説明

内燃エンジン用スパークプラグ

全体的にほぼ円筒形状の、自動車の内燃エンジン用のスパークプラグ(1)であって、
− 本質的に容量性の下部(C)であって、
*中心電極(3)として知られる軸線(Z)の内部電極及び中心電極(3)を取り囲んでいるシェル(2)として知られる外部電極の2本の同軸電極と、
*中心電極(3)とシェル(2)の間に挿入されている絶縁体(4)として知られる電気絶縁ブロック
とを備える本質的に容量性の下部(C)、並びに
− 本質的に誘導性の上部(I)であって、
*コイル(5)で取り囲まれた中心心棒(8)であって、このコイルの下端部(57)が中心電極(3)の上端部(31)を取り囲んでいる中央心棒(8)と、
*外部ケーシング(6)と、
*ケーシング(6)とコイル(5)との間に径方向に挿入された絶縁体(7)
とを備える本質的に誘導性の上部(I)を備え、
中心電極(3)の上端部(31)が、
−中心電極(3)の材料より導電率が高く、
−強磁性を有していない
材料のコーティング(9)を有することを特徴とする、スパークプラグ。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、特に、電気火花による内燃エンジンの点火に使用される、プラズマ発生スパークプラグに関する。
【0002】
全体的にほぼ円筒形状である、自動車の内燃エンジン用のスパークプラグが、
− 本質的に容量性の下部であって、
・中心電極(3)として知られる軸線を有する1つの内部電極と、この中心電極を取り囲んでいるシェルとして知られる1つの外部電極との2本の同軸電極、及び
・中心電極とシェルとの間に挿入されている絶縁体として知られる電気絶縁ブロックを備える、本質的に容量性の下部と、
− 本質的に誘導性の上部であって、
・コイルで取り囲まれた中央心棒(マンドレル)であって、コイルの下端部が中心電極の上端部を取り囲んでいる、中央心棒、
・外部ケーシング、及び
・ケーシングとコイルとの間に径方向に挿入された絶縁体を備える、本質的に誘導性の上部を備えている。
【0003】
仏国特許出願公開第2859830号、第2859569号及び第2859831号明細書は、直列の共振器が組み込まれている上記種類のマルチスパークプラグに関する。コイルの巻きの一重巻きによって、高い品質係数、すなわち構造内に蓄えられるエネルギーと抵抗損及び誘電損との比率を得ることができる。全てのエネルギーは、このように磁気の形態で蓄えられ、本質的に容量性の部分に送られる。さらに、コイルの下端部は中心電極の上端部を取り囲んでいる。この電磁的に重複する領域によって、中心電極に渦電流が生じる。渦電流は、余分な抵抗を生み出す作用、ひいてはコイル/スパークプラグアセンブリの過電圧係数を下げる作用を有している。
【0004】
これらの欠点を改善するため、本発明は、中心電極内の渦電流によって生じる電磁エネルギーの散逸を低減し、これにより、スパークプラグの性質、特に、高い過電圧係数を最適化することを目的とする。
【0005】
上記目的を達成するために、本発明は上述した種類のスパークプラグであって、中心電極の上端部が、中心電極の材料より高い導電性を有し、強磁性を有していない材料からなるコーティング(被覆体)を有することを特徴とするスパークプラグを提供する。
【0006】
本発明の別の特徴によると、コーティングの厚さは、中心電極の初期の表皮厚さと少なくとも等しい。
本発明の別の特徴によると、コーティングの軸線方向の高さは、中心電極の上端部の高さに少なくとも等しい。
【0007】
本発明の他の特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら、例示的な実施形態の説明を読むことによって明らかとなるであろう。
同一又は同様の要素は同じ参照番号で示す。
【実施例】
【0008】
図1に示すように、軸線Zを有する全体的にほぼ円筒形状である高周波プラズマスパークプラグ1は、主に、直列に接続されている本質的に容量性の下部Cと本質的に誘導性の上部Iを含む。下部C及び上部Iは、実質的に細長い形状をしている。
【0009】
本質的に容量性の部分Cは、詳細には、アースに接続し、高電圧電極である軸線Zを有する実質的に円筒形の中心電極3を取り囲むシェル2を含む。「絶縁体」4として知られる電気絶縁ブロックは、シェル2と中心電極3との間に配置されている。従来技術でよく知られているように、シェル2は、スパークプラグ1が設けられる内燃エンジンのシリンダヘッドに最も近い下部の外面で、シリンダヘッドにスパークプラグ1を取り付け、保持し、締付け固定するのに適した形状を有する(例えば、限定されることなく、図1に示すようなねじ山)。
【0010】
スパークプラグ1の本質的に誘導性の部分Iは、内側から外側に向かって、中央心棒8、コイル5、絶縁体7、及び外側ケーシング6を有している。
【0011】
中央心棒8は、円形の断面を有する全体として円筒の形状を有しており、その軸線はスパークプラグ1の軸線Zとおおよそ一致する。この心棒8は、絶縁性で且つ非磁性の材料で作られている。
【0012】
コイル5は、円形の断面を有する全体として円筒の形状をしている。コイル5は、最初の巻き51aから最後の巻き51bまで中央心棒8を取り囲む隣接する巻き51を形成する直径Dの巻き線からなり、これらの最初の巻き51a及び最後の巻き51bは、コイル5の2つの端部51a及び51bを構成している。最初の巻き51aは、コネクタ12に接続されており、最後の巻き51bは、適切な手段14によって中心電極3の内端部に接続されている。
【0013】
図2に示すように、コイル5の下端部57は、心棒8に嵌め込まれている中心電極3の上端部31を取り囲む。
【0014】
図1に示すように、コイル5を取り囲む絶縁体7は、全体として円筒形状を有する。その材料は、シリコーンなどの様々な材料から選ぶことができる。
【0015】
外部ケーシング6は、全体として円筒形状を有する。このケーシング6は、アースに接続され、コイル5を取り囲んでいる。ケーシング6は、電磁遮蔽機能を有する。ケーシング6は、非鉄であり且つ導電性の高い材料、例えば銅から選ぶことができる。
【0016】
図3に示すように、本発明の一実施形態によると、中心電極3はコーティング9を有している。コーティング9は、中心電極3の上端部31上に軸線方向に備えられている。このコーティング9は、例えば電気分解などによって堆積させることができる。
【0017】
コーティングは、中心電極3の材料よりも導電性があるということ及び強磁性の性質を持たないことによって特徴付けられる。例えば、中心電極3は、導電率が14.3*10S/m(ジーメンス/メートル)であるニッケルから選んでよいし、またコーティング9は、導電率が63*10S/mである銀から選んでよい。
【0018】
コーティング9の寸法に関しては、
− 厚さE、及び
− 高さH
によって特徴付けられる。
【0019】
径方向の厚さEは、コーティング9を有していない中心電極の表皮厚さに少なくとも等しい。この表皮厚さは、対象となる材料において、その厚みを越えると、誘導された電流が「e」(ここで、ln(e)=1)分の1に減少する厚さとして定義されることに留意されたい。表皮厚さは、以下の方程式を用いて算出することができる。

式中、
・μは透磁率、
・μはμ・μr、ここで、μrは材料の相対透磁率、μは真空中での透磁率、
・σ(S/m)は導電率、及び
・f(Hz)は単位Hzでの周波数である。
【0020】
高さHは、中心電極3の上端部31の高さに少なくとも等しい。
【0021】
中心電極3の上端部31を取り囲んでいるコイル5の下端部57は、電磁的に重複する領域Aとして知られている。この領域Aは、中心電極3に渦電流を誘導する。渦電流により生じる損失は、周波数の二乗に比例する。表皮厚さは、透過率、周波数、導電率及び対象となる部分の寸法の平方根に比例して薄くなる。表皮厚さに対して、磁界に垂直な平面において前記部分が厚いほど、誘導される電流も大きくなる。
【0022】
渦電流は、中心電極3の材料の表皮厚さの中に見出されるので、本発明の一実施形態では、この表皮厚さの代わりとなるコーティング9を提供する。このコーティング9によって、渦電流を少なくし、表皮厚さを薄くすることができる。このようにして、中心電極3の抵抗が減少する。これにより、過電圧係数が増大するので、結果としてスパークプラグの性能が向上する。
【0023】
本発明は、例を用いて説明し例示された上記実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来技術による高周波プラズマスパークプラグの、軸線Zに沿った概略的な断面図である。
【図2】従来技術による、コイルの下端部及び中心電極の上端部を備えている高周波プラズマスパークプラグの一部分の、軸線Zに沿った概略断面図である。
【図3】本発明による中心電極の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的にほぼ円筒形状である、自動車の内燃エンジン用のスパークプラグ(1)であって、
− 中心電極(3)として知られる軸線(Z)を有する1つの内部電極と、前記中心電極(3)を取り囲んでいるシェル(2)として知られる1つの外部電極との2本の同軸電極、及び、前記中心電極(3)と前記シェル(2)との間に挿入される絶縁体(4)として知られる電気絶縁ブロックとを備える、本質的に容量性の下部(C)と、
− コイル(5)によって取り囲まれている中央心棒(8)であって、前記コイル(5)の下端部(57)が前記中心電極(3)の上端部(31)を取り囲んでいる中央心棒(8)と、外部ケーシング(6)、及び、前記ケーシング(6)と前記コイル(5)との間に径方向に挿入された絶縁体(7)とを備える、本質的に誘導性の上部(I)
とを備え、
前記中心電極(3)の前記上端部(31)が、
− 前記中心電極(3)の材料より導電性が高く、
− 強磁性を有していない
材料のコーティング(9)を有することを特徴とする、スパークプラグ。
【請求項2】
前記コーティング(9)の径方向の厚さ(E)が、前記中心電極(3)の初期の表皮厚さに少なくとも等しいことを特徴とする、請求項1に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項3】
前記コーティング(9)の軸線方向の高さ(H)が、前記中心電極(3)の前記上端部(31)の高さに少なくとも等しいことを特徴とする、請求項1又は2のいずれか1項に記載のスパークプラグ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−516342(P2009−516342A)
【公表日】平成21年4月16日(2009.4.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−540661(P2008−540661)
【出願日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050955
【国際公開番号】WO2007/054648
【国際公開日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】