説明

全自動式コンテナ連結具

【課題】船舶のピッチング、又はピッチングとローリングが重なった場合でもコンテナの連結を連結の方向性の影響を抑えて保持でき、コンテナを吊り上げた状態で連結を解除することが出来る全自動式のコンテナ連結具を提供する。
【解決手段】コンテナ連結具Aは、連結具本体10と、上部、下部コーンを有する回転コーン部14と、連結具本体内に回転コーン部を初期位置に引き戻すための弾性部材を備え、下部コーン14はその平面視長さ及び幅を回転軸対称に形成し、かつその長手方向側面に係合孔に嵌合する際に回転を案内する複合形状の案内面と、係合孔に係合するため平面視対角位置に一対の突起部を形成し、突起部の上面に、コンテナ吊り装置から伝達される振動で回転コーン部を回転させ、分離を促進するに十分緩やかな傾斜面を設け、コンテナCの積み付け時には下部コーンの回転により嵌合し、荷揚げ時にはコンテナの吊り上げ力と振動を加えて切り離す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、コンテナを積み上げ、積み降しする際に上下のコンテナを互いに連結する全自動式コンテナ連結具に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶で多数のコンテナを輸送する際に、上下多段に積み重ねられるコンテナ同士は、コンテナ連結具により連結され、船舶の揺れ(ローリング、ピッチング)に対して荷崩れしないように積載される。このようなコンテナ連結具として、ハンドル操作により上部コーンを予めコンテナの下部のコーナ金具に装着しておき、そのコンテナを下方のコンテナに積み重ねる際は、コンテナを下方のコンテナに合わせて下ろせば、下部コーンが下方のコンテナのコーナ金具の係合孔に自動的に嵌合し、コンテナ同士の連結が行われ、反対にコンテナの陸揚げの際はコンテナを吊り上げることにより連結が外れるという全自動(フルオートマチック)のコンテナ連結具など各種形式のものがある。
【0003】
全自動(フルオートマチック)式の従来のコンテナ連結具の一例として、特許文献1の「ツイスト式コンテナ連結具」が公知である。このツイスト式コンテナ連結具は、上下に位置決め用の突出部を設けた連結具本体に、突出部の端面に貫通する挿入孔を設け、その挿入孔に挿入された回転軸の上下端に上部コーン、下部コーンをそれぞれ設け、連結具本体内に回転軸を初期位置に引き戻すための弾性部材を備え、下方の突出部の一側に傾斜面、下部コーンには平面視で対角位置の一端又は両端に突起部、かつ両側面に複数の傾斜面を形成し、下方のコンテナへの積付時又は荷揚げ時には上記各傾斜面と突起部が下方のコンテナのコーナ金具の係合孔に対し当接し、滑りながら所定角度上部及び下部コーンが回転し、これにより係合孔に嵌合し、係合されるようにした連結具である。
【0004】
上記コンテナ連結具は、下部コーンの中心が回転軸の中心から一側にずれて片寄り状に構成され、連結具本体の下方の突出部の一側に傾斜面、下部コーンは上記と同一側方の下方に傾斜面、反対側には片寄り状に複合形状の傾斜面、そして下部コーンの上記一側の傾斜面と複合傾斜面に平面視で対角位置となるように一端又は両端に突起部が設けられ、かつ回転軸は下部コーンの中心より所定寸法ずれた位置に中心を有する。即ち、下部コーンは嵌合、切離しのための案内面となる傾斜面が、非対称に形成されている。
【特許文献1】特開2006−76636号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のフルオートマチックのコンテナ連結具では、下部コーンの中心が回転軸の中心からずれて片寄り状に設けられ、かつ片寄り位置の傾斜面が回転軸の中心からずれているため、このコンテナ連結具を装着したコンテナでは、コンテナを積み重ねる際に、コンテナを下方のコンテナの中心に合わせて降ろすが、実際には上記回転軸の中心と下部コーンの中心との差分だけずれてコンテナがずれた状態で降ろされ、このコンテナ連結具の係合動作による案内で係合孔に嵌合した後、コンテナの中心位置が一致する。
【0006】
このため、上記従来の全自動(フルオートマチック)のコンテナ連結具は、コンテナ下部のコーナ金具に装着した後は、スプレッダによりコンテナ全体を昇降させるだけで下段のコンテナに連結、或いは切離しができる点で、船舶への積付け、積降しの作業を効率化させることが出来るが、このコンテナ連結具は下部のコーンの中心が回転軸の中心に対して片寄り式であるが、船舶のローリング時にコンテナにローリングのみが働く場合、コンテナの連結は保持される。
【0007】
しかし、片寄り式であるため、ピッチングのみ、或いはローリングとピッチングが働く場合はコンテナの連結具による連結は保持できない。ピッチング方向の力が作用すると、下部コーンの回転軸が片寄り式のコンテナ連結具では、その突起部の向きがピッチングの方向に対して外れ易い形状となり、かつ外れ易い係合方向に設定されるからである。従って、コンテナの連結が保持できない場合があり、このような状態が生じると、コンテナが船舶から流出するなどの重大な事故につながる危険性がある。従って、このようなピッチングのみ、或いはローリングとピッチングでコンテナの連結が外れ難い形状や、設定方向の連結具とする必要がある。
【0008】
又、上記のコンテナ連結具は、ピッチング、或いはローリングとピッチングでコンテナの連結が外れる場合、さらにコンテナの積付け、積下ろしの際に下部コーンを係合孔へ着脱したりする時には、コンテナ連結具が浮き上がる際に、下部コーンの中心が片寄り式であるために、下部コーンを介してコンテナ連結具に掛かる力が大きな曲げ力として作用する。
【0009】
従って、このような大きな曲げ力に対して連結具の強度を十分に対応し得るものとするため、断面サイズが大きくなり自重が重くなる。また、従来のコンテナ連結具で、その下部コーンを片寄り式としているのは、フルオートマチックのコンテナ連結具では、コンテナの積付け、積下ろしの作動がスムーズになる、さらに船舶のローリング、ピッチング時の対策として片寄り式で対応できると考えられていたからである。しかし、コンテナの積付け、積下ろしの作動をさらにスムーズに、かつコンテナ連結具の構成をシンプルで軽量化するには改良すべき問題が残されている。
【0010】
この発明は、上記の問題に留意して、下部コーンの形状を回転軸に対して対称な形状とし、船舶のピッチング、或いはローリングとピッチングが重なった場合でも連結の方向性の影響を抑えてコンテナの連結を保持でき、コンテナを吊り上げた状態でその吊り上げ力及び/又は振動を加えることによってコンテナ連結具の連結を確実に解除することが出来る全自動式(フルオートマチック)のコンテナ連結具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記の課題を解決する手段として、積み重ねられるコンテナのコーナ金具間に挟持される連結座の両面にコーナ金具の係合孔に嵌合する突出部を有する連結具本体と、この連結具本体を貫通する挿入孔に挿入された回転軸の上下端に上部コーン、下部コーンを有する回転コーン部と、連結具本体内に回転コーン部を初期位置に引き戻すために設けた弾性部材とを備え、下部コーンはその平面視長さ及び幅を回転軸の中心線を中心に対称に形成し、かつ下部コーンの長手方向側面にコンテナ積付けのため係合孔に嵌合する際に回転を案内する複合形状の案内面と、下部コーンを係合孔に係合するため平面視対角位置に一対の突起部を形成し、コンテナの荷揚げのため下部コーンを係合孔から分離する際に、上記一対の突起部の上端面に、コンテナ吊り装置からコンテナを介して伝達される振動で回転コーン部を回転させ、コーナ金具からの分離作用を促進するに十分緩やかな傾斜面を形成した全自動式コンテナ連結具の構成としたのである。
【0012】
上記構成の全自動式コンテナ連結具において、下部コーンをその平面視で略平行四辺形状とし、この平行四辺形の対角上の各一辺から突出状に一対の突起部を設け、この一対の突起部の下部が複合形状の案内面に連続するように形成することができる。
【0013】
上記の構成としたこの発明の全自動式コンテナ連結具は、ツイスト式の連結具であり、下方のコンテナに対して上方のコンテナ下底に装着された連結具を介して上方のコンテナを積み下ろし、また吊り上げるだけでコンテナの積載、荷揚げをコンテナ吊り装置により全自動で行える。但し、上方のコンテナ下底には手作業で予め上記連結具が装着されているものとする。従って、上方のコンテナを下方のコンテナ上に積載する場合、コンテナ吊り装置でコンテナを下方のコンテナの中心に合わせて降ろせばよい。
【0014】
コンテナを積載する際には、上方のコンテナの中心を下方のコンテナの中心に合わせて降ろすと、上記コンテナ連結具の下部コーンの中心は下方のコンテナのコーナ金具の係合孔中心に一致するから、上方のコンテナをそのまま降ろすと係合作用が始まる。上記コンテナ連結具は、その長手方向がコーナ金具の係合孔の長手方向から突起部の突出サイズほどずれて設定されており、上記コンテナ連結具が下降するにつれてその下部の案内面で案内され、この案内で回転コーン部が回転をしながら下降する。回転コーン部と連結具本体突出部が完全に係合孔内に嵌合すると、弾性部材で回転コーン部が初期位置に引き戻されて下部コーンが係合孔内に係合状態に設定される。
【0015】
コンテナを吊り上げて荷揚げする場合は、回転を促進するために吊り上げ装置に加振機を設け、その加振機により振動を加えて回転を促進させることとしている。そして、下部コーンを係合孔から分離する際に、上記一対の突起部の上端面の隅部に回転を案内する緩やかな傾斜面を設けているから、この傾斜面によりコンテナを吊り上げる引上力と振動が作用して、緩やかな傾斜面で少しずつずれながら回転が始まり、下部コーンの幅が係合孔の幅に一致する角度まで回転すると、嵌合が外れることとなる。
【発明の効果】
【0016】
この発明の全自動式コンテナ連結具は、連結具本体、回転軸の上下端に上部コーン、下部コーンを有する回転コーン部、及び回転コーン部を初期位置に引き戻すために設けた弾性部材を備え、下部コーンはその平面視長さ及び幅を回転軸の中心線を中心に対称に、かつ下部コーンの長手方向側面に複合形状の案内面と、平面視対角位置に一対の突起部を形成し、荷揚げのため下部コーンを係合孔から分離する際に上記一対の突起部の上端面の隅部に、コンテナ吊り装置からの振動で回転して分離を容易にする緩やかな傾斜面を設けて形成したから、全自動式(フルオートマチック)のコンテナ連結具として、船舶のピッチング、又はピッチングとローリングが重なった場合でも連結の方向性の影響を抑えてコンテナの連結を保持でき、コンテナを吊り上げた状態でその吊り上げ力と振動を加えることによってコンテナ連結具の連結を確実に解除することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、この発明の実施形態について図面を参照して説明する。図1は実施形態のフルオートマチック(全自動)式のツイスト型コンテナ連結具の部分断面を含む正面図、図2はその直交方向の部分断面を含む側面図である。なお、図6に示すように、図1は後述するコンテナ連結具の下部コーン14の斜視図の矢視Iの方向から見た正面図であり、かつ輸送用のコンテナ短辺側の2箇所のコーナの1つについて短辺と平行な状態で、係合孔Cの長さ方向中央断面位置で係合されているコンテナ連結具を見た正面図である。又、図2は矢視IIから見た側面図である。
【0018】
図示のように、この実施形態のコンテナ連結具Aは、積み重ねられるコンテナCのコーナ金具C間に挟持される連結座10aの上下の両面にコーナ金具Cの係合孔Cに嵌合する突出部11、11を有する連結具本体10と、この連結具本体10を貫通する挿入孔12に挿入された回転軸13xの上下端に上部コーン14、下部コーン14を有する回転コーン部14と、連結具本体10内に回転コーン部14を初期位置に引き戻すために設けた弾性部材15を備えている。
【0019】
下部コーン14の平面視形状は、対向する一対の辺に突起部を有する略平行四辺形であり(図4参照)、長さL及び幅Bを回転軸13xの中心線Xを中心に対称に形成し、かつ下部コーン14を係合孔Cに係合するため平面視対角位置に一対の突起部14、14が突出状に対称に形成されている(平行四辺形の対向辺間の幅もそれぞれBである)。また、下部コーン14の長手方向側面の下半部分には、コンテナ積付けのため係合孔Cに嵌合する際に下部コーン14の回転を案内する案内面14DG、14LGを含む複合形状の案内面が形成されている。
【0020】
そして、コンテナCの荷揚げのため下部コーン14を係合孔Cから分離する際に、上記一対の突起部14、14の上端面にも平面視で互いに対角位置に下部コーン14の回転を案内する緩やかな傾斜面14PS、14PSを設けている。また、上記一対の突起部14、14の下部は、それぞれ後述する複合形状の案内面14DG、14DGに連続するように形成されている。弾性部材15は、図示の例では、コイルばねが用いられ、連結座10aの内部に形成された中空室16内に収納されている。17は係合保持用のストッパ(球形)、18は回転軸の適宜位置に形成された突起である。その詳細については、後で説明する。
【0021】
上記下部コーン14の長手方向(L)両端面14の案内面は、この側面と直交する方向(図2の矢視IIの側面視方向と少しずれた方向)から見ると下方に凸の山形台形状(図7の(a)図参照)に形成され、その案内面14DGが下部コーン14をコンテナの係合孔Cに係合させる際にその案内(ガイド)となる(図示省略)。一方、下部コーン14の幅方向(B)の両端面14は、この端面と直交する方向(図1の矢視Iの側面視方向と少し角度がずれた方向)から見ると下方に凸の山形状(図7の(b)図参照)に形成され、その傾斜面が係合孔Cに対して同様に案内(ガイド)となる(図示省略)。
【0022】
上記下部コーン14の長手方向側面の複合形状の案内面は、図1に示すように、上層に中心線Xを中心に対角位置に設けた略山形状の垂直壁14LH、幅方向の端面14、さらに傾斜面14PSが連続するように形成され、下層には傾斜状の案内面14DGが形成されて成る。なお、長手方向の端面14及びその下部の傾斜状の案内面14LGは、上記垂直壁14LH、案内面14DGにそれぞれ折れ面状に連なっている。そして、長手方向の両端面14、14、下層の案内面14DG、14DGを介して上記複合形状の各案内面が、中心線Xを中心に対角位置(裏表)に連続して形成されている。
【0023】
上記下部コーン14の下層の案内面14DG、14LGは、コンテナ連結具Cを下段のコンテナCに連結する際に、下部コーン14を回転させながらコーナ金具Cの係合孔Cに挿入するに必要な回転を与えるため設けられており、案内面14DGは係合孔Cの幅方向に対して挿入、係合作用を案内し、案内面14LGは係合孔Cの長さ方向に対して挿入、係合作用を案内する。上記下部コーン14の上端面に形成されている案内面は、上述した突起部14、14の緩やかな傾斜面14PS、14PSにより形成され、コンテナ連結具Cをコーナ金具Cから引き抜く際の回転の案内面として形成されている。
【0024】
上記連結座10aは、図3の断面に示すように、分割線10cで示す位置で2つに分割された鍔付の帽子型の2つの半部材からなり、図2に示す連結ボルト21により回転軸13xを挟んで互いに締結されている。この連結座10aの内部には、上記弾性部材15のコイルばね15を収納し得る平面視で3/4円弧形状と略三角形状の断面のスペースを連続させた複合的な形状の中空室16が形成されており、コイルばね15の一端は中空室16の突出端内部の係合ピン15aに係合され、他端は回転軸13xの係合リング15bに係止されている。
【0025】
さらに、3/4円弧形状の中空室16の一部に接続するように回転軸13xの長さ方向に沿って所定長さ範囲で断面コ字状の溝形に形成された収納室17aには、上部コーン14の係合状態を保持するためのストッパ(球形状)17が昇降自在に挿入され、下部コーン14が下のコンテナに係合されるまでは自重で収納室17aの溝の下部に位置している。ストッパ17、収納室17aを含む係合保持手段は、上部コーン14を手作業で上方のコンテナCの係合孔Cに係合してコンテナCを移動させる途中で、障害物に下部コーン14が当り予期しない回転が下部コーン14を介して加えられたときでも、上部コーン14の係合が外れないように係合を保持するために設けられている。
【0026】
図5に上部コーン14の図2の矢視V−Vから見た下底面形状を示す。図示のように、上部コーン14の平面視形状は、下部コーン14と略同一形状とされ、係合孔Cに係合した状態では突起部14’、14’がコーナ金具Cに係合するように形成されている。14aは緩やかな傾斜面、14bは平板面であり、互いに連続して形成されている。この傾斜面14a、平板面14bにより上段のコンテナCを吊り上げて荷揚げする時に、下部コーン14が係合孔Cから分離する際に緩やかな傾斜面14aによって回転コーン部14がスムーズに回転できるようにしている。
【0027】
なお、上部コーン14、下部コーン14の平面視で平行四辺形部は、図9に示すように、略同一形状であり、かつ同一方向に向いており、下部コーン14の突起部14、14と、上部コーン14の突起部14’、14’の形状が少しだけ異なっている(上部コーン14の突起部14’、14’が下部コーン14の突起部14、14より少しだけ大きい)。また、上述した上部コーン14の係合が外れないように係合を保持する機能については、次の通りである。
【0028】
即ち、回転軸13xの表面の適宜位置に上下2箇所に設けられた突起18(角度位置は少し互いにずれて設けられている)のうち、下方の突起18がストッパ17または中空室16の3/4円弧状の端壁に当接して左右いずれの方向の回転も阻止し、これにより上部コーン14の係合が保持される。上方の突起18は、ストッパ17の浮き上がりを防止するために設けられている。上部コーン14を上方のコンテナCに手作業で係合させるときは、図5に示す突起部14P’、14P’の傾斜面14a、平板面14bを利用して係合孔Cに対して図示の状態に嵌合させる。この嵌合状態で図6の矢視I、IIの方向から見た状態を図1、図2に示している。
【0029】
さらに、下部コーン14が係合孔Cに係合した状態では、図8に示すように、係合保持用のストッパ17が収納室17a内でコンテナ金具Cの肩部で持ち上げられ、下方の突起18と高さ位置がずれるが、この係合状態では上部コーン14、下部コーン14が回転することはなく、ストッパ17が突起18と対応していない状態でも支障はない。収納室17aの下端は、図1に示すように、一部が外部に開放され、内部に溜まった海水、ゴミを排出できるようになっている。
【0030】
なお、上記実施形態のコンテナ連結具Aの回転軸13xの直径は、前述した特許文献1の「下部コーンの中心が回転軸の中心から一側にずれて片寄り状に」形成されたものに対して、同等の強度を有する連結具として比較した場合、断面積比で40%程度の径となり、全体の重量が軽減される。これは、特許文献1のコンテナ連結具が片寄り状に形成されているため、コンテナが浮き上がる際に掛かる力が曲げ力として作用するのに対して、この実施形態のコンテナ連結具Aでは、回転軸が下部コーンの中心に対称に設けられており、従って輸送時に作用する荷重は上方向の引張荷重として作用するだけであるため、荷重に対する強度を小さく設定できるからである。
【0031】
上記の構成とした実施形態のコンテナ連結具Aは、上部コーン14を各コンテナの下部コーナに取り付けた状態で多数のコンテナのそれぞれをフルオートマチック方式で積み重ね、積み外しが出来る。以下、その作用について説明する。なお、予め上部コーン14は、係合孔Cに対して、図5に示す状態に係合されているものとする。また、この実施形態のコンテナ連結具Aでは回転軸の中心線Xが、上部コーン14、下部コーン14に対してその中心に設けられているため、コンテナCを積み重ねる際には、コンテナの中心がその下段のコンテナの中心に一致するように降ろせばよい。
【0032】
さて、図7の(a)図に示すように、コンテナCを降ろして下部コーン14が係合孔Cに当接すると、その突起部14、14が係合孔Cの開口肩部に当り、さらに下部コーン14が下降すると案内面14DG、14LGにより案内されて回転コーン部14が回転をする。回転コーン部14の回転により下部コーン14の幅Bが係合孔Cの幅に一致する角度まで回転すると、図7の(b)図に示すように、下部コーン14が係合孔C内に嵌合し、下部コーン14はさらに深く下降する。
【0033】
そして、連結具本体10の突出部11、11と下部コーン14が完全に係合孔Cの厚さまで嵌合すると、図8に示すように、回転コーン部14は弾性部材15の弾性力で引き戻され、下部コーン14の突起部14、14が初期位置に戻り、コーナ金具Cの下面に係合する。上記作動を平面視で説明すると、図9の(a)〜(c)図に示すように、下部コーン14の突起部14、14の下方の案内面14DGが係合孔Cに当接することによりその傾斜面に沿って押されて回転(図では時計方向)をし、(b)図の角度位置まで回転する。
【0034】
この状態では下部コーン14の幅Bが係合孔Cの幅Bより僅かに小さく形成されているため、下部コーン14が係合孔C内に嵌合することが出来る。(c)図の状態では、下部コーン14が係合孔Cの下面内で引き戻され、初期位置に戻っていることが分かる。図9の(a’)図では、対応する上部コーン14の初期位置が示されており、上方のコンテナのコーナ金具Cに係合した状態に予めセットされている。そして、(b’)図では、下部コーン14が下のコンテナCの係合孔Cに嵌合することにより回転すると、上部コーン14の係合状態が開放される方向に回転する。
【0035】
この場合、予め突起部14’の係合が完全に外れることはないように設定されているため、連結の方向性の影響を抑えて係合状態が保持される。図9の(c’)図では、弾性部材15の張力で回転軸13xが回転し、下部コーン14が下のコンテナの係合孔Cに係合すると同時に、上部コーン14が上のコンテナの係合孔Cに対して初期状態に戻り、全自動式コンテナ連結具Aによる係合が完全に行われる。
【0036】
反対に、上のコンテナCを下のコンテナCから外す場合、図10の(a)図に示すように、上のコンテナCを引き上げることによりコーナ金具Cに作用する引上力(矢印)が働くと、上部コーン14、回転軸13xを介して下部コーン14が引き上げられるため、(b)図に示すように、下部コーン14の突起部14、14の上端の緩やかな傾斜面14PS、14PSが係合孔Cの端部から少しずつずれて、下部コーン14が回転を始める。このため、(イ)の状態を経て(ロ)の位置まで回転が進むと、下部コーン14が係合孔Cの幅の範囲内となり、下部コーン14が引き抜かれる。
【0037】
なお、上記実施形態の全自動式コンテナ連結具Aでは、下部コーン14が少しずつずれて回転するのを促進するために、図11に示す吊り上げ装置(スプレッダ)20の吊りアーム21の両端の連結部材22の上部に適切な振動を加える加振機(バイブレータ)23を備え、この加振機による振動で下部コーン14の回転を促進させて下部コーン14が引き抜かれる状態を生じるようにすることが前提である。加振機の形式は、吊りアーム21の構造を損なわない限り、圧縮エアー方式、電動モータ式等どのような形式のものでも振動を加えることが出来ればよい。
【0038】
また、上記実施形態では上部コーン14と下部コーン14は、その長手方向の向きをほぼ一致する方向に設定しているが、必ずしも完全に一致させる必要はなく、所定角度範囲内であれば少しずれて設定しても良い。さらに、下部コーン14の長さ方向の外端面の垂直壁14LHは、直線状の垂直壁として形成しているが、係合孔Cに嵌合するのに適合する範囲内で緩やかな曲線状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0039】
この発明の全自動式コンテナ連結具は、積み重ねられるコンテナのコーナ金具間に挟持される連結具本体と、回転軸の上下端に上部コーン、下部コーンを有する回転コーン部と、連結具本体内に回転コーン部を初期位置に引き戻すために設けた弾性部材とを備え、下部コーンは回転軸の中心線を中心に対称に形成し、かつコンテナ積付けのため係合孔に嵌合する際に回転を案内する複合形状の案内面と、下部コーンを係合孔に係合するため一対の突起部を形成し、コンテナの荷揚げのため下部コーンを係合孔から分離する際に回転を案内する緩やかな傾斜面を設けたものとしたから、全自動式コンテナ連結具としてコンテナ輸送の分野に広く利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】実施形態の全自動式コンテナ連結具の図6の矢視Iから見た正面図
【図2】同上の全自動式コンテナ連結具の図6の矢視IIから見た側面図
【図3】図2の矢視IIIから見た断面図
【図4】図2の矢視IVから見た断面図
【図5】図2の矢視Vから見た断面図
【図6】同上の全自動式コンテナ連結具の下部コーンの斜視図
【図7】同上の全自動式コンテナ連結具の作用の説明図
【図8】同上の全自動式コンテナ連結具の作用の説明図
【図9】同上の全自動式コンテナ連結具の作用の説明図
【図10】同上の全自動式コンテナ連結具の作用の説明図
【図11】吊り装置による吊り上げ状態と加振機の装着状態の説明図
【符号の説明】
【0041】
10 連結具本体
10a 連結座
11、11 突出部
12 挿入孔
13x 回転軸
14 回転コーン部
14 上部コーン
14 下部コーン
14DG、14LG 案内面
14 突起部
14PS 傾斜面
15 弾性部材(コイルばね)
16 中空室
17 ストッパ
18 突起
A コンテナ連結具
コンテナ
コーナ金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積み重ねられるコンテナCのコーナ金具C間に挟持される連結座10aの両面にコーナ金具Cの係合孔Cに嵌合する突出部11、11を有する連結具本体10と、この連結具本体10を貫通する挿入孔12に挿入された回転軸13xの上下端に上部コーン14、下部コーン14を有する回転コーン部14と、連結具本体10内に回転コーン部14を初期位置に引き戻すために設けた弾性部材15とを備え、下部コーン14はその平面視長さ及び幅を回転軸の中心線を中心に対称に形成し、かつ下部コーン14の長手方向側面にコンテナ積付けのため係合孔Cに嵌合する際に回転を案内する複合形状の案内面14DG、14LGと、下部コーン14を係合孔Cに係合するため平面視対角位置に一対の突起部14、14を形成し、コンテナCの荷揚げのため下部コーン14を係合孔Cから分離する際に、上記一対の突起部14、14の上端面に、コンテナ吊り装置からコンテナCを介して伝達される振動で回転コーン部14を回転させ、コーナ金具からの分離作用を促進するに十分緩やかな傾斜面14PS、14PSを形成した全自動式コンテナ連結具。
【請求項2】
前記下部コーン14をその平面視で略平行四辺形状とし、この平行四辺形の対角上の各一辺から突出状に一対の突起部14、14を設け、この一対の突起部14、14の下部が複合形状の案内面14DGに連続するように形成したことを特徴とする請求項1に記載の全自動式コンテナ連結具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2008−174294(P2008−174294A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11617(P2007−11617)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000208101)大洋製器工業株式会社 (17)
【Fターム(参考)】