説明

公共交通システム

【課題】 より多くの人が自転車を安心して便利に共用でき、都市交通網の拡充、整備に貢献できる新規な公共交通システムを提供する。
【解決手段】 利用者Uが乗車する電車2とバス3に、交通系ICカード8の認証コードを読み取るカードリーダを設置する。駅やバス停等の公共施設の近くに駐輪スタンド5と自転車用改札装置6を設置し、複数の駐輪スタンド5に貸出用の自転車4を係留し、自転車用改札装置6に交通系ICカード8の認証コードを読み取るタッチパネル21を設ける。交通系ICカード8には、電車2、バス3の乗車料金に加え、自転車4の利用料金を決済するために必要な認証コードが記録されている。制御装置7の管理コンピュータ28は、自転車用改札装置6と交信し、利用者Uを認証し、自転車4の利用料金を決済し、駐輪スタンド5のロック機構16の施錠および解錠を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ICカードを利用して公共交通車両に乗車する公共交通システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市部では、電車(地下鉄道車両)や路線バスに共通のICカードを用いて、複数種の公共交通車両を乗り継ぐシステムが普及している。一方、公共交通車両の停車駅周辺では、乗客が自宅から駅まで、駅から目的地まで利用する多数の自転車が長時間放置され、交通安全、環境整備上の観点から放置自転車対策が求められている。
【0003】
そこで、従来、駅周辺に流入する自転車の総数を減らすために、シェア自転車またはコミュニティサイクルなど、自転車の共用化を促進するシステムが提案され、一部地域で試行されている。また、シェア自転車の貸出、返却、決済業務を自動化するために、ICカードを利用するシステム(例えば、特許文献1)も提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−228251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、従来のシステムによると、ICカードをクレジットカードに連携させて自転車の利用代金を決済しているため、自転車を多用するがクレジットカードを所持していない若年層がシェア自転車を利用できなかったり、カード情報の漏洩を懸念する多くの人がシェア自転車の利用を敬遠したりするなどの問題点があった。
【0006】
そこで、本発明の目的は、より多くの人が自転車を安心して便利に共用でき、都市交通網の拡充、整備に貢献できる新規な公共交通システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、次のような公共交通システムを提供する。
(1)利用者が乗車する公共交通車両と、公共交通車両への乗車を認証するための電子情報が記録されたICカードと、ICカードの電子情報を読み取る第1カードリーダを備えた車両用改札装置と、利用者に貸し出す自転車と、自転車のロック機構を備えた駐輪スタンドと、ICカードの電子情報を読み取る第2カードリーダを備えた自転車用改札装置と、第2カードリーダが読み取った電子情報に基づいてロック機構の施錠および解錠を制御する制御装置とから構成したことを特徴とする公共交通システム。
【0008】
(2)ICカードに記録された電子情報が、公共交通車両の乗車料金および自転車の利用料金を決済するために必要な認証コードを含むことを特徴とする公共交通システム。
【0009】
(3)制御装置が、自転車利用料金を第2カードリーダが読み取った認証コードに基づいて決済する管理コンピュータを備えたことを特徴とする公共交通システム。
【0010】
(4)管理コンピュータが、自転車利用料金の決済を完了した時点で、自転車用改札装置を介して駐輪スタンドのロック機構に解錠指令を送信することを特徴とする公共交通システム。
【0011】
(5)制御装置が、利用者の個人情報を第2カードリーダが読み取った認証コードに関連付けて記憶するデータベースを備えたことを特徴とする公共交通システム。
【0012】
(6)個人情報が携帯電話の電話番号を含み、管理コンピュータが利用者の所持する携帯電話との通信データから電話番号を取得することを特徴とする公共交通システム。
【0013】
(7)駐輪スタンドが自転車に装着された無線ICタグの読取器を備え、自転車用改札装置が複数の駐輪スタンドから取得したタグ情報を管理コンピュータに送信し、管理コンピュータが受信したタグ情報とデータベースの登録情報とに基づいて自転車の貸出処理と返却処理を行うことを特徴とする公共交通システム。
【0014】
(8)自転車用改札装置が、第2カードリーダとして機能するタッチパネルを備えたことを特徴とする公共交通システム。
【発明の効果】
【0015】
本発明の公共交通システムによれば、公共交通車両用のICカードを自転車のキーとして使用するので、より多くの人が自転車を安心して便利に共用でき、放置自転車を減らし、都市交通網の拡充、整備に貢献できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本願発明の一実施形態を示す公共交通システムの概念図である。
【図2】車両用改札装置を示す概略図である。
【図3】自転車用改札装置と駐輪スタンドの配置を示す斜視図である。
【図4】自転車用改札装置の構成を示すブロック図である。
【図5】管理コンピュータの構成を示すブロック図である。
【図6】データベースの構成を示すブロック図である。
【図7】利用者の登録手順を示すフローチャートである。
【図8】自転車の貸出手順を示すフローチャートである。
【図9】自転車の返却手順を示すフローチャートである。
【図10】自転車用改札装置の表示画面を示す模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。図1に示すように、この実施形態の公共交通システム1は、利用者Uが乗車する電車2(地下鉄道車両)およびバス3と、利用者Uに貸し出す自転車4と、駅やバス停等の公共施設の近くに設置された駐輪スタンド5と、自転車4の貸出/返却窓口となる自転車用改札装置6と、各地の自転車用改札装置6を遠隔地から制御する制御装置7と、利用者Uが所持する交通系ICカード8および携帯電話9とから構成されている。交通系ICカード8としては、株式会社名古屋交通開発機構が発行する「manaca」(登録商標)カードを例示できる。
【0018】
交通系ICカード8には、電車2とバス3の乗車料金および自転車4の利用料金を決済するために必要な認証コード(例えば、「manaca」カードのIDIコード)が記録されている。図2(a)に示すように、電車2の改札口には交通系ICカード8の認証コードを読み取る第1カードリーダ11を備えた電車用改札装置12が設置されている。図2(b)に示すように、バス3の乗降口には同じ交通系ICカード8の認証コードを読み取る別の第1カードリーダ13を備えたバス用改札装置14が設置されている。
【0019】
図3に示すように、駐輪スタンド5には、自転車4を施錠するロック機構16と、自転車4の貸出/返却状態を表示するランプ17と、自転車4の無線ICタグ18を読み取るタグ読取器19とが設けられている。自転車用改札装置6には、電車2およびバス3と共通の交通系ICカード8の認証コードを読み取るための第2カードリーダとして機能するタッチパネル21と、利用者Uの接近を感知する人感センサ22とが設けられている。
【0020】
また、自転車用改札装置6は、図4に示すように、タッチパネル21で入力された情報を一時的に記憶するメモリ23と、駐輪スタンド5のロック機構16、ランプ17およびタグ読取器19を駆動するスタンド駆動部24と、タッチパネル21およびスタンド駆動部24を制御するCPU26と、制御装置7の管理コンピュータ28と交信するVPNルータ等の通信部25とを装備している。制御装置7は、管理コンピュータ28に付属のデータベース34を備えている(図1参照)。
【0021】
図5に示すように、管理コンピュータ28には、自転車用改札装置6のタッチパネル21で読み取った交通系ICカード8の認証コードに基づいて利用者Uを認証する利用者認証部29と、同じく交通系ICカード8の認証コードに基づいて自転車4の利用料金を決済する利用料金決済部30と、自転車4の貸出および返却処理を行う貸出/返却処理部31と、自転車用改札装置6と交信するVPNルータ等の通信部32とが設けられている。
【0022】
図6に示すように、データベース34には、利用者の個人情報とタッチパネル21で読み取った認証コードとを関連付けて記憶する個人/カード情報管理テーブル35、認証コードと自転車4のICタグ情報とを関連付けて記憶するカード/自転車情報管理テーブル36、交通系ICカード8の残高情報や外部決済機関との取引情報等を記憶する決済情報管理テーブル37、および、駐輪スタンド5ごとにその番号と関連付けて自転車4の貸出時刻や返却時刻等を記憶する貸出/返却管理テーブル38が設けられている。
【0023】
図7に示すように、システムの利用開始にあたり、まず、利用者Uは、携帯電話9、その他の携帯情報端末またはパソコンを使用し、システム管理者が運営するWeb窓口にアクセスし、Webページの指定欄に氏名、住所、電話番号等の個人情報に加え、交通系ICカード8の認証コードを入力して、登録を申し込む(S11)。次に、制御装置7の管理コンピュータ28は、入力された個人情報と交通系ICカード8の認証コードとをデータベース34の個人/カード情報管理テーブル35に仮登録する(S12)。
【0024】
続いて、管理コンピュータ28は、登録内容を書き込んだ登録確認メールを利用者Uに送信する(S13)。利用者Uはそのメールを受信し、登録内容を確認したのち(S14)、確認結果をメールに指定されたアドレスへ携帯電話9で返信する(S15)。そして、管理コンピュータ28は、返信データ中から利用者Uの携帯電話番号を抽出し、これを認証コードと関連付け、個人/カード情報管理テーブル35に本登録する(S16)。その後、管理コンピュータ28が登録完了メールを送信し(S17)、利用者Uが登録完了メールを受信する(S18)。こうすれば、利用者Uの交通系ICカード8と携帯電話番号とを簡単に紐付でき、自転車4が長期間返却されない場合などに、利用者Uに返却を直接催促することができる。
【0025】
図8に示すように、自転車4を利用するにあたり、利用者Uが自転車用改札装置6に接近すると、この改札装置6が人感センサ22によって利用者Uを感知し、それまでの初期画面にかえてタッチパネル21にカード読取画面を表示する(S21)。カード読取画面は、図10(a)に示すように、利用者Uに交通系ICカード8のタッチ領域39を提示し、タッチパネル21にカードリーダとして機能を与える。なお、タッチパネル21の初期画面には、広告、商店案内、観光案内、地図、交通情報、天気予報等を表示することができる。
【0026】
カード読取画面が表示されると、利用者Uは交通系ICカード8を領域39にタッチまたはかざし(図8:S22)、自転車用改札装置6が交通系ICカード8から認証コードを読み取り、管理コンピュータ28に送信する(S23)。そして、管理コンピュータ28が受信した認証コードをデータベース34に登録済の認証コードと照合し、一致した場合に利用者Uの手続きが正当であると認証し(S24)、自転車用改札装置6に画面切替指令を出力する。
【0027】
画面切替指令に応答し、自転車用改札装置6は、カード読取画面にかえてタッチパネル21に自転車貸出画面を表示する(S25)。自転車貸出画面は、図10(b)に示すように、自転車用改札装置6が管轄する全ての駐輪スタンド5の番号(図3参照)をボタン40で表示し、貸出中のスタンド番号を示すボタン40と利用可能なスタンド番号を示すボタン40を異なる色で利用者Uに提示する。
【0028】
自転車貸出画面が表示されると、利用者Uは希望する自転車4が係留されている駐輪スタンド5の番号を付したボタン40にタッチし、そのスタンド番号を入力する(S26)。そして、自転車用改札装置6が入力されたスタンド番号をメモリ23に記憶したのち、タグ読取指令を駐輪スタンド5のタグ読取器19に出力し(S27)、読取器19が自転車4の無線ICタグ18に記録された情報を読み取る(S28)。
【0029】
次に、自転車用改札装置6は自転車4のICタグ情報をメモリ23に記憶し、自転車4と交通系ICカード8とを紐付けするために、タッチパネル21にカード読取画面を再度表示する(S29)。続いて、利用者Uは交通系ICカード8をタッチパネル21の領域39に再タッチし(S30)、自転車用改札装置6が認証コードを読み取り、読み取った認証コード、ICタグ情報、スタンド番号を管理コンピュータ28に送信する(S31)。
【0030】
管理コンピュータ28は、受信した認証コードとICタグ情報を関連付け、この関連付け情報をデータベース34のカード/自転車情報管理テーブル36に記録するとともに、自転車4の貸出時刻をデータベース34の貸出/返却管理テーブル38に記録する(S32)。また、管理コンピュータ28は自転車用改札装置6に解錠指令を送信し(S33)、自転車用改札装置6がタッチパネル21に貸出完了画面(図示略)を表示し、解錠指令を駐輪スタンド5に転送し(S34)、駐輪スタンド5のロック機構16が自転車4を解錠する(S35)。その後、管理コンピュータ28は貸出完了メールを利用者Uに送信し(S36)、利用者Uが携帯電話9で貸出完了メールを受信する(S37)。
【0031】
一方、図9に示すように、利用者Uが駐輪スタンド5に自転車4を返却すると(S41)、自転車用改札装置6が人感センサ22で利用者Uを感知し、タッチパネル21にカード読取画面を表示する(S42)。利用者Uは交通系ICカード8をタッチパネル21の領域39にタッチし(S43)、自転車用改札装置6が交通系ICカード8から認証コードを読み取り、駐輪スタンド5のタグ読取器19にタグ読取指令を出力する(S44)。そして、タグ読取器19が自転車4のICタグ情報を読み取り(S45)、自転車用改札装置6が認証コード、ICタグ情報、スタンド番号を管理コンピュータ28に送信する(S46)。
【0032】
管理コンピュータ28は、ICタグ情報とスタンド番号とに基づいてデータベース34の貸出/返却管理テーブル38を更新するとともに、認証コードを用いて自転車4の利用料金を決済する(S47)。続いて、管理コンピュータ28は施錠指令を自転車用改札装置6に送信し(S48)、自転車用改札装置6がタッチパネル21に返却完了画面(図示略)を表示し、施錠指令を駐輪スタンド5に転送する(S49)。そして、駐輪スタンド5のロック機構16が自転車4を施錠する(S50)。その後、管理コンピュータ28は返却完了メールを利用者Uに送信し(S51)、利用者Uが携帯電話9で返却完了メールを受信する(S52)。
【0033】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、発明の趣旨を逸脱しない範囲で、利用者の登録手順、自転車の貸出手順、返却手順を適宜に変更して実施することも可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 公共交通システム
2 電車
3 バス
4 自転車
5 駐輪スタンド
6 自転車用改札装置
7 制御装置
8 交通系ICカード
9 携帯電話
11,13 第1カードリーダ
12 電車用改札装置
14 バス用改札装置
16 ロック機構
18 無線ICタグ
19 タグ読取器
21 第2カードリーダとしてのタッチパネル
28 管理コンピュータ
34 データベース
U 利用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
利用者が乗車する公共交通車両と、公共交通車両への乗車を認証するための電子情報が記録されたICカードと、ICカードの電子情報を読み取る第1カードリーダを備えた車両用改札装置と、利用者に貸し出す自転車と、自転車のロック機構を備えた駐輪スタンドと、前記ICカードの電子情報を読み取る第2カードリーダを備えた自転車用改札装置と、第2カードリーダが読み取った電子情報に基づいて前記ロック機構の施錠および解錠を制御する制御装置とから構成したことを特徴とする公共交通システム。
【請求項2】
前記ICカードに記録された電子情報が、公共交通車両の乗車料金および自転車の利用料金を決済するために必要な認証コードを含む請求項1記載の公共交通システム。
【請求項3】
前記制御装置が、自転車の利用料金を第2カードリーダが読み取った認証コードに基づいて決済する管理コンピュータを備えた請求項2記載の公共交通システム。
【請求項4】
前記管理コンピュータが、自転車利用料金の決済を完了した時点で、自転車用改札装置を介して駐輪スタンドのロック機構に解錠指令を送信する請求項3記載の公共交通システム。
【請求項5】
前記制御装置が、利用者の個人情報を第2カードリーダが読み取った認証コードに関連付けて記憶するデータベースを備えた請求項3または4記載の公共交通システム。
【請求項6】
前記個人情報が携帯電話の電話番号を含み、管理コンピュータが利用者の所持する携帯電話との通信データから前記電話番号を取得する請求項5記載の公共交通システム。
【請求項7】
前記駐輪スタンドが自転車に装着された無線ICタグの読取器を備え、前記自転車用改札装置が複数の駐輪スタンドから取得したタグ情報を管理コンピュータに送信し、管理コンピュータが受信したタグ情報とデータベースの登録情報とに基づいて自転車の貸出処理と返却処理を行う請求項5または6記載の公共交通システム。
【請求項8】
前記自転車用改札装置が、第2カードリーダとして機能するタッチパネルを備えた請求項1〜7の何れか一項に記載の公共交通システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−80350(P2013−80350A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−219574(P2011−219574)
【出願日】平成23年10月3日(2011.10.3)
【出願人】(595132441)▲蔦▼井株式会社 (10)