説明

内燃機関用点火コイル

【課題】湾曲したプラグホールにおいて、振動によるスプリングの脱落が無く、また、絶縁管の磨耗によるリーク不具合が発生しない構造の内燃機関点火コイルを提供する。
【解決手段】内燃機関用点火コイル10において、点火コイル本体11と、可撓性を有し導電部材からなる軸部13を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成し、中央の中継部14bの両側に点火コイル本体10に装着される上部ソケット14aと点火プラグ7に装着される下部ソケット14cを設けるとともに、両ソケット14a,14b内に同軸にスプリング端子15a,15bを設けた高圧ジョイント12と、を備えるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば自動車エンジンの点火プラグにおいて火花放電を発生させるために高電圧を供給するモールド型の内燃機関用点火コイルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、一次コイルと、二次コイルと、この二次コイルと一次コイルとを磁気的に結合する鉄心とを有し、二次コイルに発生した高電圧をエンジンに取り付けられた点火プラグに供給する高圧供給手段を絶縁ケースと点火コイル間に配置し、一次コイルと二次コイルと鉄心とを、絶縁ケースに収容し、熱硬化性樹脂で注型硬化されたモールド型の内燃機関用点火コイルが知られている。
【0003】
例えば、特開平6−251963公報には、一次コイルと二次コイルと鉄心とを、絶縁ケースに収容してなるイグニッションコイルの高圧端子と点火プラグの頭部端子との間にスプリングを配し、このスプリングの周りをブーツと呼ばれるシリコンゴム製の中空円筒部材で覆ったイグニッションコイル装置が記載されている。(特許文献1参照)
【0004】
また、特開平8−213258公報には、絶縁ケースの収容室内に収容される円筒状のトランス部と、このトランス部の一方の端部に位置しトランス部の一次電流を断続する制御回路部と、トランス部の他方の端部に位置するスプリングがトランス部の二次電圧を点火プラグに供給する接続部とを備えた内燃機関用点火コイルが記載されている。(特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−251963号公報
【特許文献2】特開平8−213258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の内燃機関点火コイルでは、スプリングの脱落による接続不良がしばしば発生する。また、湾曲したプラグホールにおいては、振動により、絶縁管の内部のスプリングとの接触部が磨耗、亀裂等により、スプリングを流れる電流が途中から漏れて点火プラグでの火花放電が不安定になる等のリーク不具合が発生するという問題があり改善が望まれていた。
【0007】
本発明は、上記した問題を解決するために提案されたもので、湾曲したプラグホールにおいて、振動によるスプリングの脱落が無く、また、絶縁管の磨耗によるリーク不具合が発生しない構造の内燃機関点火コイルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために請求項1に記載の発明は、一次コイル及び二次コイルをそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン及び二次コイルボビンを磁気的に結合する鉄心と、前記二次コイルからの高電圧を外部に出力する高圧端子と、これらを収納する絶縁ケースにより構成された点火コイル本体と、可撓性を有し導電部材からなる軸部を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成し、前記高圧端子と点火プラグとを電気的に接続し、中央の中継部の両側に前記点火コイル本体に装着される上部ソケットと前記点火プラグに装着される下部ソケットを設けるとともに、前記両ソケット内に同軸にスプリング端子を設けた高圧ジョイントと、を備えたことを特徴とする内燃機関用点火コイルである。
【0009】
また、請求項2に記載の発明は、前記高圧ジョイントにおいて、前記軸部はコイルスプリングであって、その両端が前記各スプリング端子を構成していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイルである。
【0010】
また、請求項3に記載の発明は、前記高圧ジョイントにおいて、前記軸部は、前記各スプリング端子の各内端を導電線で接続した複合導電部材であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイルである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の内燃機関用点火コイルによれば、湾曲したプラグホールにおいて、振動によるスプリングの脱落が無く、また、外装部は、磨耗によるリーク不具合が発生しないので、点火プラグでの火花放電が安定して行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(a)は、本発明の実施例1に係る内燃機関用点火コイルの概略断面図、(b)は、その使用例の概略断面図である。
【図2】(a)は、本発明の実施例2に係る内燃機関用点火コイルの概略断面図、(b)は、その使用例の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【実施例1】
【0014】
図1(a)は、本発明の実施例1に係る内燃機関用点火コイルの概略断面図、図1(b)は、その使用例の概略断面図である。
【0015】
図1(a),図1(b)において、内燃機関用点火コイル10は、点火コイル本体11と、高圧ジョイント12とから構成されている。
【0016】
点火コイル本体11は、図示していないが、一次コイル及び二次コイルをそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン及び二次コイルボビンを磁気的に結合する鉄心とを絶縁ケース内に収容して、絶縁ケースの内部に絶縁樹脂を充填固化して形成され、外部に二次コイルからの高電圧を外部に出力する高圧端子6が設けられている。
【0017】
高圧ジョイント12は、可撓性を有し導電部材からなる軸部13を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成したもので、外装部は、中央の中継部14bと、中継部14bの上側に設けられ点火コイル本体11に装着される上部ソケット14aと、中継部14bの下側に設けられ前記点火プラグ7に装着される下部ソケット14cから構成されている。両ソケット14a,14cは筒状であって、上部ソケット14aの筒内に、周壁から離反してスプリング端子15aが同軸に立設され、下部ソケット14cの筒内に、周壁から離反してスプリング端子15bが同軸に立設されている。
【0018】
高圧ジョイント12は、両ソケット14a,14cが点火コイル本体11の高圧筒部11aと点火プラグ7とに装着されて、各スプリング端子15a,15bがそれぞれ高圧端子6、点火プラグ7の頂部端子7aに当設して、高圧端子6と頂部端子7aとが電気的に接続される。
【0019】
実施例1は、コイルスプリング15からなる軸部13を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成し、コイルスプリングの両端が上部ソケット14aと下部ソケット14cの各筒内に突出して、上部ソケット14aと下部ソケット14cの各筒内において、それぞれ周壁から離反して同軸に立設し、スプリング端子15a,15bを構成している。
【実施例2】
【0020】
図2(a)は、本発明の実施例2に係る内燃機関用点火コイルの概略断面図、図2(b)は、その使用例の概略断面図である。
【0021】
実施例2は、実施例1と軸部13の構成が異なる他は、実施例1と同じであるので、ここでは、実施例2における軸部13の構成についてのみ説明する。
【0022】
図2(a),図1(b)において、軸部13は、各スプリング端子15a,15bがコイルスプリングで形成され、各スプリング端子15a,15bの内端を導電線16で接続した複合導電部材17で構成されている。この実施例2においても、各ソケット14a,14cが点火コイル本体11の高圧筒部11aと点火プラグ7とに装着されて、各スプリング端子15a,15bがそれぞれ高圧端子6、点火プラグ7の頂部端子7aに当設して、高圧端子6と頂部端子7aとが電気的に接続される。
【0023】
このように本発明の高圧ジョイントは、コイルスプリング、または、コイルスプリングと導電線の複合導電部材により軸部を形成し、この軸部を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成したので、湾曲したプラグホールにおいて、振動によるスプリングの脱落が無く、また、外装部が多少磨耗してもリーク不具合が発生しないので、点火プラグでの火花放電が安定して行われるものである。
【符号の説明】
【0024】
6 高圧端子
7 点火プラグ
7a 頂部端子
10 内燃機関用点火コイル
11 点火コイル本体
12 高圧ジョイント
13 軸部
14a 上部ソケット
14b 中継部
14c 下部ソケット
15 コイルスプリング
15a,15b スプリング端子
16 導電線
17 複合導電部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一次コイル及び二次コイルをそれぞれ巻回し、同心状に配設した筒状の一次コイルボビン及び二次コイルボビンを磁気的に結合する鉄心と、前記二次コイルからの高電圧を外部に出力する高圧端子と、これらを収納する絶縁ケースにより構成された点火コイル本体と、
可撓性を有し導電部材からなる軸部を絶縁性の塑性材で一体成形して外装部を構成し、前記高圧端子と点火プラグとを電気的に接続し、中央の中継部の両側に前記点火コイル本体に装着される上部ソケットと前記点火プラグに装着される下部ソケットを設けるとともに、前記両ソケット内に同軸にスプリング端子を設けた高圧ジョイントと、
を備えたことを特徴とする内燃機関用点火コイル。
【請求項2】
前記高圧ジョイントにおいて、前記軸部はコイルスプリングであって、その両端が前記各スプリング端子を構成していることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。
【請求項3】
前記高圧ジョイントにおいて、前記軸部は、前記各スプリング端子の各内端を導電線で接続した複合導電部材であることを特徴とする請求項1に記載の内燃機関用点火コイル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−134857(P2011−134857A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292423(P2009−292423)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000174426)阪神エレクトリック株式会社 (291)