免疫力評価方法、装置、及びプログラム
【課題】総合的な免疫力を高精度に評価できる免疫力評価方法、装置、及びプログラムを提供すること。
【解決手段】採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法は、採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する。
【解決手段】採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法は、採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した血液から免疫力を評価する免疫評価方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のリンパ球は免疫力を担当する中心的細胞であり、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)等、機能の異なる細胞(亜集団)からなっている。また、T細胞も一様ではなく、機能的に互いに異なるCD4T細胞、CD8T細胞と呼ばれる亜集団からなる。
【0003】
これら細胞はそれぞれ特異な表面タンパク質(抗原)を有する。そこで従来、これら抗原に対するモノクローナル抗体を用いて染色し、フローサイトメトリにより特定の細胞の数や割合を測定していた。また、培養条件下で、各リンパ球の増殖能力や増殖に関わるタンパク質(サイトカイン)を測定することで、機能測定を行っている。そして、このような方法により、リンパ球の亜集団の構成やそれらの機能が、加齢により変動あるいは低下することを、本願の発明者らは明らかにしている(特許文献1、非特許文献1、2参照)。
【特許文献1】WO2007/145333号パンフレット
【非特許文献1】Utsuyama M, Hirokawa K, Kurashima C, Fukayama M, Inamatsu T, Suzuki K, Hashimoto W and Sato K.共著,「Diffrential age−change in the number of CD4+CD45RA+and CD4+CD29+T cell subsets in the human peripheral blood.」, Mechanism of Ageing and Development, 1992年3月15日63巻1号p.57−68
【非特許文献2】廣川勝▲いく▼,「老化と免疫」,日本老年医学会誌,2003年11月40巻6号p.543−552
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら文献に示される個々のパラメータは、各亜集団の比率や機能を示すものではあるが、必ずしもヒトの総合的な免疫力を高精度に反映するものではない。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、総合的な免疫力を高精度に評価できる免疫力評価方法、装置、及びプログラムを提供することを第1の目的とする。また、本発明は、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価できる免疫力評価方法、装置、及びプログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、CD8陽性細胞(キラーT細胞)を構成するCD28陽性T細胞の数又は割合が総合的な免疫力を高精度に反映することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0007】
(1) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、
前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する免疫力評価方法。
【0008】
(1)の発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0009】
また、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数(特許文献1参照)を求めるには、T細胞増殖能を計測するべくリンパ球の培養が不可欠であり、結果的に3日以上の長時間が要される。しかし、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、(1)の発明によれば、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【0010】
なお、本明細書における「Tリンパ球年齢」とは、本発明者らによる先行特許出願(PCT/JP2007/062158)に開示される「免疫力年齢」と同じく、ヒトの総合的な免疫機能レベルを判定評価するマーカーである。ただし、「Tリンパ球年齢」は、T細胞の中の特定T細胞の数等を測定することで算出される点で、T細胞増殖係数から算出される「免疫力年齢」とは異なる。
【0011】
(2) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(1)記載の免疫力評価方法。
【0012】
T細胞数、CD8陽性T細胞数、及びCD28陽性T細胞数は、いずれも加齢とともに減少する傾向があることが知られている。(2)の発明によれば、このように同様の傾向を有する3条件(CD8陽性且つCD28陽性であるT細胞)を満たすものを特定T細胞として採用したので、より相関係数の高い回帰式が得られ、結果的に総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0013】
(3) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(1)又は(2)記載の免疫力評価方法。
【0014】
(3)の発明によれば、特定パラメータとして特定T細胞の数及び/又は特定T細胞数の割合を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0015】
(4) 前記算出手順は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める手順を有する(1)から(3)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0016】
(4)の発明によれば、Tリンパ球年齢がある程度の幅を有する推定範囲として算出されるので、免疫力を容易に把握できる。
【0017】
(5) 免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、
前記算出手順では、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価方法。
【0018】
(5)の発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出される評価値を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0019】
また、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【0020】
(6) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(5)記載の免疫力評価方法。
【0021】
(6)の発明によれば、特定T細胞としてCD8陽性且つCD28陽性のT細胞を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0022】
(7) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(5)又は(6)記載の免疫力評価方法。
【0023】
(7)の発明によれば、特定パラメータとして特定T細胞の数及び/又は特定T細胞数の割合を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0024】
(8) 前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(5)から(7)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0025】
(8)の発明によれば、特定パラメータ以外のマーカーを併用したので、評価値が免疫力をより多面的に反映したものになる。このため、より総合的な免疫力を評価できる。
【0026】
(9) 前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(8)記載の免疫力評価方法。
【0027】
(9)の発明によれば、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数を併用したので、より総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0028】
(10) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段とを備える免疫力評価装置。
【0029】
(11) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(10)記載の免疫力評価装置。
【0030】
(12) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(10)又は(11)記載の免疫力評価装置。
【0031】
(13) 前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める推定範囲算出手段を有する(10)から(12)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0032】
(14) 免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、を備え、
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価装置。
【0033】
(15) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(14)記載の免疫力評価装置。
【0034】
(16) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(14)又は(15)記載の免疫力評価装置。
【0035】
(17) 前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(14)から(16)いずれか記載の免疫力評価装置。
【0036】
(18) 前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(17)記載の免疫力評価装置。
【0037】
(19) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させるための免疫力評価プログラム。
【0038】
(20) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(19)記載の免疫力評価プログラム。
【0039】
(21) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(19)又は(20)記載の免疫力評価プログラム。
【0040】
(22) 前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める(19)から(21)いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【0041】
(23) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、して機能させ、
前記算出手段には、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いさせる免疫力評価プログラム。
【0042】
(24) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(23)記載の免疫力評価プログラム。
【0043】
(25) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(23)又は(24)記載の免疫力評価プログラム。
【0044】
(26) 前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(23)から(25)いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【0045】
(27) 前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(26)記載の免疫力評価プログラム。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0047】
また、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数(特許文献1参照)を求めるには、T細胞増殖能を計測するべくリンパ球の培養が不可欠であり、結果的に3日以上の長時間が要される。しかし、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、本発明によれば、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0049】
[ハードウェア構成]
図1は本発明の一実施形態に係る免疫力評価装置1のブロック図であり、図2はコンピュータ本体20のブロック図である。
【0050】
図1に示されるように、免疫力評価装置1は、入力部10、コンピュータ本体20、記憶部としての外部記憶装置30、及び表示部40を備える。入力部10は、免疫力の評価を受ける者(血液を採取された者)の関連情報、後述する特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値、健常者の関連情報等を入力できるキーボードやマウス等を有する。免疫力の評価を受ける者の関連情報としては、免疫力の評価を受ける者の氏名、住所、性別、実年齢、既往症、及び現症等が挙げられる。
【0051】
コンピュータ本体20は、CPU(中央処理ユニット)21の他に、メインメモリ22、及び外部回路と接続するためのインターフェース回路(図示せず)等を備える。
【0052】
外部記憶装置30は、例えばハードディスク装置である。かかる外部記憶装置30には、後述する免疫力評価プログラムとともにデータベース50及び評価テーブル80等が記憶されていて、その内容が必要に応じてコンピュータ本体20のメインメモリ22に読み出されて実行される。
【0053】
データベース50は、複数の免疫細胞に対応する所定の基準値となる健常者の特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値と、健常者の関連情報とを対応させたデータを記憶し、新たな健常者の特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値を入力部10から逐次追加して記憶できる構造を有する。ここで、健常者とは、一般的な健康診断において特別な異常が認められなかった者を指し、健常者の関連情報とは、健常者の氏名、住所、性別、実年齢、体重や身長等の身体値、及び特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値等を指す。
【0054】
[機能構成]
以上のハードウェア構成に記憶された免疫力評価プログラムによって、コンピュータ本体20は、特定パラメータと年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させられる。
【0055】
より具体的に、本実施形態に係るプログラムは、図2に示すように、コンピュータ本体20を、特定パラメータの予測値算出手段67、特定パラメータの残差算出手段68、並びに特定パラメータに基づくランク判定及びTリンパ球年齢算出手段69として機能させる。各機能の詳細は、後述する。
【0056】
[免疫力評価方法]
(第1態様)
本態様に係る免疫力評価方法は、採取した血液における特定T細胞の数を計測する計測手順と、特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する。CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いることで、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0057】
計測手順は、採取した末梢血液についてフローサイトメトリ解析を行うことで達成してよい。
【0058】
(フローサイトメトリ解析)
採取した末梢血に基づいて、フローサイトメトリ解析を行う。
1.末梢血50(μL)を試験管に分注する。
2.蛍光標識抗体溶液を試験管に添加する。
3.30分間、暗所に放置する。
4.赤血球溶血剤2(ml)を添加し攪拌した後、10分間放置して赤血球を溶血させる。
5.PBS溶液3(ml)を加えて1200(rpm)で5分間の遠心分離を行う。
6.上清を吸引除去する。
7.PBS溶液500(μL)を加えて、細胞を再浮遊させることによって細胞浮遊液を調製する。
8.フローサイトメーターにて蛍光標識抗体陽性細胞率を機器専用ソフトによって算出する。
【0059】
上記フローサイトメトリで用いる蛍光標識抗体は適宜選択されてよく、例えばPE−CD3/FITC−CD8/PC5−CD28であってよい。この場合、FITC、PE及びPC5のいずれの蛍光も検出される細胞はCD8陽性且つCD28陽性のT細胞であると判定でき、FITC及びPEの蛍光が検出され且つPC5の蛍光が検出されない細胞はCD8陽性且つCD28陰性のT細胞であると判定できる。
【0060】
ここで、特定T細胞としては、CD8陽性且つCD28陽性T細胞と、CD8陽性且つCD28陰性T細胞とが挙げられる。T細胞数、CD8陽性T細胞数、及びCD28陽性T細胞数は、いずれも加齢とともに減少する傾向があることが知られている。(2)の発明によれば、このように同様の傾向を有する3条件(CD8陽性且つCD28陽性であるT細胞)を満たすものを特定T細胞として採用したので、より相関係数の高い回帰式が得られ、結果的に総合的な免疫力をより高精度に評価できる。従って、総合的な免疫力をより高精度に評価できる点で、CD8陽性且つCD28陽性T細胞が好ましい。
【0061】
算出手順では、特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める。ここで、特定パラメータは、特定T細胞数に依存する変数である限りにおいて特に限定されず、特定T細胞数そのものであっても、なくてもよい。ただし、特定パラメータは、総合的な免疫力をより高精度に評価できる点で、所定量血液あたりの特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0062】
CD8陽性細胞数に対する特定T細胞数の割合と、年齢との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図3に示す。なお、図3における特定T細胞はCD8陽性且つCD28陽性のT細胞であり、上記割合をCD8+CD28+陽性率と称する。図3に示される回帰式は、y=−0.47x+82.8(式中、xは年齢、yはCD8+CD28+陽性率の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.43)を有していた。
【0063】
また、CD8+CD28+陽性率と、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図4に示す。なお、T細胞増殖能は次の手順に従って算出した。
【0064】
T細胞増殖係数を算出する場合には、次の手順を行ってよい。
【0065】
(単核細胞の回収)
1.CPT単核球分離用真空採血管(BD社:8362761)に8mLを採血する。
2.室温において、3000(rpm)、20分間の遠心分離をする。
3.遠心分離によって得られたリンパ球層を回収する。
4.回収したリンパ球層に生理食塩水を加える。
5.室温において、1500(rpm)、10分間の遠心分離を行う。
6.上清を捨て、再度生理食塩水を加える。
7.室温において、1200(rpm)、5分間の遠心分離を行う。
8.上清を捨て、細胞培養液(RPMI−1640)を加えて細胞浮遊液とする。
9.細胞濃度を測定する(0.2% Trypanblue液使用)。
10.細胞濃度を1×106/mLに細胞培養液にて調整する。
【0066】
(抗CD3抗体刺激)
抗CD3抗体で96穴プレートをコーティングする。
1.Orthoclone OKT3溶液(ORTHOBIOTECH:672993402)30(μL)を、生理食塩水10(mL)の割合で希釈する。
2.OKT3希釈溶液を96穴プレートに100(μl/well)を入れる。
3.室温にて2時間の静置を行う。
4.OKT3希釈溶液を吸引して廃棄し、生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れる。
5.生理食塩水を吸引して廃棄し、再度、生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れる。
6.この操作を計5回繰返す。
7.生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れ使用時まで冷蔵保管する。
【0067】
(MTS法によるT細胞増殖能解析)
1.準備した上記抗CD3抗体コーティングした96穴プレートに10%FBS−RPMI100(μL/well)、1×106/mLの細胞浮遊液100(μL/well)を入れる。各サンプルにつき3穴使用する。
2.5%炭酸ガス−37℃条件の細胞培養器にて培養する。
3.培養68時間の時点で、MTS溶液を40(μL/well)添加する。
4.培養72時間の時点で、比色計(490nm)で測定する。
これにより、上記のT細胞増殖能が算出される。
【0068】
図4に示される回帰式は、y=28.3x+20.0(式中、xはT細胞増殖能、yはCD8+CD28+陽性率の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.46)を有していた。T細胞増殖能は年齢との相関性に優れるパラメータの1種である(特許文献1参照)ことから、CD8+CD28+陽性率が免疫力を高精度に反映したものであることが再確認される。また、T細胞増殖能及び後述のT細胞増殖係数の計測には、上記のような72時間にも亘る細胞培養が必要であるが、特定T細胞数の計測にはかかる細胞培養の必要がなく、簡便に完了できる。
【0069】
次に、図3に示す回帰式に各年齢を入力し、各年齢におけるCD8+CD28+陽性率の予測値を求め、得られた予測値と検査値との差を求め、残差を求める。つまり、残差は、検査値(CD8+CD28+陽性率)−予測値(回帰式より得られる値)なる式に基づいて求められる。
【0070】
次に、Tリンパ球年齢を算出する。計算式によるTリンパ球年齢(計算値年齢)は、前述した回帰式を変換した下式に被検者のCD8+CD28+陽性率の検査値を代入することにより、求められる。
計算値年齢=(検査値−82.8)/0.47
【0071】
同様に、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞の数と、年齢との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図5に示す。なお、所定量は、図5では1μLであるが、これに限られず任意の量であってよい。図5に示される回帰式は、y=4.87x+523(式中、xは年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.50)を有していた。
【0072】
ここで、健常人約300人から得たデータを、被験者の性別で分類した結果を図6に示す。図6(a)に示す男性年齢と、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数との回帰式は、y=−6.089x+597.0(式中、xは男性年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である。また、Rは0.543である。)である一方、図6(b)に示す女性年齢と、所定量血液あたりの特定T細胞の数との回帰式は、y=−4.136x+476.9(式中、xは女性年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である。また、Rは0.477である。)であった。この結果は、女性の方が男性よりも加齢に伴う免疫力低下が緩やかであることを指すところ、女性が男性よりも長寿であるという事実を正確に反映している。
【0073】
また、健常人約300人それぞれのT細胞増殖係数(TCPI)と、1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数との回帰式を求め、この結果を図7に示す。なお、T細胞増殖係数は、年齢との相関性に優れ、免疫力を高精度に反映するパラメータであることが知られている(特許文献1参照)。具体的にT細胞増殖係数は、T細胞数及びT細胞増殖能を掛け合わせたものであり、例えば次の式で求めることができる。
T細胞数増殖係数=OD(490nm)×(末梢血中T細胞数(μL当たり))/1000
【0074】
図7に示される回帰式は、y=125.7x+16.4(式中、xはT細胞増殖係数、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.69)を有していた。このことからも、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数という特定パラメータの優位性が明らかである。
【0075】
これに対して、所定量血液あたりのCD8陽性T細胞数又はCD4陽性T細胞数と、T細胞増殖能との回帰式は、図8に示す通りである。図8(a)に示される回帰式は、y=55.9x+546(式中、xはT細胞増殖能、yは1μL血液あたりのCD8陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数が極めて低かった(R=0.06)。また、図8(b)に示される回帰式は、y=179.8x+639(式中、xはT細胞増殖能、yは1μL血液あたりのCD4陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数が低かった(R=0.15)。これにより、所定量血液あたりのCD8陽性T細胞数又はCD4陽性T細胞数というパラメータは、免疫力の反映の程度が低いことが明らかになった。
【0076】
また、CD8陽性T細胞数におけるCD28陰性T細胞数の比率、又は所定量血液あたりのCD8陽性CD28陰性T細胞数と、T細胞増殖能との回帰式は、図9及び10に示す通りである。図9に示される回帰式は、y=0.47x+82.8(式中、xは年齢、yはCD8陽性T細胞数におけるCD28陰性T細胞数の比率の予測値である)であり、高い相関係数を有していた(R=0.43)。図10に示される回帰式は、y=0.47x+82.8(式中、xは年齢、yは1μL血液あたりのCD4陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数は低かった(R=0.05)。このように、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陰性T細胞数という特定パラメータは、非特定パラメータよりも優れるものの、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数には劣る。
【0077】
次に、図5に示す回帰式に各年齢を入力し、各年齢のおける1μL血液あたりの特定T細胞の予測値を求め、得られた予測値と検査値との差を求め、残差を求める。つまり、残差は、検査値(1μL血液あたりの特定T細胞)−予測値(回帰式より得られる値)なる式に基づいて求められる。
【0078】
次に、Tリンパ球年齢を算出する。計算式によるTリンパ球年齢(計算値年齢)は、前述した回帰式を変換した下式に被検者の1μL血液あたりの特定T細胞の検査値を代入することにより、求められる。
計算値年齢=(523−検査値)/4.87
【0079】
しかし、このようにして得られる計算値年齢は推定値であり、実用的には、ある程度の幅をもって表す方が実際に則している。そこで、次に示すように、CD8+CD28+陽性率又は1μL血液あたりの特定T細胞の検査値と、それらの予測値との差である残差が正規分布を示すことから、Tリンパ球年齢の幅を定める。
【0080】
被検者の実年齢から得られる予測値と検査値との差、即ち残差が正規分布を示すので、残差の標準偏差を下式から求めることができる。
【数1】
【0081】
得られた残差の標準偏差SDに基づいて、年齢表現の範囲を、図13に示すように、±0.5SD、±1.OSD、±1,5SD、±2.OSDといったように区切る。この場合、残差は、±45(0.5SD)、±90(1.OSD)、±135(1.5SD)、±180(2.OSD)である。
【0082】
これらの標準偏差を基にした残差から被険者の実年齢とTリンパ球年齢との隔たりを計算する。まず、計算値年齢を前述の式から求め、実年齢との差を見ると、いずれの年齢においても標準偏差から求められる値は略同じであり、±0.5SDは各年齢±約15歳であり、±1.0SDは±約30歳であり、±1.5SDは±約45歳であり、±2.OSDは±約60歳であり、±2.OSD以上は±約60歳以上である。
【0083】
Tリンパ球年齢が実際の年齢の値に対応するよう、約17〜約99歳で評価を行うことができるように設定するため、以上のようにして得られた計算値年齢と実年齢との差を20%とし表現形年齢とする。即ち、表現形年齢を、次式から求める。
表現形年齢=実年齢+(計算値年齢−実年齢)×0.2
【0084】
免疫力評価装置1は、上記の免疫力評価プログラムによって、次の手順を実行する。
(1)入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰式に代入して特定パラメータの予測値を算出する手順(特定パラメータの予測値算出手段67)。
(2)入力された特定パラメータの検査値と予測値とから特定パラメータの残差を算出する手順(特定パラメータの残差算出手段68)。
(3)得られた残差から、ランク判定及びTリンパ球年齢を算出する手順(ランク判定及びTリンパ球年齢算出手段69)。
【0085】
図11は、入力部10に入力された特定パラメータの検査値及び実年齢に基づいて、コンピュータ本体20が行う免疫力の評価処理の例を説明するフローチャートである。
【0086】
まず、免疫力の評価を受ける者の住所、氏名、実年齢、性別、既往症、現症、等の関連情報、並びに特定パラメータ値等を入力部10から入力し、エンターキーを押下操作する(S31)。次に、入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰式に代入して特定パラメータの予測値を算出する(S32)。
【0087】
S32で得た予測値と、入力された特定パラメータの検査値とから残差を算出する(S33)。得られた残差、つまり予測値及び検査値から、図12に示されるような検査値のランクA〜Iを判定すると共に、Tリンパ球年齢を求める(S34)。即ち、評価テーブル80には、図12に示すような、特定パラメータの検査値及び予測値に対する免疫評価ランク及びTリンパ球年齢の評価表が格納されており、S34では、この評価表から検査値及び予測値に基づいてランク判定を行い、Tリンパ球年齢を算出する。なお、図12のTリンパ球年齢において、最若年齢は17〜20歳とし、最高年齢は96〜99歳とする。
【0088】
以上の評価結果を表示部40に表示し(S35)、処理を終了する。評価内容としては、「被験者の実年齢を含む関連情報」、「特定パラメータの検査値」、「特定パラメータの予測値」、「残差」、「免疫評価ランク」及び「Tリンパ球年齢」等が挙げられる。なお、手順自体の詳細は、特許文献1を参照してよい。
【0089】
(第2態様)
本態様に係る免疫力評価方法は、採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、算出手順では、免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる。CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いることで、算出される評価値を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0090】
第1態様と同様に、特定T細胞としては、CD8陽性且つCD28陽性のT細胞を用いることが好ましく、特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0091】
ここで「免疫細胞マーカー」は、採取された血液に含まれる複数の免疫細胞に対応するものである。免疫細胞マーカーとしては、特定パラメータを含む限りにおいて特に限定されない。年齢との相関性に優れる点では、単位血液量当たりのT細胞数、T細胞増殖係数、CD4T細胞/CD8T細胞比率、単位血液量当たりのナイーブT細胞数、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率、単位血液量当たりのB細胞数、及び単位血液量当たりのNK(ナチュラルキラー)細胞数からなる群より選ばれる1種以上を併用することが好ましく、特にT細胞増殖係数を併用することが好ましい。なお、各マーカーの計測手順は、特許文献1を参照してよい。
【0092】
免疫細胞マーカーとして特定パラメータ以外のものを併用する場合には、かかる免疫細胞マーカーの組み合わせは、被験者の疾病に対応したもの(その疾病に罹患することで大きく変動する傾向が強いマーカー)にしてもよいし、実年齢に対応したもの(加齢に応じて大きく変動する傾向が強いマーカー)にしてもよい。
【0093】
各免疫細胞マーカーに基づく評価値は、計測値そのものであってもよいし、計測値が点数化されたものでもよい。計測値の点数化の一例では、健常者の免疫細胞マーカーの値を、累積度数10(%)未満の範囲、累積度数10(%)以上40(%)未満の範囲、及び累積度数40(%)以上の範囲からなる3つの段階に区分し、免疫力の高い区分から低い区分に向けて次第に小さな点数を割り当てる。このような累積度数に基づいて3つの段階に区分することにより、点数化を的確に行うことができる。
【0094】
具体的には、累積度数10(%)の値及び累積度数40(%)の値を基準として、累積度数10(%)以下であれば1(点)、累積度数10(%)の値と累積度数40(%)の値との間であれば2(点)、累積度数40(%)の値を超えていれば3(点)を割り当てる。つまり、健常者の値について累積度数10(%)未満の範囲を免疫力が低いレベルを示す1(点)とし、累積度数10(%)以上40(%)未満の範囲を免疫力が中等度のレベルを示す2(点)とし、累積度数40(%)以上の範囲を免疫力が充分に高いレベルを示す3(点)とする。
【0095】
本態様では、3つの区分にそれぞれ1、2、3(点)をそれぞれ割り当てたが、これに限るものではなく、免疫力が高いレベルには対応する高い点数を、また、低いレベルには対応する低い点数を割り当てればよい。なお、上記した累積度数10(%)、累積度数40(%)は、データベース50に蓄積される健常者数の増加に伴って若干変動する。
【0096】
このようにして得られる評価値は、レーダーグラフ等として表示して個別に比較検討してもよいし、特許文献1に示されるような手順で合算してもよい。
【0097】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態に係る免疫力評価装置のブロック図である。
【図2】図1の免疫力評価装置を構成するコンピュータ本体のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る特定パラメータと、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図5】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図6】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、各性別健常者の年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図7】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、T細胞増殖係数との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図8】比較例に係るパラメータと、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図9】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図11】図2のコンピュータ本体が行う免疫力の評価処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態に係る特定パラメータの検査値及び予測値に対する免疫評価ランク及びTリンパ球年齢の評価表である。
【図13】年齢表現の範囲の区切りの一例を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、採取した血液から免疫力を評価する免疫評価方法、装置、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
血液中のリンパ球は免疫力を担当する中心的細胞であり、T細胞、B細胞、ナチュラルキラー細胞(NK細胞)等、機能の異なる細胞(亜集団)からなっている。また、T細胞も一様ではなく、機能的に互いに異なるCD4T細胞、CD8T細胞と呼ばれる亜集団からなる。
【0003】
これら細胞はそれぞれ特異な表面タンパク質(抗原)を有する。そこで従来、これら抗原に対するモノクローナル抗体を用いて染色し、フローサイトメトリにより特定の細胞の数や割合を測定していた。また、培養条件下で、各リンパ球の増殖能力や増殖に関わるタンパク質(サイトカイン)を測定することで、機能測定を行っている。そして、このような方法により、リンパ球の亜集団の構成やそれらの機能が、加齢により変動あるいは低下することを、本願の発明者らは明らかにしている(特許文献1、非特許文献1、2参照)。
【特許文献1】WO2007/145333号パンフレット
【非特許文献1】Utsuyama M, Hirokawa K, Kurashima C, Fukayama M, Inamatsu T, Suzuki K, Hashimoto W and Sato K.共著,「Diffrential age−change in the number of CD4+CD45RA+and CD4+CD29+T cell subsets in the human peripheral blood.」, Mechanism of Ageing and Development, 1992年3月15日63巻1号p.57−68
【非特許文献2】廣川勝▲いく▼,「老化と免疫」,日本老年医学会誌,2003年11月40巻6号p.543−552
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、これら文献に示される個々のパラメータは、各亜集団の比率や機能を示すものではあるが、必ずしもヒトの総合的な免疫力を高精度に反映するものではない。
【0005】
本発明は、以上の実情に鑑みてなされたものであり、総合的な免疫力を高精度に評価できる免疫力評価方法、装置、及びプログラムを提供することを第1の目的とする。また、本発明は、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価できる免疫力評価方法、装置、及びプログラムを提供することを第2の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、驚くべきことに、CD8陽性細胞(キラーT細胞)を構成するCD28陽性T細胞の数又は割合が総合的な免疫力を高精度に反映することを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明は以下のようなものを提供する。
【0007】
(1) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、
前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する免疫力評価方法。
【0008】
(1)の発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0009】
また、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数(特許文献1参照)を求めるには、T細胞増殖能を計測するべくリンパ球の培養が不可欠であり、結果的に3日以上の長時間が要される。しかし、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、(1)の発明によれば、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【0010】
なお、本明細書における「Tリンパ球年齢」とは、本発明者らによる先行特許出願(PCT/JP2007/062158)に開示される「免疫力年齢」と同じく、ヒトの総合的な免疫機能レベルを判定評価するマーカーである。ただし、「Tリンパ球年齢」は、T細胞の中の特定T細胞の数等を測定することで算出される点で、T細胞増殖係数から算出される「免疫力年齢」とは異なる。
【0011】
(2) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(1)記載の免疫力評価方法。
【0012】
T細胞数、CD8陽性T細胞数、及びCD28陽性T細胞数は、いずれも加齢とともに減少する傾向があることが知られている。(2)の発明によれば、このように同様の傾向を有する3条件(CD8陽性且つCD28陽性であるT細胞)を満たすものを特定T細胞として採用したので、より相関係数の高い回帰式が得られ、結果的に総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0013】
(3) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(1)又は(2)記載の免疫力評価方法。
【0014】
(3)の発明によれば、特定パラメータとして特定T細胞の数及び/又は特定T細胞数の割合を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0015】
(4) 前記算出手順は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める手順を有する(1)から(3)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0016】
(4)の発明によれば、Tリンパ球年齢がある程度の幅を有する推定範囲として算出されるので、免疫力を容易に把握できる。
【0017】
(5) 免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、
前記算出手順では、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価方法。
【0018】
(5)の発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出される評価値を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0019】
また、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【0020】
(6) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(5)記載の免疫力評価方法。
【0021】
(6)の発明によれば、特定T細胞としてCD8陽性且つCD28陽性のT細胞を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0022】
(7) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(5)又は(6)記載の免疫力評価方法。
【0023】
(7)の発明によれば、特定パラメータとして特定T細胞の数及び/又は特定T細胞数の割合を採用したので、総合的な免疫力をより高精度に評価できる。
【0024】
(8) 前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(5)から(7)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0025】
(8)の発明によれば、特定パラメータ以外のマーカーを併用したので、評価値が免疫力をより多面的に反映したものになる。このため、より総合的な免疫力を評価できる。
【0026】
(9) 前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(8)記載の免疫力評価方法。
【0027】
(9)の発明によれば、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数を併用したので、より総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0028】
(10) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段とを備える免疫力評価装置。
【0029】
(11) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(10)記載の免疫力評価装置。
【0030】
(12) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(10)又は(11)記載の免疫力評価装置。
【0031】
(13) 前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める推定範囲算出手段を有する(10)から(12)いずれか記載の免疫力評価方法。
【0032】
(14) 免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、を備え、
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価装置。
【0033】
(15) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(14)記載の免疫力評価装置。
【0034】
(16) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(14)又は(15)記載の免疫力評価装置。
【0035】
(17) 前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(14)から(16)いずれか記載の免疫力評価装置。
【0036】
(18) 前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(17)記載の免疫力評価装置。
【0037】
(19) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させるための免疫力評価プログラム。
【0038】
(20) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(19)記載の免疫力評価プログラム。
【0039】
(21) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(19)又は(20)記載の免疫力評価プログラム。
【0040】
(22) 前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める(19)から(21)いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【0041】
(23) 採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、して機能させ、
前記算出手段には、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いさせる免疫力評価プログラム。
【0042】
(24) 前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である(23)記載の免疫力評価プログラム。
【0043】
(25) 前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である(23)又は(24)記載の免疫力評価プログラム。
【0044】
(26) 前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する(23)から(25)いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【0045】
(27) 前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する(26)記載の免疫力評価プログラム。
【発明の効果】
【0046】
本発明によれば、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いたので、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0047】
また、年齢との相関性に優れるT細胞増殖係数(特許文献1参照)を求めるには、T細胞増殖能を計測するべくリンパ球の培養が不可欠であり、結果的に3日以上の長時間が要される。しかし、特定T細胞の数の計測の際、培養等の長時間を費やす工程を行う必要は少ないため、本発明によれば、総合的な免疫力を高精度且つ簡便に評価することもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0048】
本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0049】
[ハードウェア構成]
図1は本発明の一実施形態に係る免疫力評価装置1のブロック図であり、図2はコンピュータ本体20のブロック図である。
【0050】
図1に示されるように、免疫力評価装置1は、入力部10、コンピュータ本体20、記憶部としての外部記憶装置30、及び表示部40を備える。入力部10は、免疫力の評価を受ける者(血液を採取された者)の関連情報、後述する特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値、健常者の関連情報等を入力できるキーボードやマウス等を有する。免疫力の評価を受ける者の関連情報としては、免疫力の評価を受ける者の氏名、住所、性別、実年齢、既往症、及び現症等が挙げられる。
【0051】
コンピュータ本体20は、CPU(中央処理ユニット)21の他に、メインメモリ22、及び外部回路と接続するためのインターフェース回路(図示せず)等を備える。
【0052】
外部記憶装置30は、例えばハードディスク装置である。かかる外部記憶装置30には、後述する免疫力評価プログラムとともにデータベース50及び評価テーブル80等が記憶されていて、その内容が必要に応じてコンピュータ本体20のメインメモリ22に読み出されて実行される。
【0053】
データベース50は、複数の免疫細胞に対応する所定の基準値となる健常者の特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値と、健常者の関連情報とを対応させたデータを記憶し、新たな健常者の特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値を入力部10から逐次追加して記憶できる構造を有する。ここで、健常者とは、一般的な健康診断において特別な異常が認められなかった者を指し、健常者の関連情報とは、健常者の氏名、住所、性別、実年齢、体重や身長等の身体値、及び特定パラメータ又は免疫細胞マーカーの値等を指す。
【0054】
[機能構成]
以上のハードウェア構成に記憶された免疫力評価プログラムによって、コンピュータ本体20は、特定パラメータと年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させられる。
【0055】
より具体的に、本実施形態に係るプログラムは、図2に示すように、コンピュータ本体20を、特定パラメータの予測値算出手段67、特定パラメータの残差算出手段68、並びに特定パラメータに基づくランク判定及びTリンパ球年齢算出手段69として機能させる。各機能の詳細は、後述する。
【0056】
[免疫力評価方法]
(第1態様)
本態様に係る免疫力評価方法は、採取した血液における特定T細胞の数を計測する計測手順と、特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する。CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いることで、算出されるTリンパ球年齢を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0057】
計測手順は、採取した末梢血液についてフローサイトメトリ解析を行うことで達成してよい。
【0058】
(フローサイトメトリ解析)
採取した末梢血に基づいて、フローサイトメトリ解析を行う。
1.末梢血50(μL)を試験管に分注する。
2.蛍光標識抗体溶液を試験管に添加する。
3.30分間、暗所に放置する。
4.赤血球溶血剤2(ml)を添加し攪拌した後、10分間放置して赤血球を溶血させる。
5.PBS溶液3(ml)を加えて1200(rpm)で5分間の遠心分離を行う。
6.上清を吸引除去する。
7.PBS溶液500(μL)を加えて、細胞を再浮遊させることによって細胞浮遊液を調製する。
8.フローサイトメーターにて蛍光標識抗体陽性細胞率を機器専用ソフトによって算出する。
【0059】
上記フローサイトメトリで用いる蛍光標識抗体は適宜選択されてよく、例えばPE−CD3/FITC−CD8/PC5−CD28であってよい。この場合、FITC、PE及びPC5のいずれの蛍光も検出される細胞はCD8陽性且つCD28陽性のT細胞であると判定でき、FITC及びPEの蛍光が検出され且つPC5の蛍光が検出されない細胞はCD8陽性且つCD28陰性のT細胞であると判定できる。
【0060】
ここで、特定T細胞としては、CD8陽性且つCD28陽性T細胞と、CD8陽性且つCD28陰性T細胞とが挙げられる。T細胞数、CD8陽性T細胞数、及びCD28陽性T細胞数は、いずれも加齢とともに減少する傾向があることが知られている。(2)の発明によれば、このように同様の傾向を有する3条件(CD8陽性且つCD28陽性であるT細胞)を満たすものを特定T細胞として採用したので、より相関係数の高い回帰式が得られ、結果的に総合的な免疫力をより高精度に評価できる。従って、総合的な免疫力をより高精度に評価できる点で、CD8陽性且つCD28陽性T細胞が好ましい。
【0061】
算出手順では、特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める。ここで、特定パラメータは、特定T細胞数に依存する変数である限りにおいて特に限定されず、特定T細胞数そのものであっても、なくてもよい。ただし、特定パラメータは、総合的な免疫力をより高精度に評価できる点で、所定量血液あたりの特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0062】
CD8陽性細胞数に対する特定T細胞数の割合と、年齢との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図3に示す。なお、図3における特定T細胞はCD8陽性且つCD28陽性のT細胞であり、上記割合をCD8+CD28+陽性率と称する。図3に示される回帰式は、y=−0.47x+82.8(式中、xは年齢、yはCD8+CD28+陽性率の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.43)を有していた。
【0063】
また、CD8+CD28+陽性率と、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図4に示す。なお、T細胞増殖能は次の手順に従って算出した。
【0064】
T細胞増殖係数を算出する場合には、次の手順を行ってよい。
【0065】
(単核細胞の回収)
1.CPT単核球分離用真空採血管(BD社:8362761)に8mLを採血する。
2.室温において、3000(rpm)、20分間の遠心分離をする。
3.遠心分離によって得られたリンパ球層を回収する。
4.回収したリンパ球層に生理食塩水を加える。
5.室温において、1500(rpm)、10分間の遠心分離を行う。
6.上清を捨て、再度生理食塩水を加える。
7.室温において、1200(rpm)、5分間の遠心分離を行う。
8.上清を捨て、細胞培養液(RPMI−1640)を加えて細胞浮遊液とする。
9.細胞濃度を測定する(0.2% Trypanblue液使用)。
10.細胞濃度を1×106/mLに細胞培養液にて調整する。
【0066】
(抗CD3抗体刺激)
抗CD3抗体で96穴プレートをコーティングする。
1.Orthoclone OKT3溶液(ORTHOBIOTECH:672993402)30(μL)を、生理食塩水10(mL)の割合で希釈する。
2.OKT3希釈溶液を96穴プレートに100(μl/well)を入れる。
3.室温にて2時間の静置を行う。
4.OKT3希釈溶液を吸引して廃棄し、生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れる。
5.生理食塩水を吸引して廃棄し、再度、生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れる。
6.この操作を計5回繰返す。
7.生理食塩水を96穴プレートに200(μL/well)を入れ使用時まで冷蔵保管する。
【0067】
(MTS法によるT細胞増殖能解析)
1.準備した上記抗CD3抗体コーティングした96穴プレートに10%FBS−RPMI100(μL/well)、1×106/mLの細胞浮遊液100(μL/well)を入れる。各サンプルにつき3穴使用する。
2.5%炭酸ガス−37℃条件の細胞培養器にて培養する。
3.培養68時間の時点で、MTS溶液を40(μL/well)添加する。
4.培養72時間の時点で、比色計(490nm)で測定する。
これにより、上記のT細胞増殖能が算出される。
【0068】
図4に示される回帰式は、y=28.3x+20.0(式中、xはT細胞増殖能、yはCD8+CD28+陽性率の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.46)を有していた。T細胞増殖能は年齢との相関性に優れるパラメータの1種である(特許文献1参照)ことから、CD8+CD28+陽性率が免疫力を高精度に反映したものであることが再確認される。また、T細胞増殖能及び後述のT細胞増殖係数の計測には、上記のような72時間にも亘る細胞培養が必要であるが、特定T細胞数の計測にはかかる細胞培養の必要がなく、簡便に完了できる。
【0069】
次に、図3に示す回帰式に各年齢を入力し、各年齢におけるCD8+CD28+陽性率の予測値を求め、得られた予測値と検査値との差を求め、残差を求める。つまり、残差は、検査値(CD8+CD28+陽性率)−予測値(回帰式より得られる値)なる式に基づいて求められる。
【0070】
次に、Tリンパ球年齢を算出する。計算式によるTリンパ球年齢(計算値年齢)は、前述した回帰式を変換した下式に被検者のCD8+CD28+陽性率の検査値を代入することにより、求められる。
計算値年齢=(検査値−82.8)/0.47
【0071】
同様に、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞の数と、年齢との相関関係に基づいた回帰式を、健常人約300人から得たデータに基づいて作成し、図5に示す。なお、所定量は、図5では1μLであるが、これに限られず任意の量であってよい。図5に示される回帰式は、y=4.87x+523(式中、xは年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.50)を有していた。
【0072】
ここで、健常人約300人から得たデータを、被験者の性別で分類した結果を図6に示す。図6(a)に示す男性年齢と、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数との回帰式は、y=−6.089x+597.0(式中、xは男性年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である。また、Rは0.543である。)である一方、図6(b)に示す女性年齢と、所定量血液あたりの特定T細胞の数との回帰式は、y=−4.136x+476.9(式中、xは女性年齢、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である。また、Rは0.477である。)であった。この結果は、女性の方が男性よりも加齢に伴う免疫力低下が緩やかであることを指すところ、女性が男性よりも長寿であるという事実を正確に反映している。
【0073】
また、健常人約300人それぞれのT細胞増殖係数(TCPI)と、1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数との回帰式を求め、この結果を図7に示す。なお、T細胞増殖係数は、年齢との相関性に優れ、免疫力を高精度に反映するパラメータであることが知られている(特許文献1参照)。具体的にT細胞増殖係数は、T細胞数及びT細胞増殖能を掛け合わせたものであり、例えば次の式で求めることができる。
T細胞数増殖係数=OD(490nm)×(末梢血中T細胞数(μL当たり))/1000
【0074】
図7に示される回帰式は、y=125.7x+16.4(式中、xはT細胞増殖係数、yは1μL血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数の予測値である)であり、高い相関係数(R=0.69)を有していた。このことからも、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数という特定パラメータの優位性が明らかである。
【0075】
これに対して、所定量血液あたりのCD8陽性T細胞数又はCD4陽性T細胞数と、T細胞増殖能との回帰式は、図8に示す通りである。図8(a)に示される回帰式は、y=55.9x+546(式中、xはT細胞増殖能、yは1μL血液あたりのCD8陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数が極めて低かった(R=0.06)。また、図8(b)に示される回帰式は、y=179.8x+639(式中、xはT細胞増殖能、yは1μL血液あたりのCD4陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数が低かった(R=0.15)。これにより、所定量血液あたりのCD8陽性T細胞数又はCD4陽性T細胞数というパラメータは、免疫力の反映の程度が低いことが明らかになった。
【0076】
また、CD8陽性T細胞数におけるCD28陰性T細胞数の比率、又は所定量血液あたりのCD8陽性CD28陰性T細胞数と、T細胞増殖能との回帰式は、図9及び10に示す通りである。図9に示される回帰式は、y=0.47x+82.8(式中、xは年齢、yはCD8陽性T細胞数におけるCD28陰性T細胞数の比率の予測値である)であり、高い相関係数を有していた(R=0.43)。図10に示される回帰式は、y=0.47x+82.8(式中、xは年齢、yは1μL血液あたりのCD4陽性T細胞数の予測値である)であり、相関係数は低かった(R=0.05)。このように、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陰性T細胞数という特定パラメータは、非特定パラメータよりも優れるものの、所定量血液あたりのCD8陽性且つCD28陽性T細胞数には劣る。
【0077】
次に、図5に示す回帰式に各年齢を入力し、各年齢のおける1μL血液あたりの特定T細胞の予測値を求め、得られた予測値と検査値との差を求め、残差を求める。つまり、残差は、検査値(1μL血液あたりの特定T細胞)−予測値(回帰式より得られる値)なる式に基づいて求められる。
【0078】
次に、Tリンパ球年齢を算出する。計算式によるTリンパ球年齢(計算値年齢)は、前述した回帰式を変換した下式に被検者の1μL血液あたりの特定T細胞の検査値を代入することにより、求められる。
計算値年齢=(523−検査値)/4.87
【0079】
しかし、このようにして得られる計算値年齢は推定値であり、実用的には、ある程度の幅をもって表す方が実際に則している。そこで、次に示すように、CD8+CD28+陽性率又は1μL血液あたりの特定T細胞の検査値と、それらの予測値との差である残差が正規分布を示すことから、Tリンパ球年齢の幅を定める。
【0080】
被検者の実年齢から得られる予測値と検査値との差、即ち残差が正規分布を示すので、残差の標準偏差を下式から求めることができる。
【数1】
【0081】
得られた残差の標準偏差SDに基づいて、年齢表現の範囲を、図13に示すように、±0.5SD、±1.OSD、±1,5SD、±2.OSDといったように区切る。この場合、残差は、±45(0.5SD)、±90(1.OSD)、±135(1.5SD)、±180(2.OSD)である。
【0082】
これらの標準偏差を基にした残差から被険者の実年齢とTリンパ球年齢との隔たりを計算する。まず、計算値年齢を前述の式から求め、実年齢との差を見ると、いずれの年齢においても標準偏差から求められる値は略同じであり、±0.5SDは各年齢±約15歳であり、±1.0SDは±約30歳であり、±1.5SDは±約45歳であり、±2.OSDは±約60歳であり、±2.OSD以上は±約60歳以上である。
【0083】
Tリンパ球年齢が実際の年齢の値に対応するよう、約17〜約99歳で評価を行うことができるように設定するため、以上のようにして得られた計算値年齢と実年齢との差を20%とし表現形年齢とする。即ち、表現形年齢を、次式から求める。
表現形年齢=実年齢+(計算値年齢−実年齢)×0.2
【0084】
免疫力評価装置1は、上記の免疫力評価プログラムによって、次の手順を実行する。
(1)入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰式に代入して特定パラメータの予測値を算出する手順(特定パラメータの予測値算出手段67)。
(2)入力された特定パラメータの検査値と予測値とから特定パラメータの残差を算出する手順(特定パラメータの残差算出手段68)。
(3)得られた残差から、ランク判定及びTリンパ球年齢を算出する手順(ランク判定及びTリンパ球年齢算出手段69)。
【0085】
図11は、入力部10に入力された特定パラメータの検査値及び実年齢に基づいて、コンピュータ本体20が行う免疫力の評価処理の例を説明するフローチャートである。
【0086】
まず、免疫力の評価を受ける者の住所、氏名、実年齢、性別、既往症、現症、等の関連情報、並びに特定パラメータ値等を入力部10から入力し、エンターキーを押下操作する(S31)。次に、入力された実年齢を、予め求めて記録されている回帰式に代入して特定パラメータの予測値を算出する(S32)。
【0087】
S32で得た予測値と、入力された特定パラメータの検査値とから残差を算出する(S33)。得られた残差、つまり予測値及び検査値から、図12に示されるような検査値のランクA〜Iを判定すると共に、Tリンパ球年齢を求める(S34)。即ち、評価テーブル80には、図12に示すような、特定パラメータの検査値及び予測値に対する免疫評価ランク及びTリンパ球年齢の評価表が格納されており、S34では、この評価表から検査値及び予測値に基づいてランク判定を行い、Tリンパ球年齢を算出する。なお、図12のTリンパ球年齢において、最若年齢は17〜20歳とし、最高年齢は96〜99歳とする。
【0088】
以上の評価結果を表示部40に表示し(S35)、処理を終了する。評価内容としては、「被験者の実年齢を含む関連情報」、「特定パラメータの検査値」、「特定パラメータの予測値」、「残差」、「免疫評価ランク」及び「Tリンパ球年齢」等が挙げられる。なお、手順自体の詳細は、特許文献1を参照してよい。
【0089】
(第2態様)
本態様に係る免疫力評価方法は、採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、算出手順では、免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる。CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いることで、算出される評価値を介して、総合的な免疫力を高精度に評価できる。
【0090】
第1態様と同様に、特定T細胞としては、CD8陽性且つCD28陽性のT細胞を用いることが好ましく、特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0091】
ここで「免疫細胞マーカー」は、採取された血液に含まれる複数の免疫細胞に対応するものである。免疫細胞マーカーとしては、特定パラメータを含む限りにおいて特に限定されない。年齢との相関性に優れる点では、単位血液量当たりのT細胞数、T細胞増殖係数、CD4T細胞/CD8T細胞比率、単位血液量当たりのナイーブT細胞数、ナイーブT細胞/メモリーT細胞比率、単位血液量当たりのB細胞数、及び単位血液量当たりのNK(ナチュラルキラー)細胞数からなる群より選ばれる1種以上を併用することが好ましく、特にT細胞増殖係数を併用することが好ましい。なお、各マーカーの計測手順は、特許文献1を参照してよい。
【0092】
免疫細胞マーカーとして特定パラメータ以外のものを併用する場合には、かかる免疫細胞マーカーの組み合わせは、被験者の疾病に対応したもの(その疾病に罹患することで大きく変動する傾向が強いマーカー)にしてもよいし、実年齢に対応したもの(加齢に応じて大きく変動する傾向が強いマーカー)にしてもよい。
【0093】
各免疫細胞マーカーに基づく評価値は、計測値そのものであってもよいし、計測値が点数化されたものでもよい。計測値の点数化の一例では、健常者の免疫細胞マーカーの値を、累積度数10(%)未満の範囲、累積度数10(%)以上40(%)未満の範囲、及び累積度数40(%)以上の範囲からなる3つの段階に区分し、免疫力の高い区分から低い区分に向けて次第に小さな点数を割り当てる。このような累積度数に基づいて3つの段階に区分することにより、点数化を的確に行うことができる。
【0094】
具体的には、累積度数10(%)の値及び累積度数40(%)の値を基準として、累積度数10(%)以下であれば1(点)、累積度数10(%)の値と累積度数40(%)の値との間であれば2(点)、累積度数40(%)の値を超えていれば3(点)を割り当てる。つまり、健常者の値について累積度数10(%)未満の範囲を免疫力が低いレベルを示す1(点)とし、累積度数10(%)以上40(%)未満の範囲を免疫力が中等度のレベルを示す2(点)とし、累積度数40(%)以上の範囲を免疫力が充分に高いレベルを示す3(点)とする。
【0095】
本態様では、3つの区分にそれぞれ1、2、3(点)をそれぞれ割り当てたが、これに限るものではなく、免疫力が高いレベルには対応する高い点数を、また、低いレベルには対応する低い点数を割り当てればよい。なお、上記した累積度数10(%)、累積度数40(%)は、データベース50に蓄積される健常者数の増加に伴って若干変動する。
【0096】
このようにして得られる評価値は、レーダーグラフ等として表示して個別に比較検討してもよいし、特許文献1に示されるような手順で合算してもよい。
【0097】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
【図面の簡単な説明】
【0098】
【図1】本発明の一実施形態に係る免疫力評価装置のブロック図である。
【図2】図1の免疫力評価装置を構成するコンピュータ本体のブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態に係る特定パラメータと、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図5】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図6】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、各性別健常者の年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図7】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、T細胞増殖係数との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図8】比較例に係るパラメータと、T細胞増殖能との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図9】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図10】本発明の別の実施形態に係る特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を示すグラフである。
【図11】図2のコンピュータ本体が行う免疫力の評価処理を示すフローチャートである。
【図12】本発明の一実施形態に係る特定パラメータの検査値及び予測値に対する免疫評価ランク及びTリンパ球年齢の評価表である。
【図13】年齢表現の範囲の区切りの一例を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、
前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する免疫力評価方法。
【請求項2】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項1記載の免疫力評価方法。
【請求項3】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の免疫力評価方法。
【請求項4】
前記算出手順は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める手順を有する請求項1から3いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項5】
免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、
前記算出手順では、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価方法。
【請求項6】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項5記載の免疫力評価方法。
【請求項7】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項5又は6記載の免疫力評価方法。
【請求項8】
前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項5から7いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項9】
前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項8記載の免疫力評価方法。
【請求項10】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段とを備える免疫力評価装置。
【請求項11】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項10記載の免疫力評価装置。
【請求項12】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項10又は11記載の免疫力評価装置。
【請求項13】
前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める推定範囲算出手段を有する請求項10から12いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項14】
免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、を備え、
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価装置。
【請求項15】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項14記載の免疫力評価装置。
【請求項16】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項14又は15記載の免疫力評価装置。
【請求項17】
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項14から16いずれか記載の免疫力評価装置。
【請求項18】
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項17記載の免疫力評価装置。
【請求項19】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させるための免疫力評価プログラム。
【請求項20】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項19記載の免疫力評価プログラム。
【請求項21】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項19又は20記載の免疫力評価プログラム。
【請求項22】
前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める請求項19から21いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【請求項23】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、して機能させ、
前記算出手段には、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いさせる免疫力評価プログラム。
【請求項24】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項23記載の免疫力評価プログラム。
【請求項25】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項23又は24記載の免疫力評価プログラム。
【請求項26】
前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項23から25いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【請求項27】
前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項26記載の免疫力評価プログラム。
【請求項1】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液における、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数を計測する計測手順と、
前記特定T細胞の数に依存する特定パラメータ及び年齢の相関関係に基づいた回帰式と、計測した特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手順とを有する免疫力評価方法。
【請求項2】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項1記載の免疫力評価方法。
【請求項3】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項1又は2記載の免疫力評価方法。
【請求項4】
前記算出手順は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める手順を有する請求項1から3いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項5】
免疫力を評価する免疫力評価方法であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手順と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手順と、を有し、
前記算出手順では、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価方法。
【請求項6】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項5記載の免疫力評価方法。
【請求項7】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項5又は6記載の免疫力評価方法。
【請求項8】
前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項5から7いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項9】
前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項8記載の免疫力評価方法。
【請求項10】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記記憶手段に記憶された回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段とを備える免疫力評価装置。
【請求項11】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項10記載の免疫力評価装置。
【請求項12】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項10又は11記載の免疫力評価装置。
【請求項13】
前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める推定範囲算出手段を有する請求項10から12いずれか記載の免疫力評価方法。
【請求項14】
免疫力を評価する免疫力評価装置であって、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、を備え、
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いる免疫力評価装置。
【請求項15】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項14記載の免疫力評価装置。
【請求項16】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項14又は15記載の免疫力評価装置。
【請求項17】
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項14から16いずれか記載の免疫力評価装置。
【請求項18】
前記算出手段は、前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項17記載の免疫力評価装置。
【請求項19】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータと、年齢との相関関係に基づいた回帰式を記憶する記憶手段と、
前記回帰式と、入力された特定T細胞の数とに基づいて、Tリンパ球年齢を求める算出手段として機能させるための免疫力評価プログラム。
【請求項20】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項19記載の免疫力評価プログラム。
【請求項21】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項19又は20記載の免疫力評価プログラム。
【請求項22】
前記算出手段は、入力された実年齢を回帰式に代入して前記特定T細胞数の予測値を求め、この予測値と、計測した特定T細胞の数とからTリンパ球年齢の推定範囲を求める請求項19から21いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【請求項23】
採取した血液から免疫力を評価する免疫力評価プログラムであって、コンピュータを、
採取した血液に含まれる各免疫細胞に対応する免疫細胞マーカーに基づく評価値を求める算出手段と、
前記評価値から免疫力を評価する評価手段と、して機能させ、
前記算出手段には、前記免疫細胞マーカーとして、CD8陽性且つCD28陽性又は陰性である特定T細胞の数に依存する特定パラメータを用いさせる免疫力評価プログラム。
【請求項24】
前記特定T細胞は、CD8陽性且つCD28陽性である請求項23記載の免疫力評価プログラム。
【請求項25】
前記特定パラメータは、所定量血液あたりの前記特定T細胞の数、及びCD8陽性細胞数に対する前記特定T細胞数の割合からなる群から選ばれる1種以上である請求項23又は24記載の免疫力評価プログラム。
【請求項26】
前記免疫細胞マーカーとして、前記特定パラメータ以外のマーカーを併用する請求項23から25いずれか記載の免疫力評価プログラム。
【請求項27】
前記免疫細胞マーカーとして、T細胞数及びT細胞増殖能の双方に依存するT細胞増殖係数を併用する請求項26記載の免疫力評価プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
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【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−145205(P2010−145205A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−321991(P2008−321991)
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(504179255)国立大学法人 東京医科歯科大学 (228)
【Fターム(参考)】
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