共晶接合構造およびその製法
【課題】微細な構造体同士を共晶反応によって接合する際の接合部付近の構造の破損が防止される共晶接合構造を提供する。
【解決手段】共晶接合構造は、支柱構造504と、金−シリコン共晶体536と、遮蔽構造526と、トーションバー支持部406から構成されている。支柱構造504の上面にはトーションバー支持部406が金−シリコン共晶体536によって接合されている。遮蔽構造526は、金−シリコン共晶体536の周囲を囲むように形成されている。
【解決手段】共晶接合構造は、支柱構造504と、金−シリコン共晶体536と、遮蔽構造526と、トーションバー支持部406から構成されている。支柱構造504の上面にはトーションバー支持部406が金−シリコン共晶体536によって接合されている。遮蔽構造526は、金−シリコン共晶体536の周囲を囲むように形成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共晶接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−159937号公報には、微小ミラーを備えた光変調装置が開示されており、その変形例として、シリコンで構成される2枚の基板を共晶接合によって接合することによる光変調素子の形成が記載されている。この光変調装置は、図13に示すように、シリコン製の微小ミラー102とトーションバー104、シリコン製の電極基板200に突出形成された支柱構造204などから構成されている。
【0003】
微小ミラー102はトーションバー104に支えられており、そのトーションバー104の一部が、シリコン製の電極基板200に突出形成された支柱構造204と共晶接合されている。
【0004】
図13に示される光変調素子の製法の詳細は記載されていないが、一般には図14〜図17の断面図に示される製法が採用される。
【0005】
まず、電極基板とミラー基板を作製する。電極基板200は、図14に示すように、支持基板202と、支柱構造204と、その上面に形成された金膜232から構成される。これらの構成要素の他に電極や絶縁膜等が支持基板202の表面に形成されるが、ここでは省略している。支柱構造204はシリコン基板を加工することにより形成される。
【0006】
ミラー基板100は、図15に示すように、微小ミラー102とトーションバー104から構成される。これらの構成要素は、SOI(Silicon on Insulator)基板の活性層を加工することにより形成される。支持層114やBOX(Buried oxide)層116はミラー基板100の支持のため除去せずに残しておく。
【0007】
次に、図16に示すように、図14および図15に示される電極基板200とミラー基板100を対向させて位置合わせをおこない、トーションバー104を金膜232に接触させた状態で加熱する。その結果、支柱構造204やトーションバー104を構成するシリコンと、これらに接する金膜232が共晶体を形成することにより、トーションバー104の一部が支柱構造204の上面に固定される。
【0008】
最後に、支持層114とBOX層116を除去することにより、図13に示した光変調装置が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−159937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図16において、シリコンと金の共晶体が形成される際に、支柱構造204を構成するシリコンの一部が共晶体に供給されるために消失することに加え、共晶体の融点が共晶反応に必要な温度よりも低いために共晶体が液状になり、その結果、図17に示すように、共晶体236が支柱構造204の上面から流れ出してしまい、支柱構造204やトーションバー104等のシリコンで構成された構造が破損することがある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みなされたもので、微細な構造体同士を共晶反応によって接合する際の接合部付近の構造の破損が防止される共晶接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合された接合構造において、前記共晶体の周囲に遮蔽構造が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微細な構造体同士を共晶反応によって接合する際の接合部付近の構造の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る共晶接合構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3A】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の最初の工程を示している。
【図3B】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Aに続く工程を示している。
【図3C】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Bに続く工程を示している。
【図3D】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Cに続く工程を示している。
【図3E】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Dに続く工程を示している。
【図3F】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の最後の工程を示している。
【図4】第1の実施の形態に係るミラー基板の作製の工程を示している。
【図5A】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最初の工程を示している。
【図5B】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最後の工程を示している。
【図6】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の変形例を示している。
【図7A】図6に示された遮蔽構造の作製の最初の工程を示している。
【図7B】図6に示された遮蔽構造の作製の図7Aに続く工程を示している。
【図8】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の別の変形例を示している。
【図9A】第2の実施の形態に係る電極基板の作製の最初の工程を示している。
【図9B】第2の実施の形態に係る電極基板の作製の最後の工程を示している。
【図10A】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の最初の工程を示している。
【図10B】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Aに続く工程を示している。
【図10C】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Bに続く工程を示している。
【図10D】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Cに続く工程を示している。
【図10E】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Dに続く工程を示している。
【図11A】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最初の工程を示している。
【図11B】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の図11Aに続く工程を示している。
【図11C】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最後の工程を示している。
【図12】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の変形例を示している。
【図13】従来例に係る共晶接合を利用して作製された光変調装置の斜視図である。
【図14】従来例に係る電極基板の作製の工程を示している。
【図15】従来例に係るミラー基板の作製の工程を示している。
【図16】従来例に係る共晶接合構造の作製の工程を示している。
【図17】従来例に係る共晶接合構造の作製の課題を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る共晶接合構造を説明する斜視図である。また、図2は、図1のA−A’線に沿った断面図である。
【0017】
第1の実施の形態に係る共晶接合構造は、図1と図2に示すように、第1の構造体としての支柱構造504と、共晶体としての金−シリコン共晶体536と、遮蔽構造526と、第2の構造体としてのトーションバー支持部406から構成されている。
【0018】
支柱構造504は、支持基板502から突出して形成されている。支柱構造504の上面にはトーションバー支持部406が金−シリコン共晶体536によって接合されており、さらに遮蔽構造526が、金−シリコン共晶体536の周囲を囲むように形成されている。トーションバー支持部406にはトーションバー404の一端が接続されており、トーションバー404の他端には微小ミラー402が接続されている。また支持基板502の表面には、微小ミラー402に対向する位置に駆動電極506が、さらにそれに接続された配線(図示せず)が、絶縁膜508を介して形成されている。
【0019】
支柱構造504とトーションバー支持部406とトーションバー404と支持基板502と駆動電極506は光変調素子を構成する。
【0020】
以下、支持基板502と支柱構造504と遮蔽構造526を含む構造体を電極基板500と呼称し、トーションバー支持部406とトーションバー404と微小ミラー402を含む構造体をミラー基板400と呼称する。
【0021】
遮蔽構造526は、図1と図2に示す共晶接合構造を製造する際に、支柱構造504の形状の変動を防止する機能を有する。これについて、以下、詳細に説明する。
【0022】
図3A〜図3F,図4,図5A〜図5Bは、この実施の形態に係る共晶接合構造の製法を説明する図である。図3A〜図3Fは、電極基板500の作製の工程を示し、図4は、ミラー基板400の作製の工程を示し、図5A〜図5Bは、図3A〜図3Fと図4の工程を経て作製された2つの構造体の共晶接合の工程を示している。
【0023】
まず、図3Aに示すように、シリコン基板510を熱酸化することによりシリコン酸化膜522,524を形成する。シリコン酸化膜522,524の膜厚は例えば1μm程度である。
【0024】
次に、図3Bに示すように、シリコン酸化膜522の表面にフォトレジスト542を形成した後、RIE(Reactive Ion Etching)等の方法によって、シリコン酸化膜522の不要な部分を除去することにより遮蔽構造526を形成する。
【0025】
次に、フォトレジスト542を除去した後、シリコン基板510の同じ面に、図3Cに示すように、共晶前駆体としての金膜532を真空蒸着法等の手法により形成する。金膜532の膜厚は、遮蔽構造526と同等に、またはそれよりも厚く形成する。
【0026】
次に、図3Dに示すように、金膜532の表面にフォトレジスト544を形成した後、ヨウ化カリウムなどの薬液を使用してウェットエッチングをおこなうことにより、金膜532の不要な部分を除去する。金膜534は、その周囲が遮蔽構造526に囲まれるように形成する。
【0027】
次に、フォトレジスト544を除去した後、図3Eに示すように、シリコン基板510のうち遮蔽構造526と金膜534を含む領域にフォトレジスト546を形成した後、Deep RIE等の方法を使用してシリコン基板510の一部を除去することにより、上面に遮蔽構造526や金膜534が形成された支柱構造504を形成する。支柱構造504の高さは、例えば10〜100μm程度である。
【0028】
次に、フォトレジスト546を除去した後、図3Fに示すように、シリコン基板510の表面に絶縁膜508を形成する。さらに、絶縁膜508の表面に駆動電極506やそれに接続された配線(図示せず)を形成することにより、電極基板500が完成する。
【0029】
続いて、図4に示すように、ミラー基板400を作製する。この製法は従来例と同じであり、SOI基板410の活性層412の表面にフォトレジスト等を形成した後、フォトレジストで被覆されていない部分をDeep RIE等の方法で除去することにより、ミラー基板400の構成要素である微小ミラー402やトーションバー404、トーションバー支持部406を形成する。SOI基板410の支持層414やBOX(Buried oxide)416は除去せずに残しておく。
【0030】
続いて、図5Aに示すように、電極基板500とミラー基板400を対向させて位置合わせをおこない、支柱構造504の上面に形成されている金膜534をトーションバー支持部406の表面に接触させる。
【0031】
この状態で、シリコンと金の共晶点である370℃に、またはそれよりも高い温度に加熱する。これにより、トーションバー支持部406や支柱構造504を構成するシリコンと金膜534との間に共晶反応が起こり、図5Bに示すように、金−シリコン共晶体536が形成される。ここで、遮蔽構造526が金の拡散や共晶反応の進行を遮蔽することにより、金−シリコン共晶体536の支柱構造504の外周部への拡がりが抑制される。
【0032】
トーションバー支持部406には遮蔽構造が形成されていないが、通常、こちら側には共晶反応は急激には進行しない。これは、支柱構造504が金膜534に完全に密着しているのに対して、トーションバー支持部406は金膜534に接しているだけであり、両者の間に微細な隙間が多数存在することによるものと推測される。
【0033】
金膜534が全て金−シリコン共晶体536に変化した時点で室温に戻す。その結果、金−シリコン共晶体536によってトーションバー支持部406が支柱構造504に固定される。
【0034】
最後に、Deep RIE等の方法によって支持層414を除去した後、RIE等の方法でBOX416を除去することにより、図2に示した共晶接合構造が完成する。
【0035】
この実施の形態においては、遮蔽構造526が、金−シリコン共晶体536の広がりを抑制することにより、共晶形成に起因する支柱構造504の破損が防止される。
【0036】
この実施の形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変形されてよい。
【0037】
まず、電極基板500を作製した後にミラー基板400を作製する例を示したが、電極基板500とミラー基板400の作製順を逆にしても、両者の作製を並行して進めてもよい。
【0038】
また、シリコン酸化膜522,524を形成する方法として、熱酸化を採用する例を示したが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等、他の方法を用いてもよい。
【0039】
また、シリコン酸化膜522,524やBOX層416の除去方法としてRIEを採用する例を示したが、フッ酸によるウェットエッチング法等、他の方法を採用してもよい。
【0040】
また、金膜534の成膜方法として真空蒸着法を採用する例を示したが、スパッタ法や印刷法等、他の方法を採用してもよい。
【0041】
また、金膜の成膜の際に、基板にステンシルマスクを装着した状態で成膜を行うことにより、金膜を必要な部位のみに選択的に形成してもよい。
【0042】
また、金膜534の除去方法としてヨウ化カリウム液によるウェットエッチング法を採用する例を示したが、スパッタエッチング等、他の方法を採用してもよい。またシリコン基板やSOI基板の加工方法としてDeep RIEを採用する例を示したが、KOHやTMAHなどを用いたアルカリ異方性ウェットエッチングを採用してもよい。その場合、フォトレジストの代わりにシリコン窒化膜等から構成されるエッチングマスクを使用する。また、支持層414の除去方法としてDeep RIEを採用する例を示したが、KOHやTMAHなどを用いたアルカリ異方性ウェットエッチングを採用してもよく、さらに機械研磨等の手法を併用してもよい。
【0043】
また、支柱構造504上面の面積が小さい等の理由で遮蔽構造526を形成する領域の確保が困難な場合、図6に示すように、遮蔽構造526の内周端に沿って、支柱構造504の表面から内部にわたってシリコン酸化膜から構成される壁554を形成してもよい。壁554の形成方法は、例えば、図3Aに示される工程の前に、図7Aに示すように、シリコン基板510の表面に溝552をDeep RIE等の方法で形成した後、熱酸化をおこなう。これにより、図7Bに示されるように、溝552の内部に酸化膜が成長し、シリコン酸化膜522,524と壁554が同時に形成される。
【0044】
さらに、図2や図6において、金膜534の一部が、金−シリコン共晶体536に変化せずに金膜534のままの状態で残留してもよい。
【0045】
また、遮蔽構造526の材料としてシリコン酸化膜を採用する例を示したが、共晶の成長を遮蔽することが可能な材料であればシリコン窒化膜等、他の材料を採用してもよい。
【0046】
また、シリコンから構成される支柱構造504やトーションバー支持部406を、金膜との共晶反応によって接合する例を示したが、共晶反応を起こす組合せであれば支柱構造504やトーションバー支持部406にシリコン以外の材料を採用してもよいし、共晶前駆体として金膜の代わりに他の材料を採用してもよい。
【0047】
また、図6に示される工程において、金−シリコン共晶体536がトーションバー支持部406側にも急速に成長する場合には、図8に示すように、シリコン酸化膜から構成される遮蔽構造426をさらにトーションバー支持部406の表面に形成してもよい。遮蔽構造426は、金膜534の周囲を取り囲むように配置される。遮蔽構造426は、第2の実施の形態に記載されている遮蔽構造826と同様の方法によって形成され得る。またこの場合、金膜534の厚さは、遮蔽構造526と遮蔽構造426の厚さを合計した値と同等に、またはそれよりも厚い値に設定する。
【0048】
さらに、支柱構造504とトーションバー支持部406の接合を例に挙げて説明したが、接合される対象物の形状や組み合わせはこれに限定されず、この実施の形態は、支柱構造同士または支柱構造と大面積の平板間の接合、壁状の構造と平板構造の接合等、あらゆる形状や組み合わせに対して適用され得る。
【0049】
[第2の実施の形態]
図9A〜図9B,図10A〜図10E,図11A〜図11Cは、第2の実施の形態に係る共晶接合構造の製法を説明する図である。図9A〜図9Bは、第1の実施の形態の電極基板500に代替可能な別の電極基板の作製の工程を示している。図10A〜図10Eは、第1の実施の形態のミラー基板400に代替可能な別のミラー基板の作製の工程を示している。図11A〜図11Cは、図9A〜図9Bと図10A〜図10Eの工程を経て作製された2つの構造体の共晶接合の工程を示している。
【0050】
まず、図9Aに示すように、シリコン基板910の表面にフォトレジスト942を形成した後、Deep RIE等の方法を使用してシリコン基板910の一部を除去することにより、支柱構造904を形成する。支柱構造904の高さは、例えば10〜100μm程度である。
【0051】
次に、フォトレジスト942を除去した後、図9Bに示すように、シリコン基板910のうち支柱構造904を除く部分に絶縁膜908を形成する。さらに、絶縁膜908の表面に駆動電極906やそれに接続される配線(図示せず)を形成することにより、電極基板900が完成する。
【0052】
続いて、図10Aに示すように、SOI基板810を熱酸化することによりシリコン酸化膜822,824を形成する。膜厚は例えば1μm程度である。
【0053】
次に、図10Bに示すように、SOI基板810の活性層812の表面にフォトレジスト842を形成した後、RIE等の方法によってシリコン酸化膜822の不要な部分を除去することにより、遮蔽構造826を形成する。
【0054】
次に、フォトレジスト842を除去した後、図10Cに示すように、活性層812の表面に共晶前駆体としての金膜832を真空蒸着法等の方法により形成する。金膜832は、その周囲が遮蔽構造826に囲まれるように形成する。金膜832の膜厚は、遮蔽構造826と同等に、またはそれよりも厚く形成する。
【0055】
次に、図10Dに示すように、金膜832の表面にフォトレジスト844を形成した後、ヨウ化カリウムなどの薬液を使用してウェットエッチングをおこなうことにより、金膜832の不要な部分を除去する。
【0056】
次に、フォトレジスト844を除去した後、図10Eに示すように、活性層812の表面にフォトレジスト846を形成した後、Deep RIE等の方法を使用して活性層812の一部を除去することにより、微小ミラー802とトーションバー804とトーションバー支持部806を形成する。SOI基板810の支持層814やBOX層816は除去せずに残しておく。
【0057】
続いて、図11Aに示すように、電極基板900とミラー基板800を対向させて位置合わせをおこない、トーションバー支持部806の表面に形成されている金膜832を支柱構造904の上面に接触させる。
【0058】
この状態で、シリコンと金の共晶点である370℃に、またはそれよりも高い温度に加熱する。これにより、トーションバー支持部806や支柱構造904を構成するシリコンと金膜834との間に共晶反応が起こり、図11Bに示すように、金−シリコン共晶体836が形成される。ここで、遮蔽構造826が金の拡散や共晶反応の進行を遮蔽することにより、金−シリコン共晶体836のトーションバー支持部806周辺への拡がりが抑制される。
【0059】
支柱構造904には遮蔽構造が形成されていないが、金膜834をトーションバー支持部806表面に形成して共晶接合を行う場合、支柱構造904側には共晶反応は急激には進行しないため、問題は実質的に発生しない。
【0060】
金膜834が全て金−シリコン共晶体836に変化した時点で室温に戻す。その結果、金−シリコン共晶体836によってトーションバー支持部806が支柱構造904に固定される。
【0061】
最後に、Deep RIE等の方法によって支持層814を除去した後、RIE等の方法によってBOX層816を除去してミラー基板800を完成させることにより、図11Cに示すように、第1の実施の形態の図2に示したものとほぼ同一の共晶接合構造が完成する。
【0062】
この実施の形態においては、遮蔽構造826が金−シリコン共晶体836の広がりを抑制することにより、共晶形成に起因するトーションバー支持部806周辺の微細構造の破損が防止される。
【0063】
この実施の形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変形されてよい。
【0064】
まず、電極基板900を作製した後にミラー基板800を作製する例を示したが、電極基板900とミラー基板800の作製順を逆にしても、両者の作製を並行して進めてもよい。
【0065】
また、シリコン酸化膜822,824の形成および除去の方法、BOX層816の除去方法、金膜834の形成および除去の方法、活性層812の加工方法、支柱構造904の形成方法、支持層814の除去方法、および遮蔽構造826や金膜834、支柱構造904、トーションバー支持部806の材料として、第1の実施の形態と同様な変形例が適用可能である。
【0066】
また、支柱構造904とトーションバー支持部806の接合を例に挙げて説明したが、接合される対象物の形状や組み合わせはこれに限定されず、この実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、あらゆる形状や組み合わせに対して適用され得る。
【0067】
また、図11Bにおいて、金膜834の一部が、金−シリコン共晶体836に変化せずに金膜834のままの状態で残留してもよい。
【0068】
また、トーションバー支持部806の面積が小さい等の理由で遮蔽構造826を形成する領域の確保が困難な場合、図12に示すように、トーションバー支持部806の表面から内部にわたってシリコン酸化膜から構成される壁925を形成してもよい。壁925の形成方法は、例えば、図10Aに示される工程の前に、活性層812の表面に溝を形成した後、熱酸化を行うことにより形成される。
【0069】
また、図8に示される第1の実施形態で作製された電極基板500と、この実施の形態で作製されたミラー基板800とを接合した、シリコン酸化膜が両方の基板に形成されている形態であってもよい。
【0070】
また、図11Bに示される工程において、金−シリコン共晶体836が支柱構造904側にも急速に成長する場合には、さらに第1の実施の形態に記載されている遮蔽構造526や壁554を支柱構造904の表面や内部に形成してもよい。この場合、金膜834の厚さは、遮蔽構造826と遮蔽構造526の厚さを合計した値と同等に、またはそれよりも厚い値に設定する。
【0071】
これまで、図面を参照しながら実施の形態を述べたが、発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施の形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0072】
100…ミラー基板、102…微小ミラー、104…トーションバー、114…支持層、116…BOX層、200…電極基板、202…支持基板、204…支柱構造、232…金膜、236…共晶体、400…ミラー基板、402…微小ミラー、404…トーションバー、406…トーションバー支持部、410…SOI基板、412…活性層、414…支持層、416…BOX層、426…遮蔽構造、500…電極基板、502…支持基板、504…支柱構造、506…駆動電極、508…絶縁膜、510…シリコン基板、522,524…シリコン酸化膜、526…遮蔽構造、532,534…金膜、536…金−シリコン共晶体、542,544,546…フォトレジスト、552…溝、554…壁、800…ミラー基板、802…微小ミラー、804…トーションバー、806…トーションバー支持部、810…SOI基板、812…活性層、814…支持層、816…BOX層、822,824…シリコン酸化膜、826…遮蔽構造、832,834…金膜、836…金−シリコン共晶体、842,844,846…フォトレジスト、900…電極基板、904…支柱構造、906…駆動電極、908…絶縁膜、910…シリコン基板、925…壁、942…フォトレジスト。
【技術分野】
【0001】
本発明は、共晶接合構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特開平9−159937号公報には、微小ミラーを備えた光変調装置が開示されており、その変形例として、シリコンで構成される2枚の基板を共晶接合によって接合することによる光変調素子の形成が記載されている。この光変調装置は、図13に示すように、シリコン製の微小ミラー102とトーションバー104、シリコン製の電極基板200に突出形成された支柱構造204などから構成されている。
【0003】
微小ミラー102はトーションバー104に支えられており、そのトーションバー104の一部が、シリコン製の電極基板200に突出形成された支柱構造204と共晶接合されている。
【0004】
図13に示される光変調素子の製法の詳細は記載されていないが、一般には図14〜図17の断面図に示される製法が採用される。
【0005】
まず、電極基板とミラー基板を作製する。電極基板200は、図14に示すように、支持基板202と、支柱構造204と、その上面に形成された金膜232から構成される。これらの構成要素の他に電極や絶縁膜等が支持基板202の表面に形成されるが、ここでは省略している。支柱構造204はシリコン基板を加工することにより形成される。
【0006】
ミラー基板100は、図15に示すように、微小ミラー102とトーションバー104から構成される。これらの構成要素は、SOI(Silicon on Insulator)基板の活性層を加工することにより形成される。支持層114やBOX(Buried oxide)層116はミラー基板100の支持のため除去せずに残しておく。
【0007】
次に、図16に示すように、図14および図15に示される電極基板200とミラー基板100を対向させて位置合わせをおこない、トーションバー104を金膜232に接触させた状態で加熱する。その結果、支柱構造204やトーションバー104を構成するシリコンと、これらに接する金膜232が共晶体を形成することにより、トーションバー104の一部が支柱構造204の上面に固定される。
【0008】
最後に、支持層114とBOX層116を除去することにより、図13に示した光変調装置が完成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平9−159937号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
図16において、シリコンと金の共晶体が形成される際に、支柱構造204を構成するシリコンの一部が共晶体に供給されるために消失することに加え、共晶体の融点が共晶反応に必要な温度よりも低いために共晶体が液状になり、その結果、図17に示すように、共晶体236が支柱構造204の上面から流れ出してしまい、支柱構造204やトーションバー104等のシリコンで構成された構造が破損することがある。
【0011】
本発明は、このような実状に鑑みなされたもので、微細な構造体同士を共晶反応によって接合する際の接合部付近の構造の破損が防止される共晶接合構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合された接合構造において、前記共晶体の周囲に遮蔽構造が形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、微細な構造体同士を共晶反応によって接合する際の接合部付近の構造の破損が防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】第1の実施の形態に係る共晶接合構造を説明する斜視図である。
【図2】図1のA−A’線に沿った断面図である。
【図3A】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の最初の工程を示している。
【図3B】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Aに続く工程を示している。
【図3C】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Bに続く工程を示している。
【図3D】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Cに続く工程を示している。
【図3E】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の図3Dに続く工程を示している。
【図3F】第1の実施の形態に係る電極基板の作製の最後の工程を示している。
【図4】第1の実施の形態に係るミラー基板の作製の工程を示している。
【図5A】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最初の工程を示している。
【図5B】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最後の工程を示している。
【図6】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の変形例を示している。
【図7A】図6に示された遮蔽構造の作製の最初の工程を示している。
【図7B】図6に示された遮蔽構造の作製の図7Aに続く工程を示している。
【図8】第1の実施の形態に係る共晶接合構造の別の変形例を示している。
【図9A】第2の実施の形態に係る電極基板の作製の最初の工程を示している。
【図9B】第2の実施の形態に係る電極基板の作製の最後の工程を示している。
【図10A】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の最初の工程を示している。
【図10B】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Aに続く工程を示している。
【図10C】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Bに続く工程を示している。
【図10D】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Cに続く工程を示している。
【図10E】第2の実施の形態に係るミラー基板の作製の図10Dに続く工程を示している。
【図11A】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最初の工程を示している。
【図11B】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の図11Aに続く工程を示している。
【図11C】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の作製の最後の工程を示している。
【図12】第2の実施の形態に係る共晶接合構造の変形例を示している。
【図13】従来例に係る共晶接合を利用して作製された光変調装置の斜視図である。
【図14】従来例に係る電極基板の作製の工程を示している。
【図15】従来例に係るミラー基板の作製の工程を示している。
【図16】従来例に係る共晶接合構造の作製の工程を示している。
【図17】従来例に係る共晶接合構造の作製の課題を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら実施の形態について説明する。
【0016】
[第1の実施の形態]
図1は、第1の実施の形態に係る共晶接合構造を説明する斜視図である。また、図2は、図1のA−A’線に沿った断面図である。
【0017】
第1の実施の形態に係る共晶接合構造は、図1と図2に示すように、第1の構造体としての支柱構造504と、共晶体としての金−シリコン共晶体536と、遮蔽構造526と、第2の構造体としてのトーションバー支持部406から構成されている。
【0018】
支柱構造504は、支持基板502から突出して形成されている。支柱構造504の上面にはトーションバー支持部406が金−シリコン共晶体536によって接合されており、さらに遮蔽構造526が、金−シリコン共晶体536の周囲を囲むように形成されている。トーションバー支持部406にはトーションバー404の一端が接続されており、トーションバー404の他端には微小ミラー402が接続されている。また支持基板502の表面には、微小ミラー402に対向する位置に駆動電極506が、さらにそれに接続された配線(図示せず)が、絶縁膜508を介して形成されている。
【0019】
支柱構造504とトーションバー支持部406とトーションバー404と支持基板502と駆動電極506は光変調素子を構成する。
【0020】
以下、支持基板502と支柱構造504と遮蔽構造526を含む構造体を電極基板500と呼称し、トーションバー支持部406とトーションバー404と微小ミラー402を含む構造体をミラー基板400と呼称する。
【0021】
遮蔽構造526は、図1と図2に示す共晶接合構造を製造する際に、支柱構造504の形状の変動を防止する機能を有する。これについて、以下、詳細に説明する。
【0022】
図3A〜図3F,図4,図5A〜図5Bは、この実施の形態に係る共晶接合構造の製法を説明する図である。図3A〜図3Fは、電極基板500の作製の工程を示し、図4は、ミラー基板400の作製の工程を示し、図5A〜図5Bは、図3A〜図3Fと図4の工程を経て作製された2つの構造体の共晶接合の工程を示している。
【0023】
まず、図3Aに示すように、シリコン基板510を熱酸化することによりシリコン酸化膜522,524を形成する。シリコン酸化膜522,524の膜厚は例えば1μm程度である。
【0024】
次に、図3Bに示すように、シリコン酸化膜522の表面にフォトレジスト542を形成した後、RIE(Reactive Ion Etching)等の方法によって、シリコン酸化膜522の不要な部分を除去することにより遮蔽構造526を形成する。
【0025】
次に、フォトレジスト542を除去した後、シリコン基板510の同じ面に、図3Cに示すように、共晶前駆体としての金膜532を真空蒸着法等の手法により形成する。金膜532の膜厚は、遮蔽構造526と同等に、またはそれよりも厚く形成する。
【0026】
次に、図3Dに示すように、金膜532の表面にフォトレジスト544を形成した後、ヨウ化カリウムなどの薬液を使用してウェットエッチングをおこなうことにより、金膜532の不要な部分を除去する。金膜534は、その周囲が遮蔽構造526に囲まれるように形成する。
【0027】
次に、フォトレジスト544を除去した後、図3Eに示すように、シリコン基板510のうち遮蔽構造526と金膜534を含む領域にフォトレジスト546を形成した後、Deep RIE等の方法を使用してシリコン基板510の一部を除去することにより、上面に遮蔽構造526や金膜534が形成された支柱構造504を形成する。支柱構造504の高さは、例えば10〜100μm程度である。
【0028】
次に、フォトレジスト546を除去した後、図3Fに示すように、シリコン基板510の表面に絶縁膜508を形成する。さらに、絶縁膜508の表面に駆動電極506やそれに接続された配線(図示せず)を形成することにより、電極基板500が完成する。
【0029】
続いて、図4に示すように、ミラー基板400を作製する。この製法は従来例と同じであり、SOI基板410の活性層412の表面にフォトレジスト等を形成した後、フォトレジストで被覆されていない部分をDeep RIE等の方法で除去することにより、ミラー基板400の構成要素である微小ミラー402やトーションバー404、トーションバー支持部406を形成する。SOI基板410の支持層414やBOX(Buried oxide)416は除去せずに残しておく。
【0030】
続いて、図5Aに示すように、電極基板500とミラー基板400を対向させて位置合わせをおこない、支柱構造504の上面に形成されている金膜534をトーションバー支持部406の表面に接触させる。
【0031】
この状態で、シリコンと金の共晶点である370℃に、またはそれよりも高い温度に加熱する。これにより、トーションバー支持部406や支柱構造504を構成するシリコンと金膜534との間に共晶反応が起こり、図5Bに示すように、金−シリコン共晶体536が形成される。ここで、遮蔽構造526が金の拡散や共晶反応の進行を遮蔽することにより、金−シリコン共晶体536の支柱構造504の外周部への拡がりが抑制される。
【0032】
トーションバー支持部406には遮蔽構造が形成されていないが、通常、こちら側には共晶反応は急激には進行しない。これは、支柱構造504が金膜534に完全に密着しているのに対して、トーションバー支持部406は金膜534に接しているだけであり、両者の間に微細な隙間が多数存在することによるものと推測される。
【0033】
金膜534が全て金−シリコン共晶体536に変化した時点で室温に戻す。その結果、金−シリコン共晶体536によってトーションバー支持部406が支柱構造504に固定される。
【0034】
最後に、Deep RIE等の方法によって支持層414を除去した後、RIE等の方法でBOX416を除去することにより、図2に示した共晶接合構造が完成する。
【0035】
この実施の形態においては、遮蔽構造526が、金−シリコン共晶体536の広がりを抑制することにより、共晶形成に起因する支柱構造504の破損が防止される。
【0036】
この実施の形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変形されてよい。
【0037】
まず、電極基板500を作製した後にミラー基板400を作製する例を示したが、電極基板500とミラー基板400の作製順を逆にしても、両者の作製を並行して進めてもよい。
【0038】
また、シリコン酸化膜522,524を形成する方法として、熱酸化を採用する例を示したが、CVD(Chemical Vapor Deposition)法等、他の方法を用いてもよい。
【0039】
また、シリコン酸化膜522,524やBOX層416の除去方法としてRIEを採用する例を示したが、フッ酸によるウェットエッチング法等、他の方法を採用してもよい。
【0040】
また、金膜534の成膜方法として真空蒸着法を採用する例を示したが、スパッタ法や印刷法等、他の方法を採用してもよい。
【0041】
また、金膜の成膜の際に、基板にステンシルマスクを装着した状態で成膜を行うことにより、金膜を必要な部位のみに選択的に形成してもよい。
【0042】
また、金膜534の除去方法としてヨウ化カリウム液によるウェットエッチング法を採用する例を示したが、スパッタエッチング等、他の方法を採用してもよい。またシリコン基板やSOI基板の加工方法としてDeep RIEを採用する例を示したが、KOHやTMAHなどを用いたアルカリ異方性ウェットエッチングを採用してもよい。その場合、フォトレジストの代わりにシリコン窒化膜等から構成されるエッチングマスクを使用する。また、支持層414の除去方法としてDeep RIEを採用する例を示したが、KOHやTMAHなどを用いたアルカリ異方性ウェットエッチングを採用してもよく、さらに機械研磨等の手法を併用してもよい。
【0043】
また、支柱構造504上面の面積が小さい等の理由で遮蔽構造526を形成する領域の確保が困難な場合、図6に示すように、遮蔽構造526の内周端に沿って、支柱構造504の表面から内部にわたってシリコン酸化膜から構成される壁554を形成してもよい。壁554の形成方法は、例えば、図3Aに示される工程の前に、図7Aに示すように、シリコン基板510の表面に溝552をDeep RIE等の方法で形成した後、熱酸化をおこなう。これにより、図7Bに示されるように、溝552の内部に酸化膜が成長し、シリコン酸化膜522,524と壁554が同時に形成される。
【0044】
さらに、図2や図6において、金膜534の一部が、金−シリコン共晶体536に変化せずに金膜534のままの状態で残留してもよい。
【0045】
また、遮蔽構造526の材料としてシリコン酸化膜を採用する例を示したが、共晶の成長を遮蔽することが可能な材料であればシリコン窒化膜等、他の材料を採用してもよい。
【0046】
また、シリコンから構成される支柱構造504やトーションバー支持部406を、金膜との共晶反応によって接合する例を示したが、共晶反応を起こす組合せであれば支柱構造504やトーションバー支持部406にシリコン以外の材料を採用してもよいし、共晶前駆体として金膜の代わりに他の材料を採用してもよい。
【0047】
また、図6に示される工程において、金−シリコン共晶体536がトーションバー支持部406側にも急速に成長する場合には、図8に示すように、シリコン酸化膜から構成される遮蔽構造426をさらにトーションバー支持部406の表面に形成してもよい。遮蔽構造426は、金膜534の周囲を取り囲むように配置される。遮蔽構造426は、第2の実施の形態に記載されている遮蔽構造826と同様の方法によって形成され得る。またこの場合、金膜534の厚さは、遮蔽構造526と遮蔽構造426の厚さを合計した値と同等に、またはそれよりも厚い値に設定する。
【0048】
さらに、支柱構造504とトーションバー支持部406の接合を例に挙げて説明したが、接合される対象物の形状や組み合わせはこれに限定されず、この実施の形態は、支柱構造同士または支柱構造と大面積の平板間の接合、壁状の構造と平板構造の接合等、あらゆる形状や組み合わせに対して適用され得る。
【0049】
[第2の実施の形態]
図9A〜図9B,図10A〜図10E,図11A〜図11Cは、第2の実施の形態に係る共晶接合構造の製法を説明する図である。図9A〜図9Bは、第1の実施の形態の電極基板500に代替可能な別の電極基板の作製の工程を示している。図10A〜図10Eは、第1の実施の形態のミラー基板400に代替可能な別のミラー基板の作製の工程を示している。図11A〜図11Cは、図9A〜図9Bと図10A〜図10Eの工程を経て作製された2つの構造体の共晶接合の工程を示している。
【0050】
まず、図9Aに示すように、シリコン基板910の表面にフォトレジスト942を形成した後、Deep RIE等の方法を使用してシリコン基板910の一部を除去することにより、支柱構造904を形成する。支柱構造904の高さは、例えば10〜100μm程度である。
【0051】
次に、フォトレジスト942を除去した後、図9Bに示すように、シリコン基板910のうち支柱構造904を除く部分に絶縁膜908を形成する。さらに、絶縁膜908の表面に駆動電極906やそれに接続される配線(図示せず)を形成することにより、電極基板900が完成する。
【0052】
続いて、図10Aに示すように、SOI基板810を熱酸化することによりシリコン酸化膜822,824を形成する。膜厚は例えば1μm程度である。
【0053】
次に、図10Bに示すように、SOI基板810の活性層812の表面にフォトレジスト842を形成した後、RIE等の方法によってシリコン酸化膜822の不要な部分を除去することにより、遮蔽構造826を形成する。
【0054】
次に、フォトレジスト842を除去した後、図10Cに示すように、活性層812の表面に共晶前駆体としての金膜832を真空蒸着法等の方法により形成する。金膜832は、その周囲が遮蔽構造826に囲まれるように形成する。金膜832の膜厚は、遮蔽構造826と同等に、またはそれよりも厚く形成する。
【0055】
次に、図10Dに示すように、金膜832の表面にフォトレジスト844を形成した後、ヨウ化カリウムなどの薬液を使用してウェットエッチングをおこなうことにより、金膜832の不要な部分を除去する。
【0056】
次に、フォトレジスト844を除去した後、図10Eに示すように、活性層812の表面にフォトレジスト846を形成した後、Deep RIE等の方法を使用して活性層812の一部を除去することにより、微小ミラー802とトーションバー804とトーションバー支持部806を形成する。SOI基板810の支持層814やBOX層816は除去せずに残しておく。
【0057】
続いて、図11Aに示すように、電極基板900とミラー基板800を対向させて位置合わせをおこない、トーションバー支持部806の表面に形成されている金膜832を支柱構造904の上面に接触させる。
【0058】
この状態で、シリコンと金の共晶点である370℃に、またはそれよりも高い温度に加熱する。これにより、トーションバー支持部806や支柱構造904を構成するシリコンと金膜834との間に共晶反応が起こり、図11Bに示すように、金−シリコン共晶体836が形成される。ここで、遮蔽構造826が金の拡散や共晶反応の進行を遮蔽することにより、金−シリコン共晶体836のトーションバー支持部806周辺への拡がりが抑制される。
【0059】
支柱構造904には遮蔽構造が形成されていないが、金膜834をトーションバー支持部806表面に形成して共晶接合を行う場合、支柱構造904側には共晶反応は急激には進行しないため、問題は実質的に発生しない。
【0060】
金膜834が全て金−シリコン共晶体836に変化した時点で室温に戻す。その結果、金−シリコン共晶体836によってトーションバー支持部806が支柱構造904に固定される。
【0061】
最後に、Deep RIE等の方法によって支持層814を除去した後、RIE等の方法によってBOX層816を除去してミラー基板800を完成させることにより、図11Cに示すように、第1の実施の形態の図2に示したものとほぼ同一の共晶接合構造が完成する。
【0062】
この実施の形態においては、遮蔽構造826が金−シリコン共晶体836の広がりを抑制することにより、共晶形成に起因するトーションバー支持部806周辺の微細構造の破損が防止される。
【0063】
この実施の形態は、発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々に変形されてよい。
【0064】
まず、電極基板900を作製した後にミラー基板800を作製する例を示したが、電極基板900とミラー基板800の作製順を逆にしても、両者の作製を並行して進めてもよい。
【0065】
また、シリコン酸化膜822,824の形成および除去の方法、BOX層816の除去方法、金膜834の形成および除去の方法、活性層812の加工方法、支柱構造904の形成方法、支持層814の除去方法、および遮蔽構造826や金膜834、支柱構造904、トーションバー支持部806の材料として、第1の実施の形態と同様な変形例が適用可能である。
【0066】
また、支柱構造904とトーションバー支持部806の接合を例に挙げて説明したが、接合される対象物の形状や組み合わせはこれに限定されず、この実施の形態も、第1の実施の形態と同様に、あらゆる形状や組み合わせに対して適用され得る。
【0067】
また、図11Bにおいて、金膜834の一部が、金−シリコン共晶体836に変化せずに金膜834のままの状態で残留してもよい。
【0068】
また、トーションバー支持部806の面積が小さい等の理由で遮蔽構造826を形成する領域の確保が困難な場合、図12に示すように、トーションバー支持部806の表面から内部にわたってシリコン酸化膜から構成される壁925を形成してもよい。壁925の形成方法は、例えば、図10Aに示される工程の前に、活性層812の表面に溝を形成した後、熱酸化を行うことにより形成される。
【0069】
また、図8に示される第1の実施形態で作製された電極基板500と、この実施の形態で作製されたミラー基板800とを接合した、シリコン酸化膜が両方の基板に形成されている形態であってもよい。
【0070】
また、図11Bに示される工程において、金−シリコン共晶体836が支柱構造904側にも急速に成長する場合には、さらに第1の実施の形態に記載されている遮蔽構造526や壁554を支柱構造904の表面や内部に形成してもよい。この場合、金膜834の厚さは、遮蔽構造826と遮蔽構造526の厚さを合計した値と同等に、またはそれよりも厚い値に設定する。
【0071】
これまで、図面を参照しながら実施の形態を述べたが、発明は、これらの実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において様々な変形や変更が施されてもよい。ここにいう様々な変形や変更は、上述した実施の形態を適当に組み合わせた実施も含む。
【符号の説明】
【0072】
100…ミラー基板、102…微小ミラー、104…トーションバー、114…支持層、116…BOX層、200…電極基板、202…支持基板、204…支柱構造、232…金膜、236…共晶体、400…ミラー基板、402…微小ミラー、404…トーションバー、406…トーションバー支持部、410…SOI基板、412…活性層、414…支持層、416…BOX層、426…遮蔽構造、500…電極基板、502…支持基板、504…支柱構造、506…駆動電極、508…絶縁膜、510…シリコン基板、522,524…シリコン酸化膜、526…遮蔽構造、532,534…金膜、536…金−シリコン共晶体、542,544,546…フォトレジスト、552…溝、554…壁、800…ミラー基板、802…微小ミラー、804…トーションバー、806…トーションバー支持部、810…SOI基板、812…活性層、814…支持層、816…BOX層、822,824…シリコン酸化膜、826…遮蔽構造、832,834…金膜、836…金−シリコン共晶体、842,844,846…フォトレジスト、900…電極基板、904…支柱構造、906…駆動電極、908…絶縁膜、910…シリコン基板、925…壁、942…フォトレジスト。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合された接合構造において、前記共晶体の周囲を囲むように遮蔽構造が形成されていることを特徴とする共晶接合構造。
【請求項2】
前記遮蔽構造が、前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方の表面に形成された部分を有することを特徴とする、請求項1に記載の共晶接合構造。
【請求項3】
前記遮蔽構造が、前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方の表面から内部にわたって形成された壁をさらに有することを特徴とする、請求項2に記載の共晶接合構造。
【請求項4】
前記第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方が支柱構造または壁状の構造であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の共晶接合構造。
【請求項5】
第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合される共晶接合構造の製造方法において、
前記第1および第2の構造体を形成する工程と、
前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方に遮蔽構造を形成する工程と、
前記第1および第2の構造体のいずれか一方の表面に共晶前駆体を形成する工程と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体を前記共晶前駆体を介して接触させ、前記共晶前駆体が前記遮蔽構造に囲まれた状態で加熱することにより、前記第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方と前記共晶前駆体を共晶体に変化させる工程とを有することを特徴とする、共晶接合構造の製造方法。
【請求項6】
前記共晶前駆体を、前記遮蔽構造が形成された前記第1および第2の構造体のいずれか一方の表面に、その周囲が前記遮蔽構造に囲まれるように形成することを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項1】
第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合された接合構造において、前記共晶体の周囲を囲むように遮蔽構造が形成されていることを特徴とする共晶接合構造。
【請求項2】
前記遮蔽構造が、前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方の表面に形成された部分を有することを特徴とする、請求項1に記載の共晶接合構造。
【請求項3】
前記遮蔽構造が、前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方の表面から内部にわたって形成された壁をさらに有することを特徴とする、請求項2に記載の共晶接合構造。
【請求項4】
前記第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方が支柱構造または壁状の構造であることを特徴とする、請求項1〜3に記載の共晶接合構造。
【請求項5】
第1の構造体と第2の構造体が、該第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方を構成する材料を含む共晶体によって接合される共晶接合構造の製造方法において、
前記第1および第2の構造体を形成する工程と、
前記第1および第2の構造体のうちの一方または両方に遮蔽構造を形成する工程と、
前記第1および第2の構造体のいずれか一方の表面に共晶前駆体を形成する工程と、
前記第1の構造体と前記第2の構造体を前記共晶前駆体を介して接触させ、前記共晶前駆体が前記遮蔽構造に囲まれた状態で加熱することにより、前記第1および第2の構造体のうちの少なくとも一方と前記共晶前駆体を共晶体に変化させる工程とを有することを特徴とする、共晶接合構造の製造方法。
【請求項6】
前記共晶前駆体を、前記遮蔽構造が形成された前記第1および第2の構造体のいずれか一方の表面に、その周囲が前記遮蔽構造に囲まれるように形成することを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4】
【図5A】
【図5B】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9A】
【図9B】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2013−20015(P2013−20015A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152086(P2011−152086)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
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