説明

公共交通機関における広告物及び広告方法

【課題】 乗り物内に新たな広告スペースを見い出し、交換が容易でコストも安く済み、より広告効果の高い広告物を提供する。
【解決手段】 公共交通機関の乗り物内において例えば吊革3を吊り下げた丸棒状部材2に、広告物1を設ける。広告物1は、基部11と、広告内容が描かれた広告部12とから成る。基部11は半円弧状の断面形状を有し、丸棒状部材2と同方向に長い。基部11は可撓性を有し、自由状態における内径は丸棒状部材の外径よりも小さい。基部11の半円弧状の断面形状における円弧の端部を押し広げながら、基部11を丸棒状部材2に嵌め込むことで広告物1を装着する。広告部12は、基部11の外面に形成されたシール等である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、電車やバス等の公共交通機関における広告に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電車やバス等の公共交通機関では、多くの人の目に触れるため、盛んに広告が行われている。このうち、電車やバス等における車内広告は、車内に一定時間人が留まるため、特に広告効果が高い。このため、車内広告の需要は大きく、多くの広告主が車内広告を求めている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭52−64793号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
車内広告は、上記のように大きな需要があることから、中吊り広告を始めとして、壁面へのポスター嵌め込み、窓やドア横の壁面へのシール貼り等、多くの広告物が開発されてきた。このため、電車やバスの車内の広告スペースは満杯の状態であり、新たなタイプの広告物を設置するスペースは残っていないと思えるのが現状である。
一方、電車やバスには、揺れを考慮して乗客が手に掴むために設けられたものとして吊革がある。吊革は、吊革を掴んだ乗客の目線の位置に近いため、特に目に触れ易い。このため、吊革への広告も一部実施されている。
吊革における広告物は、吊革に広告物を配置するための筒状の枠体を設け、枠体の表面に広告物をシール貼りしたり、又は表面に透明のケースと設けてケース内にシート状の広告物を挿入したりしている。
【0005】
しかしながら、このような吊革広告では、既存の吊革を広告用のもの(枠体を備えたもの)に取り替える手間とコストを要する。また、枠体は常に吊革に装着されたままであり、枠体に対して広告物の着脱が必要であるため、広告物の交換に非常に手間がかかる。即ち、シール貼りの場合には、シールを一枚ずつ剥がして新たに貼り付けなければならず、透明ケースの場合も、従前のものを透明ケースから抜き出して新たなものを挿入する作業が必要である。このような手間とコストのため、吊革への広告掲載は、あまり行われていないのが実状である。
本願の発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、乗り物内において新たな広告スペースを見い出して広告物を設けることを可能にするものであり、交換が容易でコストも安く済み、より広告効果の高い広告物を提供する技術的意義を有する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本願の請求項1記載の発明は、公共交通機関における乗り物の内部に設けられた丸棒状部材に嵌め込まれる広告物であって、
基部と、広告内容が描かれた広告部とから成っており、
基部は、半円弧状の断面形状を有し、丸棒状部材が延びる方向と同方向に長いものであり、
基部は可撓性を有しているとともに、自由状態における基部の内径は丸棒状部材の外径よりも小さくなっており、半円弧状の断面形状における円弧の端部を押し広げることで丸棒状部材に嵌め込まれることが可能となっており、
広告部は、基部の外面に形成されているという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項2記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記半円弧状の断面形状における円弧の角度は、200度以上340度以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項3記載の発明は、前記請求項1の構成において、前記半円弧状の断面形状における円弧の角度は、220度以上240度以下であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項4記載の発明は、前記請求項1乃至3いずれかの構成において、前記基部は、紙製又はプラスチック製であるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項5記載の発明は、前記請求項1乃至4いずれかの構成において、前記広告部は、基部に貼り付けられたシールであるという構成を有する。
また、上記課題を解決するため、請求項6記載の発明は、公共交通機関の乗り物内に設けられた丸棒状部材に請求項1乃至5いずれかに記載の広告物を嵌め込むことで行うという構成を有する。
【発明の効果】
【0007】
以下に説明する通り、本願の請求項1記載の発明ば、乗り物内において吊革用等のような丸棒状部材という新たな広告スペースを見出したものであり、且つ低コストで着脱が極めて簡単な広告物を提供しており、旺盛な広告ニーズに応じることができる。
また、請求項2記載の発明によれば、上記効果に加え、ちょっとした弾みで広告物が外れてしまうことがなく、また交換の際の取り外しも容易である。
また、請求項3記載の発明によれば、上記請求項2の効果がさらに顕著になる他、資材を節約することができるため、より低コストとなる。
また、請求項4記載の発明によれば、上記効果に加え、安価な資材を使用することができるため、再利用せずに廃棄するようにすれば、さらに手間の無い広告が行える。
また、請求項5記載の発明によれば、上記効果に加え、基部を大量に生産しておき、シールのみを広告内容に合わせて製作して貼り付ければ良く、さらに低コストで手間の無い広告となる。
また、請求項6記載の発明によれば、上記請求項1乃至5の効果を得ながら、乗り物内の広告が行える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本願発明の実施形態の広告物の斜視概略図である。
【図2】図1の広告物の装着について示した斜視概略図である。
【図3】図1の広告物の断面形状を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
次に、本願発明を実施するための形態(以下、実施形態)について説明する。
図1は、本願発明の実施形態の広告物の斜視概略図であり、図2は図1の広告物の装着について示した斜視概略図である。本実施形態の広告物1は、公共交通機関における乗り物の内部に設けられることが前提になっている。公共交通機関とは、多くの人が利用する交通機関という程度の意味であって、公共団体によって運営されているものには限られないことは勿論である。
【0010】
公共交通機関の乗り物(電車、バス等)内は、周知のように、丸棒状部材が設けられている。例えば、乗り物の揺れを考慮し、水平方向に延びる丸棒状部材が設けて吊革を吊り下げているし、乗客が掴むための手すりも丸棒状部材である。さらに、これらの部材を保持するためのフレームとして丸棒状部材が設けられている場合も多い。
図1及び図2に示すように、本実施形態の広告物1は、このような丸棒状部材2に嵌め込まれるものとなっている。より具体的には、本実施形態の広告物1は、図1及び図2に示すように、吊革3をつり下げた丸棒状部材2に装着するものとなっており、吊革3と吊革3との間の位置に装着するものとなっている。
【0011】
この広告物1は、基部11と、広告内容が描かれた広告部12とから成っている。図3は、図1及び図2の広告物の断面形状を示した図である。図3に示すように、基部11は、半円弧状の断面形状を有する。半円弧とは言っても、厳密な意味の半円弧ではなく、中心角θは180度より大きい。本実施形態では、中心角θは220〜240度程度となっている。
また、図1及び図2から解るように、基部11は、丸棒状部材2が延びる方向に長いものとなっている。本実施形態では、丸棒状部材2は直線状のものであることが想定されているため、基部11も直線状に延びている。
【0012】
このような基部11は、紙製又はプラスチック製であり、適度な可撓性を有している。紙製の場合、例えばクラフト紙で製作することができ、トイレットペーパーの芯の製造と同じ方法を使用することができる。トイレットペーパーの芯のように円筒状の部材を紙で作った後、長さ方向に沿ってカッターで二箇所切断することで製作することができる。
プラスチック製の場合、熱可塑性樹脂であれば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、塩化ビニル(PVC)、ポリスチレン(PS)、AS(SAN)、ABS、ポリエチレンテレフタレート(PET)、アクリル(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ナイロン(PA)等が使用できる。熱硬化性樹脂であれば、フェノール(PF)、メラミン(MF)、ユリア(UF)、ポリウレタン(PUR)、エポキシ(EP)、ポリエステル(UP)等が使用できる。製法としては射出成型で行う場合が多いが、熱可塑性樹脂の場合、プレート状のものを熱変型させて得る場合もあり得る。
【0013】
このような基部11は、自由状態における基部11の内径は丸棒状部材2の外径よりも小さくなっている。例えば、電車等の車内に設けられている丸棒状部材2は、一般的が外径が30mmのものが多い。この場合、基部11の内径は、27〜29mm程度で良い。尚、自由状態とは、外部から力が加えられていない状態のことである。基部11の厚みは、例えばクラフト紙製の場合、0.6〜0.8mm程度で良い。また、クラフト紙を用いる場合、クラフト紙は通常茶色であり、そのままでは見栄えが悪いので、白色等に着色するか、表面に白色等の紙を貼り付けると好適である。
基部11の長さについては、広告のために許された丸棒状部材2上のスペース等に応じて適宜決めることができる。たとえば、上記のように吊革3を設けた丸棒状部材2に広告物1を装着する場合、二つの吊革3の間のスペースの長さに応じて決めればよく、例えば200mm程度の長さとすることができる。
【0014】
一方、図1〜図3に示すように、広告部12は、基部11の外面に形成されている。本実施形態では、広告部12はシールとなっている。即ち、広告内容を予めシールに印刷し、台紙から剥がして基部11の外面に貼り付けられたものとなっている。本実施形態の広告物1は、横に長い丸棒状部材2に設けられるものであるため、広告部12は横書きで広告内容を表記したものとなっている。広告部12の製作については、通常のシール印刷の場合と同様に行えるので、詳細な説明は割愛する。
【0015】
次に、広告方法の発明の実施形態の説明も兼ね、上記構成に係る実施形態の広告物1の使用方法について説明する。実施形態の広告物1は、図2から解るように、半円弧状の断面形状における円弧の一対の端部(以下、円弧端部と呼ぶ)を押し広げながら丸棒状部材2に嵌め込むことで丸棒状部材2に装着される。この際、広告部12が車内の人に良く見えるようにする。即ち、丸棒状部材2に装着された広告物1は、単に嵌め込んだだけであるので、丸棒状部材2の周面に沿って手で回すことができる。したがって、広告物1を嵌め込んだ後、広告物1を手で回し、広告部12が車内の人に最も良く見える位置とする。例えば、本実施形態のように丸棒状部材2が吊革3の設けたものである場合、吊革3を持った乗客の目に留まるよう、広告部12が少し斜め下に向いた姿勢とする。上方の天井に近い位置にある丸棒状部材2に広告物1が設けられる場合、広告部12が真下に近い斜め下を向くような姿勢とされる。尚、広告物1は、一箇所のみならず、車内の多数の位置に設けられると好適なのは勿論である。
【0016】
このようにして広告物1を丸棒状部材2に装着した状態で、広告主との契約に従い、一定期間乗り物を運行して広告を行う。一定期間の運行の後、広告物1は、別のものと取り替えられる。即ち、基部11の円弧端部を押し広げながら広告物1を引き抜いて丸棒状部材2から取り外し、別の新しい広告物1を丸棒状部材2に装着する。取り外した広告物1は、シールを剥がして基部11を再利用することも可能であるが、低コストのものであるし、手間もかかることから、そのまま廃棄処分する。
【0017】
上記説明から解るように、本実施形態の広告物1は、円弧端部を押し広げながら丸棒状部材2に嵌め込むだけで装着でき、また円弧端部を押し広げながら引き抜くだけで取り外しができる。このため、広告物1の着脱が極めて簡単である。そして、基部11はある程度の可撓性があればよく、紙やプラスチック等の安価な材料で形成できるため、極めて低コストの広告物1となる。低コストであるため、使用済みの広告物1は廃棄することができ、再利用を強いられる煩わしさは無い。
【0018】
このように、本実施形態は、広告スペースが利用され尽くされたと考えられてきた乗り物内において吊革用等の丸棒状部材という新たな広告スペースを見出したものであり、且つ低コストで着脱が極めて簡単な広告物を提供しており、旺盛な広告ニーズに応じることができるという点でその意義は顕著である。
特に、本実施形態では、吊革3を吊り下げた丸棒状部材2に装着するので、吊革3を掴んだ乗客の目に触れやすい。このため、より広告効果の高いものとなっている。
また、広告部12がシールであるため、基部11をすべての広告物1について共通化させて大量生産しておくことができる。広告内容に合わせてシールを製作して貼り付ければ良いので、さらに低コストとなって手間もかからない。
【0019】
尚、発明者が実際に試した結果によると、スチール製の丸棒状部材2に対してはプラスチックに比べて紙の摩擦力が大きいので、どちらかというと紙製の方が好適である。丸棒状部材2に広告物1を装着した際、基部11と丸棒状部材2との摩擦力が小さいと、乗客の手が触れる等のちょっとした弾みで広告物1が回ってしまう問題がある。広告物1は、広告部12の向きが一番人目に触れやすい向きとされるが、回ってしまうと、裏側に隠れてしまう等、人目に触れにくい向きとなってしまう問題がある。基部11と丸棒状部材2との摩擦力が大きいと、このような問題はない。
【0020】
本実施形態の構成において、基部11の半円弧状の断面形状において、中心角θは、200〜340度であることが好ましい。200度より小さいと、乗客が広告物1の部分を掴んでしまった場合など、ちょっとした弾みで丸棒状部材2から外れてしまう問題がある。340度より大きいと、取り外し際に円弧端部を押し広げる動作がやりづらくなる問題がある。広告掲載時の外れにくさと交換時の取り外し易さは、両立しない要請であるが、200〜340度であれば、問題は生じない。また、中心角θは220〜240度程度であると、より好ましい。220度以上であると、外れにくいという点でより好適であり、丸棒状部材2の裏側はあまり一目に触れない部分であるところから、資材を節約してコストを抑える意味から中心角θは240度程度以下とすることがより好ましい。
【0021】
上記実施形態では、広告部12はシールであったが、基部11に直接印刷されたものであっても良い。別の構成としては、広告部12を印刷等の方法で別に製作し、基部11の上においてラミネート加工して貼り付けても良い。基部11がプラスチック製の場合、好適に採用され得る。さらには、広告部12は基部11に直接設けた凹凸形状であっても良い。基部11にエンボス加工することで設けたり、基部11と広告部12とを射出成型等によって一体的に形成することで設けたりすることができる。
また、上記実施形態では、横に長い丸棒状部材2に設けるものであるため、広告部12は横書きであったが、縦に長い丸棒状部材2に設けてもよく、この場合には広告部12は縦書きにされることが多い。
【0022】
また、丸棒状部材2の広告物1が装着される部分は、一直線状に長い部分だけに限られる訳ではなく、丸みを帯びて曲がった部分や、T字状や十の字状に交差した部分に装着される場合もあり得る。これらの場合、広告物1は、断面は半円弧状であるが、丸棒状部材2の形状に合わせて丸く曲がった形状とされたり、T字状や十の字状の形状とされたりする。
尚、本願発明において、公共交通機関の乗り物は電車やバス等の車両に限られるものではなく、船(フェリーや遊覧船等)や航空機の場合もあり得る。これらの乗り物では、乗り物の揺れを考慮して乗客が掴むための手すりのような丸棒状部材が設けられており、これらの乗り物においても本願発明は実施できる。
【産業上の利用可能性】
【0023】
上述したように、本願発明の広告物及び広告方法は、公共交通機関の乗り物内に新たな広告スペースを見出したものであって、低コストで着脱が極めて簡単な広告物を提供しており、旺盛な広告ニーズに応じることができる。
【符号の説明】
【0024】
1 広告物
11 基部
12 広告部
2 丸棒状部材


【特許請求の範囲】
【請求項1】
公共交通機関における乗り物の内部に設けられた丸棒状部材に嵌め込まれる広告物であって、
基部と、広告内容が描かれた広告部とから成っており、
基部は、半円弧状の断面形状を有し、丸棒状部材が延びる方向と同方向に長いものであり、
基部は可撓性を有しているとともに、自由状態における基部の内径は丸棒状部材の外径よりも小さくなっており、半円弧状の断面形状における円弧の端部を押し広げることで丸棒状部材に嵌め込まれることが可能となっており、
広告部は、基部の外面に形成されていることを特徴とする広告物。
【請求項2】
前記半円弧状の断面形状における円弧の角度は、200度以上340度以下であることを特徴とする請求項1記載の広告物。
【請求項3】
前記半円弧状の断面形状における円弧の角度は、220度以上240度以下であることを特徴とする請求項1記載の広告物。
【請求項4】
前記基部は、紙製又はプラスチック製であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の広告物。
【請求項5】
前記広告部は、基部に貼り付けられたシールであることを特徴とする請求項1乃至4いずれかに記載の広告物。
【請求項6】
公共交通機関の乗り物内に設けられた丸棒状部材に請求項1乃至5いずれかに記載の広告物を嵌め込むことで行うことを特徴とする広告方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−271467(P2010−271467A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122022(P2009−122022)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(509142151)