説明

内部強化構造材

【課題】建築材料,土木材料その他の構造体用の構造材の強度又は柔軟性を高める。
【解決手段】この発明は、外周壁によって筒状,箱状又は枠状に形成される外殻材1内に、ボール状又はブロック状に形成された中空体よりなる多数の内部補強材2を密接させて集合状態で充填して収容した構造材の改良に関する。
上記内部補強材2が単一の又は複数種類の多角形を規則的に繰り返して組合せてなる外周面を有する単一の又は複数種類の多面体2からなり、該多面体2の収容状態において前記多角形の面が隣接する他の多面体2の多角形の面と互いに密接し合うとともに、多面体2の複数の周壁2aが外殻材1の周壁1aに対して傾斜し又は山形若しくは谷形をなして対向するように多面体2を配置収容してなるものである。
また多面体2の接触し合う山形又は谷形に傾斜した一組以上の多角形の面を、外殻材1内に作用する力の方向に対向させるように多面体2を配置集合させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は各種の建築材料,土木材料,略面材料その他の構造材として使用する内部強化構造材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来主として外力を吸収する耐震性等を付与するため又は外力に対する強度自体を高めるための上記のような構造材又は建築材料としては特許文献1〜3等に示すものが公知である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2005−84854号公報
【特許文献2】特開2007−177574号公報
【特許文献3】特表2007−512490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の発明は筒状又は箱状の空中の外殻部材内に多数の中空の金属球を充填収容し、構造材としての外殻部材の強度アップや衝撃吸収力を図るものであるが、充填物が球体であるため、外殻部材内部での充填物同士の接点が点接触で小さく且つ外力に対しては剛体としての安定性に乏しいほか、充填材同士を固着した場合もこの固着力が乏しいために外力によって分離する欠点がある。
【0005】
特許文献2の発明は長方形の壁枠内に、多数の直方体形状の多数のプラスチック製ブロックを枡目状に並べて集合させ、壁枠内に嵌合固定するものであるが、ブロックの単純な四角形の周壁のみでは外力に耐え切れないために各ブロック内にはブロック周壁の強度補強のために格子状に交差し合う板状リブを形成する必要がある。またこの補強リブを設けない場合は周壁を相当肉厚にする必要がある。
【0006】
さらに特許文献3の発明は、内部のリブにより複数の空間に区切られた多筒状断面の板状材を積層固着した構造材であるが、これは全体が一体固着されるために外力に対する柔軟性に乏しく且つ積層される素材が板状材であるために十分な重量軽減が図りづらいという欠点がある。
この発明はこれらの問題点を解決し、強力な外力に対して十分な剛性と柔軟性を発揮し得る軽量な構造材を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明の構造材は、第1に、外周壁によって筒状,箱状又は枠状に形成される外殻材1内に、ボール状又はブロック状に形成された中空体よりなる多数の内部補強材2を密接させて集合状態で充填して収容した構造材であって、上記内部補強材2が単一の又は複数種類の多角形を規則的に繰り返して組合せてなる外周面を有する単一の又は複数種類の多面体2からなり、該多面体2の収容状態において前記多角形の面が隣接する他の多面体2の多角形の面と互いに密接し合うとともに、多面体2の複数の周壁2aが外殻材1の周壁1aに対して傾斜し又は山形若しくは谷形をなして対向するように多面体2を配置収容してなることを特徴としている。
【0008】
第2に、多面体2の接触し合う山形又は谷形に傾斜した一組以上の多角形の面を、外殻材1内に作用する力の方向に対向させるように多面体2を配置集合させたことを特徴としている。
【0009】
第3に、隣接する多面体2の多角形の面が同一形状の面同士で互に重なり合って密接することを特徴としている。
【0010】
第4に、集合する多面体2の最外側の多面体2の外側の面と外殻材1の内面とが密着することを特徴としている。
【0011】
第5に、集合する多面体2の最外側の多面体2と外殻材1の内面との間に谷形断面の空間が形成された場合に、該谷形断面の空間に適合する多面体からなる異形補強部材2’を挿入してなることを特徴としている。
【0012】
第6に、隣接する多面体2同士を接着その他の固着手段により相互に固着させてなることを特徴としている。
【0013】
第7に、集合する多面体2の最外側の多面体2の外側の面と外殻材1の内面とを接着その他の固着手段により固着させてなることを特徴としている。
【0014】
第8に、集合する多面体2の一部又は全部の隣接し合う多面体2同士及び集合する最外側の多面体2の外側面のと外殻材1の内面とを、集合した多面体2に外力が作用した際に互に摺動し合うように固着しない構造にしたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
以上のように構成される本発明によれば次のような効果を奏する。
(1)内部補強部材である多面体の多角形の周面が規則的な組合せからなるため、これらを外殻材内に相互に密着させて集合させて充填する際にその配置も規則的に配列することができ、均一な集合配置が簡単であるとともに均一な配列により全体としての強度も均一化できる。
また中空多面体の周壁が交差し合う複数の方向の外力に対し、山形又は谷形に傾斜した状態で対向して筋交い状で作用するので、比較的薄肉の周壁であっても強い強度を保つ利点があり、軽量化にも有効である。
【0016】
(2)隣接して接触し合う多面体の周面が互に山形又は谷形に接して外力に対向するので、接触周壁部分でも上述した筋交い方向に強力に作用するほか、多面体同士を固着しないものでは多面体同士の摺動や変形によって外力を吸収する効果がある。
【0017】
(3)多面体の同一形状の周面同士が重なり合って密接することにより、多面体の配置自体の規則性が確保され配置及び充填が容易で外殻材の強度も(多面体同士を固着しないものでは外力吸収も)均一になる。
【0018】
(4)多面体周面が外殻材内面と密着するので、球状のボールの場合のような点接触による応力集中が回避できる。
【0019】
(5)多面体外周と外殻材内面と間の空間にその空間形状と適合する別の多面体を収容するので、内部補強材と外殻材内面との密着度が向上し、外力に対する多面体への応力集中(集中負荷)が避けられる。
【0020】
(6)多面体同士を固着することにより内部補強材の剛性が高まり、さらに内部補強材と外殻材内面の固着により全体の剛性が向上する。
【0021】
(7)多面体同士及び多面体と外殻材内面を固着しないでそれぞれの接触面が互に摺動可能にすることにより、構造材に加わる外力に対し、柔軟性が確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(A)は本発明の第1実施例を示し、四角形の外殻材内に直方体又は立方体からなる中空多面体を収容した構造材の横断面図,(B)はその縦(軸)方向断面図である。
【図2】(A)は同じく第2実施例の構造材の横断面図,(B)は同じくその縦(軸)方向断面図である。
【図3】(A)は本発明の第3実施例の構造材の横断面図,(B)は(A)と同一形状の多面体の向きを45°回転させて充填した構造材の変形例を示す横断面図である。
【図4】(A)は直方体又は立方体からなる多面体の内部構造の1例を示す断面図,(B)は同じく直方体又は立方体からなる多面体の内部構造の他の例を示す断面図である。
【図5】(A)は図2で使用した多面体(立方八面体)の平面図,(B)は同じくその正面図である。
【図6】(A)は図3で使用された多面体(菱形立方八面体)の平面図,(B)は同じくその多面体を45°回転させた状態の周面図である。
【図7】(A)〜(G)は本発明の内部補強材として使用可能な多面体を例示するものである。(A)は立方体,(B)は立方八面体(図2で使用),(C)は菱形立方八面体(図3で使用),(D)は正四面体,(E)は正八面体,(F)は正十二面体,(G)は正二十面体をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下本発明実施形態を図面に基いて説明すると、図1は四角形(略正方形)断面の筒状外殻材1の中空の内部に、多数の小型の中空立方体(又は直方体でも良い)からなる多面体を内部補強材2として集合状態で充填して収容した構造材を示している。
【0024】
この構造材は鉄材,鋼材その他の金属材又は合成樹脂材,FRP,木材その他又はこれらの組合せ等その用途に応じて選択することができ、外殻材1と多面体2の材料も必ずしも同一である必要はない。
【0025】
この例では内部補強材2は、多数の中空立方体からなる多面体を図1に示すように隣接する多面体の多角形(正方形)の面が平面視で重なり合って密接し合うように整列させ、集合させた状態で外殻材1内に収容している。
【0026】
この時すべての多面体2は平面視では図1(A)に示すように四角形の外殻材1の断面の対角線(45°傾斜)方向にクロスして整列され、外殻材1の各周壁1aに対し45°の角度に傾斜した交差方向に向いており、この例では隣接する多面体は上下方向に互に1/2の高さずつずらされており、水平方向の外力に対して各上下方向列の多面体同士が互に規制しあう構造に配列されている。
【0027】
上記配列により各立方体型多面体の周壁はこの例ではすべて周壁に対して斜め方向に傾斜し且つ山形又は谷形に対向している。その結果外殻材1の周壁1aから加わる外力に対しては、内部ではく字形又はへ字形の一対の周壁で受け止める構造になっており、高い強度を発揮する。
【0028】
また上記のように外殻材1内に多面体2を充填挿入すると多面体2の周面と外殻材1の周壁内面との間には多面体の配列状態に応じて形成される凹凸形状の中空部が形成され、周壁1aに外力が作用した時にはこれと当接している多面体2の稜線又は突端に集中荷重を受けることになる。
このため内部補強材の周面と外殻材周壁1a内面との間の空間には、この空間と同一形状の外形を備えた中空の多面体よりなる異形補強部材2’を介挿している。
この異形補強材2’の挿入によりこれと内部補強材2は全体としてブロック状に集合して外殻材1の内面に全体が面接触し、外力に対しても周面全体で受け止めることができる。
【0029】
また多面体2は図4(A)に示すようにその中空内部に、対角方向にクロスする板状の対角リブ2bと、該対角リブ2bと各稜線において一体的に交差する相似形で、一定の空間を介して同芯的に三重に配置される正方形の箱状リブ2cとを備えており、多面体の内部補強が図られている。
【0030】
その他多面体2は図4(B)に示すように周壁2aを単純に二重壁にしたものを用いることもでき、このような多面体自体の補強は、図1,図4のケースに限られず後述する各種形状の中空多面体に応用することができる。
【0031】
図2(A),(B)は本発明の第2実施例を示し、この場合は、正方形又は長方形の筒状又は箱状の周壁1aを備えた外殻材1内に、中空の立方八面体からなる多面体2を内部補強材として整列充填した場合を示している。
【0032】
多面体2の外形は図5(A),(B)及び図7(B)に示すような立方八面体であり、図2に示す例では同図(A)に示すように水平断面視で、多面体2が六角形に見え且つ前後の正方形の多角形面が上下の外殻材内壁面及び隣接する多面体2の同一形状の面と重なり合うように整列配置して充填されている。
【0033】
そして多面体2と外殻材1の内壁面との間に形成される多面体形状の空間及び多面体2同士の隣接空間として形成される多面体形状の空間には、それぞれその空間形状に適合する多面体形状の異形多面体2’が介挿され、多面体全体が外殻材1の内面に適合する状態で充填挿入されている。
その結果外殻材1と内部補強材2,2’及び内部補強材同士は全体として互いに密接し合った一個の剛体のように形成されることになる。
【0034】
図3(A),(B)は共に図6(A),(B)及び図7(C)に示す中空の菱形立方八面体を正方形断面の筒状外殻材1内に整列充填したもので、図3(A)は平面視で縦横方向にクロスして連続する14個の正方形周面のうち、前後、左右、上下の6面が外殻材1の周壁内面及び隣接多面体同士での接触面となるように整列配置して密接充填したものである。
【0035】
そしてこの例では外殻材1の周壁1aの内面と、集合状態にある多面体2(内部補強材)の周面との間に形成される凹凸空間には図1の場合と同様に、これに適合する形状の中空の異形多面体2’を介挿し、多面体の集合体の全周面が外殻材1の内面に密着する構造となっている。
【0036】
図3(B)の構造材は平面視において各多面体2の姿勢を同図(A)よりそれぞれ45°ずつ回転させた状態で配列充填したものであり、この場合も多面体2の上下左右前後の正方形の面が隣接する多面体同士及び集合状態の多面体周面と外殻材1の内面との接触面となっている。
【0037】
図3に示す多面体2の配列でも、図示するように各多面体2の周壁の少なくとも一部が、外殻材1の周壁1aに対して傾斜して交差するように山形又は谷形を形成して対向しており、外殻材1の周壁からの外力に対して筋交い方向に作用する構造となっている。
【0038】
上記外殻材1は多面体2の形状にかかわらず、その配列方法により長方形,五角形以上の多角形,円形であっても少なくとも交差する複数の方向に対して多面体2の周壁2aが上記のような山形又は谷形に対向して強力な剛性を発揮することができ、外殻材1の周壁1aと集合多面体外周との凹凸は、必要に応じその凹凸に適合する形状の異形多面体を挿入することにより、外殻材1と集合多面体外周との密着状態の確保は可能となる。
【0039】
また外殻材1内に充填される多面体2同士及び充填された集合多面体の周面と外殻材1内面のそれぞれの接触(密着)面間は接着剤又は相互の溶(融)着その他の手段により固着する場合もあり、これを敢えて固着しない場合もある。
【0040】
上記接触面同士を固着した場合は、外力に対して構造材全体の剛性が高まるのに対し、固着しない場合は、外力に対し多面体間又は多面体と外殻材内面同士の摺動や外殻材及び多面体の変形により、柔軟に作用することが可能になる。
【0041】
上記実施例では多面体2は図1に示す立方体、図2に示す立方八面体(正三角形の周面×8,同一辺の正方形の周面×6を有し、図5(B)に示すようにこの形は立方体の変形でもある)、図3に示す菱形立方八面体(正三角形周面×8,同一辺の正方形周面×18を有し、この場合も平行に相対する6面を持つ立方体の変形である)を示したが、これらの他に図7(D)〜(G)に示す正四面体,正八面体,正十二面体、正二十面体等の中空多面体の使用が可能である。
【0042】
このような多面体は周面の一種又は複数種の多角形が規則的に且つ複数組組合されている点に特徴があり、このような多面体を用いることにより、外殻材内の配列や組合せも規則的に且つ均一化できる利点があり、さらに整列充填の効率も良い。但し規則的な配列や効率等を考慮すると、過度に多くの面を有する多面体は望ましくなく、球体は既述のように不適当である。
【0043】
また多面体の外殻材への充填は予め仮付状態又は固着状態で組合せて嵌合挿入してもよいし、順次ロボット等を用いて規則的に配列しながら組合せて挿入することもできる。
【0044】
その他いずれの場合も各多面体内部又は外殻材内の空間内にジェル状,ペースト状,粉状,粒状の充填物を充填することにより全体の強度アップや外力に対する変形時の復元性を確保することも可能である。
【符号の説明】
【0045】
1 外殻材
1a 周壁
2,2’ 内部補強材(多面体,異形補強部材)
2a 周壁
2b 対角リブ
2c 箱状リブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周壁によって筒状,箱状又は枠状に形成される外殻材(1)内に、ボール状又はブロック状に形成された中空体よりなる多数の内部補強材(2)を密接させて集合状態で充填して収容した構造材であって、上記内部補強材(2)が単一の又は複数種類の多角形を規則的に繰り返して組合せてなる外周面を有する単一の又は複数種類の多面体(2)からなり、該多面体(2)の収容状態において前記多角形の面が隣接する他の多面体(2)の多角形の面と互いに密接し合うとともに、多面体(2)の複数の周壁(2a)が外殻材(1)の周壁(1a)に対して傾斜し又は山形若しくは谷形をなして対向するように多面体(2)を配置収容してなる内部強化構造材。
【請求項2】
多面体(2)の接触し合う山形又は谷形に傾斜した一組以上の多角形の面を、外殻材(1)内に作用する力の方向に対向させるように多面体(2)を配置集合させた請求項1の内部強化構造材。
【請求項3】
隣接する多面体(2)の多角形の面が同一形状の面同士で互に重なり合って密接する請求項1又は2の内部強化構造材。
【請求項4】
集合する多面体(2)の最外側の多面体(2)の外側の面と外殻材(1)の内面とが密着する請求項1,2又は3の内部強化構造材。
【請求項5】
集合する多面体(2)の最外側の多面体(2)と外殻材(1)の内面との間に谷形断面の空間が形成された場合に、該谷形断面の空間に適合する多面体からなる異形補強部材(2’)を挿入してなる請求項1,2,3又は4の内部強化構造材。
【請求項6】
隣接する多面体(2)同士を接着その他の固着手段により相互に固着させてなる請求項1,2,3,4又は5の内部強化構造材。
【請求項7】
集合する多面体(2)の最外側の多面体(2)の外側の面と外殻材(1)の内面とを接着その他の固着手段により固着させてなる請求項6の内部強化構造材。
【請求項8】
集合する多面体(2)の一部又は全部の隣接し合う多面体(2)同士及び集合する最外側の多面体(2)の外側面のと外殻材(1)の内面とを、集合した多面体(2)に外力が作用した際に互に摺動し合うように固着しない構造にした請求項1,2,3又は5の内部強化構造材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−1990(P2012−1990A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138982(P2010−138982)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【出願人】(502197781)
【Fターム(参考)】