説明

全血中の疎水性検体のための抽出剤

本発明は、抽出剤を用いて、動物試験試料からの疎水性検体の定量的な検出を達成する。疎水性の検体には、ステロイド、疎水性ペプチド、および薬剤が含まれ得る。動物試験試料には、血清、血漿、全血、尿および髄液が含まれ得る。疎水性の検体としては、主に免疫抑制剤として用いられる薬物のシクロスポリンが好ましい。動物試験試料としては、全血が好ましい。抽出剤には、両イオン性界面活性剤およびサポニン、および随意的に、サッカロースまたはグリセリンなどの粘性の添加剤が含まれる。疎水性の検体の検出および分析は、自動免疫分析装置で行うことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全血中の疎水性検体のための抽出剤に関する。
【背景技術】
【0002】
身体は、複雑な免疫応答系に依存して、自己を異物と区別している。免疫系が適切に機能することは、長期間にわたり身体を健康に保つのに不可欠である。
【0003】
免疫応答不全は、自己を異物から保護する身体能力の欠如を引き起こしうる。過剰の免疫応答は、そうでなければ無害であろうものへの身体の過剰反応を引き起こしうる。
【0004】
時には、低下している免疫応答の向上または過剰な応答の抑制のどちらかを目的として、身体の免疫系を調節しなければならない。例えば、腎臓、心肺、骨髄および肝臓などの臓器をヒトに移植する場合、身体は、いわゆる同種移植の拒絶反応により、移植組織を拒絶することがよくある。
【0005】
同種移植の拒絶反応の治療では、薬物療法によって調節する方法で免疫系を抑制することが多い。同種移植の拒絶反応の抑制を補助するため、免疫抑制剤が慎重に投与される。
【0006】
シクロスポリンは免疫抑制剤であり、身体が移植臓器を拒絶しないように調節するような様式で身体の免疫系に作用するが、それはまた、感染に抵抗する身体能力をも低下させてしまう。
【0007】
シクロスポリンは、極めて効果的な免疫抑制剤ではあるが、有効な用量範囲が狭いため、その利用を慎重に管理する必要がある。過剰の投与により、腎機能障害、高血圧症、心臓血管痛、多毛、にきび、震え、てんかん、頭痛、歯肉肥厚、下痢、吐き気、嘔吐、肝毒性、腹部不快感、錯感覚、顔面紅潮、白血球減少、リンパ腫、副鼻腔炎、女性化乳房などの深刻な副作用が、シクロスポリン治療を受けている腎臓、心臓、または肝臓移植患者に起こる可能性がある。シクロスポリンが少なすぎると、移植片が拒絶される可能性がある。
【0008】
効果的な免疫抑制活性のための、投薬して24時間後に測定される患者のシクロスポリン血中濃度は、一般に、移植片の種類、年齢、食事、体重および個々の感受性を含む代謝活性を調節する可変の個人的要因に応じて、約100ng/ml〜約400ng/mlの治療域で保たれる。
【0009】
シクロスポリンの投薬量の管理には、患者の体内に存在する薬の濃度または量を慎重に調節することが必要とされる。シクロスポリンの拡散および代謝が患者間で大きく異なること、および拒絶反応の範囲および重症度が幅広いことから、薬物濃度を正確にモニタすることが必須であると考えられる。
【0010】
シクロスポリン検出用の実験室的手法が開発されてきた。これらの技術としては、典型的には、質量分析(MS)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、または蛍光偏光免疫測定法(FPIA)が挙げられる。しかしながら、これらの技術は、個々の患者の試験試料のヘマトクリット値およびタンパク質濃度、ならびに、血液細胞およびタンパク質と結合する検体の傾向にばらつきがあることから、一貫性のない結果を生み、したがって、シクロスポリンの量の測定に誤差をもたらす。
【0011】
血液からシクロスポリンを抽出するための様々な方法が知られている。これらの方法には、ある種の界面活性剤および有機溶媒を用いて、結合形態からシクロスポリンを放出させる方法が含まれる。従来法は、細胞を溶解し、シクロスポリンを抽出し、また、試料中の干渉するタンパク質および細胞成分を前処理して除去する、多段階の手順を含む。有機溶媒、主に低級アルコールは、通常、既知の抽出剤の重要な活性成分である。しかしながら、これらのアルコール系有機溶媒は、揮発性で、毒性があり、患者のシクロスポリン量の検出において、正確な結果を得ることがより難しくなる。
【0012】
血液からシクロスポリンを抽出する従来法には、沈殿剤を用いてタンパク質を沈殿させ、遠心分離を用いて、沈殿させた物質を可溶性のシクロスポリンから分離する方法もあるが、それによって、抽出がさらに複雑になる。
【0013】
Meucciらの特許文献1には、沈殿剤を用いて干渉するタンパク質を動物試験試料から沈殿させることによる、動物試験試料からの疎水性検体の抽出が開示されている。沈殿剤としては、亜鉛塩、炭素原子1〜4の直鎖または分岐鎖アルコール、および、グリコール、グリセロール、またはグリコールとグリセロールの組合せが挙げられる。疎水性検体の抽出は、処理済の試験試料を遠心分離し、所望の検体を含む上清液を分離して行うことが好ましい。Meucciらの可溶化剤には、非イオン性界面活性剤、アルコキシ(ポリエチレンオキシプロピレンオキシ)−イソプロパノール、およびサポニンが含まれている。
【0014】
Davalianらの特許文献2には、シクロスポリンでラベルされた複合体を含む動物試験試料の水溶液を、シクロスポリンでラベルされた複合体と結合する能力のある抗体と接触させることにより、検出可能な複合体を形成し、その検出可能な複合体を試料中のシクロスポリン量と相関させることにより、シクロスポリン量を測定する方法が開示されている。 分析すべきシクロスポリン試料を前処理して、存在する可能性のある細胞を溶解し、存在する可能性のあるタンパク質を沈殿させ、および/または存在する可能性のあるシクロスポリンを可溶化させてもよい。試料は、有機溶媒、好ましくはメタノールなどのアルコールと接触させることにより前処理することが好ましい。
【特許文献1】米国特許番号第5,135,875号明細書
【特許文献2】米国特許番号第6,190,873号明細書
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、抽出剤を用いて、動物試験試料から疎水性の検体を定量的に検出する。疎水性の検体としては、ステロイド、疎水性ペプチド、および薬剤が挙げられる。動物試験試料としては、血清、血漿、全血、尿および髄液が挙げられるであろう。疎水性の検体としては、主に免疫抑制剤として用いられる薬物であるシクロスポリンが好ましい。動物試験試料としては、全血が好ましい。
【0016】
シクロスポリンの疎水性構造のために、赤血球、白血球およびリポ蛋白などの血液中の様々な高分子および細胞成分との比較的安定な複合体が形成される。これは、シクロスポリンの水への溶解度が約0.04mg/gと、比較的小さいことに起因する。
【0017】
水媒体中では、シクロスポリンは溶液中の低極性成分に容易に吸着される。血中のシクロスポリンの典型的な分画パターンは、次のように定義される:40〜50%が赤血球と結合、30〜40%が血漿タンパクと結合、10〜20%が白血球と結合。
【0018】
本発明にかかる抽出剤は、有機溶媒の必要がなく、沈殿剤の必要がなく、また、遠心分離などによって患者の血液試料からシクロスポリンを分離する必要のない、単一の工程で試験試料からシクロスポリンを抽出する、効果的で効率の良い方法である。
【0019】
動物試験試料をシクロスポリン抽出剤と接触させて、ADVIA Centaur(登録商標)自動免疫分析装置(バイエル社製)などの適切な自動免疫分析装置で分析する準備が整った、均一で可溶化されたシクロスポリン試験試料を生成する。
【0020】
シクロスポリン抽出剤には、有効量の両イオン性界面活性剤およびサポニンの水溶液が含まれている。
【0021】
サポニンは強力な溶血素であり、赤血球を溶解するため、すなわち、細胞を懸濁した溶媒中にヘモグロビンを遊離させるような様式で赤血球を変性、溶解、または破壊する目的で、抽出剤に含まれる。サポニンは、また、細胞物質およびシクロスポリンを可溶化させる働きもする。
【0022】
抽出剤中のサポニン濃度は、約0.1重量%〜約1重量%の範囲であってよく、約0.25重量%〜約0.5重量%が好ましい。
【0023】
両イオン性界面活性剤は、シクロスポリンを含む試験試料成分の溶解性を維持する目的で抽出剤に含まれる、生理的に穏やかな界面活性剤である。
【0024】
抽出剤中の両イオン性界面活性剤の濃度は、約0.1重量%〜約1重量%の範囲であってよく、約0.25重量%〜約0.5重量%が好ましい。
【0025】
両イオン性界面活性剤の例としては、3−[N,N−ジメチル−(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]−プロパン硫酸塩、3−(4−ヘプチル)フェニル3−ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオ−プロパン硫酸塩、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、3−(N,N−ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、3−(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩、3−(N,N−ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩、および他の同等の両イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0026】
両イオン性界面活性剤は、Zwittergent 3-12(カルビオケム社(Calbiochem)製)およびBioplus SB-12(Bioworld社製)という商品名で市販されている、N−ドデシル−N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩が好ましい。
【0027】
抽出剤には、さらに、自動免疫分析装置によるシクロスポリン試験試料のより効率的な吸引を提供するのに十分な量の粘性を保持する化合物を含めることができる。適切な粘性を保持する化合物としては、効果的な量のサッカロース、グリセリンおよび他の等価のものが挙げられ、0よりも大きい最小量〜60重量%の範囲であってよく、抽出剤の約5重量%〜約50重量%であることが好ましい。
【0028】
抽出、可溶化されたシクロスポリン試験試料を、次に、沈殿および/または遠心分離など、成分を分離するために特別な前処理をすることなしに、検出および分析する目的で、ADVIA 「Centaur」(バイエル社製)などの適切な自動免疫分析装置に取り込むことが可能である。
【0029】
分析に供される検出試料には、患者の血液試料のすべての血液成分、および、可溶化された均一な状態の抽出剤のすべての成分が含まれている。次に、患者の血液試料中のシクロスポリンを、ADVIA 「Centaur」自動免疫分析装置(バイエル社製)または同等の適切な自動免疫分析装置を用いて定量的に分析および測定することが可能である。
【0030】
したがって、本発明にかかる組成物および方法は、シクロスポリンの自動分析試験を行う前に患者の血液試料からシクロスポリンを物理的に分離することを含まず、従来技術と比較して、単純化され、また、改善されている。
【0031】
患者の血液試料からシクロスポリンを抽出するための薬剤は、赤血球を崩壊させ、かつ血中で形成された複合体から結合しているシクロスポリンの分離を促進させるのに必要な浸透圧衝撃、試料を均一化するための細胞溶解、およびシクロスポリン特異抗体を用いて、検体であるシクロスポリンを定量的に検出するための免疫学的に検出可能な形態で、患者の血液試料中の血漿成分および細胞物質から放出された、抽出、可溶化されたシクロスポリンを生成するための患者の血液試料全体の可溶化を単一の工程で成し遂げる。シクロスポリンの分析を抽出工程なしに行う場合は、著しい回収の低下が見られるであろう。
【0032】
自動免疫分析装置で行われるシクロスポリンの検出および分析は、血液試料由来の検体であるシクロスポリンと、適切なシクロスポリン特異抗体または検体であるシクロスポリン用の結合剤との反応に基づいている。
【0033】
分析方法は、試料由来のシクロスポリンと、ビオチンでラベルされたシクロスポリン特異抗体として、一定量のあらかじめラベルされたシクロスポリン・トレーサーとの競合反応に基づいていることが好ましい。
【0034】
検体は、シクロスポリンの投薬によって患者の血液に取り込まれたシクロスポリン分子である。シクロスポリン特異抗体は、自動免疫分析装置の検出試薬を構成する重要な成分である。
【0035】
自動免疫分析装置の検出試薬の別の重要な成分は、免疫分析装置で定量的に測定可能なトレーサー分子でラベルされた合成シクロスポリン誘導体である。トレーサーはアクリジニウムエステルである。検出方法は、当業者に知られている光電子増倍管を用いた光子計数法により、発光を測定することに基づいている。
【0036】
したがって、シクロスポリン特異抗体は、自動化免疫分析装置内で、患者の血液試料から抽出された検体のシクロスポリンおよびトレーサーでラベルされたシクロスポリンと反応する。
【0037】
試験試料中に存在する検体とトレーサー化合物は、数が限られている結合部位を得るために競合し、結果的に、検体−抗体複合体およびトレーサー化合物−抗体複合体を形成する。トレーサー化合物と抗体の濃度を一定に維持することにより、検体−抗体複合体のトレーサー化合物−抗体複合体に対する形成比率は、試験試料中に存在する検体の量に正比例する。
【0038】
シクロスポリン抗体反応、もしくは検体−結合剤反応では、シクロスポリン特異抗体の抗原認識領域が、シクロスポリン分子または検体のエピトープ断片にアクセスする必要がある。反応での、患者の血液試料由来のこのエピトープ領域の利用性は、シクロスポリンを溶液中に保ち続けることによって維持され、抽出されたシクロスポリン試験試料中のリポ蛋白および他の高分子成分の存在によって妨害されない。
【0039】
シクロスポリン検体−抗体複合体およびトレーサー−抗体複合体は、例えば、試験試料中の検体の濃度によって決定される比率でストレプトアビジンによりコーティングされた常磁性の微粒子などの常磁性の固相試薬に捕捉され、化学発光検出系を用いてシクロスポリン濃度を表す標準較正曲線と比較することによって定量される。
【0040】
常磁性の固相試薬は、自動免疫分析装置の検出試薬を構成する別の重要な成分である。
【0041】
これには、ストレプトアビジンで化学的にコーティングされた常磁性の微粒子が含まれる。ストレプトアビジンの分子は、ビオチンに対する強力で選択性のある天然的特異性を有し、免疫測定におけるシクロスポリン特異抗体など、ビオチンでラベルされた分子との反応に幅広く用いられる。
【0042】
本発明に係る方法は、ストレプトアビジンでコーティングされた常磁性の粒子とビオチンでラベルされたシクロスポリン特異抗体との反応を利用するものである。この反応は、シクロスポリン特異抗体を固定化し、試料由来のシクロスポリンおよび検出試薬であるアクリジニウムエステルでラベルされたシクロスポリンの両方の捕捉を可能にする。
【0043】
試験試料中のシクロスポリンの量が多くなると、シクロスポリンのこれら二形態の競合に起因して、抗体と結合する検出試薬のトレーサー−シクロスポリン分子は少量になる。
したがって、測定される分析シグナルは、自動免疫分析装置で分析される患者の血液試料中のシクロスポリンの濃度に反比例する。
【0044】
分析のために自動免疫分析装置に供される検出試料の最終的な形態は、分析用のシクロスポリンを含む可溶化された患者の血液試料、および抽出剤を、約1:1〜約1:9の一定の体積比で含み、その比が約1:2〜約1:4であることが好ましい。
【0045】
本発明に係る抽出剤を用いることの重要な利点は、有機溶媒を含まず、沈殿工程を含まず、また、遠心分離の工程も必要としないことである。患者の血液試料を抽出試薬で処理することにより、放出されたシクロスポリンをラベル化ビオチン抗体によって定量的に認識することが可能な、均一の、抽出され、可溶化されたシクロスポリン試験試料を生じる。
【実施例】
【0046】
実施例1
患者8人に、臨床状況において、治療量のシクロスポリンを投薬した。次に、約1〜2mlの一定分量の血液試料を、シクロスポリンを投与して約24時間後に、各患者から採取した。血液試料の抽出剤に対する体積比が1:4の割合の本発明に係る抽出剤で、各血液試料を処理した。
【0047】
抽出剤は、 0.3125重量%のN−ドデシル− N,N−ジメチル−3−アンモニオ−1−プロパンスルホン酸塩(Bioplus SB-12(Bioworld社製))、0.625重量%のサポニン、43.75重量%のグリセリン、および残留物、蒸留水からなっていた。
【0048】
抽出剤を用いて、各患者の血液試料中のシクロスポリンを抽出し、可溶化して、抽出されたシクロスポリンを含む均一の血液試料を生成した。
【0049】
次に、各均一の血液試料を、ADVIA 「Centaur」(バイエル社製)自動免疫分析装置に取り込み、分析を行った。結果を表1に示す。
【0050】
表1を参照すると、「非添加」という用語は、各患者が治療量のシクロスポリンを服用して24時間後に検出されたシクロスポリンの量のことをいう。「添加」という用語は、既知の重量測定法で測定された量のシクロスポリンを、約6ヵ月後の患者の血液試料に加えることをいう。
【0051】
免疫抑制剤治療を行っていない、非移植の「対照」提供者からも、1mlの血液試料を採取した。対照提供者には、最初に100ng/mlの測定用量のシクロスポリンを与え、患者の試料を模倣した。非移植対照提供者由来のシクロスポリンの分析を、表1に「対照患者」として表す。非移植対照提供者由来のシクロスポリンの分析は、その後に、追加の測定用量のシクロスポリンの添加を正確に評価するための対照としての役割をする。
【0052】
各患者の血液試料を、−80℃で約6ヶ月間保管した。次に、各血液試料を、周囲温度まで溶かし、200ng/mlのシクロスポリンを添加し、18時間、4℃で定温放置した。各混合試料から20mlの量を、バイエル社製のADVIA「Centaur」自動免疫分析装置で試験した。
【0053】
表1の「添加−反復1回目」という表題の下に集計されるデータは、患者の血液試料に200ng/mlのシクロスポリンを添加した後のシクロスポリンの総量の分析を表している。表1における反復1回目および反復2回目のデータは、同時に行われた、同一稼動による同一試料についての2回の測定を表している。2回の反復を行い、分析し、再現性を示し、また、統計的にさらに有意な結果を出した。
【0054】
次に、シクロスポリンの回収率を計算した。両方の反復を用いて、表1の「回収率(%)」の欄に集計される反復第1回および第2回の平均に基づいて回収率を計算した。
【0055】
表1の結果は、本発明に係るシクロスポリンの抽出方法の有効性を示すものである。回収し、測定した分析的なシクロスポリンの量と、重量測定法で測定した、添加したシクロスポリン量とを比較することにより、本方法の正確性の指標が提供され、また、評価すべき血液からのシクロスポリンの抽出を効率的にすることが可能になった。
【0056】
この実験における方法および抽出の正確性を、200ng/mlの期待される回収率を実際に測定した回収用量と比較することによって判断した。理想的には、回収率は100%であるべきだが、実際には、この分析では十分に認容可能な限度である±10%の偏差が存在した。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機溶媒を使用せず、また、沈殿剤を使用せずに、不均一な動物試験試料から疎水性の検体を抽出するための薬剤組成物であって、
(a)両イオン性界面活性剤と、
(b)サポニン、
の水溶液であって、各成分が、均一溶液中の動物試験試料から疎水性の検体が放出されるのに効果的な、十分な量で存在している水溶液を含む、
薬剤組成物。
【請求項2】
前記両イオン性界面活性剤の量が約0.1重量%〜約1.0重量%であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項3】
前記サポニンの量が約0.1重量%〜約1重量%であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項4】
前記動物試験試料が、血清、血漿、全血、尿および髄液からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項5】
前記動物試験試料が全血であることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項6】
前記疎水性の検体が、ステロイド、疎水性ペプチドおよび薬剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項7】
前記疎水性の検体がシクロスポリンであることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項8】
前記両イオン性界面活性剤が、
3−[N,N−ジメチル(3−ミリストイルアミノプロピル)アンモニオ]−プロパン硫酸塩、3−(4−ヘプチル)フェニル3−ヒドロキシプロピル)ジメチルアンモニオプロパン硫酸塩、3−(デシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩、3−(N,N−ジメチルミリスチルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、3−(N,N−ジメチルオクタデシルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、3−(N,N−ジメチルオクチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩、3−(N,N−ジメチルパルミチルアンモニオ)プロパンスルホン酸塩、および、3−(ドデシルジメチルアンモニオ)プロパンスルホン酸・分子内塩からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項9】
グリセリンおよびサッカロースからなる群より選択される粘性の添加剤を、さらに、少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項1記載の薬剤組成物。
【請求項10】
前記粘性の添加剤の量が約5重量%〜約50重量%であることを特徴とする請求項9記載の薬剤組成物。
【請求項11】
動物試験試料中の疎水性の検体の量を測定する免疫測定方法であって、
(a)前記試験試料を、有機溶媒および沈殿剤を使用せずに、
(i)両イオン性界面活性剤、および
(ii)サポニン、
を含む効果的な量の抽出剤であって、該抽出剤の各成分が、遠心分離を行わずに均一溶液中の前記疎水性の検体を放出するのに効果的な量で存在している抽出剤と接触させ、
(b)前記疎水性の検体を含む前記均一溶液を自動免疫分析装置に取り込み、
(c)前記自動免疫分析装置で前記疎水性の検体の量を測定する、
各工程を含む免疫測定方法。
【請求項12】
前記両イオン性界面活性剤の量が約0.1重量%〜約1.0重量%であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記サポニンの量が約0.1重量%〜約1重量%であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項14】
前記試験試料からの前記検体の抽出が、単一の工程で行われることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項15】
前記動物試験試料が、血清、血漿、全血、尿および髄液からなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項16】
前記動物試験試料が全血であることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項17】
前記疎水性の検体が、ステロイド、疎水性ペプチドおよび薬剤からなる群より選択されることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項18】
前記疎水性の検体がシクロスポリンであることを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項19】
前記抽出剤が、グリセリンおよびサッカロースからなる群より選択される粘性の添加剤を少なくとも1種類含むことを特徴とする請求項11記載の方法。
【請求項20】
前記粘性の添加剤の量が約5重量%〜約50重量%であることを特徴とする請求項19記載の方法。

【公表番号】特表2008−538001(P2008−538001A)
【公表日】平成20年10月2日(2008.10.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−503247(P2008−503247)
【出願日】平成18年3月24日(2006.3.24)
【国際出願番号】PCT/US2006/010885
【国際公開番号】WO2006/102612
【国際公開日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【出願人】(507318299)シーメンス メディカル ソリューションズ ダイアグノスティクス (2)
【氏名又は名称原語表記】SIEMENS MEDICAL SOLUTIONS DIAGNOSTICS
【Fターム(参考)】