説明

内視鏡カメラコンポーネント製造方法

【課題】内視鏡用のレンズホルダーといった内視鏡カメラコンポーネントのための改良された製造方法を提供する。
【解決手段】本発明はレンズホルダーを有する内視鏡を提供するが、このレンズホルダーは、焼結された供給原料および機械加工された面を備える。本発明はまた内視鏡を製造する方法を提供するが、これは、MIM処理によって金属ブランクを成形するステップ(金属ブランクは、「ニアネットシェープ」であり、かつスプルー、ポストおよび任意選択で外側シェルを有するものである)と、レンズホルダーを形成するために、金属ブランクの内面を、続いて外面を機械加工するステップと、レンズホルダー内にレンズを設置するステップと、内視鏡内へレンズを有するレンズホルダーを組み込むステップとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡コンポーネントの製造方法に、さらに詳しくは、内視鏡カメラにおいて使用されるレンズホルダーの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
目下、内視鏡および内視鏡ビデオカメラは、体腔内を見るために、手術中、外科医によって広く使用されている。内視鏡手術処置において、小さな切り口(ポータルと呼ばれる)が患者に形成される。内視鏡および内視鏡ビデオカメラは、ポータルの一つの中に挿入される。特殊な手術作業を実施するために使用される手術器具が別なポータル内に挿入される。外科医は、手術処置を成し遂げるために、施術器具をどのように操作するかを決定するために、内視鏡および内視鏡ビデオカメラを用いて手術部位を確認する。内視鏡手術を行う利点は、切開される体の部分が最小化されるので、手術後に癒す必要がある体の部分が同様に縮小する、ということである。さらに、内視鏡手術処置の間、患者の内部器官および組織の比較的小さな部分だけしか開放環境にさらされない。患者の体のこの最小開口は、患者の器官および組織が感染に対して無防備な程度を軽減する。
【0003】
通常、内視鏡ビデオカメラは、光学焦点合わせレンズと、内視鏡ビデオカメラによって伝送されるイメージを最適化するために調整可能な焦点合わせデバイスとを含む。焦点合わせデバイスは、たいてい、レンズホルダー内で焦点合わせレンズを軸方向に移動させあるいは回転させるために磁気駆動を利用する。これに関して、レンズホルダーは、内視鏡ビデオカメラの小さい回旋状部品である。たとえば、特許文献1および特許文献2に開示された内視鏡ビデオカメラは、内部磁石およびレンズ間の機械リンケージに適合させられたレンズホルダーと、内部チャンバーの周面周りに配置された外部磁石の位置に応答した内部チャンバー内でのレンズの動作を必要とし、そして、特許文献3〜5に開示された内視鏡ビデオカメラは、螺旋溝、磁気シートおよび内部磁石をレンズに連結する機械リンケージを有するレンズホルダーを必要とし、あるいは、内部磁石の回転動作をレンズの直線動作に変換するために螺旋チャネル内を内部磁石が移動することを必要とする。
【0004】
磁気焦点合わせデバイスを簡素化すると共に、複雑な内視鏡ビデオカメラに関連するさまざまな問題点を解決するための試みに関して、特許文献6および特許文献7は、レンズと内部磁石との間に機械リンケージを要しない内視鏡ビデオカメラを開示している。このレンズホルダーは、図1に示すように、以下の構造を有する。ズームレンズホルダー10aは、均等に間隔が置かれかつ作動中のレンズの経路を確定する一方向のレースウェイから近位方向に延在する一群の対称突起すなわち脚を備えたレンズ(図示せず)の周縁周りのレースウェイの形態であってもよい。固定レンズホルダー10bは、二つの群の対称突起すなわち脚を備えたレンズの周縁周りのレースウェイの形態であってもよく、突起あるいは脚の第1の群は一方向にレースウェイから近位方向に延在し、かつ、突起あるいは脚の第2の群は反対方向にレースウェイから遠位方向に延在している。当該文献はまた、レースウェイから延在する突起すなわち脚を含まない簡単なレンズホルダー10cを開示している。
【0005】
レンズホルダーは内視鏡ビデオカメラの機能に関して重要な役割を果たすので、レンズホルダーが高精度を伴って製造されることが重要である。
【0006】
通常、レンズホルダーは、図2に示すように、100%機械加工によって、中実金属バー原料から製造される。この製造方法は、不可避的に、使用される(そして廃棄される)材料および機械加工時間に関する高い製造コストを伴う。この製造方法を使用した場合、一貫した精度を伴ってレンズホルダーを機械加工するのは、不可能ではないにしても、困難である。したがって、従来の100%機械加工はレンズホルダーの大量生産には不向きである。
【0007】
近年、特許文献8〜12に開示されるように、金属射出成形(「MIM」)処理が、医学あるいは光学機器のさまざまなコンポーネントを製造するために使用されている。これら特許の技術は、この引用によって、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0008】
典型的なMIM処理において、金属パウダーが、均質な液体混合物を形成するためにバインダーと混合される。この混合物はダイすなわち型枠内に注入されるが、これは、続いて、「グリーン」メタルブランク(これは、通常、60%密度である)を形成するために高圧にさらされる。「グリーン」メタルブランク中のバインダーは、続いて、燃やして除去されるかあるいは化学的に除去され、そしてその結果生じたスケルトン(「ブラウン」メタルブランクと呼ばれる)は完全密度付近まで焼結される。従来の100%機械加工および鋳造、打抜きおよびリソグラフィーといった、その他のデポジション技術に比べて、MIM処理は、製造のために必要な材料を著しく節約でき、しかも、品質の適当な一貫性を伴った大量生産を可能とする。MIM処理はまた、複雑な内外形状を有する小さなコンポーネントの製造において多能である。
【0009】
MIM処理に付随する、従来からの解決されない一つの問題は、「グリーン」ステージからのメタルブランクの収縮である。収縮問題は、概して、焼結後の内部および外部形態の不均一な収縮によって、複雑なメタルブランクにおいて、より顕著である。MIM処理の別な問題は、焼結されたメタルブランがたいていは、最終コンポーネントの所望の寸法に到達するために、かなりの程度の金属コンディショニング処理を必要とする、ということである。焼結されたメタルブランに対する金属コンディショニング処理は、たいてい、「二次機械加工」あるいは「ポスト機械加工」と呼ばれる。全ての機械加工と同様、さらなる二次機械加工は、さらなる機械加工時間およびより高い製造コストを意味する。
【0010】
通常のMIM処理に付随する収縮問題を克服するために、特許文献13(「Sachs」)は2原料焼結方法を提供する。バインダーが除去され、収縮した最終コンポーネントを提供するためにパウダー粒子自体が互いに焼結される従来方法に比べて、Sachsにおいては、パウダー粒子を結び付ける物質が別個の物質として提供され、焼結の間、それらが配置された後、パウダー粒子の移動は生じない。スケルトン収縮は回避されるが、Sachsの方法は、二つの異なる金属原料、ならびに第1の原料のマトリックス内への第2の別個の原料の付加および第1・第2原料の結合の反復ステップを必要とする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許第5,359,992号明細書(Hori他)
【特許文献2】米国特許第5,056,902号明細書(Chinnock他)
【特許文献3】米国特許第5,978,161号明細書(Lemke他)
【特許文献4】米国特許第5,835,865号明細書(Speier他)
【特許文献5】米国特許第5,706,143号明細書(Hipp)
【特許文献6】米国特許第6,522,477号明細書(Anhalt)
【特許文献7】米国特許第6,633,438号明細書(Anhalt)
【特許文献8】米国特許第7,762,960号明細書
【特許文献9】米国特許第6,514,269号明細書
【特許文献10】米国特許第7,706,065号明細書
【非特許文献11】米国特許第7,686,449号明細書
【非特許文献12】米国特許出願公開第2006/0242813号明細書
【非特許文献13】米国特許第6,508,980号明細書(Sachs他)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、内視鏡用のレンズホルダーといった、内視鏡カメラコンポーネントのための改良された製造方法が求められており、これは、効果的に、金属材料を利用し、二次加工を最小化し、全体的な製造時間を短縮し、そしてコンポーネント品質の一貫性を増大させる。そうした製造方法はまた、さまざまなタイプのレンズホルダーおよびその他の類似のタイプのメタルコンポーネントに適用するのに十分なほど多能であることが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法を提供する。本方法は、金属射出成形(MIM)処理を用いて少なくとも一つのブラウンメタルブランクを形成するステップであって、少なくとも一つのブラウンメタルブランクは、スプルーと、ポストとを具備してなり、かつ、少なくとも一つのレンズホルダーと、サイズおよび形状が実質的に類似したものであるようなステップと、少なくとも一つのレンズホルダーのそれぞれの中にレンズを設置するステップと、内視鏡を形成するためにレンズを有する少なくとも一つのレンズホルダーを内視鏡チューブ内へと組み込むステップとを備える。本発明の第1の態様は、少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために最小限の機械加工しか必要とされない。なぜなら、少なくとも一つのブラウンメタルブランクは、少なくとも一つのレンズと実質的に類似のサイズおよび形状であるからである。MIM処理を用いることで、本発明はまた、より高い材料利用率、および完成コンポーネント、たとえばレンズホルダーの品質管理向上を実現する。
【0014】
好ましい実施形態では、機械加工するステップは、少なくとも一つのブラウンメタルブランクの内側寸法を機械加工し、続いて、少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として内側の機械加工された寸法を用いて少なくとも一つのブラウンメタルブランクの外側寸法を機械加工するステップを備える。基準として内面を用いることで、最終外面は、誤差をほとんど伴わずに、最終寸法まで正確に研磨することができる。これは、本発明の別な態様である。
【0015】
ある程度好ましい実施形態では、上記機械加工ステップは、ブラウンメタルブランクの外面の機械加工と共に始まってもよく、これに内面の機械加工が続く。
【0016】
ある実施形態では、少なくとも一つのブラウンメタルブランクのスプルーおよびポストは、この少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前に、扱い易くするためにトリミングされる。これは、本発明のさらなる態様である。
【0017】
別な実施形態では、少なくとも一つのブラウンメタルブランクは、成形および機械加工ステップの間、ダメージから少なくとも一つのブラウンメタルブランクを保護しかつ補強する外側シェルを含む。この実施形態では、内面の機械加工は、外側シェルから少なくとも一つのブラウンメタルブランクを保持することによって実施できる。外側シェルはまた、機械加工中のコンポーネントの突起の撓みを阻止する。これは、本発明のさらなる態様である。
【0018】
別な実施形態では、レンズが少なくとも一つのレンズホルダー内に設置される前にジクロナイト(Dicronite)コーティング処理を用いて、潤滑剤が少なくとも一つのレンズホルダーに塗布される。
【0019】
本発明はまた、焼結された原材料、機械加工された内側面、そして機械加工された外側面を含むボディを備えた少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を提供する。
【0020】
ある実施形態では、少なくとも一つのレンズホルダーのボディは、レースウェイ、および一方向にこのレースウェイの周面から延在する一群の突起を有する。
【0021】
別な形態では、少なくとも一つのレンズホルダーのボディは、レースウェイ、一方向にこのレースウェイの周面から延在する第1群の突起と、反対方向にこのレースウェイの周面から延在する第2群の突起とを有する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】Anhaltに対して付与された米国特許第6,522,477号および第6,633,438号明細書に開示された、さまざまなタイプのレンズホルダーを示す図である(従来技術)。
【図2】別な従来技術に基づいてレンズホルダーを製造するための100%機械加工方法を示す図である。
【図3】一実施形態に基づく製造方法の各ステップを示す図である。
【図4】製造方法の各ステップの間の多数のズームレンズホルダーを示す図である。
【図5】製造方法の各ステップの間のズームレンズホルダーを示す図である。
【図6】製造方法の各ステップの間の固定レンズホルダーを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明は、一つ以上のレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法を提供する。「内視鏡」および「内視鏡ビデオカメラ」との用語は、本明細書中では、互換的に用いる。
【0024】
図3は、本発明に基づく製造方法30のさまざまなステップを示している。ステップの初めのいくつか(31ないし37)は、ニアネット機械加工コンセプトを利用するレンズホルダーを製造するステップに充てられている。このコンセプトのもと、MIMブランクとも呼ばれるメタルブランク(これは全ての成形特徴、たとえば、ゲート、スプルー、突き出しピンマーク、分離ライン、ポストを含む)が、最小限の二次機械加工が最終コンポーネントを完成させるために必要であるように、最終コンポーネントの「ニアネット形状」へと、金属射出成形(MIM)処理によって先ず成形される。
【0025】
「MIM処理」との用語は、プラスチック射出成形装置を用いて中空型枠内へと液体として注入される「供給原料」を製造するために金属パウダーをバインダー物質と組み合わせる処理を意味し、これにはバインダー除去および形成されたメタルコンポーネントを固化するための焼結ステップが続く。MIM処理は、鍛造、鋳造あるいはその他の処理に比べて、優れた処理である。なぜなら、それは、不規則な形状を含む、メタルボディの形状の任意選択を可能とするからであり、そして、それは低コストでの大量生産に適しているからであり、そして焼結された製品は、微細パウダーの使用によって実現された改良された圧密化の結果として優れた物理的および機械的特性を有するからである。さらに、MIM処理は、たとえば鋳造、押し出しあるいは鍛造といったその他の処理よりも、より僅かな誤差を実現できる。MIM処理およびそれに使用される供給原料は、たとえば、米国特許第4,694,881号、第4,694,882号、第5,040,589号、第5,064,463号、第5,577,546号、第5,848,350号、第6,860,316号、第6,890,368号、第6,838,046号、第6,790,252号、第6,669,898号、第6,619,370号、第6,478,842号、第6,470,956号、第6,350,328号、第6,298,901号、第5,993,507号、第5,989,493号明細書、ならびに米国特許出願公開第2006/0242813号明細書に開示されており、そのぞれぞれの内容は、その全体が本明細書に組み込まれる。
【0026】
金属パウダーの特性は、MIM製品の最終特性を決定する。MIM供給原料内で具現可能な、そして外部磁石によって形成される磁界に反応する金属あるいは合金が、本発明のためのMIMブランクを製造するために使用できる。本発明にとって好適な金属あるいは合金は、これに限定されるわけではないが、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、真鍮、チタニウム、タンタル、鉄、リン青銅、タングステン、金、銀、銅、コバルト、クロムあるいはその合金を含む。レンズホルダーにとって好ましい金属は磁性ステンレススチールである。
【0027】
「ネアネットシェープ」との用語は、メタルブランクが、形状および寸法に関して、最終コンポーネントと実質的に類似していることを意味する。
【0028】
第1のステップ31は、金属射出成形処理を用いて、スプール、ポスト、および任意選択で外側シェルを有する、「ネアネットシェープ」グリーンメンタルブランクの成形である。
【0029】
第2のステップ32は、低温オーブンを用いたポリマーバインダーの除去のためのグリーンメタルブランクの脱バインダーであり、これには、「ニアネットシェープ」ブラウンメタルブランクを形成するために金属パウダーを一つに溶融させるために高温炉内でのグリーンメタルブランクを焼結するステップ33が続く。
【0030】
図4ないし図6は、本発明に基づく製造方法の間、スプールおよびポストを有する「ネアネットシェープ」ブラウンメタルブランクのさまざまなタイプを示している。
【0031】
図4は、内面および外面を有する、メタルブランク40a,40b,40cを示している。メタルブランク40a,40b,40cは、センターポスト41,42,43を有するが、これは、ブランク40a,40b,40cの中央に配置され、かつ、メタルブランク40a,40b,40cの一体部分を形成している。メタルブランク40a,40b,40cは、ポスト41,42,43の逆側端部にスプルー(図示せず)を有する。
【0032】
図5および図6は、内面および外面を有するメタルブランク50,60を示している。メタルブランク50,60は、センターポスト52,62と、このセンターポスト52,62の逆側端部に位置するスプルー53,63とを有する。センターポスト52,62およびスプルー53,63の両方は、メタルブランク50,60の一体部分を形成する。
【0033】
センターポスト41,42,43,52,62は、メタルブランク40a,40b,40c,50,60の中心材に対するサポートを提供し、そして焼結ステップの間、それが崩れ落ちるのを阻止する。センターポスト41,42,43,52,62およびスプルー53,63は、製造処理の間、メタルブランク40a,40b,40c,50,60を扱うための付加的手段を提供する。たとえば、それらは、ブランク面と固定具面との間の摩擦による焼結中のブランク面での収縮の拘束を回避するために、固定具面の近くでブランク面を保持することを伴わずに、メタルブランク40a,40b,40c,50,60を焼結固定具にセットできる。好ましくは、センターポスト41,42,43,52,62は、メタルブランク40a,40b,40c,50,60の底面を越えて延在し、メタルブランクの底面と焼結固定具の表面との間に十分なクリアランスを提供する。
【0034】
メタルブランク50,60は、任意選択で、外側シェル54,64を備えることができるが、これは、メタルブランク50,60の一体部分を形成する。図5および図6に示すように、外側シェル54,64は内面および外面を有する。外側シェル54,64の内面はメタルブランク50,60の外面と、特に、メタルブランク50,60の突起/脚55,65,65'およびレースウェイ51,61の部分的あるいは全周面と接触状態である。好ましくは、外側シェル54,64は、メタルブランク50,60の残部を実質的に覆う。外側シェル54,64は、焼結および機械加工ステップの間、メタルブランク50,60に対する有利な構造的サポートを提供する。それは、脆弱な突起/脚55,65,65'がダメージを受けるのを阻止しかつメタルブランク50,60のグリーン状態材料を強化するだけでなく、焼結ステップの間、より均一な収縮を可能とする。内面の機械加工のステップの間、外側シェルはコンポーネントの突起の撓みを阻止する。外側シェルは、レンズホルダーが長い突起/脚を有する場合(たとえば図5のズームレンズホルダーおよび図6の固定レンズホルダー)には有益である。メタルブランクが突起/脚を持たないか、あるいは比較的短い突起/脚を有する場合、外側シェルは不要である(たとえば図4における、さまざまなレンズホルダー)。
【0035】
外側シェル54,56の厚みは変化し得るが、使用される金属の種類および二次機械加工の程度に必ず依存する。外側シェル54,64は、二次機械加工に由来する衝撃に耐えるのに十分なほど堅牢であるべきである。
【0036】
次なるステップ34は、本発明に基づく製造方法に関しては任意のものである。このステップ34では、スプルー53,63およびポスト52,62は、扱い易くするためにトリミングされる。
【0037】
メタルブランク50,60が外側シェル54,64を有する場合、本製造方法は、任意選択で、ステップ35を有し得るが、ここでは、たとえば、メタルブランク50,60の内面を機械加工するステップの間、扱いを容易にするために、外側シェル54,64からメタルブランク50,60が保持される。
【0038】
ステップ34および35が逆の順序で実施されてもよいことは当業者にとって自明である。
【0039】
次のステップ36および37の間、メタルブランク40a,40b,40c,50,60は、レンズホルダー40d,40e,40f,56,66の必要な仕様へと事後機械加工される。「機械加工」あるいは「機械加工された」との用語は、熱処理および/または研磨といった表面処理、切断、穿孔、造形、研削、および/または、ラス、電動ノコおよび成形機といった機械加工ツールを用いた所望の最終部品への金属片の成形といった一般的な金属加工処理を意味する。センターポストおよび外側シェル(もしあれば)は、コンポーネントのジオメトリーおよびコンポーネントの特定の部品に対するアクセスの必要性に依存して、二次機械加工の間にあるいは機械加工の終わりに除去可能である。メタルブランク40a,40b,40c,50,60は、レンズホルダー40d,40e,40f,56,66の「ニアネットシェープ」であるので、所望のレンズホルダーを形成するためには最小限の機械加工しか必要としない。少ない機械加工は、少ない機械加工時間および低い製造コストを意味する。
【0040】
レンズホルダーが中実バー原料から100%機械加工によって製造される従来技術に比べて、本発明は、材料の無駄が排除され、機械加工時間が節約され、そして完成したレンズホルダーの品質一貫性が改善される。
【0041】
機械加工ステップ36,37は、通常、メタルブランクの内寸法を機械加工するステップ36によって、そして、これに続く、メタルブランクの機械加工された内面を用いるメタルブランクの外寸法を機械加工するステップ37によって実施される。内面を基準面として用いることで、最終外面は、直接成形方法では実現できない僅かな誤差を伴って最終寸法まで正確に研磨できる。一般的なコンピューター数値制御(CNC)切削は外径を実現することができない。なぜなら、中断切削作用は、作業の間、メタルブランクの突起を撓ませ、そして最終寸法に影響を与えるからである。
【0042】
レンズホルダーを形成するために、機械加工ステップは、ある程度好ましい順序で、たとえば、まずメタルブランクの外面を機械加工するステップ37によって、これに続く内面を機械加工するステップ36によって、そして任意選択で基準として外面を用いて、実施できることは当業者にとって自明である。
【0043】
任意選択で、ジクロナイトコーティング処理を用いてレンズホルダーに対して潤滑剤が塗布される(ステップ38)。その後、レンズはレンズホルダー内に設置される(ステップ39)。続いて、レンズが設置されたレンズホルダーは、内視鏡を形成するために、内視鏡チューブ内に組み込まれる(ステップ40)。
【0044】
内視鏡が一つ以上のレンズホルダーを含む場合、各レンズホルダーは、本発明の同一あるいは異なる実施形態に基づいて製造できることは当業者にとって自明である。さらに、一つ以上のレンズがレンズホルダー内に設置されてもよく、そして別なタイプのレンズが同一あるいは異なるレンズホルダー内に設置できる。
【0045】
本発明はまた、一つ以上のレンズホルダーを有する内視鏡を提供するが、ここで、レンズホルダーは、焼結された供給原料、機械加工された内面および機械加工された外面を備えるボディを備える。供給原料は、好ましくは、ステンレススチールからなる。
【0046】
本発明のレンズホルダーは、本発明のレンズホルダーのボディが焼結された供給原料を含むのに対して、従来技術のレンズホルダーのボディが100%金属原料によって形成されている点で、従来型レンズホルダーとは異なる。焼結された供給原料は、MIMプロセスにおける焼結ステップの間、高温処理を経ているので、二つのボディの特性は互いに相違する。たとえば、焼結された供給原料は、たいてい、金属原料のそれよりも、高い密度および耐久性を有する。
【0047】
レンズホルダーのボディは、図4ないし図6に示すように、さまざまな形状および寸法を有し得る。ある実施形態では、レンズホルダー40e,40f,56は、一群の対称突起/脚47,48,55を備えたレースウェイ45,46,51を有するが、これらは、均等に離間しており、かつ、一方向にレースウェイ45,46,51から延在している。別な実施形態では、レンズホルダー66は二つの群の対称突起/脚65,65'を備えたレースウェイ61を有しており、第1の群の対称突起/脚65は一方向にレースウェイ61から近位方向に延在し、かつ、第2の群の対称突起/脚65'は反対方向にレースウェイ61から遠位方向に延在する。さらに別な実施形態では、簡素なレンズホルダー40dは、レースウェイ44から延在する突起を持たない。これら全てのレンズホルダーは二つの共通な構造的特徴を共有する。第一に、レースウェイ44,45,46,51,61および/または突起/脚447,48,55,65,65'の周面によって形成された、その外部形状は、概して円筒形状であり、スリーブ形状の外側シェルは、製造ステップの間、レンズホルダーを覆うことができる。第二に、それらは、レンズを保持するための長手方向中空センターを有する。
【0048】
上記説明は本発明を詳しく説明するために提示したものであり、本発明を制限することを意図してはいない。その趣旨および範囲から著しく逸脱することなく、さまざまな変更を本発明に対して成し得ることは当業者にとって自明である。
【符号の説明】
【0049】
40a,40b,40c,50,60 メタルブランク
40d,40e,40f,56,66 レンズホルダー
41,42,43,52,62 センターポスト
45,46,51,61 レースウェイ
53,63 スプルー
54,64 外側シェル
55,65,65' 突起/脚

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法であって、
金属射出成形を用いて少なくとも一つのグリーンメタルブランクを形成するステップであって、前記少なくとも一つのグリーンメタルブランクは、スプルーと、ポストと、外側シェルとを具備してなり、前記少なくとも一つのグリーンメタルブランクは内側寸法および外側寸法を有し、かつ、前記少なくとも一つのグリーンメタルブランクは、前記少なくとも一つのレンズホルダーとサイズおよび形状が実質的に類似したものであるようなステップと、
少なくとも一つの脱バインダーグリーンメタルブランクを形成するために、低温オーブンを用いてポリマーバインダーを除去するために前記少なくともグリーンメタルブランクの脱バインダーを行うステップと、
少なくとも一つのブラウンメタルブランクを形成するために高温炉内で前記少なくとも一つの脱バインダーグリーンメタルブランクを焼結するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーのそれぞれの中にレンズを設置するステップと、
前記レンズが設置された前記少なくとも一つのレンズホルダーを前記内視鏡内へと組み込むステップと、
を備えることを特徴とする少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項2】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記外側シェルから前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを保持すると共に、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項3】
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップの前に、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記スプルーおよび前記ポストをトリミングするステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項4】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記外側シェルから前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを保持すると共に、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項3に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項5】
前記少なくとも一つのレンズホルダー内に前記レンズを設置する前記ステップの前に、ジクロナイトコーティング処理を用いて、前記レンズホルダーに対して潤滑剤を塗布するステップをさらに備えることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項6】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項7】
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクはステンレススチールからなることを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項8】
前記少なくとも一つのレンズホルダーは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する一群の突起とを有することを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項9】
前記少なくとも一つのレンズホルダーは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する第1群の突起と、反対方向に前記レースウェイの周面から延在する第2群の突起と、を有することを特徴とする請求項1に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項10】
少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法であって、
金属射出成形を用いて少なくとも一つのブラウンメタルブランクを形成するステップであって、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクは、スプルーと、ポストとを具備してなり、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクは内側寸法および外側寸法を有し、かつ、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクは、前記少なくとも一つのレンズホルダーとサイズおよび形状が実質的に類似したものであるようなステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーのそれぞれの中にレンズを設置するステップと、
前記レンズが設置された前記少なくとも一つのレンズホルダーを前記内視鏡内へと組み込むステップと、
を備えることを特徴とする少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項11】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項12】
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップの前に、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記スプルーおよび前記ポストをトリミングするステップをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項13】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項11に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項14】
前記少なくとも一つのレンズホルダー内に前記レンズを設置する前記ステップの前に、ジクロナイトコーティング処理を用いて、前記レンズホルダーに対して潤滑剤を塗布するステップをさらに備えることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項15】
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するために前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクを機械加工する前記ステップは、
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を機械加工するステップと、
前記少なくとも一つのレンズホルダーを形成するための基準として前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記外側寸法を用いて前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記内側寸法を機械加工するステップと、
を備えることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項16】
前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクはステンレススチールからなることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項17】
前記少なくとも一つのレンズホルダーは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する一群の突起と、を有することを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項18】
前記少なくとも一つのレンズホルダーは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する第1群の突起と、反対方向に前記レースウェイの周面から延在する第2群の突起と、を有することを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項19】
前記ポストは、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの底面と、焼結固定具の表面との間にクリアランスを提供するために、前記少なくとも一つのブラウンメタルブランクの前記底面を越えて延在していることを特徴とする請求項10に記載の少なくとも一つのレンズホルダーを有する内視鏡を製造するための方法。
【請求項20】
少なくとも一つのレンズホルダーを備えた内視鏡であって、前記少なくとも一つのレンズホルダーは、
焼結された供給原料を含むボディと、
機械加工された内面と、
機械加工された外面と、
を具備してなることを特徴とする内視鏡。
【請求項21】
前記焼結された供給原料はステンレススチールからなることを特徴とする請求項20に記載の内視鏡。
【請求項22】
前記ボディは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する一群の突起とを有することを特徴とする請求項20に記載の内視鏡。
【請求項23】
前記ボディは、レースウェイと、一方向に前記レースウェイの周面から延在する第1群の突起と、反対方向に前記レースウェイの周面から延在する第2群の突起と、を有することを特徴とする請求項20に記載の内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−17814(P2013−17814A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−140683(P2012−140683)
【出願日】平成24年6月22日(2012.6.22)
【出願人】(506010792)カール・ストーツ・イメージング・インコーポレイテッド (14)
【Fターム(参考)】