免疫グロブリンをコードする核酸を得る方法
本発明は単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応と比較して減少している方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の免疫グロブリン産生細胞からマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により免疫グロブリンをコードする核酸を得る方法及び手段に関し、また免疫グロブリンを産生する方法に関し、この方法では、in vitro翻訳と組み合わせて単一の免疫グロブリン産生細胞から免疫グロブリンをコードする核酸が得られる。また、本発明は組換え産生したヒトFabフラグメントを特徴づけるための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリドーマ技術(Cole, S.P.C., et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); and Boerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95)が確立されてから、モノクローナル免疫グロブリンが科学研究、ヒトの医療及び診断法において極めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これにより、モノクローナル、特に治療免疫グロブリンの作製は盛んに研究が行われている分野である。この点に関して、特にハイブリドーマ技術及びファージディスプレイ技術(Hoogenboom, H.R., and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J.D., et al., J. Mol. Biol. 222 (1991) 581-597)の2つの技術がモノクローナル免疫グロブリンの作製に一般的に使用されている。ハイブリドーマ技術では安定なクローンを得ることは困難であるため、抗体の多様性は減少し、限られた数のB細胞でのみ融合、増殖その後の特徴づけに成功している。同様に、ファージ又は酵母ディスプレイベースのコンビナトリアルライブラリーアプローチの欠点は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム対合である。本来の重鎖及び軽鎖対合の解離や本来あるべきでない対合が起こるため、高親和性の重鎖及び軽鎖対の同定のために、大量の免疫グロブリン産生細胞のスクリーニングを必要とする。さらに、このような本来あるべきでない対合はヒト抗原に対して望ましくない交差反応を示す可能性がある。最終的に、コンビナトリアルライブラリーの選択及びスクリーニングにより同定される標的特異的免疫グロブリンの遺伝的多様性は、一般的に、本来の選択バイアスにより制限される。
【0003】
免疫グロブリン産生細胞から免疫グロブリンを生成することは当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。このような方法は、例えば、ハイブリドーマ技術である。別の方法には免疫グロブリンの核酸配列の同定に基づくものがある。通常、可変領域の又はCDR領域のみの又はCDR3領域のみの配列を同定することで十分である。例えば、mRNAを免疫グロブリン産生細胞のプールから単離し、免疫グロブリンのCDR領域をコードするcDNAライブラリーを構築するために使用する。次に、cDNAライブラリーをNS0又はCHOなどの適切な宿主細胞にトランスフェクションし、特異的な免疫グロブリン産生のためにスクリーニングする。
【0004】
WO 2008/104184は同種抗体をクローニングする方法を報告している。単一のヒトB細胞からのモノクローナル抗体の効率的な生成がTiller等により報告されている(Tiller, T., et al., J. Immunol. Meth. 329 (2007) 112-124)。Braeuninger等はT細胞リッチB細胞リンパ腫から得られた単一B細胞の分子解析を報告している(Braeuninger, A., et al., Blood 93 (1999) 2679-2687)。ネステッド(RT−)PCRプライマーの系統的設計及び試験がRohatgi等により報告されている(Rohatgi, S., et al, J. Immunol. Meth. 339 (2008) 205-219)。WO 02/13862では、B細胞介在性の病変を変更させるための方法及び組成物が報告されている。Haurum等は1工程RT−マルチプレックスオーバーラッピング伸長PCRを報告している(Meijer, P.J. and Haurum, J.S., J. Mol. Biol. 358 (2006) 764-772)。Stollar等及びJunghans等は、単一細胞のPCR反応を用いた配列解析を報告している(Wang, X. and Stollar, B.D., J. Immunol. Meth. 244 (2000) 217-225; Coronella, J.A. and Junghans, R.P., Nucl. Acids Res. 28 (2000) E85)。Jiang, X.及びNakano, H.等は、in vitro転写及び翻訳のための直鎖発現エレメントの構築を報告している(Biotechnol. Prog. 22 (2006) 979-988)。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一態様の特定の実施態様において、ヒト免疫グロブリンGフラグメントをコードする核酸のin vitro翻訳を含むヒトモノクローナル抗体を提供する方法に関し、この方法では、前記核酸が単一の免疫グロブリン産生ヒトB細胞、形質芽球若しくは形質細胞又はヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む動物のB細胞のmRNAから得られるcDNAフラグメントの特異的増幅により得られる。
【0006】
この方法を用いることで、与えられた多数のB細胞の各々を産生免疫グロブリンの抗体結合特性に関し特徴づけることが可能である。従って、免疫グロブリン作製の多様性に損失が生じることはない。解析したB細胞はin vivoでの成熟過程後に得られる成熟B細胞であるため、その産生免疫グロブリンが他の抗原と交差反応を起こす可能性は極めて低い。
【0007】
本発明は、単一B細胞又は形質芽球若しくは形質細胞から同種IgG HC及びIgG LC鎖(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅するためのマルチプレックスセミネステッド(semi-nested)PCR及びマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCR(RT−遺伝子特異的プライマー−PCR)方法を含む。その後、FabPCR産物をmRNAに転写し、E.coliライセートでin vitro翻訳する。発現はELISA及びウェスタンブロットを用いて調べた。
【0008】
本発明は第一の態様として、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ること、
ここで、増殖される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーの結合位置から3’プライマーの結合位置までの距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応での距離と比較して減少している、を含む方法である。
【0009】
本発明の第二の態様は、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより核酸組成物を得ること、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ること、
ここで、第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応のそれと同一であり、3’プライマーを変更するか、又は、3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、少なくとも1個の5’プライマーを変更するかのいずれであり、
ここで、増殖される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して減少している、を含む方法である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、単一細胞からマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応を一工程で行うことを含む方法である。
【0011】
一実施態様においては、本発明に記載の方法は、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合することを特徴とする。別の実施態様においては、本発明に記載の方法は、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマー又はマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられる5’プライマーが、免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合することを特徴とする。さらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与えることを特徴とする。なおさらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、下記の追加の工程:
− 単一細胞を準備し、この細胞のmRNAを得ることを含むことを特徴とする。
【0012】
さらなる実施態様においては、先の実施態様に記載の方法は、下記の第2工程:
− 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により前記の得られたmRNAからcDNAを得ることを含むことを特徴とする。
【0013】
別の実施態様においては、本発明に記載の方法は、6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする。なおさらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする。本発明のさらなる実施態様においては、前記方法は、
a)免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:05及び/又は06、07及び/又は08、09、10及び/又は11、12、13、及び104及び/又は105及び/又は106の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、及び104及び/又は105及び/又は106、及び/又は142、及び/又は143の核酸を含み、
b)免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:16、17、18、19及び115の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:53及び/又は54、55及び/又は56、57及び/又は58、59、60、61及び/又は62、63及び/又は64、65、66、67、68、69、70、及び/又は115、及び/又は144、及び/又は145の核酸を含み、
c)免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:21、22、23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:72、73及び/又は74、75、76、77及び/又は78、79、80、81、82及び/又は83、84及び/又は85、86、87及び/又は88、89、90及び/又は91、92、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0015】
本発明のさらなる態様は、免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、
− 得られた核酸を含む直鎖発現マトリックスを生成すること、
− 核酸をin vitroで翻訳することにより免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法である。
【0016】
本発明の別の態様は、免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を動作可能形態で連結し、重鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を動作可能形態で連結すること、
− 前工程で得られた核酸で真核細胞又は原核細胞をトランスフェクションすること、
− 一実施態様においては、免疫グロブリンの発現に適した条件下でトランスフェクション細胞を培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法である。
【0017】
本発明に記載の全ての方法の一実施態様においては、免疫グロブリンはクラスG免疫グロブリン(IgG)である。免疫グロブリンFabフラグメント又は免疫グロブリンを産生する方法の一実施態様においては、核酸を得ることは本発明の態様に記載の方法により行われる。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の一態様は、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
ここで、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応と比較して減少している、方法である。
【0019】
ヒトPanB細胞マーカーのCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いて、末梢血からB細胞を単離した(例えば、Bertrand, F.E., III, et al., Blood 90 (1997) 736-744参照)。限界希釈法により、単一細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに入れた。これらの細胞のmRNAを抽出した。
【0020】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得るために本発明に記載のIgG特異的PCR増幅を行うことにより、その後の免疫グロブリン又はFabフラグメントそれぞれの産生で、一実施態様においては、0.5〜2.0のOD値が得られ、同時に、例えば、Fabフラグメントが180〜310ng/mlの収量で得られたことが明らかとなった。
【0021】
本発明に記載の方法では、同じポリメラーゼ連鎖反応で重鎖及び軽鎖可変ドメインを同時に増幅させるために、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応を使用する。別々の反応で重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを増幅させることとは対照的に、本発明のアプローチは高感度及び増幅配列の量の増加をもたらす。両方、即ち、全てのポリメラーゼ連鎖反応において遺伝子特異的プライマーを使用することにより本方法の特異性と精度が向上する。
【0022】
ヒトIgGの場合のより複雑な遺伝子構造では、必要な感度及び精度を得るためにプライマー設計、配置及びポリメラーゼ連鎖反応に関して異なる戦略が必要である。
【0023】
従って、本明細書では、増幅する重鎖及び軽鎖領域の連結を有しない又は連結を有するマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応が用いられる。得られた核酸のin vitro翻訳のために、コードドメインが鎖間のジスルフィド結合形成に使用することができるシステイン残基を含むことが有利である。
【0024】
本発明の実施に有用な当業者に公知の方法及び技術は、例えば、Ausubel, F.M., ed., Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997)、Wiley and Sons; Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;US 5,202,238、及びUS 5,204,244に記載されている。
【0025】
用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされている一以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、様々な定常領域遺伝子並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンは多様な形態、例えば、Fv、Fab及びF(ab)2並びに一本鎖(scFv)又は二重特異性抗体で存在することができる(例えば、Huston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883; Bird, R.E., et al., Science 242 (1988) 423-426; Hood, L.E. et al., Immunology, Benjamin N.Y., 2nd edition (1984); Hunkapiller, T. and Hood, L., Nature 323 (1986) 15-16)。
【0026】
通常、免疫グロブリンは2個のいわゆる軽鎖ポリペプチド(軽鎖)及び2個のいわゆる重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。各重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、抗原と相互作用することができる結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(通常、ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含有する。各重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、定常領域(通常、カルボキシル末端部分)を含む。重鎖の定常領域は、抗体とi)食細胞などのFcγ受容体(FcγR)を有する細胞、又はii)Brambell受容体としても知られている新生児Fc受容体(FcRn)を有する細胞との結合を媒介する。また、古典的補体系因子、例えば、成分(C1q)などのいくつかの因子との結合も媒介する。免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の可変ドメインは順に、異なるセグメント、即ち、4個のフレームワーク領域(FR)及び3個の超可変領域(CDR)を含む。
【0027】
免疫グロブリンの遺伝子操作は、例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855; US 5,202,238及びUS 5,204,244; Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327; Neuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270; Lonberg, N., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1117-1125に記載されている。
【0028】
用語「キメラ免疫グロブリン」は、第一の非ヒト由来の可変ドメイン、即ち、結合領域及び少なくとも一部の第二の異なる起源又は種由来の定常領域を含む免疫グロブリン、好ましくは、モノクローナル免疫グロブリンを意味する。キメラ免疫グロブリンは、通常、組換えDNA技術により調製される。一実施態様においては、キメラ免疫グロブリンはマウス、ラット、ハムスター、ウサギ又はヒツジの可変ドメイン及びヒトの定常領域を含む。一実施態様においては、ヒト重鎖定常領域はヒトIgG定常領域である。別の実施態様においては、ヒト軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖である。
【0029】
本発明に包含されるキメラ免疫グロブリンの他の形態は、可変ドメインが由来する非ヒト免疫グロブリンのクラス又はサブクラスが変化したものである。このような免疫グロブリンは、また「クラススイッチ免疫グロブリン」と呼ばれる。また、本発明に包含される「クラススイッチ免疫グロブリン」の形態は、定常領域が、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合などに関して異なる特性を有する免疫グロブリンを生じる野生型の定常領域配列と異なるものである。免疫グロブリンの「Fc部分」は抗原との結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。重鎖定常領域のアミノ酸配列により、免疫グロブリンはIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのクラスに別けられる。これらのクラスには、さらにサブクラスに別けられ、IgGはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に別けられ、IgAはIgA1及びIgA2に別けられる。免疫グロブリンが属する免疫グロブリンのクラスに従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)及び、μ(IgM)と呼ばれる。一実施態様においては、本発明に記載の免疫グロブリンはIgGクラスに属する。「免疫グロブリンのFc部分」は当業者に公知の用語であり、免疫グロブリンのパパイン切断に基づいて定義される。本発明の一実施態様においては、免疫グロブリンは、Fc部分として、ヒトFc部分又はヒト由来のFc部分を含有する。本発明のさらなる実施態様においては、Fc部分はサブクラスIgG4又はIgG1のヒト免疫グロブリンのFc部分であるか、あるいは、以下に定義するように、Fcγ受容体(例えば、FcγRIIIa)結合及び/又はC1q結合が検出されないように改変したサブクラスIgG1、IgG2又はIgG3のヒト抗体のFc部分である。一実施態様においては、Fc部分はヒトFc部分であり、別の実施態様においては、Fc部分はヒトIgG4若しくはIgG1サブクラスFc部分又はヒトIgG1サブクラス由来の突然変異Fc部分である。さらなる実施態様においては、Fc部分は突然変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラスに由来する。IgG4はFcγ受容体(FcγRIIIa)結合の低下を示すのに対し、他のIgGサブクラスの免疫グロブリンは強い結合を示す。しかし、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の欠損)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434又は/及びHis435は、改変された場合、Fcγ受容体結合の低下をもたらす残基である(Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Lund, J., et al., FASEB J. 9 (1995) 115-119; Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324; EP 0 307 434)。一実施態様においては、免疫グロブリンは、L234、L235及び/又はD265に突然変異を有するIgG4若しくはIgG1サブクラス又はIgG1若しくはIgG2サブクラスのFcγ受容体結合に関するものであり、及び/又はPVA236突然変異を含有する。別の実施態様においては、突然変異はS228P、L234A、L235A、L235E、及び/又はPVA236(PVA236はIgG1のアミノ酸233〜236位由来のアミノ酸配列ELLG(一文字アミノ酸コードによる)又はIgG4のEFLGがPVAに置換されていることを意味する)である。さらなる実施態様においては、突然変異はIgG4のS228P並びにIgG1のL234A及びL235Aである。免疫グロブリンのFc部分はADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。Fcγ受容体及び/又は補体因子C1qに結合しない免疫グロブリンは、抗体依存性細胞性傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を引き起こさない。一実施態様においては、重鎖定常領域は、配列番号:01又は配列番号:02又は突然変異L234A及びL235Aを有する配列番号:01又は突然変異S228Pを有する配列番号:02のアミノ酸配列を有し、軽鎖定常領域は配列番号:03又は配列番号:04のアミノ酸配列を有する。
【0030】
非ヒト(例えば、齧歯類又はウサギ)免疫グロブリンの「ヒト化」又は「CDR移植」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の部分配列及びヒト免疫グロブリン由来の部分配列を含有する免疫グロブリンである。主に、ヒト化免疫グロブリンはヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター免疫グロブリン)由来であるが、この超可変領域からの残基が所望の特異性及び親和性を示すマウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト(ドナー免疫グロブリン)の超可変領域からの残基により置換されている(例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855; US 5,202,238; US 5,204,244参照)。場合によっては、アクセプター免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化免疫グロブリンはさらなる改変、例えば、アクセプター免疫グロブリン又はドナー免疫グロブリンに存在しないアミノ酸残基を含んでいてもよい。このような改変は、対応する親配列に相同であるが同一ではないこのようなレシピエント又はドナー免疫グロブリンの変異体を生じる。
【0031】
非ヒト免疫グロブリンをヒト化する方法は当該技術分野において記載されている。一般的に、ヒト化免疫グロブリンは非ヒト由来の一以上の導入アミノ酸残基を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基は「移入」残基と呼ばれることが多く、これは典型的には「移入」可変ドメインに由来する。ヒト化は基本的にWinter及び共同研究者の方法に従って、非ヒト免疫グロブリンの対応する配列に対して超可変領域配列を置換して実施することができる(例えば、Winter, G. and Harris, W.J., Immunol. Today 14 (1993) 243-246参照)。
【0032】
本明細書で使用する用語「ヒト免疫グロブリン」は、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域(ドメイン)を有し、且つ、これらの生殖細胞系配列と高い配列類似性又は同一性を有する免疫グロブリンを意味する。一実施態様においては、可変重鎖領域が生殖細胞系配列DP-50(GenBank LO6618)に由来し、可変軽鎖領域が生殖細胞系配列L6(GenBank X01668)に由来するか、あるいは、可変重鎖領域がDP-61(GenBank M99682)に由来し、可変軽鎖領域が生殖細胞系配列L15(GenBank K01323)に由来する。抗体の定常領域はヒトIgG1若しくはIgG4型又はその変異体の定常領域である。このような領域はアロタイプでありうるが、例えば、Johnson, G. and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218に記載されており、そのデータベースは本明細書で参照される。
【0033】
本明細書で使用する用語「組換え免疫グロブリン」は、組換え手段により調製、発現又は作製される免疫グロブリンを意味し、例えば、E.coli、NS0、BHK若しくはCHO細胞などの宿主細胞又はヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス又はウサギ)から単離された免疫グロブリンである。一実施態様においては、本発明に記載の「組換えヒト免疫グロブリン」は、再配置した可変及び定常領域を有する。本発明に記載の組換えヒト免疫グロブリンはin vivoで体細胞超変異を受けている。従って、組換えヒト免疫グロブリンのVH及びVL領域のアミノ酸配列は、定義されたヒト生殖細胞系VH及びVL配列とすることができる配列であるが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内では天然には存在しない可能性がある。
【0034】
本明細書で使用する用語「モノクローナル免疫グロブリン」は、実質的に同種(homogeneous)の免疫グロブリン(即ち、集団の個々の免疫グロブリンは、少ない量で存在しうる天然に生じる突然変異を除いて同一である)の集団から得られる免疫グロブリンを指す。モノクローナル免疫グロブリンは単一の抗原部位に対して向けられている、高特異的である。さらに、異なる抗原部位(決定基又はエピトープ)に対して向けられた異なる免疫グロブリンを含有するポリクローナル免疫グロブリン調製物とは対照的に、各モノクローナル免疫グロブリンは単一の抗原部位に対して向けられている。その特異性の他に、モノクローナル免疫グロブリンは他の免疫グロブリンを混入させずに合成することができる利点がある。修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種の免疫グロブリンの集団から得られるような免疫グロブリンの特徴を示し、特定の方法により免疫グロブリンが産生される必要があると解釈されるべきではない。
【0035】
免疫グロブリンの特性に影響又は変化を起さないアミノ酸配列改変である「保存的配列改変」を有する免疫グロブリンを、「変異免疫グロブリン」と称する。改変は当該技術分野で標準的な技術、例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発により導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものが含まれる。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、免疫グロブリンにおいて抗原結合に必須ではないと予測されるアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変ドメイン(VH))は、標的抗原との結合に直接関与する免疫グロブリンの一対の軽鎖及び重鎖の各ドメインのそれぞれを意味する。可変ドメインは、通常、軽鎖及び重鎖のN末端ドメインである。軽鎖及び重鎖の可変ドメインは同じ一般構造、即ち、「免疫グロブリンフレームワーク」を有し、各ドメインは、3個の「超可変領域」(又は「相補性決定領域」、CDR)により結合された、配列が広範囲に保存されている4個の「フレームワーク領域」(FR)を含む。用語「相補性決定領域」(CDR)又は「超可変領域」(HVR)は、本願において互換的に使用され、抗原結合に主に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。「フレームワーク」領域(FR)は、超可変領域とは別の可変ドメイン領域である。従って、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖可変ドメインはNからC末端に領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。フレームワーク領域はβシート立体構造をとり、CDRはβシート構造に結合するループを形成する。各鎖のCDRはフレームワーク領域によりその三次元構造内に保持され、他の鎖のCDRと一緒になって抗原結合部位を形成する。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のCDR3領域は、免疫グロブリンの結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たす。CDR及びFR領域は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的な定義に従って決定される。
【0037】
本願において使用する用語「アミノ酸」は、直接的に又は前駆体の形態で核酸にコードされうるカルボキシα−アミノ酸群を意味する。個々のアミノ酸は3個のヌクレオチドいわゆるコドン又は塩基トリプレットから構成される核酸によりコードされる。各アミノ酸は少なくとも1個のコドンによりコードされる。異なるコドンで同じアミノ酸をコード化することは「遺伝コードの縮重」として知られる。本願において使用する用語「アミノ酸」は天然に生じるカルボキシα−アミノ酸を意味し、アラニン(3文字表記:ala、1文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リシン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む。
【0038】
「核酸」又は「核酸配列」は、本願において互換的に使用される用語であり、個々のヌクレオチド(塩基とも呼ばれる)「a」、「c」、「g」及び「t」(RNAでは「u」)から構成される重合分子即ち、DNA、RNA又はその改変体を指す。このポリヌクレオチド分子は、天然に生じるポリヌクレオチド分子、合成ポリヌクレオチド分子又は一以上の天然に生じるポリヌクレオチド分子と一以上の合成ポリヌクレオチド分子の組み合わせであってもよい。また、この定義には一以上のヌクレオチドが変化(例えば、突然変異により)、欠失又は付加された天然に生じるポリヌクレオチド分子も包含される。核酸は単離することができ、又は別の核酸、例えば、発現カセット、プラスミド又は宿主細胞の染色体に組み込むことができる。核酸は個々のヌクレオチドから構成されるその核酸配列により特徴づけられる。
【0039】
当業者にとって、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列をこのアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列に変換する手順及び方法は公知である。従って、核酸は個々のヌクレオチドから構成されるその核酸配列により特徴づけられ、同様にそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列により特徴づけられる。
【0040】
ここで、モノクローナル免疫グロブリンをコードする核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む本発明に記載の方法を用いて単一細胞から得ることができることが明らかとなった。さらに、本発明に記載のPCR方法とin vitro翻訳方法の組み合わせを用いて、モノクローナル免疫グロブリンをコードする核酸を、単一細胞から得ることができ、コード免疫グロブリンを免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるのに十分な量で提供できることが明らかとなった。単一細胞から得られる極めて少量のmRNAを増幅するために、各PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は極めて高感度でなければならず、二以上のPCRを組み合わせて実施する必要がある。
【0041】
従って、単一細胞からのIgGアイソタイプ免疫グロブリンの同種IgG HC(免疫グロブリンG重鎖)及びIgG LC(免疫グロブリンG軽鎖)をコードする核酸の増幅、それに続く得られた増幅核酸のin vitro翻訳に基づき、Fabフラグメント又は完全免疫グロブリンを提供できることが明らかとなった。この方法を用いて、単一細胞から産生される免疫グロブリンについての情報を得る高感度な方法が提供される。これは単一細胞の微量なmRNAからでさえ可能である。本発明に記載の方法は、単一B細胞から発現される免疫グロブリンの結合特性の生化学的解析を可能にする。これにより、本方法を用いてハイブリドーマ技術とは対照的により高度な多様性特徴づけが可能となる。さらに、同種免疫グロブリン鎖が、抗原との接触後の成熟B細胞から得られるため、高特異的及び高精度に構築された免疫グロブリンをコードする核酸が選択的に得られる。
【0042】
単一細胞から免疫グロブリンをコードする核酸を得る本発明に記載の方法は、単一B細胞から同種IgG HC及びIgG LC(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅するためのマルチプレックスセミネステッドPCRを含む。得られた核酸によりコードされる免疫グロブリンの結合特性の特徴づけのために、PCR産物を対応するFabフラグメントをコードする核酸に変形した。その後、FabフラグメントをE.coliライセート中、in vitroで翻訳した。発現をELISA及びウェスタンブロット法を用いて確認した。
【0043】
一般的に、本発明の一態様は、下記の工程:i)末梢血からヒトCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いてB細胞を単離すること、ii)例えば、限界希釈又はFACSにより単一細胞を沈着させること、iii)個々のB細胞のmRNAを抽出すること、iv)個々のB細胞から産生された免疫グロブリンの少なくとも可変ドメイン(VH及びVL)をコードする一以上の核酸を得ること、v)直鎖RNAテンプレートをin vitroで翻訳すること、場合により、vi)免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントの結合特性を特徴づけることを用いる方法である。
【0044】
本発明に記載のIgG特異的PCR増幅を最適化、改変して測定OD値の増加がもたらされ、in vitro翻訳後に免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントが得られた。
【0045】
高感度であり、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖又はそのフラグメントをコードする増幅核酸の回収率が高い3種の新規なPCRベースのアプローチが確立された。また、本発明に記載のPCRベースの方法を用いて、得られた核酸のin vitro翻訳後、機能的で安定なFabフラグメントを発現させる方法を提供する。
【0046】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応」及び「PCR」は本願で互換的に使用され、例えば、DNA又はRNAの核酸領域を特異的に増幅させる方法を意味する。この方法は、K. Mullisにより開発された(例えば、Winkler, M.E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982) 2181-2185参照)。その領域は単一遺伝子、遺伝子の一部、コード又は非コード配列であってもよい。多くのPCR方法は、典型的には、数百塩基対(bp)のDNAフラグメントを増幅させるが、いくつかの技術には40キロ塩基対(kb)サイズまでフラグメントを増幅させることができるものがある。基本的なPCRの開始には、いくつかの構成成分及び試薬が必要である。これらの構成成分には、増幅される領域を含む核酸テンプレート、増幅される領域の5’及び3’末端に相補的な2種のプライマー、ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ又は他の耐熱性ポリメラーゼ、ポリメラーゼが新しい鎖を合成するためのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、ポリメラーゼの最適な活性及び安定性のための適切な化学環境を提供する緩衝液、二価陽イオン、通常はMg2+、最後にカリウムイオンのような一価陽イオンが含まれる。
【0047】
用語「セミネステッドPCR」は、各々少なくとも一対のPCRプライマーを用いる2つの連続したポリメラーゼ連鎖反応を意味し、第一ポリメラーゼ連鎖反応で第一プライマー対が用いられ、第二ポリメラーゼ連鎖反応で第二プライマー対が用いられる。第一及び第二プライマー対において、プライマーの一つは同一であり、他のプライマーが変更されている。この方法では、距離、即ち、第一プライマーの3’末端及び第二プライマーの5’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマー対と比較して第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマー対では減少している。変更プライマーはセンスプライマー又はアンチセンスプライマーのいずれかである。第一PCRは任意のPCR実験のように配列を増幅する。第二PCRに対する、第二プライマー対の一方のプライマー、即ち、ネステッドプライマーは第一PCR産物内に結合し、第一産物よりも短い第二PCR産物を生成する。この技術は2つよりむしろ4つの特異的なプライマーを使用するため、標準的なPCRよりも特異性が高い。また、単純なPCRで検出できないような場合でも検出可能な生成物を得ることができる。
【0048】
用語「マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応)又は「マルチプレックスPCR」は、本願において互換的に使用され、これは、1回のPCR反応/混合物で、複数のユニークなプライマーを用いて、異なるDNA配列に特異的な様々なサイズの単位複製配列を生成するポリメラーゼ連鎖反応を意味する。一度に複数の遺伝子を標的とすることにより、1回の試験の実施でさらなる情報を得ることができるが、そのようにしない場合は、実施するのに数回試薬を用いる必要があり、さらなる時間が必要であろう。各プライマーセットのアニーリング温度は、1回の反応で正確に行うために最適化する必要がある。また、ゲル電気泳動で観察した際、別々のバンドで得るために、単位複製配列のサイズは十分に異なっている必要がある。
【0049】
ヒトゲノムでは免疫グロブリンをコードする遺伝子を含有する染色体遺伝子座は染色体2、14及び22上に位置している(図1参照)。ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座は、染色体における遺伝子座の配向:テロメア−5’末端−VH−D−JH−CH−3’末端−セントロメアと共に染色体14(14q32.2)上に見出すことができる。染色体上のVHセグメントを以下の表1に示すように分類する。
【0050】
【表1】
【0051】
ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座は、全体で123−129個のVH遺伝子を含み、7種のファミリーに分類され、その51個が機能的であり、23個が機能D遺伝子(D=多様性)であり、6個が機能JH遺伝子(J=連結)であり、最も多いハプロタイプでは9個が機能CH遺伝子(C=定常)である。
【0052】
カッパ(κ)及びラムダ(λ)型のヒト免疫グロブリンG軽鎖のための遺伝子座は2つの異なる染色体の染色体2及び22上に位置する。κ軽鎖遺伝子座は、染色体2(2p11.2)の短腕に見出すことができ、40個の機能Vκ遺伝子セグメントを含む。これらは7種のファミリーに分類される。遺伝子座は、また、5個のJκ遺伝子及び単一のCκ遺伝子を含む(Schable, K.F. and Zachau, H.G., Biol. Chem. Hoppe Seyler 374 (1993) 1001-1022; Lefranc, M.P., Exp. Clin. Immunogenet. 18 (2001) 161-174)。
【0053】
【表2】
【0054】
λ軽鎖遺伝子座は染色体22(22p11.2)の長腕に見出すことができ、73〜74個のVλ遺伝子を含み、その30個が機能的である。これらは10種のファミリーに分類され、さらに3種のクラスターに分類される。遺伝子座は、また、7個のJλ遺伝子を含み、その5個が機能的である。
【0055】
【表3】
【0056】
単一の免疫グロブリン産生細胞、例えば、単一B細胞からの、IgG HC及びLC又は少なくともその可変ドメインをコードする核酸のPCRベースの増幅は、Bリンパ球の単一細胞の沈着、その後の重鎖及び軽鎖の可変ドメインに対する特異的プライマーを用いたPCRベースの核酸増幅に基づいている。PCRの結果は、本質的に、用いるPCRプライマーに依存している。用いるプライマーで最良のものは全てのV遺伝子を網羅する必要があり、二量体形成を起こし難く、免疫グロブリンをコードするcDNAに特異的に結合する必要がある。従って、一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸はcDNAから得られる。
【0057】
ヒト免疫グロブリンG遺伝子座上に多数の機能遺伝子があることから、できるだけ多くの公知の遺伝子を網羅するためにPCR反応では異なるプライマーを用いる必要がある。従って、縮重プライマーセットを確立した。これは本発明の態様でもある。一実施態様においては、重鎖及び軽鎖をコードする核酸の増幅は1回のポリメラーゼ連鎖反応により実施される。この実施態様においては、プライマーは同じPCR条件を可能にするため、ほぼ同じ長さの核酸を増幅させる目的で選択される。この実施態様においては、1つが重鎖CH1領域に結合する、重鎖をコードする核酸に対するプライマーを用いるため、対応する軽鎖をコードする核酸と同程度のサイズの核酸フラグメントが得られる。
【0058】
本発明の一態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応と比較して減少している、方法である。
【0059】
本発明の一実施態様においては、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは、免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0060】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:05及び/又は06、及び配列番号:07及び/又は08、及び配列番号:09、及び配列番号:10及び/又は11、及び配列番号:12、及び配列番号:13、及び配列番号:14及び/又は15の核酸配列を有する。
【0061】
【表4】
【0062】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:16〜20の核酸配列を有する。
【0063】
【表5】
【0064】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:21、及び配列番号:22、及び配列番号:23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び配列番号:27及び/又は28の核酸配列を有する。
【0065】
【表6】
【0066】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:29及び/又は30、及び配列番号:31、及び配列番号:32及び/又は33、及び配列番号:34及び/又は35、及び配列番号:36、及び配列番号:37及び/又は38、及び配列番号:39及び/又は40、及び配列番号:41、及び配列番号:42、及び配列番号:43及び/又は44、及び配列番号:45、及び配列番号:46及び/又は47、及び配列番号:48、及び配列番号:49及び/又は50、及び配列番号:51及び/又は52の核酸配列を有する。
【0067】
【表7】
【0068】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:53及び/又は54、及び配列番号:55及び/又は56、及び配列番号:57及び/又は58、及び配列番号:59、及び配列番号:60、及び配列番号:61及び/又は62、及び配列番号:63及び/又は64、及び配列番号:65、及び配列番号:66、及び配列番号:67、及び配列番号:68、及び配列番号:69、及び配列番号:70、及び配列番号:71の核酸配列を有する。
【0069】
【表8】
【0070】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:72、及び配列番号:73及び/又は74、及び配列番号:75、及び配列番号:76、及び配列番号:77及び/又は78、及び配列番号:79、及び配列番号:80、及び配列番号:81、及び配列番号:82及び/又は83、及び配列番号:84及び/又は85、及び配列番号:86、及び配列番号:87及び/又は88、及び配列番号:89、及び配列番号:90及び/又は91、及び配列番号:92、及び配列番号:93の核酸配列を有する。
【0071】
【表9】
【0072】
本発明のさらなる態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが同一であり得る方法である。
【0073】
一実施態様においては、ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0074】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:94、及び配列番号:95、及び配列番号:96及び/又は97及び/又は98及び/又は99、及び配列番号:100及び/又は101及び/又は102及び/又は103、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0075】
【表10】
【0076】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:107及び/又は108及び/又は109及び/又は110、及び配列番号:111及び/又は112、及び配列番号:113、及び配列番号:114、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0077】
【表11】
【0078】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:116、及び配列番号:117、及び配列番号:118及び/又は119、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸配列を有する。
【0079】
【表12】
【0080】
本方法の一実施態様においては、第二の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは配列番号:126及び配列番号:127の核酸配列を有する。
【0081】
【表13】
【0082】
本発明の別の態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応と同一であり、3’プライマーが異なるか、又は3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応と同一であり、少なくとも1個の5’プライマーが異なる、及び
第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して少ない方法である。
【0083】
本方法の一実施態様においては、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得るための本方法の一実施態様においては、6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる。別の実施態様においては、4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーが第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0084】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:05及び/又は06、及び配列番号:07及び/又は08、及び配列番号:09、及び配列番号:10及び/又は11、及び配列番号:12、及び配列番号:13、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0085】
【表14】
【0086】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:16、及び配列番号:17、及び配列番号:18、及び配列番号:19、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0087】
【表15】
【0088】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:21、及び配列番号:22、及び配列番号:23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸配列を有する。
【0089】
【表16】
【0090】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:128、及び配列番号:129、及び配列番号:130、及び配列番号:131、及び配列番号:132、及び配列番号:133、及び配列番号:134、及び配列番号:135、及び配列番号:136、及び配列番号:137、及び配列番号:138、及び配列番号:139、及び配列番号:140、及び配列番号:141、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0091】
【表17】
【0092】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:53及び/又は54、及び配列番号:55及び/又は56、及び配列番号:57及び/又は58、及び配列番号:59、及び配列番号:60、及び配列番号:61及び/又は62、及び配列番号:63及び/又は64、及び配列番号:65、及び配列番号:66、及び配列番号:67、及び配列番号:68、及び配列番号:69、及び配列番号:70、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0093】
【表18】
【0094】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:72、及び配列番号:73及び/又は74、及び配列番号:75、及び配列番号:76、及び配列番号:77及び/又は78、及び配列番号:79、及び配列番号:80、及び配列番号:81、及び配列番号:82及び/又は83、及び配列番号:84及び/又は85、及び配列番号:86、及び配列番号:87及び/又は88、及び配列番号:89、及び配列番号:90及び/又は91、及び配列番号:92、及び配列番号:120又は121又は122又は123又は124又は125の核酸配列を有する。
【0095】
【表19】
【0096】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、軽鎖可変ドメインをコードする核酸及び重鎖可変ドメインをコードする核酸は、1回のマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応で異なる5’及び3’プライマーを組み合わせることにより1回のポリメラーゼ連鎖反応において得られる。
【0097】
本発明の別の態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを含むプライマーセット用いて逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応を一工程で行うことを含む方法である。
【0098】
本方法の一実施態様においては、マルチプレックスワンチューブ逆転写遺伝子特異的プライマーポリメラーゼ連鎖反応(RT−GSP−PCR)で用いられる5’プライマーは、免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、RT−GSP−PCR反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、本方法は、RT−GSP−PCR反応を用いて免疫グロブリン重鎖可変ドメインを得るための方法である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0099】
一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るためのマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられるプライマーは、配列番号:142及び143の核酸配列を有する。
【0100】
【表20】
【0101】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るためのマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられるプライマーは、配列番号:144及び145の核酸配列を有する。
【0102】
【表21】
【0103】
さらに、本発明に記載のPCR方法と無細胞in vitro翻訳システムの組み合わせを用いて、同種免疫グロブリンVH及びVLドメインをコードする核酸を単一細胞から得ることができ、これにより、コード免疫グロブリン可変ドメインが、免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるのに十分な量でFabフラグメントとして得られることが明らかとなった。単一細胞から得られるごく少量のmRNAを増幅させるために、個々のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は極めて高感度でなければならず、二以上のPCRを組み合わせて実施する必要がある。
【0104】
本発明に記載の「無細胞in vitro翻訳システム」はリボソーム、tRNA、ATP、CGTP、ヌクレオチド及びアミノ酸を含有する原核細胞又は真核細胞、好ましくは原核細胞の無細胞ライセートを意味する。一実施態様においては、原核生物はE.coliである。
【0105】
無細胞in vitro翻訳は長年最高水準にある公知の方法である。Spirin等は1988年に、比較的多量にタンパク質合成が行われる連続フロー無細胞(CFCF)翻訳及び結合した転写/翻訳システムを開発した(Spirin, A.S., et al., Science 242 (1988) 1162-1164)。このような無細胞in vitro翻訳のために、リボソームを含有する細胞ライセートを翻訳又は転写/翻訳に用いた。E.coliから得られるこのような無細胞抽出物は、例えば、Zubay(Zubay, G., et al., Ann. Rev. Genetics 7 (1973) 267-287)によって開発され、Pratt(Pratt, J.M., et al., Nucleic Acids Research 9 (1981) 4459-4474; and Pratt, J.M., et al., Transcription and Translation: A Practical Approach, Hames and Higgins (eds.), 179-209, IRL Press, 1984)により用いられた。さらに、無細胞タンパク質合成の開発は、US 5,478,730、US 5,571,690、EP 0 932 664、WO 99/50436、WO 00/58493及びWO 00/55353に報告されている。真核生物無細胞発現系は、例えば、Skup, D. and Millward, S., Nucleic Acids Research 4 (1977) 3581-3587; Fresno, M., et al., Eur. J. Biochem. 68 (1976) 355-364; Pelham, H.R. and Jackson, R.J., Eur. J. Biochem. 67 (1976) 247-256及びWO 98/31827に報告されている。
【0106】
単一細胞からのIgGアイソタイプ免疫グロブリンの同種IgG HC(免疫グロブリンG重鎖)及びIgG LC(免疫グロブリンG軽鎖)をコードする核酸の増幅、それに続く得られた核酸のin vitro翻訳により、免疫グロブリンのFabフラグメントを得ることに基づき、得られる微量のmRNAから単一細胞により産生される免疫グロブリンについての情報を得る高感度な方法が提供される。本発明に記載の方法により単一B細胞から発現される免疫グロブリンの研究が可能となり、従って、ハイブリドーマ技術とは対照的により多くの多様性が提供される。さらに、同種免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン鎖が、抗原接触後の成熟B細胞から得られるので、高特異的及び高精度に構築された免疫グロブリンをコードする核酸を選択的に得ることができる。
【0107】
従って、本発明の一態様は、免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、
− 場合により、得られた核酸を含む直鎖発現マトリックスを生成すること、
− 核酸をin vitroで翻訳することにより免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法である。
【0108】
一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸は、本発明の前の態様に記載の方法を用いて得られる。本発明に記載の方法の一実施態様においては、単一細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ることは、単一B細胞から同種IgG HC及びIgG LC(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅させるために本発明に記載のマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応を含む。得られた核酸によりコードされる免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるため、その後核酸をE.coliライセートでin vitro翻訳して、免疫グロブリンFabフラグメントにする。
【0109】
一般的に、本発明の一態様は、下記の工程:i)末梢血からヒトCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いてB細胞を単離すること、ii)限界希釈又はFACSにより単一細胞を沈着させること、iii)個々のB細胞のmRNAを抽出すること、iv)個々のB細胞から産生される免疫グロブリンの少なくとも可変ドメインをコードする核酸を得ること、v)直鎖mRNAテンプレートをin vitroで翻訳すること、場合により、vi)免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントの結合特性を特徴づけることを用いる方法である。
【0110】
本発明に記載の方法を用いて、単一細胞から得られる可変ドメインを含む免疫グロブリンの組換え産生のために、得られた軽鎖及び重鎖免疫グロブリンの可変ドメインをコードする核酸をさらに改変する。まず、可変ドメインをコードする核酸を、免疫グロブリン定常領域をコードする核酸と結合させる。一実施態様においては、軽鎖可変ドメインをコードする核酸を、配列番号:03のヒトκ軽鎖定常ドメインをコードする核酸又は配列番号:04のヒトλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸と結合させる。別の実施態様においては、重鎖可変ドメインをコードする核酸を、配列番号:01のヒト免疫グロブリンG1(IgG1)定常領域をコードする核酸又は配列番号:02のヒト免疫グロブリンG4(IgG4)定常領域をコードする核酸と結合させる。別の実施態様においては、重鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)定常領域1(CH1)をコードする核酸と結合させる。
【0111】
完全免疫グロブリン重鎖及び軽鎖又はそのフラグメントをコードする核酸分子は以下構造遺伝子として言及する。これらは同じ発現プラスミド上に位置することができ、又は代わりに異なる発現プラスミド上に位置することができる。免疫グロブリンが培養培地へ分泌される前に、従って、発現細胞内で免疫グロブリン又はFabフラグメントの構築が起こる。従って、一実施態様においては、免疫グロブリン鎖をコードする核酸分子は同じ宿主細胞で発現される。組換え発現後、免疫グロブリンの混合物が得られる場合、この混合物は当業者に公知の方法により分離し精製することができる。これらの方法は、免疫グロブリン精製で十分に確立され広く使用されており、単独で又は組み合わせて用いられている。このような方法は、例えば、微生物由来のタンパク質を用いた親和性クロマトグラフィー(例えば、タンパク質A又はタンパク質G親和性クロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換(カルボキシメチル樹脂)、アニオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合型交換クロマトグラフィー)、チオール基吸着(例えば、β−メルカプトエタノール及び他のSHリガンドによる)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース、アザアレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂又はm−アミノフェニルボロン酸による)、金属キレート親和性クロマトグラフィー(例えば、Ni(II)及びCu(II)親和性物質による)、サイズ排除クロマトグラフィー及び分取電気泳動(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)である(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。
【0112】
当業者に公知の組換え技術を用いて、コンジュゲートを核酸/遺伝子レベルでオーダーメードすることができる。免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードする核酸配列は公知であり、例えば、ゲノムデーターベースから入手することができる。本発明に記載の方法を用いて得られる免疫グロブリンの発現のための発現プラスミド構築に必要なエレメントは、例えば、免疫グロブリン軽鎖用発現カセット、免疫グロブリン重鎖用発現カセット(あるいは、軽鎖及び重鎖構造遺伝子を同じ発現カセットに、例えば、バイシストロン性発現エレメントとして含むことができる)、選択マーカー及びE.coli複製並びに選択ユニットである。発現カセットは通常、プロモーター、分泌シグナル配列をコードするDNAセグメント、構造遺伝子及びターミネータ/ポリアデニル化シグナルを含む。エレメントは免疫グロブリンの全鎖をコードする1個のプラスミド又は各々が免疫グロブリンの一個の鎖をコードする2個のプラスミドのいずれかに動作可能に連結した形態で集められている。構造遺伝子の発現のために、プラスミドを適切な宿主細胞に導入する。タンパク質がCHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、HEK細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6(登録商標)細胞などの哺乳類細胞で産生される。一実施態様においては、コンジュゲートはCHO細胞、又はBHK細胞、又はHEK細胞、又はNS0細胞で発現される。プラスミドの調節エレメントはこれらが選択した宿主細胞で機能するようにして選択する必要がある。発現のために、宿主細胞を当業者に公知の免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養する。発現した免疫グロブリン鎖は機能的に構築されて、完全にプロセシングされた免疫グロブリンは培地中に分泌される。
【0113】
「発現プラスミド」は宿主細胞に含まれる構造遺伝子の発現に必要な全てのエレメントを提供する核酸である。典型的には、発現プラスミドは、プロモーター、構造遺伝子及びポリアデニル化シグナルを含む転写ターミネータをそれぞれ含む対象の構造遺伝子の発現のために、原核生物プラスミド増殖ユニット(例えば、E.coliの場合には複製起点及び選択マーカーを含む)、真核生物選択マーカー、及び一以上の発現カセットを含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、このような構造遺伝子はプロモーターに「動作可能に連結される」と言われる。同様に、調節エレメントがコアプロモーターの活性をモジュレーションする場合、調節エレメント及びコアプロモーターは動作可能に連結される。
【0114】
「動作可能に連結される」は2以上の構成成分の並置を指し、ここで、そのように記載の構成成分は、これらを意図する様式で機能させることが可能な関係にある。用語「動作可能な形態で連結」は、個々の核酸が最後の核酸に動作可能に連結されるように2以上の個々の核酸を組み合わせることを意味する。例えば、プロモーター及び/又はエンハンサーは、連結配列の転写を制御又はモジュレーションするためにcisで作用する場合コード配列に動作可能に連結される。一般的に、必ずしも必要ではないが、「動作可能に連結」しているDNA配列は連続的であり、第一ドメイン及び第二ドメイン、例えば、免疫グロブリン可変ドメイン及び免疫グロブリン定常ドメイン又は定常領域などの2個のタンパク質コード領域に連結する必要がある場合は、連続的でイン(リーディング)フレームである。ポリアデニル化部位が、転写がコード配列を経由してポリアデニル化配列まで進行するようにコード配列の下流末端に位置している場合、コード配列に動作可能に連結される。翻訳終始コドンが、翻訳がコード配列を経由して終始コドンまで進行し、そこで終結するようにコード配列の下流末端(3’末端)に位置している場合、エキソン核酸配列に動作可能に連結される。連結は当該技術分野で公知の組換え方法、例えば、PCR方法を用いて及び/又は便利な制限酵素認識部位でのライゲーションにより達成される。便利な制限酵素認識部位が存在しない場合、次に、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来の慣習に習って使用される。
【0115】
従って、本発明の一態様は、免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− この細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と配列番号:03又は配列番号:04の免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を動作可能形態で連結し、重鎖可変ドメインをコードする核酸と配列番号:01又は配列番号:02の免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を動作可能形態で連結すること、
− 前工程の核酸で真核又は原核細胞をトランスフェクションすること、
− トランスフェクション細胞を免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法である。
【0116】
用語「の発現に適した条件下」は、異種ポリペプチドを発現することができる細胞の培養に使用される条件であり、且つ、当業者に公知であるか又は容易に確定することができる条件を意味する。これらの条件を培養する細胞の種類及び発現するポリペプチドの種類に従って変更することができることは当業者に公知である。通常、細胞は、例えば、20℃〜40℃の温度で、コンジュゲートを効果的に産生するのに十分な期間、例えば4日〜28日、0.01リッター〜107リッターの容量で培養する。
【0117】
下記の実施例、配列表及び図は本発明の理解を容易にするために提供し、その真の範囲を添付の特許請求の範囲に記載する。本発明の精神から逸脱することなく記載の手順を変更することが可能であることを理解されたい。
【0118】
配列表の説明
配列番号:01 ヒトIgG1重鎖定常領域
配列番号:02 ヒトIgG4重鎖定常領域
配列番号:03 ヒトIgGκ軽鎖定常ドメイン
配列番号:04 ヒトIgGλ軽鎖定常ドメイン
配列番号:05 プライマーVHL−1変異体1
配列番号:06 プライマーVHL−1変異体2
配列番号:07 プライマーVHL−2変異体1
配列番号:08 プライマーVHL−2変異体2
配列番号:09 プライマーVHL−3
配列番号:10 プライマーVHL−4変異体1
配列番号:11 プライマーVHL−4変異体2
配列番号:12 プライマーVHL−5
配列番号:13 プライマーVHL−6
配列番号:14 プライマーhuCH−II変異体1
配列番号:15 プライマーhuCH−II変異体2
配列番号:16 プライマーVkL−1
配列番号:17 プライマーVkL−2
配列番号:18 プライマーVkL−3
配列番号:19 プライマーVkL−4
配列番号:20 プライマーhuCk−II
配列番号:21 プライマーVlL−1
配列番号:22 プライマーVlL−2
配列番号:23 プライマーVlL−3変異体1
配列番号:24 プライマーVlL−3変異体2
配列番号:25 プライマーVlL−3変異体3
配列番号:26 プライマーVlL−3変異体4
配列番号:27 プライマーhuCl−II変異体1
配列番号:28 プライマーhuCl−II変異体2
配列番号:29 プライマーVHL−1a変異体1
配列番号:30 プライマーVHL−1a変異体2
配列番号:31 プライマーVHL−1b
配列番号:32 プライマーVHL−1c変異体1
配列番号:33 プライマーVHL−1c変異体2
配列番号:34 プライマーVHL−1d変異体1
配列番号:35 プライマーVHL−1d変異体2
配列番号:36 プライマーVHL−2a
配列番号:37 プライマーVHL−2b変異体1
配列番号:38 プライマーVHL−2b変異体2
配列番号:39 プライマーVHL−3a変異体1
配列番号:40 プライマーVHL−3a変異体2
配列番号:41 プライマーVHL−3b
配列番号:42 プライマーVHL−3c
配列番号:43 プライマーVHL−4a変異体1
配列番号:44 プライマーVHL−4a変異体2
配列番号:45 プライマーVHL−4b
配列番号:46 プライマーVHL−5a変異体1
配列番号:47 プライマーVHL−5a変異体2
配列番号:48 プライマーVHL−6a
配列番号:49 プライマーVHL−7a変異体1
配列番号:50 プライマーVHL−7a変異体2
配列番号:51 プライマーhuCH−III変異体1
配列番号:52 プライマーhuCH−III変異体2
配列番号:53 プライマーVkL−1a変異体1
配列番号:54 プライマーVkL−1a変異体2
配列番号:55 プライマーVkL−1b変異体1
配列番号:56 プライマーVkL−1b変異体2
配列番号:57 プライマーVkL−1c変異体1
配列番号:58 プライマーVkL−1c変異体2
配列番号:59 プライマーVkL−1d
配列番号:60 プライマーVkL−2a
配列番号:61 プライマーVkL−2b変異体1
配列番号:62 プライマーVkL−2b変異体2
配列番号:63 プライマーVkL−3a変異体1
配列番号:64 プライマーVkL−3a変異体2
配列番号:65 プライマーVkL−3b
配列番号:66 プライマーVkL−3c
配列番号:67 プライマーVkL−4a
配列番号:68 プライマーVkL−5a
配列番号:69 プライマーVkL−6a
配列番号:70 プライマーVkL−6b
配列番号:71 プライマーhuCk−III
配列番号:72 プライマーVlL−1a
配列番号:73 プライマーVlL−1b変異体1
配列番号:74 プライマーVlL−1b変異体2
配列番号:75 プライマーVlL−1c
配列番号:76 プライマーVlL−2a
配列番号:77 プライマーVlL−3a変異体1
配列番号:78 プライマーVlL−3a変異体2
配列番号:79 プライマーVlL−3b
配列番号:80 プライマーVlL−3c
配列番号:81 プライマーVlL−3d
配列番号:82 プライマーVlL−4変異体1
配列番号:83 プライマーVlL−4変異体2
配列番号:84 プライマーVlL−5変異体1
配列番号:85 プライマーVlL−5変異体2
配列番号:86 プライマーVlL−6
配列番号:87 プライマーVlL−7変異体1
配列番号:88 プライマーVlL−7変異体2
配列番号:89 プライマーVlL−8
配列番号:90 プライマーVlL−4/9変異体1
配列番号:91 プライマーVlL−4/9変異体2
配列番号:92 プライマーVlL−10
配列番号:93 プライマーhuCl−III
配列番号:94 プライマーhuVH−1
配列番号:95 プライマーhuVH−2
配列番号:96 プライマーhuVH−3変異体1
配列番号:97 プライマーhuVH−3変異体2
配列番号:98 プライマーhuVH−3変異体3
配列番号:99 プライマーhuVH−3変異体4
配列番号:100 プライマーhuVH−4変異体1
配列番号:101 プライマーhuVH−4変異体2
配列番号:102 プライマーhuVH−4変異体3
配列番号:103 プライマーhuVH−4変異体4
配列番号:104 プライマーhuCH−2変異体1
配列番号:105 プライマーhuCH−2変異体2
配列番号:106 プライマーhuCH−2変異体3
配列番号:107 プライマーhuVk−1変異体1
配列番号:108 プライマーhuVk−1変異体2
配列番号:109 プライマーhuVk−1変異体3
配列番号:110 プライマーhuVk−1変異体4
配列番号:111 プライマーhuVk−2変異体1
配列番号:112 プライマーhuVk−2変異体2
配列番号:113 プライマーhuVk−3
配列番号:114 プライマーhuVk−4
配列番号:115 プライマーhuCk−2
配列番号:116 プライマーhuVl−1
配列番号:117 プライマーhuVl−2
配列番号:118 プライマーhuVl−3変異体1
配列番号:119 プライマーhuVl−3変異体2
配列番号:120 プライマーhuCl−2変異体1
配列番号:121 プライマーhuCl−2変異体2
配列番号:122 プライマーhuCl−2変異体3
配列番号:123 プライマーhuCl−2変異体4
配列番号:124 プライマーhuCl−2変異体5
配列番号:125 プライマーhuCl−2変異体6
配列番号:126 プライマーLTGS−lfp
配列番号:127 プライマーLTGS−rfp
配列番号:128 プライマーVH−1a
配列番号:129 プライマーVH−1b
配列番号:130 プライマーVH−1c
配列番号:131 プライマーVH−1d
配列番号:132 プライマーVH−2a
配列番号:133 プライマーVH−2b
配列番号:134 プライマーVH−3a
配列番号:135 プライマーVH−3b
配列番号:136 プライマーVH−3c
配列番号:137 プライマーVH−4a
配列番号:138 プライマーVH−4b
配列番号:139 プライマーVH−5a
配列番号:140 プライマーVH−6a
配列番号:141 プライマーVH−7a
配列番号:142 プライマーVH−lfp
配列番号:143 プライマーVH−rfp
配列番号:144 プライマーVL(k)−lfp
配列番号:145 プライマーVL(k)−rfp
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座(A)、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(B)及びヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座(C)の染色体局在。
【図2】第一及び第二プライマーセットを用いた免疫グロブリン軽鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図3】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG LC(κ)、55℃;2−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図4】2回のポリメラーゼ連鎖反応における異なる第二プライマーセットを用いた免疫グロブリン重鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図5】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図6】2回のポリメラーゼ連鎖反応における同一のプライマーセットを用いた免疫グロブリン重鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図7】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG LC(κ)、55℃;2−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図8】C末端HA−tagで例示されるオーバーラッピング伸長PCRのスキーム。
【図9】実施例1〜3に示す3回の異なるポリメラーゼ連鎖反応の直鎖発現構築物のアガロースゲル解析。
【図10】in vitro翻訳後の本発明に記載の3回のポリメラーゼ連鎖反応の結果の比較(450nmで測定、基準波長620nm、バックグラウンドの減算)。
【図11】2個の同一のプライマーセットを用いた第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;1−RTなし、2〜37−単一細胞、38−H2O cDNA、39−コントロールmRNA、40−H2O コントロールmRNA、41−H2O PCRII、42−IgG HC/IgG LC(κ)、43−IgG HC、44−IgG LC(κ)、45−H2O PCRI、46−GFP、46−H2O GFP。
【図12】1個の可変及び1個の固定プライマーセットを用いた第二ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析。
【図13】1個の可変及び1個の固定プライマーセットを用いた第二ポリメラーゼ連鎖反応後の核酸から得られた直鎖発現構築物のアガロースゲル解析。
【図14】1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた単一細胞のIgG特異的2工程ポリメラーゼ連鎖反応のin vitro翻訳の結果。
【図15】単一細胞のポリメラーゼ連鎖反応及びin vitro翻訳後のヒトFab免疫グロブリンフラグメント;1〜8は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)のin vitro翻訳後及びIgG HCコントロール試料添加後のヒトFabフラグメント、9〜11は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)のin vitro翻訳後のヒトFabフラグメント、12は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(λ)のin vitro翻訳後のヒトFabフラグメント。
【図16】1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応及びin vitro翻訳後のウェスタンブロット解析;(A)1はIgG HCと組み合わせた単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC、2〜4は単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC、5〜7はIgG HC/IgG LC(κ)コントロール、8はIgG HC及びIgG LC(κ)コントロール、9はネガティブコントロール、10は標準Fab0.5ng/ml、11は標準Fab50ng/ml、12は標準Fab5μg/ml;(B)1は標準Fab5μg/ml、2は標準Fab50ng/ml、3は標準Fab0.5ng/ml、3はネガティブコントロール、5〜12はIgG HCと組み合わせた単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC。
【0120】
実施例
材料及び方法
B細胞及び形質細胞
このアプローチに使用する試料は、健康なドナーの末梢血及びヒトIgGトランスジェニックマウスの組織(脾臓、骨髄)から単離したB細胞及び形質細胞である。まず、別々のチューブのDMEM中に固体組織を手動で細かく破砕させる。この後の工程では、低温で優しく扱って細胞の溶解を最小限に抑える。これはその後の目的細胞の陽性単離とmRNA源をインタクトに維持するために重要である。細かく破砕した組織に細胞分離媒体を注意深く添加して懸濁し、異なる細胞型の勾配を作る(Leucosepチューブ(Greiner Bio-One)中、Ficollを用いた密度勾配)。形質細胞(PBMC)及びリンパ球を濃縮するために、遠心分離機中、22℃、800×gで20分間冷分離媒体を用いて懸濁細胞をブレーキなしで遠心分離して精製する。細胞を冷バッファー(PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、0.1%(w/v)BSA(ウシ血清アルブミン)、2mMEDTA(エチレンジアミン四酢酸))で洗浄し、上清を注意深く除去してリンパ球だけを得る。次に、リンパ球をPBSに再懸濁し、注意深くピペッティングして混合する。遠心分離を22℃、800×gで5分間行って、細胞をペレットにする。B細胞及び形質細胞をマウス及びヒトFCブロッカーで前処理して、細胞表面への抗体の非特異的結合をブロックする。細胞をバッファー(PBS、0.1%(w/v)BSA、2mMEDTA)で一度洗浄し、遠心分離した後PBSに再懸濁する。CD19+B細胞及びCD138+形質細胞のみを使用した。mRNAの分解を防ぐためにRNAse阻害剤を添加する。製造業者の説明書に従って、マウスの脾臓からCD19+B細胞の陽性単離を行った(Dynal Biotech Dynabeads CD19 Pan B)。CD138+形質細胞の選択を製造業者の説明書に従って行った(StemCell Technologies EasySep Human CD138 Selection Kit)。
【0121】
限界希釈培養又はFACSソーティング法よる単一細胞への分離:
細胞をカウントし、限界希釈培養法により96ウェルPCRプレート又は384ウェルプレートのウェルに単一細胞で沈着させる。プレートをPCRフィルムで密閉した後、直ちに氷上に置く。ソーティング細胞はすぐさまRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)に使用することができる。あるいは短期使用に−20℃又は長期使用に−80℃で保存してもよい。FACSAria細胞ソーティングシステム(Becton Dickinson)で単一細胞ソーティングを行った。CD19陽性に染色された細胞、CD38陽性に強く染色された細胞及びすぐさまCD45陽性に染色された細胞を選取して形質細胞(PC)と指定した。前方散乱/側方散乱及び側方散乱幅/側方散乱高に関してさらなるゲーティングを行い、生リンパ球及びシングレットをそれぞれ選択した。逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、バッファー及びdNTP以外の必要な全てのPCR試薬(容量10μl)を含有した96ウェルPCRプレート(Eppendorf)に単一細胞を直接分注し、今後の処理用に−80℃で凍結した。
【0122】
細胞溶解及び逆転写:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、B細胞及び形質細胞を逆転写反応の前に溶解する必要がある。
【0123】
【表22】
【0124】
【表23】
【0125】
溶解した細胞を含むプレートを遠心分離機で30秒間簡単にスピンして、液体及びウェルの底の細胞を回収する。RT(逆転写酵素)反応及び全てのPCR反応を96ウェルプレートで行った。テンプレート5μlを含有する各ウェルに、水2.5μl、冷RT反応バッファー1μl、dNTP1μl、RNAse阻害剤(40U/μl)0.25μl、逆転写酵素(20U/μl)0.25μl(これらは全て、First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)を添加し、総容量10μlにする。RTプレートを簡単に遠心し、氷上からBlock cycler(LightCycler 480, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に移し、加熱した蓋で55℃にして60分間、85℃に加熱して2分間放置する(逆転写酵素を不活化する)。cDNAの分解を防ぐために逆転写反応の直後の一本鎖cDNAを−20℃で保存した。並行して、細胞を含まないコントロール合成反応を行ってコンタミネーションを試験した。
【0126】
【表24】
【0127】
細胞溶解及び逆転写:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、B細胞及び形質細胞を逆転写反応の前に溶解する必要がある。
【0128】
第一PCR:
【表25】
【0129】
【表26】
【0130】
第二PCR:
次に、κ及びλ軽鎖並びに重鎖を、下記のプロトコールに従って、二回目のPCRで増幅させた。セミネステッドプライマーを用いて第二PCRを行い、cDNAコピーの量を増やし、そして軽鎖(LC)及び重鎖(HC)の可変部分からCH1領域までだけを増幅させた。HC増幅は16プライマーを用いて、κLCは17プライマーを用いて、そしてλLCは14プライマーを用いて行った。遺伝子を第一PCR産物2μl、ハイフィディリティPCRマスター10μl(各dNTP0.4μM、2倍濃縮反応バッファー(3mMMgCl2を有する)、各プライマー0.02μM含有)(これらは全て、ハイフィディリティPCRマスターキット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)を用いて総容量20μlで、第二PCRプログラムに従って増幅させた:95℃で2分間、94℃で15秒間を45サイクル、55℃で30秒間、72℃で1分間、その後72℃で10分間。
【0131】
【表27】
【0132】
【表28】
【0133】
【表29】
【0134】
1工程マルチプレックスRT−GSP(遺伝子特異的プライマー)−PCR反応:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、バッファー及びdNTP以外の必要な全てのPCR試薬(容量10μl)を含有した96ウェルPCRプレート(Eppendorf)のウェルにB細胞及び形質細胞を直接分注し、その後の処理のために−80℃で凍結する必要がある。
【0135】
RT工程:
逆転写及びPCRを1工程(1工程マルチプレックスRT−PCR)で実施した。単離、ソーティングし保存した細胞を逆転写又はRT−PCRの原料として用いた。全ての必要な試薬を室温で融解させた。全てのプライマーをMOLBIOL TIB GmbH研究所で合成した。プレート及びその他の全ての試薬は全ての作業中氷上に保持した。cDNA合成のために、伸長した遺伝子特異的プライマーを直接使用した。酵素コンプレックスは2個のSensiscript逆転写酵素及び1個のOmniscriptポリメラーゼ(Qiagen OneStep RT PCR)から構成される。cDNAへのmRNAの書き換えをSensiscriptコンプレックス(Qiagen OneStep RT PCR)により行い、cDNAの増幅はHotStarTaqDNAポリメラーゼ(Qiagen OneStep RT PCR)を用いて行った。このHotStarTaqDNAポリメラーゼは、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)から最初に単離され、E.coliで発現させた、化学的に組換えた94kDaのDNAポリメラーゼ(デオキシヌクレオシド三リン酸:DNAデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.7)の形態である。細胞を96ウェルPCRプレートにソーティングし、PCRグレードのH2O5μl、VH及びVL用の0.1μMプライマー1μl、RNAse阻害剤(20U/反応)1μl及び1.5mMのトリス3μlを加えた10μlの容量で保存した。PCR反応を行うため別の10μlを添加する前に、−60℃で保存した細胞を簡単に遠心し(1400rpmで20秒間)、液体及びウェルの底の細胞を回収した。
【0136】
【表30】
【0137】
【表31】
【0138】
10μl/ウェルのマスターミックス2を細胞に添加した。マスターミックス2にはH2O(PCRグレード)2.2μl、1×バッファー4μl、各400μMのdNTP0.8μl、0.25×Q溶液1μl、酵素コンプレックス1.2μl及びRNAse阻害剤(20U)1μlを含めた。
【0139】
【表32】
【0140】
【表33】
【0141】
PCR産物の精製:
次のオーバーラッピングPCR(第三PCR)でin vitro翻訳のための直鎖テンプレート生成の効率を改善するために、下流アプリケーションでの干渉を避けるために、PCR増幅に使用した未取込みのプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼ及び塩を除去することにより先の増幅PCR産物の精製を行った。Agencourt AMPureを使用した。バッファーを最適化し、100bp以上のPCR単位複製配列を常磁性ビーズに選択的に結合させる。過剰のオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、塩及び酵素は簡単な洗浄操作で除去することができる。得られた精製PCR産物は基本的に不純物を含まず、下記のアプリケーションに使用することができる:蛍光DNA配列決定(キャピラリー電気泳動など)、マイクロアレイスポッティング、クローニング及びプライマー伸長遺伝子型決定法。96ウェルフォーマットのためのワークフローをバッファー中に保存のビーズを穏やかに振とうさせて開始し、沈殿した可能性のある任意の磁気粒子を再懸濁した。正確な容量のビーズ溶液36μlを試料20μlに添加し、混合物を浮き沈みさせながら10回ピペッティングした。この後の工程は10分間のインキュベーションであり、その後反応プレートを磁気プレート上に10分間置いてビーズを溶液から分離させた。透明な溶液(上清)を反応プレートから吸引し廃棄した。ビーズ−cDNA洗浄のために、70%エタノール200μlを各ウェルに分注し、室温で少なくとも30秒間インキュベーションした。エタノールを吸引し廃棄した。洗浄工程を2回行い、次に反応プレートを室温で20分間風乾させた。その後、溶離バッファー40μlを添加し、再度混合物を浮き沈みさせながら10回ピペッティングした。cDNAを磁気ビーズから解離させた後、精製DNAを新たなプレートに移した。
【0142】
第三PCR:
その後、第二PCRの増幅DNAをオーバーラッピング伸長PCR方法により転写/翻訳工程に必要な下記の成分と結合させた:リボソーム結合部位(RBS)、T7プロモーター及びT7ターミネータ配列。このPCRのために、第二PCR2μlを、下記を含有する最終容量20μlにした:水10.7μl、MgCl2(10mM)を含む10×反応バッファー2μl、DMSO0.8μl、dNTP(各10mM)0.5μl、T7プロモーター及びターミネータプライマー(各6μM)1.6μl、C末端HA−Tagプライマー0.4μl及び酵素ブレンド0.4μl(これらは全て、RTS E.coli Linear Template Generation Set, HA-Tag(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)。最後に、オーバーラッピングPCR産物をテンプレートとして使用して、Escherichia coliライセートを用いてin vitro転写を行い、得られた機能的Fabを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりF(ab’)2IgGに対してスクリーニングした。
【0143】
【表34】
【0144】
【表35】
【0145】
ゲル電気泳動:
ゲル電気泳動解析(1%アガロースゲル、Invitrogen Corp., USA)を行って、適切なコントロールを用いてcDNAテンプレートの増幅及び特異性を評価した。
【0146】
【表36】
【0147】
in vitro転写及び翻訳:
in vitroでの転写及び翻訳の組み合わせを、記載の構成成分(表12参照)を用いて、RTS 100 E.coli Disulfide Kit(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を使用し製造業者のプロトコールに従って実施した。各オーバーラッピングPCR産物4μlを、RTS Proteo Master Instrument(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)で、総容量50μl、37℃で20時間かけて転写し翻訳した。コントロール反応を同条件下、cDNAテンプレート不含で実施した。GFP(緑色蛍光タンパク質)ベクターをポジティブコントロールとしてオートラジオグラフィー反応システムに添加した。in vitro転写/翻訳後、タンパク質を正確にフォールディング、成熟させるために、反応混合物50μlをPBS(1:2.5希釈)75μlに移し、4℃で一晩インキュベーションした。
【0148】
【表37】
【0149】
ELISA:
384ウェルプレート(Nunc GmbH & Co. KG, Thermo Fisher Scientific, Langenselbold, Germany)をヤギ抗ヒトIgGFabフラグメント(Bethyl Laboratories Inc.が製造、Biomol GmbH, Hamburg, Germanyから得た、1mg/1ml)50μl(PBS中、1:1000)でコートし、4℃で一晩インキュベーションした。プレートを洗浄液(100μlのPBST(リン酸緩衝生理食塩水−ツイーン20))で3回洗浄し、60μlのブロッキング溶液(0.25%CroteinC(w/v)/0.5%ツイーン(w/v)/PBS)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。別の洗浄工程(3×100μlのPBST)を行い、37.5μlの試料を移し、同様に、37.5mlのネガティブコントロール(in vitro転写/翻訳からのネガティブコントロール)及び0.75μlのヒト組換えFabフラグメント(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を含有する37.5μlのポジティブコントロールを移した。試料を1:3希釈に滴定した。プレートを室温で1.5時間インキュベーションした。洗浄工程(3×100μlのPBST)後、25μlのヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2(Dianova, Hamburg, Germany;0.8mg/ml(ブロッキング溶液で1:2000希釈))を添加し、室温で1時間インキュベーションした。最後の洗浄工程(3×100μlのPBST)を行い、25μlのTMB(POD基質、Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, Art-No: 1 484 281)を各ウェルにピペットで入れた。2〜3分後、405nm及び495nmで吸収シグナルを検出した(Tecan, Safire 2; Tecan Deutschland GmbH, Crailsheim, Germany)。
【0150】
フローサイトメトリー解析及び細胞ソーティング:
FACS解析及び細胞ソーティングのために、下記の抗原に対してビオチン化モノクローナル抗体又はFITC(フルオレセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリトリン)若しくはAPC(アロフィコシアニン)コンジュゲートモノクローナル抗体を使用した:CD3(UCHT1)、CD4(13B8.2)、CD8(B9.11)、CD40(MAB89)、CD80(MAB104)、CD83(HB15a)、CD86(HA5.2B7)(全てImunotech/Beckman Coulter、Marseille, Franceから入手可能)、CD19(HIB19)、CD20(2H7)、CD34(581)、IL−3Ra/CD123(9F5)、CD11c(B−ly6)、CD14(M5E2)、CD24、CD22a、CD38、CD138(全てBD Pharmingen, San Diego, CA, USAから入手可能)、CD45(HI30)、CD45RA(MEM56)、HLA−DR(TU36)(全てCaltag, Burlingame, CA, USAから入手可能)、TLR2(TL2.1)、TLRR4(HTA125)、TCRab(IP26)、(全てBioscience, San Diego, CAから入手可能)、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−4、CD25(4E3)(全てMiltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germanyから入手可能)、IgM(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA, USA)、CCR7(3D12、M. Lipp, Berlin, Germanyより提供)。IOTest Beta MarkをVb解析に使用した(Imunotech/Beckman Coulter)。ストレプトアビジンコンジュゲートFITC、PE又はAPC(全てBD Pharmingen)をビオチン化抗体の可視化に使用した。死細胞をヨウ化プロピジウム染色により除外した。適切なアイソタイプ適合の無関係のコントロールmAbを使用してバックグラウンド染色のレベルを決定した。細胞をFACS Caliburを用いて解析し、FACSAria(Becton Dickinson Immunocytometry Systems, Mountain View, CA, USA)でソーティングした。
【0151】
実施例1
1個の固定プライマーセット及び1個の変更プライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0152】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。ポリメラーゼ連鎖反応で用いた第一及び第二プライマーセットの3’プライマーは同一であった。第一及び第二プライマーセットの5’プライマーは、第一の5’プライマーセットのプライマーがリーダーペプチドをコードする領域に結合し、第二の5’プライマーセットのプライマーがFR1領域に結合する限りにおいて異なっている。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図2に示す。
【0153】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0154】
【表38】
【0155】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0156】
【表39】
【0157】
図3では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの750bp(IgG HC)及び665bp(IgG LC)並びに第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの711bp及び688bpによく相関した。
【0158】
実施例2
2個の変更プライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0159】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。第一及び第二プライマーセットの5’プライマー及び3’プライマーは第二プライマーセットの各プライマーが核酸のより内部領域に結合する限りにおいて互いに異なっていた。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図4に示す。
【0160】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0161】
【表40】
【0162】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0163】
【表41】
【0164】
図5では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの471bp(IgG HC)及び413bp(IgG LC)並びに第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの442bp及び399bpによく相関した。
【0165】
実施例3
2個の同一のプライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0166】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。第一及び第二プライマーセットの5’プライマー及び3’プライマーは同一であった。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図6に示す。
【0167】
第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0168】
【表42】
【0169】
図7では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズ711bp(IgG HC)及び688bp(IgG LC)によく相関した。
【0170】
実施例4
in vitro翻訳のための直鎖テンプレートの生成
第一ポリメラーゼ連鎖反応のために、遺伝子特異的プライマーをT7ファージの調節DNA領域に必要なオーバーラッピング配列を含むように設計した。第二ポリメラーゼ連鎖反応のために、第一PCR産物を、調節配列を含みtag配列をコードする核酸フラグメントと組み合わせた。3’末端伸張は調節エレメントを含む核酸フラグメントとハイブリダイゼーションさせて達成した。この直鎖発現構築物は2個の末端プライマーによりさらに増幅させる。これらのプライマーは下記の配列を含む:5’−CTTTAAGAAGGAGATATACC+ATG+15〜20bpの遺伝子特異的配列(5’プライマー、配列番号:126)又は5’−ATCGTATGGGTAGCTGGTCCC+TTA+15〜20bpの遺伝子特異的配列(3’プライマー、配列番号:127)。
【0171】
図9では、レーン1、5及び9はブランクの水コントロールを示す。重鎖核酸はレーン4、8及び12に含まれ、κ軽鎖はレーン3、7及び11に含まれる。レーン2、6及び10は両方の鎖を組み合わせた試料を示す。全ての核酸が期待するサイズを有している(表38参照)。
【0172】
【表43】
【0173】
実施例5
in vitro翻訳及びhuFab特異的ELISA
in vitro翻訳は上記に概説したように実施する。
【0174】
図10から明らかなように、2個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応により得られた核酸からは、コードFab免疫グロブリンフラグメントのin vitro産生を可能にする直鎖発現構築物が得られない。対照的に、別々の連続したポリメラーゼ連鎖反応で用いた1個の固定及び1個の可変プライマーセットでの2工程ポリメラーゼ連鎖反応は、その後の直鎖発現構築物の提供及び免疫グロブリンFabフラグメントを含むIgG HC及びIgG LCのin vitro翻訳を可能にする。
【0175】
これとは対照的に、マルチプレックスフォーマットでは、2個の固定プライマーセットを用いるポリメラーゼ連鎖反応よりも1個の固定プライマーセットを含む2工程ポリメラーゼ連鎖反応がより効率的である。わずか1個の固定プライマーセットを用いることで、最高5倍高い光学密度を達成することができる。
【0176】
実施例6
単一細胞から得られる核酸を用いたin vitro翻訳及びhuFab特異的ELISA
【0177】
同一のプライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応
図11から明らかなように、コントロール試料はアガロースゲルでシグナルを生成しなかった。沈着した単一B細胞もまたシグナルを生成しなかった。IgG HC及びIgG LC(κ)はコントロール試料から増幅することができた。
【0178】
1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応
図13から明らかなように、1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応から得られた試料2を除いた全ての核酸は、IgG HC及びIgG LCの産生のための直鎖発現構築物を提供することができた。従って、これらのマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応は非常に優れている。
【0179】
得られたヒトκFab免疫グロブリンフラグメントの濃度は100〜550ng/mlである。図16のレーン9〜11はIgG HCポジティブコントロールを添加せず単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)を示す。ここで、得られたヒトFab免疫グロブリンフラグメントの量は180〜330ng/mlであった。
【技術分野】
【0001】
本発明は、単一の免疫グロブリン産生細胞からマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により免疫グロブリンをコードする核酸を得る方法及び手段に関し、また免疫グロブリンを産生する方法に関し、この方法では、in vitro翻訳と組み合わせて単一の免疫グロブリン産生細胞から免疫グロブリンをコードする核酸が得られる。また、本発明は組換え産生したヒトFabフラグメントを特徴づけるための方法を包含する。
【背景技術】
【0002】
ハイブリドーマ技術(Cole, S.P.C., et al., Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R. Liss, p. 77 (1985); and Boerner, P., et al., J. Immunol. 147 (1991) 86-95)が確立されてから、モノクローナル免疫グロブリンが科学研究、ヒトの医療及び診断法において極めて重要な役割を果たしていることが明らかとなった。これにより、モノクローナル、特に治療免疫グロブリンの作製は盛んに研究が行われている分野である。この点に関して、特にハイブリドーマ技術及びファージディスプレイ技術(Hoogenboom, H.R., and Winter, G., J. Mol. Biol. 227 (1992) 381-388; Marks, J.D., et al., J. Mol. Biol. 222 (1991) 581-597)の2つの技術がモノクローナル免疫グロブリンの作製に一般的に使用されている。ハイブリドーマ技術では安定なクローンを得ることは困難であるため、抗体の多様性は減少し、限られた数のB細胞でのみ融合、増殖その後の特徴づけに成功している。同様に、ファージ又は酵母ディスプレイベースのコンビナトリアルライブラリーアプローチの欠点は、免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダム対合である。本来の重鎖及び軽鎖対合の解離や本来あるべきでない対合が起こるため、高親和性の重鎖及び軽鎖対の同定のために、大量の免疫グロブリン産生細胞のスクリーニングを必要とする。さらに、このような本来あるべきでない対合はヒト抗原に対して望ましくない交差反応を示す可能性がある。最終的に、コンビナトリアルライブラリーの選択及びスクリーニングにより同定される標的特異的免疫グロブリンの遺伝的多様性は、一般的に、本来の選択バイアスにより制限される。
【0003】
免疫グロブリン産生細胞から免疫グロブリンを生成することは当該技術分野で公知の方法に従って行うことができる。このような方法は、例えば、ハイブリドーマ技術である。別の方法には免疫グロブリンの核酸配列の同定に基づくものがある。通常、可変領域の又はCDR領域のみの又はCDR3領域のみの配列を同定することで十分である。例えば、mRNAを免疫グロブリン産生細胞のプールから単離し、免疫グロブリンのCDR領域をコードするcDNAライブラリーを構築するために使用する。次に、cDNAライブラリーをNS0又はCHOなどの適切な宿主細胞にトランスフェクションし、特異的な免疫グロブリン産生のためにスクリーニングする。
【0004】
WO 2008/104184は同種抗体をクローニングする方法を報告している。単一のヒトB細胞からのモノクローナル抗体の効率的な生成がTiller等により報告されている(Tiller, T., et al., J. Immunol. Meth. 329 (2007) 112-124)。Braeuninger等はT細胞リッチB細胞リンパ腫から得られた単一B細胞の分子解析を報告している(Braeuninger, A., et al., Blood 93 (1999) 2679-2687)。ネステッド(RT−)PCRプライマーの系統的設計及び試験がRohatgi等により報告されている(Rohatgi, S., et al, J. Immunol. Meth. 339 (2008) 205-219)。WO 02/13862では、B細胞介在性の病変を変更させるための方法及び組成物が報告されている。Haurum等は1工程RT−マルチプレックスオーバーラッピング伸長PCRを報告している(Meijer, P.J. and Haurum, J.S., J. Mol. Biol. 358 (2006) 764-772)。Stollar等及びJunghans等は、単一細胞のPCR反応を用いた配列解析を報告している(Wang, X. and Stollar, B.D., J. Immunol. Meth. 244 (2000) 217-225; Coronella, J.A. and Junghans, R.P., Nucl. Acids Res. 28 (2000) E85)。Jiang, X.及びNakano, H.等は、in vitro転写及び翻訳のための直鎖発現エレメントの構築を報告している(Biotechnol. Prog. 22 (2006) 979-988)。
【発明の概要】
【0005】
本発明は、一態様の特定の実施態様において、ヒト免疫グロブリンGフラグメントをコードする核酸のin vitro翻訳を含むヒトモノクローナル抗体を提供する方法に関し、この方法では、前記核酸が単一の免疫グロブリン産生ヒトB細胞、形質芽球若しくは形質細胞又はヒト免疫グロブリン遺伝子座を含む動物のB細胞のmRNAから得られるcDNAフラグメントの特異的増幅により得られる。
【0006】
この方法を用いることで、与えられた多数のB細胞の各々を産生免疫グロブリンの抗体結合特性に関し特徴づけることが可能である。従って、免疫グロブリン作製の多様性に損失が生じることはない。解析したB細胞はin vivoでの成熟過程後に得られる成熟B細胞であるため、その産生免疫グロブリンが他の抗原と交差反応を起こす可能性は極めて低い。
【0007】
本発明は、単一B細胞又は形質芽球若しくは形質細胞から同種IgG HC及びIgG LC鎖(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅するためのマルチプレックスセミネステッド(semi-nested)PCR及びマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCR(RT−遺伝子特異的プライマー−PCR)方法を含む。その後、FabPCR産物をmRNAに転写し、E.coliライセートでin vitro翻訳する。発現はELISA及びウェスタンブロットを用いて調べた。
【0008】
本発明は第一の態様として、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ること、
ここで、増殖される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーの結合位置から3’プライマーの結合位置までの距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応での距離と比較して減少している、を含む方法である。
【0009】
本発明の第二の態様は、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより核酸組成物を得ること、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ること、
ここで、第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応のそれと同一であり、3’プライマーを変更するか、又は、3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、少なくとも1個の5’プライマーを変更するかのいずれであり、
ここで、増殖される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して減少している、を含む方法である。
【0010】
本発明のさらなる態様は、単一細胞からマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応を一工程で行うことを含む方法である。
【0011】
一実施態様においては、本発明に記載の方法は、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合することを特徴とする。別の実施態様においては、本発明に記載の方法は、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマー又はマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられる5’プライマーが、免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合することを特徴とする。さらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与えることを特徴とする。なおさらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、下記の追加の工程:
− 単一細胞を準備し、この細胞のmRNAを得ることを含むことを特徴とする。
【0012】
さらなる実施態様においては、先の実施態様に記載の方法は、下記の第2工程:
− 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)により前記の得られたmRNAからcDNAを得ることを含むことを特徴とする。
【0013】
別の実施態様においては、本発明に記載の方法は、6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする。なおさらなる実施態様においては、本発明に記載の方法は、4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする。本発明のさらなる実施態様においては、前記方法は、
a)免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:05及び/又は06、07及び/又は08、09、10及び/又は11、12、13、及び104及び/又は105及び/又は106の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、及び104及び/又は105及び/又は106、及び/又は142、及び/又は143の核酸を含み、
b)免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:16、17、18、19及び115の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:53及び/又は54、55及び/又は56、57及び/又は58、59、60、61及び/又は62、63及び/又は64、65、66、67、68、69、70、及び/又は115、及び/又は144、及び/又は145の核酸を含み、
c)免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:21、22、23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応におけるプライマーが配列番号:72、73及び/又は74、75、76、77及び/又は78、79、80、81、82及び/又は83、84及び/又は85、86、87及び/又は88、89、90及び/又は91、92、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0015】
本発明のさらなる態様は、免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、
− 得られた核酸を含む直鎖発現マトリックスを生成すること、
− 核酸をin vitroで翻訳することにより免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法である。
【0016】
本発明の別の態様は、免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から、免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を動作可能形態で連結し、重鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を動作可能形態で連結すること、
− 前工程で得られた核酸で真核細胞又は原核細胞をトランスフェクションすること、
− 一実施態様においては、免疫グロブリンの発現に適した条件下でトランスフェクション細胞を培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法である。
【0017】
本発明に記載の全ての方法の一実施態様においては、免疫グロブリンはクラスG免疫グロブリン(IgG)である。免疫グロブリンFabフラグメント又は免疫グロブリンを産生する方法の一実施態様においては、核酸を得ることは本発明の態様に記載の方法により行われる。
【0018】
発明の詳細な説明
本発明の一態様は、単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
ここで、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応と比較して減少している、方法である。
【0019】
ヒトPanB細胞マーカーのCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いて、末梢血からB細胞を単離した(例えば、Bertrand, F.E., III, et al., Blood 90 (1997) 736-744参照)。限界希釈法により、単一細胞を96ウェルマイクロタイタープレートに入れた。これらの細胞のmRNAを抽出した。
【0020】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得るために本発明に記載のIgG特異的PCR増幅を行うことにより、その後の免疫グロブリン又はFabフラグメントそれぞれの産生で、一実施態様においては、0.5〜2.0のOD値が得られ、同時に、例えば、Fabフラグメントが180〜310ng/mlの収量で得られたことが明らかとなった。
【0021】
本発明に記載の方法では、同じポリメラーゼ連鎖反応で重鎖及び軽鎖可変ドメインを同時に増幅させるために、マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応を使用する。別々の反応で重鎖可変ドメイン及び軽鎖可変ドメインを増幅させることとは対照的に、本発明のアプローチは高感度及び増幅配列の量の増加をもたらす。両方、即ち、全てのポリメラーゼ連鎖反応において遺伝子特異的プライマーを使用することにより本方法の特異性と精度が向上する。
【0022】
ヒトIgGの場合のより複雑な遺伝子構造では、必要な感度及び精度を得るためにプライマー設計、配置及びポリメラーゼ連鎖反応に関して異なる戦略が必要である。
【0023】
従って、本明細書では、増幅する重鎖及び軽鎖領域の連結を有しない又は連結を有するマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応が用いられる。得られた核酸のin vitro翻訳のために、コードドメインが鎖間のジスルフィド結合形成に使用することができるシステイン残基を含むことが有利である。
【0024】
本発明の実施に有用な当業者に公知の方法及び技術は、例えば、Ausubel, F.M., ed., Current Protocols in Molecular Biology, Volumes I to III (1997)、Wiley and Sons; Sambrook, J., et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y. (1989)、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855;US 5,202,238、及びUS 5,204,244に記載されている。
【0025】
用語「免疫グロブリン」は、免疫グロブリン遺伝子により実質的にコードされている一以上のポリペプチドから構成されるタンパク質を意味する。認識されている免疫グロブリン遺伝子には、様々な定常領域遺伝子並びに多数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。免疫グロブリンは多様な形態、例えば、Fv、Fab及びF(ab)2並びに一本鎖(scFv)又は二重特異性抗体で存在することができる(例えば、Huston, J.S., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 85 (1988) 5879-5883; Bird, R.E., et al., Science 242 (1988) 423-426; Hood, L.E. et al., Immunology, Benjamin N.Y., 2nd edition (1984); Hunkapiller, T. and Hood, L., Nature 323 (1986) 15-16)。
【0026】
通常、免疫グロブリンは2個のいわゆる軽鎖ポリペプチド(軽鎖)及び2個のいわゆる重鎖ポリペプチド(重鎖)を含む。各重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、抗原と相互作用することができる結合領域を含む可変ドメイン(可変領域)(通常、ポリペプチド鎖のアミノ末端部分)を含有する。各重鎖及び軽鎖ポリペプチドは、定常領域(通常、カルボキシル末端部分)を含む。重鎖の定常領域は、抗体とi)食細胞などのFcγ受容体(FcγR)を有する細胞、又はii)Brambell受容体としても知られている新生児Fc受容体(FcRn)を有する細胞との結合を媒介する。また、古典的補体系因子、例えば、成分(C1q)などのいくつかの因子との結合も媒介する。免疫グロブリンの軽鎖又は重鎖の可変ドメインは順に、異なるセグメント、即ち、4個のフレームワーク領域(FR)及び3個の超可変領域(CDR)を含む。
【0027】
免疫グロブリンの遺伝子操作は、例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad Sci. USA 81 (1984) 6851-6855; US 5,202,238及びUS 5,204,244; Riechmann, L., et al., Nature 332 (1988) 323-327; Neuberger, M.S., et al., Nature 314 (1985) 268-270; Lonberg, N., Nat. Biotechnol. 23 (2005) 1117-1125に記載されている。
【0028】
用語「キメラ免疫グロブリン」は、第一の非ヒト由来の可変ドメイン、即ち、結合領域及び少なくとも一部の第二の異なる起源又は種由来の定常領域を含む免疫グロブリン、好ましくは、モノクローナル免疫グロブリンを意味する。キメラ免疫グロブリンは、通常、組換えDNA技術により調製される。一実施態様においては、キメラ免疫グロブリンはマウス、ラット、ハムスター、ウサギ又はヒツジの可変ドメイン及びヒトの定常領域を含む。一実施態様においては、ヒト重鎖定常領域はヒトIgG定常領域である。別の実施態様においては、ヒト軽鎖定常領域はκ鎖又はλ鎖である。
【0029】
本発明に包含されるキメラ免疫グロブリンの他の形態は、可変ドメインが由来する非ヒト免疫グロブリンのクラス又はサブクラスが変化したものである。このような免疫グロブリンは、また「クラススイッチ免疫グロブリン」と呼ばれる。また、本発明に包含される「クラススイッチ免疫グロブリン」の形態は、定常領域が、C1q結合及び/又はFc受容体(FcR)結合などに関して異なる特性を有する免疫グロブリンを生じる野生型の定常領域配列と異なるものである。免疫グロブリンの「Fc部分」は抗原との結合に直接関与しないが、様々なエフェクター機能を示す。重鎖定常領域のアミノ酸配列により、免疫グロブリンはIgA、IgD、IgE、IgG及びIgMのクラスに別けられる。これらのクラスには、さらにサブクラスに別けられ、IgGはIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4に別けられ、IgAはIgA1及びIgA2に別けられる。免疫グロブリンが属する免疫グロブリンのクラスに従って、免疫グロブリンの重鎖定常領域は、α(IgA)、δ(IgD)、ε(IgE)、γ(IgG)及び、μ(IgM)と呼ばれる。一実施態様においては、本発明に記載の免疫グロブリンはIgGクラスに属する。「免疫グロブリンのFc部分」は当業者に公知の用語であり、免疫グロブリンのパパイン切断に基づいて定義される。本発明の一実施態様においては、免疫グロブリンは、Fc部分として、ヒトFc部分又はヒト由来のFc部分を含有する。本発明のさらなる実施態様においては、Fc部分はサブクラスIgG4又はIgG1のヒト免疫グロブリンのFc部分であるか、あるいは、以下に定義するように、Fcγ受容体(例えば、FcγRIIIa)結合及び/又はC1q結合が検出されないように改変したサブクラスIgG1、IgG2又はIgG3のヒト抗体のFc部分である。一実施態様においては、Fc部分はヒトFc部分であり、別の実施態様においては、Fc部分はヒトIgG4若しくはIgG1サブクラスFc部分又はヒトIgG1サブクラス由来の突然変異Fc部分である。さらなる実施態様においては、Fc部分は突然変異L234A及びL235Aを有するヒトIgG1サブクラスに由来する。IgG4はFcγ受容体(FcγRIIIa)結合の低下を示すのに対し、他のIgGサブクラスの免疫グロブリンは強い結合を示す。しかし、Pro238、Asp265、Asp270、Asn297(Fc炭水化物の欠損)、Pro329、Leu234、Leu235、Gly236、Gly237、Ile253、Ser254、Lys288、Thr307、Gln311、Asn434又は/及びHis435は、改変された場合、Fcγ受容体結合の低下をもたらす残基である(Shields, R.L., et al., J. Biol. Chem. 276 (2001) 6591-6604; Lund, J., et al., FASEB J. 9 (1995) 115-119; Morgan, A., et al., Immunology 86 (1995) 319-324; EP 0 307 434)。一実施態様においては、免疫グロブリンは、L234、L235及び/又はD265に突然変異を有するIgG4若しくはIgG1サブクラス又はIgG1若しくはIgG2サブクラスのFcγ受容体結合に関するものであり、及び/又はPVA236突然変異を含有する。別の実施態様においては、突然変異はS228P、L234A、L235A、L235E、及び/又はPVA236(PVA236はIgG1のアミノ酸233〜236位由来のアミノ酸配列ELLG(一文字アミノ酸コードによる)又はIgG4のEFLGがPVAに置換されていることを意味する)である。さらなる実施態様においては、突然変異はIgG4のS228P並びにIgG1のL234A及びL235Aである。免疫グロブリンのFc部分はADCC(抗体依存性細胞媒介性細胞傷害)及びCDC(補体依存性細胞傷害)に直接関与する。Fcγ受容体及び/又は補体因子C1qに結合しない免疫グロブリンは、抗体依存性細胞性傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を引き起こさない。一実施態様においては、重鎖定常領域は、配列番号:01又は配列番号:02又は突然変異L234A及びL235Aを有する配列番号:01又は突然変異S228Pを有する配列番号:02のアミノ酸配列を有し、軽鎖定常領域は配列番号:03又は配列番号:04のアミノ酸配列を有する。
【0030】
非ヒト(例えば、齧歯類又はウサギ)免疫グロブリンの「ヒト化」又は「CDR移植」形態は、非ヒト免疫グロブリン由来の部分配列及びヒト免疫グロブリン由来の部分配列を含有する免疫グロブリンである。主に、ヒト化免疫グロブリンはヒト免疫グロブリン(レシピエント又はアクセプター免疫グロブリン)由来であるが、この超可変領域からの残基が所望の特異性及び親和性を示すマウス、ラット、ハムスター、ウサギ又は非ヒト霊長類などの非ヒト(ドナー免疫グロブリン)の超可変領域からの残基により置換されている(例えば、Morrison, S.L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81 (1984) 6851-6855; US 5,202,238; US 5,204,244参照)。場合によっては、アクセプター免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が対応する非ヒト残基により置換されている。さらに、ヒト化免疫グロブリンはさらなる改変、例えば、アクセプター免疫グロブリン又はドナー免疫グロブリンに存在しないアミノ酸残基を含んでいてもよい。このような改変は、対応する親配列に相同であるが同一ではないこのようなレシピエント又はドナー免疫グロブリンの変異体を生じる。
【0031】
非ヒト免疫グロブリンをヒト化する方法は当該技術分野において記載されている。一般的に、ヒト化免疫グロブリンは非ヒト由来の一以上の導入アミノ酸残基を含む。これらの非ヒトアミノ酸残基は「移入」残基と呼ばれることが多く、これは典型的には「移入」可変ドメインに由来する。ヒト化は基本的にWinter及び共同研究者の方法に従って、非ヒト免疫グロブリンの対応する配列に対して超可変領域配列を置換して実施することができる(例えば、Winter, G. and Harris, W.J., Immunol. Today 14 (1993) 243-246参照)。
【0032】
本明細書で使用する用語「ヒト免疫グロブリン」は、ヒト生殖細胞系の免疫グロブリン配列由来の可変及び定常領域(ドメイン)を有し、且つ、これらの生殖細胞系配列と高い配列類似性又は同一性を有する免疫グロブリンを意味する。一実施態様においては、可変重鎖領域が生殖細胞系配列DP-50(GenBank LO6618)に由来し、可変軽鎖領域が生殖細胞系配列L6(GenBank X01668)に由来するか、あるいは、可変重鎖領域がDP-61(GenBank M99682)に由来し、可変軽鎖領域が生殖細胞系配列L15(GenBank K01323)に由来する。抗体の定常領域はヒトIgG1若しくはIgG4型又はその変異体の定常領域である。このような領域はアロタイプでありうるが、例えば、Johnson, G. and Wu, T.T., Nucleic Acids Res. 28 (2000) 214-218に記載されており、そのデータベースは本明細書で参照される。
【0033】
本明細書で使用する用語「組換え免疫グロブリン」は、組換え手段により調製、発現又は作製される免疫グロブリンを意味し、例えば、E.coli、NS0、BHK若しくはCHO細胞などの宿主細胞又はヒト免疫グロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス又はウサギ)から単離された免疫グロブリンである。一実施態様においては、本発明に記載の「組換えヒト免疫グロブリン」は、再配置した可変及び定常領域を有する。本発明に記載の組換えヒト免疫グロブリンはin vivoで体細胞超変異を受けている。従って、組換えヒト免疫グロブリンのVH及びVL領域のアミノ酸配列は、定義されたヒト生殖細胞系VH及びVL配列とすることができる配列であるが、in vivoのヒト抗体生殖細胞系レパートリー内では天然には存在しない可能性がある。
【0034】
本明細書で使用する用語「モノクローナル免疫グロブリン」は、実質的に同種(homogeneous)の免疫グロブリン(即ち、集団の個々の免疫グロブリンは、少ない量で存在しうる天然に生じる突然変異を除いて同一である)の集団から得られる免疫グロブリンを指す。モノクローナル免疫グロブリンは単一の抗原部位に対して向けられている、高特異的である。さらに、異なる抗原部位(決定基又はエピトープ)に対して向けられた異なる免疫グロブリンを含有するポリクローナル免疫グロブリン調製物とは対照的に、各モノクローナル免疫グロブリンは単一の抗原部位に対して向けられている。その特異性の他に、モノクローナル免疫グロブリンは他の免疫グロブリンを混入させずに合成することができる利点がある。修飾語「モノクローナル」は、実質的に同種の免疫グロブリンの集団から得られるような免疫グロブリンの特徴を示し、特定の方法により免疫グロブリンが産生される必要があると解釈されるべきではない。
【0035】
免疫グロブリンの特性に影響又は変化を起さないアミノ酸配列改変である「保存的配列改変」を有する免疫グロブリンを、「変異免疫グロブリン」と称する。改変は当該技術分野で標準的な技術、例えば、部位特異的突然変異誘発及びPCR媒介突然変異誘発により導入することができる。保存的アミノ酸置換には、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものが含まれる。これらのファミリーには、塩基性側鎖(例えば、リシン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸)、非電荷極性側鎖(例えば、グリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、トレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン)、非極性側鎖(例えば、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン)、β分岐側鎖(例えば、トレオニン、バリン、イソロイシン)及び芳香族側鎖(例えば、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)を有するアミノ酸が挙げられる。従って、免疫グロブリンにおいて抗原結合に必須ではないと予測されるアミノ酸残基を同じ側鎖ファミリーの別のアミノ酸残基で置換することができる。
【0036】
本明細書で使用する用語「可変ドメイン」(軽鎖の可変ドメイン(VL)、重鎖の可変ドメイン(VH))は、標的抗原との結合に直接関与する免疫グロブリンの一対の軽鎖及び重鎖の各ドメインのそれぞれを意味する。可変ドメインは、通常、軽鎖及び重鎖のN末端ドメインである。軽鎖及び重鎖の可変ドメインは同じ一般構造、即ち、「免疫グロブリンフレームワーク」を有し、各ドメインは、3個の「超可変領域」(又は「相補性決定領域」、CDR)により結合された、配列が広範囲に保存されている4個の「フレームワーク領域」(FR)を含む。用語「相補性決定領域」(CDR)又は「超可変領域」(HVR)は、本願において互換的に使用され、抗原結合に主に関与する抗体のアミノ酸残基を意味する。「フレームワーク」領域(FR)は、超可変領域とは別の可変ドメイン領域である。従って、免疫グロブリンの軽鎖及び重鎖可変ドメインはNからC末端に領域FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3及びFR4を含む。フレームワーク領域はβシート立体構造をとり、CDRはβシート構造に結合するループを形成する。各鎖のCDRはフレームワーク領域によりその三次元構造内に保持され、他の鎖のCDRと一緒になって抗原結合部位を形成する。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のCDR3領域は、免疫グロブリンの結合特異性/親和性に特に重要な役割を果たす。CDR及びFR領域は、Kabat, E.A., et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th ed., Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD (1991)の標準的な定義に従って決定される。
【0037】
本願において使用する用語「アミノ酸」は、直接的に又は前駆体の形態で核酸にコードされうるカルボキシα−アミノ酸群を意味する。個々のアミノ酸は3個のヌクレオチドいわゆるコドン又は塩基トリプレットから構成される核酸によりコードされる。各アミノ酸は少なくとも1個のコドンによりコードされる。異なるコドンで同じアミノ酸をコード化することは「遺伝コードの縮重」として知られる。本願において使用する用語「アミノ酸」は天然に生じるカルボキシα−アミノ酸を意味し、アラニン(3文字表記:ala、1文字表記:A)、アルギニン(arg、R)、アスパラギン(asn、N)、アスパラギン酸(asp、D)、システイン(cys、C)、グルタミン(gln、Q)、グルタミン酸(glu、E)、グリシン(gly、G)、ヒスチジン(his、H)、イソロイシン(ile、I)、ロイシン(leu、L)、リシン(lys、K)、メチオニン(met、M)、フェニルアラニン(phe、F)、プロリン(pro、P)、セリン(ser、S)、トレオニン(thr、T)、トリプトファン(trp、W)、チロシン(tyr、Y)及びバリン(val、V)を含む。
【0038】
「核酸」又は「核酸配列」は、本願において互換的に使用される用語であり、個々のヌクレオチド(塩基とも呼ばれる)「a」、「c」、「g」及び「t」(RNAでは「u」)から構成される重合分子即ち、DNA、RNA又はその改変体を指す。このポリヌクレオチド分子は、天然に生じるポリヌクレオチド分子、合成ポリヌクレオチド分子又は一以上の天然に生じるポリヌクレオチド分子と一以上の合成ポリヌクレオチド分子の組み合わせであってもよい。また、この定義には一以上のヌクレオチドが変化(例えば、突然変異により)、欠失又は付加された天然に生じるポリヌクレオチド分子も包含される。核酸は単離することができ、又は別の核酸、例えば、発現カセット、プラスミド又は宿主細胞の染色体に組み込むことができる。核酸は個々のヌクレオチドから構成されるその核酸配列により特徴づけられる。
【0039】
当業者にとって、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列をこのアミノ酸配列をコードする対応する核酸配列に変換する手順及び方法は公知である。従って、核酸は個々のヌクレオチドから構成されるその核酸配列により特徴づけられ、同様にそれによりコードされるポリペプチドのアミノ酸配列により特徴づけられる。
【0040】
ここで、モノクローナル免疫グロブリンをコードする核酸を、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を含む本発明に記載の方法を用いて単一細胞から得ることができることが明らかとなった。さらに、本発明に記載のPCR方法とin vitro翻訳方法の組み合わせを用いて、モノクローナル免疫グロブリンをコードする核酸を、単一細胞から得ることができ、コード免疫グロブリンを免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるのに十分な量で提供できることが明らかとなった。単一細胞から得られる極めて少量のmRNAを増幅するために、各PCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は極めて高感度でなければならず、二以上のPCRを組み合わせて実施する必要がある。
【0041】
従って、単一細胞からのIgGアイソタイプ免疫グロブリンの同種IgG HC(免疫グロブリンG重鎖)及びIgG LC(免疫グロブリンG軽鎖)をコードする核酸の増幅、それに続く得られた増幅核酸のin vitro翻訳に基づき、Fabフラグメント又は完全免疫グロブリンを提供できることが明らかとなった。この方法を用いて、単一細胞から産生される免疫グロブリンについての情報を得る高感度な方法が提供される。これは単一細胞の微量なmRNAからでさえ可能である。本発明に記載の方法は、単一B細胞から発現される免疫グロブリンの結合特性の生化学的解析を可能にする。これにより、本方法を用いてハイブリドーマ技術とは対照的により高度な多様性特徴づけが可能となる。さらに、同種免疫グロブリン鎖が、抗原との接触後の成熟B細胞から得られるため、高特異的及び高精度に構築された免疫グロブリンをコードする核酸が選択的に得られる。
【0042】
単一細胞から免疫グロブリンをコードする核酸を得る本発明に記載の方法は、単一B細胞から同種IgG HC及びIgG LC(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅するためのマルチプレックスセミネステッドPCRを含む。得られた核酸によりコードされる免疫グロブリンの結合特性の特徴づけのために、PCR産物を対応するFabフラグメントをコードする核酸に変形した。その後、FabフラグメントをE.coliライセート中、in vitroで翻訳した。発現をELISA及びウェスタンブロット法を用いて確認した。
【0043】
一般的に、本発明の一態様は、下記の工程:i)末梢血からヒトCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いてB細胞を単離すること、ii)例えば、限界希釈又はFACSにより単一細胞を沈着させること、iii)個々のB細胞のmRNAを抽出すること、iv)個々のB細胞から産生された免疫グロブリンの少なくとも可変ドメイン(VH及びVL)をコードする一以上の核酸を得ること、v)直鎖RNAテンプレートをin vitroで翻訳すること、場合により、vi)免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントの結合特性を特徴づけることを用いる方法である。
【0044】
本発明に記載のIgG特異的PCR増幅を最適化、改変して測定OD値の増加がもたらされ、in vitro翻訳後に免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントが得られた。
【0045】
高感度であり、免疫グロブリンの重鎖及び軽鎖又はそのフラグメントをコードする増幅核酸の回収率が高い3種の新規なPCRベースのアプローチが確立された。また、本発明に記載のPCRベースの方法を用いて、得られた核酸のin vitro翻訳後、機能的で安定なFabフラグメントを発現させる方法を提供する。
【0046】
用語「ポリメラーゼ連鎖反応」及び「PCR」は本願で互換的に使用され、例えば、DNA又はRNAの核酸領域を特異的に増幅させる方法を意味する。この方法は、K. Mullisにより開発された(例えば、Winkler, M.E., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA 79 (1982) 2181-2185参照)。その領域は単一遺伝子、遺伝子の一部、コード又は非コード配列であってもよい。多くのPCR方法は、典型的には、数百塩基対(bp)のDNAフラグメントを増幅させるが、いくつかの技術には40キロ塩基対(kb)サイズまでフラグメントを増幅させることができるものがある。基本的なPCRの開始には、いくつかの構成成分及び試薬が必要である。これらの構成成分には、増幅される領域を含む核酸テンプレート、増幅される領域の5’及び3’末端に相補的な2種のプライマー、ポリメラーゼ、例えば、Taqポリメラーゼ又は他の耐熱性ポリメラーゼ、ポリメラーゼが新しい鎖を合成するためのデオキシヌクレオチド三リン酸(dNTP)、ポリメラーゼの最適な活性及び安定性のための適切な化学環境を提供する緩衝液、二価陽イオン、通常はMg2+、最後にカリウムイオンのような一価陽イオンが含まれる。
【0047】
用語「セミネステッドPCR」は、各々少なくとも一対のPCRプライマーを用いる2つの連続したポリメラーゼ連鎖反応を意味し、第一ポリメラーゼ連鎖反応で第一プライマー対が用いられ、第二ポリメラーゼ連鎖反応で第二プライマー対が用いられる。第一及び第二プライマー対において、プライマーの一つは同一であり、他のプライマーが変更されている。この方法では、距離、即ち、第一プライマーの3’末端及び第二プライマーの5’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマー対と比較して第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマー対では減少している。変更プライマーはセンスプライマー又はアンチセンスプライマーのいずれかである。第一PCRは任意のPCR実験のように配列を増幅する。第二PCRに対する、第二プライマー対の一方のプライマー、即ち、ネステッドプライマーは第一PCR産物内に結合し、第一産物よりも短い第二PCR産物を生成する。この技術は2つよりむしろ4つの特異的なプライマーを使用するため、標準的なPCRよりも特異性が高い。また、単純なPCRで検出できないような場合でも検出可能な生成物を得ることができる。
【0048】
用語「マルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応)又は「マルチプレックスPCR」は、本願において互換的に使用され、これは、1回のPCR反応/混合物で、複数のユニークなプライマーを用いて、異なるDNA配列に特異的な様々なサイズの単位複製配列を生成するポリメラーゼ連鎖反応を意味する。一度に複数の遺伝子を標的とすることにより、1回の試験の実施でさらなる情報を得ることができるが、そのようにしない場合は、実施するのに数回試薬を用いる必要があり、さらなる時間が必要であろう。各プライマーセットのアニーリング温度は、1回の反応で正確に行うために最適化する必要がある。また、ゲル電気泳動で観察した際、別々のバンドで得るために、単位複製配列のサイズは十分に異なっている必要がある。
【0049】
ヒトゲノムでは免疫グロブリンをコードする遺伝子を含有する染色体遺伝子座は染色体2、14及び22上に位置している(図1参照)。ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座は、染色体における遺伝子座の配向:テロメア−5’末端−VH−D−JH−CH−3’末端−セントロメアと共に染色体14(14q32.2)上に見出すことができる。染色体上のVHセグメントを以下の表1に示すように分類する。
【0050】
【表1】
【0051】
ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座は、全体で123−129個のVH遺伝子を含み、7種のファミリーに分類され、その51個が機能的であり、23個が機能D遺伝子(D=多様性)であり、6個が機能JH遺伝子(J=連結)であり、最も多いハプロタイプでは9個が機能CH遺伝子(C=定常)である。
【0052】
カッパ(κ)及びラムダ(λ)型のヒト免疫グロブリンG軽鎖のための遺伝子座は2つの異なる染色体の染色体2及び22上に位置する。κ軽鎖遺伝子座は、染色体2(2p11.2)の短腕に見出すことができ、40個の機能Vκ遺伝子セグメントを含む。これらは7種のファミリーに分類される。遺伝子座は、また、5個のJκ遺伝子及び単一のCκ遺伝子を含む(Schable, K.F. and Zachau, H.G., Biol. Chem. Hoppe Seyler 374 (1993) 1001-1022; Lefranc, M.P., Exp. Clin. Immunogenet. 18 (2001) 161-174)。
【0053】
【表2】
【0054】
λ軽鎖遺伝子座は染色体22(22p11.2)の長腕に見出すことができ、73〜74個のVλ遺伝子を含み、その30個が機能的である。これらは10種のファミリーに分類され、さらに3種のクラスターに分類される。遺伝子座は、また、7個のJλ遺伝子を含み、その5個が機能的である。
【0055】
【表3】
【0056】
単一の免疫グロブリン産生細胞、例えば、単一B細胞からの、IgG HC及びLC又は少なくともその可変ドメインをコードする核酸のPCRベースの増幅は、Bリンパ球の単一細胞の沈着、その後の重鎖及び軽鎖の可変ドメインに対する特異的プライマーを用いたPCRベースの核酸増幅に基づいている。PCRの結果は、本質的に、用いるPCRプライマーに依存している。用いるプライマーで最良のものは全てのV遺伝子を網羅する必要があり、二量体形成を起こし難く、免疫グロブリンをコードするcDNAに特異的に結合する必要がある。従って、一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸はcDNAから得られる。
【0057】
ヒト免疫グロブリンG遺伝子座上に多数の機能遺伝子があることから、できるだけ多くの公知の遺伝子を網羅するためにPCR反応では異なるプライマーを用いる必要がある。従って、縮重プライマーセットを確立した。これは本発明の態様でもある。一実施態様においては、重鎖及び軽鎖をコードする核酸の増幅は1回のポリメラーゼ連鎖反応により実施される。この実施態様においては、プライマーは同じPCR条件を可能にするため、ほぼ同じ長さの核酸を増幅させる目的で選択される。この実施態様においては、1つが重鎖CH1領域に結合する、重鎖をコードする核酸に対するプライマーを用いるため、対応する軽鎖をコードする核酸と同程度のサイズの核酸フラグメントが得られる。
【0058】
本発明の一態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応と比較して減少している、方法である。
【0059】
本発明の一実施態様においては、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは、免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0060】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:05及び/又は06、及び配列番号:07及び/又は08、及び配列番号:09、及び配列番号:10及び/又は11、及び配列番号:12、及び配列番号:13、及び配列番号:14及び/又は15の核酸配列を有する。
【0061】
【表4】
【0062】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:16〜20の核酸配列を有する。
【0063】
【表5】
【0064】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:21、及び配列番号:22、及び配列番号:23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び配列番号:27及び/又は28の核酸配列を有する。
【0065】
【表6】
【0066】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:29及び/又は30、及び配列番号:31、及び配列番号:32及び/又は33、及び配列番号:34及び/又は35、及び配列番号:36、及び配列番号:37及び/又は38、及び配列番号:39及び/又は40、及び配列番号:41、及び配列番号:42、及び配列番号:43及び/又は44、及び配列番号:45、及び配列番号:46及び/又は47、及び配列番号:48、及び配列番号:49及び/又は50、及び配列番号:51及び/又は52の核酸配列を有する。
【0067】
【表7】
【0068】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:53及び/又は54、及び配列番号:55及び/又は56、及び配列番号:57及び/又は58、及び配列番号:59、及び配列番号:60、及び配列番号:61及び/又は62、及び配列番号:63及び/又は64、及び配列番号:65、及び配列番号:66、及び配列番号:67、及び配列番号:68、及び配列番号:69、及び配列番号:70、及び配列番号:71の核酸配列を有する。
【0069】
【表8】
【0070】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:72、及び配列番号:73及び/又は74、及び配列番号:75、及び配列番号:76、及び配列番号:77及び/又は78、及び配列番号:79、及び配列番号:80、及び配列番号:81、及び配列番号:82及び/又は83、及び配列番号:84及び/又は85、及び配列番号:86、及び配列番号:87及び/又は88、及び配列番号:89、及び配列番号:90及び/又は91、及び配列番号:92、及び配列番号:93の核酸配列を有する。
【0071】
【表9】
【0072】
本発明のさらなる態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが同一であり得る方法である。
【0073】
一実施態様においては、ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0074】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:94、及び配列番号:95、及び配列番号:96及び/又は97及び/又は98及び/又は99、及び配列番号:100及び/又は101及び/又は102及び/又は103、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0075】
【表10】
【0076】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:107及び/又は108及び/又は109及び/又は110、及び配列番号:111及び/又は112、及び配列番号:113、及び配列番号:114、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0077】
【表11】
【0078】
本方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:116、及び配列番号:117、及び配列番号:118及び/又は119、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸配列を有する。
【0079】
【表12】
【0080】
本方法の一実施態様においては、第二の2工程ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは配列番号:126及び配列番号:127の核酸配列を有する。
【0081】
【表13】
【0082】
本発明の別の態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより第一の核酸組成物を得ること、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて、第一ポリメラーゼ連鎖反応で得られた組成物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことにより少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得ることを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応と同一であり、3’プライマーが異なるか、又は3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応と同一であり、少なくとも1個の5’プライマーが異なる、及び
第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して少ない方法である。
【0083】
本方法の一実施態様においては、第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーは免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得るための本方法の一実施態様においては、6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる。別の実施態様においては、4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーが第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは、免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0084】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:05及び/又は06、及び配列番号:07及び/又は08、及び配列番号:09、及び配列番号:10及び/又は11、及び配列番号:12、及び配列番号:13、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0085】
【表14】
【0086】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:16、及び配列番号:17、及び配列番号:18、及び配列番号:19、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0087】
【表15】
【0088】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:21、及び配列番号:22、及び配列番号:23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸配列を有する。
【0089】
【表16】
【0090】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:128、及び配列番号:129、及び配列番号:130、及び配列番号:131、及び配列番号:132、及び配列番号:133、及び配列番号:134、及び配列番号:135、及び配列番号:136、及び配列番号:137、及び配列番号:138、及び配列番号:139、及び配列番号:140、及び配列番号:141、及び配列番号:104及び/又は105及び/又は106の核酸配列を有する。
【0091】
【表17】
【0092】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:53及び/又は54、及び配列番号:55及び/又は56、及び配列番号:57及び/又は58、及び配列番号:59、及び配列番号:60、及び配列番号:61及び/又は62、及び配列番号:63及び/又は64、及び配列番号:65、及び配列番号:66、及び配列番号:67、及び配列番号:68、及び配列番号:69、及び配列番号:70、及び配列番号:115の核酸配列を有する。
【0093】
【表18】
【0094】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るための第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーは、配列番号:72、及び配列番号:73及び/又は74、及び配列番号:75、及び配列番号:76、及び配列番号:77及び/又は78、及び配列番号:79、及び配列番号:80、及び配列番号:81、及び配列番号:82及び/又は83、及び配列番号:84及び/又は85、及び配列番号:86、及び配列番号:87及び/又は88、及び配列番号:89、及び配列番号:90及び/又は91、及び配列番号:92、及び配列番号:120又は121又は122又は123又は124又は125の核酸配列を有する。
【0095】
【表19】
【0096】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、軽鎖可変ドメインをコードする核酸及び重鎖可変ドメインをコードする核酸は、1回のマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応で異なる5’及び3’プライマーを組み合わせることにより1回のポリメラーゼ連鎖反応において得られる。
【0097】
本発明の別の態様は、単一細胞から少なくとも免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 1個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを含むプライマーセット用いて逆転写及びポリメラーゼ連鎖反応を一工程で行うことを含む方法である。
【0098】
本方法の一実施態様においては、マルチプレックスワンチューブ逆転写遺伝子特異的プライマーポリメラーゼ連鎖反応(RT−GSP−PCR)で用いられる5’プライマーは、免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合する。別の実施態様においては、RT−GSP−PCR反応で用いられるプライマーは、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与える。このオーバーハングは、in vitro翻訳に用いる核酸を生成するための任意の後続のオーバーラッピングポリメラーゼ連鎖反応に有用である。一実施態様においては、本方法は、RT−GSP−PCR反応を用いて免疫グロブリン重鎖可変ドメインを得るための方法である。一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインは免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインである。
【0099】
一実施態様においては、免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るためのマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられるプライマーは、配列番号:142及び143の核酸配列を有する。
【0100】
【表20】
【0101】
本発明に記載の方法の一実施態様においては、免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るためのマルチプレックスワンチューブRT−GSP−PCRで用いられるプライマーは、配列番号:144及び145の核酸配列を有する。
【0102】
【表21】
【0103】
さらに、本発明に記載のPCR方法と無細胞in vitro翻訳システムの組み合わせを用いて、同種免疫グロブリンVH及びVLドメインをコードする核酸を単一細胞から得ることができ、これにより、コード免疫グロブリン可変ドメインが、免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるのに十分な量でFabフラグメントとして得られることが明らかとなった。単一細胞から得られるごく少量のmRNAを増幅させるために、個々のPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)は極めて高感度でなければならず、二以上のPCRを組み合わせて実施する必要がある。
【0104】
本発明に記載の「無細胞in vitro翻訳システム」はリボソーム、tRNA、ATP、CGTP、ヌクレオチド及びアミノ酸を含有する原核細胞又は真核細胞、好ましくは原核細胞の無細胞ライセートを意味する。一実施態様においては、原核生物はE.coliである。
【0105】
無細胞in vitro翻訳は長年最高水準にある公知の方法である。Spirin等は1988年に、比較的多量にタンパク質合成が行われる連続フロー無細胞(CFCF)翻訳及び結合した転写/翻訳システムを開発した(Spirin, A.S., et al., Science 242 (1988) 1162-1164)。このような無細胞in vitro翻訳のために、リボソームを含有する細胞ライセートを翻訳又は転写/翻訳に用いた。E.coliから得られるこのような無細胞抽出物は、例えば、Zubay(Zubay, G., et al., Ann. Rev. Genetics 7 (1973) 267-287)によって開発され、Pratt(Pratt, J.M., et al., Nucleic Acids Research 9 (1981) 4459-4474; and Pratt, J.M., et al., Transcription and Translation: A Practical Approach, Hames and Higgins (eds.), 179-209, IRL Press, 1984)により用いられた。さらに、無細胞タンパク質合成の開発は、US 5,478,730、US 5,571,690、EP 0 932 664、WO 99/50436、WO 00/58493及びWO 00/55353に報告されている。真核生物無細胞発現系は、例えば、Skup, D. and Millward, S., Nucleic Acids Research 4 (1977) 3581-3587; Fresno, M., et al., Eur. J. Biochem. 68 (1976) 355-364; Pelham, H.R. and Jackson, R.J., Eur. J. Biochem. 67 (1976) 247-256及びWO 98/31827に報告されている。
【0106】
単一細胞からのIgGアイソタイプ免疫グロブリンの同種IgG HC(免疫グロブリンG重鎖)及びIgG LC(免疫グロブリンG軽鎖)をコードする核酸の増幅、それに続く得られた核酸のin vitro翻訳により、免疫グロブリンのFabフラグメントを得ることに基づき、得られる微量のmRNAから単一細胞により産生される免疫グロブリンについての情報を得る高感度な方法が提供される。本発明に記載の方法により単一B細胞から発現される免疫グロブリンの研究が可能となり、従って、ハイブリドーマ技術とは対照的により多くの多様性が提供される。さらに、同種免疫グロブリン可変ドメイン又は免疫グロブリン鎖が、抗原接触後の成熟B細胞から得られるので、高特異的及び高精度に構築された免疫グロブリンをコードする核酸を選択的に得ることができる。
【0107】
従って、本発明の一態様は、免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、
− 場合により、得られた核酸を含む直鎖発現マトリックスを生成すること、
− 核酸をin vitroで翻訳することにより免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法である。
【0108】
一実施態様においては、免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸は、本発明の前の態様に記載の方法を用いて得られる。本発明に記載の方法の一実施態様においては、単一細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ることは、単一B細胞から同種IgG HC及びIgG LC(ヒトIgGアイソタイプ)を増幅させるために本発明に記載のマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応を含む。得られた核酸によりコードされる免疫グロブリンの結合特性を特徴づけるため、その後核酸をE.coliライセートでin vitro翻訳して、免疫グロブリンFabフラグメントにする。
【0109】
一般的に、本発明の一態様は、下記の工程:i)末梢血からヒトCD19でコートした磁気マイクロビーズを用いてB細胞を単離すること、ii)限界希釈又はFACSにより単一細胞を沈着させること、iii)個々のB細胞のmRNAを抽出すること、iv)個々のB細胞から産生される免疫グロブリンの少なくとも可変ドメインをコードする核酸を得ること、v)直鎖mRNAテンプレートをin vitroで翻訳すること、場合により、vi)免疫グロブリン又は免疫グロブリンフラグメントの結合特性を特徴づけることを用いる方法である。
【0110】
本発明に記載の方法を用いて、単一細胞から得られる可変ドメインを含む免疫グロブリンの組換え産生のために、得られた軽鎖及び重鎖免疫グロブリンの可変ドメインをコードする核酸をさらに改変する。まず、可変ドメインをコードする核酸を、免疫グロブリン定常領域をコードする核酸と結合させる。一実施態様においては、軽鎖可変ドメインをコードする核酸を、配列番号:03のヒトκ軽鎖定常ドメインをコードする核酸又は配列番号:04のヒトλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸と結合させる。別の実施態様においては、重鎖可変ドメインをコードする核酸を、配列番号:01のヒト免疫グロブリンG1(IgG1)定常領域をコードする核酸又は配列番号:02のヒト免疫グロブリンG4(IgG4)定常領域をコードする核酸と結合させる。別の実施態様においては、重鎖可変ドメインをコードする核酸を、ヒト免疫グロブリンG1(IgG1)定常領域1(CH1)をコードする核酸と結合させる。
【0111】
完全免疫グロブリン重鎖及び軽鎖又はそのフラグメントをコードする核酸分子は以下構造遺伝子として言及する。これらは同じ発現プラスミド上に位置することができ、又は代わりに異なる発現プラスミド上に位置することができる。免疫グロブリンが培養培地へ分泌される前に、従って、発現細胞内で免疫グロブリン又はFabフラグメントの構築が起こる。従って、一実施態様においては、免疫グロブリン鎖をコードする核酸分子は同じ宿主細胞で発現される。組換え発現後、免疫グロブリンの混合物が得られる場合、この混合物は当業者に公知の方法により分離し精製することができる。これらの方法は、免疫グロブリン精製で十分に確立され広く使用されており、単独で又は組み合わせて用いられている。このような方法は、例えば、微生物由来のタンパク質を用いた親和性クロマトグラフィー(例えば、タンパク質A又はタンパク質G親和性クロマトグラフィー)、イオン交換クロマトグラフィー(例えば、カチオン交換(カルボキシメチル樹脂)、アニオン交換(アミノエチル樹脂)及び混合型交換クロマトグラフィー)、チオール基吸着(例えば、β−メルカプトエタノール及び他のSHリガンドによる)、疎水性相互作用又は芳香族吸着クロマトグラフィー(例えば、フェニルセファロース、アザアレノフィリック(aza-arenophilic)樹脂又はm−アミノフェニルボロン酸による)、金属キレート親和性クロマトグラフィー(例えば、Ni(II)及びCu(II)親和性物質による)、サイズ排除クロマトグラフィー及び分取電気泳動(ゲル電気泳動、キャピラリー電気泳動など)である(Vijayalakshmi, M.A., Appl. Biochem. Biotech. 75 (1998) 93-102)。
【0112】
当業者に公知の組換え技術を用いて、コンジュゲートを核酸/遺伝子レベルでオーダーメードすることができる。免疫グロブリン軽鎖及び重鎖をコードする核酸配列は公知であり、例えば、ゲノムデーターベースから入手することができる。本発明に記載の方法を用いて得られる免疫グロブリンの発現のための発現プラスミド構築に必要なエレメントは、例えば、免疫グロブリン軽鎖用発現カセット、免疫グロブリン重鎖用発現カセット(あるいは、軽鎖及び重鎖構造遺伝子を同じ発現カセットに、例えば、バイシストロン性発現エレメントとして含むことができる)、選択マーカー及びE.coli複製並びに選択ユニットである。発現カセットは通常、プロモーター、分泌シグナル配列をコードするDNAセグメント、構造遺伝子及びターミネータ/ポリアデニル化シグナルを含む。エレメントは免疫グロブリンの全鎖をコードする1個のプラスミド又は各々が免疫グロブリンの一個の鎖をコードする2個のプラスミドのいずれかに動作可能に連結した形態で集められている。構造遺伝子の発現のために、プラスミドを適切な宿主細胞に導入する。タンパク質がCHO細胞、NS0細胞、Sp2/0細胞、COS細胞、HEK細胞、K562細胞、BHK細胞、PER.C6(登録商標)細胞などの哺乳類細胞で産生される。一実施態様においては、コンジュゲートはCHO細胞、又はBHK細胞、又はHEK細胞、又はNS0細胞で発現される。プラスミドの調節エレメントはこれらが選択した宿主細胞で機能するようにして選択する必要がある。発現のために、宿主細胞を当業者に公知の免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養する。発現した免疫グロブリン鎖は機能的に構築されて、完全にプロセシングされた免疫グロブリンは培地中に分泌される。
【0113】
「発現プラスミド」は宿主細胞に含まれる構造遺伝子の発現に必要な全てのエレメントを提供する核酸である。典型的には、発現プラスミドは、プロモーター、構造遺伝子及びポリアデニル化シグナルを含む転写ターミネータをそれぞれ含む対象の構造遺伝子の発現のために、原核生物プラスミド増殖ユニット(例えば、E.coliの場合には複製起点及び選択マーカーを含む)、真核生物選択マーカー、及び一以上の発現カセットを含む。遺伝子発現は通常、プロモーターの制御下に置かれ、このような構造遺伝子はプロモーターに「動作可能に連結される」と言われる。同様に、調節エレメントがコアプロモーターの活性をモジュレーションする場合、調節エレメント及びコアプロモーターは動作可能に連結される。
【0114】
「動作可能に連結される」は2以上の構成成分の並置を指し、ここで、そのように記載の構成成分は、これらを意図する様式で機能させることが可能な関係にある。用語「動作可能な形態で連結」は、個々の核酸が最後の核酸に動作可能に連結されるように2以上の個々の核酸を組み合わせることを意味する。例えば、プロモーター及び/又はエンハンサーは、連結配列の転写を制御又はモジュレーションするためにcisで作用する場合コード配列に動作可能に連結される。一般的に、必ずしも必要ではないが、「動作可能に連結」しているDNA配列は連続的であり、第一ドメイン及び第二ドメイン、例えば、免疫グロブリン可変ドメイン及び免疫グロブリン定常ドメイン又は定常領域などの2個のタンパク質コード領域に連結する必要がある場合は、連続的でイン(リーディング)フレームである。ポリアデニル化部位が、転写がコード配列を経由してポリアデニル化配列まで進行するようにコード配列の下流末端に位置している場合、コード配列に動作可能に連結される。翻訳終始コドンが、翻訳がコード配列を経由して終始コドンまで進行し、そこで終結するようにコード配列の下流末端(3’末端)に位置している場合、エキソン核酸配列に動作可能に連結される。連結は当該技術分野で公知の組換え方法、例えば、PCR方法を用いて及び/又は便利な制限酵素認識部位でのライゲーションにより達成される。便利な制限酵素認識部位が存在しない場合、次に、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが従来の慣習に習って使用される。
【0115】
従って、本発明の一態様は、免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− この細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と配列番号:03又は配列番号:04の免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を動作可能形態で連結し、重鎖可変ドメインをコードする核酸と配列番号:01又は配列番号:02の免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を動作可能形態で連結すること、
− 前工程の核酸で真核又は原核細胞をトランスフェクションすること、
− トランスフェクション細胞を免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法である。
【0116】
用語「の発現に適した条件下」は、異種ポリペプチドを発現することができる細胞の培養に使用される条件であり、且つ、当業者に公知であるか又は容易に確定することができる条件を意味する。これらの条件を培養する細胞の種類及び発現するポリペプチドの種類に従って変更することができることは当業者に公知である。通常、細胞は、例えば、20℃〜40℃の温度で、コンジュゲートを効果的に産生するのに十分な期間、例えば4日〜28日、0.01リッター〜107リッターの容量で培養する。
【0117】
下記の実施例、配列表及び図は本発明の理解を容易にするために提供し、その真の範囲を添付の特許請求の範囲に記載する。本発明の精神から逸脱することなく記載の手順を変更することが可能であることを理解されたい。
【0118】
配列表の説明
配列番号:01 ヒトIgG1重鎖定常領域
配列番号:02 ヒトIgG4重鎖定常領域
配列番号:03 ヒトIgGκ軽鎖定常ドメイン
配列番号:04 ヒトIgGλ軽鎖定常ドメイン
配列番号:05 プライマーVHL−1変異体1
配列番号:06 プライマーVHL−1変異体2
配列番号:07 プライマーVHL−2変異体1
配列番号:08 プライマーVHL−2変異体2
配列番号:09 プライマーVHL−3
配列番号:10 プライマーVHL−4変異体1
配列番号:11 プライマーVHL−4変異体2
配列番号:12 プライマーVHL−5
配列番号:13 プライマーVHL−6
配列番号:14 プライマーhuCH−II変異体1
配列番号:15 プライマーhuCH−II変異体2
配列番号:16 プライマーVkL−1
配列番号:17 プライマーVkL−2
配列番号:18 プライマーVkL−3
配列番号:19 プライマーVkL−4
配列番号:20 プライマーhuCk−II
配列番号:21 プライマーVlL−1
配列番号:22 プライマーVlL−2
配列番号:23 プライマーVlL−3変異体1
配列番号:24 プライマーVlL−3変異体2
配列番号:25 プライマーVlL−3変異体3
配列番号:26 プライマーVlL−3変異体4
配列番号:27 プライマーhuCl−II変異体1
配列番号:28 プライマーhuCl−II変異体2
配列番号:29 プライマーVHL−1a変異体1
配列番号:30 プライマーVHL−1a変異体2
配列番号:31 プライマーVHL−1b
配列番号:32 プライマーVHL−1c変異体1
配列番号:33 プライマーVHL−1c変異体2
配列番号:34 プライマーVHL−1d変異体1
配列番号:35 プライマーVHL−1d変異体2
配列番号:36 プライマーVHL−2a
配列番号:37 プライマーVHL−2b変異体1
配列番号:38 プライマーVHL−2b変異体2
配列番号:39 プライマーVHL−3a変異体1
配列番号:40 プライマーVHL−3a変異体2
配列番号:41 プライマーVHL−3b
配列番号:42 プライマーVHL−3c
配列番号:43 プライマーVHL−4a変異体1
配列番号:44 プライマーVHL−4a変異体2
配列番号:45 プライマーVHL−4b
配列番号:46 プライマーVHL−5a変異体1
配列番号:47 プライマーVHL−5a変異体2
配列番号:48 プライマーVHL−6a
配列番号:49 プライマーVHL−7a変異体1
配列番号:50 プライマーVHL−7a変異体2
配列番号:51 プライマーhuCH−III変異体1
配列番号:52 プライマーhuCH−III変異体2
配列番号:53 プライマーVkL−1a変異体1
配列番号:54 プライマーVkL−1a変異体2
配列番号:55 プライマーVkL−1b変異体1
配列番号:56 プライマーVkL−1b変異体2
配列番号:57 プライマーVkL−1c変異体1
配列番号:58 プライマーVkL−1c変異体2
配列番号:59 プライマーVkL−1d
配列番号:60 プライマーVkL−2a
配列番号:61 プライマーVkL−2b変異体1
配列番号:62 プライマーVkL−2b変異体2
配列番号:63 プライマーVkL−3a変異体1
配列番号:64 プライマーVkL−3a変異体2
配列番号:65 プライマーVkL−3b
配列番号:66 プライマーVkL−3c
配列番号:67 プライマーVkL−4a
配列番号:68 プライマーVkL−5a
配列番号:69 プライマーVkL−6a
配列番号:70 プライマーVkL−6b
配列番号:71 プライマーhuCk−III
配列番号:72 プライマーVlL−1a
配列番号:73 プライマーVlL−1b変異体1
配列番号:74 プライマーVlL−1b変異体2
配列番号:75 プライマーVlL−1c
配列番号:76 プライマーVlL−2a
配列番号:77 プライマーVlL−3a変異体1
配列番号:78 プライマーVlL−3a変異体2
配列番号:79 プライマーVlL−3b
配列番号:80 プライマーVlL−3c
配列番号:81 プライマーVlL−3d
配列番号:82 プライマーVlL−4変異体1
配列番号:83 プライマーVlL−4変異体2
配列番号:84 プライマーVlL−5変異体1
配列番号:85 プライマーVlL−5変異体2
配列番号:86 プライマーVlL−6
配列番号:87 プライマーVlL−7変異体1
配列番号:88 プライマーVlL−7変異体2
配列番号:89 プライマーVlL−8
配列番号:90 プライマーVlL−4/9変異体1
配列番号:91 プライマーVlL−4/9変異体2
配列番号:92 プライマーVlL−10
配列番号:93 プライマーhuCl−III
配列番号:94 プライマーhuVH−1
配列番号:95 プライマーhuVH−2
配列番号:96 プライマーhuVH−3変異体1
配列番号:97 プライマーhuVH−3変異体2
配列番号:98 プライマーhuVH−3変異体3
配列番号:99 プライマーhuVH−3変異体4
配列番号:100 プライマーhuVH−4変異体1
配列番号:101 プライマーhuVH−4変異体2
配列番号:102 プライマーhuVH−4変異体3
配列番号:103 プライマーhuVH−4変異体4
配列番号:104 プライマーhuCH−2変異体1
配列番号:105 プライマーhuCH−2変異体2
配列番号:106 プライマーhuCH−2変異体3
配列番号:107 プライマーhuVk−1変異体1
配列番号:108 プライマーhuVk−1変異体2
配列番号:109 プライマーhuVk−1変異体3
配列番号:110 プライマーhuVk−1変異体4
配列番号:111 プライマーhuVk−2変異体1
配列番号:112 プライマーhuVk−2変異体2
配列番号:113 プライマーhuVk−3
配列番号:114 プライマーhuVk−4
配列番号:115 プライマーhuCk−2
配列番号:116 プライマーhuVl−1
配列番号:117 プライマーhuVl−2
配列番号:118 プライマーhuVl−3変異体1
配列番号:119 プライマーhuVl−3変異体2
配列番号:120 プライマーhuCl−2変異体1
配列番号:121 プライマーhuCl−2変異体2
配列番号:122 プライマーhuCl−2変異体3
配列番号:123 プライマーhuCl−2変異体4
配列番号:124 プライマーhuCl−2変異体5
配列番号:125 プライマーhuCl−2変異体6
配列番号:126 プライマーLTGS−lfp
配列番号:127 プライマーLTGS−rfp
配列番号:128 プライマーVH−1a
配列番号:129 プライマーVH−1b
配列番号:130 プライマーVH−1c
配列番号:131 プライマーVH−1d
配列番号:132 プライマーVH−2a
配列番号:133 プライマーVH−2b
配列番号:134 プライマーVH−3a
配列番号:135 プライマーVH−3b
配列番号:136 プライマーVH−3c
配列番号:137 プライマーVH−4a
配列番号:138 プライマーVH−4b
配列番号:139 プライマーVH−5a
配列番号:140 プライマーVH−6a
配列番号:141 プライマーVH−7a
配列番号:142 プライマーVH−lfp
配列番号:143 プライマーVH−rfp
配列番号:144 プライマーVL(k)−lfp
配列番号:145 プライマーVL(k)−rfp
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】ヒト免疫グロブリンG重鎖遺伝子座(A)、ヒト免疫グロブリンκ軽鎖遺伝子座(B)及びヒト免疫グロブリンλ軽鎖遺伝子座(C)の染色体局在。
【図2】第一及び第二プライマーセットを用いた免疫グロブリン軽鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図3】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG LC(κ)、55℃;2−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図4】2回のポリメラーゼ連鎖反応における異なる第二プライマーセットを用いた免疫グロブリン重鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図5】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図6】2回のポリメラーゼ連鎖反応における同一のプライマーセットを用いた免疫グロブリン重鎖のポリメラーゼ連鎖反応のスキーム。
【図7】異なるプライマーセットを用いた第一(A)及び第二(B)ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;(A)1−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;2−IgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRI;(B)1−IgG LC(κ)、55℃;2−IgG HC及びIgG LC(κ)、55℃;3−IgG HC、55℃;4−IgG HC及びIgG LC(κ)、50℃;5−IgG LC(κ)、50℃;6−IgG HC、50℃;7−H2O PCRII;8−H2O PCRI。
【図8】C末端HA−tagで例示されるオーバーラッピング伸長PCRのスキーム。
【図9】実施例1〜3に示す3回の異なるポリメラーゼ連鎖反応の直鎖発現構築物のアガロースゲル解析。
【図10】in vitro翻訳後の本発明に記載の3回のポリメラーゼ連鎖反応の結果の比較(450nmで測定、基準波長620nm、バックグラウンドの減算)。
【図11】2個の同一のプライマーセットを用いた第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析;1−RTなし、2〜37−単一細胞、38−H2O cDNA、39−コントロールmRNA、40−H2O コントロールmRNA、41−H2O PCRII、42−IgG HC/IgG LC(κ)、43−IgG HC、44−IgG LC(κ)、45−H2O PCRI、46−GFP、46−H2O GFP。
【図12】1個の可変及び1個の固定プライマーセットを用いた第二ポリメラーゼ連鎖反応後の増幅核酸のアガロースゲル解析。
【図13】1個の可変及び1個の固定プライマーセットを用いた第二ポリメラーゼ連鎖反応後の核酸から得られた直鎖発現構築物のアガロースゲル解析。
【図14】1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた単一細胞のIgG特異的2工程ポリメラーゼ連鎖反応のin vitro翻訳の結果。
【図15】単一細胞のポリメラーゼ連鎖反応及びin vitro翻訳後のヒトFab免疫グロブリンフラグメント;1〜8は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)のin vitro翻訳後及びIgG HCコントロール試料添加後のヒトFabフラグメント、9〜11は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)のin vitro翻訳後のヒトFabフラグメント、12は単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(λ)のin vitro翻訳後のヒトFabフラグメント。
【図16】1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応及びin vitro翻訳後のウェスタンブロット解析;(A)1はIgG HCと組み合わせた単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC、2〜4は単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC、5〜7はIgG HC/IgG LC(κ)コントロール、8はIgG HC及びIgG LC(κ)コントロール、9はネガティブコントロール、10は標準Fab0.5ng/ml、11は標準Fab50ng/ml、12は標準Fab5μg/ml;(B)1は標準Fab5μg/ml、2は標準Fab50ng/ml、3は標準Fab0.5ng/ml、3はネガティブコントロール、5〜12はIgG HCと組み合わせた単一細胞から得られたIgG HC/IgG LC。
【0120】
実施例
材料及び方法
B細胞及び形質細胞
このアプローチに使用する試料は、健康なドナーの末梢血及びヒトIgGトランスジェニックマウスの組織(脾臓、骨髄)から単離したB細胞及び形質細胞である。まず、別々のチューブのDMEM中に固体組織を手動で細かく破砕させる。この後の工程では、低温で優しく扱って細胞の溶解を最小限に抑える。これはその後の目的細胞の陽性単離とmRNA源をインタクトに維持するために重要である。細かく破砕した組織に細胞分離媒体を注意深く添加して懸濁し、異なる細胞型の勾配を作る(Leucosepチューブ(Greiner Bio-One)中、Ficollを用いた密度勾配)。形質細胞(PBMC)及びリンパ球を濃縮するために、遠心分離機中、22℃、800×gで20分間冷分離媒体を用いて懸濁細胞をブレーキなしで遠心分離して精製する。細胞を冷バッファー(PBS(リン酸緩衝生理食塩水)、0.1%(w/v)BSA(ウシ血清アルブミン)、2mMEDTA(エチレンジアミン四酢酸))で洗浄し、上清を注意深く除去してリンパ球だけを得る。次に、リンパ球をPBSに再懸濁し、注意深くピペッティングして混合する。遠心分離を22℃、800×gで5分間行って、細胞をペレットにする。B細胞及び形質細胞をマウス及びヒトFCブロッカーで前処理して、細胞表面への抗体の非特異的結合をブロックする。細胞をバッファー(PBS、0.1%(w/v)BSA、2mMEDTA)で一度洗浄し、遠心分離した後PBSに再懸濁する。CD19+B細胞及びCD138+形質細胞のみを使用した。mRNAの分解を防ぐためにRNAse阻害剤を添加する。製造業者の説明書に従って、マウスの脾臓からCD19+B細胞の陽性単離を行った(Dynal Biotech Dynabeads CD19 Pan B)。CD138+形質細胞の選択を製造業者の説明書に従って行った(StemCell Technologies EasySep Human CD138 Selection Kit)。
【0121】
限界希釈培養又はFACSソーティング法よる単一細胞への分離:
細胞をカウントし、限界希釈培養法により96ウェルPCRプレート又は384ウェルプレートのウェルに単一細胞で沈着させる。プレートをPCRフィルムで密閉した後、直ちに氷上に置く。ソーティング細胞はすぐさまRT−PCR(逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)に使用することができる。あるいは短期使用に−20℃又は長期使用に−80℃で保存してもよい。FACSAria細胞ソーティングシステム(Becton Dickinson)で単一細胞ソーティングを行った。CD19陽性に染色された細胞、CD38陽性に強く染色された細胞及びすぐさまCD45陽性に染色された細胞を選取して形質細胞(PC)と指定した。前方散乱/側方散乱及び側方散乱幅/側方散乱高に関してさらなるゲーティングを行い、生リンパ球及びシングレットをそれぞれ選択した。逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、バッファー及びdNTP以外の必要な全てのPCR試薬(容量10μl)を含有した96ウェルPCRプレート(Eppendorf)に単一細胞を直接分注し、今後の処理用に−80℃で凍結した。
【0122】
細胞溶解及び逆転写:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、B細胞及び形質細胞を逆転写反応の前に溶解する必要がある。
【0123】
【表22】
【0124】
【表23】
【0125】
溶解した細胞を含むプレートを遠心分離機で30秒間簡単にスピンして、液体及びウェルの底の細胞を回収する。RT(逆転写酵素)反応及び全てのPCR反応を96ウェルプレートで行った。テンプレート5μlを含有する各ウェルに、水2.5μl、冷RT反応バッファー1μl、dNTP1μl、RNAse阻害剤(40U/μl)0.25μl、逆転写酵素(20U/μl)0.25μl(これらは全て、First Strand cDNA Synthesis Kit(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)を添加し、総容量10μlにする。RTプレートを簡単に遠心し、氷上からBlock cycler(LightCycler 480, Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に移し、加熱した蓋で55℃にして60分間、85℃に加熱して2分間放置する(逆転写酵素を不活化する)。cDNAの分解を防ぐために逆転写反応の直後の一本鎖cDNAを−20℃で保存した。並行して、細胞を含まないコントロール合成反応を行ってコンタミネーションを試験した。
【0126】
【表24】
【0127】
細胞溶解及び逆転写:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、B細胞及び形質細胞を逆転写反応の前に溶解する必要がある。
【0128】
第一PCR:
【表25】
【0129】
【表26】
【0130】
第二PCR:
次に、κ及びλ軽鎖並びに重鎖を、下記のプロトコールに従って、二回目のPCRで増幅させた。セミネステッドプライマーを用いて第二PCRを行い、cDNAコピーの量を増やし、そして軽鎖(LC)及び重鎖(HC)の可変部分からCH1領域までだけを増幅させた。HC増幅は16プライマーを用いて、κLCは17プライマーを用いて、そしてλLCは14プライマーを用いて行った。遺伝子を第一PCR産物2μl、ハイフィディリティPCRマスター10μl(各dNTP0.4μM、2倍濃縮反応バッファー(3mMMgCl2を有する)、各プライマー0.02μM含有)(これらは全て、ハイフィディリティPCRマスターキット(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)を用いて総容量20μlで、第二PCRプログラムに従って増幅させた:95℃で2分間、94℃で15秒間を45サイクル、55℃で30秒間、72℃で1分間、その後72℃で10分間。
【0131】
【表27】
【0132】
【表28】
【0133】
【表29】
【0134】
1工程マルチプレックスRT−GSP(遺伝子特異的プライマー)−PCR反応:
ポリメラーゼ連鎖反応でmRNAを増幅させるために、逆転写酵素、DNAポリメラーゼ、バッファー及びdNTP以外の必要な全てのPCR試薬(容量10μl)を含有した96ウェルPCRプレート(Eppendorf)のウェルにB細胞及び形質細胞を直接分注し、その後の処理のために−80℃で凍結する必要がある。
【0135】
RT工程:
逆転写及びPCRを1工程(1工程マルチプレックスRT−PCR)で実施した。単離、ソーティングし保存した細胞を逆転写又はRT−PCRの原料として用いた。全ての必要な試薬を室温で融解させた。全てのプライマーをMOLBIOL TIB GmbH研究所で合成した。プレート及びその他の全ての試薬は全ての作業中氷上に保持した。cDNA合成のために、伸長した遺伝子特異的プライマーを直接使用した。酵素コンプレックスは2個のSensiscript逆転写酵素及び1個のOmniscriptポリメラーゼ(Qiagen OneStep RT PCR)から構成される。cDNAへのmRNAの書き換えをSensiscriptコンプレックス(Qiagen OneStep RT PCR)により行い、cDNAの増幅はHotStarTaqDNAポリメラーゼ(Qiagen OneStep RT PCR)を用いて行った。このHotStarTaqDNAポリメラーゼは、サーマス・アクアチクス(Thermus aquaticus)から最初に単離され、E.coliで発現させた、化学的に組換えた94kDaのDNAポリメラーゼ(デオキシヌクレオシド三リン酸:DNAデオキシヌクレオチジルトランスフェラーゼ、EC 2.7.7.7)の形態である。細胞を96ウェルPCRプレートにソーティングし、PCRグレードのH2O5μl、VH及びVL用の0.1μMプライマー1μl、RNAse阻害剤(20U/反応)1μl及び1.5mMのトリス3μlを加えた10μlの容量で保存した。PCR反応を行うため別の10μlを添加する前に、−60℃で保存した細胞を簡単に遠心し(1400rpmで20秒間)、液体及びウェルの底の細胞を回収した。
【0136】
【表30】
【0137】
【表31】
【0138】
10μl/ウェルのマスターミックス2を細胞に添加した。マスターミックス2にはH2O(PCRグレード)2.2μl、1×バッファー4μl、各400μMのdNTP0.8μl、0.25×Q溶液1μl、酵素コンプレックス1.2μl及びRNAse阻害剤(20U)1μlを含めた。
【0139】
【表32】
【0140】
【表33】
【0141】
PCR産物の精製:
次のオーバーラッピングPCR(第三PCR)でin vitro翻訳のための直鎖テンプレート生成の効率を改善するために、下流アプリケーションでの干渉を避けるために、PCR増幅に使用した未取込みのプライマー、dNTP、DNAポリメラーゼ及び塩を除去することにより先の増幅PCR産物の精製を行った。Agencourt AMPureを使用した。バッファーを最適化し、100bp以上のPCR単位複製配列を常磁性ビーズに選択的に結合させる。過剰のオリゴヌクレオチド、ヌクレオチド、塩及び酵素は簡単な洗浄操作で除去することができる。得られた精製PCR産物は基本的に不純物を含まず、下記のアプリケーションに使用することができる:蛍光DNA配列決定(キャピラリー電気泳動など)、マイクロアレイスポッティング、クローニング及びプライマー伸長遺伝子型決定法。96ウェルフォーマットのためのワークフローをバッファー中に保存のビーズを穏やかに振とうさせて開始し、沈殿した可能性のある任意の磁気粒子を再懸濁した。正確な容量のビーズ溶液36μlを試料20μlに添加し、混合物を浮き沈みさせながら10回ピペッティングした。この後の工程は10分間のインキュベーションであり、その後反応プレートを磁気プレート上に10分間置いてビーズを溶液から分離させた。透明な溶液(上清)を反応プレートから吸引し廃棄した。ビーズ−cDNA洗浄のために、70%エタノール200μlを各ウェルに分注し、室温で少なくとも30秒間インキュベーションした。エタノールを吸引し廃棄した。洗浄工程を2回行い、次に反応プレートを室温で20分間風乾させた。その後、溶離バッファー40μlを添加し、再度混合物を浮き沈みさせながら10回ピペッティングした。cDNAを磁気ビーズから解離させた後、精製DNAを新たなプレートに移した。
【0142】
第三PCR:
その後、第二PCRの増幅DNAをオーバーラッピング伸長PCR方法により転写/翻訳工程に必要な下記の成分と結合させた:リボソーム結合部位(RBS)、T7プロモーター及びT7ターミネータ配列。このPCRのために、第二PCR2μlを、下記を含有する最終容量20μlにした:水10.7μl、MgCl2(10mM)を含む10×反応バッファー2μl、DMSO0.8μl、dNTP(各10mM)0.5μl、T7プロモーター及びターミネータプライマー(各6μM)1.6μl、C末端HA−Tagプライマー0.4μl及び酵素ブレンド0.4μl(これらは全て、RTS E.coli Linear Template Generation Set, HA-Tag(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)に含まれる)。最後に、オーバーラッピングPCR産物をテンプレートとして使用して、Escherichia coliライセートを用いてin vitro転写を行い、得られた機能的Fabを酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)によりF(ab’)2IgGに対してスクリーニングした。
【0143】
【表34】
【0144】
【表35】
【0145】
ゲル電気泳動:
ゲル電気泳動解析(1%アガロースゲル、Invitrogen Corp., USA)を行って、適切なコントロールを用いてcDNAテンプレートの増幅及び特異性を評価した。
【0146】
【表36】
【0147】
in vitro転写及び翻訳:
in vitroでの転写及び翻訳の組み合わせを、記載の構成成分(表12参照)を用いて、RTS 100 E.coli Disulfide Kit(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を使用し製造業者のプロトコールに従って実施した。各オーバーラッピングPCR産物4μlを、RTS Proteo Master Instrument(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)で、総容量50μl、37℃で20時間かけて転写し翻訳した。コントロール反応を同条件下、cDNAテンプレート不含で実施した。GFP(緑色蛍光タンパク質)ベクターをポジティブコントロールとしてオートラジオグラフィー反応システムに添加した。in vitro転写/翻訳後、タンパク質を正確にフォールディング、成熟させるために、反応混合物50μlをPBS(1:2.5希釈)75μlに移し、4℃で一晩インキュベーションした。
【0148】
【表37】
【0149】
ELISA:
384ウェルプレート(Nunc GmbH & Co. KG, Thermo Fisher Scientific, Langenselbold, Germany)をヤギ抗ヒトIgGFabフラグメント(Bethyl Laboratories Inc.が製造、Biomol GmbH, Hamburg, Germanyから得た、1mg/1ml)50μl(PBS中、1:1000)でコートし、4℃で一晩インキュベーションした。プレートを洗浄液(100μlのPBST(リン酸緩衝生理食塩水−ツイーン20))で3回洗浄し、60μlのブロッキング溶液(0.25%CroteinC(w/v)/0.5%ツイーン(w/v)/PBS)を添加し、室温で1時間インキュベーションした。別の洗浄工程(3×100μlのPBST)を行い、37.5μlの試料を移し、同様に、37.5mlのネガティブコントロール(in vitro転写/翻訳からのネガティブコントロール)及び0.75μlのヒト組換えFabフラグメント(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)を含有する37.5μlのポジティブコントロールを移した。試料を1:3希釈に滴定した。プレートを室温で1.5時間インキュベーションした。洗浄工程(3×100μlのPBST)後、25μlのヤギ抗ヒトIgGF(ab’)2(Dianova, Hamburg, Germany;0.8mg/ml(ブロッキング溶液で1:2000希釈))を添加し、室温で1時間インキュベーションした。最後の洗浄工程(3×100μlのPBST)を行い、25μlのTMB(POD基質、Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany, Art-No: 1 484 281)を各ウェルにピペットで入れた。2〜3分後、405nm及び495nmで吸収シグナルを検出した(Tecan, Safire 2; Tecan Deutschland GmbH, Crailsheim, Germany)。
【0150】
フローサイトメトリー解析及び細胞ソーティング:
FACS解析及び細胞ソーティングのために、下記の抗原に対してビオチン化モノクローナル抗体又はFITC(フルオレセインイソチオシアネート)、PE(フィコエリトリン)若しくはAPC(アロフィコシアニン)コンジュゲートモノクローナル抗体を使用した:CD3(UCHT1)、CD4(13B8.2)、CD8(B9.11)、CD40(MAB89)、CD80(MAB104)、CD83(HB15a)、CD86(HA5.2B7)(全てImunotech/Beckman Coulter、Marseille, Franceから入手可能)、CD19(HIB19)、CD20(2H7)、CD34(581)、IL−3Ra/CD123(9F5)、CD11c(B−ly6)、CD14(M5E2)、CD24、CD22a、CD38、CD138(全てBD Pharmingen, San Diego, CA, USAから入手可能)、CD45(HI30)、CD45RA(MEM56)、HLA−DR(TU36)(全てCaltag, Burlingame, CA, USAから入手可能)、TLR2(TL2.1)、TLRR4(HTA125)、TCRab(IP26)、(全てBioscience, San Diego, CAから入手可能)、BDCA−1、BDCA−2、BDCA−4、CD25(4E3)(全てMiltenyi Biotec, Bergisch Gladbach, Germanyから入手可能)、IgM(Jackson Immunoresearch, West Grove, PA, USA)、CCR7(3D12、M. Lipp, Berlin, Germanyより提供)。IOTest Beta MarkをVb解析に使用した(Imunotech/Beckman Coulter)。ストレプトアビジンコンジュゲートFITC、PE又はAPC(全てBD Pharmingen)をビオチン化抗体の可視化に使用した。死細胞をヨウ化プロピジウム染色により除外した。適切なアイソタイプ適合の無関係のコントロールmAbを使用してバックグラウンド染色のレベルを決定した。細胞をFACS Caliburを用いて解析し、FACSAria(Becton Dickinson Immunocytometry Systems, Mountain View, CA, USA)でソーティングした。
【0151】
実施例1
1個の固定プライマーセット及び1個の変更プライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0152】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。ポリメラーゼ連鎖反応で用いた第一及び第二プライマーセットの3’プライマーは同一であった。第一及び第二プライマーセットの5’プライマーは、第一の5’プライマーセットのプライマーがリーダーペプチドをコードする領域に結合し、第二の5’プライマーセットのプライマーがFR1領域に結合する限りにおいて異なっている。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図2に示す。
【0153】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0154】
【表38】
【0155】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0156】
【表39】
【0157】
図3では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの750bp(IgG HC)及び665bp(IgG LC)並びに第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの711bp及び688bpによく相関した。
【0158】
実施例2
2個の変更プライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0159】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。第一及び第二プライマーセットの5’プライマー及び3’プライマーは第二プライマーセットの各プライマーが核酸のより内部領域に結合する限りにおいて互いに異なっていた。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図4に示す。
【0160】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0161】
【表40】
【0162】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0163】
【表41】
【0164】
図5では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの471bp(IgG HC)及び413bp(IgG LC)並びに第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズの442bp及び399bpによく相関した。
【0165】
実施例3
2個の同一のプライマーセットを用いたポリメラーゼ連鎖反応によるヒト化免疫化マウスの単一B細胞からのIgG遺伝子の増幅
【0166】
ヒト免疫グロブリン遺伝子座を有するマウスの単一B細胞を上記で概説したようにして得た。第一及び第二プライマーセットの5’プライマー及び3’プライマーは同一であった。このポリメラーゼ連鎖反応のスキームを図6に示す。
【0167】
第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いるプライマーセットを下記のリストで示す:
【0168】
【表42】
【0169】
図7では、このポリメラーゼ連鎖反応で得られた増幅核酸フラグメントのアガロースゲルを示す。試料をそれぞれ50℃及び55℃のアニーリング温度で40増幅サイクルした後解析した。ブランク(水)はネガティブであり、フラグメントのサイズは第一及び第二ポリメラーゼ連鎖反応後の予想されるサイズ711bp(IgG HC)及び688bp(IgG LC)によく相関した。
【0170】
実施例4
in vitro翻訳のための直鎖テンプレートの生成
第一ポリメラーゼ連鎖反応のために、遺伝子特異的プライマーをT7ファージの調節DNA領域に必要なオーバーラッピング配列を含むように設計した。第二ポリメラーゼ連鎖反応のために、第一PCR産物を、調節配列を含みtag配列をコードする核酸フラグメントと組み合わせた。3’末端伸張は調節エレメントを含む核酸フラグメントとハイブリダイゼーションさせて達成した。この直鎖発現構築物は2個の末端プライマーによりさらに増幅させる。これらのプライマーは下記の配列を含む:5’−CTTTAAGAAGGAGATATACC+ATG+15〜20bpの遺伝子特異的配列(5’プライマー、配列番号:126)又は5’−ATCGTATGGGTAGCTGGTCCC+TTA+15〜20bpの遺伝子特異的配列(3’プライマー、配列番号:127)。
【0171】
図9では、レーン1、5及び9はブランクの水コントロールを示す。重鎖核酸はレーン4、8及び12に含まれ、κ軽鎖はレーン3、7及び11に含まれる。レーン2、6及び10は両方の鎖を組み合わせた試料を示す。全ての核酸が期待するサイズを有している(表38参照)。
【0172】
【表43】
【0173】
実施例5
in vitro翻訳及びhuFab特異的ELISA
in vitro翻訳は上記に概説したように実施する。
【0174】
図10から明らかなように、2個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応により得られた核酸からは、コードFab免疫グロブリンフラグメントのin vitro産生を可能にする直鎖発現構築物が得られない。対照的に、別々の連続したポリメラーゼ連鎖反応で用いた1個の固定及び1個の可変プライマーセットでの2工程ポリメラーゼ連鎖反応は、その後の直鎖発現構築物の提供及び免疫グロブリンFabフラグメントを含むIgG HC及びIgG LCのin vitro翻訳を可能にする。
【0175】
これとは対照的に、マルチプレックスフォーマットでは、2個の固定プライマーセットを用いるポリメラーゼ連鎖反応よりも1個の固定プライマーセットを含む2工程ポリメラーゼ連鎖反応がより効率的である。わずか1個の固定プライマーセットを用いることで、最高5倍高い光学密度を達成することができる。
【0176】
実施例6
単一細胞から得られる核酸を用いたin vitro翻訳及びhuFab特異的ELISA
【0177】
同一のプライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応
図11から明らかなように、コントロール試料はアガロースゲルでシグナルを生成しなかった。沈着した単一B細胞もまたシグナルを生成しなかった。IgG HC及びIgG LC(κ)はコントロール試料から増幅することができた。
【0178】
1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応
図13から明らかなように、1個の固定プライマーセット及び1個の可変プライマーセットを用いた2工程ポリメラーゼ連鎖反応から得られた試料2を除いた全ての核酸は、IgG HC及びIgG LCの産生のための直鎖発現構築物を提供することができた。従って、これらのマルチプレックスポリメラーゼ連鎖反応は非常に優れている。
【0179】
得られたヒトκFab免疫グロブリンフラグメントの濃度は100〜550ng/mlである。図16のレーン9〜11はIgG HCポジティブコントロールを添加せず単一細胞から得られたIgG HC及びIgG LC(κ)を示す。ここで、得られたヒトFab免疫グロブリンフラグメントの量は180〜330ng/mlであった。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応での距離と比較して減少している、方法。
【請求項2】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、3’プライマーを変更するか、又は、3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、少なくとも1個の5’プライマーを変更するかのいずれかであり、及び
増幅される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して減少している、方法。
【請求項3】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合することを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が下記の第一工程:
− 単一細胞を準備すること及び前記細胞のmRNAを得ること、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が下記の第二工程:
− 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により前記mRNAからcDNAを得ること、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫グロブリンがクラスG免疫グロブリン(IgG)であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリン可変ドメインが免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
a)免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:05及び/又は06、07及び/又は08、09、10及び/又は11、12、13、及び104及び/又は105及び/又は106の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、及び104及び/又は105及び/又は106、及び/又は142、及び/又は143の核酸を含むプライマーを用いて行い、
b)免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:16、17、18、19、及び115の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:53及び/又は54、55及び/又は56、57及び/又は58、59、60、61及び/又は62、63及び/又は64、65、66、67、68、69、70、及び/又は115、及び/又は144、及び/又は145の核酸を含むプライマーを用いて行い、
c)免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:21、22、23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:72、配列番号:73及び/又は74、配列番号:75、配列番号:76、配列番号:77及び/又は78、配列番号:79、配列番号:80、配列番号:81、配列番号:82及び/又は83、配列番号:84及び/又は85、配列番号:86、配列番号:87及び/又は88、配列番号:89、配列番号:90及び/又は91、配列番号:92、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むプライマーを用いて行うことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、− 前記核酸をin vitroで翻訳し、それによって免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法。
【請求項15】
免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を組み合わせ、重鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を組み合わせること、
− 組み合わせた核酸で真核細胞をトランスフェクションすること、
− 前記トランスフェクション細胞を免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法。
【請求項16】
核酸を得ることが請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって行われることを特徴とする、請求項14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項1】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 3〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜16個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを含み、第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーの結合位置の距離が第一ポリメラーゼ連鎖反応での距離と比較して減少している、方法。
【請求項2】
単一細胞から免疫グロブリン可変ドメインをコードする核酸を得る方法であって、下記の工程:
− 4〜6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応を行うこと、
− 13〜15個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを用いて第一ポリメラーゼ連鎖反応の産物で第二ポリメラーゼ連鎖反応を行うことを含み、
第二ポリメラーゼ連鎖反応では、5’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、3’プライマーを変更するか、又は、3’プライマーが第一ポリメラーゼ連鎖反応におけるのと同一であり、少なくとも1個の5’プライマーを変更するかのいずれかであり、及び
増幅される核酸に結合するとき、第二ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数が、第一ポリメラーゼ連鎖反応での各5’プライマーの5’末端と3’プライマーの3’末端間のヌクレオチドの数と比較して減少している、方法。
【請求項3】
第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンのリーダーペプチドのコード領域に結合することを特徴とする、請求項1〜2のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられる5’プライマーが免疫グロブリンの第一フレームワーク領域のコード領域に結合することを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第二ポリメラーゼ連鎖反応で用いられるプライマーが、5’プライマーに対する翻訳開始コドンATG及び/又は3’プライマーに対する翻訳終始コドンTTAをコードするオーバーハングを与えることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法が下記の第一工程:
− 単一細胞を準備すること及び前記細胞のmRNAを得ること、
を含むことを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法が下記の第二工程:
− 逆転写ポリメラーゼ連鎖反応により前記mRNAからcDNAを得ること、
を含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
6個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
4個の5’プライマー及び1個の3’プライマーを第一ポリメラーゼ連鎖反応で用いることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記免疫グロブリンがヒト免疫グロブリンであることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記免疫グロブリンがクラスG免疫グロブリン(IgG)であることを特徴とする、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記免疫グロブリン可変ドメインが免疫グロブリン重鎖可変ドメイン又は免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメイン若しくは免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインであることを特徴とする、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
a)免疫グロブリン重鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:05及び/又は06、07及び/又は08、09、10及び/又は11、12、13、及び104及び/又は105及び/又は106の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:128、129、130、131、132、133、134、135、136、137、138、139、140、141、及び104及び/又は105及び/又は106、及び/又は142、及び/又は143の核酸を含むプライマーを用いて行い、
b)免疫グロブリンκ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:16、17、18、19、及び115の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:53及び/又は54、55及び/又は56、57及び/又は58、59、60、61及び/又は62、63及び/又は64、65、66、67、68、69、70、及び/又は115、及び/又は144、及び/又は145の核酸を含むプライマーを用いて行い、
c)免疫グロブリンλ軽鎖可変ドメインをコードする核酸を得るために、第一ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:21、22、23及び/又は24及び/又は25及び/又は26、及び120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むプライマーを用いて行い、第二ポリメラーゼ連鎖反応を配列番号:72、配列番号:73及び/又は74、配列番号:75、配列番号:76、配列番号:77及び/又は78、配列番号:79、配列番号:80、配列番号:81、配列番号:82及び/又は83、配列番号:84及び/又は85、配列番号:86、配列番号:87及び/又は88、配列番号:89、配列番号:90及び/又は91、配列番号:92、及び配列番号:120及び/又は121及び/又は122及び/又は123及び/又は124及び/又は125の核酸を含むプライマーを用いて行うことを特徴とする、請求項1〜12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
免疫グロブリンFabフラグメントを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸であって、場合により、また軽鎖定常ドメインの一部及び重鎖CH1ドメインの一部をコードする核酸を得ること、− 前記核酸をin vitroで翻訳し、それによって免疫グロブリンFabフラグメントを産生することを含む方法。
【請求項15】
免疫グロブリンを産生する方法であって、下記の工程:
− 単一の免疫グロブリン産生細胞を準備すること、
− 前記細胞から免疫グロブリン軽鎖及び重鎖可変ドメインをコードする核酸を得ること、
− 軽鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン軽鎖定常ドメインをコードする核酸を組み合わせ、重鎖可変ドメインをコードする核酸と免疫グロブリン重鎖定常領域をコードする核酸を組み合わせること、
− 組み合わせた核酸で真核細胞をトランスフェクションすること、
− 前記トランスフェクション細胞を免疫グロブリンの発現に適した条件下で培養すること、
− 細胞又は培養培地から免疫グロブリンを回収することによって免疫グロブリンを産生することを含む方法。
【請求項16】
核酸を得ることが請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法によって行われることを特徴とする、請求項14又は15のいずれか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16(A)】
【図16(B)】
【図2】
【図3(A)】
【図3(B)】
【図4】
【図5(A)】
【図5(B)】
【図6】
【図7(A)】
【図7(B)】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16(A)】
【図16(B)】
【公表番号】特表2012−518392(P2012−518392A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−550471(P2011−550471)
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001008
【国際公開番号】WO2010/094475
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001008
【国際公開番号】WO2010/094475
【国際公開日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】
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