説明

内燃機関用プラズマスパークプラグ

本発明は、自動車の内燃機関用の、基本的に細長いスパークプラグ(1)に関し、本スパークプラグは、二つの同軸の電極(2、3)を具備する本質的に容量性(C)の下部と、中心のマンドレル(8)、マンドレル(8)の周囲の同軸の巻線(5)、及び電磁気の防護具として機能する外部の管状のケーシング(61)を具備する本質的に誘導性(I)の上部と、半径方向上でケーシング(61)と巻線(5)の間に配置される絶縁体(7)とを備える。本発明は、本質的に誘導性の上部(I)が、半径方向上で絶縁体(7)と外部ケーシング(61)の間に配置される、電磁気の防護具である第二の内部ケーシング(62)を具備することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、プラグの電極間の電気スパークによる内燃機関の点火のために特に用いられる、プラズマ生成プラグに関する。
具体的には、本発明は、絶縁体により分離された二つのプラズマ生成電極を具備する内燃機関用スパークプラグに関し、当該二つの電極はそれぞれ、絶縁体を囲む外部シェルと、絶縁体の中心穴部に収容される中心電極とを形成している。
【0002】
公報FR2859830、FR2859569、FR2859831によれば、多重スパークプラグは、例えば、薄いチューブ、薄い蒸着層、或いは硬化させてメッキしたプラスチック膜の形態に製造できる金属ケーシングにより実現された電磁シールドを有する。
この電磁シールドは、二つの部分、即ち電気シールドと磁気シールドとを具備する。電気シールドは、巻線によって形成される電界に起因する干渉からプラグの環境を保護することができる。磁気シールドは、磁界を確実にケーシング内に保持することができる。電気シールド効果に対応する電流の移動がケーシングの外面に限定される一方で、磁気シールドに連動する電流の移動がケーシングの内面に限定される。加えて、マンドレルとケーシングの間を絶縁するために、絶縁体は通常特定の物理化学特性を有する材料から作製され、それに対応して、この材料の温度に応じた膨張係数は非常に大きくなる場合がある。
【0003】
従って、マンドレルとケーシングの間で電磁シールドと絶縁の両方を調和させることは難しい。
【0004】
これらの欠点を軽減するために、本発明の目的は、マンドレルとケーシングの間を絶縁させながら、電磁シールドを提供することである。
【0005】
従って、本発明は、上部の本質的に誘導性の部分が、半径方向に沿って絶縁体と外部ケーシングの間に配置される、第二の内部電磁シールドケーシングを具備することを特徴とする、前述の種類のプラグを提案する。
本発明の他の特徴によれば、内部ケーシングの内面は、絶縁体の外面に隣接する。
【0006】
本発明の他の特徴によれば、内部ケーシングの厚みは一定である。
本発明の他の特徴によれば、外部ケーシングの厚みは、電流ラインが外部ケーシングを貫通する深さに対応するスキンの厚みと少なくとも等しい。
【0007】
本発明の他の特徴によれば、外部ケーシングの内面は円形の断面を有する円筒状であり、内部ケーシングの外面は多角形の断面を有する円筒状であり、内部ケーシングは、内部ケーシングの軸方向に沿った尾根部分が外部ケーシングの内面と電気的に接触するように設計される。
本発明の他の特徴によれば、マンドレルは円筒状である。
【0008】
本発明の他の特徴によれば、外部ケーシングは銅等の導電性材料から選択される。
本発明の他の特徴によれば、内部ケーシングは銅等の導電性材料から選択される。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、外部ケーシングの材料と寸法は、外部ケーシングが少なくとも巻線によって形作される電界に対するシールドを形成するように選択される。
本発明の他の特徴によれば、内部ケーシングの材料と寸法は、内部ケーシングが電磁シールドを形成するように選択される。
【0010】
本発明の他の特徴及び利点は、添付図面を参照する例示的実施形態の説明により明らかになる。
同一要素又は類似要素は、同じ参照番号で示される。
【実施例】
【0011】
図1に示すように、全体的にほぼ円筒状の高周波プラズマプラグ1は、主として、底部の本質的に容量性の部分Cと、上部の本質的に誘導性の部分Iを具備し、部分CとIは、基本的に細長い形状を有し、直列に接続され、且つ共通の縦軸Zを有している。
本質的に容量性の部分Cは、特に、接地され、中心電極3を囲むように設計されるシェル2を具備し、中心電極3はほぼ円筒状でZ軸を有し、高電圧電極の役割を担う。「絶縁体」4と呼ばれる電気的絶縁性ブロックが、シェル2と中心電極3の間に設置されており、絶縁体4は電極2と3の間にスパークを導くように構成されている。従来技術で周知の方法で、プラグ1が取り付けられる内燃機関の円筒状ヘッドに最も近いシェル2の下部の外表面は、円筒状ヘッドにプラグ1を取り付け、保持し、締め付けるのに適した形状を有する(例えば、非限定的に、図1に示すネジ部)。
【0012】
図2及び図3に示すように、プラグ1の本質的に誘導性の部分Iは、順に、巻線5、絶縁体7、内部ケーシング62、及び外部ケーシング61によって囲まれる中心マンドレル8を具備する。
マンドレル8は、円形断面を持つ円筒状であり、その軸はプラグ1のZ軸と実質的に同じである。マンドレル8は、絶縁性且つ非磁気性の材料から作製されている。
【0013】
巻線5は、最初の上部巻線512から最後の底部巻線513まで中心マンドレル8を囲む巻線部51から成る。図1に示すように、最初の上部巻線512はコネクタ12に接続し、最後の底部巻線513は中心電極3の内部末端に適切な手段14を介して接続している。
巻線5を囲む絶縁体7は、多角形の断面を有する円筒状であり、その材料には磁気損失の低い材料が選択されている。この特性を満足する材料のなかにシリコン族があるが、その主な欠点は、0.0001K−1のオーダーの大きな熱膨張係数を持つことである。
【0014】
図4に示すように、内部ケーシング62は、内面622と外面621を有する。内部ケーシング62は、多角形の断面を有する円筒状である。とはいえ、外面621だけを、多角形の断面を有する円筒状に選択してもよい。内部ケーシング62は、内部ケーシング62の内面622が絶縁体7の外面71に隣接するように作製されている。内部ケーシング62の材料には、このプラグ1の動作に要求される、1MHz〜10MHzに位置する周波数領域で導電性の材料が選択される。内部ケーシング62は、異なる金属材料、例えば、銅、又は金属塩で外面が覆われる様々な材料、例えば電気メッキしたニッケルの堆積物から作製することもできる。このケーシング62の厚みは、一定且つ、低周波での導電性を保証するのに十分に薄く選択される。例えば、内部ケーシング62は、5〜10μmの銅製に選択することができる。
【0015】
図4に示すように、外部ケーシング61は、外面611と内面612を有する。外部ケーシング61は、円形の断面を有する円筒状である。しかし、その内面612だけを円形の断面を有する円筒状に選択してもよい。このケーシング61には、電磁シールドに伴う電流の移動を保証するような材料及び設計が選択される。この外部ケーシング61の材料には、このプラグ1の動作に要求される、1MHz〜10MHzに位置する周波数領域で導電性の材料が選択される。外部ケーシング61は、導電性の高い材料(6×10S/mの銅等)、又は導電性の低い材料(1×10S/mのスチール等)から作製し、外面を銅又は銀等の導電性の層により覆ってもよい。このケーシング61の厚みは、少なくとも、このプラグ1の動作に要求される1MHz〜10MHzに位置する周波数領域において、電流ラインが導体を貫通する深さに対応するスキンの厚みより大きい。例えば、外部ケーシング61が銅製である場合、その厚みは少なくとも100μmである。内部ケーシング62は、その軸方向に沿った尾根部分613が、外部ケーシング61の内面612と電気的に接触するように設計されている。外部ケーシング61の外面611の表面粗さの欠陥は、二つのケーシング61、62の電気接触に対する障壁にならない。具体的には、尾根部分613に沿って、尾根部分613の数箇所9に電気接触部を設けることができる。
【0016】
加えて、内部ケーシング62と外部ケーシング61の間に形成された空のゾーンにより、高い熱膨張係数を有する絶縁体7が膨張しながら、空のゾーンの一部又は全部を満たすほぼ円筒状の外部形状に集中することが可能となる。
このような実施形態では電磁シールドが設けられる。
【0017】
具体的には、図5に示すように、磁気シールドに伴う電流10は、主に外部ケーシング61の内面612上を移動する。電気シールドに伴う電流は、主に外部ケーシング61の外面611上を移動する。電流は、特に二つの成分、即ち巻線5の末端に位置するコンデンサの荷電に対応する第一の成分111と、巻線5によって形成される電界をブロックするために必要な電流に対応する第二の成分112とを含む。第一に、この第二の成分112は、外部ケーシング61の周囲と、内部ケーシング62と外部ケーシング61の間の境界の接点9上とを移動する。第二に、第二の成分112は、均等に拡散して巻線5によって形成される電界をシールドするように、内部ケーシング62内を移動する。
更に、プラグ1の本質的に容量性の部分Cと本質的に誘導性の部分Iの間の接続を実現するトルクは、外部ケーシング61を経由して伝わる。従って、外部ケーシング61の厚みは、この締め付けトルクを伝えるように設計されている。この種類の伝達の主な利点は、レバーアーム効果が最適となる位置で、可能な限り大きな半径に機械的応力が伝えられることにより、材料自体に掛かる機械的応力が最小化されることである。
【0018】
従って、ケーシング61、62は、電磁シールドを効果的に提供しながら、膨張係数の大きい材料からなる絶縁体7の機能を満たす。
本発明は、一実施例として説明及び図示した実施形態に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】従来技術による高周波プラズマプラグのZ軸に沿った概略断面図である。
【図2】本発明による二つのケーシングを具備するプラグの誘導性の部分の概略分解図である。
【図3】本発明による二つのケーシングを具備するプラグの誘導性の部分の概略透視図である。
【図4】本発明による図3の軸4−4’に沿った概略断面図である。
【図5】電磁界に伴う電流の移動を示す、本発明による図3の軸5−5’に沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の内燃機関用の、全体的に細長いスパークプラグ(1)であって、
− 二つの同軸の電極(2、3)を具備する底部の本質的に容量性の部分(C)と、
− 上部の本質的に誘導性の部分(I)であって、
− 中心マンドレル(8)、
− マンドレル(8)の周囲の同軸の巻線(5)、
− 電磁シールド機能を果たす外部の管状ケーシング(61)、及び
− ケーシング(61)と巻線(5)の間に配置された絶縁体(7)
を備えた誘導性の部分(I)と
を具備し、上部の本質的に誘導性の部分(I)が、絶縁体(7)と外部ケーシング(61)の間に配置された、第二の内部電磁シールドケーシング(62)を具備することを特徴とする、スパークプラグ(1)。
【請求項2】
内部ケーシング(62)の内面(622)が絶縁体(7)の外面(71)に隣接することを特徴とする、請求項1に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項3】
内部ケーシング(62)の厚みが一定であることを特徴とする、請求項1又は2に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項4】
外部ケーシング(61)の厚みが、電流ラインが外部ケーシング(61)を貫通する深さに対応するスキンの厚みと少なくとも等しいことを特徴とする、請求項1ないし3の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項5】
− 外部ケーシング(61)の内面(612)が円形の断面を有する円筒状であること、
− 内部ケーシング(62)の外面(621)が多角形の断面を有する円筒状であること、及び
− 内部ケーシング(62)が、内部ケーシング(62)の軸方向に沿った尾根部分(623)が外部ケーシング(61)の内面(622)と電気的に接触するように設計されていること
を特徴とする、請求項1ないし4の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項6】
マンドレル(8)が全体的に円筒状であることを特徴とする、請求項1ないし5の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項7】
外部ケーシング(61)が銅等の導電性の材料から選択されることを特徴とする、請求項1ないし6の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項8】
内部ケーシング(62)が銅等の導電性の材料から選択されることを特徴とする、請求項1ないし7の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項9】
外部ケーシング(61)の材料及び寸法が、外部ケーシング(61)が少なくとも巻線(5)によって形成される電界に対するシールドを形成するように選択されることを特徴とする、請求項1ないし8の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。
【請求項10】
内部ケーシング(62)の材料及び寸法が、内部ケーシング(62)が電磁シールドを形成するように選択されることを特徴とする、請求項1ないし9の何れか一項に記載のスパークプラグ(1)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2009−506488(P2009−506488A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527486(P2008−527486)
【出願日】平成18年5月29日(2006.5.29)
【国際出願番号】PCT/FR2006/050486
【国際公開番号】WO2007/023234
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(503041797)ルノー・エス・アー・エス (286)
【Fターム(参考)】