説明

免疫抑制剤としてのヒストンデアセチラーゼ阻害剤

有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物を、単独でまたは第二の薬理学的活性剤との組み合わせで投与することを含む、免疫応答または免疫介在応答を予防または抑制する方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、特に、急性または慢性移植拒絶反応の遅延、予防または処置のために、免疫抑制剤として使用するための、医薬として有用な、免疫抑制活性を有するヒストンデアセチラーゼ(“HDAC”)阻害剤化合物に関する。
【0002】
背景技術
肝臓、腎臓、肺および心臓の臓器移植は、現在、末期の臓器疾患の処置として正式に行われている。同種移植片ならびに異種移植片移植が行われている。しかしながら、急性拒絶反応および長期の慢性拒絶反応の問題のため、臓器移植はまだ不可逆性臓器疾患の永続的な解決ではない。
【0003】
急性拒絶反応は、それ自体急性移植片機能不全として現れ、ドナー組織に対するレシピエントの免疫反応の結果である。急性拒絶反応は、それが処置されなければ、移植片損失に至り得る。急性拒絶反応の発症の増加は、慢性拒絶反応の危険性の増加と相関している。進行性および不可逆性移植片機能不全として現れる慢性拒絶反応は、臓器移植片損失の主要な原因である。慢性拒絶反応は、有効な処置または予防モダリティーが知られていないため、容赦なく、制御不可能であるように見える。故に、例えば急性および慢性移植片拒絶反応の発現の予防、制御または改善に有効な、免疫抑制処置の必要性が続いている。
【0004】
ヒストンの可逆的アセチル化は、転写因子のDNAへの接近性を変えることにより作用する、遺伝子発現の主要な調節因子である。正常細胞では、ヒストンデアセチラーゼ(HDAC)およびヒストンアセチルトランスフェラーゼは、共に、ヒストンのアセチル化のレベルを制御し、バランスを維持する。
【0005】
哺乳類HDACは、配列相同性により3クラスに分類できる:
クラスIは、酵母Rpd3様タンパク質(HDAC1、2、3、8および11)から成る。クラスIIは酵母HDA1様タンパク質(HDAC4、5、6、7、9および10)から成る。クラスIIIは酵母SIR2様タンパク質(SIRT1、2、3、4、5、6、7)を含む。
【0006】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤は、クロマチン構造および遺伝子発現を制御するヒストンの過アセチル化を誘発する。これらの阻害剤はまた増殖停止、細胞分化、および腫瘍細胞のアポトーシスを誘発する。
【0007】
HDACの阻害は種々の細胞応答をもたらす。驚くべきことに、本発明により、HDAC阻害剤化合物が、単独でまたは他の治療剤と組み合わせて、免疫抑制剤として有効であり、抗移植拒絶反応剤として有効であり、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患の処置に使用できることが、判明した。
【0008】
発明の開示
本発明は、HDAC阻害剤(“HDAI”)化合物の、単独または免疫抑制剤もしくは免疫調節剤のような他の治療剤と組み合わせた使用、より具体的に、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患のような免疫障害の処置および/または予防のための、使用に関する。HDAI化合物はまた移植した材料の生存能を増進するために、および急性または慢性移植拒絶反応を遅延、予防または処置するためにも使用する。
【0009】
より特に、本発明は、治療的有効量のHDAI化合物を、単剤として、または他の免疫抑制剤または免疫調節剤と組み合わせて移植片レシピエント投与することによる、移植片拒絶反応(例えば急性または慢性移植片拒絶反応)の阻害に関する。
【0010】
一つの態様において、本発明は、対象、好ましくは動物、より好ましくはヒトの免疫応答を抑制する方法であり、該動物に有効量のHDAI化合物または組み合わせを投与することによる、方法を記載する。
【0011】
さらなる態様は、HDAI化合物を、単独でまたは他の免疫抑制剤もしくは免疫調節剤のような他の治療剤との組み合わせで含む、組成物を含む。本組成物は、式(I)のHDAI化合物を、単独でまたは他の免疫抑制剤もしくは免疫調節剤のような他の治療剤と組み合わせて、そして薬学的に許容される担体を含む。
【0012】
もっとも特に、HDAIと免疫調節剤もしくは免疫抑制剤のような第二の薬学的活性剤の併用投与は、いずれかの化合物を別々に投与して達成される効果の加算よりも大きい効果である、相乗効果をもたらす。
【0013】
発明の詳細な記載
本発明は、免疫抑制剤または免疫調節剤としてのヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物の使用、より具体的に、自己免疫疾患もしくは炎症性疾患のような免疫障害の処置および/または予防のための使用に関する。本発明のHDAI化合物はまた移植した材料の生存能の増進に、および臓器もしくは組織移植拒絶反応の減少または予防にも使用する。
【0014】
より特に、本発明は、移植片レシピエントに、治療的有効量のHDAIを単独でまたは他の免疫抑制剤もしくは免疫調節剤のような他の治療剤との組み合わせで投与することによる、移植片拒絶反応(例えば急性または慢性移植片拒絶反応)を阻害する方法に関する。本発明は、さらに骨髄移植後のような移植片対宿主病の予防または処置に関する。
【0015】
ヌクレオソームコアタンパク質のヒストンのアセチル化およびデアセチル化は、遺伝子発現の制御に重要な役割を演ずる。ヒストンデアセチル化は、これらの遺伝子の転写抑制を決定し、増殖刺激をもたらす。ヒストンデアセチラーゼ、HDACはまたクロマチンの構造のモデリングにも役割を演ずる。これらの酵素は、p53のようなデアセチル化転写因子により遺伝子発現を制御し、細胞サイクル制御に参加することが示されている。ヒストンデアセチラーゼの阻害は、種々の細胞応答をもたらす。
【0016】
一つの態様において、本発明は、動物に有効量のHDAI化合物を投与することによる、動物の免疫障害、免疫応答または免疫介在応答を処置、予防または抑制する方法を記載する。
【0017】
本発明は、ヒストンデアセチアーゼの阻害剤として作用する、好ましくは混合リンパ球反応(MLR)を阻害する、もっとも好ましくはマウスまたはヒトMLRで<500nMのIC50を有する、すべての化合物に関する。
【0018】
好ましい態様において、HDAIは、下記構造(I):
【化1】

〔式中、
はH、ハロまたは直鎖C−Cアルキル(とりわけメチル、エチルまたはn−プロピルであり、このメチル、エチルおよびn−プロピル置換基は、非置換であるか、またはアルキル置換基として下記の置換基で置換されている)であり;
はH、C−C10アルキル、(好ましくはC−Cアルキル、例えばメチル、エチルまたは−CHCH−OH)、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、−(CH)C(O)R、−(CH)OC(O)R、アミノアシル、HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−および−(CH)から選択され;
およびRは、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、アシルまたはアシルアミノであるか、またはRおよびRは、それらが結合している炭素と一体となって、C=O、C=SまたはC=NRを示すか、またはRは、それが結合している窒素と一体となり、そしてRは、それが結合している炭素と一体となり、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールポリヘテロ環の混合環を形成してよく;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えばベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えばピリジルメチル)、芳香族性多環、非芳香族性多環、アリールと非アリールの混合多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環およびアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnは、同一または異なり、かつ独立して0−6から選択され、nが1−6であるとき、各炭素原子は所望によりかつ独立してRおよび/またはRで置換されていてよく;
【0019】
XおよびYは、同一または異なり、かつ独立してH、ハロ、CHおよびCFのようなC−Cアルキル、NO、C(O)R、OR、SR、CNならびにNR1011から選択され;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル、2−フェニルエテニル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、OR12およびNR1314から選択され;
はOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
はH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
はC−Cアルキル、例えば、CHおよびCF、C(O)−アルキル、例えばC(O)CHおよびC(O)CFから選択され;
10およびR11は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから選択され;
12はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、アリールと非アリールの混合多環、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
13およびR14は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アミノアシルから選択されるか、またはR13およびR14は、それらが結合している窒素と一体となってC−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環であり;
15はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
16はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
17はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、芳香族性多環、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ポリヘテロアリールおよびNR1314から選択され;
mは0〜6から選択される整数であり;そして
ZはO、NR13、SおよびS(O)から選択される。〕
を有するか、またはその薬学的に許容される塩である。
【0020】
適当であれば、非置換は置換基が存在しないか、置換基が水素のみであることを意味する。
【0021】
ハロ置換基は、フルオロ、クロロ、ブロモおよびヨードから選択され、好ましくはフルオロまたはクロロである。
【0022】
アルキル置換基は、特記されない限り、直鎖および分枝鎖C−Cアルキルを含む。適当な直鎖および分枝鎖C−Cアルキル置換基の例は、メチル、エチル、n−プロピル、2−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、t−ブチルなどを含む。特記されない限り、本アルキル置換基は、非置換アルキル基ならびに、不飽和(すなわち1個またはそれ以上の二重または三重C−C結合が存在する)、アシル、シクロアルキル、ハロ、オキシアルキル、アルキルアミノ、アミノアルキル、アシルアミノおよびOR15、例えば、アルコキシを含む1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されているアルキル基の両方を含む。アルキル基の好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキシアルキル、アルキルアミノおよびアミノアルキルを含む。
【0023】
シクロアルキル置換基は、特記されない限り、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシルなどのようなC−Cシクロアルキル基を含む。特記されない限り、シクロアルキル置換基は、非置換シクロアルキル基ならびに、C−Cアルキル、ハロ、ヒドロキシ、アミノアルキル、オキシアルキル、アルキルアミノおよびアルコキシのようなOR15を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されているシクロアルキル基の両方を含む。シクロアルキル基の好ましい置換基は、ハロ、ヒドロキシ、アルコキシ、オキシアルキル、アルキルアミノおよびアミノアルキルを含む。
【0024】
アルキルおよびシクロアルキル置換基の上記の記載は、アルコキシ、アルキルアミン、アルキルケトン、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アルキルスルホニルおよびアルキルエステル置換基などを含むが、これらに限定されない他の置換基のアルキル部分にも適用する。
【0025】
ヘテロシクロアルキル置換基は、窒素、硫黄および酸素から選択される1個から3個のヘテロ原子を含む、3から9員脂肪族環、例えば4から7員脂肪族環を含む。適当なヘテロシクロアルキル置換基の例は、ピロリジル、テトラヒドロフリル、テトラヒドロチオフラニル、ピペリジル、ピペラジル、テトラヒドロピラニル、モルホリノ、1,3−ジアザパン、1,4−ジアザパン、1,4−オキサゼパンおよび1,4−オキサチアパンを含む。特記されない限り、本環は、非置換であるか、または、炭素原子上を、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、ハロ、アミノ、アルキルアミノおよびOR15、例えばアルコキシを含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されている。特記されない限り、窒素ヘテロ原子は、非置換であるか、またはH、C−Cアルキル、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アシル、アミノアシル、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニルで置換されている。
【0026】
シクロアルキルアルキル置換基は、式−(CH)n5−シクロアルキル〔式中、n5は1−6の数字である〕の化合物を含む。適当なシクロアルキルアルキル置換基は、シクロペンチルメチル−、シクロペンチルエチル、シクロヘキシルメチルなどを含む。このような置換基は、非置換であるか、またはアルキル部分またはシクロアルキル部分を、上記でアルキルおよびシクロアルキルに関して列記したものを含む適当な置換基で置換されている。
【0027】
アリール置換基は、非置換フェニルならびに、C−Cアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、O(CO)アルキル、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アミノスルホニル、アリールスルホニル、およびアルコキシのようなOR15を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されているフェニルを含む。好ましい置換基は、C−Cアルキル、シクロアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アルコキシ、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニルおよびアミノスルホニルを含む。適当なアリール基の例は、C−Cアルキルフェニル、C−Cアルコキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、メトキシフェニル、ヒドロキシエチルフェニル、ジメチルアミノフェニル、アミノプロピルフェニル、カルボエトキシフェニル、メタンスルホニルフェニルおよびトリルスルホニルフェニルを含む。
【0028】
芳香族性多環は、ナフチルならびに、C−Cアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、オキシアルキル、ハロ、ニトロ、アミノ、アルキルアミノ、アミノアルキル、アルキルケトン、ニトリル、カルボキシアルキル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、アミノスルホニルおよびアルコキシのようなOR15を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されているナフチルを含む。
【0029】
ヘテロアリール置換基は、N、OおよびSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子、例えば1個から4個のヘテロ原子を含む、5から7員芳香環の化合物を含む。典型的なヘテロアリール置換基は、フリル、チエニル、ピロール、ピラゾール、トリアゾール、チアゾール、オキサゾール、ピリジン、ピリミジン、イソオキサゾリル、ピラジンなどを含む。特記されない限り、ヘテロアリール置換基は、非置換であるか、または炭素原子上を、アルキル、上記で定義のアルキル置換基および他のヘテロアリール置換基を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されている。窒素原子は、非置換であるか、または例えばR13で置換されている;とりわけ有用なN置換基は、H、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルを含む。
【0030】
アリールアルキル置換基は、式−(CH)n5−アリール、−(CH)n5−1−(CHアリール)−(CH)n5−アリールまたは−(CH)n5−1CH(アリール)(アリール)〔式中、アリールおよびn5は上記で定義の通りである〕の基を含む。このようなアリールアルキル置換基は、ベンジル、2−フェニルエチル、1−フェニルエチル、トリル−3−プロピル、2−フェニルプロピル、ジフェニルメチル、2−ジフェニルエチル、5,5−ジメチル−3−フェニルペンチルなどを含む。アリールアルキル置換基は、非置換であるか、またはアルキル部分もしくはアリール部分または両方を、アルキルおよびアリール置換基に関して上記の通り置換されている。
【0031】
ヘテロアリールアルキル置換基は、2−、3−または4−ピリジルメチル、イミダゾリルメチル、キノリルエチルおよびピロリルブチルのような、式−(CH)n5−ヘテロアリール〔式中、ヘテロアリールおよびn5は上記で定義の通りであり、架橋基はヘテロアリール部分の炭素または窒素に結合している〕の基を含む。ヘテロアリール置換基は、非置換であるか、またはヘテロアリールおよびアルキル置換基に関して上記の通り置換されている。
【0032】
アミノアシル置換基は、式−C(O)−(CH)−C(H)(NR1314)−(CH)−R〔式中、n、R13、R14およびRは上記で定義の通りである〕の基を含む。適当なアミノアシル置換基は、グリシニル、D−トリプトファニル、L−リシニル、D−またはL−ホモセリニル、4−アミノブチリックアシル、±−3−アミノ−4−ヘキセノイルのような天然および非天然アミノ酸を含む。
【0033】
非芳香族性多環置換基は、各環が4−9員であってよく、そして各環が0個、1個またはそれ以上の二重および/または三重結合を含み得る、二環式および三環式縮合環系を含む。非芳香族性多環の適当な例は、デカリン、オクタヒドロインデン、ペルヒドロベンゾシクロヘプテン、ペルヒドロベンゾ−[f]−アズレンを含む。このような置換基は、非置換であるか、またはシクロアルキル基に関して上記の通り置換されている。
【0034】
アリールと非アリールの混合多環置換基は、各環が4−9員であってよく、そして少なくとも1個の環が芳香族性である、二環式および三環式縮合環系を含む。アリールと非アリールの混合多環の例は、メチレンジオキシフェニル、ビス−メチレンジオキシフェニル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、ジベンゾスベラン、ジヒドロアントラセン、9H−フルオレンを含む。このような置換基は非置換であるか、またはニトロで、もしくはシクロアルキル基に関して上記の通り置換されている。
【0035】
ポリヘテロアリール置換基は、各環が独立して5または6員であってよく、そして縮合環系が芳香族性となるように、O、NまたはSから選択された1個またはそれ以上のヘテロ原子、例えば、1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を含む、二環式および三環式縮合環系を含む。ポリヘテロアリール環系の適当な例は、キノリン、イソキノリン、ピリドピラジン、ピロロピリジン、フロピリジン、インドール、ベンゾフラン、ベンゾチオフラン、ベンズインドール、ベンゾオキサゾール、ピロロキノリンなどを含む。特記されない限り、ポリヘテロアリール置換基は、非置換であるか、または炭素原子上を、アルキル、上記で定義のアルキル置換基ならびに式−O−(CHCH=CH(CH)(CH))1−3Hの置換基を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されている。窒素原子は、非置換であるか、または、例えばR13で置換されている;とりわけ有用なN置換基は、H、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルを含む。
【0036】
非芳香族性ポリヘテロ環式置換基は、各環が4−9員であってよく、O、NまたはSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子、例えば、1個、2個、3個または4個のヘテロ原子を含み、0個もしくは1個またはそれ以上のC−C二重または三重結合を含む、二環式および三環式縮合環系を含む。非芳香族性ポリヘテロ環の適当な例は、ヘキシトール、cis−ペルヒドロ−シクロヘプタ[b]ピリジニル、デカヒドロ−ベンゾ[f][1,4]オキサゼピニル、2,8−ジオキサビシクロ[3.3.0]オクタン、ヘキサヒドロ−チエノ[3,2−b]チオフェン、ペルヒドロピロロ[3,2−b]ピロール、ペルヒドロナフチリジン、ペルヒドロ−1H−ジシクロペンタ[b,e]ピランを含む。特記されない限り、非芳香族性ポリヘテロ環式置換基は、非置換であるか、または炭素原子上を、アルキルおよび上記で定義のアルキル置換基を含む、1個またはそれ以上の置換基で置換されている。窒素原子は、非置換であるか、または、例えば、R13で置換されている;とりわけ有用なN置換基は、H、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルを含む。
【0037】
アリールと非アリールの混合ポリヘテロ環置換基は、4−9員であってよく、O、NまたはSから選択される1個またはそれ以上のヘテロ原子を含む、少なくとも1個の環が芳香族性でなければならない、二環式および三環式縮合環系を意味する。アリールと非アリールの混合ポリヘテロ環の適当な例は、2,3−ジヒドロインドール、1,2,3,4−テトラヒドロキノリン、5,11−ジヒドロ−10H−ジベンズ[b,e][1,4]ジアゼピン、5H−ジベンゾ[b,e][1,4]ジアゼピン、1,2−ジヒドロピロロ[3,4−b][1,5]ベンゾジアゼピン、1,5−ジヒドロ−ピリド[2,3−b][1,4]ジアゼピン−4−オン、1,2,3,4,6,11−ヘキサヒドロ−ベンゾ[b]ピリド[2,3−e][1,4]ジアゼピン−5−オンを含む。特記されない限り、アリールと非アリールの混合ポリヘテロ環式置換基は、非置換であるか、または炭素原子上を、−N−OH、=N−OH、アルキルおよび上記で定義のアルキル置換基を含む、1個またはそれ以上の適当な置換基で置換されている。窒素原子は非置換であるか、または、例えばR13で置換されている;とりわけ有用なN置換基は、H、C−Cアルキル、アシル、アミノアシルおよびスルホニルを含む。
【0038】
アミノ置換基は、1級、2級および3級アミンおよび塩形、4級アミンを含む。アミノ置換基の例は、モノ−およびジ−アルキルアミノ、モノ−およびジ−アリールアミノ、モノ−およびジ−アリールアルキルアミノ、アリール−アリールアルキルアミノ、アルキル−アリールアミノ、アルキル−アリールアルキルアミノなどを含む。
【0039】
スルホニル置換基は、アルキルスルホニルおよびアリールスルホニル、例えばメタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トシルなどを含む。
【0040】
アシル置換基は、式−C(O)−W、−OC(O)−W、−C(O)−O−Wおよび−C(O)NR1314(式中、WはR16、Hまたはシクロアルキルアルキルである)の基を含む。
【0041】
アシルアミノ置換基は、式−N(R12)C(O)−W、−N(R12)C(O)−O−Wおよび−N(R12)C(O)−NHOH(式中、R12およびWは上記で定義の通りである)の基を含む。
【0042】
置換基HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−は、式
【化2】

〔式中、nは0−3であり、そしてXおよびYは上記で定義の通りである。〕
の基である。
【0043】
好ましい各置換基は、下記を含む:
がH、ハロまたは直鎖C−Cアルキルであり;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、アミノアシルおよび−(CH)から選択され;
およびRが、同一または異なり、かつ独立してHおよびC−Cアルキルから選択されるか、またはRおよびRが、それらが結合している炭素と一体となって、C=O、C=SまたはC=NRを示し;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環、アリールと非アリールの混合多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環およびアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnが、同一または異なり、かつ独立して0−6から選択され、nが1−6であるとき、各炭素原子は非置換であるか、または独立してRおよび/またはRで置換されており;
XおよびYが、同一または異なり、かつ独立してH、ハロ、C−Cアルキル、CF、NO、C(O)R、OR、SR、CNおよびNR1011から選択され;
がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、OR12およびNR1314から選択され;
がOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
がH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
がC−CアルキルおよびC(O)−アルキルから選択され;
10およびR11が、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから選択され;
12がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
13およびR14が、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびアミノアシルから選択され;
15がH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
16がC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
17がC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよびNR1314から選択され;
mが0から6の整数であり;そして
ZがO、NR13、S、S(O)から選択される。
【0044】
有用な式(I)の化合物は、nおよびnの一方が0であり、他方が1であるものを含むR、X、Y、RおよびRがHであるもの、とりわけRがHまたは−CH−CH−OHであるものを含む。
【0045】
一つの適当なヒドロキサメート化合物の群は、式(Ia)
【化3】

〔式中、
は0−3であり、
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、アミノアシルおよび−(CH)から選択され;
'はヘテロアリール、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、芳香族性多環、非芳香族性多環、アリールと非アリールの混合多環、ポリヘテロアリールまたはアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環である。〕
のもの、またはその薬学的に許容される塩である。
【0046】
ヒドロキサメート化合物の他の適当な群は、式(Ia)
【化4】

〔式中、
は0−3であり、
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、アミノアシルおよび−(CH)から選択され;
'はアリール、アリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環およびアリールと非アリールの混合多環;とりわけアリール、例えばp−フルオロフェニル、p−クロロフェニル、p−O−C−C−アルキルフェニル、例えばp−メトキシフェニルおよびp−C−C−アルキルフェニル;およびアリールアルキル、例えばベンジル、オルト、メタまたはパラ−フルオロベンジル、オルト、メタまたはパラ−クロロベンジル、オルト、メタまたはパラ−モノ、ジまたはトリ−O−C−C−アルキルベンジル、例えばオルト、メタまたはパラ−メトキシベンジル、m,p−ジエトキシベンジル、o,m,p−トリメトキシベンジル、およびオルト、メタまたはパラ−モノ、ジまたはトリ−C−C−アルキルフェニル、例えばp−メチル、m,m−ジエチルフェニルである。〕
のもの、またはその薬学的に許容される塩である。
【0047】
他の興味深い群は、式(Ib)
【化5】

〔式中、
'はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、シクロアルキルアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、−(CH)2−4OR21(ここで、R21はH、メチル、エチル、プロピルおよびi−プロピルである)から選択され、そして
”は非置換1H−インドール−3−イル、ベンゾフラン−3−イルまたはキノリン−3−イル、または置換1H−インドール−3−イル、例えば5−フルオロ−1H−インドール−3−イルまたは5−メトキシ−1H−インドール−3−イル、ベンゾフラン−3−イルまたはキノリン−3−イルである。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。
【0048】
他の興味深いヒドロキサメート化合物の群は、式(Ic)
【化6】

〔式中、
は芳香族性または非芳香族性であって、この非芳香環は飽和または不飽和であり、
はO、SまたはN−R20であり、
18はH、ハロ、C−Cアルキル(メチル、エチル、t−ブチル)、C−Cシクロアルキル、アリール、例えば非置換フェニルまたは、4−OCHもしくは4−CFで置換されているフェニル、またはヘテロアリール、例えば2−フラニル、2−チオフェニルまたは2−、3−または4−ピリジルであり;
20はH、C−Cアルキル、C−Cアルキル−C−Cシクロアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アシル(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル)またはスルホニル(メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)であり;
は独立してH、C−C−アルキル、−OR19、ハロ、アルキルアミノ、アミノアルキル、ハロまたはヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)である1個、2個または3個の置換基であり、
19はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)および−(CHCH=CH(CH)(CH))1−3Hから選択され;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、アミノアシルおよび−(CH)から選択され;
vは0、1または2であり、
pは0−3であり、そして
qは1−5であり、かつrは0であるか、または
qは0であり、かつrは1−5である。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。他の可変置換基は上記で定義の通りである。
【0049】
とりわけ有用な式(Ic)の化合物は、RがHまたは−(CH)CHOH(式中、pは1−3である)であるもの、とりわけRがHのもの;例えば、RがHであり、そしてXおよびYが各々Hであり、そしてqが1−3であり、かつrが0であるか、またはqが0であり、かつrが1−3であるもの、とりわけZがN−R20であるものである。これらの化合物の中で、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0050】
ヒドロキサメート化合物の他の興味深い群は、式(Id)
【化7】

〔式中、
はO、SまたはN−R20であり、
18はH、ハロ、C−Cアルキル(メチル、エチル、t−ブチル)、C−Cシクロアルキル、アリール、例えば、非置換フェニルまたは、4−OCHもしくは4−CFで置換されているフェニルまたはヘテロアリールであり、
20はH、C−Cアルキル、C−Cアルキル−C−Cシクロアルキル(例えば、シクロプロピルメチル)、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)、ヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)、アシル(アセチル、プロピオニル、ベンゾイル)またはスルホニル(メタンスルホニル、エタンスルホニル、ベンゼンスルホニル、トルエンスルホニル)であり;
は独立してH、C−C−アルキル、−OR19またはハロである1個、2個または3個の置換基であり、
19はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル(例えば、ベンジル)およびヘテロアリールアルキル(例えば、ピリジルメチル)から選択され;
pは0−3であり、そして
qは1−5であり、かつrは0であるか、または
qは0であり、かつrは1−5である。〕
の化合物、またはその薬学的に許容される塩である。他の可変置換基は上記で定義の通りである。
【0051】
とりわけ有用な式(Id)の化合物は、RがHまたは−(CH)CHOH(式中、pは1−3である)であるもの、とりわけRがHであるもの;例えば、RがHであり、そしてXおよびYが各々Hであり、そしてqが1−3であり、かつrが0であるか、またはqが0であり、かつrが1−3であるものである。これらの化合物の中で、とりわけ、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0052】
本発明は、さらに式(Ie)
【化8】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。可変置換基は上記で定義の通りである。
【0053】
とりわけ有用な式(Ie)の化合物は、R18がH、フルオロ、クロロ、ブロモ、C−Cアルキル基、置換C−Cアルキル基、C−Cシクロアルキル基、非置換フェニル、パラ位を置換されているフェニル、またはヘテロアリール(例えば、ピリジル)環であるものである。
【0054】
式(Ie)の有用な化合物の他の群は、RがHまたは−(CH)CHOH(式中、pは1−3である)であるもの、とりわけRがHであるもの;例えば、RがHであり、そしてXおよびYが各々H、そしてqが1−3であり、かつrが0であるか、またはqが0であり、かつrが1−3であるものである。これらの化合物の中で、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、そしてqとrの合計は好ましくは1である。
【0055】
有用な式(Ie)の化合物の他の群は、R18がH、メチル、エチル、t−ブチル、トリフルオロメチル、シクロヘキシル、フェニル、4−メトキシフェニル、4−トリフルオロメチルフェニル、2−フラニル、2−チオフェニル、または2−、3−もしくは4−ピリジル(ここで、2−フラニル、2−チオフェニルおよび2−、3−もしくは4−ピリジル置換基は、非置換であるか、またはヘテロアリール環に関して上記の通り置換されている)であり;RがHまたは−(CH)CHOH(式中、pは1−3である)であるもの;とりわけRがHであり、そしてXおよびYが各々Hであり、そしてqが1−3であり、かつrが0であるか、またはqが0であり、かつrが1−3であるものである。これらの化合物の中で、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、そしてqとrの合計は好ましくは1である。
【0056】
20がHまたはC−Cアルキル、とりわけHである、式(Ie)の化合物が、上記の式(Ie)の化合物の各下位群の重要なメンバーである。
【0057】
N−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドおよびN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、またはその薬学的に許容される塩は、重要な式(Ie)の化合物である。
【0058】
本発明は、さらに式(If)
【化9】

の化合物、またはその薬学的に許容される塩に関する。可変置換基は上記で定義の通りである。
【0059】
有用な式(If)の化合物は、RがHまたは−(CH)CHOH(式中、pは1−3である)であるもの、とりわけRがHであるもの;例えば、RがHであり、そしてXおよびYが各々Hであり、そしてqが1−3であり、かつrが0であるか、またはqが0であり、かつrが1−3であるものである。これらの化合物の中で、Rは好ましくはHまたは−CH−CH−OHであり、qとrの合計は好ましくは1である。
【0060】
N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(ベンゾフル−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、またはその薬学的に許容される塩は、重要な式(If)の化合物である。
【0061】
上記の化合物は、しばしば薬学的に許容される塩の形で使用される。薬学的に許容される塩は、適当であれば、薬学的に許容される塩基付加塩および酸付加塩、例えば、金属塩、例えばアルカリおよびアルカリ土類金属塩、アンモニウム塩、有機アミン付加塩、およびアミノ酸付加塩、およびスルホン酸塩を含む。酸付加塩は、塩酸塩、硫酸塩およびリン酸塩のような無機酸付加塩、ならびにアルキルスルホン酸塩、アリールスルホン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩および乳酸塩のような有機酸付加塩を含む。金属塩の例は、リチウム塩、ナトリウム塩およびカリウム塩のようなアルカリ金属塩、マグネシウム塩およびカルシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、ならびに亜鉛塩である。アンモニウム塩の例は、アンモニウム塩およびテトラメチルアンモニウム塩である。有機アミン付加塩の例は、モルホリンおよびピペリジンとの塩である。アミノ酸付加塩の例は、グリシン、フェニルアラニン、グルタミン酸およびリジンとの塩である。スルホン酸塩は、メシレート、トシレートおよびベンゼンスルホン酸塩を含む。
【0062】
当業者には明らかであるように、本発明の多くのデアセチラーゼ阻害剤化合物は不斉炭素原子を含む。従って、個々の立体異性体が本発明の範囲内に包含されるものであると考えられることは理解すべきである。
【0063】
式(I)の範囲内のHDAI化合物およびそれらの合成法は、その全体を引用により本明細書に包含する、2002年3月21日公開のWO02/22577に記載されている。
【0064】
本発明の他の態様において、HDAI化合物は、ヒストンデアセチラーゼを阻害するすべての化合物から選択してよく、例えば、トラポキシンおよび他のテトラペプチド、例えばクラミドシンおよびHC Toxin;トリコスタチンおよびその類似体;アピシジン;スベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA);オキサムフラチン;MS−275;ピロキサミド;バルプロ酸;FR901228;CI−994;フェニルブチレート;酪酸ナトリウム;J. Med. Chem. 45(9):1778-84(Apr 25, 2002)に記載の通りの3−(4−アロイル−1H−2ピロリル−N−ヒドロキシ−プロペンアミド;ADHA化合物8;−(−)Depudecin;Scriptaid;およびSirtinolから選択されるような化合物であり得る。
【0065】
本HDAC阻害剤化合物は、唯一の活性成分として、または、第二の薬理学的活性剤と組み合わせて、例えば、他の免疫抑制剤、免疫調節剤、ステロイド、NSAID、またはそれらの混合物と共に投与できる。
【0066】
第二の薬理学的活性剤の具体例は、ステロイド(例えば、メチルプレドニゾロン酢酸塩);免疫調節剤(例えば、スフィンゴシン1−スフィンゴシンリン酸受容体FTY−720);NSAID;およびアザチオプリン、15−デオキシスペルグアリン、シクロスポリン、ミゾルビン、ミコフェノール酸モフェチル、ミコフェノール酸またはその塩、ブレキナールナトリウム、レフルノミド、FK−506またはFK−778のような他の既知の免疫抑制剤を含む。抗炎症適用のために、HDAI化合物は、抗炎症剤、例えば、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロンおよびデキサメタゾンのようなコルチコステロイドと投与できる。これらの活性剤の投与量は、処置すべき状態および個体に依存して変化するであろう。
【0067】
第二の薬理学的活性剤のさらなる例は、スフィンゴシン1−スフィンゴシンリン酸受容体、例えばFTY−720またはその類似体、例えば1994年4月28日公開のWO94/08943、EP1002792A1、EP0778,263A1,WO02/18395、WO02/076995、WO02/06268、JP−14316985、WO03/29184、WO03/29205、WO03/062252、WO03/062248またはWO03/061567に記載のもの、mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンおよび1994年4月28日公開のWO94/090101に記載の化合物、カルシニューリン阻害剤、シクロスポリン、CCI779、ABT578、ラパログまたはAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841;TAFA93、バイオリムス−7、バイオリムス−9、免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981など;シクロホスファミド;メトトレキサート;オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド(vapreotide)またはSOM230のようなソマトスタチン類似体;デオキシスペルグアリン化合物またはその誘導体もしくは類似体、例えば15−DSG、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD11a/CD18、CD25、CD27、CD28、CD40。CD45、CD58、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、CD152、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えばCD154に対するモノクローナル抗体、またはそのアンタゴニスト;他の免疫調節性化合物、例えばCTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4タンパク質配列と結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも一部を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えばATCC68629と命名)またはその同族体または変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、抗−LFA−1または抗−ICAM抗体、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または抗−ケモカイン抗体または抗−ケモカイン受容体抗体または低分子量ケモカイン受容体アンタゴニスト、例えば抗MCP−1抗体を含む。好ましくは、移植拒絶反応の予防、遅延または処置に有用な薬剤は、カルシニューリン阻害剤、もっとも好ましくはシクロスポリンA、FK506またはFK778である。
【0068】
コード番号、一般名または商品名により言及し、同定している活性剤の構造は、標準概論“The Merck Index”の現行版またはデータベース、例えばPatents International(例えばIMS World Publications)から取り得る。それらの対応する内容を、引用により本明細書に包含する。当業者は、これらの参考文献に基づき、製造し、医薬適応および薬理学的特性を、インビトロおよびインビボの両方の標準試験モデルにおいて試験することが充分に可能である。
【0069】
本明細書で使用する“併用投与”または“組み合わせ投与”などの用語は、選択した治療剤を、単独の患者に投与することを包含することを意味し、薬剤を必ずしも同じ経路でまたは同時に投与しない処置レジメンを含むことを意図する。
【0070】
本発明は、さらに、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤の薬学的有効量で哺乳類を処置することを含む、免疫障害(とりわけ自己免疫疾患または炎症性疾患)、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための方法に関する。
【0071】
他の態様において本発明は、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグを、書藻により、少なくとも1個の薬学的に許容される担体と共に含む、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための(とりわけ該免疫障害は自己免疫疾患または炎症性疾患から選択されるものである)、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、医薬組成物に関する。
【0072】
さらに別の態様において、本発明は、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤の、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制に、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置に使用するための、医薬組成物の製造のための、使用に関する。
【0073】
他の態様において、本発明は、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグを含む、商品包装物または製品に関する。
【0074】
細胞アッセイ:同種混合リンパ球反応(MLR):
本発明の薬剤は、T細胞阻害活性を示す。より特に、本発明の薬剤は、例えば下記試験法により証明されるように、例えば水溶液中のT細胞活性化および/または増殖を防止するする。2方向MLRを標準法に従い行う(J. Immunol. Methods, 1973, 2, 279およびMeo T. et al., Immunological Methods, New York, Academic Press, 1979, 227-39)。簡単に述べると、CBAおよびBALB/cマウスからの脾臓細胞(平底組織培養マイクロタイタープレート中、各系由来の細胞1.6×10/ウェル、合計3.2×10)を、10%FCS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(Gibco BRL, Basel, Switzerland)、50μM 2−メルカプトエタノール(Fluka, Buchs, Switzerland)および連続希釈した化合物を含むRPMI培地中でインキュベートする。試験化合物あたり、7個の3倍希釈工程をデュプリケートで行う。4日間のインキュベート後、1μCi H−チミジンを添加する。細胞を、さらに5時間のインキュベーション時間の後に回収し、取り込まれたH−チミジンを、標準法に従い測定する。MLRの背景値(低対照)は、BALB/c細胞単独の増殖である。低対照をすべての値から減ずる。いずれのサンプルも含まない高対照を100%増殖として取る。サンプルによる阻害パーセントを計算し、50%阻害に必要な濃度(IC50値)を決定する。このアッセイにおいて、本発明の薬剤は、1nMから10μM、好ましくは1nMから500nMの範囲のIC50値を有する。式(I)の化合物、例えばN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドは、9nMのIC50値を示す。
【0075】
組み合わせ
故に、他の局面において、本発明は、同時に、一緒に、別々にまたは連続して使用するための、(a)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および(b)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤を含む(ここで、(a)および(b)は、いずれの場合も遊離形またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的に許容されるプロドラッグの形で存在する)、組み合わせに関する。
【0076】
他の態様において、本発明は、(a)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および(b)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤を含む、(ここで、(a)および(b)は、いずれの場合も遊離形またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的に許容されるプロドラッグの形で存在する)、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制に使用するための、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、組み合わせに関する。
【0077】
本発明はまた、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグと組み合わせて使用するための、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制に使用するための、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、医薬または医薬組成物の製造のための、使用に関する。
【0078】
他の態様において、本発明は、(a)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグ、および(b)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグを、少なくとも1個の薬学的に許容される担体と共に含む、医薬組成物に関する。
【0079】
他の態様において本発明は、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、
とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグを含む商品包装物または製品、または
とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグを、とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグと組み合わせて使用するための指示書と共に含む、商品包装物または製品に関する。
【0080】
本発明はまた(a)とりわけ本明細書に記載のものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグ、および(b)とりわけ本明細書に記載のものから選択される第二の薬理学的活性剤(ここで、(a)および(b)は、いずれの場合も遊離形またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的に許容されるプロドラッグの形で存在する)を、同時に、一緒に、別々にまたは連続して使用するための指示書と共に含む、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、商品包装物または製品に関する。
【0081】
本発明は、さらに“組み合わせ製剤”に関し、これは、本明細書で、とりわけ上記で定義の組み合わせパートナー(a)および(b)を、独立して投与でき、または、組み合わせパートナー(a)および(b)の区別される用量の異なる固定された組み合わせの使用により、すなわち、同時にまたは異なる時点で投与できる点で、“複数部分のキット”である。複数部分のキットの成分を、次いで、例えば、同時にまたは時間的にずらして、すなわち、複数部分のキットの任意の成分について異なる時点で、等しいまたは異なる時間間隔で投与できる。組み合わせ製剤で投与すべき組み合わせパートナー(a)の組み合わせパートナー(b)に対する総量の比率は、例えば処置すべき患者の下位集団の必要性に合うように、または、患者が経験した何らかの副作用の重症度に基づいて単独の患者の必要性に合うように、変化できる。
【0082】
本発明は、さらに、哺乳動物を、(a)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択されるヒストンデアセチラーゼ阻害剤、および(b)とりわけ本明細書に記載のものから、もっともとりわけ好ましいとして記載したものから選択される第二の薬理学的活性剤(ここで、(a)および(b)は、いずれの場合も遊離形またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的に許容されるプロドラッグの形で存在する)を含む、薬学的有効量の組み合わせで処置することを含む、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答を処置、予防または抑制する、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応を予防または処置する方法に関する。
【0083】
上記のすべての態様のための好ましい組み合わせは、HDAIがN−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド;N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド;N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、SAHAおよびそれらの薬学的に許容される塩からなる群から選択され、そして第二の薬理学的活性剤がFTY720または40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンから選択されるものである。
【0084】
本発明によって、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答を処置、予防または抑制するために、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応患者を予防または処置するために、HDAIおよび第二の薬理学的活性剤の薬学的有効量の組み合わせで、個々の薬剤について適当な処置レジメンに各々従って、同時に、一緒に、別々にまたは連続して処置する。例えば、第二の薬理学的活性剤を1日1回またはそれ以上投与してよく、HDAIを、1日1回、1日毎に1回または−薬理学的活性剤なしで使用するときにHDAI剤について適当であるような他の別のスケジュールで投与してよい。当分野の当業者は、組み合わせ成分の適当な薬学的有効量を決定する能力を有する。
【0085】
HDA阻害剤と第二の薬学的活性剤の併用投与は、いずれかの化合物を別々に投与して達成される効果の加算よりも大きい効果である、相乗効果をもたらし得る。具体的に、相乗効果は、HDAIを、スフィンゴシン1−スフィンゴシンリン酸受容体のような免疫調節剤と併用投与したときに観察される。相乗効果はまた、HDAIをmTOR阻害剤、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンと併用投与したときにも観察される。具体的に、相乗効果は、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドを、スフィンゴシン1−スフィンゴシンリン酸受容体と併用投与したときに見られる。さらに、相乗効果は、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドを、mTOR阻害剤、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンと併用投与したときに見られる。
【0086】
本発明の医薬組成物は、有効量の活性化合物(複数もある)を、経腸または非経腸投与に適した賦形剤または担体と共にまたは混合して含む。錠剤およびゼラチンカプセルは、活性剤(複数もある)を、希釈剤;滑剤、結合剤、崩壊剤;および/または吸収剤、色素、香味剤および甘味剤と共に含み得る。
【0087】
注射可能組成物は、好ましくは水性等張溶液または懸濁液であり、坐薬は有利には脂肪エマルジョンまたは懸濁液から製造する。本組成物は滅菌してよくおよび/または防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/または緩衝剤のようなアジュバントを含んでよい。加えて、本組成物は、他の治療的に価値のある物質を含み得る。
【0088】
適当な製剤はまた、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤および製剤を、意図する受け手の血液と等張にするための溶質を含み得る水性および非水性滅菌注射溶液;および、懸濁剤および増粘剤を含み得る水性または非水性懸濁液を含む。本組成物は滅菌してよくおよび/または防腐剤、安定化剤、湿潤剤または乳化剤、溶解促進剤、浸透圧調整用塩および/またはは緩衝剤のようなアジュバントを含んでよい本製剤は、単位投与または複数投与用容器、例えば、密封アンプルおよびバイアルで提供でき、使用直前に、滅菌液体担体、例えば注射用水の添加のみを必要とするフリーズドライ(凍結乾燥)条件下で貯蔵できる。即席の注射溶液および懸濁液を、先に記載の種類の滅菌粉末、顆粒および錠剤から製造できる。
【0089】
さらなる投与経路は、経皮、眼、バッカル、鼻腔内、吸入、膣内、直腸および大槽内を含む、局所適用を含む。
【0090】
本組成物は、各々慣用の混合、造粒またはコーティング法に従って製造し、好ましくは約1から50%の活性成分を含む。薬学的に許容される担体または賦形剤は、選択した投与経路および標準薬務に基づいて選択する。
【0091】
適当な投与量は、受け手の年齢、健康状態および体重、疾患の程度、もしあれば現在の処置の種類、処置の頻度および望む効果の性質に依存するであろう。本発明の化合物を、他の治療剤と段階的にまたは組み合わせて使用するとき、一般に同じ投与形を使用できる。
【0092】
一般に、HDAI化合物の経口投与は、0.05から5mg/kg/日の範囲または10mg/kg/日までの程度、例えば0.1から2mg/kg/日または7.5mg/kg/日までの程度を、1日1回、または1日2から4回に分けて投与し、または非経腸投与、例えば静脈内、例えばi.v.点滴または輸液では、0.01から2.5mg/kg/日または5mg/kg/日までの程度、例えば0.05または0.1mg/kg/日から1.0mg/kg/日までの程度を投与する。患者のための適当な投与量は、従って、500mg p.o.の程度、例えば5から100mg p.o.の程度、または0.5から125mgから250mg i.v.までの程度、例えば2.5から50mg i.v.までの程度である。
【0093】
S1P受容体アゴニスト、例えばFTY720は、任意の慣用の経路で、特に経腸的に、例えば経口で、例えば錠剤、カプセルの形で、飲用溶液または非経腸的に、例えば注射可能溶液または懸濁液の形で投与できる。経口投与のための適当な単位投与形は、約0.02から50mg活性成分、通常0.1から30mgの、例えばS1P受容体アゴニストを、1個またはそれ以上の薬学的に許容される希釈剤または担体と共に含む。
【0094】
本発明の実施に必要な投与量は、第二の薬学的活性剤がmTOR阻害剤、例えば40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシンであるとき、例えば、使用する化合物、宿主、投与形態および処置すべき状態の重症度に依存して変化するであろう。好ましい1日投与量範囲は、1回投与または分割投与として、約0.1から25mgである。患者への適当な1日投与量は、例えば0.1から25mg p.o.の程度である。
【0095】
シクロスポリンは、慣用の手段で、好ましくは1−250mg、好ましくは25−100mgの範囲の経口投与により、または25−100mg/mlの範囲の注射溶液により投与できる。
【0096】
本発明の組み合わせの相乗的な局面により、活性成分のより少ない投与量を使用して、まだ明確な効果を得ることができる。
【0097】
本発明の投与形は、HDAI化合物、所望の第二活性化合物および薬学的に許容される賦形剤を含み、第二活性化合物が別の投与単形として存在するとき、または、固定された組み合わせの投与形として存在するときを含む。“有効量”は、所望の治療的および/または予防的効果を達成するのに必要な化合物の投与量;例えば、対象の免疫応答の抑制をもたらす、または対象の臓器移植拒絶反応の抑制をもたらす、投与量である。有効量の本化合物を、適当な経路で、1回投与で、または複数回投与で投与できる。本明細書で使用する“対象”は、哺乳類、ヒトまたは、獣医学的処置を必要とする動物対象を意味する。
【0098】
HDAI化合物を、自己免疫疾患の処置、外来臓器移植の拒絶反応および/または関連する苦痛、疾患および病気の予防のために投与できる。
【0099】
さらなる態様において、本発明は、遊離形または薬学的に許容される塩形の治療的有効量の式(I)のHDAI化合物を投与することを含む、臓器または組織移植、例えば心臓、肺、複合心肺、気管、肝臓、腸、腎臓または膵臓移植のレシピエントにおける慢性拒絶反応の発現を予防または処置する方法に関する。
【0100】
HDAI化合物は、自己免疫疾患、炎症性疾患、または移植片対宿主病を有する対象、ならびに同種移植または異種移植を受けた患者における、免疫応答の処置、予防または抑制のために投与できる。さらなる方法は、移植処置の前に、同時にもしくは後に投与することによる、リンパ球増殖の阻害のためのおよび/または移植後の移植片生存の促進のための、HDAI化合物の投与を含む(ここでで使用する移植は、同種および異種移植を含む)。
【0101】
本発明は、免疫応答または免疫介在応答および疾患、例えば、心臓、腎臓、肝臓、骨髄、皮膚、角膜、血管、肺、膵臓、腸、手足、筋肉、神経組織、十二指腸、小腸、異種移植を含む膵臓島細胞などのような組織の機能のすべてまたは一部を回復させるための、合成または有機移植材料、細胞、臓器または組織の移植後の拒絶反応の処置および/または予防のための;移植片対宿主病を処置または予防するための、対象におけるHDAI化合物の使用に関する。HDAI化合物はまた自己免疫疾患および炎症状態、特に、関節炎(例えばリウマチ性関節炎、進行性関節炎慢性および変形性関節炎)およびリウマチ疾患のような、自己免疫要素を含む病因を伴う炎症状態の処置および予防にも有用である。本発明の化合物を用い得る具体的な自己免疫疾患は、自己免疫性血液学的疾患(例えば溶血性貧血、無形成性貧血、赤芽球癆および特発性血小板減少症)、全身性エリテマトーデス、甲状腺炎、橋本甲状腺炎、多発性軟骨炎、硬皮症(sclerodoma)、ウェゲナー、皮膚筋炎、慢性活動性肝炎、重症筋無力症、乾癬、アトピー性皮膚炎、脈管炎、スティーブン−ジョンソン症候群、特発性スプルー、自己免疫性炎症性腸疾患(例えば潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む)、内分泌性眼症、グレーブス病、サルコイドーシス、多発性硬化症、原発性胆汁性肝硬変、若年性糖尿病(I型糖尿病)、II型糖尿病およびその合併症、ブドウ膜炎(前部および後部)、乾燥角結膜炎および春季角結膜炎、間質性肺線維症、乾癬性関節炎、糸球体腎炎(ネフローゼ症候群ありまたはなし、例えば特発性ネフローゼ症候群または微小変化ネフロパシーを含む)および若年性皮膚筋炎を含み得る。
【0102】
HDAI化合物はまた、自己抗体介在疾患、無形成性貧血、Evan症候群、自己免疫性溶血性貧血などの処置または予防のために;およびさらに例えば、B型およびC型肝炎感染、黄色ブドウ球菌感染、ウイルス脳炎、敗血症、傷害が炎症応答により誘発される寄生虫疾患(例えば、ハンセン病)を含む、外傷性または病原体が誘発した非免疫制御のような、異常な免疫応答および/または活性化の原因となる感染症の処置のために;および、動脈硬化症、アテローム性動脈硬化症、脈管炎、結節性多発性動脈炎および心筋炎を含む、循環器疾患の予防または処置のために投与できる。加えて、本発明はまた、外来遺伝子の自家移植細胞への導入およびそのコード産物の発現のような、遺伝子療法処置と関連する免疫応答の予防/抑制のために使用できる。
【0103】
本明細書で使用する“免疫応答”は、外来のまたは自己抗原に対する、それらを中和および/または除去するための身体の反応を意味する。本明細書で使用する“寛容”なる用語は、抗原に対して、それに対して応答する能力を有する免疫系が応答しない状態を意味する。
【0104】
従って、本発明の一つの態様は、HDAI化合物の投与による、自己免疫疾患を処置する方法である。一方、本発明の他の態様は、治療を必要とする患者に、治療的有効量のHDAI化合物を投与することを含む、外来臓器移植の拒絶反応を予防または処置する方法である。
【0105】
本明細書で使用する“移植片”は、第一哺乳類(またはドナー)から得られ、第二哺乳類(またはレシピエント)、好ましくはヒトに移植できる、臓器および/または組織を意味する。“移植片”なる用語は、例えば、皮膚、眼もしくは眼の一部(例えば、角膜、網膜、水晶体)、筋肉、骨髄または骨髄の細胞成分(例えば、幹細胞、前駆細胞)、心臓、肺、心臓−肺、肝臓、腎臓、膵臓(例えば、島細胞、β細胞)、副甲状腺、腸(例えば、結腸、小腸、十二指腸)、神経組織、骨および血管構造(例えば、動脈、静脈)を含む。移植片は、適当な哺乳類(例えば、ヒトまたはブタ)、またはから得ることができ、またはある条件下では、移植片は、インビトロで細胞、例えば胚、皮膚または血液細胞および骨髄細胞を培養することにより製造できる。移植片は、好ましくはヒトから得る。
【0106】
下記実施例は、上記の本発明を説明する;しかし、それはいかなる方法でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明の組み合わせの有利な効果はまたそれ自体関連分野の当業者に既知の他の試験モデルにより決定できる。
【0107】
下記実施例は、説明の目的でここに提供し、本発明の範囲を限定する意図はない。
【0108】
実施例I
急性拒絶反応:
Balb/c(H−2)マウスをドナー動物として、および例えばC57BL/6J(H−2)マウスをレシピエントとして使用する。心臓を、既知の方法でドナーから摘出し、冷食塩水(4℃)中に保存する。レシピエント動物をイソフルオランで麻酔する。腎臓下腹部大動脈および下大静脈を露出させる。血管を、筋膜から離して3−5mmの長さで切り、結紮し、すべての短い分枝を分ける。血管を最初に近位、続いて遠位で閉塞させる。動脈切開および静脈切開を行い、管腔をヘパリン処理した生理食塩水を流す。端側動脈吻合および、続いてドナーの右肺のレシピエント下大静脈への端側吻合を行う。遠位の結紮、続いて近位の結紮を除く。縫合線の漏れを確認する。次いで、移植片を逆腹部に繋ぐ。腹部を温食塩水(37℃)を流し、傷を閉じる。移植片機能を毎日腹部の触診(palpatation)によりモニターする。拒絶反応は、移植片が心拍動を止めたときと判断する。動物を、生理食塩水100μLの、またはHDAI、例えば式(I)の化合物、例えばN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドの乳酸緩衝液pH5.5の溶液の、下記表1の投与スケジュールに従った静脈内注射により処置する:
【0109】
【表1】

【0110】
表1に示す上記の結果に見られるように、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドは、移植片生存を、2−5倍の日数延長する。
【0111】
実施例2
ラット心臓移植
使用した決闘の組み合わせは、雄Lewis(RT1ハプロタイプ)およびBN(RT1ハプロタイプ)である。動物を吸入イソフルオランを使用して麻酔する。ドナーラットを、大動脈を介した放血をしながら腹部下大静脈を介してヘパリン処理した後、胸部を開放して、心臓を急速に冷却する。大動脈を、最初の分枝に対して遠位で結紮して分け、腕頭動脈を最初の分岐点で分ける。左肺動脈を結紮して分け、右側を分けるが、開放したままにする。他のすべての血管を自由に切断し、結紮して分け、ドナー心臓を氷冷食塩水上に出す。
【0112】
レシピエントを、切開し、腎臓下腹部大動脈と大静脈の交差クランピングすることにより、準備する。移植を、10/0モノフィラメント縫糸を使用して、ドナーの腕頭動脈とレシピエント大動脈の間のおよびドナー右肺動脈のレシピエント大静脈への端側吻合でインプラントする。クランプを除き、移植片を逆腹部に繋ぎ、腹部内容物を温食塩水で洗浄し、動物を閉じて加温ランプ下で回復させる。動物を食塩水(対照);HDAI化合物、例えば式(I)の化合物、例えばN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド(“化合物P1”);WO94/09010に記載の方法で製造した40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン(“化合物P2”);WO94/08943の実施例28で製造したFTY720(“化合物P3”)または記載した通りの各々の組み合わせで処置する。移植片の生存を、腹壁を通したドナー心臓の心拍の触診によりモニターする。拒絶反応は、心拍動を止めたとき完結すると見なす。この時点で動物を殺し、移植した心臓を組織学のために固定する。下記表2は、生存および組織学的データを要約する。急性拒絶反応のグレードのための指標は1=軽微;2=中度;3=顕著;4=重度。
【0113】
【表2】

【0114】
実施例3
実施例1を、HDAI化合物としてN−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドを使用して、そして実施例1に示したのと同じ方法に従い、繰り返し得る。
【0115】
実施例4
実施例1を、HDAI化合物としてスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を使用して、そして実施例1に示したのと同じ方法に従い、繰り返し得る。
【0116】
実施例5
実施例2を、HDAI化合物としてN−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドを使用して、そして実施例2に示したのと同じ方法に従い、繰り返し得る。
【0117】
実施例6
実施例2を、化合物P3の代わりにスベロイルアニリドヒドロキサム酸(SAHA)を使用して、そして実施例2に示したのと同じ方法に従い、繰り返し得る。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項2】
臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項3】
動物に、移植処置の前に、同時にもしくは後に、有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物を投与することにより、移植後の移植片生存の促進に使用するための医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項4】
免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制のための、第二の薬理学的活性剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグと組み合わせて使用するための、医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項5】
臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置のための、第二の薬理学的活性剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグと組み合わせて使用するための、医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項6】
動物に、移植処置の前に、同時にもしくは後に、有効量のヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物を投与することにより、移植後の移植片生存の促進を促進するための、第二の薬理学的活性剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグと組み合わせて使用するための、医薬の製造のための、ヒストンデアセチラーゼ阻害剤またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグの使用。
【請求項7】
第二の薬理学的活性剤が、免疫抑制剤、免疫調節剤、ステロイド、NSAIDまたはそれらの混合物から選択される、請求項4−6のいずれかに記載の使用。
【請求項8】
第二の薬理学的活性剤が、スフィンゴシン1−スフィンゴシンリン酸受容体、例えばFTY−720またはその類似体、mTOR阻害剤、例えばラパマイシン、40−O−(2−ヒドロキシエチル)−ラパマイシン;カルシニューリン阻害剤、シクロスポリン、CCI779、ABT578、ラパログまたはAP23573、AP23464、AP23675またはAP23841;TAFA93、バイオリムス−7、バイオリムス−9、免疫抑制特性を有するアスコマイシン、例えばABT−281、ASM981など;シクロホスファミド;メトトレキサート;オクトレオチド、ランレオチド、バプレオチド(vapreotide)またはSOM230などのソマトスタチン類似体;デオキシスペルグアリン化合物またはその誘導体もしくは類似体、例えば15−DSG、白血球受容体、例えば、MHC、CD2、CD3、CD4、CD7、CD8、CD11a/CD18、CD25、CD27、CD28、CD40、CD45、CD58、CD80、CD86、CD134、CD137、ICOS、CD150(SLAM)、CD152、OX40、4−1BBまたはそれらのリガンド、例えばCD154に対するモノクローナル抗体、またはそのアンタゴニスト;他の免疫調節性化合物、例えばCTLA4またはその変異体の細胞外ドメインの少なくとも一部、例えば非CTLA4タンパク質配列と結合したCTLA4またはその変異体の少なくとも一部を有する組み換え結合分子、例えばCTLA4Ig(例えばATCC68629と命名)もしくはその同族体または変異体、例えばLEA29Y;接着分子阻害剤、例えばLFA−1アンタゴニスト、ICAM−1または−3アンタゴニスト、抗−LFA−1または抗−ICAM抗体、VCAM−4アンタゴニストまたはVLA−4アンタゴニスト;または抗−ケモカイン抗体または抗−ケモカイン受容体抗体または低分子量ケモカイン受容体アンタゴニスト、例えば抗MCP−1抗体、およびそれらの混合物から選択される、請求項7記載の使用。
【請求項9】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、マウスまたはヒト混合リンパ球反応(MLR)において、<500nMのIC50を有する、請求項1−8のいずれかに記載の使用。
【請求項10】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が
【化1】

〔式中、
はH、ハロまたは直鎖C−Cアルキルであり;
はH、C−C10アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、−(CH)OC(O)R、アミノアシル、HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−および−(CH)から選択され;
およびRは、同一または異なり、かつ独立して、H、C−Cアルキル、アシルまたはアシルアミノであるか、またはRおよびRは、それらが結合している炭素と一体となって、C=O、C=SもしくはC=NRを示すか、またはRは、それが結合している窒素と一体となり、そしてRは、それが結合している炭素と一体となり、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールポリヘテロ環の混合環を形成してよく;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環、アリールと非アリールの混合多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環およびアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnは、同一または異なり、かつ独立して0−6から選択され、nが1−6であるとき、各炭素原子は、所望によりかつ独立してRおよび/またはRで置換されていてよく;
XおよびYは、同一または異なり、かつ独立してH、ハロ、C−Cアルキル、NO、C(O)R、OR、SR、CNおよびNR1011から選択され;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、OR12およびNR1314から選択され;
はOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
はH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
はC−CアルキルおよびC(O)−アルキルから選択され;
10およびR11は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから選択され;
12はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、アリールと非アリールの混合多環、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
13およびR14は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アミノアシルから選択されるか、またはR13およびR14は、それらが結合している窒素と一体となって、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環であり;
15はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
16はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
17はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、芳香族性多環、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ポリヘテロアリールおよびNR1314から選択され;
mは0〜6から選択される整数であり;そして
ZはO、NR13、SおよびS(O)から選択される。〕
またはその薬学的に許容される塩である、請求項1−9のいずれかに記載の使用。
【請求項11】
同時に、一緒に、別々にまたは連続して使用するための、(a)ヒストンデアセチラーゼ阻害剤および(b)第二の薬理学的活性剤を含む(ここで、(a)および(b)は、いずれの場合も遊離形またはその薬学的に許容される塩もしくは薬学的に許容されるプロドラッグの形で存在する)、免疫障害、免疫応答または免疫介在応答の処置、予防または抑制に、または臓器、組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応の予防または処置に使用するための、組み合わせ。
【請求項12】
第二の薬理学的活性剤が、請求項7または8に記載の群から選択される、請求項11記載の組み合わせ。
【請求項13】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、請求項10記載の式(I)の化合物である、請求項11または12に記載の組み合わせ。
【請求項14】
ヒストンデアセチラーゼ阻害剤が、N−ヒドロキシ−3−[4−[[(2−ヒドロキシエチル)[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、N−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(1H−インドール−3−イル)エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミドおよびN−ヒドロキシ−3−[4−[[[2−(2−メチル−1H−インドール−3−イル)−エチル]−アミノ]メチル]フェニル]−2E−2−プロペンアミド、またはその薬学的に許容される塩もしくはその薬学的に許容されるプロドラッグからなる群から選択される、請求項13記載の組み合わせ。
【請求項15】
HDAI化合物および第二の薬学的活性剤が、相乗的に有効な量で存在する、請求項11から14のいずれかに記載の組み合わせ。
【請求項16】
動物の免疫障害、免疫応答または免疫介在応答を処置、予防または抑制する方法であり、該動物に、有効量の式(I):
【化2】

〔式中、
はH、ハロまたは直鎖C−Cアルキルであり;
はH、C−C10アルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、−(CH)C(O)R、−(CH)OC(O)R、アミノアシル、HON−C(O)−CH=C(R)−アリール−アルキル−および−(CH)から選択され;
およびRは、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、アシルまたはアシルアミノから選択されるか、またはRおよびRは、それらが結合している炭素と一体となって、C=O、C=SまたはC=NRを示すか、またはRは、それが結合している窒素と一体となり、そしてRは、それが結合している炭素と一体となり、C−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールポリヘテロ環の混合環を形成してよく;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アシル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、芳香族性多環、非芳香族性多環、アリールと非アリールの混合多環、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環およびアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環から選択され;
n、n、nおよびnは、同一または異なり、かつ独立して0−6から選択され、nが1−6であるとき、各炭素原子は、所望によりかつ独立してRおよび/またはRで置換されていてよく;
XおよびYは、同一または異なり、かつ独立してH、ハロ、C−Cアルキル、NO、C(O)R、OR、SR、CNおよびNR1011から選択され;
はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、OR12およびNR1314から選択され;
はOR15、SR15、S(O)R16、SO17、NR1314およびNR12SOから選択され;
はH、OR15、NR1314、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
はC−CアルキルおよびC(O)−アルキルから選択され;
10およびR11は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキルおよび−C(O)−アルキルから選択され;
12はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキルアルキル、アリール、アリールと非アリールの混合多環、ヘテロアリール、アリールアルキルおよびヘテロアリールアルキルから選択され;
13およびR14は、同一または異なり、かつ独立してH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、アミノアシルから選択されるか、またはR13およびR14は、それらが結合している窒素と一体となってC−Cヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、非芳香族性ポリヘテロ環またはアリールと非アリールの混合ポリヘテロ環であり;
15はH、C−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
16はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、ポリヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキルおよび(CH)ZR12から選択され;
17はC−Cアルキル、C−Cシクロアルキル、C−Cヘテロシクロアルキル、アリール、芳香族性多環、ヘテロアリール、アリールアルキル、ヘテロアリールアルキル、ポリヘテロアリールおよびNR1314から選択され;
mは0〜6から選択される整数であり;そして
ZはO、NR13、SおよびS(O)から選択される。〕
のヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物またはその薬学的に許容される塩を投与することを含む、方法。
【請求項17】
臓器または組織または細胞移植のレシピエント患者における急性または慢性移植拒絶反応を予防または処置する方法であり、該患者に治療的有効量の請求項16に記載の式(I)の化合物を投与することを含む、方法。
【請求項18】
さらに第二の薬理学的活性剤を含む、請求項16または17に記載の方法。
【請求項19】
第二の薬理学的活性剤が免疫抑制剤、免疫調節剤、抗生物質、抗ウイルス剤、ステロイド、NSAIDまたはそれらの混合物から選択される、請求項18記載の方法。
【請求項20】
移植後の移植片生存を促進する方法であり、動物に、移植処置の前に、同時にもしくは後に、有効量の、請求項15に記載の式(I)のヒストンデアセチラーゼ阻害剤化合物を投与することを含む、方法。


【公表番号】特表2007−501775(P2007−501775A)
【公表日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−522330(P2006−522330)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【国際出願番号】PCT/EP2004/008849
【国際公開番号】WO2005/013958
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(597011463)ノバルティス アクチエンゲゼルシャフト (942)
【Fターム(参考)】