臭気を分解し、また、汚れが用意に落ち易く、さらに洗濯によっても色落ちが少なく、特に繊維製品が天然繊維の場合には、天日干しによっても色落ちがでない繊維製品、およびその製法に関する。
【0006】
本発明でいう超微粒子とは、100nm以下のサイズである微粒子のことであり、可視光線はこの様な粒子サイズでは、大きく屈折されることは無いので、あたかもその溶液や結着した超微細粒子の層をそのまま通過したように見えるため、肉眼ではその層を見ることのできない状態となっている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の繊維製品は、繊維にチタン化合物の超微細粒子を自己結合させているので、繊維表面の質感は元のものとなんら変化することは無く、また色調もなんら変化させること無く、繊維に光触媒効果を保有させ、抗菌、滅菌、防汚、紫外線吸収効果を示している。
【0008】
本発明の繊維製品は、光触媒機能や超親水性機能を有し、なんらバインダーを混合しないで基材に自己接着することができる酸化チタンまたは(および)水酸化チタンの超微粒子を自己結合させた繊維からできているので、洗濯を繰り返し行っても剥落せず、長期的に安定した光触媒機能や超親水性機能を発揮し、抗菌、制菌、消臭、防汚などの効果を発現することができる。
【0009】
本発明の繊維製品は、繊維表面に超微細粒子を結着させているので、日光、洗濯などに堅牢性を高め、通常の洗濯では染料を容易に洗い流されなくし、天日干し時にも、該超微細粒子が紫外線を吸収し、その染料の紫外線による化学変化を阻害するため、長期間色落ちが無く、その発色を保つことができる。さらに、紫外線による皮膚の日焼けを防止することができる。
【0010】
素材となる繊維は、綿や羊毛、絹などの天然繊維のみならず、化学繊維であるナイロン、レーヨン、キュプラ、テンセル、プロミックス、アラミド、ビニロン、ポリクラール、ポリ塩化ビニル、ポリエステル、アクリル、ポリウレタン、ポリプロピレンなどのあらゆる素材を使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
繊維製品の素材となる繊維糸、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊
維製品を、二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液に漬け込み、脱水し、または該水溶液を噴霧し、常温もしくは繊維を傷めない範囲の加温によって乾燥させることによって繊維製品素材となる繊維糸や編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品の加工を行い、目的とする繊維製品を作成する。
【0012】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液における二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子の濃度は、重量比で、0.1%以上20%以下であることが好ましい。
【0013】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液における二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子の濃度は、重量比で、0.1%以下となると、素材となる繊維への十分で均等な付着が確保されないため、その光触媒効果が十分に発揮されない可能性が高い。
【0014】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液における二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子の濃度は、重量比で、20%
以上になると、素材となる繊維への付着が過剰となり、繊維の風合いや感触を損なう可能性が高い。
【0015】
素材となる繊維糸や、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品を、二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液に漬け込み、または噴霧するときの両者の温度条件は、摂氏0度以上、常温付近までであることが望ましい。
【0016】
素材となる繊維糸や、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品を、二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液に漬け込み、または噴霧するときの両者の温度条件が、摂氏0度以下になると該水溶液が凍結する可能性がある。
【0017】
素材となる繊維糸や、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品を、二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンを超微細粒子として分散した水溶液に漬け込み、また噴霧するときの両者の温度条件が、常温より大きく上昇すると、水溶液中の超微細粒子が会合し、白濁してくる可能性がある。そのような白濁を生じて、視認できる大きさの粒子となると、粒子の自己結着性が著しく弱くなり、繊維に結着できなくなる可能性があり、また、付着したものも粒子が大きいため、感触がざらつき、繊維の風合いや、色合いを変化させ、元の素材の性質とは違ったものに変化させてしまう可能性がある。
【実施例】
【0018】
以下に本発明の実施例を記すが、本発明はこれら実施例にのみ用途を限定されるものではない。
【0019】
女性用綿靴下を本発明によるコーティング剤に5分間浸漬し、遠心分離機にて、脱水した
後、110℃にて熱風乾燥を行ったものを試験製品とする。
【0020】
この試験製品の一部、5cmx5cmのサイズに切り取り試験サンプルとした。この試験サンプルと、コーティングを施さない同女性用綿靴下から切り取ったサンプルとを比較する抗菌性試験を以下の要領で行った。
【0021】
日本化学繊維検査協会にて抗菌性試験を行った。
試験方法: JIS L1902 菌液吸収法(統一試験法)
提供菌:黄色ブドウ球菌
洗濯方法:JIS L 0217、103号(ただし、JAFET標準洗剤を使用)
試験の結果:本コーティング剤使用綿製品片は、洗濯回数10回で、生菌数600以下、静菌活性値4.3以上、殺菌活性値1.6以上であった。比較の標準綿白布(接菌直後)、生菌数2.4x10の4乗、静菌活性なし、殺菌活性値なし、同(18時間後)生菌数1.1x10の7乗であった。
【0022】
同製品サンプルの着色靴下を、JAFET標準洗剤を使用し、天日乾燥のプロセスを30回繰り返して行ったところ、本発明品の靴下は、色合いが変化することなく、鮮明な当初の色を保つことができたが、比較サンプルでは、脱色が見られ、当初の色合いとは大きく変化していた。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によって、長期にわたって光触媒作用を有し、洗濯の廃液による環境の負担を軽減し、防臭効果、防汚効果、除汚効果、防臭効果、および色調保持効果のある繊維製品を提供することによって、快適な衣料生活環境が、保てるので、その需要は極めて大きいものがある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンの超微細粒子をコーティングした、光触媒効果を有する繊維糸、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品。
【請求項2】
二酸化チタンまたは(および)水酸化チタンの超微細粒子をコーティングした、光触媒効果を有する繊維糸、不織布、編織物等の繊維布帛、または繊維布帛からなる繊維製品の製造法。

【公開番号】特開2008−7885(P2008−7885A)
【公開日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−179280(P2006−179280)
【出願日】平成18年6月29日(2006.6.29)
【出願人】(306020922)ゆかコラボレーション株式会社 (2)
【Fターム(参考)】