説明

内燃機関の吸気装置

【課題】 スロットル弁の開弁に伴う吸気騒音の発生を効果的に抑制する。
【解決手段】 内燃機関の吸気通路13に配置されたスロットル弁11の弁軸15の回転により板状の弁体16の一端側16aが吸気通路13の上流側に移動して他端側16bが吸気通路13の下流側に移動すると、弁体16の一端側16aと吸気通路13の壁面13aとの間に形成された隙間αを通過した流速の高い主流Mが、弁体16の下流の伴流Wと混合して渦が発生することで吸気騒音の原因となる。しかしながら、弁体16よりも下流側であって該弁体16の一端側16aに対向する吸気通路13の壁面13aに、吸気の流れ方向と略平行に配置され、吸気通路13の径方向内側に向かって凸形状に湾曲する第1仕切り板20の両端を固定したので、吸気通路13の壁面13aと第1仕切り板20とによって主流Mの周囲を取り囲み、主流Mが伴流Wと混合しないようにして渦の発生を抑制することで吸気騒音を効果的に低減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関のスロットル弁が回転可能な弁軸に固定されて吸気通路を開閉する板状の弁体を備え、前記弁軸の回転により前記弁体の一端側が前記吸気通路の上流側に移動して他端側が前記吸気通路の下流側に移動する内燃機関の吸気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スロットル弁の弁体の下流側の吸気通路の径方向中央部に吸気の流れ方向と略平行に円筒あるいは部分円筒を配置し、スロットル弁を開弁したときに吸気通路および弁体間に形成される開口を通過した高速の空気流を、吸気通路の内周面と前記円筒あるいは部分円筒の外周面との間隙を通過させて整流することで、他の低速の空気流との境界に渦が発生するのを防止して吸気騒音を低減するものが、下記特許文献1により公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3430840号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、スロット弁の弁軸の開弁方向への回転により、弁体の一端側は吸気通路の上流側に移動して他端側は吸気通路の下流側に移動するが、弁体の一端側(上流側)に形成される開口を通過した空気流の流速は、弁体の他端側(下流側)に形成される開口を通過した空気流の流速よりも大きく、しかも吸気通路の外周部から中心部に向かう広い領域に分布しているという知見がある。従って、スロット弁の弁体の下流において発生する吸気騒音を効果的に低減するには、弁体の一端側(上流側)に形成される開口を通過した空気流の周囲を取り囲んで整流することで渦の発生を抑制する必要がある。
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたものは、吸気通路の内周面と円筒あるいは部分円筒の外周面との間に挟まれた領域が周方向に開放しているため、高速の空気流の全体を効率的に取り囲んで渦の発生を充分に抑制することができず、吸気騒音を充分に低減できない可能性があった。
【0006】
本発明は前述の事情に鑑みてなされたもので、スロットル弁の開弁に伴う吸気騒音の発生を効果的に抑制することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載された発明によれば、内燃機関のスロットル弁が回転可能な弁軸に固定されて吸気通路を開閉する板状の弁体を備え、前記弁軸の回転により前記弁体の一端側が前記吸気通路の上流側に移動して他端側が前記吸気通路の下流側に移動する内燃機関の吸気装置において、前記弁体よりも下流側であって該弁体の前記一端側に対向する前記吸気通路の壁面に、吸気の流れ方向と略平行に配置されて前記吸気通路の径方向内側に向かって凸形状に湾曲する第1仕切り板の両端を固定したことを特徴とする内燃機関の吸気装置が提案される。
【0008】
また請求項2に記載された発明によれば、請求項1の構成に加えて、吸気の流れ方向と略平行に配置された平板状の第2仕切り板を備え、前記第2仕切り板の両端を前記吸気通路の前記壁面に固定して中央部を前記第1仕切り板の中央部に固定したことを特徴とする内燃機関の吸気装置が提案される。
【0009】
また請求項3に記載された発明によれば、請求項1または請求項2の構成に加えて、前記第1仕切り板に対向する前記吸気通路の前記壁面に、前記吸気通路の径方向外側に向かって窪む凹部を形成したことを特徴とする内燃機関の吸気装置が提案される。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の構成によれば、内燃機関の吸気通路に配置されたスロットル弁の弁軸の回転により板状の弁体の一端側が吸気通路の上流側に移動して他端側が吸気通路の下流側に移動すると、弁体の一端側と吸気通路の壁面との間に形成された隙間を通過した流速の高い主流が、弁体の下流の淀み領域の伴流と混合して渦が発生することで吸気騒音の原因となる。しかしながら、弁体よりも下流側であって該弁体の一端側に対向する吸気通路の壁面に、吸気の流れ方向と略平行に配置され、吸気通路の径方向内側に向かって凸形状に湾曲する第1仕切り板の両端を固定したので、吸気通路の壁面と第1仕切り板とによって主流の周囲を取り囲み、主流が伴流と混合しないようにして渦の発生を抑制することで吸気騒音を効果的に低減することができる。
【0011】
また請求項2の構成によれば、吸気の流れ方向と略平行に配置された平板状の第2仕切り板を備え、第2仕切り板の両端を吸気通路の壁面に固定して中央部を第1仕切り板の中央部に固定したので、第1仕切り板の剛性を第2仕切り板により高めて第1仕切り板の振動による二次的な騒音の発生を防止できるだけでなく、第1仕切り板の外側に漏れた主流の一部を第2仕切り板で囲んで吸気騒音を一層効果的に低減することができる。
【0012】
また請求項3の構成によれば、第1仕切り板に対向する吸気通路の壁面に吸気通路の径方向外側に向かって窪む凹部を形成したので、弁体の一端側に形成される隙間の下流の流路断面積を凹部の分だけ拡大して主流の流速を低下させることで、その主流が第1仕切り板の下流で伴流と合流するときの速度差を小さくして吸気騒音を一層効果的に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】内燃機関の吸気装置の縦断面図。(第1の実施の形態)
【図2】図1の2−2線断面図。(第1の実施の形態)
【図3】内燃機関の吸気装置の縦断面図。(第2の実施の形態)
【図4】図3の4−4線断面図。(第2の実施の形態)
【図5】図2および図4に対応する図。(第3の実施の形態)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1および図2に基づいて本発明の第1の実施の形態を説明する。
【0015】
内燃機関の燃焼室に吸気を供給する吸気装置は、上流側のスロットル弁11と下流側の吸気管12とを備える。スロットル弁11の上流側には図示せぬエアクリーナが接続され、吸気管12の下流側には図示せぬシリンダヘッドが接続される。スロットル弁11および吸気管12の内部には吸気が流れる1本の吸気通路13が形成される。
【0016】
スロットル弁11は、円形断面の吸気通路13が貫通するスロットルボディ14と、吸気通路13と交差するように設けられた弁軸15と、弁軸15に固定された円板状の弁体16とを備えており、弁軸15は電動アクチュエータ17により所定の角度範囲で回転駆動される。スロットルボディ14と吸気管12とは、それらの対向端部に形成したフランジ14a,12aをOリング18を挟んでボルト19…で締結することで結合される。
【0017】
弁体16が閉弁状態にあるとき、弁体16の外周部は吸気通路13の内周面に密着して吸気の流れが完全に塞き止められる。電動アクチュエータ17により弁軸15を駆動することで弁体16が矢印A方向に回転すると、弁体16の一端側16aは吸気の流れ方向の上流側に移動し、弁体16の他端側16bは吸気の流れ方向の下流側に移動する。
【0018】
弁体16の一端側16aと吸気通路13の内周面との間に形成される隙間αと、弁体16の他端側16bと吸気通路13の内周面との間に形成される隙間βとは同じ大きさであるが、弁体16の一端側16aの隙間αを通過する吸気の流量は、弁体16の他端側16bの隙間βを通過する吸気の流量よりも多くなる。その結果、隙間αの下流に発生する吸気の流れ(以下、主流Mという)の流速は、隙間βの下流に発生する吸気の流れの流速よりも大きくなり、この主流Mが吸気騒音の主要な原因となる。
【0019】
吸気管12の吸気通路13のうち、弁体16の一端側16aに対向する壁面13aに、つまり吸気管12の吸気通路13の図中下半部の壁面13aに、吸気通路13の径方向内側に向けて凸に突出する半割円筒状の第1仕切り板20の両端が固定される。第1仕切り板20は吸気通路13と平行に配置される。つまり、第1仕切り板20の母線の方向は吸気通路13の軸線と平行である。この第1仕切り板20により、吸気通路13の壁面13aとの間に吸気の流れ方向に延びる第1流路21が形成される。
【0020】
次に、上記構成を備えた本発明の実施の形態の作用を説明する。
【0021】
スロットル弁11が閉弁して弁体16が吸気通路13を完全に塞いだ状態から電動アクチュエータ17が作動して弁軸15が回転すると、弁体16の一端側16aが上流側に移動して他端側16bが下流側16bに移動し、弁体16の一端側16aと吸気通路13の内周面との間に形成される隙間αと、弁体16の他端側16bと吸気通路13の内周面との間に形成される隙間βとを通過した吸気が吸気管12に流入する。このとき、隙間αを通過した吸気騒音の原因となる流速の大きい主流Mの大部分は、吸気通路13の下側の壁面13aと第1仕切り板20との間に形成された筒状の第1流路21に閉じ込められ、その上方の淀み領域の低速の吸気(以下、伴流Wという)との混合が阻止されるため、流速の異なる境界部に渦(図1の破線矢印参照)が発生するのを最小限に抑えて吸気騒音を抑制することができる。
【0022】
このように、本実施の形態によれば、吸気通路13の下側の壁面13aと第1仕切り板20との間に形成された第1流路21は、吸気の流れ方向に直交する断面が閉じているため(図2参照)、主流Mと伴流Wとを確実に分離して吸気騒音の抑制効果を高めることができる。
【0023】
次に、図3および図4に基づいて本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0024】
第1の実施の形態では、第1仕切り板20が設けられた吸気管12の吸気通路13の壁面13aが円形断面であるが、第2の実施の形態では第1仕切り板20の下側に対向する吸気通路13の壁面13aに径方向外側に窪む溝状の凹部13bが形成されている。第1仕切り板20および凹部13bは協働して断面円形の第1流路21を構成しており、凹部13bを形成した分だけ、主流Mが流れる第1流路21の断面積が増加する。
【0025】
この流路断面積の増加によって主流Mの流速が低下するため、第1仕切り板20の下流端で主流Mおよび伴流Wが合流する部分に発生する渦を抑制して吸気騒音を一層効果的に抑制することができる。
【0026】
次に、図5に基づいて本発明の第3の実施の形態を説明する。
【0027】
第3の実施の形態は、吸気通路13に凹部13bを設けた第2の実施の形態の変形であって、第2の実施の形態では第1仕切り板20は断面円弧状であるのに対し、第3の実施の形態は第1仕切り板20が断面台形状に形成される。更に、第1仕切り板20の上方に配置された平板状の第2仕切り板22は、その中央部が第1仕切り板20の中央部に接続され、その両端部が吸気通路13の壁面13aに接続される。
【0028】
その結果、第1仕切り板20の剛性が第2仕切り板22によって高められるため、空気流によって第1仕切り板20が振動するのを防止し、第1仕切り板20の振動により二次的な吸気騒音が発生するのを抑制することができる。また第1仕切り板20と第2仕切り板22と吸気通路13の壁面13aとの間に更に二つの断面三角形状の第2流路23,23が構成されるため、第1仕切り板20と吸気通路13の壁面13aとの間に形成された第1流路21から漏れた主流Mを二つの第2流路23,23で取り囲み、主流Mと伴流Wとを更に確実に分離して吸気騒音の抑制効果を高めることができる。
【0029】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。
【0030】
例えば、第1仕切り板20は第1の実施の形態の円弧状断面のもの、あるいは第3の実施の形態の台形状断面のものに限定されず、吸気通路13の径方向内側に向かって凸形状に湾曲するものであれば、三角形状等の他の断面形状のものであっても良い。
【0031】
また吸気通路13の壁面13aの凹部13bの断面形状は、実施の形態の円弧状のものに限定されず、吸気通路13の壁面13aから径方向外側に向かって窪むものであれば良い。
【符号の説明】
【0032】
11 スロットル弁
13 吸気通路
13a 吸気通路の壁面
13b 吸気通路の凹部
15 弁軸
16 弁体
16a 弁体の一端側
16b 弁体の他端側
20 第1仕切り板
22 第2仕切り板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関のスロットル弁(11)が回転可能な弁軸(15)に固定されて吸気通路(13)を開閉する板状の弁体(16)を備え、前記弁軸(15)の回転により前記弁体(16)の一端側(16a)が前記吸気通路(13)の上流側に移動して他端側(16b)が前記吸気通路(13)の下流側に移動する内燃機関の吸気装置において、
前記弁体(16)よりも下流側であって該弁体(16)の前記一端側(16a)に対向する前記吸気通路(13)の壁面(13a)に、吸気の流れ方向と略平行に配置されて前記吸気通路(13)の径方向内側に向かって凸形状に湾曲する第1仕切り板(20)の両端を固定したことを特徴とする内燃機関の吸気装置。
【請求項2】
吸気の流れ方向と略平行に配置された平板状の第2仕切り板(22)を備え、前記第2仕切り板(22)の両端を前記吸気通路(13)の前記壁面(13a)に固定して中央部を前記第1仕切り板(20)の中央部に固定したことを特徴とする、請求項1に記載の内燃機関の吸気装置。
【請求項3】
前記第1仕切り板(20)に対向する前記吸気通路(13)の前記壁面(13a)に、前記吸気通路(13)の径方向外側に向かって窪む凹部(13b)を形成したことを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の内燃機関の吸気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−87730(P2013−87730A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−230836(P2011−230836)
【出願日】平成23年10月20日(2011.10.20)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)