説明

内視鏡用バルーンカテーテル

【目的】 大容量バルーンを有し超音波内視鏡鉗子孔への挿通に適したバルーンカテーテルの提供。
【構成】 空気流通ルーメン4及び水流通ルーメン6を設けたバルーンカテーテルのチューブ1を超音波内視鏡鉗子孔先端から挿入し、内視鏡手元部に顔出しさせた端部に空気流通用側中管を有するコネクター7が取り付けらるので、超音波内視鏡鉗子孔への取付け挿通が容易且つ短時間に行われるとともに、バルーン2が鉗子孔内を通過しないのでバルーン膜を傷つけず耐久性に優れる。コネクターの気密取付用パッキン11a,11bの当接する部分には、ルーメン内の硬質管状体の挿入等によるルーメン狭窄防止手段が施され、パッキン押圧力によるルーメンの狭窄を防止し、空気及び水の流通が確保される。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、バルーンカテーテルに関し、詳しくは内視鏡特に超音波内視鏡に挿通して食道、腸等の所要局部に導入し、該器官内にバルーンを膨張させて閉塞し、診断、手術等に使用するバルーンカテーテルに関するものである。
【0002】
【従来の技術】消化管系の超音波内視鏡による診断、手術が広く行われるようになってきた。従来の内視鏡の鉗子孔から細径化した超音波プローブを挿入し、内視下に病変を観察しながら確実にかつ容易に病変部の超音波断層像を得る方法が一般的となっている。鉗子孔は二つあり、大鉗子孔の孔径は3〜5mm,小鉗子孔の孔径は3mm以下、通常2.3〜2.8mmである。大鉗子孔は超音波プローフを挿入するために用いられ、食道閉塞用バルーンカテーテルは小鉗子孔から挿入することとなる。しかしながら、内腔径が3.5〜5cmの大きさの食道を閉塞できるだけの大きさと耐久性をもつバルーンを、2.3〜2.8mm内径の小鉗子孔中を通過させることは極めて困難である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記困難性を解決する方法として、発明者らはバルーン膨張時の大きさを確保し、且つ収縮時のバルーン外径を内視鏡鉗子孔を挿通できる細さとする方法を発明し特許出願しているが、さらに、上記方法以外に他の方法の可能性を考究し、閉塞用バルーンの設けられたカテーテルを内視鏡鉗子孔の手元側から挿入するのではなく、内視鏡を患者の食道に挿入する前に内視鏡鉗子孔先端から、バルーンカテーテルのチューブをバルーン部側とは逆の端部より挿入し、チューブ先端部を内視鏡手元端から顔出しさせ、この端部にカテーテル操作用コネクターを装着すればよいことを着想した。
【0004】しかし、コネクター取り付けに際し、コネクター取付部の気密性を保持するためのパッキンが軟質のカテーテルチューブを締め付け、そのためパッキン部分で細いル−メンが狭窄され、バルーン操作用空気または超音波伝達媒体としての水が通り難くなる問題がある。ルーメンが狭窄されるとバルーンの膨張、収縮に時間がかかり患者の苦痛と危険が伴い、使用出来ない場合も生じる。発明者らは、コネクター取付けの際に、ルーメンが狭窄を受けずに空気または水の流通を確保できる方法について考究し、硬質管状体でパッキンによる押圧力を受け止め、またはコネクター対応部分を硬質化すれば良いことを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】かくして、本発明によれば、少なくとも内視鏡の鉗子孔を通過できるチューブと該チューブ遠位端部に取り付けられたバルーン及びチューブ近位端部に脱着自在に被装されるコネクターからなり、前記チューブのコネクターの取付位置にルーメンの狭窄防止手段が施され、該狭窄防止手段としてルーメン内対応部位にスパイラル状又は筒状の硬質管状体を嵌挿したもの、チューブ対応部位にスパイラル状又は筒状の硬質管状体を外嵌したもの、コネクター取付対応部を硬化型接着剤で硬化させたもの及びコネクター挿入結合部分を硬質チューブで形成したものである内視鏡用バルーンカテーテルが提供される。
【0006】本発明に係るバルーンカテーテルとして、2ルーメン型、即ちバルーンの膨張及び収縮操作用の空気流通用のルーメンと、バルーン取付部より手元側のチューブ壁に設けた超音波伝達物質である水の流出口と導通した水流通用のルーメンを内蔵したチューブを例に取って説明する。図1は、本発明バルーンカテーテルのルーメン狭窄防止手段の第1の方法を適用したもので、チューブを内視鏡鉗子孔手元端から顔出しさせ、この端部にカテーテル操作用コネクターを装着したときの主要部の拡大断面図で、チューブ1の先端部に膨張前の収縮状態のバルーン2が取り付けられ、チューブにはバルーン部に開口した空気口3と導通した空気流通ルーメン4及びバルーン外に開口した水流出口5と導通した水流通ルーメン6が設けられている。チューブ手元部には側注管付きのコネクター7が装着され、チューブ内の水流通ルーメン6はコネクターの端部に開口し、コネクターの側注管8はチューブの空気開口9を介して空気流通ルーメンと導通し、バルーンの膨張、収縮操作用空気の流通に用いられる。なお、空気流通ルーメン4の端部は空気が洩出しないように密封されている。次に、図2の説明図に示すようにコネクターの手元側雌ネジ部に接続材10の雄ネジ部がねじ込まれ、前記雌ネジ部内奥に挿入された環形弾性パッキン11aを押圧し、押圧されたパッキンは中心方向に内径を縮小する。同様に、コネクターのバルーン側雄ネジは連結材12の雌ネジ部内奥に置かれた環形弾性パッキン11bを押圧し、押圧されたパッキンは中心方向に内径を縮小する。押圧され、中心方向に圧縮力を及ぼすパッキンは、その部位でカテーテルチューブを押圧し気密に密封している。
【0007】前述のパッキンによる圧縮力に抗して、空気流通ルーメンの空気開口9のバルーン側端とパッキン11bのバルーン側端に対応する部分の内壁には内嵌硬質管状体13aが嵌挿され、同様に水流通ルーメン6のパッキン11a、11bの両端間の対応する内壁に内嵌硬質管状体13bが嵌挿されている。内嵌硬質管13a及び13bは、筒状とした金属管例えばステンレス等の金属もしくは硬質合成樹脂製中空管のほか、例えば図6に示すチューブに外嵌して装着されたステンレス等の金属もしくは硬質合成樹脂で作成したスパイラル状の筒状体、または連続した筒状もしくは複数の輪状体から構成された管状体でもよく、その強度、取付作業性を考慮して決められるが、水または空気の流通性を確保するため、それぞれのルーメンの断面積の60%以上を確保するように設計されている。以上、2ルーメン型のバルーンカテーテルを例にとって説明したが、水等は別途方法で供給し、バルーン操作用のルーメンのみを有する1ルーメン型の場合、或いは3本以上のルーメンを有するバルーンカテーテルについても、ルーメン数に対応したコネクターとカテーテルチューブのそれぞれのルーメンのパッキン締付部間対応部間に硬質中空管状体を嵌挿したものを用いれば良い。
【0008】次に、ルーメンの狭窄防止手段の第2の方法について説明する。図3はコネクター装着部の断面図で、前記方法とは逆に、バルーンカテーテルチューブのコネクター挿入部分に外嵌硬質状体14が外嵌され、パッキンの押圧求心力を受け止め、ルーメンの狭窄を防止している。図6はスパイラル状の硬質管状体を外嵌した部分の斜視図である。なお、前記内嵌又は外嵌に代えて、硬質管状体をチューブ壁内に埋め込んで設けてもよい。また、第3の方法として、図4に示すように、コネクターのパッキンにより押圧力を受ける部分に、硬化型接着剤15を塗着し、此の部分を硬化させ、パッキンの押圧求心力を受け止め、ルーメンの狭窄を防止することができる。さらに、第4の方法として、図5に示すようにバルーンカテーテルのコネクター挿入部分を硬質合成樹脂で成形した硬質端末管16とし、カテーテル本体の端末と密に接合させてもよい。
【0009】
【作用】従来の内視鏡手元部から鉗子孔へバルーンカテーテルを挿入する方法では、先端口を通す為の抵抗が大きく、収縮状態のバルーン部分がカテーテル先端部に緩んだ状態で巻き付けられていると挿入が円滑に行われ難く、操作に時間がかかるが、本発明においては、内視鏡先端の鉗子孔口からチューブを内視鏡手元側にかけて挿入するので容易且つ速やかに挿入でき術者、患者の負担が大きく軽減される。又、バルーンカテーテル挿通に利用する鉗子孔は鉗子等の種々の金属器具を通すため、内腔は傷ついていることが多く、バルーン通過の際、細かいスジ状の擦過傷を生じ、バルーン破損の原因となることがある。本発明では、バルーンは鉗子孔の内腔を通過せず、バルーン先端部を残してバルーン胴部を鉗子孔内に注意深く挿入されるので、バルーン部分が鉗子孔内壁内で傷つくおそれがない。従って、耐久性、すなわち、繰り返し使用できる回数が増大する。さらに、コネクター取り付けに際し、バルーンチューブルーメンのコネクターパッキン部位に対応する部分には狭窄防止手段が施されているので、パッキン締め付けによる押圧力が作用しても、ルーメンは狭窄を受けず、水、空気の流通が確保される。例えば、空気用ルーメンの内径を0.9mmとした場合、硬質管状体をルーメン内に内嵌めした場合でも、硬質管状体内腔の断面積は少なくともルーメン断面積の60%が確保されるよう硬度、肉厚等が定められるので、少なくとも0.7mmの内径となり、充分使用に差し支えない流通が確保され、バルーンの膨張、収縮に要する時間が長引くことが殆どない。
【0010】
【発明の効果】本発明によれば、超音波内視鏡鉗子孔へのバルーンカテーテルの挿入を容易にかつ短時間で行なうことができ、術者及び患者の負担を大幅に軽減でき、かつかつ鉗子口装着時にバルーン膜を傷つけることがなく、繰り返し使用に耐えるので、超音波内視鏡による食道等疾患の診断に大きく貢献するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るバルーンカテーテル第1の実施例の構造を示す一部省略拡大断面図である。
【図2】コネクターを構成する部材の構造を示す説明図である。
【図3】本発明に係るバルーンカテーテルの第2の実施例のコネクター結合部分の構造を示す断面図である。
【図4】本発明に係るバルーンカテーテルの第3の実施例の端末部構造を示す説明図である。
【図5】本発明に係るバルーンカテーテルの第4の実施例の端末部構造を示す説明図である。
【図6】硬質管状体をスパイラル状としてチューブに嵌挿した実施例を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 チューブ
2 バルーン
3 空気口
4 空気流通ルーメン
5 水流出口
6 水流通ルーメン
7 コネクター
8 側注管
9 空気開口
10 接続材
11a パッキン
11b パッキン
12 連結材
13a 内嵌硬質管状体
13b 内嵌硬質管状体
14 外嵌硬質管状体
15 硬化型接着剤
16 硬質端末管

【特許請求の範囲】
【請求項1】 少なくとも内視鏡の鉗子孔を通過できるチューブと該チューブ遠位端部に取り付けられたバルーン及びチューブ近位端部に脱着自在に被装されるコネクターからなり、前記チューブのコネクターの取付位置にルーメンの狭窄防止手段が施されていることを特徴とする内視鏡用バルーンカテーテル。
【請求項2】 前記狭窄防止手段がルーメン内対応部位にスパイラル状又は筒状の硬質管状体を嵌挿したものである請求項1記載の内視鏡用バルーンカテーテル。
【請求項3】 前記狭窄防止手段がチューブ対応部位にスパイラル状又は筒状の硬質管状体を外嵌したものである請求項1記載の内視鏡用バルーンカテーテル。
【請求項4】 前記狭窄防止手段がチューブ対応部位に硬化型接着剤を接着硬化させたものである請求項1記載の内視鏡用バルーンカテーテル。
【請求項5】 前記狭窄防止手段がコネクター取付対応部を硬質チューブで形成したものである請求項1記載の内視鏡用バルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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