説明

免疫担当細胞においてインターフェロン−γの産生を誘導する蛋白質

【課題】 免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質並びにその蛋白質の製造方法及び感受性疾患剤としての用途を提供する。
【解決手段】N末端付近に特定のアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてインターフェロン−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質と、同蛋白質を産生し得るヒト細胞を増殖させ、増殖細胞から蛋白質を採取してなる蛋白質の製造方法と、有効成分として同蛋白質を含んでなる感受性疾患剤を要旨とする。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、免疫担当細胞においてインターフェロン−γ(以下、「IFN−γ」と略記する。)の産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】IFN−γは抗ウイルス作用、抗腫瘍作用、免疫調節作用を有する蛋白質として知られ、抗原やマイトジェンによる刺激をうけた免疫担当細胞が産生すると云われている。これら生物作用故に、IFN−γはその発見当初より抗腫瘍剤としての実用化が鶴首され、現在では脳腫瘍を始めとする悪性腫瘍一般の治療剤として精力的に臨床試験が進められている。現在入手し得るIFN−γは免疫担当細胞が産生する天然型IFN−γと、免疫担当細胞から採取したIFN−γをコードするDNAを大腸菌に導入してなる形質転換体が産生する組換え型IFN−γに大別され、上記臨床試験においては、これらのうちのいずれかが「外来IFN−γ」として投与されている。
【0003】このうち、天然型IFN−γは、通常、培養株化した免疫担当細胞をIFN−γ誘導剤を含む培養培地で培養し、その培養物を精製することにより製造される。この方法では、IFN−γ誘導剤の種類がIFN−γの産生量や精製のし易さ、さらには、製品の安全性等に多大の影響を及ぼすと云われており、通常、コンカナバリンA、レンズ豆レクチン、アメリカヤマゴボウレクチン、エンドトキシン、リポ多糖などのマイトジェンが頻用される。しかしながら、これら物質はいずれも分子中に多様性があり、給源や精製方法に依って品質が変動し易く、誘導能の一定したIFN−γ誘導剤を所望量入手し難いという問題がある。くわえて、上記物質の多くは生体に投与すると顕著な副作用を示したり、物質に依っては毒性を示すものすらあり、生体に直接投与してIFN−γの産生を誘導するのが極めて困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する新規な蛋白質の発見に基づくものである。本発明者らが哺乳類の細胞が産生するサイトカインにつき研究していたところ、コリネバクテリウム死菌体とリポ多糖で予処理したマウスの肝臓中にIFN−γの産生を誘導する物質が存在することを見出した。カラムクロマトグラフィーを中心とする種々の方法を組合せてこの物質を単離し、その性質・性状を調べたところ、その本質は蛋白質であり、次のような理化学的性質を有していることが判明した。
(1) 分子量SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法又はゲル濾過法で測定すると、分子量19,000±5,000ダルトンを示す。
(2) 等電点クロマトフォーカシング法で測定すると、4.8±1.0に等電点を示す。
(3) 部分アミノ酸配列配列表における配列番号8及び9に示す部分アミノ酸配列を有する。
(4) 生物作用免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する。
【0005】斯かる理化学的性質を有する蛋白質は未だ知られておらず、新規物質であると判断される。そこで、本発明者らが引続きマウス肝細胞を鋭意検索したところ、この蛋白質をコードするDNAを単離するのに成功した。解読したところ、このDNAは471塩基対からなり、配列表における配列番号10に示すアミノ酸配列をコードしていることが判明した(ただし、符号「Xaa」を付して示したアミノ酸は、メチオニン又はトレオニンを表わすものとする)。
【0006】これら知見に基づき、ヒト肝細胞を引続き検索したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するさらに別の新規物質をコードするDNAが得られた。この物質の本質はポリペプチドであり、DNAを解読したところ、配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列を含んでなることが判明した(ただし、符号「Xaa」を付して示したアミノ酸は、イソロイシン又はトレオニンを表わすものとする)。その後、このDNAを大腸菌に導入し、発現させたところ、培養物中にポリペプチドが好収量で産生した。以上の知見は、同じ特許出願人による特開平8−27189号公報及び特開平8−193098号公報に開示されている。また、同じ特許出願人による特願平7−78357号明細書には、斯かるポリペプチドの感受性疾患剤としての用途が開示されている。ところが、一般に、医薬品に配合してヒトに投与する生理活性蛋白質はヒト細胞由来のものが望ましいところ、斯かるポリペプチドを産生し得るヒト細胞は未だ見出されていない。
【0007】斯かる状況に鑑み、この発明の課題は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質を提供することにある。
【0008】この発明の別の課題は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質の製造方法を提供することにある。
【0009】この発明のさらに別の課題は、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質の感受性疾患剤としての用途を提供することにある。
【0010】
【課題を解決するための手段】この発明は、前記第一の課題を、N末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてインターフェロン−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質により解決するものである。
【0011】この発明は、前記第二の課題を、斯かる蛋白質を産生し得るヒト細胞を増殖させ、増殖細胞から蛋白質を採取してなる蛋白質の製造方法により解決するものである。
【0012】この発明は、前記第三の課題を、有効成分として斯かる蛋白質を含んでなる感受性疾患剤により解決するものである。
【0013】
【作用】この発明の蛋白質は、免疫担当細胞に単独又は適宜補因子とともに作用させると、IFN−γの産生を誘導する。
【0014】ヒト細胞由来の斯かる蛋白質は、ヒト細胞を用いるこの発明の製造方法により、所望量を比較的容易に製造することができる。
【0015】この発明の感受性疾患剤は、ヒトに投与すると、ヒト体内の免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導し、IFN−γ感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。当該蛋白質がキラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成を誘導する性質を兼備するときには、悪性腫瘍を始めとする難治性疾患の治療に効果を発揮する。
【0016】
【発明の実施の形態】以下、この発明の実施の形態につき説明するに、この発明でいう蛋白質とは、N末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するポリペプチド及び糖蛋白質全般を意味する。ヒト細胞の種類や増殖条件にも依るが、この発明の蛋白質はN末端及びC末端付近にそれぞれ配列表における配列番号1及び3に示すアミノ酸配列を有し、中間部に配列表における配列番号4乃至5に示すアミノ酸配列を介して、全体として配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列を含んでなることがある(ただし、符号「Xaa」を付して示したアミノ酸は、イソロイシン又はトレオニンを表わすものとする)。そして、還元剤存在下のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると、分子量14,000乃至24,000ダルトン、通常、18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置に蛋白質のバンドを示す。ヒト細胞の種類や増殖条件に依っては、配列表における配列番号1及び3に示すN末端及び/又はC末端付近のアミノ酸配列にアミノ酸がさらに1個又は2個以上付加したり、それらN末端及び/又はC末端付近のアミノ酸配列におけるアミノ酸が1個又は2個以上欠失することがあるが、斯かるアミノ酸配列を有する蛋白質であっても、それがヒト細胞に由来し、免疫担当細胞において単独又は適宜補因子と協働してIFN−γの産生を誘導するかぎり、すべてこの発明の蛋白質に包含されるものとする。
【0017】斯かる蛋白質は、ヒト細胞を用いるこの発明の製造方法により製造することができる。ヒト細胞としては、通常、リンパ芽球、リンパ球、単芽球、単球、骨髄芽球、骨髄球、顆粒球、マクロファージなどのヒト造血系細胞や、例えば、肺癌、大腸癌、結腸癌、類表皮癌などの固形腫瘍由来の細胞株が用いられ、個々の細胞株としては、例えば、顎下腺類表皮癌由来の上皮様細胞株であるA−253細胞(ATCC HTB41)や、ジュン・ミノワダ『キャンサー・レビュー』、第10巻、1乃至18頁(1988年)などに記載されている骨髄性白血病、前骨髄性白血病、単球性白血病、成人T細胞白血病及びヘアリー細胞白血病を含む白血病又はリンパ腫由来のHBL−38細胞、HL−60細胞(ATCC CCL240)、K−562細胞(ATCC CCL243)、KG−1細胞(ATCC CCL246)、Mo細胞(ATCC CRL8066)、THP−1細胞(ATCC TIB202)、U−937細胞(ATCC CRL1593)などの白血病細胞株及びそれらの変異株が挙げられる。これら細胞株はいずれも増殖容易であり、しかも、当該蛋白質の産生能が高いので、この発明の製造方法を有利に適用できる。殊に、A−253細胞を始めとする上皮様細胞株や、HBL−38細胞、HL−60細胞、KG−1細胞、THP−1細胞及びU−937細胞を始めとするヒト骨髄単球系細胞株は当該蛋白質の産生能が抜きん出て高く、この発明の製造方法を実施するうえで極めて有用である。
【0018】この発明の製造方法においては、斯かるヒト細胞を増殖させ、得られる増殖細胞から目的とする蛋白質を採取する。ヒト細胞を増殖させる方法に特に制限はなく、通常一般の生体外又は生体内の方法を適用すればよい。生体外の方法とは培養培地を用いて増殖させる方法をいい、ヒト細胞を、例えば、ウシ胎児血清を0.3乃至30%(w/v)程度補足したRPMI1640培地、MEM培地、DME培地などの動物細胞を増殖させるための斯界における慣用の培養培地に細胞密度約1×104 乃至1×107 個/ml、望ましくは、約1×105 乃至1×106 個/mlになるように浮遊させ、培養培地を適宜新鮮なものと取換えつつ、pH7乃至8、望ましくは、pH7.2乃至7.4、温度36乃至38℃、望ましくは、37℃前後で約1日乃至1週間培養する。そして、培養物から増殖細胞を分離し、目的とする蛋白質を採取する。なお、ヒト細胞の種類や培養条件に依っては、培養中、産生した当該蛋白質が細胞外に放出されることがある。すなわち、ヒト細胞において当該蛋白質の産生を誘導し得る、例えば、マイトジェンやIFN−γなどの誘導剤を培養培地に共存させるときには、産生した当該蛋白質の一部又は全部が細胞外に分泌されることがあり、この場合には、培養上清からも当該蛋白質を採取できる。
【0019】一方、ヒト以外の温血動物を利用する生体内の方法により増殖させるには、通常、マウス、ヌードマウス、ラット、ヌードラット、モルモット、ハムスターなどの齧歯類の新生児にウサギ由来の抗胸腺抗体などを注射して免疫反応を減弱させた後、ヒト細胞を動物1匹当たり約1×105乃至1×108個皮下又は腹腔内に注射移植するか、あるいは、これら温血動物の成長個体の体外又は体内に設けられ、動物の栄養体液が環流可能な拡散チェンバーなどの容器内にヒト細胞を収容し、その後、通常一般の方法により動物を約2乃至10週間飼育する。この飼育の間、移植したヒト細胞は温血動物の体液を利用しながら増殖する。増殖細胞は細胞塊、腹水又は細胞浮遊液として採取され、必要に応じて、これを適宜分散媒中で分散・洗浄した後、目的とする蛋白質を採取する。生体内の増殖方法は、生体外の増殖方法と比較して、より少ないコストと労力で短時間に所望量の増殖細胞の得られる利点がある。なお、生体内の増殖方法は、例えば、特公昭56−54158号公報などにも詳述されている。
【0020】増殖細胞から当該蛋白質を採取するには、増殖細胞を一旦分離するか培養上清とともに超音波を印加するか、ホモゲナイズ、凍結融解、あるいは、低張媒体中に浸漬するなどして破砕し、得られる破砕物又は破砕物と培養上清との混合物から当該蛋白質を採取すればよい。斯かる破砕物又は混合物から当該蛋白質を採取するには、必要に応じて、37℃前後で1乃至24時間インキュベートした後、例えば、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、ゲル電気泳動及び/又は等電点電気泳動などの生理活性蛋白質を精製するための斯界における慣用の方法を適用すればよく、これらは適宜組合せて適用される。そして、最終使用形態に応じて、採取した蛋白質を濃縮・凍結乾燥して液状又は固状とする。なお、同じ特許出願人による特願平7−58240号明細書に開示されたモノクローナル抗体は当該蛋白質の精製に極めて有用であり、このモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィーによるときには、高純度の当該蛋白質を最少のコストと労力で得ることができる。
【0021】前述のとおり、この発明の蛋白質は免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する性質を有する。この性質により、この発明の蛋白質は細胞培養法によりIFN−γを製造する際の誘導剤として、さらには、IFN−γに感受性を有する、例えば、後天性免疫不全症候群(AIDS)や尖圭コンジロムなどのウイルス性疾患、悪性腎腫瘍、肉芽腫、菌状息肉症、脳腫瘍などの悪性腫瘍、関節リウマチやアレルギー症などの免疫疾患に対する治療剤・予防剤として有用である。
【0022】この発明の蛋白質は、通常、免疫担当細胞を培養してIFN−γを製造するための培養培地に共存させるか、IFN−γ感受性疾患の治療・予防のためにヒトに投与される。すなわち、前者の用途においては、哺乳類の末梢血から分離される白血球や、例えば、HBL−38細胞、Mo細胞(ATCC CRL8066)、Jurkat細胞(ATCC CRL8163)、HuT78細胞(ATCC TIB161)、EL4細胞(ATCC TIB39)、L12−R4細胞などの培養株化した免疫担当細胞又はその変異株をこの発明の蛋白質を1ml当たり約0.1ng乃至1μg、望ましくは、約1乃至100ng含む適宜の培養培地に浮遊させる。必要に応じて、培養培地にマイトジェンやインターロイキン2、抗CD3抗体などのT細胞刺激物質を加え、培養培地を適宜新鮮なものと取換えながら、通常一般の方法により約1乃至100時間培養する。斯くして得られる培養物にIFN−γを精製するための慣用の方法、すなわち、塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、ゲル電気泳動、等電点電気泳動などの1種又は2種以上を適宜組合せて適用することにより、IFN−γを採取することができる。
【0023】さらに、この発明の蛋白質はヒトの免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導することから、有効成分として当該蛋白質を含んでなる感受性疾患剤は、ヒトに投与すると、体内の免疫担当細胞がIFN−γを産生するのを促し、IFN−γ感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。また、後記実験例及び実施例に例示する蛋白質のように、蛋白質が免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する性質に加えて、NK細胞やLAK細胞(リンホカイン活性化キラー細胞)、細胞障害性T細胞などのキラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成を誘導する性質を兼備するときには、キラー細胞も感受性疾患の治療・予防に関与することとなる。したがって、この発明でいう感受性疾患とは、IFN−γ感受性疾患を含む、IFN−γ及び/又はキラー細胞が直接又は間接に関与して治療及び/又は予防し得る疾患一般を意味するものとし、具体的には、例えば、肝炎、ヘルペス症、尖圭コンジロム、AIDSなどのウイルス性疾患、カンジダ症、マラリヤ症、クリプトコックス症、エルシニア症などの感染症、悪性腎腫瘍、菌状息肉症、慢性肉芽腫などの固形悪性腫瘍、成人T細胞白血病、慢性骨髄性白血病、悪性リンパ腫などの血球系悪性腫瘍、さらには、アレルギー症、リウマチなどの免疫疾患を挙げることができる。また、インターロイキン3と併用するときには、白血病、骨髄腫、さらには、悪性腫瘍を治療する際の放射線照射や化学療法剤の投与に伴なう白血球減少症や血小板減少症の完治又は緩解にも効果を発揮する。
【0024】斯くして、この発明の感受性疾患剤は、上記のごとき感受性疾患を治療・予防するための抗腫瘍剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、免疫疾患剤、血小板増多剤、白血球増多剤などとして多種多様な用途を有することとなる。剤型並びに感受性疾患の種類及び症状にも依るが、この発明の感受性疾患剤は、通常、液状、ペースト状又は固形状に調製され、当該蛋白質を0.000001乃至100%(w/w)、望ましくは、0.0001乃至0.1%(w/w)含んでなる。
【0025】この発明の感受性疾患剤は当該蛋白質単独の形態はもとより、当該蛋白質とそれ以外の生理的に許容される、例えば、担体、賦形剤、希釈剤、免疫助成剤、安定剤、さらには、必要に応じて、他の生理活性物質の1種又は2種以上との組成物としての形態をも包含する。安定剤としては、例えば、血清アルブミン、ゼラチン、トレハロース及びマルトースなどが、また、併用し得る他の生理活性物質としては、例えば、インターフェロン−α、インターフェロン−β、インターロイキン2、インターロイキン3、インターロイキン12、TNF−α、TNF−β、カルボコン、シクロホスファミド、アクラルビシン、チオテパ、ブスルファン、アンシタビン、シタラビン、フルオロウラシル、テトラヒドロフリルフルオロウラシル、メトトレキセート、アクチノマイシンD、クロモマイシンA3 、ダウノルビシン、ドキソルビシン、ブレオマイシン、マイトマイシンC、ビンクリスチン、ビンブラスチン、L−アスパラギナーゼ、金コロイド、クレスチン、ピシバニール、レンチナン及び丸山ワクチンなどが挙げられる。このうち、インターロイキン2との併用は、インターロイキン2がこの発明の蛋白質が免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する際の補因子として機能するので特に有利である。天然型又は組換え型ヒトインターロイキン2を併用することにより、当該蛋白質単独ではIFN−γを産生し難い免疫担当細胞においても所期のIFN−γ産生を誘導することができる。また、インターロイキン12と併用するときには、当該蛋白質又はインターロイキン12単独では容易に達成し得ない、極めて高レベルのIFN−γ産生を誘導することができる。しかも、当該蛋白質は、ヒト体内におけるインターロイキン12によるイムノグロブリンE抗体の産生阻害を高めるので、イムノグロブリンE抗体の産生を主因とする、例えば、アトピー性喘息、アトピー性気管支喘息、枯草熱、アレルギー性鼻炎、アトピー性皮膚炎、血管性浮腫、アトピー性消化器異常を始めとするアトピー性疾患を治療するための免疫疾患剤においても極めて有用である。なお、ヒトの体内には、微量ではあるが、インターロイキン12が存在することがあるので、斯かる場合には、当該蛋白質のみを投与すれば所期の治療効果が達成できる。
【0026】さらに、この発明の感受性疾患剤は、投薬単位形態の薬剤をも包含し、その投薬単位形態の薬剤とは、当該蛋白質を、例えば、1回当たりの用量又はその整数倍(4倍まで)若しくはその約数(1/40まで)に相当する量を含んでなり、投薬に適する物理的に一体の剤型にある薬剤を意味する。このような投薬単位形態の薬剤としては、注射剤、液剤、散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、舌下剤、点眼剤、点鼻剤、坐剤などが挙げられる。
【0027】この発明の感受性疾患剤は経口的に投与しても非経口的に投与しても、また、以下に述べるように抗腫瘍細胞などを体外で活性化させる場合に用いてもよく、いずれの場合にも、感受性疾患の治療・予防に効果を発揮する。感受性疾患の種類や症状にも依るが、具体的には、患者の症状や投与後の経過を観察しながら、成人当たり約0.1μg乃至50mg/回、望ましくは、約1μg乃至1mg/回の蛋白質を1乃至4回/日又は1乃至5回/週の用量で1日乃至1年間に亙って経口投与するか、皮内、皮下、筋肉内又は静脈内に非経口投与すればよい。
【0028】この発明の感受性疾患剤は、インターロイキン2を用いる、いわゆる「抗腫瘍免疫療法」にも有用である。抗腫瘍免疫療法は、一般に、(i)悪性腫瘍患者の体内に直接インターロイキン2を投与する方法と、(ii)インターロイキン2により生体外で活性化させた抗腫瘍細胞を患者の体内に移入する方法(養子免疫療法)に大別されるが、当該蛋白質を併用するときには、その効果を有意に高めることができる。具体的には、前記(i)の方法の場合、患者にインターロイキン2を投与するのと同時又は事前に当該蛋白質を成人当たり約0.1μg乃至1mg/回の用量で1乃至10回投与する。インターロイキン2の投与量は、悪性腫瘍の種類、患者の症状及び蛋白質の用量にも依るが、通常、成人当たり約10,000乃至1,000,000単位/回とする。一方、前記(ii)の方法の場合には、悪性腫瘍患者から採取した単核球又はリンパ球をインターロイキン2の存在下で培養するに当たり、それら血球1×106 個当たり当該蛋白質を約0.1ng乃至1μg共存させておく。そして、一定時間培養後、培養物からNK細胞又はLAK細胞を採取し、これを元の患者に移入するのである。この発明による抗腫瘍免疫療法の対象となり得る疾患としては、例えば、結腸癌、直腸癌、大腸癌、胃癌、甲状腺癌、舌癌、膀胱癌、絨毛癌、肝癌、前立腺癌、子宮癌、喉頭癌、肺癌、乳癌、悪性黒色腫、カポジ肉腫、脳腫瘍、神経芽細胞腫、卵巣腫瘍、睾丸腫瘍、骨肉腫、膵臓癌、悪性腎腫瘍、副腎腫、血管内皮腫などの固形悪性腫瘍や白血病、悪性リンパ腫などの血球系悪性腫瘍が挙げられる。
【0029】次に、この発明の蛋白質につき、実験例を挙げて説明する。
【0030】
【実験例1】
<蛋白質の調製>常法により、生後間もないハムスターの新生児にウサギ由来の抗胸腺抗血清を注射して免疫反応を減弱させた後、ハムスターの背部皮下にヒト急性単球性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるTHP−1細胞(ATCC TIB202)を約5×105 個/匹注射移植し、通常一般の方法で3週間飼育した。そして、皮下に生じた腫瘍塊(約15g/匹)を摘出し、常法により生理食塩水中で分散させた後、燐酸食塩緩衝液(以下、「PBS」と云う。)で洗浄した。
【0031】得られた増殖細胞をマシュー・ジェー・コスラら『プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユー・エス・エー』、第86巻、5,227乃至5,231頁(1989年)に記載された方法に準じて10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム、0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を含む10倍容の氷冷20mMヘペス緩衝液(pH7.4)で洗浄し、3倍容の新鮮な同一緩衝液中、氷冷下で20分間静置し、−80℃で凍結後、解凍して細胞を破砕した。破砕物を遠心分離し、上清を予め10mM燐酸緩衝液(pH6.6)で平衡化させておいたファルマシア製イオン交換クロマトグラフィー用ゲル『DEAE−セファロース』のカラムに負荷し、カラムを10mM燐酸緩衝液(pH6.6)で洗浄後、塩化ナトリウム濃度が0Mから0.5Mまで段階的に上昇する10mM燐酸緩衝液(pH6.6)を通液し、塩化ナトリウム濃度が0.2M付近で溶出した画分を採取した。
【0032】この画分を10mM燐酸緩衝液(pH6.8)に対して透析後、予め10mM燐酸緩衝液(pH6.8)で平衡化させておいたトーソー製イオン交換クロマトグラフィー用ゲル『DEAE 5PW』のカラムに負荷し、0Mから0.5Mに直線的に上昇する塩化ナトリウムの濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH6.8)を通液し、塩化ナトリウム濃度が0.2乃至0.3M付近で溶出した画分を採取した。
【0033】この新たに得られた画分を合一し、PBSに対して透析する一方、同じ特許出願人による特願平7−58240号明細書に記載された方法にしたがってモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィー用ゲルを調製し、プラスチック製円筒管内部にカラム状に充填し、PBSで洗浄後、上記透析内液をカラムに負荷した。カラムに100mMグリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)を通液し、得られる溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質を含む画分を採取し、滅菌蒸留水に対して透析し、膜濾過により濃縮後、凍結乾燥して精製蛋白質の固状物を得た。収量は、ハムスター1匹当たり約50ngであった。
【0034】
【実験例2】
<分子量>実験例1の方法により得た精製蛋白質をユー・ケー・レムリが『ネイチャー』、第227巻、680乃至685頁(1970年)に報告している方法に準じ、還元剤としての2%(w/v)ジチオトレイトール存在下でSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動したところ、分子量18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能ある蛋白質の主バンドが観察された。なお、このときの分子量マーカは、ウシ血清アルブミン(67,000ダルトン)、オボアルブミン(45,000ダルトン)、カーボニックアンヒドラーゼ(30,000ダルトン)、大豆トリプシンインヒビター(20,100ダルトン)及びα−ラクトアルブミン(14,400ダルトン)であった。
【0035】
【実験例3】
<N末端付近のアミノ酸配列及びペプチド・マッピング>
【0036】
【実験例3−1】
<N末端付近のアミノ酸配列>パーキン・エルマー製プロテイン・シーケンサ『473A型』を使用し、常法にしたがって分析したところ、実験例1の方法により得た精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1、詳細には、配列番号2に示すアミノ酸配列を有していた。
【0037】
【実験例3−2】
<ペプチド・マッピング>実験例1の方法により得た精製蛋白質を適量の滅菌蒸留水に溶解し、溶液を予め0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により平衡化させておいた昭和電工製高速液体クロマトグラフィー用ゲル『アサヒパックC4P−50 4E』のカラムに負荷し、カラムを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により洗浄した後、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を含み、アセトニトリルの濃度が0%(v/v)から90%(v/v)に直線的に上昇するトリフルオロ酢酸/アセトニトリル/水混液を60ml/時間の流速で通液した。溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質を含む画分を採取し、1Mトリス水溶液(pH11.2)により中和し、常法にしたがって濃縮し、アセトニトリルを除去する一方、別途、50mMトリス−塩酸緩衝液(pH8.5)にシグマ製クロストリパイン剤を適量溶解し、この溶液に濃縮蛋白質を対クロストリパインのモル比で約50倍加え、pHを8乃至9に保ちつつ、37℃で12時間反応させて蛋白質のペプチド断片を含む反応物を得た。
【0038】この反応物を予め0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により平衡化させておいたトーソー製高速液体クロマトグラフィー用ゲル『ODS−120T』のカラムに負荷し、カラムを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により洗浄した後、溶出画分中のペプチド濃度を波長214nmにおける吸光度によりモニタしながら、0.09%(v/v)トリフルオロ酢酸を含み、アセトニトリルの濃度が0%(v/v)から70%(v/v)まで直線的に上昇するトリフルオロ酢酸/アセトニトリル/水混液を30ml/時間の流速で通液した。このとき得られたペプチド・マップを図1に示す。
【0039】図1のペプチド・マップにおいて、溶出開始から約59分、約62分及び約68分後に溶出したペプチド断片(以下、それぞれ「ペプチド断片1」、「ペプチド断片2」及び「ペプチド断片3」と云う。)をそれぞれ別々に採取し、そのアミノ酸配列をパーキン・エルマー製プロテイン・シーケンサ『473A型』を使用し、常法にしたがって分析した。その結果、ペプチド断片1及び2は、それぞれ、配列表における配列番号3及び7に示すアミノ酸配列を、また、ペプチド断片3は配列表における配列番号4及び5に示すアミノ酸配列を有することが判明した。これらアミノ酸配列と配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列を比較したところ、ペプチド断片1乃至3のアミノ酸配列は、その配列番号6に示すアミノ酸配列におけるそれぞれ第148乃至157番目、第1乃至13番目及び第45乃至58番目若しくは第80乃至96番目に相当することが判明した。したがって、ペプチド断片1及び2は分析に供した蛋白質におけるそれぞれC末端及びN末端フラグメントに、また、ペプチド断片3はその蛋白質における中間部フラグメントに相当すると判断された。
【0040】これらの結果と精製蛋白質がSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動において分子量約18,000乃至19,500ダルトンに相当する位置に蛋白質の主バンドを示すという実験例2の知見、さらには、配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列から計算される分子量が18,199ダルトンであることを総合的に判断すると、実験例1の方法により得た精製蛋白質は配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列を含んでなると結論される。
【0041】
【実験例4】
<生物作用>
【0042】
【実験例4−1】
<免疫担当細胞におけるIFN−γの産生>ヘパリン加注射器により健常者から血液を採取し、血清無含有のRPMI1640培地(pH7.4)により2倍希釈した。血液をファルマシア製フィコール上に重層し、遠心分離して採取したリンパ球を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地(pH7.4)により洗浄した後、新鮮な同一培地に細胞密度5×106 個/mlになるように浮遊させ、96ウェルマイクロプレートに0.15ml/ウェルずつ分注した。
【0043】別途、実験例1の方法により得た精製蛋白質を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地(pH7.4)により適宜濃度に希釈して上記マイクロプレートに0.05ml/ウェルずつ分注し、2.5μg/mlコンカナバリンA又は50単位/ml組換え型ヒトインターロイキン2を含むか含まない新鮮な同一培地を0.05ml/ウェル加えた後、5%CO2 インキュベータ中、37℃で24時間培養した。培養後、各ウェルから培養上清を0.1mlずつ採取し、通常の酵素免疫測定法によりIFN−γを測定した。同時に、精製蛋白質のみを省略した系を設け、上記と同様に処置して対照とした。結果を表1に示す。なお、表1中のIFN−γ含量は、米国国立衛生研究所(NIH)から入手したIFN−γ標品(Gg23−901−530)に基づき国際単位(IU)に換算している。
【0044】
【表1】


【0045】表1の結果は、当該蛋白質を作用させると、免疫担当細胞としてのリンパ球がIFN−γを産生したことを示している。また、表1の結果に見られるように、このIFN−γ産生は、補因子としてインターロイキン2又はコンカナバリンAを共存させると、一段と高まる。
【0046】
【実験例4−2】
<NK細胞による細胞障害性の増強>ヘパリン加注射器により健常者から血液を採取し、PBSにより2倍希釈した。血液をフィコール上に重層し、遠心分離して高密度リンパ球を得た。
【0047】このリンパ球を細胞密度1×106 個/mlになるように10μg/mlカナマイシン、5×10-5M 2−メルカプトエタノール及び10%(v/v)ウシ胎児血清を含むRPMI1640培地(pH7.2)に浮遊させ、12ウェルマイクロプレートに0.5ml/ウェルずつ分注した。そして、実験例1の方法により得た精製蛋白質を新鮮な同一培地に適宜希釈してマイクロプレートに1.5ml/ウェルずつ加え、さらに、50単位/ml組換え型ヒトインターロイキン2を含むか含まない新鮮な同一培地を0.5ml/ウェル加えた後、5%CO2インキュベータ中、37℃で24時間培養し、PBSで洗浄して効果細胞としてのNK細胞を含む培養リンパ球を得た。
【0048】別途、常法により51Cr標識したNK細胞感受性標的細胞としてのヒト慢性骨髄性白血病由来のK−562細胞(ATCC CCL243)を96ウェルマイクロプレートに1×104 個/ウェルずつとり、上記で調製した効果細胞を効果細胞/標的細胞比で2.5:1、5:1又は10:1の割合で加え、5%CO2インキュベータ中、37℃で4時間培養した後、常法にしたがって培養上清の放射能を測定して死滅標的細胞数を求めた。そして、各々の系につき、試験に供した標的細胞数に対する死滅標的細胞数の百分率(%)を計算し、細胞障害性の目安とした。結果を表2に示す。
【0049】
【表2】


【0050】表2の結果は、当該蛋白質にNK細胞による細胞障害性を増強する性質のあることを示している。また、表2の結果に見られるように、この細胞障害性の増強は、インターロイキン2が共存すると、一段と増強される。
【0051】
【実験例4−3】
<LAK細胞の生成誘導>常法により51Cr標識したNK細胞非感受性標的細胞としてのヒトバーキットリンパ腫由来のRaji細胞(ATCC CCL86)を96ウェルマイクロプレートに1×104 個/ウェルずつとり、72時間培養した以外は実験例4−2と同様にして調製した効果細胞としてのLAK細胞を含む培養リンパ球を効果細胞/標的細胞比で5:1、10:1又は20:1の割合で加え、5%CO2 インキュベータ中、37℃で4時間培養した後、常法にしたがって培養上清の放射能を測定した。その後、実験例4−2と同様にして細胞障害性(%)を計算した。結果を表3に示す。
【0052】
【表3】


【0053】表3の結果は、当該蛋白質にLAK細胞の生成を誘導する性質のあることを示している。また、表3の結果に見られるように、この誘導は、インターロイキン2が共存すると、一段と増強される。
【0054】
【実験例5】
<急性毒性試験>常法にしたがって、8週齢のマウスに実験例1の方法により得た精製蛋白質を経皮、経口又は腹腔内に注射投与した。その結果、精製蛋白質のLD50は、いずれの投与経路によっても約1mg/kg以上であった。このことは、当該蛋白質がヒトに投与する医薬品に配合して安全であることを裏付けている。
【0055】周知のように、IFN−γはウイルス、細菌などに対する感染防御、悪性腫瘍の増殖抑制、免疫機能の調節作用を通じてヒトの生体防御、さらには、イムノグロブリンE抗体の産生阻害に多大の関与をしている。前述のとおり、IFN−γはヒトの感受性疾患剤としてすでに実用化されており、その対象疾患、用量、用法及び安全性はほぼ確立している。一方、フランセス・アール・バークウィル著、渡部好彦訳、『サイトカインとがん治療』、1991年、東京化学同人発行などにも記載されているように、NK細胞及びLAK細胞などのキラー細胞を利用する療法は、抗腫瘍免疫療法を始めとして、多種多様のヒト疾患に対して試みられ、総じて良好な成果が報告されている。最近では、サイトカインを用いるキラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成の誘導と治療効果との関連性が注目されており、例えば、ティー・フジオカら『ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・ユーロロジー』、第73巻、第1号、23乃至31頁(1994年)には、LAK細胞とインターロイキン2を併用する抗腫瘍免疫療法において、インターロイキン2がLAK細胞の生成を顕著に誘導し、重篤な毒性や副作用を惹起することなく、ヒトの転移癌に格別の効果を発揮したと報告されている。
【0056】このように、多種多様のヒト疾患の治療・予防にIFN−γやキラー細胞が深く係わり、その完治又は緩解への多大の寄与が明らかになっている。斯かる状況において、実験例4乃至5の結果に見られるように、当該蛋白質が顕著な毒性を示すことなく、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導するとともに、NK細胞による細胞障害性の増強又はLAK細胞の生成を誘導したことは、この発明の感受性疾患剤が重篤な副作用を惹起することなくヒトに長期間連用でき、IFN−γ及び/又はキラー細胞が関与する疾患の治療・予防に効果を発揮することを示している。
【0057】以下、この発明の実施の形態につき、実施例を挙げて具体的に説明する。なお、実施例A−1乃至A−8にはこの発明による蛋白質の製造方法の実施形態が、また、実施例B−1乃至B−6にはこの発明の感受性疾患剤の実施形態が例示されている。
【0058】
【実施例A−1】
<蛋白質の製造>常法により、生後間もないハムスターの新生児にウサギ由来の抗胸腺抗血清を注射して免疫反応を減弱させた後、ハムスターの背部皮下にヒト急性単球性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるTHP−1細胞(ATCC TIB202)を約5×105 個/匹注射移植し、通常一般の方法で3週間飼育した。そして、皮下に生じた腫瘍塊(約15g/匹)を摘出し、常法により生理食塩水中で分散させた後、PBSで洗浄した。
【0059】得られた増殖細胞をマシュー・ジェー・コスラら『プロシーディングス・オブ・ナショナル・アカデミー・オブ・サイエンシーズ・ユー・エス・エー』、第86巻、5,227乃至5,231頁(1989年)に記載された方法に準じて10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム、0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩を含む10倍容の氷冷20mMヘペス緩衝液(pH7.4)で洗浄し、3倍容の新鮮な同一緩衝液中、氷冷下で20分間静置し、−80℃で凍結後、解凍して細胞を破砕した。破砕物を遠心分離し、上清を予め10mM燐酸緩衝液(pH6.6)で平衡化させておいたファルマシア製イオン交換クロマトグラフィー用ゲル『DEAE−セファロース』のカラムに負荷し、カラムを10mM燐酸緩衝液(pH6.6)で洗浄後、塩化ナトリウム濃度が0Mから0.5Mまで段階的に上昇する10mM燐酸緩衝液(pH6.6)を通液し、塩化ナトリウム濃度が0.2M付近で溶出した画分を採取した。
【0060】この画分を10mM燐酸緩衝液(pH6.8)に対して透析後、予め10mM燐酸緩衝液(pH6.8)で平衡化させておいたトーソー製イオン交換クロマトグラフィー用ゲル『DEAE 5PW』のカラムに負荷し、0Mから0.5Mに直線的に上昇する塩化ナトリウムの濃度勾配下、カラムに10mM燐酸緩衝液(pH6.8)を通液し、塩化ナトリウム濃度が0.2乃至0.3M付近で溶出した画分を採取した。
【0061】この新たに得られた画分を合一し、PBSに対して透析する一方、同じ特許出願人による特願平7−58240号明細書に記載された方法にしたがってモノクローナル抗体を用いるイムノアフィニティークロマトグラフィー用ゲルを調製し、プラスチック製円筒管内部にカラム状に充填し、PBSで洗浄後、上記透析内液をカラムに負荷した。カラムに100mMグリシン−塩酸緩衝液(pH2.5)を通液し、得られる溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質を含む画分を採取し、滅菌蒸留水に対して透析し、膜濾過により濃縮後、凍結乾燥して精製蛋白質の固状物を得た。収量は、ハムスター1匹当たり約50ngであった。
【0062】
【実施例A−2】
<蛋白質の製造>生後間もないヌードマウス新生児の背部皮下にヒト急性骨髄性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるKG−1細胞(ATCC CCL246)を約1×106 個/匹注射移植し、通常一般の方法で4週間飼育した。皮下に生じた腫瘍塊(約20g/匹)を摘出し、常法により生理食塩水中で分散させ、得られた増殖細胞を洗浄し、実施例A−1と同様にして破砕し、破砕物を精製したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する精製蛋白質がヌードマウス1匹当たり約20ng得られた。
【0063】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0064】
【実施例A−3】
<蛋白質の製造>孔径0.5ミクロンのメンブランフィルターを取付けた内容量約10mlのプラスチック製円筒型拡散チェンバー内にRPMI1640培地(pH7.4)でヒト急性前骨髄性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるHL−60細胞(ATCC CCL240)を浮遊させ、成長ラットの腹腔内に埋設した。この状態でラットを通常一般の方法で4週間飼育した後、拡散チェンバーを取出した。拡散チェンバーから増殖細胞を採取し、生理食塩水で洗浄後、実施例A−1と同様にして破砕し、破砕物を精製したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する精製蛋白質がラット1匹当たり約20ngの収量で得られた。
【0065】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0066】
【実施例A−4】
<蛋白質の製造>ヒト急性単球性白血病由来の骨髄単球系細胞株の一種であるTHP−1細胞(ATCC TIB202)を10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地(pH7.2)に細胞密度約3×105 個/mlになるように浮遊させ、培養培地を新鮮なものと取換えながら、10%CO2 インキュベータ中、37℃で3週間培養した。培養物から増殖細胞を分離し、生理食塩水で洗浄後、実施例A−1と同様にして破砕し、破砕物を精製したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する精製蛋白質が培養物1l当たり約10ngの収量で得られた。
【0067】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0068】
【実施例A−5】
<蛋白質の製造>常法により、生後間もないハムスターの新生児にウサギ由来の抗胸腺抗血清を注射して免疫反応を減弱させた後、ハムスターの背部皮下にヒト顎下腺類表皮癌由来の上皮様細胞株の一種であるA−253細胞(ATCC HTB41)を約5×105 個/匹注射移植し、通常一般の方法で3週間飼育した。そして、皮下に生じた腫瘍塊(約10g/匹)を摘出し、常法により生理食塩水中で分散させた後、PBSで洗浄した。
【0069】得られた増殖細胞を10mM塩化カリウム、1.5mM塩化マグネシウム及び0.1mMエチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩をそれぞれ含む20mMヘペス緩衝液(pH7.4)で洗浄し、新鮮な同一緩衝液に細胞密度約2×107 個/mlになるように浮遊させ、ホモゲナイザーにより破砕し、遠心分離により細胞残渣を除去して得られた上清を限外濾過膜により濃縮して免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質を含む細胞抽出液を得た。この細胞抽出液を実施例A−1の方法により精製し、濃縮し、凍結乾燥したところ、精製蛋白質の固状物がハムスター1匹当たり約3μgの収量で得られた。
【0070】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0071】
【実施例A−6】
<蛋白質の製造>10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地(pH7.4)を用い、A−253細胞を常法にしたがって単層状態になるまで37℃で培養した後、ギブコ製トリプシン製剤『トリプシン−EDTA』により増殖細胞を培養器から剥離させ、PBSにより洗浄した。以後、実施例A−1の方法に準じて、増殖細胞を破砕し、破砕物を遠心分離して得られた上清を37℃で6時間インキュベートした後、精製し、濃縮し、凍結乾燥したところ、免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質の精製固状物が細胞107 個当たり約1μgの収量で得られた。
【0072】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0073】
【実施例A−7】
<蛋白質の製造>10%(v/v)ウシ胎児血清を補足したRPMI1640培地(pH7.4)を用い、A−253細胞を常法にしたがって単層状態になるまで37℃で培養した後、培養培地を血清無含有のRPMI1640培地(pH7.4)に取替え、誘導剤としてKG−1細胞由来の天然型ヒトIFN−γを10IU/mlになるように加え、37℃でさらに48時間培養した。培養物を遠心分離し、得られた上清を実施例A−1の方法により精製し、濃縮し、凍結乾燥したところ、免疫担当細胞にIFN−γの産生を誘導する蛋白質の精製固状物が細胞107 個当たり約5ngの収量で得られた。
【0074】その後、精製蛋白質の一部をとり、実験例2乃至4の方法に準じて分析したところ、精製蛋白質はN末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、実験例1の蛋白質と同様の分子量、生物作用を示した。
【0075】
【実施例A−8】
<蛋白質の製造>実施例A−1の方法により得た精製蛋白質を適量の滅菌蒸留水に溶解し、溶液を予め0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により平衡化させておいた昭和電工製高速液体クロマトグラフィー用ゲル『アサヒパックC4P−50 4E』のカラムに負荷し、カラムを0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸水溶液により洗浄した後、0.1%(v/v)トリフルオロ酢酸を含み、アセトニトリルの濃度が0%(v/v)から90%(v/v)に直線的に上昇するトリフルオロ酢酸/アセトニトリル/水混液を60ml/時間の流速で通液した。溶出画分から免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する蛋白質を含む画分を採取し、1Mトリス水溶液(pH11.2)により中和し、常法にしたがって濃縮し、アセトニトリルを除去したところ、純度約95%以上の濃縮蛋白質が原料蛋白質固形分当たり約10%の収量で得られた。
【0076】その後、この濃縮蛋白質の一部をとり、実験例2の方法に準じて分析したところ、分子量18,400±1,000ダルトンに相当する位置にIFN−γ誘導能ある蛋白質の単一バンドを示した。さらに、実験例3及び4の方法に準じて分析したところ、濃縮蛋白質はC末端付近に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有するとともに、N末端付近に配列表における配列番号1、詳細には、配列番号7に示すアミノ酸配列を、また、中間部に配列表における配列番号4及び5に示すアミノ酸配列をそれぞれ有し、高純度に濃縮した場合においても、実験例1の蛋白質と同様の生物作用を示した。
【0077】
【実施例B−1】
<液剤>安定剤として1%(w/v)ヒト血清アルブミンを含む生理食塩水に実施例A−1の方法により得た精製蛋白質を1mg/mlになるように溶解し、常法にしたがって精密濾過により除菌して液剤を得た。
【0078】安定性に優れた本品は、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための注射剤、点眼剤及び点鼻剤として有用である。
【0079】
【実施例B−2】
<乾燥注射剤>安定剤として1%(w/v)精製ゼラチンを含む生理食塩水100mlに実施例A−2の方法により得た精製蛋白質を100mg溶解し、常法にしたがって精密濾過により除菌し、バイアル瓶に1mlずつ分注し、凍結乾燥後、密栓した。
【0080】安定性に優れた本品は、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための乾燥注射剤として有用である。
【0081】
【実施例B−3】
<乾燥注射剤>実施例A−5の方法により得た精製蛋白質と、安定剤として林原製結晶トレハロース粉末『トレハオース』をそれぞれ用いた以外は実施例B−2と同様にして固形製剤を得た。
【0082】安定性に優れた本品は、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための乾燥注射剤として有用である。
【0083】
【実施例B−4】
<軟膏剤>滅菌蒸留水に和光純薬工業製カルボキシビニルポリマー『ハイビスワコー104』と林原製結晶トレハロース粉末『トレハオース』をそれぞれ濃度1.4%(w/w)及び2.0%(w/w)になるように溶解し、実施例A−3の方法により得た精製蛋白質を均一に混合後、pH7.2に調整して、1g当たり精製蛋白質を約1mg含むペースト状物を得た。
【0084】延展性と安定性に優れた本品は、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患の治療・予防するための軟膏剤として有用である。
【0085】
【実施例B−5】
<錠剤>林原製無水結晶α−マルトース粉末『ファイントース』に実施例A−4の方法により得た精製蛋白質と細胞賦活剤としてのルミンを均一に混合し、得られる混合物を常法により打錠して製品1錠(約200mg)当たり精製蛋白質及びルミンをそれぞれ約1mg含む錠剤を得た。
【0086】摂取性、安定性に優れ、細胞賦活作用も有する本品は、悪性腫瘍、ウイルス性疾患、細菌感染症及び免疫疾患を含む感受性疾患を治療・予防するための錠剤として有用である。
【0087】
【実施例B−6】
<養子免疫療法剤>悪性リンパ腫患者の末梢血から単核球を単離し、37℃に予温した10%(v/v)ヒトAB血清を補足したRPMI1640培地(pH7.2)に細胞密度約1×106 個/mlになるように浮遊させ、実施例A−1の方法により得た精製蛋白質を約10ng/mlと組換え型ヒトインターロイキン2を約100単位/ml加え、5%CO2 インキュベータ中、37℃で1週間培養した後、遠心分離によりLAK細胞を採取した。
【0088】このLAK細胞は、元の悪性リンパ腫患者の体内に移入すると、リンパ腫細胞に顕著な細胞障害性を示し、インターロイキン2のみ用いる養子免疫療法と比較して有意に高い治療効果を発揮する。なお、ヒト単核球に代えて腫瘍組織浸潤リンパ球を同様に処置して得られる細胞障害性T細胞も、元の患者の体内に移入すると、LAK細胞と同様の効果を発揮する。本例の養子免疫療法剤は、悪性リンパ腫以外に、例えば、悪性腎腫瘍、悪性黒色腫、大腸癌、肺癌などの固形悪性腫瘍にも有利に適用できる。
【0089】
【発明の効果】以上説明したごとく、この発明は免疫担当細胞においてIFN−γの産生を誘導する新規な蛋白質と、その蛋白質を産生し得るヒト細胞の発見に基づくものである。この発明の蛋白質はアミノ酸配列の一部までが解明された物質であり、免疫担当細胞において安定したIFN−γ誘導能を発揮する。これにより、この発明の蛋白質は細胞培養によりIFN−γを製造するためのIFN−γ誘導剤として、さらには、IFN−γ感受性を有するウイルス性疾患、悪性腫瘍、免疫疾患一般に対する治療剤・予防剤として多種多様の用途を有することとなる。また、キラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成を誘導する性質を兼備するこの発明の蛋白質を有効成分とする感受性疾患剤は、悪性腫瘍などの難治性疾患の治療に格別の効果を発揮する。
【0090】この発明の蛋白質は強力なIFN−γ誘導能を有することから、一般に少量で所期のIFN−γ産生を誘導でき、また、毒性が極めて低いことから、多量投与しても重篤な副作用を惹起することがない。したがって、この発明の蛋白質は、使用に際して用量を厳密に管理しなくても、所望のIFN−γ産生を迅速に誘導できる利点がある。特に、この発明の蛋白質はヒト細胞に由来するので、組換えDNA技術により人工的に創製したポリペプチドに比べて、医薬品に配合してヒトに投与したときの副作用や抗体産生の少ない特徴がある。
【0091】斯くも有用なる蛋白質は、ヒト細胞を利用するこの発明の製造方法により、所望量を容易に製造することができる。
【0092】この発明は斯くも顕著な作用効果を奏するものであり、斯界に貢献すること誠に多大な意義のある発明であると云える。
【0093】
【配列表】
配列番号:1配列の長さ:10配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列Tyr Phe Gly Lys Leu Glu Ser Lys Leu Ser1 5 10
【0094】配列番号:2配列の長さ:50配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列 Tyr Phe Gly Lys Leu Glu Ser Lys Leu Ser Val Ile Arg Asn Leu Asn Asp 1 5 10 15 Gln Val Leu Phe Ile Asp Gln Gly Asn Arg Pro Leu Phe Glu Asp Met Thr 20 25 30 Asp Ser Asp Cys Arg Asp Asn Ala Pro Arg Thr Ile Phe Ile Ile Ser 35 40 45 50
【0095】配列番号:3配列の長さ:10配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:C末端フラグメント配列Ser Ile Met Phe Thr Val Gln Asn Glu Asp1 5 10
【0096】配列番号:4配列の長さ:14配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:中間部フラグメント配列 Thr Ile Phe Ile Ile Ser Met Tyr Lys Asp Ser Gln Pro Arg 1 5 10
【0097】配列番号:5配列の長さ:17配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:中間部フラグメント配列 Ile Ile Ser Phe Lys Glu Met Asn Pro Pro Asp Asn Ile Lys Asp Thr Lys 1 5 10 15
【0098】配列番号:6配列の長さ:157配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:蛋白質配列 Tyr Phe Gly Lys Leu Glu Ser Lys Leu Ser Val Ile Arg Asn Leu Asn Asp 1 5 10 15 Gln Val Leu Phe Ile Asp Gln Gly Asn Arg Pro Leu Phe Glu Asp Met Thr 20 25 30 Asp Ser Asp Cys Arg Asp Asn Ala Pro Arg Thr Ile Phe Ile Ile Ser Met 35 40 45 50 Tyr Lys Asp Ser Gln Pro Arg Gly Met Ala Val Thr Ile Ser Val Lys Cys 55 60 65 Glu Lys Ile Ser Xaa Leu Ser Cys Glu Asn Lys Ile Ile Ser Phe Lys Glu 70 75 80 85 Met Asn Pro Pro Asp Asn Ile Lys Asp Thr Lys Ser Asp Ile Ile Phe Phe 90 95 100 Gln Arg Ser Val Pro Gly His Asp Asn Lys Met Gln Phe Glu Ser Ser Ser 105 110 115 Tyr Glu Gly Tyr Phe Leu Ala Cys Glu Lys Glu Arg Asp Leu Phe Lys Leu 120 125 130 135 Ile Leu Lys Lys Glu Asp Glu Leu Gly Asp Arg Ser Ile Met Phe Thr Val 140 145 150 Gln Asn Glu Asp 155
【0099】配列番号:7配列の長さ:13配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:N末端フラグメント配列 Tyr Phe Gly Lys Leu Glu Ser Lys Leu Ser Val Ile Arg 1 5 10
【0100】配列番号:8配列の長さ:25配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:中間部フラグメント配列 Ile Ile Ser Phe Glu Glu Met Asp Pro Pro Glu Asn Ile Asp Asp Ile Gln 1 5 10 15 Ser Asp Leu Ile Phe Phe Gln Lys 20 25
【0101】配列番号:9配列の長さ:18配列の型:アミノ酸トポロジー:直鎖状配列の種類:ペプチドフラグメント型:中間部フラグメント配列 Gln Pro Val Phe Glu Asp Met Thr Asp Ile Asp Gln Ser Ala Ser Glu Pro 1 5 10 15 Gln
【0102】配列番号:10配列の長さ:471配列の型:核酸鎖の数:二本鎖トポロジー:直鎖状配列の種類:cDNA to mRNA配列の特徴起源生物名:マウス組織の種類:肝臓配列の特徴配列を表わす記号:mat peptide存在位置:1...471特徴を決定した方法:S配列 AAC TTT GGC CGA CTT CAC TGT ACA ACC GCA GTA ATA CGG AAT ATA AAT 48 Asn Phe Gly Arg Leu His Cys Thr Thr Ala Val Ile Arg Asn Ile Asn 1 5 10 15 GAC CAA GTT CTC TTC GTT GAC AAA AGA CAG CCT GTG TTC GAG GAT ATG 96 Asp Gln Val Leu Phe Val Asp Lys Arg Gln Pro Val Phe Glu Asp Met 20 25 30 ACT GAT ATT GAT CAA AGT GCC AGT GAA CCC CAG ACC AGA CTG ATA ATA 144 Thr Asp Ile Asp Gln Ser Ala Ser Glu Pro Gln Thr Arg Leu Ile Ile 35 40 45 TAC ATG TAC AAA GAC AGT GAA GTA AGA GGA CTG GCT GTG ACC CTC TCT 192 Tyr Met Tyr Lys Asp Ser Glu Val Arg Gly Leu Ala Val Thr Leu Ser 50 55 60 GTG AAG GAT AGT AAA AYG TCT ACC CTC TCC TGT AAG AAC AAG ATC ATT 240 Val Lys Asp Ser Lys Xaa Ser Thr Leu Ser Cys Lys Asn Lys Ile Ile 65 70 75 80 TCC TTT GAG GAA ATG GAT CCA CCT GAA AAT ATT GAT GAT ATA CAA AGT 288 Ser Phe Glu Glu Met Asp Pro Pro Glu Asn Ile Asp Asp Ile Gln Ser 85 90 95 GAT CTC ATA TTC TTT CAG AAA CGT GTT CCA GGA CAC AAC AAG ATG GAG 336 Asp Leu Ile Phe Phe Gln Lys Arg Val Pro Gly His Asn Lys Met Glu 100 105 110 TTT GAA TCT TCA CTG TAT GAA GGA CAC TTT CTT GCT TGC CAA AAG GAA 384 Phe Glu Ser Ser Leu Tyr Glu Gly His Phe Leu Ala Cys Gln Lys Glu 115 120 125 GAT GAT GCT TTC AAA CTC ATT CTG AAA AAA AAG GAT GAA AAT GGG GAT 432 Asp Asp Ala Phe Lys Leu Ile Leu Lys Lys Lys Asp Glu Asn Gly Asp 130 135 140 AAA TCT GTA ATG TTC ACT CTC ACT AAC TTA CAT CAA AGT 471 Lys Ser Val Met Phe Thr Leu Thr Asn Leu His Gln Ser 145 150 155
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明による蛋白質のペプチド・マップである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 N末端付近に配列表における配列番号1に示すアミノ酸配列を有し、免疫担当細胞においてインターフェロン−γの産生を誘導するヒト細胞由来の蛋白質。
【請求項2】 N末端に配列表における配列番号2に示すアミノ酸配列を有する請求項1に記載の蛋白質。
【請求項3】 C末端付近に配列表における配列番号3に示すアミノ酸配列を有する請求項1又は2に記載の蛋白質。
【請求項4】 中間部に配列表における配列番号4及び5に示すアミノ酸配列を有する請求項1、2又は3に記載の蛋白質。
【請求項5】 配列表における配列番号6に示すアミノ酸配列(ただし、符合「Xaa」を付して示したアミノ酸は、イソロイシン又はトレオニンを表わすものとする)を含んでなる請求項1、2、3又は4に記載の蛋白質。
【請求項6】 SDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動法により測定すると、分子量14,000乃至24,000ダルトンを示す請求項1、2、3、4又は5に記載の蛋白質。
【請求項7】 キラー細胞による細胞障害性の増強又はキラー細胞の生成を誘導する性質を有する請求項1、2、3、4、5又は6に記載の蛋白質。
【請求項8】 ヒト造血系細胞に由来する請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の蛋白質。
【請求項9】 請求項1乃至8に記載の蛋白質を産生し得るヒト細胞を増殖させ、増殖細胞から蛋白質を採取してなる蛋白質の製造方法。
【請求項10】ヒト細胞がヒト造血系細胞株である請求項9に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項11】ヒト細胞をヒト以外の温血動物に移植し、その温血動物の体液を利用しながら増殖させる請求項9又は10に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項12】温血動物が齧歯類である請求項11に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項13】増殖細胞を破砕し、破砕物から蛋白質を採取する請求項9、10、11又は12に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項14】増殖細胞に誘導剤を作用させる請求項9、10、11、12又は13に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項15】蛋白質を塩析、透析、濾過、濃縮、分別沈澱、ゲル濾過クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、吸着クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、クロマトフォーカシング、ゲル電気泳動及び/又は等電点電気泳動により採取する請求項9、10、11、12、13又は14に記載の蛋白質の製造方法。
【請求項16】有効成分として請求項1乃至8に記載の蛋白質を含んでなる感受性疾患剤。
【請求項17】インターロイキン2をさらに含んでなる請求項16に記載の感受性疾患剤。
【請求項18】安定剤として血清アルブミン、ゼラチン、トレハロース及び/又はマルトースを含んでなる請求項16又は17に記載の感受性疾患剤。
【請求項19】抗腫瘍剤としての請求項16、17又は18に記載の感受性疾患剤。
【請求項20】抗腫瘍免疫療法剤としての請求項19に記載の感受性疾患剤。
【請求項21】抗ウイルス剤としての請求項16、17又は18に記載の感受性疾患剤。
【請求項22】抗菌剤としての請求項16、17又は18に記載の感受性疾患剤。
【請求項23】免疫疾患剤としての請求項16、17又は18に記載の感受性疾患剤。
【請求項24】インターロイキン12をさらに含んでなる請求項23に記載の感受性疾患剤。
【請求項25】アトピー性疾患を治療するための請求項23又は24に記載の感受性疾患剤。

【図1】
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