説明

内燃機関

クランクケースと、クランクシャフトと、前記クランクケースの内部に前記クランクシャフトを支承するための少なくとも一つのクランクシャフト支承装置とを具備した内燃機関において、前記少なくとも一つのクランクシャフト支承装置に、少なくとも二つの別個の給油口が備えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クランクケースと、クランクシャフトと、クランクケースの内部にクランクシャフトを支承するための、潤滑剤を圧送可能な少なくとも一つのクランクシャフト支承装置とを具備した内燃機関に関する。
【背景技術】
【0002】
公知の内燃機関では、内燃機関の運転時にそれぞれのクランクシャフト支承装置に一つの給油口だけから潤滑剤が圧送されるようになっている。潤滑剤がこのように片側だけから圧送されることにより、不利な動的効果を生じるが、それによって反対側の軸受領域に向かう潤滑剤流にも、またコンロッド軸受に向かう潤滑剤流にも、著しい制約を来している。その結果、クランクシャフト支承装置まわりの潤滑剤の量が不足して、過度の加熱を来すことがある。ほかにも潤滑剤圧力はクランクシャフト支承装置で大幅に降下するために、後続の給油対象である軸受地点の潤滑剤圧力は、一段と低いものとならざるを得なくなっている。このため、極めてハイグレードの、またそれ故に高価格である軸受材料を使用しなければならないケースが多々ある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
したがって本発明の課題は、内燃機関の運転時に、より大量の潤滑剤がクランクシャフト支承装置を通り流れられるようにするとともに、クランクシャフト支承装置まわりでの潤滑剤圧力の望まれざる大幅な降下を回避することができる、またそれ故により手頃な価格の軸受材料の使用を可能とする、冒頭に記した種類の内燃機関を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
この課題は、請求項1の各特徴を具備した内燃機関により、少なくとも一つのクランクシャフト支承装置に少なくとも二つの別個の給油口を備えることによって解決される。
本発明の非常に好ましい実施形態および展開構成例は、従属請求項の対象となっている。
【0005】
少なくとも二つの別個の給油口は、クランクシャフト支承装置の周囲に少なくともほぼ均等に分散して配置されると好適である。それにより内燃機関の運転時には、一様および/または対称に広がる油膜が達成される。
【0006】
少なくとも一つのクランクシャフト支承装置が少なくとも二つの軸受胴からなる内燃機関では、好ましい実施形態によると、それぞれの軸受胴に給油口が一つずつ付設されている。そこでは賢明にも、この給油口が、クランクシャフト周方向で軸受胴の少なくともほぼ中央に配置されている。
【0007】
それぞれの給油口に対して油路が一つずつ付設されていると非常に有利であると見做される。それにより、各給油口からの独立したおよび/または十分な潤滑剤の供給が保証されることになる。
【0008】
クランクケースが一つの上側部材と一つの下側部材とからなる内燃機関では、クランクケース上側部材に、少なくとも一つのクランクシャフト支承装置の一方の給油口に潤滑剤を圧送するための少なくとも一つの油路を備え、これと同じクランクシャフト支承装置の別の給油口に潤滑剤を圧送するための少なくとも一つの油路をクランクケース下側部材に備えると、極めて得策であることが判明している。
【0009】
以下では、クランクシャフトと、潤滑剤を圧送可能なクランクシャフト支承装置とを具備した内燃機関のクランクケースを、概略的かつ例示的に示す唯一の図を参照しながら、本発明の非常に好ましい実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】内燃機関の切片を示す図であり、右の図は、内燃機関をクランクシャフト106に沿って切り取ったときの縦断面図B−B、左の図は、右の図の線A−Aに沿って切り取ったときの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
詳細には図示されない内燃機関はクランクケース100を有している。クランクケース100は、水平方向に下側部材102と上側部材104とに分割される。図示の例においては分割線がクランクシャフトの軸線の高さに位置している。クランクケース100の内部にはクランクシャフト106が回転自在に軸受けされている。
【0012】
クランクシャフト106は、クランクシャフト106をクランクケース100の内部に軸受けするために利用されるクランクジャーナル124、ならびに、クランクジャーナル124に対して軸線をずらして配置される、コンロッド134、136大端部を軸受けするために利用されるクランクピン126、128を有している。図示の切片には、一つのクランクジャーナル124と二つのクランクピン126、128が示されている。しかし内燃機関は、それ以外にも、クランクケース100の内部に軸受けされるさらに幾つかのクランクジャーナルと、場合によってはコンロッドとの接続用のさらに幾つかのクランクピンとを有している。この内燃機関は、例えば、直列4気筒エンジン、2気筒ボクサーエンジン、または自動二輪において使用される単気筒エンジンである。
【0013】
クランクシャフト106をそれぞれのクランクジャーナル124のところで支承するために、クランクケース100にはクランクシャフト支承装置108が構成されている。このクランクシャフト支承装置108は、すべり軸受である。そこではクランクケース下側部材102が軸受下側部材を、クランクケース上側部材104が軸受上側部材を形成している。クランクケース下側部材102および上側部材104は、特にクランクシャフト支承装置108の領域で互いにボルト締結されている。クランクピン124とクランクケース100との間には軸受胴110、112が配置されるが、そこでは軸受胴110がクランクケース下側部材102に対して配置され、軸受胴112がクランクケース上側部材104に対して配置されている。
【0014】
内燃機関の運転時には互いに対して相対運動を行うようになっているそれぞれの軸受表面を隔離するために、クランクシャフト支承装置108の強制潤滑が行われる。潤滑剤圧力は、潤滑剤ポンプによりもたらされ、潤滑剤としては、添加剤を加えた鉱油または合成油が使用される。
【0015】
潤滑剤を供給するために別個の給油口が備えられるが、そこではクランクケース下側部材102および軸受胴110に対して給油口113が配置され、クランクケース上側部材104および軸受胴112に対して給油口115が配置されている。軸受胴110、112はいずれも、潤滑剤を通すためのボアを一つずつ有している。この潤滑剤を通すボアは、クランクシャフト周方向およびクランクシャフト軸方向で軸受胴の中央に配置されている。給油口113、115は、クランクシャフト支承装置108の周囲に均等に分散して配置される、すなわち図示の例においては二つの給油口113、115が互いに対向している。
【0016】
給油口113に潤滑剤を供給するために、クランクケース下側部材102には、特にA−A断面図から明らかであるように、鉛直方向に延びる一つの油路114が備えられている。給油口115に潤滑剤を供給するために、クランクケース上側部材104には、特にA−A断面図から明らかであるように、斜めに延びる一つの油路116が備えられている。
【0017】
内燃機関の運転時には、これらの油路114、116から潤滑剤が給油口113、115に、ひいては互いに対して相対運動を行うそれぞれの軸受表面の間に圧送されて、そこに流体潤滑膜が形成されることによって、クランクシャフト支承装置108の潤滑が行われる。
【0018】
クランクシャフトは、クランクシャフト支承装置108の領域に、クランクジャーナル124に対して横向きに配設される、一本の中央油路122に開口している油路118、120を有している。内燃機関の運転時には、潤滑剤がクランクシャフト支承装置108からこれらの油路118、120を通り中央油路122に排出される。この油路122は、特にB−B断面図から明らかであるように、クランクシャフトの内部をクランクピン126からクランクジャーナル124を通り抜けクランクピン128の内部へと、斜め上方に延びている。この油路122からは、図示の例においてはコンロッド134、136の、いずれも二つの軸受胴からなる軸受130、132に、潤滑剤を圧送することができる。給油のために、クランクピン126、128に対して横向きに油路138が配設されている。
【0019】
クランクシャフト支承装置108への両側の軸受胴110、112からの潤滑剤供給によって、潤滑剤の連続供給が保証される。それによりコンロッド軸受130、132への潤滑剤の供給も大幅に改善されるが、これは、これらの軸受地点の潤滑性および冷却性に有利に作用する。上述の各対策により、場合によっては安価な軸受材料を起用することができる。
【0020】
図示される上記で説明した例は、本発明の一般思想を実現するための考えられる幾つかの実施例の内の一つにしか過ぎない。このため、本発明が実現されることになる実施例には、図示される上記で説明した実施例の各特徴をそれぞれ単独で備えたものも、また図示される上記で説明した実施例のそれ以外の特徴とは別の一群の特徴を備えたものも含まれることになる。
【符号の説明】
【0021】
100 クランクケース
102 クランクケース下側部材
104 クランクケース上側部材
106 クランクシャフト
108 クランクシャフト支承装置
110,112 軸受胴
113,115 給油口
114,116,118,120,122 油路
124 クランクジャーナル
126,128 クランクピン
130,132 コンロッド軸受
134,136 コンロッド
138 油路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クランクケース(100)と、クランクシャフト(106)と、前記クランクケース(100)に前記クランクシャフト(106)を支承するための、潤滑剤を圧送可能な少なくとも一つのクランクシャフト支承装置(108)とを具備した内燃機関において、
前記少なくとも一つのクランクシャフト支承装置(108)に、少なくとも二つの別個の給油口(113,115)が備えられることを特徴とする、内燃機関。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関において、
前記少なくとも二つの別個の給油口(113,115)が、前記クランクシャフト支承装置(108)の周囲に少なくともほぼ均等に分散して配置されていることを特徴とする、内燃機関。
【請求項3】
前記少なくとも一つのクランクシャフト支承装置(100)が少なくとも二つの軸受胴(110,112)を備えてなる、請求項1または2に記載の内燃機関において、
それぞれの軸受胴(110,112)に対して給油口(113,115)が一つずつ付設されていることを特徴とする、内燃機関。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の内燃機関において、
前記給油口(113,115)が、クランクシャフト周方向で前記軸受胴の少なくともほぼ中央に配置されていることを特徴とする、内燃機関。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の内燃機関において、
それぞれの給油口(113,115)に対して油路(114,116)が一つずつ付設されていることを特徴とする、内燃機関。
【請求項6】
前記クランクケース(100)が上側部材(104)と下側部材(102)とを備えてなる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の内燃機関において、
‐前記少なくとも一つのクランクシャフト支承装置(108)の一つの給油口(115)に潤滑剤を圧送するために、前記クランクシャフト上側部材(104)に少なくとも一つの油路(116)が備えられ、
‐これと同じクランクシャフト支承装置(108)の別の給油口(113)に潤滑剤を圧送するために、前記クランクシャフト下側部材(102)に少なくとも一つの油路(114)が備えられること、
を特徴とする、内燃機関。

【図1】
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【公表番号】特表2012−526939(P2012−526939A)
【公表日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−510126(P2012−510126)
【出願日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/002189
【国際公開番号】WO2010/130322
【国際公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【出願人】(391009671)バイエリッシェ モートーレン ウエルケ アクチエンゲゼルシャフト (194)
【氏名又は名称原語表記】BAYERISCHE MOTOREN WERKE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】