説明

内視鏡の信号コネクタ装置

【課題】信号コネクタと信号コネクタ受けとの接続動作時に接点ピンと接点筒との擦れ合いの力を弱めることにより、接続状態時の接触不良が発生せず、また接続力量を軽減することができる内視鏡の信号コネクタ装置を提供すること。
【解決手段】信号コネクタ11が信号コネクタ21受けに接続されると、信号コネクタ11に設けられた多孔板駆動部材14により信号コネクタ受け21側の多孔板30が付勢手段33の付勢力に抗して押し込まれることにより、信号コネクタ受け21に設けられた各接点筒25のテーパ状部分28が多孔板30の筒径制御孔31により径方向に押されて先端側から搾まり、それによって各接点筒25の内周部26が信号コネクタ11側の各接点ピン15と密接される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、内視鏡とビデオプロセッサとの間で撮像信号等の授受を行うために、内視鏡側の信号コネクタとビデオプロセッサ側の信号コネクタ受けとが接続/分離自在に設けられた内視鏡の信号コネクタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の信号コネクタ装置においては一般に、ビデオプロセッサ側に設けられた信号コネクタ受けの方に向くように内視鏡側の信号コネクタに導電性の接点ピン群が立設されて、その接点ピン群を構成する各接点ピンが個別に独立して差し込み接続される導電性の接点筒群が、信号コネクタ受けに設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
そのような内視鏡の信号コネクタ装置においては、接点ピンが接点筒に単純に緩く差し込まれるだけでは接続不良が発生する。そこで、接点ピンと接点筒の一方の先寄りの部分をスリットで縦に分断して径方向に弾性変形するように形成し、接点ピンと接点筒とが接続時に干渉し合う状態で嵌合して、一方がスリット部分で弾性変形することにより他方に弾力的に圧接されるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2−124130
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、接点ピンと接点筒の一方の先寄りの部分をスリットで縦に分断して両者が接続時に弾力的に圧接されるようにした構成では、接点ピンが接点筒内に差し込まれていく動作の途中の状態でも常に両者が弾力的に圧接された状態になっている。
【0006】
そのため、信号コネクタと信号コネクタ受けとの接続動作時に接点ピンと接点筒との摺接面が磨耗して接触不良が発生する場合があり、また、接点数が多いと(一般に40〜50個の接点がある)、接続力量が重くなる原因になっていた。
【0007】
本発明の目的は、信号コネクタと信号コネクタ受けとの接続動作時に接点ピンと接点筒との擦れ合いの力を弱めることにより、接続状態時の接触不良が発生せず、また接続力量を軽減することができる内視鏡の信号コネクタ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため、本発明の内視鏡の信号コネクタ装置は、ビデオプロセッサに設けられた信号コネクタ受けの方に向くように立設された導電性の接点ピン群を備えた内視鏡側の信号コネクタと、接点ピン群を構成する各接点ピンが個別に独立して差し込み接続される導電性の接点筒群を備えた信号コネクタ受けとが、接続/分離自在に設けられた内視鏡のコネクタ装置において、接点筒群を構成する各接点筒の内周部は接点ピンが緩く嵌挿される孔状に形成されて、各接点筒の少なくとも先端寄りの領域は外周面が先端側へ次第に細径になるテーパ状に形成されると共に、先端側が閉じる方向に弾性変形可能なようにスリットが接点筒の先端側に開口する状態に形成され、信号コネクタ受けには、各接点筒のテーパ状部分が個別に通される筒径制御孔を備えた電気絶縁材からなる多孔板が接点筒の軸線と平行方向にスライド自在に配置されると共に、多孔板を接点筒の先端方向に向かって付勢する付勢手段が設けられ、信号コネクタには、信号コネクタ受けに接続される際に各接点ピンが各接点筒に差し込まれていくのに伴って多孔板を付勢手段の付勢力に抗して押し込む多孔板駆動部材が設けられ、信号コネクタが信号コネクタ受けに接続されると、多孔板駆動部材により多孔板が付勢手段の付勢力に抗して押し込まれることにより、各接点筒のテーパ状部分が多孔板の筒径制御孔により径方向に押されて先端側から搾まり、それによって各接点筒の内周部が各接点ピンに密接されるようにしたものである。
【0009】
なお、信号コネクタが信号コネクタ受けに対して接続された状態から分離する方向に移動すると、多孔板が接続前の位置に戻ることにより、各接点筒のテーパ状部分が自己の弾性により拡径して、接点筒が接点ピンに密接しない状態に戻るようにしてもよい。
【0010】
また、筒径制御孔が、接点筒のテーパ状部分の外周面に沿うテーパ孔状に形成されていてもよく、付勢手段が、接点筒群全体の周囲を囲む状態に配置された圧縮コイルスプリングであってもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、信号コネクタが信号コネクタ受けに接続されると、多孔板駆動部材により多孔板が付勢手段の付勢力に抗して押し込まれることにより、各接点筒のテーパ状部分が筒径制御孔により径方向に押されて先端側から搾まり、それによって各接点筒の内周部が各接点ピンに密接されるので、信号コネクタと信号コネクタ受けとの接続動作時に接点ピンと接点筒との擦れ合いの力が弱められて、接続力量が軽減されるだけでなく、接続状態時の接触不良が発生せず、電気的接続が確実に行われる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の実施例に係る内視鏡の信号コネクタ装置の接続動作の途中の状態の部分断面図である。
【図2】本発明の実施例に係る接点ピンと接点筒の斜視図である。
【図3】本発明の実施例に係る多孔板の断面図である。
【図4】本発明の実施例に係る内視鏡の信号コネクタ装置の接続状態の部分断面図である。
【図5】本発明の実施例に係る内視鏡の信号コネクタ装置の外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
図5は内視鏡の信号コネクタ装置の外観を示している。10は内視鏡のコネクタ部、20はビデオプロセッサである。
【0014】
コネクタ部10には、撮像信号等をビデオプロセッサ20との間で授受するための信号コネクタ11と、照明用ライトガイドの入射端部が配置されたライトガイドコネクタ12とが並列に突出配置されている。
【0015】
13は、コネクタ部10とビデオプロセッサ20とが接続状態の時に、ビデオプロセッサ20側に設けられたカム溝(図示せず)と係合して抜け止めとなるように、信号コネクタ11の外周部に突出配置された係合ピンである。
【0016】
ビデオプロセッサ20には、内視鏡の撮像信号を処理するための信号処理回路や、内視鏡の照明光源となる照明ランプ等が内蔵配置されている。そして、内視鏡側の信号コネクタ11が接続/分離自在な信号コネクタ受け21と、ライトガイドコネクタ12が接続/分離自在なライトガイド受け22とがフロントパネルに並んで配置されている。
【0017】
23は、信号コネクタ11が信号コネクタ受け21に接続されて、信号コネクタ11が係合ピン13により信号コネクタ受け21から抜け出さないロック状態になっている時に、回動操作することにより係合ピン13を信号コネクタ受け21から抜き出すことができるようにするためのロック解除レバーである。なお、その具体的構成は、特開2006−129964等により公知なので詳細説明は省略する。
【0018】
上述のような構成により、図5に示される状態から、コネクタ部10をビデオプロセッサ20側に押し付けていくと、コネクタ部10側(即ち、内視鏡側)の信号コネクタ11とライトガイドコネクタ12が、ビデオプロセッサ20側の信号コネクタ受け21とライトガイド受け22に各々差し込まれて接続された状態になる。
【0019】
図1は、信号コネクタ11が信号コネクタ受け21に差し込まれる動作の途中の状態を示している。
信号コネクタ11を外装する円筒状の信号コネクタ枠14の内側の空間には、信号コネクタ受け21の方に向くように平行に立設された多数の(例えば40〜50個の)導電性の接点ピン15からなる接点ピン群が配置されている。
【0020】
各接点ピン15は、導電性のよい銅材等からなる一定の径の細長い丸棒であり、内視鏡側の信号線や電力線等が個別に接続されている。各接点ピン15は、信号コネクタ枠14の先端より前方に突出しない状態に配置されている。
【0021】
信号コネクタ受け21を外装する円筒状のコネクタ受け枠24の内側の空間には、信号コネクタ11側の各接点ピン15が個別に独立して差し込み接続される多数の(接点ピン15と同数の)導電性の接点筒25からなる接点筒群が配置されている。なお、係合ピン13が係合するカム溝やロックレバー23等がコネクタ受け枠24の外周領域に配置されているが、その図示は省略されている。
【0022】
各接点筒25は、導電性のよい銅材等により細長い円筒状に形成されていて、基部側が信号コネクタ受け21内に固定され、ビデオプロセッサ20側の信号線や電力線等が各接点筒25に個別に接続されている。
【0023】
各接点筒25の内周部26は、接点ピン15が緩く嵌挿される孔状に形成されている。即ち、接点筒25の内径は、全長にわたって接点ピン15の外径よりやや大きな(例えば、直径が0.1〜0.2mm程度大きな)一定の径に形成されている。
【0024】
各接点筒25の先端寄りの領域(例えば、全長の半分程度の領域)は、斜視図である図2にも示されるように、外周面が先端側へ次第に細径になるテーパ状に形成されている。28がそのテーパ状部分である。
【0025】
また、各接点筒25の先端寄りの領域には、先端側に開口するスリット27が例えば180度対称位置に二つ形成されて、その領域では接点筒25が縦に分断されている。その結果、接点筒25は先端側が閉じる方向に弾性変形することができる。
【0026】
図1に示されるように、そのような多数の接点筒25からなる接点筒群に係合して、電気絶縁材からなる円盤状の多孔板30が、接点筒25の軸線と平行方向にスライド自在にコネクタ受け枠24内に嵌挿配置されている。
【0027】
多孔板30は、単体の断面図である図3にも示されるように、各接点筒25のテーパ状部分28が個別に通される筒径制御孔31を備えている。各筒径制御孔31は、接点筒25のテーパ状部分28の外周面に沿うテーパ孔状に形成されている。ただし、それらが平行孔等であっても差し支えない。
【0028】
図1に戻って、多孔板30は、コネクタ受け枠24の内周部に沿って配置された圧縮コイルスプリング32(付勢手段)により、信号コネクタ受け21の奥側から接点筒25の先端方向に向かって付勢されている。この実施例では、付勢手段として、接点筒群を構成する全部の接点筒25の周囲を囲む状態に、圧縮コイルスプリング32が一つだけ配置されている。
【0029】
コネクタ受け枠24には、筒径制御孔31が接点筒25のテーパ状部分28と係合した状態を維持するように、多孔板30の一定以上の移動を規制する適宜のストッパ33が設けられている。
【0030】
信号コネクタ11側の信号コネクタ枠14は、信号コネクタ受け21に接続される際に接点ピン15が接点筒25に差し込まれていくのに伴って、多孔板30を圧縮コイルスプリング32の付勢力に抗してコネクタ受け枠24の奥側方向に押し込む多孔板駆動部材にもなっている。ただし、多孔板駆動部材として信号コネクタ枠14とは独立した部材を設けてもよい。
【0031】
図4は、信号コネクタ11が、信号コネクタ受け21に中程度まで差し込まれた図1に示される状態から、さらに信号コネクタ受け21内方向に差し込まれて、信号コネクタ11と信号コネクタ受け21とが接続された状態を示している。
【0032】
信号コネクタ11が信号コネクタ受け21に接続されると、多孔板駆動部材である信号コネクタ枠14の先端面により、多孔板30が圧縮コイルスプリング32の付勢力に抗して押し込まれることによって、接点筒25のテーパ状部分28部分が多孔板30の筒径制御孔31により径方向に内方に押されて先端側から搾まる。
【0033】
その結果、各接点筒25の内周部26の先端付近の部分が接点ピン15に密接されて、接点ピン15と接点筒25との間で電気的接続が確実に行われる。ただし、図1に示される状態から図4に示される状態に移行する接続動作の途中においては、接点筒25は接点ピン15に対し負荷なくスライドするのみである。
【0034】
したがって、信号コネクタ11と信号コネクタ受け21との接続動作時に接点ピン15と接点筒25とが強く擦れ合わないので、接続力量が軽減されるのみならず、擦れ合いによる磨耗の発生が抑制されて接続状態時の接触不良が発生せず、しかも接続時には接点筒25の先端部分が接点ピン15の外周面にしっかりと押し付けられて、確実な電気的接続が行われる。
【0035】
内視鏡の使用が終わって、信号コネクタ11が信号コネクタ受け21に接続された状態から分離する方向に移動操作されると、多孔板30が、圧縮コイルスプリング32により図1に示される元の状態に戻されることにより、接点筒25のテーパ状部分28が自己の弾性により拡径して元の径に戻り、接点ピン15が接点筒25に密接しない状態に戻る。
【0036】
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、例えば、付勢手段として、圧縮コイルスプリング32が複数配置されていてもよく、それらが各接点筒25を個別に囲む状態に配置されていてもよい。また、付勢手段として圧縮コイルスプリング以外のものが用いられても差し支えない。
【符号の説明】
【0037】
10 コネクタ部
11 信号コネクタ
14 信号コネクタ枠(多孔板駆動部材)
15 接点ピン
20 ビデオプロセッサ
21 信号コネクタ受け
25 接点筒
26 内周部
27 スリット
28 テーパ状部分
30 多孔板
31 筒径制御孔
32 圧縮コイルスプリング(付勢手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオプロセッサに設けられた信号コネクタ受けの方に向くように立設された導電性の接点ピン群を備えた内視鏡側の信号コネクタと、上記接点ピン群を構成する各接点ピンが個別に独立して差し込み接続される導電性の接点筒群を備えた上記信号コネクタ受けとが、接続/分離自在に設けられた内視鏡のコネクタ装置において、
上記接点筒群を構成する各接点筒の内周部は上記接点ピンが緩く嵌挿される孔状に形成されて、上記各接点筒の少なくとも先端寄りの領域は外周面が先端側へ次第に細径になるテーパ状に形成されると共に、先端側が閉じる方向に弾性変形可能なようにスリットが上記接点筒の先端側に開口する状態に形成され、
上記信号コネクタ受けには、上記各接点筒のテーパ状部分が個別に通される筒径制御孔を備えた電気絶縁材からなる多孔板が上記接点筒の軸線と平行方向にスライド自在に配置されると共に、上記多孔板を上記接点筒の先端方向に向かって付勢する付勢手段が設けられ、
上記信号コネクタには、上記信号コネクタ受けに接続される際に上記各接点ピンが上記各接点筒に差し込まれていくのに伴って上記多孔板を上記付勢手段の付勢力に抗して押し込む多孔板駆動部材が設けられ、
上記信号コネクタが上記信号コネクタ受けに接続されると、上記多孔板駆動部材により上記多孔板が上記付勢手段の付勢力に抗して押し込まれることにより、上記各接点筒のテーパ状部分が上記多孔板の筒径制御孔により径方向に押されて先端側から搾まり、それによって上記各接点筒の内周部が上記各接点ピンに密接されるようにしたことを特徴とする内視鏡の信号コネクタ装置。
【請求項2】
上記信号コネクタが上記信号コネクタ受けに対して接続された状態から分離する方向に移動すると、上記多孔板が上記接続前の位置に戻ることにより、上記各接点筒のテーパ状部分が自己の弾性により拡径して、上記接点筒が上記接点ピンに密接しない状態に戻る請求項1記載の内視鏡の信号コネクタ装置。
【請求項3】
上記筒径制御孔が、上記接点筒のテーパ状部分の外周面に沿うテーパ孔状に形成されている請求項1又は2記載の内視鏡の信号コネクタ装置。
【請求項4】
上記付勢手段が、上記接点筒群全体の周囲を囲む状態に配置された圧縮コイルスプリングである請求項1ないし3のいずれかの項に記載の内視鏡の信号コネクタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2013−149(P2013−149A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130831(P2011−130831)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】