説明

内燃機関のサージタンク及びその製造方法

【課題】機関出力特性の異なる複数の内燃機関に対して外側形状を変更することなく当該機関出力特性に応じた容積を確保することができるとともに振動についてもこれを好適に抑制することのできる内燃機関のサージタンク及びその製造方法を提供する。
【解決手段】内燃機関の吸気マニホルド10は、サージタンク20と、サージタンク20と各気筒の吸気ポートとを接続する複数の分岐管30とを備えている。また、サージタンク20の内壁(第1壁部22a)から突出する隔壁23a〜23cが形成されている。吸気マニホルド10の外側形状は排気量(機関出力特性)の異なる複数の内燃機関で共通とされる一方、隔壁23a〜23cの占有体積V1、V2が機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異なるものとされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の吸気通路の一部をなすサージタンク及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関には吸気通路の一部をなすサージタンクが設けられている(例えば特許文献1参照)。こうしたサージタンクの容積は機関出力特性に応じて適宜設定されており、例えば内燃機関の排気量が大きくなるほどサージタンクの容積が大きくされている。また近年、軽量化を図る目的からサージタンクが薄型化される傾向にあるが、吸気通路内の吸気脈動によってサージタンクが振動するとともにこれに伴って異音が生じるおそれがある。そこで、サージタンクの外壁にリブを設ける等して剛性を高めるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009―236018号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、こうしたサージタンクにあっては、機関出力特性が異なる内燃機関毎にサージタンクの容積を変更する必要がある。また、サージタンクの外壁にリブ等が設けられている。これらのことから、機関出力特性が異なる内燃機関毎に、サージタンクの体格、すなわち外側形状を変更しなければならず、サージタンクを中心とした内燃機関のレイアウトの設定が複雑なものとなる。
【0005】
本発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、機関出力特性の異なる複数の内燃機関に対して外側形状を変更することなく当該機関出力特性に応じた容積を確保することができるとともに振動についてもこれを好適に抑制することのできる内燃機関のサージタンク及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以下、上記課題を解決するための手段及びその作用効果について記載する。
請求項1に記載の発明は、内燃機関の吸気通路の一部をなすサージタンクにおいて、前記サージタンクの内壁から突出する隔壁が形成され、前記サージタンクの外側形状は機関出力特性の異なる複数の内燃機関で共通とされる一方、前記隔壁の占有体積が機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異なるものとされてなることをその要旨としている。
【0007】
同構成によれば、機関出力特性に応じて隔壁の占有体積を変更するだけでサージタンクの容積を当該内燃機関において要求される大きさとすることが可能となる。また、隔壁によってサージタンクの剛性が高められるため、吸気脈動等に起因したサージタンクの振動を抑制することができる。従って、機関出力特性の異なる複数の内燃機関に対して外側形状を変更することなく当該機関出力特性に応じた容積を確保することができるとともに振動についてもこれを好適に抑制することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、内燃機関の吸気通路の一部をなすサージタンクの製造方法において、前記サージタンクの内壁から突出する隔壁を形成し、前記サージタンクの外側形状を機関出力特性の異なる複数の内燃機関で共通とする一方、前記隔壁の占有体積を機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異ならせることによって当該サージタンクの容積を当該内燃機関のサージタンクとして要求される大きさにすることをその要旨としている。
【0009】
同構成によれば、請求項1に記載の発明の効果に準じた効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明に係るサージタンクの一実施形態について、(a)サージタンクが適用される吸気マニホルドの正面構造を示す正面図、(b)(a)のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【図2】図1のB−B線に沿った断面構造を示す断面図。
【図3】本発明に係るサージタンクの変形例について、図1(b)に対応する吸気マニホルドの断面構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1〜図3を参照して、本発明に係る内燃機関のサージタンク及びその製造方法を具体化した一実施形態について詳細に説明する。尚、本実施形態では互いに排気量の異なる2つの直列4気筒型の内燃機関について説明する。また、以降においては、2つの内燃機関のうち排気量の大きい方の内燃機関の吸気マニホルド10の構造について図1〜図3を参照して説明することとし、排気量の小さい方の内燃機関についての図示は割愛する。
【0012】
図1(a),(b)に併せ示すように、吸気マニホルド10は内燃機関の吸気通路の一部をなしており、吸気流れ方向における上流側から順に、スロットル接続部11、サージタンク20、及び4つの分岐管30が設けられている。スロットル接続部11にはスロットルバルブを収容するスロットルボディが接続される。サージタンク20には、クランクケース内のブローバイガスを導入する通路が接続されるPCV通路接続部12、及び排気通路内の排気を導入する通路が接続されるEGR通路接続部13がそれぞれ形成されている。
【0013】
サージタンク20は、スロットル接続部11から気筒の配列方向Lに沿って延びる形状をなしている。サージタンク20は、上下方向に延びる第1壁部22a、第1壁部22aの上端から内側に延びる第2壁部22b、第1壁部22aの下端から内側に延びるとともに第2壁部22bに対向する第3壁部22c、及びこれら第2壁部22b及び第3壁部22cの内側端を連結する第4壁部22dを有している。また、第4壁部22dには分岐管30が接続されている。
【0014】
分岐管30は、全体として断面略C字状をなしており、サージタンク20との接続部からサージタンク20の第3壁部22cの下側を通り、次に第1壁部22aの外側を通り、次に第2壁部22bの上側を通るように形成されている。また、分岐管30の下流側端部は吸気ポートに接続されるポート接続部14とされている。また、第1壁部22aの外側面は分岐管30の内側面の一部とされている。
【0015】
こうした吸気マニホルド10は、樹脂製の3つのピース(第1ピース41、第2ピース42、及び第3ピース43)によって分割形成されている。第1ピース41は、ポート接続部14、サージタンク20の第1壁部22a、第2壁部22b及び第3壁部22cの外側部分、及び分岐管30の外側部分を有している。第2ピース42は、第2壁部22b及び第3壁部22cの内側部分、第4壁部22d、及び分岐管30の内側部分を有している。第3ピース43は分岐管30の外側部分のうち第1壁部22aの外側面に対向する部位を有している。
【0016】
図1(b)及び図2に示すように、サージタンク20の内壁には内部に突出する3つの隔壁23a、23b、23cが形成されている。隔壁23a〜23cは、互いに隣接する分岐管30の間にそれぞれ位置している。また、隔壁23a〜23cは、上下方向においてサージタンク20の第1壁部22aの内壁全体に形成されるとともに内側に向けて延びている。具体的には、隔壁23a〜23cは第1ピース41に形成されており、第2壁部22bの内壁と第3壁部22cの内壁とを連結している。また、隔壁23a〜23cの内側端部は上側或いは下側ほど内側に位置するように円弧状をなしている。また、気筒の配列方向Lにおける3つの隔壁23a〜23cの厚さはそれぞれ同一とされている。
【0017】
次に、2つの内燃機関のうち排気量の小さい方の内燃機関の吸気マニホルドの構造について説明する。
この内燃機関の吸気マニホルドは、基本的には上記吸気マニホルド10と同一の形状を有している。すなわち、吸気マニホルドの外側形状は上記吸気マニホルド10と同一とされている。ただし、排気量の小さい方の内燃機関の吸気マニホルドでは、気筒の配列方向Lにおける3つの隔壁の厚さがそれぞれ上記隔壁23a〜23cよりも大きくされており、これら隔壁は全体として上記隔壁23a〜23cの占有体積V1よりも大きい占有体積V2を有している(V2>V1)。このことにより、各サージタンクの容積S1、S2は当該内燃機関のサージタンクとして要求される大きさにされている。
【0018】
次に、本実施形態の作用について説明する。
内燃機関の排気量に応じて隔壁23a〜23cの占有体積V1、V2を変更するだけでサージタンク20の容積S1、S2を当該内燃機関において要求される大きさとすることが可能となる。また、隔壁23a〜23cによってサージタンク20の剛性が高められるため、吸気脈動等に起因したサージタンク20の振動が抑制されるようになる。
【0019】
以上説明した本実施形態に係る内燃機関のサージタンク及びその製造方法によれば、以下に示す作用効果が得られるようになる。
(1)内燃機関の吸気マニホルド10は、サージタンク20と、サージタンク20と各気筒の吸気ポートとを接続する複数の分岐管30とを備えている。また、サージタンク20の内壁(第1壁部22a、第2壁部22b、第3壁部22c)から突出する隔壁23a〜23cが形成されている。吸気マニホルド10の外側形状は機関出力特性の異なる複数の内燃機関で共通とされる一方、隔壁23a〜23cの占有体積V1、V2が機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異なるものとされている。こうした構成によれば、機関出力特性の異なる複数の内燃機関に対して外側形状を変更することなく当該機関出力特性に応じた容積S1、S2を確保することができるとともに振動についてもこれを好適に抑制することができる。
【0020】
尚、本発明に係る内燃機関のサージタンク及びその製造方法は、上記実施形態にて例示した構成に限定されるものではなく、これを適宜変更した例えば次のような形態として実施することもできる。
【0021】
・上記実施形態では、図1(a)のA−A線に沿った断面構造において、隔壁23a〜23cの内側端部がそれぞれ一致するようにしたが、本発明はこれに限られるものではなく、これら内側端部を異なる形状としてもよい。すなわち、図3に示すように、スロットル接続部11から大きく離間している隔壁123c、123b、123aほど、その内側端部が外側に位置するようにしてもよい。このように隔壁123a〜123cの形状を設定することにより吸気マニホルド10の外側形状を変更することなくその吸気音特性を所望のものとすることが可能となる。尚、図3において図1(b)と同一の構成については同一の符号を付している。
【0022】
・上記実施形態によるように、隔壁23a〜23cの内側端部を上側或いは下側ほど内側に位置するように円弧状をなすものとすることが、隔壁23a〜23cを設けることに起因してサージタンク20内の吸気の流れが乱されることを抑制する上では望ましい。しかしながら、本発明はこれに限られるものではなく、隔壁の内側端部を直線状をなすものとしてもよい。この場合であっても、上記作用効果(1)に準じた効果を奏することはできる。
【0023】
・上記実施形態では、気筒の配列方向Lにおける3つの隔壁23a〜23cの厚さがそれぞれ同一とされるものについて例示したが、例えば気筒の配列方向において中央に位置する隔壁を他の隔壁よりも厚くしてもよい。また、これら隔壁の厚さを互いに異なるものとしてもよい。
【0024】
・上記実施形態では、隔壁23a〜23cが、互いに隣接する分岐管30の間にそれぞれ位置するようにしたが、サージタンクの剛性が確保されるのであれば、これら隔壁23a〜23cのうち1つ乃至2つを割愛することもできる。
【0025】
・上記実施形態によるように、隔壁23a〜23cが上下方向においてサージタンク20の第1壁部22aの内壁全体に形成され、第2壁部22bの内壁と第3壁部22cの内壁とを連結するものとすることがサージタンクの剛性を高める上では望ましい。しかしながら、本発明に係る隔壁の構造はこれに限定されるものではない。他に例えば、隔壁が第1壁部22aの内壁から突出するとともに、気筒の配列方向Lに沿って延びる形状を有するものとしてもよいし、隔壁が第2壁部22bの内壁から突出するとともに、気筒の配列方向Lに沿って延びる形状を有するものとしてもよい。
【0026】
・上記実施形態では、サージタンク20が分岐管30と一体として構成される吸気マニホルド10について例示したが、本発明に係るサージタンクはこれに限定されない。すなわち、サージタンクが分岐管と別体として構成されるものであってもよい。
【符号の説明】
【0027】
10…吸気マニホルド、11…スロットル接続部、12…PCV通路接続部、13…EGR通路接続部、14…ポート接続部、20…サージタンク、22a…第1壁部、22b…第2壁部、22c…第3壁部、22d…第4壁部、23a〜23c、123a〜123c…隔壁、30…分岐管、41…第1ピース、42…第2ピース、43…第3ピース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関の吸気通路の一部をなすサージタンクにおいて、
前記サージタンクの内壁から突出する隔壁が形成され、
前記サージタンクの外側形状は機関出力特性の異なる複数の内燃機関で共通とされる一方、前記隔壁の占有体積が機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異なるものとされてなる
ことを特徴とする内燃機関のサージタンク。
【請求項2】
内燃機関の吸気通路の一部をなすサージタンクの製造方法において、
前記サージタンクの内壁から突出する隔壁を形成し、
前記サージタンクの外側形状を機関出力特性の異なる複数の内燃機関で共通とする一方、前記隔壁の占有体積を機関出力特性の異なる複数の内燃機関で互いに異ならせることによって当該サージタンクの容積を当該内燃機関のサージタンクとして要求される大きさにする
ことを特徴とする内燃機関のサージタンクの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−241618(P2012−241618A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−112507(P2011−112507)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)