説明

内視鏡及び内視鏡の滅菌方法

【課題】簡易な滅菌バッグに内視鏡本体を収容した状態で、内視鏡の状態確認を可能にする技術を提供する。
【解決手段】内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)とLGコネクター45との間のユニバーサルケーブル40の中間部には、LGコネクター45及び電気コネクター55よりも大きな径を有する中間ブッシュ60が気密に取り付けられている。内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容する際に、LGコネクター45及び電気コネクター55は開孔部ブッシュ73の開口を通じて滅菌バッグ70の内側から外側に取り出され、中間ブッシュ60が開孔部ブッシュ73に対して気密に挿入密着される。これにより、外側に配置されるLGコネクター45及び電気コネクター55を介して、滅菌バッグ70に収容される内視鏡本体20の各種チェックを行うことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、滅菌バッグ(滅菌袋)に収容可能な内視鏡及び内視鏡の滅菌方法に係り、特に、滅菌バッグに収容された内視鏡(内視鏡本体)の状態の確認を可能にする技術に関する。
【背景技術】
【0002】
医療分野において内視鏡を利用した診断及び処置は広く行われており、例えば体腔内の所望部位の撮像診断や、処置具による患部の切除等の処置が行われている。このような診断及び処置に使用された内視鏡には患者の体液や病原体等が付着しているため、使用後の内視鏡は洗浄及び滅菌(消毒)を施す必要がある。
【0003】
内視鏡を洗浄及び滅菌する手法は数多く提案されており、例えば特許文献1は、ケース又は袋からなる複数の簡易洗浄槽と一つの洗浄ユニットとを備える簡易洗浄システムによって、複数の内視鏡を効率良くプレ洗浄する手法を開示する。また特許文献2は、清浄な内視鏡やプレ洗浄後の内視鏡を良好な状態で保管するための収納袋を開示し、当該収納袋は、内視鏡を密閉収納する第1収納部と、第1収納部内を保管に適した環境に保全する環境保全物質(脱酸素剤、乾燥剤)と、環境保全物質を収納する第2収納部とを備える。また特許文献3は、滅菌する間及び滅菌後の保管の間に医療器具を収納するための内視鏡用のパッケージ(密閉容器)を開示し、当該パッケージは、微生物を通さない壁と、フックに掛けるためのつり下げ手段とを備える。
【0004】
また特に、内視鏡の滅菌手法として、オートクレーブを利用する方法が普及している。一般にオートクレーブ滅菌では、耐圧容器内に洗浄後の内視鏡を配置して水蒸気等を封入した状態で当該耐圧容器内を高温高圧状態とすることで、内視鏡に付着する病原体等を有効に死滅させる。このようなオートクレーブ滅菌は、滅菌効果の信頼性が非常に高く、ランニングコストが比較的安価である等のメリットがある。例えば特許文献4は、比較的大型の内視鏡用収納容器を使用したオートクレーブ滅菌の手法を開示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−131296号公報
【特許文献2】特開2009−136613号公報
【特許文献3】特開2002−533191号公報
【特許文献4】特開2002−325719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述のようなオートクレーブ滅菌を行う際には、内視鏡を滅菌バッグに収容した状態で滅菌処理を行うことで、内視鏡及び滅菌バッグの双方を適切に滅菌することが好ましい。また、滅菌状態を保持する観点から、使用直前まで、内視鏡を滅菌バッグから取り出さずに滅菌バッグ内で保管することが好ましい。特に内視鏡の挿入部及び手元操作部(内視鏡本体)は、被験者(患者)及びユーザー(術者)が直接触れる箇所であるため、使用直前まで滅菌バッグ内で保管されることが望ましい。
【0007】
これらの場合、オートクレーブ滅菌から内視鏡の使用直前まで、内視鏡は滅菌バッグに収納されるため、内視鏡に対して他の処理を実施することが難しい。一方、内視鏡の光学系統や電気系統(電気回路)に不備がないか否かを、オートクレーブ滅菌後使用前に確認したいという要望がある。しかしながら、内視鏡を滅菌バッグに収容した状態でオートクレーブ滅菌及び保管する場合には、内視鏡の使用直前にしかそのような確認を行うことができず不便である。特に、症例使用直前に、内視鏡に不備があることが確認された場合には、診断・処置が直前になって中止になる可能性もある。
【0008】
また一般的な内視鏡は、上述のように、使用時に体液等が付着すると共に症例使用後には水等の液体によって洗浄が行われるため、各接合部がパッキン等で補強シーリングされた水密(気密)防水構造を有する。しかしながら、内視鏡を長期間、繰り返し使用することによって、パッキン等の各部が劣化する可能性が想定される。したがって、内視鏡の使用前や洗浄前に、内視鏡の水密(防水)状態のチェックが行われ、浸水による内視鏡の故障が事前に防がれている。しかしながら、オートクレーブ滅菌から内視鏡の使用直前まで内視鏡が滅菌バッグに収納される場合、使用前の内視鏡の水密(気密)状態のチェックは使用直前にしかできない。
【0009】
また、オートクレーブ滅菌時に内視鏡内部に進入して残留する湿気(水分)は、故障等の不具合の要因となるため、可能な限り迅速に取り除くことが望ましい。しかしながら、内視鏡が滅菌バッグから取り出される使用直前まで、内視鏡内部を十分に換気することができず、内視鏡内部の湿気(水分)を迅速に除去することが難しい。
【0010】
なお、特許文献4に開示のオートクレーブ滅菌装置は、比較的大型であり、内視鏡毎にそのような滅菌装置を準備することは、コスト面や保管スペース等の面で不利である。また特許文献4は、オートクレーブ滅菌後における内視鏡の状態の確認手法や内視鏡内部の水分除去手法について、開示も示唆も全くしていない。
【0011】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、簡易な滅菌バッグに内視鏡本体を収容した状態を保持しつつ、内視鏡の状態の確認を可能にする技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一態様は、挿入部と、前記挿入部を操作するための操作部とを有する内視鏡本体と、前記操作部にユニバーサルコードを介して接続されるコネクター部と、前記ユニバーサルコードに対して気密に取り付けられ、前記コネクター部よりも大きな径を有する気密保持部材と、を備える内視鏡であって、前記気密保持部材は、前記内視鏡を収納するための滅菌バッグに設けられた開孔部に対して気密に密着して挿入することができることを特徴とする内視鏡に関する。
【0013】
本態様によれば、滅菌バッグに内視鏡を収容し、滅菌バッグの開孔部から内視鏡のコネクター部を外部に取り出し、滅菌バッグの開孔部に対して内視鏡の気密保持部材を密着して挿入することができる。これにより、滅菌バッグに内視鏡本体を収容した状態で、滅菌バッグ外に取り出されたコネクター部を使って内視鏡の状態を確認することが可能になる。
【0014】
なお、ここでいう「滅菌バッグ」とは、内視鏡本体を収容可能な収容体全般を含みうる概念であり、滅菌バッグの内部を外部の菌、ウイルス等から遮断することができる収容体を指す。滅菌バッグの形状、材質及び構成は特に限定されないが、内視鏡を収容するための開口が設けられた簡易な袋状の収容体を滅菌バッグとして好適に使用することができる。なお滅菌バッグの内部は、内視鏡本体が収容される前から菌やウイルスが全く存在しない滅菌状態である必要はなく、内視鏡本体が滅菌バッグに収容された後に滅菌(消毒)処理を行って両者を滅菌(消毒)するようにしてもよい。このような場合であっても、滅菌(消毒)処理後の内視鏡本体は、滅菌バッグによって外部の菌、ウイルス等から守られ、清浄に保たれる。
【0015】
望ましくは、前記コネクター部の径は、前記滅菌バッグの前記開孔部の径よりも小さい。
【0016】
この場合、内視鏡のコネクター部は滅菌バッグの開孔部をスムーズに通過することが可能になり、滅菌バッグの内側から外側に開孔部を通じてコネクター部を簡単に取り出すことができる。
【0017】
望ましくは、前記気密保持部材は、前記滅菌バッグの前記開孔部と密着する密着部と、前記開孔部の径よりも大きな径を有するフランジとを有する。
【0018】
この場合、滅菌バッグの開孔部よりも径の大きなフランジがストッパーとして働き、滅菌バッグの開孔部に密着する気密保持部材の密着部が開孔部から外れてしまうことを防ぐことができる。なお、フランジの形状は特に限定されるものではなく、滅菌バッグの開孔部を通過することが阻害される形状であればよい。
【0019】
望ましくは、前記気密保持部材は、前記フランジよりも前記コネクター部の側に設けられる突出部であって、前記滅菌バッグの前記開孔部の径よりも大きな径を有する突出部を有する。
【0020】
この場合、滅菌バッグの開孔部よりも径の大きなフランジ及び突出部がストッパーとして働き、気密保持部材のフランジと突出部との間に滅菌バッグの開孔部を配置することで、気密保持部材が開孔部から脱け落ちてしまうことをより確実に防ぐことができる。
【0021】
望ましくは、前記突出部は、前記滅菌バッグの前記開孔部の径と同じ径になるように径方向へ弾性による移動が可能な爪状部を有する。
【0022】
この場合、爪状部の弾性を利用することで、滅菌バッグの開孔部を気密保持部材のフランジと突出部との間に容易に配置することができる。なお爪状部の弾性の種類は、特に限定されず、いわゆる形状弾性を利用するものであってもよいし、体積弾性を利用するものであってもよい。
【0023】
望ましくは、前記内視鏡本体の内部、前記ユニバーサルコードの内部及び前記コネクター部の内部は相互に連通して内部空間を構成し、前記コネクター部又は前記コネクター部と前記気密保持部材との間の前記ユニバーサルコードは、前記内部空間と外部とを連通する通気部を有する。
【0024】
この場合、内視鏡本体を滅菌バッグに収容した状態で、滅菌バッグの外側に取り出されたコネクター部又はユニバーサルコードに設けられる通気部を介し、内視鏡の内部空間と外部とを通気可能に連通することができる。したがって、この通気部に通気デバイス(気密テスター、送気/吸気デバイス、等)を接続することで、内視鏡本体の滅菌状態を滅菌バッグ内で良好に保持しながら、滅菌バッグの外側から内視鏡の内部空間に対して通気処理を施すことができ、非常に利便性が高い。
【0025】
また本発明の他の態様は、上記の内視鏡を滅菌バッグに収容する工程と、前記滅菌バッグに収容される前記内視鏡に対して滅菌処理を施す工程とを備える内視鏡の滅菌方法であって、前記内視鏡は、前記内視鏡本体が前記滅菌バッグの内側に配置されると共に前記コネクター部が前記滅菌バッグの外部に配置された状態で、前記気密保持部材が前記滅菌バッグに設けられた開孔部に密着して挿入され、前記滅菌処理が施されることを特徴とする内視鏡の滅菌方法に関する。
【0026】
この場合、内視鏡本体を滅菌バッグに収容した状態で内視鏡及び滅菌バッグを滅菌することができ、滅菌処理時及び滅菌処理後の工程におけるハンドリング性に優れ、便利である。また特に、内視鏡(内視鏡本体、ユニバーサルコード及びコネクター部)の内部空間と連通する通気部を、滅菌バッグの外部に配置されるコネクター部又はユニバーサルコードに形成することにより、滅菌処理時においても内視鏡の内部空間と外部とを通気部を介して通気可能に連通することができる。したがって、オートクレーブ滅菌のように高温高圧環境下で滅菌処理が行われる場合であっても、内視鏡の内部と外部との間で圧力差が生じることを通気部の通気によって効果的に防止でき、内視鏡の破損等を防ぐことができる。
【0027】
なおここでいう「滅菌処理」は、いわゆる消毒処理も含みうる概念であり、その種類は特に限定されない。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、滅菌バッグに内視鏡を収容し、滅菌バッグの開孔部から内視鏡のコネクター部を外部に取り出し、滅菌バッグの開孔部に対して内視鏡の気密保持部材を密着して挿入することができる。したがって、滅菌バッグに内視鏡本体を収容した状態で、滅菌バッグ外に取り出されたコネクター部を使って内視鏡の状態を簡便に確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態に係る内視鏡の概略構成を示す外観斜視図である。
【図2】滅菌バッグの一例を示す斜視図である。
【図3】中間ブッシュの断面図である。
【図4】滅菌バッグに内視鏡を収容した状態を示す斜視透視図である。
【図5】滅菌バッグに内視鏡を収容した状態を示す側方透視図である。
【図6】滅菌バッグの開孔部ブッシュに対して内視鏡の中間ブッシュを挿入装着した状態を示す拡大断面図である。
【図7】図1の内視鏡及び図2の滅菌バッグを用いたオートクレーブ滅菌処理及び滅菌処理後の処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】気密テスター(通気デバイス)の一例を示す外観斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面を参照して本発明の実施形態について説明する。なお、理解を容易にするため、各図面に描かれる装置類の大きさ(縮尺)は必ずしも一致していないが、各装置間の関係は当業者であれば各図面から当然に理解されるものである。
【0031】
以下に説明する本発明の各実施形態では、滅菌バッグの開口(開孔部)に嵌合する径太のブッシュをユニバーサルコード(ユニバーサルケーブル)の途中の中途部分に配置し、コネクター部をブッシュより小径にする。そして、コネクター部を滅菌バッグ開口から外部に出した状態で内視鏡を滅菌できるようにし、滅菌後においても、内視鏡本体(挿入部及び手元操作部)の滅菌状態を保ったまま、滅菌バッグ内の内視鏡本体に対して内部空間の換気や各種チェックができるようにするものである。
【0032】
以下、本発明の具体的な実施形態について説明する。なお、下記構成は一例に過ぎず、本発明は他の構成の内視鏡及び滅菌バッグに対しても適用することが可能である。
【0033】
図1は、本発明の一実施形態に係る内視鏡10の概略構成を示す外観斜視図であり、図2は、滅菌バッグ70の一例を示す斜視図である。本例では、図1に示される内視鏡10が図2に示される滅菌バッグ70に収容されるようになっており、滅菌バッグ70は開孔部ブッシュ73によって気密に縁取られた開孔部72を有する。
【0034】
内視鏡10は、図1に示すように、ユーザー(術者)によって把持される手元操作部30と、この手元操作部30に連設され被験者(患者)の体内(体腔内)に挿入される挿入部25(可撓管部、湾曲部、先端硬質部)とを備える。また手元操作部30にはユニバーサルケーブル(ユニバーサルコード)40が接続され、ユニバーサルケーブル40の先端にはライトガイドコネクター(LGコネクター)45が設けられている。
【0035】
手元操作部30は挿入部25を制御操作するための操作部であり、送気・送水ボタン、吸引ボタン、シャッターボタン、アングル調整部等が手元操作部30に設けられている。送気・送水ボタンは、挿入部25の先端硬質部に配設された送気・送水ノズルから観察光学系(観察レンズ、観察窓)に向けてエアーや水を噴射するための操作ボタンである。また吸引ボタンは、先端硬質部に配設された鉗子口から病変部等を吸引するための操作ボタンであり、シャッターボタンは、観察画像の録画等を操作するための操作ボタンである。またアングル調整部は、挿入部25の湾曲部(アングル部)の湾曲状態を遠隔操作することができ、湾曲部を所望方向へ湾曲させることができる。
【0036】
さらに手元操作部30には、先端硬質部の鉗子口に連通する鉗子挿入部32が設けられ、鉗子挿入部32の開口端には鉗子栓が装着される。鉗子等の処置具は、鉗子挿入部32(鉗子栓)から挿入部25内の鉗子チャネル内に挿入され、先端硬質部の鉗子口から導出される。
【0037】
LGコネクター45は、挿入部25の先端部(先端硬質部)に配設される照明光学系に照明光を送るユニットである。LGコネクター45のうちユニバーサルケーブル40が接続される側の端部には、通気コネクター48が設けられると共に、配線ケーブル42を介して電気コネクター55が接続されている。またLGコネクター45の他端部には、不図示の光源装置に対して着脱自在に接続されるライトコネクター46、不図示の送気・送水装置に対して着脱自在に接続される送気・送水コネクター47、及び不図示の吸引装置(吸引ポンプ)に対して着脱自在に接続される吸引コネクター(不図示)が設けられている。
【0038】
通気コネクター48は、LGコネクター45、ユニバーサルケーブル40、配線ケーブル42、手元操作部30及び挿入部25の内部空間と連通する開口部である。すなわち、挿入部25、手元操作部30、ユニバーサルケーブル40、LGコネクター45及び配線ケーブル42の内部空間は、相互に連通し、一体的な空間を形成する。一方、内視鏡10を構成する部材間の各接合部はパッキン(不図示)によって補強連結されており、この内視鏡10内の内部空間は外部から密閉された気密(液密)防水構造を有する。したがって、LGコネクター45の通気コネクター48が、内視鏡10のこの密閉内部空間と外部とを繋ぐ唯一の経路(開口部)であり、通気コネクター48を介して内視鏡10内の密閉内部空間に通気することが可能となっている。
【0039】
配線ケーブル42を介してLGコネクター45に接続される電気コネクター55は、不図示のプロセッサーに対して着脱自在に連結されるようになっている。電気コネクター55をプロセッサーに接続することによって、内視鏡10の先端硬質部(観察窓)を介して得られる観察画像のデータがプロセッサーに出力され、さらにプロセッサーに接続されたモニターに観察画像を表示することができる。電気コネクター55には着脱自在のキャップ(図示省略)が連結されており、例えば洗浄時にはキャップが電気コネクター55に装着され、電気コネクター55の端子部分をキャップによって密閉保護するようになっている。
【0040】
一方、挿入部25は、手元操作部30側から順に、可撓管部、湾曲部、及び先端硬質部が配設されて構成される。可撓管部は、円筒状に形成された可撓性を有する部材であり、多層構造(外皮層等)をとることで必要とされる柔軟性及び剛性が得られ、挿入部25の体内挿入時の経路を確保する役割を担っている。湾曲部は、手元操作部30のアングル調整部により湾曲状態がコントロールされ、先端硬質部の先端面に設けられた観察窓、照明窓、送気・送水ノズル及び鉗子口の位置及び方向を適切に調整することができるようになっている。
【0041】
先端硬質部の観察窓の後方に配設されるCCD等の観察光学系から延びる信号ケーブルは、挿入部25、手元操作部30、ユニバーサルケーブル40、配線ケーブル42に挿通配線されて電気コネクター55まで延設されている。観察窓から取り込まれる観察像は、この信号ケーブルを介して電気コネクター55に送られ、電気コネクター55に接続されるプロセッサー及びモニターを介してユーザー(術者)によって確認可能となっている。また先端硬質部の照明窓の後方に配設される照明光学系から延びるライトガイドは、挿入部25、手元操作部30、ユニバーサルケーブル40に挿通され、LGコネクター45まで延設されている。LGコネクター45(ライトコネクター46)が不図示の光源装置に接続されると、ライトガイドを介して光源装置から照明窓に照明光が伝送されるようになっている。
【0042】
また先端硬質部の送気・送水ノズルは、手元操作部30の送気・送水ボタンによって操作される送気・送水バルブ(不図示)に連通され、この送気・送水バルブはLGコネクター45の送気・送水コネクター47に連通されている。したがって、送気・送水装置を送気・送水コネクター47に接続して送気・送水ボタンにより送気・送水バルブを操作することにより、先端硬質部の送気・送水ノズルからエアー又は水を観察窓に向けて噴射することができる。また先端硬質部の鉗子口は、手元操作部30の吸引ボタンによって操作される吸引バルブに連通しており、この吸引バルブはLGコネクター45の吸引コネクターに接続されている。したがって、吸引ポンプを吸引コネクター54に接続して吸引バルブを吸引ボタンにより操作することにより、先端硬質部の鉗子口から病変部等を吸引することができる。
【0043】
なお、LGコネクター45及び電気コネクター55の外径は、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73の開口径(開孔部72の径)よりも小さく、特に電気コネクター55の外径とユニバーサルケーブル40の外径との和は開孔部72の径よりも小さい。したがって、LGコネクター45及び電気コネクター55は、後述のように、滅菌バッグ70の開孔部72を介して滅菌バッグ70の内側から外側へ簡単に取り出すことができるようになっている。
【0044】
本例の内視鏡10は、ユニバーサルケーブル40に対して気密に取り付けられる中間ブッシュ(気密保持部材)60を備え、この中間ブッシュ60は滅菌バッグ70の開孔部72(開孔部ブッシュ73)に密着挿入することができる。
【0045】
図3は、中間ブッシュ60の断面図である。中間ブッシュ60は、ユニバーサルケーブル40、LGコネクター45及び電気コネクター55よりも大きな径を有しており、内視鏡本体20(手元操作部30)側の端部に形成される抜け防止フランジ62と、抜け防止フランジ62から軸方向Aへ間隔をおいて形成される抜け防止爪(突出部)64とを具備する。抜け防止フランジ62は、径方向Bに張り出してストッパーとして機能し、滅菌バッグ70の開孔部72の径(図2)よりも大きな径Dを有する。
【0046】
抜け防止爪64は、抜け防止フランジ62よりもLGコネクター45側に設けられる突出部を構成し、抜け防止爪64を含むこの突出部は、滅菌バッグ70の開孔部72の径よりも大きな外径Dを有する。抜け防止爪64は、図1に示されるように周囲の三辺が切り欠かれた爪状部であり、径方向Bへの形状弾性による移動及び復帰が可能となっている。したがって、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73(開孔部72)に対して中間ブッシュ60(抜け防止爪64)が押圧挿入される際に、突出部(抜け防止爪64)の外径Dが開孔部72の径と同じ径となるように抜け防止爪64は弾性移動する。そして、抜け防止爪64が滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73(開孔部72)を通過すると、抜け防止爪64は弾性により元の形状に回復し、突出部(抜け防止爪64)の外径Dは再び開孔部72の径よりも大きくなる。
【0047】
このようにして滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73に対して中間ブッシュ60が押圧挿入(装着)されると、開孔部ブッシュ73は抜け防止フランジ62と抜け防止爪64との間に配置される。中間ブッシュ60のうち、抜け防止フランジ62と抜け防止爪64との間の部位は、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73(開孔部72)と密着する密着部を構成し、開孔部ブッシュ73の開口径と略同一の外径Dを有する。したがって、この中間ブッシュ60の密着部に対して開孔部ブッシュ73が挿入装着されると、中間ブッシュ60と開孔部ブッシュ73(滅菌バッグ70)との間は気密に保たれることとなる。
【0048】
この抜け防止フランジ62と抜け防止爪64との間の密着部は、開孔部ブッシュ73が嵌合されるように、軸方向Aに関して、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73の厚み以上の長さを有する。例えば嵌合時に開孔部ブッシュ73の軸方向Aへのスライドを防ぎたい場合には、中間ブッシュ60の密着部の軸方向長さを開孔部ブッシュ73の厚み(軸方向長さ)と略同一とすることが好ましく、一方、嵌合時に開孔部ブッシュ73の軸方向Aへのスライドを許容したい場合には、中間ブッシュ60の密着部の軸方向長さを開孔部ブッシュ73の厚みよりも大きくすることが好ましい。
【0049】
なお、中間ブッシュ60のうち突出部(抜け防止爪64)よりもLGコネクター45側の部位(挿入通過部位)は、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73(開孔部72)の径以下の外径Dを有し、開孔部ブッシュ73を通過可能に設けられている。この中間ブッシュ60の挿入通過部位は、中間ブッシュ60が開孔部ブッシュ73に挿入装着された時に、抜け防止爪64と共に滅菌バッグ70の外側に配置されることとなる。
【0050】
一方、図2に示される滅菌バッグ70は、開孔部72によってバッグの内側と外側とが連通されており、この開孔部72には中間ブッシュ60と密着適合する開孔部ブッシュ(密閉ゾーン部)73が嵌め込まれている。
【0051】
この開孔部ブッシュ73は開孔部72に対して隙間なく密着接合されており、開孔部ブッシュ73と開孔部72との間は気密に保たれている。また開孔部ブッシュ73は、挿入連結される中間ブッシュ60と密着して気密(液密)状態を保つことができ、滅菌バッグ70内の密閉性を確保することができる。例えば、開孔部ブッシュ73の開口部の内径を中間ブッシュ60の密着部の外径Dと同一にすることで、開孔部ブッシュ73と中間ブッシュ60との間の気密を保つことができる。
【0052】
開孔部ブッシュ73の材質として、ゴム等の密着性に優れた弾性部材を好適に用いることができる。弾性部材によって開孔部ブッシュ73が構成される場合には、開孔部ブッシュ73の開口部の径(内径)を中間ブッシュ60の密着部の外径よりやや小さくして、開孔部ブッシュ73の弾性を利用して中間ブッシュ60を開孔部ブッシュ73に挿入することも可能である。この場合、開孔部ブッシュ73と中間ブッシュ60との間の気密性をより確実なものにすることができる。
【0053】
なお、滅菌バッグ70の他の部分(内視鏡10を収容するための収容開口等)の位置、形状、サイズ、材質等の特性は特に限定されるものではないが、後述のオートクレーブ滅菌時の高温高圧環境で使用可能な滅菌バッグ70であることが好ましい。したがって、耐高温高圧特性を有する一般的な軟質プラスチックや不織布等を適宜組み合わせて、滅菌バッグ70を構成してもよい。オートクレーブ滅菌耐性(高温高圧耐性)を有する滅菌バッグ70を用いることによって、中間ブッシュ60を利用する本発明の利便性が著しく向上し、滅菌時から利用時まで清浄な環境下で内視鏡10を適切に保管することができる。
【0054】
図4は滅菌バッグ70に内視鏡10を収容した状態を示す斜視透視図であり、図5は滅菌バッグ70に内視鏡10を収容した状態を示す側方透視図である。また図6は、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73に対して内視鏡10の中間ブッシュ60を挿入装着した状態を示す拡大断面図である。
【0055】
内視鏡10のうち、挿入部25及び手元操作部30(内視鏡本体20)は滅菌バッグ70の内側に配置される一方で、LGコネクター45、電気コネクター55、配線ケーブル42、及びLGコネクター45と中間ブッシュ60との間のユニバーサルケーブル40は、滅菌バッグ70の外側に配置される。すなわち、まず内視鏡10の全体が滅菌バッグ70に収容され、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73の開口を通して、LGコネクター45及び電気コネクター55が滅菌バッグ70の内側から外側に取り出される。そして、内視鏡10の中間ブッシュ60が滅菌バッグ70の内側から開孔部ブッシュ73に挿入装着され、中間ブッシュ60の抜け防止爪64と抜け防止フランジ62との間の密着部に対して開孔部ブッシュ73が密着嵌合される。
【0056】
このようにして、内視鏡10のうち内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)を滅菌バッグ70の内側に配置すると共に、コネクター部(LGコネクター45及び電気コネクター55)を滅菌バッグ70の外側に配置することができる。また、滅菌バッグ70の開孔部72(開孔部ブッシュ73)に対して密着挿入される中間ブッシュ60により、滅菌バッグ70の内外間の通気を遮断して気密に保つことができる。これにより、滅菌バッグ70に収容された状態の内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)に対して、滅菌バッグ70の外側のLGコネクター45及び電気コネクター55を利用した各種チェック等の所望プロセスを簡便に実行することが可能になる。
【0057】
図7は、図1の内視鏡10及び図2の滅菌バッグ70を用いたオートクレーブ滅菌処理及び滅菌処理後のチェック等の流れの一例を示すフローチャートである。
【0058】
使用後の内視鏡10には、付着した汚れを落とす清浄処理が施される。ここでいう「清浄処理」は、特に限定されるものではなく、内視鏡に付着する異物を取り除く処理全般を含みうる概念であり、例えば体液等の汚れをブラシや洗剤を用いて取り除くいわゆる洗浄処理だけではなく、視認することができない細菌やウイルスを死滅させるためのいわゆる消毒処理を含みうる。
【0059】
清浄処理が施された内視鏡10は、滅菌バッグ70内に収容される(図7のS10)。すなわち、内視鏡10を構成する内視鏡本体20(挿入部25、手元操作部30)、ユニバーサルケーブル40、中間ブッシュ60、LGコネクター45、配線ケーブル42及び電気コネクター55の全体が、滅菌バッグ70の開口(図示せず)から滅菌バッグ70内に収容される。
【0060】
そして、LGコネクター45、電気コネクター55、配線ケーブル42、及びLGコネクター45と中間ブッシュ60との間のユニバーサルケーブル40が、滅菌バッグ70の内側から開孔部ブッシュ73を通して滅菌バッグ70の外側に引っ張り出される(S12)。このとき外側に取り出される部材は、いずれも開孔部ブッシュ73の開口径よりも外径が小さいため、滅菌バッグ70の内側から外側に簡単に引っ張り出すことができる。
【0061】
そして、ユニバーサルケーブル40に設けられる中間ブッシュ60が、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73に対して密着挿入される(S14)。このとき、中間ブッシュ60のうちLGコネクター45側の端部(挿入通過部位)が滅菌バッグ70の内側から開孔部ブッシュ73の開孔部(開孔部72)に押圧挿入される。そして、滅菌バッグ70内において中間ブッシュ60の抜け防止爪64が開孔部ブッシュ73に到達した時、抜け防止爪64は、中間ブッシュ60に対する押圧力により径方向内側に撓んで縮径して、開孔部ブッシュ73を通過し、最終的には滅菌バッグ70の外側に配置される。このような一連の動作により、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73が中間ブッシュ60の抜け防止爪64と抜け防止フランジ62との間の密着部に気密嵌合する(図4〜図6参照)。このとき、中間ブッシュ60の密着部と滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73との間の相対移動は、ストッパーとして作用する抜け防止フランジ62及び抜け防止爪64によって規制されており、両者の嵌合が外れてしまうことが防がれている。
【0062】
このようにして、滅菌バッグ70内に内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)を配置すると共に滅菌バッグ70外にLGコネクター45及び電気コネクター55(コネクター部)を配置した状態で、内視鏡10は図示しないオートクレーブ滅菌装置に投入され、オートクレーブ滅菌処理が行われる(S16)。
【0063】
このオートクレーブ滅菌処理において、内視鏡10及び滅菌バッグ70は共に高温高圧環境下に置かれ、両者共に高度な滅菌処理が施されることとなる。このとき、一般的な内視鏡では、内視鏡内部の密閉空間と内視鏡の外部との間に過大な圧力差が生じて破損等の懸念があるが、本例の内視鏡10の密閉内部空間は外部に開放されているため、そのような懸念がない。すなわち、本例の内視鏡10では、LGコネクター45の通気コネクター48を介して、LGコネクター45、ユニバーサルケーブル40、配線ケーブル42、手元操作部30及び挿入部25の内部空間と外部とが通気可能に連通している。したがって、オートクレーブ滅菌処理時においても内視鏡10の内部空間と外部とは略同じ圧力に保たれ、一般の内視鏡で懸念される内視鏡10の内外の圧力差に起因する破損等の不利益を、通気コネクター48によって回避することができる。
【0064】
オートクレーブ滅菌処理が終了すると、内視鏡10は、内視鏡本体20が滅菌バッグ70に収容された状態で、使用時まで保管される。本例の内視鏡10によれば、オートクレーブ滅菌処理直後やそのような保管時において、LGコネクター45及び電気コネクター55を介した各種チェックや内視鏡10の密閉内部空間の通気処理を、滅菌バッグ70から内視鏡本体20を取り出すことなく行うことが可能である。例えば、オートクレーブ滅菌処理後に気密テスターや換気装置等の通気を利用する通気デバイスをLGコネクター45の通気コネクター48に対して装着することで、内視鏡10の密閉内部空間の通気処理(気密チェック、換気除湿、等)を行うことができる(S18)。
【0065】
図8は、気密テスター(送気器具)75の一例を示す外観斜視図である。図8に示す気密テスター75は、気圧測定ゲージを備えたテスター本体76と、テスター本体76に設けられた手動加圧ポンプ78と、基端部がテスター本体76に接続されると共に先端部に接続コネクター77が設けられるチューブ80とを備える。手動加圧ポンプ78を膨縮操作することによって、手動加圧ポンプ78からの加圧空気を、チューブ80を介して接続コネクター77から噴出することができるようになっている。
【0066】
したがって、滅菌バッグ70から内視鏡本体20を取り出すことなく、図8に示す気密テスター75の接続コネクター77をLGコネクター45の通気コネクター48に装着することで、気密テスター75から内視鏡10の内部空間に送気することができ、内視鏡10の気密性のチェックを適切に行うことができる。同様に、所定の換気装置(図示せず)の接続コネクターを通気コネクター48に装着して、当該換気装置から内視鏡10の内部空間への空気(乾燥空気)の送出及び内部空間の空気の吸引を繰り返すことで、内視鏡10の内部空間を換気して湿気(水分)を効果的に取り除くことができる。
【0067】
また、内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容した状態で、滅菌バッグ70の外側に配置されるLGコネクター45や電気コネクター55を介して、内視鏡10の光学系統、電気系統(電気回路)、等のチェックを行うこともできる(S20)。
【0068】
例えば、LGコネクター45のライトコネクター46に対して不図示の光源装置を接続することによって、ライトガイドを介して光源装置から挿入部25(先端硬質部)の照明窓に照明光が適切に伝送されるか否かの確認を、内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容した状態で行うことができる。同様に、LGコネクター45の送気・送水コネクター47に対して送気・送水装置を接続し、LGコネクター45の吸引コネクター(図示せず)に対して吸引ポンプを接続することで、送気/送水や吸引が適切に行われるか否かの確認を内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容した状態で行うことができる。また電気コネクター55に対して不図示のプロセッサー及びモニターを接続することで、内視鏡10の挿入部25(先端硬質部)を介して得られる観察画像のデータをプロセッサーに適切に出力することができるか否か、またモニターに観察画像を適切に表示することができるか否かの確認を、内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容した状態で行うことができる。
【0069】
そして、このような各種チェックにより不具合がないと判断された内視鏡10は、内視鏡本体20を滅菌バッグ70に収容した状態のまま保管される。この時、LGコネクター45及び電気コネクター55が滅菌バッグ70の外側に配置された状態で内視鏡10は保管されるため、再び各種チェックが必要になったとしても、内視鏡本体20を滅菌バッグ70内に収納したまま、LGコネクター45及び電気コネクター55を介して迅速且つ適切に対応することができ、非常に有用である。
【0070】
そして、内視鏡10(内視鏡本体20)は、使用直前に滅菌バッグ70から取り出され、使用される(S22)。
【0071】
<有益な効果>
以上説明したように、本例の内視鏡10及び滅菌バッグ70によれば、内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)を滅菌バッグ70内に収容しながらコネクター部(LGコネクター45及び電気コネクター55)を滅菌バッグ70外に配置して、内視鏡本体20とコネクター部との間のユニバーサルケーブル40の途中に設けられる中間ブッシュ60によって、滅菌バッグ70の開孔部72(開孔部ブッシュ73)を気密に塞ぐことができる。これにより、内視鏡本体20を滅菌バッグ70から取り出すことなく、滅菌バッグ70の外部に配置されるLGコネクター45及び電気コネクター55を利用した内視鏡10の各種チェック等を実施することができる。したがって、内視鏡10の不具合を滅菌バッグ70から内視鏡本体20を取り出すことなく確認することができ、不具合のないことが確認された内視鏡10(内視鏡本体20)を、使用直前まで滅菌バッグ70内の滅菌状態維持ゾーンにおいて保管することが可能になる。
【0072】
また、滅菌バッグ70の外側に配置されるLGコネクター45に通気コネクター48が設けられているので、この通気コネクター48を利用して、内視鏡10の密閉内部空間の気密チェックを簡便に実施することができる。特に通気コネクター48に換気装置を連結することで、内視鏡10の密閉内部空間の換気及び除湿を簡便に実施することも可能である。したがって、たとえオートクレーブ滅菌処理時に湿気(水分)が内視鏡10の密閉内部空間に侵入したとしても、迅速且つ適正にそのような湿気(水分)を密閉内部空間から取り除くことができ、故障等の不具合が防がれる。
【0073】
また、LGコネクター45及び電気コネクター55の外径が滅菌バッグ70の開孔部72の径よりも小さいので、LGコネクター45及び電気コネクター55が開孔部72をスムーズに通過することができ、LGコネクター45及び電気コネクター55を滅菌バッグ70の外側に取り出しやすい。
【0074】
また、中間ブッシュ60の抜け防止フランジ62及び抜け防止爪(突出部)64を滅菌バッグ70の開孔部72よりも大きな径とすることで、滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73から中間ブッシュ60が抜け落ちてしまうことを防ぐことができる。特に、形状弾性に富む抜け防止爪64を使用することで、抜け防止フランジ62と抜け防止爪64との間の中間ブッシュ60の密着部に対して、比較的簡単に滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73を嵌合させることができ、また容易に当該嵌合を外すこともできる。
【0075】
また、内視鏡本体20(挿入部25及び手元操作部30)は、滅菌バッグ70に収納された状態でオートクレーブ滅菌され、滅菌バッグ70から取り出されるまでその滅菌状態が保持される。したがって、被験者(患者)に接触する挿入部25及びユーザー(術者)に接触する手元操作部30を清潔な状態に保ったまま、内視鏡10を使用に供することができる。また、オートクレーブ滅菌処理時に環境圧力が変動しても、LGコネクター45に設けられる通気コネクター48によって内視鏡10の内部空間と外部との間における圧力差の発生を防止し、内視鏡10の破損等を防ぐことができる。
【0076】
また、中間ブッシュ60の抜け防止フランジ62と抜け防止爪64との間の部位(密着部)は滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73の開口径と略同一の外径Dを有するため、この中間ブッシュ60の密着部が開孔部ブッシュ73に沿ってスライド移動しても、中間ブッシュ60と開孔部ブッシュ73との間の密着性・気密性を適切に保つことができる。
【0077】
また、比較的小型で取り扱いが簡単な滅菌バッグ70を用いて、内視鏡10のオートクレーブ滅菌及び使用直前までの保管を適切に行うことができる。したがって、従来使用・提案されてきた比較的大型の複雑な内視鏡収納容器(特許文献4参照)を準備する必要がなく、コスト面、ハンドリング性、保管スペース等に関して、本発明に係る滅菌バッグ70及び中間ブッシュ60の組み合わせは非常に有利である。
【0078】
<変形例>
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、他の形態に対しても適宜応用可能である。
【0079】
例えば、上述の実施形態では抜け防止フランジ62及び抜け防止爪64を利用して中間ブッシュ60が滅菌バッグ70の開孔部ブッシュ73に固定されているが、ネジ締め等の他の固定方法によって中間ブッシュ60と開孔部ブッシュ73とを固定してもよい。
【0080】
また、内視鏡の使用時に露出する内視鏡本体20の外周部はユーザー(術者)及び被験者(患者)に直接接触するが、上述の内視鏡内部の密閉空間はユーザー及び被験者に接触することがなく、内視鏡内部の密閉空間とユーザー及び被験者との間は遮断されることとなる。したがって現実的には、内視鏡使用時において、内視鏡の外周部の滅菌状態が確保されていれば十分であり、内視鏡内部の密閉空間は内視鏡の外周部ほどの高度な滅菌状態は要求されないともいえる。しかしながら、内視鏡内部の密閉空間も、内視鏡の外周部と同等の高度な滅菌状態にあることが好ましい。そのため、通気コネクター48をキャップ等の密閉手段により密閉可能としてもよい。例えばオートクレーブ滅菌後から通気デバイスを取り付けるまでの間や、通気デバイスによる通気処理後から内視鏡10の使用時までの間、密閉手段により通気コネクター48を密閉することにより、通気コネクター48の通気路及び内視鏡10の内部空間の滅菌状態を良好に保持することが可能である。
【0081】
このような通気コネクター48の密閉手段は、特に限定されず、例えばバルブ本体のスライド移動を利用したコネクター構造を用いてもよい。すなわち、スプリング(付勢手段)により付勢されたスライド可能なバルブ本体をガイド管内に配置し、通気デバイスの接続コネクターが通気コネクター48に取り付けられるとバルブ本体がスプリングの付勢力に対抗してスライド移動して、ガイド管の内外を連通するガイド管開口部とバルブ本体内の通気路とを連通することができるようになっている。一方、接続コネクターが通気コネクター48から取り外されると、バルブ本体がスプリングの付勢力に対抗してスライド移動して、バルブ本体内の通気路を外部から遮断することができるようになっている。このように、通気デバイスの接続コネクターの脱着に連動して、通気コネクター48の密閉及び通気をコントロールする密閉手段によれば、内視鏡10の密閉内部空間の滅菌状態を簡便に保持することができる。
【0082】
また、上述の実施形態では内視鏡のオートクレーブ滅菌が行われているが、オートクレーブ滅菌以外の滅菌(消毒)処理に対しても本発明を適用することが可能である。そのような他の滅菌(消毒)処理において環境圧力が変動する場合であっても、LGコネクター45に設けられる通気コネクター48によって、内視鏡の内外は通気され圧力差が生じない。
【0083】
また、上述の実施形態ではLGコネクター45に通気コネクター48が設けられているが、内視鏡10の密閉内部空間と通気可能に連通するそのような通気コネクターは、滅菌バッグ70の外側に配置される他の部位に設けられてもよい。したがって、中間ブッシュ60とLGコネクター45との間のユニバーサルケーブル40や配線ケーブル42に対して、内視鏡10の密閉内部空間と通気可能に連通する通気コネクターを設けることも可能である。ただし、剛性が比較的高いLGコネクター45に通気コネクター48を設けることにより、ユニバーサルケーブル40や配線ケーブル42に要求される柔軟性や腰(剛性)に影響を与えることなく、内視鏡10の密閉内部空間と外部とを適切に連通することが可能である。
【0084】
また、ユニバーサルケーブル40に対して気密に取り付けられる気密保持部材(中間ブッシュ60)であってコネクター部(LGコネクター45、電気コネクター55)よりも大きな径を有する気密保持部材を、滅菌バッグ70の開孔部72に密着して挿入することができる任意の内視鏡10及び滅菌バッグ70に対して本発明は適用可能であり、各部間の連結手法や密閉構造は特に限定されない。
【符号の説明】
【0085】
10…内視鏡、20…内視鏡本体、25…挿入部、30…手元操作部、32…鉗子挿入部、40…ユニバーサルケーブル、42…配線ケーブル、45…LGコネクター、46…ライトコネクター、47…送気・送水コネクター、48…通気コネクター、55…電気コネクター、60…中間ブッシュ、62…抜け防止フランジ、64…抜け防止爪、70…滅菌バッグ、72…開孔部、73…開孔部ブッシュ、75…気密テスター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部と、前記挿入部を操作するための操作部とを有する内視鏡本体と、
前記操作部にユニバーサルコードを介して接続されるコネクター部と、
前記ユニバーサルコードに対して気密に取り付けられ、前記コネクター部よりも大きな径を有する気密保持部材と、を備える内視鏡であって、
前記気密保持部材は、前記内視鏡を収納するための滅菌バッグに設けられた開孔部に対して気密に密着して挿入することができることを特徴とする内視鏡。
【請求項2】
前記コネクター部の径は、前記滅菌バッグの前記開孔部の径よりも小さいことを特徴とする請求項1に記載の内視鏡。
【請求項3】
前記気密保持部材は、前記滅菌バッグの前記開孔部と密着する密着部と、前記開孔部の径よりも大きな径を有するフランジとを有することを特徴とする請求項1又は2に記載の内視鏡。
【請求項4】
前記気密保持部材は、前記フランジよりも前記コネクター部の側に設けられる突出部であって、前記滅菌バッグの前記開孔部の径よりも大きな径を有する突出部を有することを特徴とする請求項3に記載の内視鏡。
【請求項5】
前記突出部は、前記滅菌バッグの前記開孔部の径と同じ径になるように径方向へ弾性による移動が可能な爪状部を有することを特徴とする請求項4に記載の内視鏡。
【請求項6】
前記内視鏡本体の内部、前記ユニバーサルコードの内部及び前記コネクター部の内部は相互に連通して内部空間を構成し、
前記コネクター部又は前記コネクター部と前記気密保持部材との間の前記ユニバーサルコードは、前記内部空間と外部とを連通する通気部を有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の内視鏡。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の内視鏡を滅菌バッグに収容する工程と、
前記滅菌バッグに収容される前記内視鏡に対して滅菌処理を施す工程とを備える内視鏡の滅菌方法であって、
前記内視鏡は、前記内視鏡本体が前記滅菌バッグの内側に配置されると共に前記コネクター部が前記滅菌バッグの外部に配置された状態で、前記気密保持部材が前記滅菌バッグに設けられた開孔部に密着して挿入され、前記滅菌処理が施されることを特徴とする内視鏡の滅菌方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−42873(P2013−42873A)
【公開日】平成25年3月4日(2013.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−181834(P2011−181834)
【出願日】平成23年8月23日(2011.8.23)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】