説明

光音響計測装置及び光音響信号検出方法

【課題】光音響計測装置において、被検体の検出精度を向上する。
【解決手段】レーザ光源22から第1の光を被検体に照射し、被検体に第1の光を照射することにより被検体内で生じた光音響信号を超音波センサ18により検出する。第1の光の照射に先立って、レーザ光源19から距離計測用の第2の光を出射し、出射した第2の光に対する反射光を反射光検出手段20により検出する。時間計測手段16は、第2の光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測する。光照射制御手段17は、計測された時間に基づいて、例えば超音波プローブ12と被検体との間の距離を求め、求めた距離に基づいて第1のパルスレーザ光の放射を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光音響計測装置及び光音響信号検出方法に関し、更に詳しくは、被検体に光を照射し、光照射により被検体内で生じた超音波を検出する光音響計測装置及び光音響信号検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
生体内部の状態を非侵襲で検査できる画像検査法の一種として、超音波検査法が知られている。超音波検査では、超音波の送信及び受信が可能な超音波探触子を用いる。超音波探触子から被検体(生体)に超音波を送信させると、その超音波は生体内部を進んでいき、組織界面で反射する。超音波探触子でその反射音波を受信し、反射超音波が超音波探触子に戻ってくるまでの時間に基づいて距離を計算することで、内部の様子を画像化することができる。
【0003】
また、光音響効果を利用して生体の内部を画像化する光音響イメージングが知られている。一般に光音響イメージングでは、パルスレーザ光を生体内に照射する。生体内部では、生体組織がパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により超音波(光音響信号)が発生する。この光音響信号を超音波プローブなどで検出し、検出信号に基づいて光音響画像を構成することで、光音響信号に基づく生体内の可視化が可能である。
【0004】
ここで、光音響イメージングでは、比較的出力の高いレーザ光を生体内に照射する必要がある。安全性の観点からは、プローブが生体に接触していないときはパルスレーザ光の出射を抑止することが好ましい。これに関して、特許文献1には、光路上に配置された被測定物を検出する被測定物検出手段を設け、被測定物検出手段が被測定物を検出しているときに光照射を行うことが記載されている。被測定物の検出には、被測定物の特定を利用できる。具体的には、被測定物の遮光性、反射性、固有の温度、重さ、静電容量を利用できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−142320号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1において、被測定物の反射性を利用して被測定物の検出を行う場合、被検出物測定手段は、光を出射する投光器と、投光器と同じ側に配置された受光器とで構成される。被測定物が光路上に配置されているときは、投光器から出射した光は被測定物で反射し、受光器で受光される。一方、被測定物が光路上に配置されていないときは、投光器から出射した光は反射することなくそのまま進み、受光器は反射光を検出できない。
【0007】
上記構成の場合、受光器での光の検出結果に基づいて被測定物の配置の有無を判断できる。しかしながら、上記構成では単に受光器で光が検出されたときに被測定物が正しく配置されていると判断されるに過ぎない。従って、被測定物の検出の精度は低い。
【0008】
本発明は、上記に鑑み、被検体の検出精度を向上した光音響計測装置及び光音響信号検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、被検体に照射すべき第1の光を生成する第1の光源と、第1の光の照射により被検体内で生じた光音響信号を検出する光音響信号検出手段と、距離測定用の第2の光を生成する第2の光源と、第2の光源から出射した第2の光に対する反射光を検出する反射光検出手段と、第2の光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測する時間計測手段と、計測された時間に基づいて第1の光の放射を制御する光照射制御手段とを備えたことを特徴とする光音響計測装置を提供する。
【0010】
本発明の光音響計測装置では、制御手段が、計測された時間に基づいて被検体との間の距離を算出し、該算出した距離が所定のしきい値以下のとき、第1の光を被検体に照射させる構成することができる。
【0011】
本発明の光音響計測装置は、光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成手段を更に備える構成を採用することができる。
【0012】
第2の光は、パルスレーザ光であってもよい。
【0013】
本発明の光音響計測装置では、第1の光源が第2の光源を兼ねる構成を採用できる。
【0014】
第2光の光強度は、第1の光の光強度よりも低いことが好ましい。
【0015】
本発明は、また、被検体に第1の光を照射するステップと、照射された第1の光により被検体内で生じた光音響信号を検出するステップと、第1の光の照射に先立って、距離測定用の第2の光を出射するステップと、出射した第2の光に対する反射光を検出するステップと、第2の光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測するステップと、計測された時間に基づいて第1の光の放射を制御するステップとを有することを特徴とする光音響信号検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明の光音響計測装置及び光音響信号検出方法は、距離計測用の第2の光を出射し、第2の光に対する反射光が検出されるまでの時間を計測する。被検体までの距離が近いほど、反射光が検出されるまでに要する時間は短くなり、検出された時間に基づいて被検体までの間の距離が判断できる。このため、単に反射光の有無に基づいて被検体の検出を行う場合に比して、被検体の検出精度を向上できる。計測された時間に基づいて、例えば計測された時間が所定の時間よりも短いときに第1の光の照射が行われるようにすることで、被検体に対して十分接近したときに第1の光を照射できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1実施形態の光音響計測装置を示すブロック図。
【図2】超音波プローブと被検体とを示す図。
【図3】パルスレーザ光を用いた距離測定の原理を示す図。
【図4】動作手順を示すフローチャート。
【図5】本発明の第2実施形態の光音響計測装置を示すブロック図。
【図6】第2実施形態における動作手順を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態を詳細に説明する。図1は、本発明の第1実施形態の光音響計測装置を示す。光音響計測装置10は、光音響画像診断装置(光音響画像生成装置)として構成され、超音波ユニット11、超音波プローブ12、及びレーザユニット13を備える。光音響画像診断装置10は、少なくとも光音響画像を生成する。光音響画像診断装置10は、光音響画像に加えて超音波画像を生成してもよい。レーザユニット13は、被検体に照射すべき光(第1の光)を生成するレーザ光源(第1の光源)22を含む。レーザ光源22は、光音響画像生成時に被検体に照射すべきパルスレーザ光(第1のパルスレーザ光)を生成する。第1のパルスレーザ光の波長は、観察対象物に応じて適宜設定すればよい。
【0019】
超音波プローブ12は、超音波センサ18、レーザ光源(第2のレーザ光源)19、反射光検出手段20、及び光照射部21を有する。レーザユニット13が出射する第1のパルスレーザ光は、例えば光ファイバなどの導光手段を用いて超音波プローブ11まで導光される。光照射部21は、導光された第1のパルスレーザ光を被検体に向けて出射させる。超音波センサ18は、光音響信号検出手段であり、例えば一次元的に配列された複数の超音波振動子を含む。超音波センサ18は、第1のパルスレーザ光が照射されることにより、被検体内の観察対象物で生じた超音波(光音響信号)を検出する。
【0020】
レーザ光源19は、距離測定用の光(第2の光)を生成する第2の光源に相当する。レーザ光源19は、パルスレーザであり、距離測定用のパルスレーザ光(第2のパルスレーザ光)を生成する。レーザ光源19には、レーザダイオード(LD:laser diode)などを用いることができる。第2のパルスレーザ光のレーザパワー(光強度)は、励起用である第1のパルスレーザ光のレーザパワーよりも低いものとする。反射光検出手段20は、レーザ光源19から出射した第2のパルスレーザ光に対する反射光を検出する。反射光検出手段20には、フォトダイオード(PD:photo diode)などを用いることができる。
【0021】
超音波ユニット11は、受信回路14、画像生成手段15、時間計測手段16、及び光照射制御手段17を有する。受信回路14は、超音波プローブ12の超音波センサ18で検出された光音響信号を受信する。画像生成手段15は、受信回路14で受信された光音響信号に基づいて光音響画像を生成する。生成された光音響画像は、例えば図示しない表示手段などの表示画面上に表示される。光音響信号を画像化せずに、光音響信号に対して何らかの信号処理を行うこととしてもよい。
【0022】
時間計測手段16は、超音波プローブ12の反射光検出手段20から反射光検出のタイミングの通知を受ける。時間計測手段16は、第2のパルスレーザ光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測する。光照射制御手段17は、計測された時間に基づいて第1のパルスレーザ光の放射を制御する。例えば光照射制御手段17は、計測された時間に基づいて超音波プローブ12と被検体との間の距離を算出する。光照射制御手段17は、算出した距離が所定のしきい値以下であるときにのみ、第1のパルスレーザ光を被検体に照射させる。
【0023】
図2は、超音波プローブ12を示す。超音波プローブ12は、光ファイバや電気ケーブルなどを用いて超音波ユニット11及びレーザユニット13と接続されている。光照射部21は、被検体30に対して、光ファイバを用いてレーザユニット13から導光された、励起光である第1のパルスレーザ光を照射する。被検体内の観察対象物31は、第1のパルスレーザ光のエネルギーを吸収し、そのエネルギーによる断熱膨張により光音響信号を発生する。超音波センサ18は、観察対象物31で発生した光音響信号を検出する。
【0024】
レーザ光源19から出射した第2のパルスレーザ光は、被検体30の表面で反射する。反射光検出手段20は、被検体30の表面で反射した反射光を検出する。レーザ光源19が第2のパルスレーザ光を出射してから反射光検出手段20で反射光が検出されるまでの間の時間は、超音波プローブ12と被検体30との間の距離Dに応じて変化する。駆動回路23は、レーザ光源19及び反射光検出手段20の駆動電源回路である。駆動回路23は、超音波プローブ12に設けられている必要はなく、超音波ユニット11内に設けられていてもよい。
【0025】
図3は、パルスレーザ光を用いた距離測定の原理を示す。図3におけるパルスレーザ50は図1におけるレーザ光源19に相当し、光検出器55は反射光検出手段20に相当する。まず、パルスレーザの出射タイミングを時刻t=0と定義する。例えばパルスレーザ50から出射した光をビームスプリッター51で光検出器52方向に分岐し、光検出器52が光を検出したタイミングをt=0と定義する。パルスレーザ光は被検体53で反射する。反射光の光路上にビームスプリッター54を置き、ビームスプリッター54で分岐した反射光が光検出器55で検出される時刻を調べる。反射光の検出時刻がt=Tであったとき、被検体53までの間の距離Lは、光速をcとしてL=cT/2で求まる。
【0026】
上記したようなパルスレーザを用いた測距技術では、パルスレーザ光のパルス幅がn秒〜p秒のものも報告されている。パルス幅が数十n秒のパルスレーザ光を用いたときに、1cm以下の電線などが検出可能である。トプコンの報告では、パルス幅8n秒、繰り返し周波数8.5kHz、ピークパワー40Wの半導体レーザにおいて、距離分解能1mm以下も可能である。パルスレーザの波長は、距離を測る空間の透過率に応じて選定される。大気観測などの長距離の場合、大気の透過率の高い波長であって、眼への安全性を考慮した波長が選ばれる。例えば車載用では波長800nm〜900nmのパルスレーザ光が用いられる。本実施形態においても、波長800nm〜900nmのパルスレーザ光を、距離測定用の第2のパルスレーザ光として用いるものとする。
【0027】
図4は、動作手順を示す。光音響画像の生成に際し、レーザ光源19は、距離測定用の第2のパルスレーザ光を出射する(ステップA1)。超音波プローブ12において、第2のパルスレーザ光の光出射面は、被検体30(図2)と接触する超音波センサ18が配置された面と同一面上にあるとする。反射光検出手段20は、第2のパルスレーザ光に対する反射光を検出する(ステップA2)。時間計測手段16は、第2のパルスレーザ光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測する(ステップA3)。
【0028】
光照射制御手段17は、時間計測手段16で計測された時間に基づいて、超音波プローブ12(第2のパルスレーザ光の出射面)から被検体30の表面までの間の距離Dを算出する(ステップA4)。光照射制御手段17は、算出した距離Dが、所定のしきい値以下であるか否かを判断する(ステップA5)。算出された距離Dがしきい値以下であるとき、超音波プローブ12の超音波センサ18が配置された面が被検体30の表面に接触している、或いは被検体30の表面に十分に接近していると判断できる。光照射制御手段17は、距離Dがしきい値以下のとき、レーザユニット13に対して発光信号(レーザトリガ信号)を与える(ステップA6)。
【0029】
光照射制御手段17は、ステップA5で距離Dがしきい値よりも大きいと判断したときは、レーザユニット13に対して発光信号を与えない。その場合、ステップA1に戻り、第2のパルスレーザ光の出射から距離Dの算出までを繰り返し行う。算出された距離Dがしきい値以下になると、ステップA6に進み、レーザユニット13に対して発光信号が与えられる。なお、距離Dは、反射光が検出されるまでの間の時間と比例関係にあるため、反射光が検出されるまでの間の時間から距離Dを算出するステップであるステップA4を省略し、ステップA5において、ステップA3で計測された時間をそのまましきい値処理してもよい。
【0030】
光照射制御手段17が発光信号を出力すると、レーザ光源22は、第1のパルスレーザ光を出射する(ステップA7)。レーザ光源22から出射した第1のパルスレーザ光は、プローブ11まで導光され、光照射部21から被検体30に照射される。この光照射により、被検体30内の観察対象物31において光音響信号が発生する。超音波センサ18は、観察対象物31からの光音響信号を検出する(ステップA8)。画像生成手段15は、受信回路14を介して光音響信号を入力し、光音響画像を生成する(ステップA9)。生成された光音響画像は、ディスプレイ装置などに表示される。
【0031】
本実施形態では、光音響画像の生成に際して、被検体に向けて第2のパルスレーザ光を照射する。その第2のパルスレーザ光に対する反射光を検出し、第2のパルスレーザ光の照射から反射光の検出までの間の時間を計測する。計測された時間に基づいて、超音波プローブ12から被検体の表面までの間の距離を判断することができる。本実施形態では、パルスレーザを用いた距離測定の技術を応用し、被検体までの間の距離を判断しているため、被検体が超音波プローブ12に接触しているか、又は被検体が超音波プローブ12に十分に近づいているかを、正確に判断することができる。このように、本実施形態では被検体の検出精度を向上することができる。被検体が超音波プローブ12から離れているときには、レーザユニット13で生成された第1のパルスレーザ光が光照射部21から放射されることを抑止することで、安全性を向上できる。
【0032】
続いて本発明の第2実施形態を説明する。図5は、本発明の第2実施形態の光音響画像生成装置を示す。本実施形態の光音響画像生成装置(光音響画像診断装置)10aでは、超音波プローブ12aは、超音波センサ18、反射光検出手段20、及び光照射部21を有する。本実施形態の光音響画像診断装置10aにおける超音波プローブ12aの構成は、図1に示す第1実施形態の光音響画像診断装置10における超音波プローブ12の構成から、レーザ光源19を省いた構成である。本実施形態では、レーザユニット13のレーザ光源22が、距離測定用の第2のパルスレーザ光を生成する第2のレーザ光源を兼ねる。
【0033】
レーザユニット13は、励起用の第1のパルスレーザ光を生成するモードと、距離測定用の第2のパルスレーザ光を生成するモードとの2つの動作モードで動作する。レーザ光源22は、モードに従って、第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とを生成する。パルスレーザ光のレーザ波長、パルス幅、繰り返し周期は、第1のパルスレーザ光と第2のパルスレーザ光とで同じでよい。第2のパルスレーザ光のピークパワーは、第1のパルスレーザ光のピークパワーよりも低いことが好ましい。
【0034】
レーザ光源22が生成した第2のパルスレーザ光は、レーザユニット13から超音波プローブ12aまで導光され、超音波プローブ12aの光照射部21から被検体に向けて照射される。第2のパルスレーザ光が進行する先に被検体30(図2)が存在する場合、光照射部21から出射した光の反射光のうちの一部が反射光検出手段20に入射し、反射光検出手段20は反射光を検出する。反射光の検出から、被検体30と超音波プローブとの間の距離Dの算出までの動作は、第1実施形態と同様である。
【0035】
光照射制御手段17は、算出した距離Dが所定のしきい値以下のときは、レーザユニット13に対して第1のパルスレーザ光の発光信号を送る。レーザ光源22は、発光信号が入力されると、励起用の第1のパルスレーザ光を生成する。第1のパルスレーザ光は、レーザユニット13から超音波プローブ12aまで導光され、光照射部21から被検体30に向けて照射される。被検体30内の観察対象物では、照射された第1のパルスレーザ光によって光音響信号が発生する。光音響信号の検出から光音響画像の生成までの動作は、第1実施形態と同様である。
【0036】
図6は、第2実施形態における動作手順を示す。はじめ、レーザ光源22は、距離測定用の第2のパルスレーザ光を生成するモードで動作する。光音響画像の生成に際し、レーザ光源22は、第2のパルスレーザ光を生成する(ステップB1)。第2のパルスレーザ光は、光ファイバなどにより超音波プローブ12aまで導光され、光照射部21から出射する(ステップB2)。反射光検出手段20は、第2のパルスレーザ光に対する反射光を検出する(ステップB3)。時間計測手段16は、第2のパルスレーザ光の出射から反射光の検出までの間の時間を計測する(ステップB4)。
【0037】
光照射制御手段17は、時間計測手段16で計測された時間に基づいて、超音波プローブ12a(光照射部21の出射面)から被検体30の表面までの間の距離Dを算出する(ステップB5)。光照射制御手段17は、算出した距離Dが、所定のしきい値以下であるか否かを判断する(ステップB6)。算出された距離Dがしきい値以下であるとき、超音波プローブ12aの超音波センサ18が配置された面が被検体30の表面に接触し、或いは被検体30の表面に十分に接近していると判断できる。光照射制御手段17は、距離Dがしきい値以下のとき、レーザユニット13に対して励起光の発光信号(本照射トリガ信号)を与える(ステップB6)。
【0038】
光照射制御手段17は、ステップB6で距離Dがしきい値よりも大きいと判断したときは、レーザユニット13に対して励起光の発光信号を与えない。その場合、ステップB1に戻り、算出された距離Dがしきい値以下になるまで、第2のパルスレーザ光の出射から距離Dの算出までを繰り返し行う。算出された距離Dがしきい値以下になると、ステップB7に進み、レーザユニット13に対して励起光の発光信号が与えられる。距離Dを算出せずに、計測された時間をしきい値処理してもよい点は第1実施形態と同様である。
【0039】
レーザユニット13は、光照射制御手段17が励起光の発光信号を出力すると、レーザ光源22の動作モードを、励起用の第1のパルスレーザ光を生成するモードに切り替え、第1のパルスレーザ光を生成する(ステップB8)。生成された第1のパルスレーザ光はレーザユニット13から超音波プローブ12aまで導光され、光照射部21から被検体30に向けて照射される(ステップB9)。第1のパルスレーザ光が照射されることで、被検体30内の観察対象物31において光音響信号が発生し、超音波センサ18は、観察対象物31からの光音響信号を検出する(ステップB10)。画像生成手段15は、受信回路14を介して光音響信号を入力し、光音響画像を生成する(ステップB11)。生成された光音響画像は、ディスプレイ装置などに表示される。
【0040】
本実施形態では、励起用の第1のパルスレーザ光を生成するレーザ光源22が、距離測定用の第2のパルスレーザ光を生成する第2のレーザ光源を兼ねる。本実施形態では、1つのレーザ光源22を用いて、励起用の第1のパルスレーザ光と、距離測定用の第2のパルスレーザ光とを生成するため、超音波プローブに第2のレーザ光源を別途設ける第1実施形態に比して、超音波プローブの構成を簡素化できる。また、また、超音波プローブに、レーザ光源を駆動するための駆動電源回路を設ける必要もなくなる。その他の効果は、第1実施形態と同様である。
【0041】
なお、第1実施形態では、超音波プローブ12に距離測定用の第2のパルスレーザ光を生成するレーザ光源19を設けたが、第2のパルスレーザ光を生成する第2のレーザ光源は超音波プローブ12に設けられている必要はない。例えば、レーザユニット13に、励起用の第1のパルスレーザ光を生成するレーザ光源22に加えて第2のレーザ光源を設け、第2のレーザ光源で生成された光を、光ファイバなどを用いて超音波プローブ12まで導光し、超音波プローブ12から第2のパルスレーザ光を照射するようにしてもよい。
【0042】
以上、本発明をその好適な実施形態に基づいて説明したが、本発明の光音響計測装置及び光音響信号検出方法は、上記実施形態にのみ限定されるものではなく、上記実施形態の構成から種々の修正及び変更を施したものも、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0043】
10:光音響計測装置(光音響画像診断装置)
11:プローブ
12:超音波ユニット
13:レーザユニット
14:画像表示手段
15:スイッチ
16:受信回路
17:AD変換手段
18:画像再構成手段
19:検波手段
20:対数変換手段
21:画像構築手段
22:制御手段
23:送信制御回路
24:光照射抑止回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体に照射すべき第1の光を生成する第1の光源と、
前記第1の光の照射により被検体内で生じた光音響信号を検出する光音響信号検出手段と、
距離測定用の第2の光を生成する第2の光源と、
前記第2の光源から出射した第2の光に対する反射光を検出する反射光検出手段と、
前記第2の光の出射から前記反射光の検出までの間の時間を計測する時間計測手段と、
前記計測された時間に基づいて前記第1の光の放射を制御する光照射制御手段とを備えたことを特徴とする光音響計測装置。
【請求項2】
前記制御手段が、前記計測された時間に基づいて被検体との間の距離を算出し、該算出した距離が所定のしきい値以下のとき、前記第1の光を被検体に照射させるものであることを特徴とする請求項1に記載の光音響計測装置。
【請求項3】
前記第1の光源が前記第2の光源を兼ねることを特徴とする請求項1又は2に記載の光音響計測装置。
【請求項4】
前記光音響信号に基づいて光音響画像を生成する光音響画像生成手段を更に備えたことを特徴とする請求項1から3何れかに記載の光音響計測装置。
【請求項5】
前記第2の光がパルスレーザ光であることを特徴とする請求項1から4何れかに記載の光音響計測装置。
【請求項6】
前記第2の光の光強度が前記第1の光の光強度よりも低いことを特徴とする請求項1から5何れかに記載の光音響計測装置。
【請求項7】
被検体に第1の光を照射するステップと、
前記照射された第1の光により被検体内で生じた光音響信号を検出するステップと、
前記第1の光の照射に先立って、距離測定用の第2の光を出射するステップと、
前記出射した第2の光に対する反射光を検出するステップと、
前記第2の光の出射から前記反射光の検出までの間の時間を計測するステップと、
前記計測された時間に基づいて前記第1の光の放射を制御するステップとを有することを特徴とする光音響信号検出方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−187394(P2012−187394A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−30072(P2012−30072)
【出願日】平成24年2月15日(2012.2.15)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】