説明

内容物を収容可能な容器を発射する容器発射装置

【課題】消化剤や鎮静剤などを収容する容器を、着弾位置において破壊させて収容される内容物を拡散させる容器発射装置を提供する。
【解決手段】本発明の容器発射装置1は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンク2と、圧縮空気タンク2から噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンクに接続し、容器10に圧縮空気による圧力を与える加圧部3と、加圧部3の先端に接続し、加圧部3で圧力を受けて移動を開始する容器10を先端に案内する案内筒4と、を備え、案内筒4の先端は容器10の射出口42であり、案内筒4の後端は容器10の設置位置41であり、容器は10、設置位置41において圧縮空気による圧力を受け、案内筒4内部を射出口42まで移動し、射出口42より外部に発射される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体、粉体、気体などを収容するボール形状の容器を発射する発射装置および発射方法であって、特に圧縮空気を用いる容器発射装置および容器発射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
市街地において火災等が発生することがある。大都市化およびビルや建物の高層化に伴って、ひとたび火災が発生すると大きな災害となってしまう可能性がある。あるいは、住宅密集地、工場のような消防士や消防車の侵入が困難な場所における火災の場合にも、大災害につながる可能性がある。
【0003】
このようなビル火災や都市型火災においては、一般的な消防車を用いた消火活動では消火や鎮火が難しい問題がある。
【0004】
また、近年ではテロ活動の恐れなども高まっている。都市部においてテロ活動などが生じる場合には、早期にこれを鎮静する必要があるが、周囲や一般市民への影響を抑えるためには、沈静ガスなどを気体として周囲に振りまくことは好ましくない。
【0005】
このように、近年では、都市型の各種災害に対して迅速かつ高精度に対応する必要がある。このような災害に対する処置としては、災害が火災であれば消化剤を火元に対してピンポイントで付与し、災害がテロ等であれば鎮静剤をテロ実行者に対してピンポイントで付与する必要がある。
【0006】
現在では消化剤や鎮静剤を噴射型の装置を用いて噴射することが行われている(例えば、特許文献1参照)。あるいは、ヘリコプターや小型飛行機に搭載した水、消化剤などを火元に投入する技術も用いられる。
【0007】
一方で、野球のボールを発射する発射装置など、ボール等を発射する装置については、いくつかの技術提案がなされている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−35156号公報
【特許文献2】実開昭47−23064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1は、炭酸ガスを混入させた氷をミサイルや大砲などで発射する技術を開示する。
【0010】
しかしながら、炭酸ガスを混入させた氷は、消火能力や沈静能力に劣り、火災やテロといった災害を沈静化するのに不十分である。このため、特許文献1に開示される技術は、消火能力や沈静能力に優れた薬剤を含んだ消化剤などを、火元等に高い精度で発射することは困難である。
【0011】
加えて、特許文献1は、炭酸ガスを混入させた氷を発射する機構については詳細を開示しておらず、氷をどのようにして火元に発射するかが不明瞭である。
【0012】
都市型の災害においては、火元やテロ実行者に対して、地上からあるいはヘリコプターなどの機上から作業者が消化剤や鎮静剤を、高い精度で狙って発射する必要がある。加えて、火災やテロなどの災害発生の状況下であるので、所定の距離を離れた位置から、消化剤や鎮静剤を発射する必要がある。
【0013】
特許文献2は、圧縮空気を用いて遊戯用のボールを発射する発射装置を開示する。
【0014】
ここで、消化剤や鎮静剤を火元などに着弾するためには、消化剤や鎮静剤を容器に収納し、この容器を火元などに発射する必要がある。実際には、発射された消化剤や鎮静剤を収納する容器が、火元などに着弾して破裂し、収容されている消化剤や鎮静剤が火元において拡散される必要がある。特許文献2は、遊戯用のボールという、固体として十分な強度と耐久性を有する物体を発射する機構を有しているが、着弾時に破裂することを前提とする容器を発射する機構や構造を有していない。このため、特許文献2に開示される発射装置が、消化剤や鎮静剤を収容した容器を発射する場合には、発射直後に容器が割れたりする問題や、着弾しても容器が破裂しないなどの問題があった。このような問題が生じると、火災や災害を適切に沈静させることができない。
【0015】
このため、特許文献2に開示される発射装置は、消化剤や鎮静剤を収容する容器を、火元などに対してピンポイントの精度で発射することができない。更には、都市部災害においては、火元などと発射装置との距離に加え、発射角度も制限されることがあり、発射装置は、発射位置と着弾位置との関係を最適に測りつつ、容器を発射する必要がある。
【0016】
以上のように、従来技術では、消化剤や鎮静剤を収容した容器を、都市部特有の複雑な地形や条件の下で、火元などに高い精度で発射することができない問題や、災害を適切に沈静化できない問題があった。
【0017】
本発明は、以上の課題に鑑み、消化剤や鎮静剤などを収容する容器を、ピンポイントの精度で発射すると共に、着弾位置において破壊させて収容される内容物を拡散させる容器発射装置および容器発射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するために、本発明の容器発射装置は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンクに接続し、容器に圧縮空気による圧力を与える加圧部と、加圧部の先端に接続し、加圧部で圧力を受けて移動を開始する容器を先端に案内する案内筒と、を備え、案内筒の先端は容器の射出口であり、案内筒の後端は容器の設置位置であり、容器は、設置位置において圧縮空気による圧力を受け、案内筒内部を射出口まで移動し、射出口より外部に発射される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の容器発射装置は、消化剤や鎮静剤などの内容物を収容する容器を、目標位置に高い精度で着弾するように発射できる。
【0020】
また本発明の容器発射装置は、着弾位置において容器を破裂させて収容されている内容物を確実に目標位置において拡散させることができる。この結果、都市型火災や都市型テロにおいて、火災やテロリストを確実に沈静化できる。このような沈静化によって、災害発生時における社会的なコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態1における容器発射装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における容器発射装置による消火剤の発射を示す模式図である。
【図3】本発明の実施の形態1における容器発射装置の模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における容器の正面図である。
【図5】本発明の実施の形態2における案内筒の斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態2におけるアタッチメントを備える案内筒の側面図である。
【図7】本発明の実施の形態2にけるアタッチメントを備える案内筒の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の第1の発明に係る容器発射装置は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンクに接続し、容器に圧縮空気による圧力を与える加圧部と、加圧部の先端に接続し、加圧部で圧力を受けて移動を開始する容器を先端に案内する案内筒と、を備え、案内筒の先端は容器の射出口であり、案内筒の後端は容器の設置位置であり、容器は、設置位置において圧縮空気による圧力を受け、案内筒内部を射出口まで移動し、射出口より外部に発射される。
【0023】
この構成により、容器発射装置は、圧縮空気の力によって容器を目標位置に対して発射できる。案内筒のガイドによって、容器には十分な速度が与えられると共に発射方向も十分に制御される。
【0024】
本発明の第2の発明に係る容器発射装置では、第1の発明に加えて、容器の速度は、射出口で最大となる。
【0025】
この構成により、容器発射装置は、容器をより遠くまで発射できると共に、着弾位置までは容器を破壊せずに発射できる。
【0026】
本発明の第3の発明に係る容器発射装置では、第1または第2のいずれかの発明に加えて、案内筒の内部体積に圧縮空気タンクが有する圧力を乗じた値と、加圧部および圧縮空気タンクの内部体積総和に圧縮空気タンクが有する圧力を乗じた値とが、略同一である。
【0027】
この構成により、案内筒および圧縮空気タンクは、容器に対して最大限の速度まで加速させることができる。結果として、容器は十分な距離を投擲されると共に着弾位置のみで破裂することになる。
【0028】
本発明の第4の発明に係る容器発射装置では、第1から第3のいずれかの発明に加えて、案内筒は、容器の速度が射出口で最大となる長さを有する。
【0029】
この構成により、容器は十分な距離を投擲されると共に着弾位置のみで破裂する。
【0030】
本発明の第5の発明に係る容器発射装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、加圧部は、容器を設置可能な中空部材であり、加圧部に接続する投入部を通じて、容器の供給を受ける。
【0031】
この構成により、容器発射装置には、容易に容器が供給される。
【0032】
本発明の第6の発明に係る容器発射装置では、第1から第5のいずれかの発明に加えて、容器は、その内部に内容物を収容可能であり、内容物は、消火剤、鎮火剤、鎮静剤、水、染料および顔料の少なくとも一つである。
【0033】
この構成により、容器発射装置は、火災、テロ、犯罪などの問題に対する措置を講じることができる。
【0034】
本発明の第7の発明に係る容器発射装置では、第1から第6のいずれかの発明に加えて、容器は、射出口では破裂せず、着弾位置において破裂する。
【0035】
この構成により、容器は、必要な内容物を着弾位置において飛散させることができる。
【0036】
本発明の第8の発明に係る容器発射装置では、第1から第7のいずれかの発明に加えて、案内筒は、容器の移動方向に沿った空気通路を更に備え、加圧部は、空気通路に圧縮空気タンクからの圧縮空気を送り込む。
【0037】
この構成により、案内筒は、容易に容器を移動させると共に容器を加速することができる。
【0038】
本発明の第9の発明に係る容器発射装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、案内筒は、その内部に更に容器に摩擦を与えるアタッチメントを備え、アタッチメントは、容器の表面に接触可能な摩擦体と、摩擦体の表面に設けられる容器の表面と少なくとも2箇所で接触する2つの凸部と、を有する。
【0039】
この構成により、容器発射装置は、容器の発射方向と発射速度を制御できる。
【0040】
本発明の第10の発明に係る容器発射装置では、第9の発明に加えて、2つの凸部のそれぞれは、相互に略平行であると共に、容器の移動方向に沿っている。
【0041】
この構成により、摩擦体は、容器に十分な回転を与えることができる。十分な回転を受けた容器は、所望の角度を保ちながら、目標となる着弾位置にまで投擲される。
【0042】
本発明の第11の発明に係る容器発射装置では、第9または第10の発明に加えて、アタッチメントは、容器の内部において、摩擦体を容器に対して上下できるように上下移動可能である。
【0043】
この構成により、容器に対する摩擦力を変化させることができる。
【0044】
(実施の形態1)
【0045】
実施の形態1について説明する。
【0046】
(全体概要)
まず、容器発射装置の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における容器発射装置の模式図であり、図1は、容器発射装置1を側面から見た状態を示している。
【0047】
容器発射装置1は、内容物を収容可能な容器10を発射できる。この容器10は、発射される際には、内容物を収容していてもよいし収容していなくても良い。
【0048】
容器発射装置1は、圧縮空気タンク2、圧縮空気による圧力を容器10に与える加圧部3、加圧部3に接続し容器10を案内する案内筒4と、を備える。圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容すると共に収容する圧縮空気を加圧部3に噴射する。このとき、圧縮空気タンク2は、連絡路5を通じて圧縮空気を加圧部3に噴射する。加圧部3は、設置位置41において容器10を設置し、この設置された容器10に対して圧縮空気による圧力を付与する。この圧縮空気の圧力によって、容器10は移動を開始する。
【0049】
移動を開始した容器10は、図1に示されるように案内筒4内部を進む。案内筒4は、内部が空洞になっており、容器10はこのように空洞となっている案内筒4内部を進む。案内筒4内部を進んだ容器10は、射出口42から外部に射出される。図1において、射出口42から射出された状態として、容器10が示されている。
【0050】
このとき、容器10は、設置位置41において圧縮空気による圧力を付与される。加圧部3は、設置されている容器10の噴射によって容器10を動かす。圧縮空気の圧力を受けた容器10は、移動を開始するが、設置位置41から動くと、案内筒4の内部を移動することになる。案内筒4は、所定の長さを有しており、この長さは、容器10を着弾点まで確実に到達させると共に発射直後に容器が破裂しないように、容器10の発射速度を調整できる。案内筒4は、このような速度に調整しつつ容器10を射出口42まで導き、射出口42から容器10を射出する。
【0051】
容器発射装置1は、容器10を着弾点に対して正確な位置と投擲距離で発射すると共に、着弾点で容器10が破裂するのに適した速度で容器10を発射する。すなわち、加圧部3における加圧と案内筒4での案内長さとの組み合わせの最適化によって、容器発射装置1は、容器10を最適に発射できる。
【0052】
図1に示される矢印は、容器発射装置1によって発射される容器10の移動経路を示す。まず、設置位置42に設置されている容器10には、圧縮空気が噴射される。圧縮空気が噴射されることで、容器10は、案内筒4内部を矢印Bに示されるように移動する。このとき、容器10は、圧縮空気による圧力を受け続けており、加速度が次第に増加する。射出口41に到達すると、圧縮空気による加圧は終了し、加速度の増加は終了すると共に速度が最大になって、容器10が発射される。発射された容器10は、矢印Aに示されるように、着弾点に向かって飛ぶ。結果として容器10は、着弾点に到達する。
【0053】
このように、容器発射装置1は、圧縮空気による圧力を用いて、内容物を収容可能な容器10を発射できる。発射された容器10は、着弾点に到達して破裂し、内部に収容する内容物を飛散させる。この内容物を飛散させることで、容器10は、その目的を達成する。
【0054】
(容器発射装置の機能概要)
ここで、容器発射装置1が発射する容器10は内容物を収容しており、発射された容器10は、着弾点にて破裂して内容物を飛散させることが求められる。例えば、火災の際に消火剤を収容した容器10を発射する場合には、容器10は、発射されて着弾点に到達したところで破裂することが好ましい。着弾点が、火災現場であるからである。火災現場に容器10が到達し、火災現場で容器10が破裂すれば、収容されている消火剤が飛散して、消火できるようになる。
【0055】
図2は、本発明の実施の形態1における容器発射装置による消火剤の発射を示す模式図である。図2は、家屋50で火災が発生している状態を示しており、家屋50に対して、容器発射装置1が消火剤を収容した容器10を発射する状態を示している。
【0056】
家屋50で火災が発生している場合には、消防車によって放水を行って消火することが多い。しかし、住宅密集地であったり化学的火災であったりする場合には、放水によって消火することは難しい。このような場合には、容器発射装置1を用いて、消火剤を収容した容器10を発射して、消火剤を火災現場に飛散させて消火させることが適当である。容器発射装置1は、消防車よりはずっと小型であるし、一定の距離で離れた場所から作業できるからである。当然ながら、人力で容器を投擲するよりは、着弾点も正確であり、投擲できる距離や速度の面でも効果的である。
【0057】
図2では、例えば、家屋50で火災が発生している。家屋50から所定距離(例えば数10mから100m程度)離れた位置に容器発射装置1が設置される。家屋50では、火災が発生しているが、壁面55で炎が上がっている。容器発射装置1は、この炎の上がっている壁面55に向けて容器10を発射する。容器10は、消火剤を収容している。
【0058】
容器発射装置1は、圧縮空気タンク2からの圧縮空気の圧力によって、容器10を発射する。容器10は、案内筒4の案内に従って、射出口42から発射されて炎の上がっている壁面55に到達する。更には、容器発射装置1は、圧縮空気による加圧と案内筒4による案内によって容器10を発射するので、容器発射装置1は、着弾位置を正確に狙うことができる。このため、容器発射装置1により発射された容器10は、炎の上がっている壁面55に確実に着弾する。これは、容器発射装置1が備える圧縮空気タンク2、加圧部3および案内筒4の最適な組み合わせによって、射出口42で最大速度となって容器10が発射されるからである。このように射出口42で最大速度となることで、容器10は、案内筒4内部や発射直後に破裂することが無くなり、遠くまで容器10は到達する。
【0059】
すなわち、容器発射装置1は、遠距離から容器10を発射できることになり、遠隔で発生している火災現場に対しても消火剤を収容した容器10を発射できる。このときに、容器10は、火災現場である着弾目標位置まで破裂や破壊されることなく投擲され、着弾位置まで到達する。
【0060】
壁面55に着弾した容器10は、壁面55に衝突する衝撃によって破裂する。このとき着弾位置60において容器10は、破裂する。容器10は、消火剤を収容しており、容器10の破裂によって内部に収容されている消火剤が周囲に飛散する。飛散した消火剤は、炎に接触して消火する作用を発揮する。当然ながら、容器発射装置1は、炎の大きさに応じて連続的に容器10を発射して、炎を鎮火する。
【0061】
このように、実施の形態1における容器発射装置1は、着弾目標位置に対して正確に容器10を発射すると共に、着弾位置において容器10を破裂させて収容する消火剤を炎に対して飛散させることができる。結果として、容器発射装置1は、火災の消火に最適に用いられる。
【0062】
次に、各部の詳細について説明する。
【0063】
(圧縮空気タンク)
圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容し、加圧部3に所定のタイミングで圧縮空気を噴射する。圧縮空気は、空気ボンベから供給されたり、コンプレッサーを用いて取り込んだ空気を圧縮したりして供給されたりする。圧縮空気タンク2は、このような経路で供給される圧縮空気を収容しておく。容器発射装置1は、その外形となる筐体に操作ボタン12や操作ダイヤル11を有しており、使用者は、これら操作ボタン12や操作ダイヤル11を操作することで、容器10を発射するために圧縮空気タンク2の圧縮空気の噴射を実行する。
【0064】
例えば、操作ダイヤル11は、圧縮空気の圧力の値を調整するのに用いられる。使用者が操作ダイヤル11を、その目盛りに合わせて調整することで、圧縮空気タンク2の圧縮空気の圧力を調整できる。また、操作ボタン12は、容器10の発射や発射角度などを調整するのに用いられる。使用者は、操作ボタン12を用いて、容器10の発射を実行する。
【0065】
圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容可能な構造や機能を有するので、内部が中空であって圧力に耐えられる形状や構造を有する。例えば、圧力に耐えられるように金属や合金などの耐久性の高い素材で形成されることも好適である。一例として空気ボンベと同様の素材や構造を有している。また、容器発射装置1全体の形状や大きさに合わせた形状や大きさを有していることが好適であり、使用の態様を考慮すると、容器発射装置1の後方に位置することが適当である。
【0066】
また、圧縮空気タンク2は、圧縮空気を加圧部3に噴射するために噴射口を供えていることも好適である。すなわち、圧縮空気タンク2は、使用者の操作ボタン12の操作に基づいて瞬間的に開口して収容する圧縮空気を噴射する噴射口を備えている(噴射口は、図示せず)。噴射口は、圧縮空気を瞬間的に噴射して容器10に十分な圧力を付与するために、操作ボタン12からの操作に連動して瞬間的に開口する機構を備えている。噴射口から圧縮空気が噴射されることで、加圧部3に設置される容器10に圧力が付与される。
【0067】
また、圧縮空気タンク2と加圧部3とは直接的に接続されていても良いし、図1に示されるように連絡路5によって接続されていても良い。直接的に接続されている場合には、噴射口から噴射される圧縮空気は、直接的に加圧部3に導入されて容器10に噴射される。一方、連絡路5によって接続される場合には、噴射口から噴射される圧縮空気は、連絡路5を通じて容器10に噴射される。いずれの場合であっても容器10には、圧縮空気が噴射されて圧縮空気による圧力が付与される。連絡路5があることで、圧縮空気タンク2の設置位置の自由度が高まるメリットがある。
【0068】
また、圧縮空気タンク2は、連続的に圧縮空気を加圧部3に噴射できるように、噴射後に空気ボンベやコンプレッサーを通じて圧縮空気が供給される。圧縮空気タンク2は、取り外し可能になっており、発射する容器10の種類に応じた圧縮空気タンク2が取り付けられることも好適である。また、圧縮空気タンク2は、案内筒4などと共に、台座6に接続して設置されていることが好適である。台座6によって設置されることで、容器発射装置1全体が安定して操作できるようになるからである。加えて、台座6がキャスターを備えていることで、容器発射装置1が容易に移動できるようになる。
【0069】
(加圧部)
【0070】
加圧部3は、設置位置41に設置された容器10に噴射される圧縮空気による圧力を付与する。
【0071】
加圧部3は、圧縮空気タンク2と接続しつつ案内筒4とも接続し、設置位置41において容器10を設置する。このため、加圧部3は、内部空間を有しており、容器10が加圧部3から案内筒4に移動できる筒状であることが好ましい。
【0072】
設置位置41は、容器10を安定的に設置できるように構成されており、容器10を弱めに固定できる。加圧部3は、この設置位置41を有する。例えば、設置位置41は、圧縮空気タンク2の噴射口と一体で形成されている開口可能なドアであり、この噴射口に寄りかかって容器10は固定される。圧縮空気タンク2から圧縮空気が噴射される際にこの噴射口が開口し、開口される瞬間に容器10に圧縮空気が噴射される。この結果、容器10には圧力が加わり、案内筒4にかけて移動できる。また、加圧部3は、案内筒4と別体で成型されても良いし、一体で成型されても良い。また、機能に着目して加圧部3と案内筒4とを区別した要素として説明しているが、物理的・視覚的に別体として把握されなければならないわけではない。
【0073】
加圧部3は、設置位置41に容器10を設置するための、投入部7を更に備えても良い。
【0074】
図3は、本発明の実施の形態1における容器発射装置の模式図である。図3に示される容器発射装置1は、設置位置41に容器10を設置するための(容器10を供給するための)投入部7を備えている。この投入部7を通じて、使用者は容器10(内部に内容物が収容されていたりする)を、設置位置41に供給する。
【0075】
投入部7は、加圧部3の筐体に接続しており、加圧部3の内部空間につながっている。このため、投入部7の投入口71から容器10が投入されると、投入された容器10は、投入部7の内部空間を移動して加圧部3に入り込み、設置位置41において停止する。設置位置41には単体の容器10のみが設置されるので、次の容器10は、設置位置41に到達せず投入部7に残る。例えば、投入部7と加圧部3との接続部分は、開閉可能なドアやシャッターを備えており、このドアやシャッターによって容器10は投入部7に留まる。このドアやシャッターが開くことで投入部7から加圧部3へ容器10が供給される。供給されることで、一つの容器10が、設置位置41に供給されて設置される。加圧部3で圧縮空気が噴射されて容器10が発射されると、投入部7のドアやシャッターが開いて、次の容器10が設置位置41に供給される。
【0076】
投入部7は、必要に応じて設けられれば良く、加圧部3に設けられた開口部から一つずつ手作業で容器10が投入されても良い。
【0077】
加圧部3は、設置された容器10に、噴射される圧縮空気の圧力を効果的に付与するために、加圧部3の内部空間は、容器10の形状および大きさに合わせた形状や大きさを有することが適当である。すなわち、容器10が球形である場合には、加圧部3の内部空間は円形の断面を有する筒状であることが好適である。また、噴射される圧縮空気が容器10の周囲から案内筒4に漏れ出てしまわないように、加圧部3の内部空間は、容器10の直径に略等しい(但し、容器10が移動可能な程度の隙間を有している)ことも好適である。このような形状や大きさを有していれば、容器10に対して、加圧部3は効果的に圧力を付与できる。
【0078】
また、加圧部3は、容器10の大きさの変化に合わせて、その内径を変化可能であることも好適である。例えば、収縮リングなどを内面に備えており、この収縮リングの収縮や拡張に合わせて、加圧部3の内径が変更される。
【0079】
このように、加圧部3は、設置位置41に設置された容器10に、噴射される圧縮空気による圧力を効果的に付与する。
【0080】
(案内筒)
【0081】
次に、案内筒4について説明する。
【0082】
案内筒4は、加圧部3で圧縮空気の圧力によって移動を開始した容器10を、射出口42まで案内して外部に発射する。容器10は、加圧部3で圧縮空気の圧力を受けることで移動を開始するが、そのまますぐに射出口から発射されるのでは、その方向、速度が制御されていない。外部に発射されると、容器10の方向や速度を制御する要素はなく、外界をそのまま進まなければならないからである。
【0083】
すなわち、案内筒4は、容器10の周囲を覆った内周において容器10を移動させることにより、(1)容器10の発射方向を調整し、(2)容器10の発射速度を調整する。案内筒4は、加圧部3と接続する内部空間を有し、この内部空間に沿って容器10を移動させる。この内部空間に沿った移動によって、案内筒4は容器10の発射方向を調整できる。すなわち、案内筒4が下向きの角度を有していれば、発射される容器10は下向きに発射されて、下向きの目標位置となる着弾位置に到達する。あるいは、案内筒4が上向きの角度を有していれば、発射される容器10は、上向きに発射されて上向きの目標位置となる着弾位置に到達する。
【0084】
また、案内筒4は、内部空間において容器10を移動させる際に、加圧部3で圧力を付与した圧縮空気の圧力を用いる。すなわち、容器10は、加圧部3で圧縮空気の圧力を付与されるだけでなく、案内筒4においても圧縮空気の圧力を受けている。圧縮空気タンク2から噴射された圧縮空気は、加圧部3を基点に案内筒4内部でも伝わっていく。すなわち、圧縮空気は、加圧部3から案内筒4にかけて、容器10を押し出す役割を果たす。圧縮空気が加圧部3から案内筒4にかけて容器10を押し出すことで、容器10は、案内筒4内部においても加速度を受けて速度を増していく。容器10は、案内筒4の出口となる射出口42において速度を最大として外部に発射される。
【0085】
このように、案内筒4は、圧縮空気による圧力によって、容器10の速度を高めつつ、その速度が略最大となるところで射出口42から発射する。このことにより、案内筒4は、容器10の発射速度を調整できる。このため、案内筒4の長さは、圧縮空気による圧力を基準に、容器10の速度が略最大となる位置に射出口42を備える長さであることが好ましい。
【0086】
案内筒4は、容器10が移動できる内部空間を有していることが好適である。特に、加圧部3と同様に、容器10の形状や大きさに対応した内部空間を有していることが好適である。このため、案内筒4は筒状であることが好ましく、その内部空間の断面は、容器10の形状と大きさとに略等しい形状と大きさを有していることが好ましい。もちろん、容器10がスムーズに移動できるような外周の隙間は設けられる。但し、圧縮空気が容器10の外周から漏れ出てしまわない程度の隙間であることが好ましい。
【0087】
案内筒4は、台座6に接続されており、この台座6によって案内筒4が支持されている。このとき、案内筒4が台座6に対して角度を変更できるように、角度調整機構を備えていることも好適である。例えば、ねじによって角度調整機構は実現される。
【0088】
また、案内筒4は、金属、合金、樹脂などで形成されており、内部空間を有することに加えて、外部表面に操作ダイヤル11や操作ボタン12をそなえている。これら操作ダイヤル11や操作ボタン12の操作によって、容器発射装置1は、容器10を発射する実際の動作を行う。
【0089】
図3を用いて、投入部7に投入された容器10が射出口42から発射されるまでの流れを説明する。図3では、説明の便宜のために、容器10を、その位置によって容器10A〜容器10Dとして示している。また、矢印A〜Cによって、容器10の移動経路を示している。
【0090】
投入部7に容器10が投入される。この位置における容器10を容器10Aとして示す。容器10は、矢印Cに沿って投入部7の内部を進み、設置位置41に設置される。この位置における容器10を容器10Bとして示す。設置位置41における容器10Bは、圧縮空気タンク2から噴射される圧縮空気を受けて移動を開始する。移動を開始すると、容器10は、案内筒4内部に入る。更に容器10は、案内筒4内部を矢印Bに沿って移動する。移動するとやがて速度が略最大となり、容器10は、射出口42に到達する。この位置における容器10を、容器10Cとして示す。最後に、容器10は、射出口42から発射され、着弾位置に向かって投擲される。この位置における容器10を、容器10Dとして示す。
【0091】
以上のように、容器10は、案内筒4のガイドを受けながら、所望の着弾位置に向けて発射される。
【0092】
(容器)
【0093】
容器10は、内容物を収容可能であって、容器発射装置1によって着弾目標位置に向けて発射される。
【0094】
容器10は、圧縮空気による圧力で発射しやすい形状や大きさを有している。好適には、球形であることが好ましい。球形であれば、圧縮空気の圧力によって発射されると共に着弾目標位置に至るまで適切な軌道を描いて投擲されるからである。また、容器10は、消火剤などを着弾位置に運搬する役割を有するので、所定以上の大きさを有していることが好ましいが、余りに大きいと容器発射装置1によって投擲される距離が短くなるので容器発射装置1の投擲能力に応じた大きさであることが好ましい。
【0095】
また、容器10は、着弾位置で破裂する必要があるので、衝撃によって破壊されるように一定の脆さを有している素材で形成されることが好ましい。一方で、発射時や発射後の飛行中に破裂したり破壊されたりすることは、内容物を着弾位置に運搬する役割を果たせないことになるので、着弾位置までは強度を保つ必要がある。このため、容器10は、着弾位置までは強度を保ちつつ着弾位置で破裂や破壊される脆さを併せ持つ素材で形成されることが適当である。例えば、プラスチック、樹脂などで形成されることが好ましい。また、その厚みも薄いことが、着弾位置で破壊されやすくなるので好適である。あるいは、着弾位置で破裂しやすいように、容器10の外周に切れ目や縫合線が設けられていることも好適である。着弾時に、切れ目や縫合線から破壊されるからである。
【0096】
図4は、本発明の実施の形態1における容器の正面図である。容器10には、縫合線101が設けられている。縫合線101は、容器10を形成する際に、球形の半分ずつが金型で形成され、これらが貼り合わされることで形成される。この貼り合わせの際の合わせ目が、縫合線101として形成される。このため、縫合線101の部分は、他の部分よりも衝撃に弱く、着弾位置に衝突した容器10は、この縫合線101より破裂する。
【0097】
また、容器10は、内部に内容物を収容可能である。
【0098】
図4に示されるように、容器10は、容器10の一部に収容物を封入する封入口102を有している。封入口102は、開閉可能な蓋を備えており、この蓋を開けることで、容器10内部に内容物を封入することが可能である。内容物を封入した後では、蓋を閉めれば内容物は封止される。
【0099】
容器10は、必要に対応した内容物を収容する。内容物は、消火剤、鎮火剤、鎮静剤、水、染料および顔料の少なくとも一つである。容器10を火災現場に対して発射する場合には、容器10は、消火剤や鎮火剤を収容する。もちろん、消火剤や鎮火剤を飛散させやすくするために水などの添加物を加えることも好適である。あるいは、テロや犯罪を沈静するために容器10を発射する場合には、鎮静剤を収容することも好適である。テロや犯罪現場に対して容器10が発射されて容器10が破裂することで、鎮静剤が飛散してテロや犯罪を沈静する効果が得られるからである。
【0100】
また、犯罪者の追跡のために容器10を発射する場合には、容器10は、染料や顔料を収容することが好適である。犯罪者に対して発射された容器10は、犯罪者に衝突して破裂する。破裂すると、収容している染料や顔料が飛散して、犯罪者に付着する。これにより、犯罪者の追跡が容易となり、犯罪の拡大の未然防止が図られる。
【0101】
なお、上述の内容物は一例であり、消火剤や鎮静剤以外の物質が収容されても良い。
【0102】
このように、容器10は、内容物を収容した上で容器発射装置1から発射され、射出口42では破裂せずに着弾位置で破裂することで、目標の場所において内容物を飛散させることができる。
【0103】
また、容器発射装置1が、内容物を収容可能な容器10を発射までは発射直後に破裂させること無く、着弾目標位置に対して正確に発射し、更に着弾位置で容器10を破裂させるために、圧縮空気タンク2、加圧部3および案内筒4のそれぞれが最適に組み合わされている。以下に、この組み合わせ等について説明する。
【0104】
(射出口での速度)
【0105】
容器発射装置1は、容器10を発射後に破裂させること無く所望の距離を投擲し、着弾位置で破裂させるために、射出口42で容器10の速度が略最大となるように発射する。また、射出口42で加速度が略最大となるように、容器10を発射しても良い。容器10が射出口42から発射される際に、速度および加速度の少なくとも一方が最大となる状態であることで、案内筒4によって容器10の速度と方向が制御されて容器10には最大の速度が与えられる。このとき、容器10が発射までに破壊されない程度の容器形状や強度にしておくことで、容器10の投擲距離は最大になり、着弾によってのみ破裂するようになる。
【0106】
このように、発明者は容器10を十分な距離投擲すると共に着弾位置でのみ破裂させるために、案内筒4で加速される速度や加速度の少なくとも一方が、射出口42で最大であることが重要であることに至ったものである。
【0107】
これは、案内筒4の長さが、圧縮空気による圧力が消失する程度の長さであることにより実現される。
【0108】
(圧力と体積との関係)
【0109】
容器10の射出口42での発射速度は、圧縮空気タンク2による圧縮空気による圧力と、容器10が発射されるまでの空間体積との関係によって定まる。容器10が、発射中あるいは発射後に破裂することなく、着弾位置まで投擲されて着弾位置で破裂するためには、射出口42で容器10の速度および加速度の少なくとも一方が略最大となることが適当である。
【0110】
案内筒4においては、容器10は、圧縮空気による押し出し圧力を受けているので、容器10は案内筒4を移動する過程で速度や加速度を増加させる。このため、容器10が射出口42から発射される際の速度や加速度は、(1)圧縮空気による圧力、(2)設置位置41から射出口42までの移動距離(体積)との組み合わせによって定まる。
【0111】
このため、案内筒4の内部空間の体積に圧縮空気タンク2が有する圧力を乗じた値と、加圧部3と圧縮空気タンク2との内部空間の体積総和に圧縮空気タンク2が有する圧力を乗じた値とが、略同一であることが好ましい。この関係によって、案内筒4の長さ(体積)は、圧縮空気タンク2からの圧力の全てを消費しながら容器10を加速することになるからである。このような関係を有するように、圧縮空気タンク2、加圧部3および案内筒4の関係が定められることで、容器10を破裂させること無く所望の着弾位置に発射し、着弾位置において破裂させることができる。
【0112】
以上のように、実施の形態1における容器発射装置1は、内容物を収容する容器10を、所望の着弾位置に正確に発射できると共に着弾位置で容器10を破裂させて、火災の消火やテロの沈静を実現できる。
【0113】
(実施の形態2)
【0114】
次に、実施の形態2について説明する。
【0115】
実施の形態2では、容器発射装置1が容器10を発射する際に、発射される容器10の発射方向や投擲距離の安定性を増すための構成について説明する。
【0116】
(案内筒の空気通路)
【0117】
案内筒4は、容器10の移動方向に沿った空気通路45を更に備える。図5は、本発明の実施の形態2における案内筒の斜視図である。図5の案内筒4は、容器10の移動方向に沿って空気通路45を備える。この空気通路45は、圧縮空気タンク2からの圧縮空気を輸送する。すなわち、圧縮空気タンク2からの圧縮空気は、空気通路45は、この空気通路45に入り込んで空気通路45内部を移動する。
【0118】
空気通路45は、案内筒4とつながっているので、容器10が案内筒4を移動する際に、容器10の回りに空気の流れを生じさせる。案内筒4は内部空間を有し、容器10は、この内部空間を移動する。このとき、容器10が内部空間にすっぽりとはまっている場合には(容器10の直径と内部空間の直径とが略同一である場合)、案内筒4における容器10の移動での安定性は高まるが、容器10は、内部空間との摩擦によって移動しにくくなる。
【0119】
一方、案内筒4の内部空間の直径が容器10よりも十分に大きい場合には、容器10の移動は妨げられないが、容器10の移動における方向性がそろわなくなり、容器10の発射方向の制御が困難になる問題がある。
【0120】
空気通路45は、案内筒4にすっぽりとはまっている場合でも、容器10の周囲に空気の抜け道を形成するので、容器10と案内筒4の内壁との摩擦を低減できる。加えて、空気通路45は、圧縮空気を輸送するので、容器10の案内筒4内部での移動を助ける。このため、案内筒4の内部空間の直径と容器10の直径とが略同一でありながらも空気通路45によって容器10の移動が促進される。結果として、案内筒4は、容器10の移動を促進しつつも発射方向を正確に制御できるようになる。
【0121】
なお、空気通路45は、案内筒4内部に、単数および複数設けられてもよい。
【0122】
(アタッチメント)
【0123】
案内筒4は、内部空間において容器10に摩擦を与えるアタッチメントを更に備えていることも好適である。
【0124】
図6は、本発明の実施の形態2におけるアタッチメントを備える案内筒の側面図である。図7は、本発明の実施の形態2にけるアタッチメントを備える案内筒の正面図である。いずれの図面も、案内筒4は、その内部に容器10に摩擦を与えるアタッチメント8を備えている。アタッチメント8は、案内筒4を移動する容器10の表面と接触して、容器10に摩擦を与える。この摩擦によって容器10には適当な回転が生じ、容器10は、目標となる着弾位置に正確に到達する。
【0125】
球形の容器10は、発射されて投擲される際に、全く回転を有していないと、重力に引きずられて下方に落ちてしまう。これに対して容器10が回転をしていると、重力や空気抵抗に対する抵抗力を有することになるので、容器10は、下方に落ちることなく目標となる着弾位置に到達しやすくなる。
【0126】
アタッチメント8は、容器10の表面に接触可能な摩擦体83と、摩擦体83の表面に設けられる容器10の表面と少なくとも2箇所で接触する凸部84、85と、を備える。凸部84、85の形状や構造は、図7に示される通りである。また、アタッチメント8は、取り付け具81によって案内筒4の内部空間に取り付けられる。
【0127】
アタッチメント8は、この摩擦体83および凸部84、85によって、容器10を表面に接触することで、容器10に回転を生じさせる。図6を用いて説明する。容器10は、加圧部3(図示せず)によって圧縮空気の圧力を受けて移動を開始する。この移動を開始した容器10は、案内筒4内部に入り込む。この位置での容器10を、図6においては容器10Fとして示す。容器10は、初速および継続する圧縮空気の圧力によって、案内筒4内部を進む。
【0128】
案内筒4内部を進んだ容器10は、やがて射出口42に近づく。射出口42の手前においてアタッチメント8が設けられている。このアタッチメント8の摩擦体83および凸部84、85の少なくとも一部と、容器10は接触する。このときの容器10の位置を、容器10Gとして示す。容器10は、摩擦体83等と接触することで摩擦を受け、この摩擦によって、容器10は、回転しながら射出口42から発射される。この結果、容器10は、回転しながら着弾位置に到達できる。容器10は、回転しながら投擲されることで、空気抵抗や重力による影響を受けにくく、容器発射装置1が狙った位置に到達しやすくなる。これは、野球のボールが回転しながらまっすぐに飛ぶことと同様である。
【0129】
2つの凸部84、85は、それぞれ容器10の移動方向に沿って接触面を有することが好適である。加えて、2つの凸部84、凸部85のそれぞれは、略平行であることが好適である。このような構造を有することで、凸部84、85は、容器10に対して所定方向への回転を与えることができる。例えば、アタッチメント8が、案内筒4の上部に取り付けられている場合には、凸部84、85は、容器10に対して縦回転を与えることができる。縦回転は、重力や空気抵抗に対しての抵抗力を有するので、容器10は、落下することが少なくなって、目標とする着弾位置に正確に到達できるようになる。
【0130】
また、アタッチメント8が、案内筒4の左右のいずれかに取り付けられている場合には、容器10には、横回転が与えられる。この横回転によって、容器10は、カーブしながら着弾位置に到達できる。
【0131】
例えば、容器発射装置1の設置できる位置と着弾位置とがまっすぐにつなげられないような障害物がある状態では、このようなカーブによって容器10を投擲することも適当である。例えば、火災現場の手前に建物や駐車中の車がある場合にも、これらの障害物を避けながら容器10を着弾位置に到達させることができるようになる。
【0132】
また、容器10の回転数や回転量は、アタッチメント8が付与する摩擦力によって定まる。この摩擦力は、摩擦体83や凸部84、85と容器10との接触量とによって定まる。この接触量は、容器10に対して摩擦体83がどれだけの力(距離)で押し当てられるかによって定まる。このため、アタッチメント8は、摩擦体83を容器10に対して(案内筒4の内部空間に対して)上下可能にする調整部材82を更に備えることも好適である。
【0133】
図7に、調整部材82を備えるアタッチメント8が示される。
【0134】
調整部材82は、案内筒4の外側に突き出ており、取り付け具81を介してアタッチメント8を案内筒4の内部に設置するようにしている。調整部材82は、ねじによって回転可能で、この回転によって取り付け具81が前後して、摩擦体83を上下させる。摩擦体83が、案内筒4の内部空間により深く入り込む場合には、容器10に対してより強く接触することになるので、容器10には強い摩擦が加わることになる。この強い摩擦によって、容器10は、より多い回転数で回転できるようになる。回転数が多いことで、直線的な投擲やカーブにおける角度がより強くなる。
【0135】
一方、摩擦体83が案内筒4の内部空間において容器10から遠ざかる方向に移動する場合には、摩擦体83は、容器10に弱い摩擦力を与える。弱い摩擦力の結果、容器10の回転数は少なくなる。
【0136】
摩擦体83を上下させる調整部材82によって、アタッチメント8は、容器10に対して与える摩擦力を調整でき、容器10の回転数を調整できる。
【0137】
摩擦体83は、所定の幅と長さを有しており、基板となる基材と容器10の表面と接触する接触面とを有する。基材は、取り付け具81と接続する金属、樹脂、合金で形成される。接触面は、ゴム、フェルトなどの素材やネオプレンスポンジなどの吸収性のある合成素材で形成される。また、基材の一部が盛り上がることで、この基材の表面に貼り付けられた接触面が、凸部84、85を形成できる。この結果、摩擦体83は、凸部84、85と一体的な構成を有し、この一体的な構成によってアタッチメント8は、容器10に摩擦を与えることができる。
【0138】
なお、凸部84、85は、いずれか一方だけが設けられても良い。また、複数のアタッチメント8が、案内筒4に取り付けられても良い。
【0139】
以上のように、案内筒4がアタッチメントを備えることで、容器発射装置1は、容器10に適切な回転を与えることができ、容器10は、目標となる着弾位置に正確に投擲される。この結果、火災やテロなどの消火や沈静のために必要となる内容物を収容する容器10を、目標とする着弾位置に、適切に発射できるようになる。
【0140】
なお、容器発射装置1を使用する使用方法も、本発明に含まれる。
【0141】
すなわち、実施の形態1、2で説明された容器発射装置1を用いて、次の手順(1)〜(7)の一部若しくは全部を用いて容器10を発射することは、本発明に含まれる。
(1)投入部7を介して(あるいは介さずに)容器10を設置位置41に設置する、
(2)圧縮空気タンク2に収容されている圧縮空気を噴射するための手順を行う、
(3)噴射された圧縮空気が加圧部3において容器10へ圧力を付与する、
(4)圧力を付与された容器10が移動を開始する、
(5)移動を開始した容器10は、案内筒4内部を進む、
(6)必要に応じて設けられたアタッチメントが、容器10に摩擦および回転を付与する、
(7)射出口42から容器10が発射される。
【0142】
これらは、例えば操作ボタン等の操作によって実行される。
【0143】
以上、実施の形態1〜2で説明された容器発射装置および容器発射方法は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0144】
1 容器発射装置
11 操作ダイヤル
12 操作ボタン
2 圧縮空気タンク
3 加圧部
4 案内筒
41 設置位置
42 射出口
45 空気通路
5 連絡路
6 台座
7 投入部
8 アタッチメント
81 取り付け具
82 調整部材
83 摩擦体
84、85 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、
前記圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように前記圧縮空気タンクに接続し、容器に圧縮空気による圧力を与える加圧部と、
前記加圧部の先端に接続し、前記加圧部で圧力を受けて移動を開始する前記容器を先端に案内する案内筒と、を備え、
前記案内筒の先端は前記容器の射出口であり、前記案内筒の後端は前記容器の設置位置であり、
前記容器は、前記設置位置において圧縮空気による圧力を受け、前記案内筒内部を前記射出口まで移動し、前記射出口より外部に発射される容器発射装置。
【請求項2】
前記容器の速度は、前記射出口で最大となる請求項1記載の容器発射装置。
【請求項3】
前記案内筒の内部体積に前記圧縮空気タンクが有する圧力を乗じた値と、前記加圧部および前記圧縮空気タンクの内部体積総和に前記圧縮空気タンクが有する圧力を乗じた値とが、略同一である請求項1又は2記載の容器発射装置。
【請求項4】
前記案内筒は、前記容器の速度が前記射出口で最大となる長さを有する請求項1から3のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項5】
前記加圧部は、前記容器を設置可能な中空部材であり、前記加圧部に接続する投入部を通じて、前記容器の供給を受ける請求項1から4のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項6】
前記容器は、その内部に内容物を収容可能であり、前記内容物は、消火剤、鎮火剤、鎮静剤、水、染料および顔料の少なくとも一つである請求項1から5のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項7】
前記容器は、射出口では破裂せず、着弾位置において破裂する請求項1から6のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項8】
前記案内筒は、前記容器の移動方向に沿った空気通路を更に備え、前記加圧部は、前記空気通路に前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を送り込む請求項1から7のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項9】
前記案内筒は、その内部に更に前記容器に摩擦を与えるアタッチメントを備え、
前記アタッチメントは、
前記容器の表面に接触可能な摩擦体と、
前記摩擦体の表面に設けられる前記容器の表面と少なくとも2箇所で接触する2つの凸部と、を有する請求項1から8のいずれか記載の容器発射装置。
【請求項10】
前記2つの凸部のそれぞれは、相互に略平行であると共に、前記容器の移動方向に沿っている請求項9記載の容器発射装置。
【請求項11】
前記アタッチメントは、前記容器の内部において、前記摩擦体を前記容器に対して上下できるように上下移動可能である請求項9または10に記載の容器発射装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−13379(P2012−13379A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−152505(P2010−152505)
【出願日】平成22年7月2日(2010.7.2)
【出願人】(596017602)共和技研株式会社 (5)