説明

共用操作棒

【課題】作業用器具の落下の恐れがなく、作業中のロックナットの締め増しや作業後の操作棒の取り外しを容易に行える共用操作棒を提供する。
【解決手段】棒状体2の内部に軸方向に延設された動力伝達軸20を回転自在に支持し、棒状体の基端側に設けられたグリップ部6に動力伝達軸を回転させる動力を供給する動力供給機構(第1の歯車31、第2の歯車32で構成)を設け、棒状体のロックナット15が設けられた部位近傍の内側に動力伝達軸の回転に伴ってロックナットを棒状体の軸方向に進退させる動力出力機構(第3の歯車33、第4の歯車34、ウォームギア35、ロックナットの内周面に形成されたラック部17で構成)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、棒状体の先端部に各種作業用器具を取り付けて使用するための間接活線作業用の共用操作棒に関し、特に、作業用器具を固定するためのロックナット(固定ネジ)を備えた共用操作棒に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧配電線の活栓作業においては、作業現場周囲の停電を抑制するために、また作業者の感電を防止するために、充電部からの距離を保って作業を行う間接活線工法が多用されている。このような間接活線工法においては、例えば、特許文献1等に示されるように、多種多用な作業用器具を着脱可能に接続する共用操作棒(絶縁操作棒、ホットスティック等とも称する)が用いられる。
【0003】
図4にも示されるように、従来の共用操作棒1は、絶縁性の長尺に形成された棒状体2と、その一端に設けられて作業用器具8を装着可能なアタッチメント本体3とを備えている。棒状体2の略中央には、作業者が握っても感電しない部分と、握ると感電する可能性がある部分との限界を明確にする限界つば5が設けられ、棒状体2の限界つば5より基端側に作業者が握持可能なグリップ部6が形成されている。
【0004】
棒状体2のアタッチメント本体3より基端側には、外周に軸方向に沿って雄ネジが形成されたネジ軸部40と、このネジ軸部40に螺合して棒状体2の軸方向に螺進退可能に取り付けられ、アタッチメント本体3に装着される作業用器具8をロックする位置とロック解除する位置とに変位可能なロックナット15とを有している。
【0005】
アタッチメント本体3の周面には、一対の係止用突起10が互いに反対側の位置で径方向外側に向かって突設されており(180°位相がずれた位置に放射方向に突出されており)、また、アタッチメント本体3の上面には、軸方向に変位する凸状部材12が突設されている。尚、凸状部材12は、図示しない内蔵スプリングにより押圧され、通常においては突出された状態となっている。
【0006】
これに対して、作業用器具8の基端には、共用操作棒1のアタッチメント本体3が着脱可能に装着するジョイント部9が設けられ、このジョイント部9は、アタッチメント本体3が差込可能となるよう基端が開口された有底円筒状に形成され、その周面には、対向する2箇所にT字状の係合溝28が形成されている。
【0007】
この係合溝28は、ジョイント部9の軸線に沿った方向に切れ込んだ第1の係合部28aと、この第1の係合部28aの先端から周方向に沿って切れ込んだ第2の係合部28bと、この第2の係合部28bの第1の係合部28aと反対側端部からジョイント部の軸線に沿って基端側へ切れ込んだ第3の係合部28cとから構成されている。
【0008】
したがって、作業用器具8のジョイント部9への共用操作棒1のアタッチメント本体3の装着は、先ず、ロックナット15を回して、図4(b)に示されるように、ロックナット15をネジ軸部40の下端に設けられたフランジ13に当接させるロック解除位置へ変位させておく。
そして、ジョイント部9に共用操作棒1のアタッチメント本体3を挿入すると共に係止用突起10を係合溝28の第1の係合部28aに挿入し、その後、アタッチメント本体3を軸方向に押し付けて、先端から突出する凸状部材12を内蔵スプリングの弾性力に抗して沈ませ、その状態でアタッチメント本体3を回動させて係止用突起10を第2の係合部28bに沿って摺動させ、しかる後に、アタッチメント本体3の軸方向の力を解放して、凸状部材12の付勢力によってアタッチメント本体3を軸方向に戻すことで、係止用突起10を第3の係合部28cに離脱不能に係合させるようにしている。
そして、以上の操作が終了した後に、上述した取り付け状態のガタつきを防止するために、ロックナット15を回して ロックナット15を作業用器具8のジョイント部9に強く当接させるロック位置へ変位させる(図4の(c)の状態)。
【0009】
この状態においては、ジョイント部9の直下にロックナット15が強く密接しており、作業用器具8を押し下げることができないので、アタッチメント本体3に装着した作業用器具8を取り外すことはできなくなる。このため、作業用器具8から共用操作棒1を取り外す場合には、ロックナット15を緩めてジョイント部9から離反させ、ロックを解除する位置へ変位させる(図4の(b)の状態)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−79432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、従来の共用操作棒においては、ロックナットを回転させてロック又はロック解除が行われるので、ロックナットの締め付けが緩いと、作業用器具がガタつき、落下する恐れが懸念される。また、ロックナットの締め増しを行うためには、共用操作棒の先端部を手元に引いてロックナットにアプローチする必要があり、作業効率が悪いものであった。
【0012】
特に、工事用開閉器のケーブルや防護管ストッパーを取り付ける作業時においては、これらの被取付箇所への取り付け後に、共用操作棒をケーブルや防護管ストッパーから取り外す必要があるが、他の間接作業用工具によってロックナットを操作することが困難であるため、共用操作棒を取り外すことができなくなり、あえてロックを解除した状態で取り付け作業を行う必要があった。
【0013】
このような作業を余儀なくされる場合においても、ケーブルや防護管ストッパーの取り付け時においては、共用操作棒の動きに伴う遠心力によってロックナットが自然に締まってしまう場合があり、このような場合には、共用操作棒を取り外すことができなくなり、ケーブル等を取り外して作業をやり直すしかなかった。特に、ケーブル作業においては、ケーブルを一旦取り外すと、放電して検電確認を行う必要があり、大変手間がかかるものである。
【0014】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、上述した不都合を解消し、作業用器具の落下する恐れがなく、また、作業中のロックナットの締め増しが可能であり、また、作業後に共用操作棒を容易に取り外すことを可能として、ロックを解除した状態での作業を回避でき、ロックを解除した状態での作業に伴う不都合(ロックが解除された危険な状態での作業を行わなければならない不都合、ロックナットが自然に締まってロックを解除できなくなる不都合、作業のやり直しや手間がかかる不都合等)を無くすことが可能な共用操作棒を提供することを主たる課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために、本発明に係る共用操作棒は、筒状の棒状体と、前記棒状体の一端に設けられて作業用器具が着脱自在に装着可能なアタッチメント本体と、前記棒状体の外周面に設けられて該棒状体の軸方向に移動させることで、前記アタッチメント本体に装着される作業用器具をロックする位置とロックを解除する位置とに変位可能なロックナットとを有し、前記棒状体の内部に軸方向に延設された動力伝達軸を回転自在に支持し、前記棒状体の他端側に設けられたグリップ部に前記動力伝達軸を回転させる動力を供給する動力供給機構を設け、前記棒状体の前記ロックナットが設けられた部位近傍の内側に前記動力伝達軸の回転に伴って前記ロックナットを前記棒状体の軸方向に進退させる動力出力機構を設けたことを特徴としている。
【0016】
したがって、ロックナットによるロック、又は、ロック解除は、ロックナット自体を回転させるのではなく、棒状体のグリップ部に設けられた動力供給機構を操作することで、動力伝達軸、動力出力機構を介してロックナットを棒状体の軸方向に進退させて行うので、ロック状態が一旦形成されると、これが緩むことはなくなり、また、共用操作棒の手元からロックナットの位置を変位させることができるので、作業用器具を取り付けた状態において、締め増しをしたり、作業用器具から共用操作棒を取り外したりすることが可能となる。このため、作業用器具を取り付けた作業においては、ロック状態を常時形成しておくことが可能となる。
【0017】
ここで、前記動力供給機構としては、前記動力伝達軸に固装された第1の歯車と、この第1の歯車に噛合し、前記グリップ部の側面から外周の一部が表出されて外部から操作可能に軸支された第2の歯車とを有する構成にするとよい。
このような構成においては、握持するグリップ部に動力供給機構を構成する第2の歯車が操作可能に表出されるので、グリップ部を握持しながら操作することが可能となり、操作性を担保することが可能になると共に、グリップ部以外の部分に誤って握持することが少なくなる。
【0018】
また、前記動力出力機構としては、前記動力伝達軸に固装された第3の歯車と、この第3の歯車に噛合し、ウォームギアが連結された第4の歯車と、前記ロックナットの内周面に形成されて前記ウォームギアの前記棒状体の外周面から表出された部分に噛合するラック部とを有する構成にするとよい。
このような構成においては、ロックナットを回転させる必要がないので、ロック状態が一旦形成されると、ロックナットが回転してその状態が自然に解除される不都合がなくなる。
【0019】
さらに、上述の構成においては、共用操作棒の絶縁性を確保するために、少なくとも前記動力伝達軸を、絶縁性素材で形成することが好ましい。
また、第4の歯車を、第3の歯車の周囲に等間隔に複数設けることが望ましい。このような構成によれば、ウォームギアに均等に動力を伝達して安定したロックナットの進退が可能となり、また、ウォームギアのガタツキを抑えることが可能となる。
【発明の効果】
【0020】
以上述べたように、本発明に係る共用操作棒によれば、棒状体の内部に軸方向に延設された動力伝達軸を回転自在に支持し、この棒状体の他端側に設けられたグリップ部に動力伝達軸を回転させる動力を供給する動力供給機構を設け、また、棒状体のロックナットが設けられた部位近傍の内側に動力伝達軸の回転に伴ってロックナットを棒状体の軸方向に進退させる動力出力機構を設けたので、ロック状態を形成すれば、その状態が徐々に解除されて作業用器具がガタつくことがなくなり、落下する恐れがなくなる。
【0021】
また、作業用器具を取り付けた状態で、手元の操作でロックナットの締め増しやロック解除が可能となるので、作業後に共用操作棒を取り外す必要がある場合でも、容易に取り外すことが可能となる。このため、ロックを解除した状態での作業を回避でき、このような作業に伴う不都合、すなわち、ロックが解除された危険な状態で作業を行わなければならない不都合、ロックナットが自然に締まってロックを解除できなくなる不都合、作業のやり直しや手間がかかる不都合等を無くすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明に係る共用操作棒を示す図である。
【図2】図2は、本発明に係る共用操作棒のロックナットを操作する操作機構を説明する図であり、(a)は共用操作棒の一部切り欠きの断面図、(b)は(a)のA−A線で切断した断面図である。
【図3】図3は、本発明に係る共用操作棒を作業用器具に取り付ける前後の状態を示す図であり、(a)は取り付け前の状態を示す図、(b)は取り付け後の状態を示す図である。
【図4】図4は、従来の共用操作棒の先端部を示す図であり、(a)はその側面図、(b)は作業用器具を取り付ける前の状態を示す図、(c)は作業用器具を取り付けた後の状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明に係る共用操作棒の実施形態を、添付図面を参照しながら説明する。
【0024】
図1において、共用操作棒の全体構成図が示されおり、共用操作棒1は、棒状体2と、この棒状体2の先端に作業用器具を着脱自在に装着可能なアタッチメント本体3と、棒状体2の基端に別の共用操作棒や延長用の足し棒を着脱自在に装着可能なジョイント金具4とを有して構成されている。尚、棒状体2の軸方向において、アタッチメント本体3が設けられている側を先端側、ジョイント金具4が設けられている側を基端側としている。
【0025】
棒状体2は、絶縁性の長尺かつ中空(パイプ状)に形成された直線状の棒状形状をなし、その軸方向の略中間位置に感電事故を防止するための限界つば5が設けられている。この限界つば5を境に基端側が握っても感電しない部分であり、また、限界つば5より先端側が握ると感電する可能性のある部分となっており、限界つば5とジョイント金具4との間に作業者が握持可能なグリップ部6が構成され、作業者は、このグリップ部6を握持して作業することが要請される。また、棒状体2の限界つば5よりも先端側(限界つば5とアタッチメント本体3との略中央)には、降雨時の水切り用の鍔(水切りつば7)が嵌合固定されている。これら限界つば5と水切りつば7は、軟質の合成ゴムによって構成されている。
【0026】
アタッチメント本体3は、設置短絡器具等の作業用器具8のジョイント部9(図3に示す)を装着するためのもので、その周面には、円柱状の突起で構成された一対の係止用突起10が、周方向で反対側となる位置に径方向外側に向かって突設されている(180°位相がずれた位置に放射方向に突出されている)。また、アタッチメント本体3の上面には、ほぼ中央に図示しない孔が形成され、アタッチメント本体3の内側に形成された空間から孔を介して凸状部材12が突設されている。この凸状部材12は、アタッチメント本体3内の空間に収容された図示しない内臓スプリングにより突出方向に常時付勢されており、軸方向に変位可能となっている。
【0027】
また、棒状体2のアタッチメント本体3より基端側の部分には、棒状体2の外周面から外側へ突設されたフランジ13が設けられ、このフランジ13とアタッチメント本体3との間には、棒状体2の外周面を軸方向に沿って移動可能なロックナット15が設けられている。
【0028】
ロックナット15は、図2に示されるように、中央に棒状体2を貫通させる貫通口16が形成され、その貫通口16の内周面に棒状体2の軸方向に沿ってラック部17が形成されており、後述する操作機構により棒状体2の軸方向に変位されるようになっている。尚、貫通口16は、アタッチメント本体3の外径よりも大きい内径を有し、ロックナット15が先端側へ変位する場合にアタッチメント本体3を挿入させることができる程度の大きさに形成されている。そして、ロックナット15は、前記フランジ13によって、基端側(図中、下側)への移動範囲が規制されており、このフランジ13に当接した状態においてアタッチメント本体3よりも基端側に位置するようになっている。
【0029】
ロックナット15を軸方向に変位させる操作機構は、棒状体2の内部に軸方向に延設された動力伝達軸20を回転させるグリップ部6に設けられた動力供給機構と、ロックナット15が設けられている部位近傍の棒状体2の内側に設けられた動力出力機構とから構成されている。
【0030】
動力伝達軸20は、絶縁性素材で構成され、グリップ部6からアタッチメント本体3の近傍にかけて延設されているもので、基端側がグリップ部6の上部に位置する棒状体2の内側に固定された軸受け部材21に軸支され、また、先端側がアタッチメント本体3の基端側近傍に位置する棒状体の内側に固定された軸受け部材22に軸支され、棒状体2の軸心とほぼ一致するように設けられている。
【0031】
この動力伝達軸20のグリップ部上部の内側となる基端側の端部近傍には、第1の歯車31が固装され、また、動力伝達軸20の先端側の端部近傍には、第3の歯車33が固装されている。
【0032】
棒状体2のグリップ部6には、第1の歯車31と対向する位置(軸方向で第1の歯車31の位置と一致するグリップ部6の周面部位)に周方向の所定範囲にかけて通孔23が形成され、この通孔23部分に第1の歯車31と噛合する第2の歯車32がその一部を通孔23から外側へ表出させて取り付けられている。この例において、第2の歯車32は、通孔23の内周縁に設けられた一対の支持部24に軸心が動力伝達軸20の軸心と平行となるように回転自在に支持されている。
この動力伝達軸20に固装された第1の歯車31と、この第1の歯車31に噛合する第2の歯車32とにより動力伝達軸20に回転動力を供給する動力供給機構が構成されている。
【0033】
また、棒状体2の内側において第3の歯車33と対向する位置(軸方向で第3の歯車の位置と一致する位置)には、この第3の歯車33と噛合する第4の歯車34が設けられている。この第4の歯車34は、これより先端側に設けられたウォームギア35と共通の軸36に固装されており、この共通の軸36は、棒状体2の先端側内周面に設けられた支持部25と前記軸受け部材22とに軸支されている。棒状体2の周面には、ウォームギア35のギア面の一部が表出する通孔26が形成され、この通孔26を介して突出するウォームギア35は、ロックナット15の内周面に形成されたラック部17に噛合し、ウォームギア35の回転によりロックナット15を棒状体2の軸方向に移動(進退)させることができるようになっている。
この動力伝達軸20に固装された第3の歯車33と、この第3の歯車33に噛合する第4の歯車34と、この第4の歯車34に連結されたウォームギア35と、ウォームギア35と噛合するロックナット15の内周面に形成されたラック部17とにより動力出力機構が構成されている。
【0034】
尚、作業用器具8のジョイント部9は、アタッチメント本体3が差込可能となる基端を開口した有底円筒状に形成され、その周面の対向する2箇所には、T字状の係合溝28が形成されている。
【0035】
この係合溝28は、ジョイント部9の軸線に沿った方向に切れ込んだ第1の係合部28aと、この第1の係合部28aの先端から周方向に沿って切れ込んだ第2の係合部28bと、この第2の係合部28bの第1の係合部28aと反対側端部からジョイント部の軸線に沿って開口端側へ切れ込んだ第3の係合部28cとから構成されたそれ自体公知のものである。
【0036】
以上の構成において、共用操作棒1の先端部へ作業用器具8を装着する場合には、先ず、グリップ部6に表出された第2の歯車32を回転させて(図中、左側へ回転させて)、第1の歯車、動力伝達軸、第3の歯車、第4の歯車、ウォームギアを介してロックナットを基端側へ移動させ、フランジに当接するまで変位させておく(ロック解除の位置まで変位させておく:図3(a)の状態)。
【0037】
そして、その状態において、作業用器具8のジョイント部9に共用操作棒1のアタッチメント本体3を挿入すると共に係止用突起10を係合溝28の第1の係合部28aに挿入し、アタッチメント本体3を軸方向に押し付けて、先端から突出する凸状部材12を内蔵スプリングの弾性力に抗して沈ませ、その状態でアタッチメント本体3を回動させて係止用突起10を第2の係合部28bに沿って摺動させ、しかる後に、アタッチメント本体3の軸方向の力を解放して、係止用突起10を第3の係合部28cに離脱不能に係合させる。
【0038】
このようにしてジョイント部9を棒状体2のアタッチメント本体3に装着した後に、上述した取り付け状態を保持するために、グリップ部6に表出された第2の歯車32を回転させて(図中、右側へ回転させて)、第1の歯車31、動力伝達軸20、第3の歯車33、第4の歯車34、ウォームギア35を介してロックナット15を先端側へ移動させ、ジョイント部9の下端に当接させ(ロック位置まで変位させ)、ジョイント部9をロックされた状態とする(図3(b)の状態)。
【0039】
この状態においては、ジョイント部9にロックナット15が強く密接しており、作業用器具8を押し下げることができないので、アタッチメント本体3に装着した作業用器具8を取り外すことはできなくなり、また、ロックナット15は、その軸方向の変位がウォームギア35の回転によって実現されるので、ロックナット15のロック位置が自然にずれる可能性は殆どなく、安定したロック状態を維持することが可能となる。このため、ロックした状態が徐々に解除されて作業用器具8がガタつくことがなくなり、作業用器具8が落下する恐れがなくなる。
【0040】
また、ロック状態を解除したい場合には、グリップ部6に表出された第2の歯車32を回転させて(図中、左方に回転させて)、第1の歯車31、動力伝達軸20、第3の歯車33、第4の歯車34、ウォームギア35を介してロックナット15を基端側へ移動させ、ジョイント部9の下端から離反させ、鍔部13に当接させ(ロック解除位置まで変位させ)、ジョイント部9のロックを解除した状態とする(図3(a)の状態)。
【0041】
したがって、ロックナット15によるロック、又は、ロック解除は、ロックナット15自体を回転させるのではなく、棒状体2のグリップ部6に設けられた第2の歯車32を操作することで、第1の歯車31、動力伝達軸20、第3の歯車33、第4の歯車34、ウォームギア35を介してロックナット15を棒状体2の軸方向に進退させて行うので、作業用器具8を取り付けた状態において、ロックナット15を締め増しをしたり、作業用器具8から共用操作棒1を取り外すことが可能となる。このため、作業用器具8を取り付けた作業においては、ロック状態を常時形成して作業することが可能となり、安全な作業が可能になると共に共用操作棒1が作業用器具8から取り外せなくなることに起因する不都合を解消することが可能となる。
【0042】
また、共用操作棒2の作業者が握持するグリップ部6には、動力供給機構を構成する第2の歯車32が操作可能に表出されているので、グリップ部6だけを握持して操作することが可能となり、操作性を担保することが可能になると共に、グリップ部以外の部分に誤って握持することが少なくなる。
【0043】
さらに、動力伝達軸20は、絶縁性素材で構成されているので、ロックナット15を手元で操作しても絶縁性能を確保することが可能となり、また、第4の歯車34は、前記第3の歯車33の周囲に等間隔に複数設けられている(この例では、180度の間隔で2箇所に設けられている)ので、第3の歯車33からウォームギア35に均等に動力を伝達してロックナット15の安定した螺進退が可能となり、また、ウォームギア35のガタツキを抑えることが可能となる。
【0044】
尚、この例においては、第4の歯車34とこれに連結するウォームギア35は、第3の歯車33の周方向の2箇所に設けた例を示したが、安定したロックナット15の変位を確保するために、3箇所以上に設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 共用操作棒
2 棒状体
3 アタッチメント本体
5 限界つば
15 ロックナット
17 ラック部
20 動力伝達軸
31 第1の歯車
32 第2の歯車
33 第3の歯車
34 第4の歯車
35 ウォームギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の棒状体と、前記棒状体の一端に設けられて作業用器具が着脱自在に装着可能なアタッチメント本体と、前記棒状体の外周面に設けられて該棒状体の軸方向に移動させることで、前記アタッチメント本体に装着される作業用器具をロックする位置とロックを解除する位置とに変位可能なロックナットとを有する共用操作棒において、
前記棒状体の内部に軸方向に延設された動力伝達軸を回転自在に支持し、前記棒状体の他端側に設けられたグリップ部に前記動力伝達軸を回転させる動力を供給する動力供給機構を設け、前記棒状体の前記ロックナットが設けられた部位近傍の内側に前記動力伝達軸の回転に伴って前記ロックナットを前記棒状体の軸方向に進退させる動力出力機構を設けたことを特徴とする共用操作棒。
【請求項2】
前記動力供給機構は、前記動力伝達軸に固装された第1の歯車と、この第1の歯車に噛合し、前記グリップ部の側面から外周の一部が表出されて外部から操作可能に軸支された第2の歯車とを有することを特徴とする請求項1記載の共用操作棒。
【請求項3】
前記動力出力機構は、前記動力伝達軸に固装された第3の歯車と、この第3の歯車に噛合し、ウォームギアが連結された第4の歯車と、前記ロックナットの内周面に形成されて前記ウォームギアの前記棒状体の外周面から表出された部分に噛合するラック部とを有することを特徴とする請求項1又は2記載の共用操作棒。
【請求項4】
少なくとも前記動力伝達軸は、絶縁性素材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の共用操作棒。
【請求項5】
前記第4の歯車は、前記第3の歯車の周囲に等間隔に複数設けられていることを特徴とする請求項3のいずれかに記載の共用操作棒。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−102628(P2013−102628A)
【公開日】平成25年5月23日(2013.5.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−245121(P2011−245121)
【出願日】平成23年11月9日(2011.11.9)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)