説明

冊子カバー、及び冊子カバーが装着された冊子

【課題】冊子カバーの折り曲げに対する反発力が発生することや、重力などにより冊子が冊子カバーから離脱することを抑制する。
【解決手段】リング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子の表紙に着脱自在に装着される冊子カバーであって、前記冊子カバーは、一又は複数の前記表紙のそれぞれに装着される表紙用カバーと、前記表紙用カバーの一側端から延出し、当該表紙用カバーを前記冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置するように形成された舌片と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子に対し、その表紙に装着してこれを保護するための冊子カバー、及び冊子カバーが装着された冊子に関する。
【背景技術】
【0002】
冊子の表紙に装着し、冊子を使用することにより当該冊子の表紙が汚損するのを防ぐための冊子カバーが多数提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一枚のシートを折り返して袋部を形成し、当該袋部に冊子の第一表紙と第二表紙とをそれぞれ挿入して、第一表紙と第二表紙とをともに覆う一体の冊子カバーが示されている。
【0004】
また、特許文献2には、第一表紙と第二表紙とについてそれぞれ分離した第一表紙用カバーと第二表紙用カバーとを有し、第一表紙用カバーと第二表紙用カバーとはそれぞれの一側端同士が紐でつながれており、当該紐で繋がれた箇所は各表紙用カバーをそれぞれの表紙に装着した状態において冊子の背面に近接し、冊子の厚さに応じて紐をゆるめたり締めたりして調整する冊子カバーが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】実開昭58−147773号公報
【特許文献2】実開昭59−126666号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、リング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子は、例えば、一本の針金などの線材を折り曲げてコイルやバネのような連続輪体を形成したスパイラルリングや、連続輪体を二重に形成したダブルリングと呼ばれるリング状の綴じ具を有する。このような冊子は、表紙とその間に挟まれる用紙とのそれぞれの一側端に開設された綴じ穴に連続輪体を挿通して形成される。用紙のページを捲るには、綴じ穴が連続輪体の内周に沿って回動すればよく、表紙や用紙を折り曲げたりこれらをのばしたりする行程が不要である。そのため、表紙や用紙の夫々隣り合うページとの間の角度を180度にしたり360度にしたりする見開きが容易であり、このような使われ方が頻繁にされるものである。
【0007】
特許文献1に記載の冊子カバーは、前述のように第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位とが一体に形成された冊子カバーである。従って、仮にこの冊子カバーをリング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子に装着すると、表紙と冊子カバーとの間の摩擦力によって装着状態が維持され、リング状の綴じ具が冊子カバーに覆われる。
【0008】
この状態で表紙を360度捲ると、冊子カバーは冊子を閉じる方向とは逆方向に折り曲げられる。この際、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位との境界に一本の線状の折り目が自然に発生するとは限らない。そのため、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位との境界に複数の折り目による皺が発生することで、皺同士が重合したり、皺がリング状の綴じ具に当接したりするため、折り曲げにくい上に見栄えが悪い。
【0009】
また、冊子カバーの材質の硬さによっては、折り曲げる力に対する反発力が、表紙を3
60度捲った状態から180度の状態、すなわち冊子カバーを折り曲げない状態に回復させるようにはたらいたり、冊子カバーが表紙から離脱するようにはたらいたりすることが考えられる。
【0010】
なお、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位とを分離することも考えられる。両者を分離すれば、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位との境界がそもそも存在せず、折り目や皺が発生することもない。また、折り曲げる力に対する反発力が作用することもない。しかしながら、特許文献1に記載の冊子カバーは、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位とが一体に形成されることで、冊子の表紙との固定状態が維持される。換言すると、冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位とを分離すると、冊子の表紙との固定状態を十分に維持することができず、冊子カバーが表紙から離脱することが考えられる。
【0011】
他方、特許文献1に記載の冊子カバーを冊子に装着した場合には、冊子の状態によっては、冊子が落下して冊子カバーから離脱するという問題がある。具体的には、特許文献1に記載の冊子カバーを冊子に装着した状態で冊子を閉じたとき、冊子カバーのみを持って袋部の開口部を重力方向に向けたとしても、冊子が落下しようとすることで冊子カバーの第一表紙を覆う部位と第二表紙を覆う部位とを接続する部位と冊子の背面部に位置するリング状の綴じ具とが当接している。よって、冊子が落下することは無い。しかしながら、例えば、冊子を閉じた状態から、第一表紙もしくは第二表紙を360度捲ったり、第一表紙と第二表紙とをともに180度捲ったりして、第一表紙と第二表紙とが冊子カバーを介して重なった状態で冊子カバーのみを持って袋部の開口部を重力方向に向けると、冊子が落下しようとすることで冊子と冊子カバーとが当接するような箇所が無い。そのため、冊子の質量と重力加速度とにより発生する力が表紙と冊子カバーとの間の摩擦力を上回る場合に冊子が落下して冊子カバーから離脱するという問題が考えられる。
【0012】
特許文献2に記載の冊子カバーでも、特許文献1に記載の冊子カバーと同様に、冊子カバーのみを持って袋部の開口部を重力方向に向けると、冊子の質量と重力加速度とにより発生する力が表紙と冊子カバーとの間の摩擦力を上回る場合に冊子が落下して冊子カバーから離脱するという問題が考えられる。
【0013】
本発明はこのような点に鑑みてなされたものであり、冊子カバーの折り曲げに対する反発力が発生することや、重力などにより冊子が冊子カバーから離脱することを抑制する技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。
【0015】
本発明は、リング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子の表紙に着脱自在に装着される冊子カバーであって、一又は複数の前記表紙のそれぞれに装着される表紙用カバーと、前記表紙用カバーの一側端から延出し、当該表紙用カバーを前記冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置するように形成された舌片と、を備える。
【0016】
本発明の冊子カバーでは、表紙用カバーが、一又は複数の表紙のそれぞれに装着される。換言すると、表紙が複数からなる場合でも、表紙用カバーは互いに分離している。従って、冊子カバーと他の冊子カバーとの境界がそもそも存在せず、折り目や皺が発生することもない。また、折り曲げる力に対する反発力が発生することもない。また、本発明の冊子カバーでは、舌片が表紙用カバーを冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置し、冊子カバーが表紙から離脱するのを抑制する。また、本発明の冊子カバーは、表紙が汚損するのを抑制することができる。更に、本発明の冊子カバーは、冊子カバーが装着された冊子
の表紙や用紙をリング状の綴じ具の内周に沿って容易に回転させることができる。
【0017】
表紙用カバーは、冊子の表紙に装着して当該冊子を閉じた状態において外側に位置する外側カバー片と、前記外側カバー片に接合され、前記外側カバー片と前記表紙とを当接させて固定するための固定片とを有する構成としてもよい。これにより、外側カバー片と前記表紙とを当接させて固定することができる。なお、前記外側カバー片と前記固定片とは袋体を形成し、当該袋体の開口部から前記表紙を挿入するように形成されてもよい。
【0018】
さらに、表紙用カバーは、冊子の第一表紙と第二表紙とにそれぞれ装着する第一表紙用カバーと第二表紙用カバーとからなる構成としてもよい。
【0019】
これにより、表紙用カバーを冊子の表紙に装着して当該冊子を閉じたとき、冊子カバーとリング状の綴じ具とは当接しない。そのため、冊子カバーの形状は、冊子の厚さの違いやこれに伴うリング状の綴じ具の大きさによる影響を受けることもない。
【0020】
さらに、本発明の冊子カバーは、閉じた状態から、第一表紙もしくは第二表紙を360度捲ったり、第一表紙と第二表紙とをともに180度捲ったりして、前記第一表紙と前記第二表紙とが冊子カバーを介して重なるように位置させることができる。このような状態でも、前記冊子カバーとリング状の綴じ具とは当接しない上、前記第一表紙と前記第二表紙との間に折り目や皺が発生することがない。従って、冊子カバーを折り曲げる力に対する反発力を考慮する必要は無い。
【0021】
なお、第一表紙用カバーと第二表紙用カバーとが互いに分離していると、例えば、冊子に装着された表紙用カバーのみを持って当該表紙用カバーの開口部が下に位置するように向けたとき、表紙が当該表紙用カバーから離脱する方向と重力加速度の方向とが一致する。そのため、冊子の質量と重力加速度とにより発生する力が当該表紙用カバーとそれが装着された表紙との間の摩擦力を上回ると、冊子が落下する力を阻害するものが無ければ、冊子が落下して当該一方の表紙用カバーから離脱するおそれがある。しかしながら、本発明の冊子カバーでは、舌片が表紙用カバーを冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置するので、冊子カバーが表紙から離脱するのを抑制することができる。
【0022】
ここで、本発明の冊子カバーにおいて、前記舌片は、前記表紙用カバーの一側端から延出する延出部と、当該延出部に連設され当該延出部の延出方向とは異なる方向に屈曲するように延出する屈曲部とを有し、前記屈曲部は、前記表紙用カバーを前記冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置し、前記冊子カバーを冊子から取り外す方向に移動させようとしたとき、前記綴じ具に当接して当該移動を阻害するように構成してもよい。屈曲部は、表紙用カバーを冊子に装着したときに綴じ具の内側に綴じ具と当接せずに位置するので、冊子カバー装着された表紙を容易に捲ることができる。また、屈曲部は、冊子カバーを冊子から取り外す方向に移動させようとしたとき、綴じ具に当接するので、冊子カバーの移動を阻害することができる。換言すると、冊子カバーが表紙から離脱するのを抑制することができる。
【0023】
なお、前記舌片は可撓性を有することが好ましい。これにより、舌片を撓ませて、綴じ具の内側に位置する舌片を綴じ具から取り外すことができる。
【0024】
また、本発明は、上述した冊子カバーが装着された冊子として特定することもできる。
【発明の効果】
【0025】
本願発明によれば、冊子カバーの折り曲げに対する反発力が発生することや、重力などにより冊子が冊子カバーから離脱することを抑制する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】冊子カバーを冊子に装着した状態を示す斜視図。
【図2】冊子カバーを冊子に装着して開いた状態を示す斜視図。
【図3】冊子カバーを冊子に装着して冊子を閉じた状態を示す平面図。
【図4】冊子を閉じた状態から一方の表紙を360度捲った状態を示す平面図。
【図5】冊子を閉じた状態から両方の表紙をともに180度捲った状態を示す平面図。
【図6】冊子カバーを冊子から取り外す方向に移動させたときの舌片付近の拡大図。
【図7】舌片を撓ませた状態を示す拡大図。
【図8】冊子カバーを冊子に装着して冊子を閉じた状態で、ペンホルダにペンを装着した状態を示す図。
【図9】外側カバー片と固定片とが袋体を形成しない実施例の平面図。
【図10A】他の実施例における舌片の拡大図(1)。
【図10B】他の実施例における舌片の拡大図(2)。
【図10C】他の実施例における舌片の拡大図(3)。
【図10D】他の実施例における舌片の拡大図(4)。
【図10E】他の実施例における舌片の拡大図(5)。
【図11】従来の冊子カバーを冊子に装着して折り曲げた状態を示す図。
【図12】従来の冊子カバーが装着された冊子の表紙のみを持った状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(実施形態1)
本発明を図に基づいて説明する。なお、以下に説明する実施形態は本発明の例示であり、本発明は実施形態に限定されるものではない。
【0028】
図1は、本実施形態の冊子カバーをリング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子の表紙に装着した状態を示している。同図に示すように、この冊子カバー2は、第一表紙用カバー5と第二表紙用カバー6とからなり、両者がそれぞれ第一表紙3、第二表紙4に装着される。なお、これ以降第一表紙3と第一表紙用カバー5との関係について説明するが、第二表紙4と第二表紙用カバー6との関係もこれと同様である。リング状の綴じ具には、一本の針金などの線材を折り曲げてコイルやバネのような連続輪体を形成したスパイラルリングや、連続輪体を二重に形成したダブルリングと呼ばれるリング状の綴じ具が例示される。
【0029】
ここで、図2は、冊子カバーを冊子に装着して開いた状態を示す。図3は、本実施形態の冊子カバー2を冊子1に装着して冊子を閉じた状態であり、図4は、図3に示す状態から同図中最上面に位置していた第一表紙用カバー5を第1表紙2に装着した状態でこれらを360度捲って、第一表紙3と第二表紙4と用紙12とが重合した状態であり、図5は、図3に示す状態から第一表紙用カバー5(第一表紙3)と第二表紙用カバー3(第二表紙5)とをともに180度捲って、第一表紙3と第二表紙4とが重合して用紙12がこれらと重合しない状態を、それぞれ示している。
【0030】
図2、図3等に示すように、第一表紙用カバー5は、平面視において長方形であり、冊子1を閉じた状態で外側に位置する外側カバー片7と冊子1を閉じた状態で内側(用紙12側)に位置する固定片8とが接合されることで構成されている。固定片8の短辺は、外側カバー片7の短辺よりも短く形成されている。外側カバー片7と固定片8とは、一部を除いた箇所で接合されており、袋体を形成する。固定片8の綴じ具11側の長辺は接合されておらず、この接合されていない箇所が袋体の開口部10となる。第一表紙3を開口部10から第一表紙用カバー5の袋体に向けて挿入することで外側カバー片7と第一表紙3
と固定片8との間に発生する摩擦力により、第一表紙3と第一表紙用カバー5との装着状態が維持される。
【0031】
この摩擦力は、大きく設定されると第一表紙3を第一表紙用カバー5に挿入することが困難となるが、装着後において不意に両者が離脱することが少なくなる。一方、摩擦力が小さく設定されると第一表紙3を第一表紙用カバー5に挿入することが容易となるが、装着後において第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することが多くなる。
【0032】
ここで、図11(a)は、従来の第一表紙と第二表紙とをともに覆う一体の冊子カバー16を冊子17に装着して冊子を閉じた状態から、両方の表紙をともに180度捲った状態であり、図11(b)は、一方の表紙を360度捲った状態を示す図である。また、図12は、図11(a)に示す従来の冊子カバーの表紙用カバーのみを持って袋部の開口部を重力方向に向けた状態を示す図である。第一表紙用カバー18が第一表紙20から不意に離脱する場合とは、例えば、図11、図12に示すように、冊子17に装着された第一表紙用カバー18のみを持って第一表紙用カバー18の開口部19が下に位置するように向けたときが例示される。この場合、第一表紙20が冊子カバー16から離脱する方向と重力加速度の方向とが一致する。そのため、冊子17の質量と重力加速度とにより発生する力が第一表紙20と第一表紙用カバー18との間の摩擦力を上回ると、冊子17が落下して第一表紙用カバー18から離脱する。
【0033】
従って、実施形態に係る冊子カバー2において、第一表紙用カバー5の第一表紙3に対する挿抜性を良好に維持しながら第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することが少ない冊子カバーを提供する際には、挿入が困難でなく不意に離脱することが少ない好適な摩擦力を設定することが必要である。これは、冊子の材質や質量(冊子の厚さ)に大きく左右されるため、本実施形態の冊子カバーをあらゆる厚さの冊子に対応できるものとする場合、摩擦力の設定のみで良好な挿抜性を獲得することは困難である。そこで、本実施形態の第一表紙用カバー5は、舌片9を備える。
【0034】
図2、図3等に示すように、第一表紙用カバー5の綴じ具11側の長辺の両端部には、第一表紙用カバー5の上記長片から綴じ具11側に延出し、この第一表紙用カバー5を冊子1に装着したときに綴じ具11の内側に位置するように形成された舌片9が形成されている。より詳細には、舌片9は、第一表紙用カバー5の綴じ具11側の長片の両端部から夫々綴じ具11側に延出した延出部91と、この延出部11から更に延出した領域が綴じ具11側に直角に屈曲することで形成された屈曲部92とを含む。屈曲部92の先端は、綴じ具11の内側、より詳細には、綴じ具11を構成する複数のリングのうち、端部に位置するリングの内側、かつ、この端部のリングと隣接するリングの間まで延出している。
【0035】
図2、図3等に示すように、冊子カバー2を冊子1に装着した状態において、舌片9は綴じ具11(端部に位置するリング)に当接せずにその内側に位置しており、この状態は、冊子を閉じた場合でも表紙を捲った場合でも維持される。つまり、本実施形態の冊子カバーが装着されていても、冊子を捲ることの操作性に影響を与えない。
【0036】
図7は、第一表紙用カバー5を第1表紙2から取り外す方向に移動させたときの舌片9付近の拡大図である。
【0037】
冊子カバー2を冊子1に装着した状態において、舌片9は綴じ具11に当接せずにその内側に位置しているが、この状態から第一表紙用カバー5を第1表紙2から取り外す方向に移動させると、舌片9の屈曲部92が綴じ具11の内側(端部に位置するリングの内側)に当接する。その結果、これ以降の第一表紙用カバー5の移動が阻止される。つまり、外側カバー片7と第一表紙3と固定片8との間に発生する摩擦力にかかわらず、屈曲部9
2と綴じ具11の内周とが前述した第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することを阻止することができる。
【0038】
これにより、第一表紙用カバー5の第一表紙3に対する挿抜性を良好に維持しながら第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することが少ない冊子カバーを提供するに際し、摩擦力を小さめに設定することができる。
【0039】
つまり、仮に、外側カバー片7と第一表紙3と固定片8との間に発生する摩擦力が小さく、かつ冊子1の質量が大きい場合でも、舌片90と綴じ具11の耐久力と前記摩擦力との合力とにより、第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することを阻止することができる。
【0040】
図7は、第一表紙用カバー5を第一表紙3から取り外す直前の状態、または第一表紙用カバー5を第一表紙3に装着する直前の状態を示す、舌片9付近の拡大図である。
【0041】
前述したように、冊子カバー2を冊子1に装着した状態から第一表紙用カバー5を第1表紙2から取り外す方向に移動させると舌片9の屈曲部92が綴じ具11の内側に当接してその移動が阻止される。そのため、綴じ具11を変形させることなく第一表紙用カバー5を第一表紙3から取り外す際には、屈曲部92に対しこれが綴じ具11の内周を通ることを避ける動きを加える必要がある。
【0042】
つまり、第一表紙用カバー5を第一表紙3に装着した状態において、屈曲部92を綴じ具11の内側から離脱する方向に変形せしめた後に、第一表紙用カバー5を第1表紙2から取り外す方向に移動させればよい。図7は、舌片9を撓ませた状態を示す拡大図。
【0043】
これを実現するために、舌片9は可撓性を有していてもよいし、舌片9のうち屈曲部92のみが可撓性を有していてもよいし、屈曲部92と延出部91とがヒンジを介して連設されていてもよいし、屈曲部92と延出部91と第一表紙用カバー5との境界がすべてヒンジにより形成されていてもよい。そして、これらの条件から、冊子カバー2の材質や厚さ、冊子1の材質や質量により好適なものが選択されることが好ましい。
【0044】
なお、ヒンジについては図示しないが、第一表紙用カバー5を第1表紙2から取り外す方向に移動した際に舌片90が綴じ具11の内周に当接することを維持するため、ヒンジによる屈曲部92の延出部91に対する可動方向は、当該移動と舌片90の変形とが連動しないものであることが必要である。
【0045】
本実施形態の第一表紙用カバー5は、更にペンホルダ13を備える。図8は、本発明の冊子カバー2を冊子1に装着して冊子を閉じた状態で、ペンホルダ13、14にペンを装着した状態を示す図である。
【0046】
第一表紙用カバー5および前記第二表紙用カバー6は、それぞれ舌片9を有する一方の長辺と対向する他方の長片に筒状のペンホルダ13、14を有している。第一表紙用カバー5のペンホルダ13と前記第二表紙用6カバーのペンホルダ14は、第一表紙用カバー5と第二表紙用カバー6とをそれぞれ第一表紙3と第二表紙4とに装着したときに、何れかのペンホルダの図中下端が他のペンホルダの図中上端よりも上に位置するように配されている。
【0047】
ペンホルダ13、14は何れも片を折り返すことで形成され、内部にペン15を貫通させる貫通穴を有している。これにより、ペン15を、図8において上側に位置するペンホルダ13の図中上端から図中下端に向けて貫通させ、さらにペンホルダ14の図中上端か
ら図中下端に向けて貫通させて、第一表紙用カバー5と前記第二表紙用カバー6とをペン15により固定することができるため、冊子1が不意に開くことを防ぐこととペン15を収納することとを同時に実行することができる。
【0048】
以上説明した実施形態1の冊子カバー2では、表紙用カバー5、6が、第一表紙3、第二表紙4のそれぞれに装着される。換言すると、表紙用カバー5、6は互いに分離している。従って、冊子カバーと他の冊子カバーとの境界がそもそも存在せず、冊子カバー2に折り目や皺が発生することもない。また、折り曲げる力に対する反発力が発生することもない。また、冊子カバー2では、舌片9が表紙用カバー5、6を冊子2に装着したときに綴じ具11の内側に位置し、冊子カバー5、6が第一表紙3、第二表紙4から離脱するのを抑制する。また、冊子カバー2は、第一表紙3、第二表紙4が汚損するのを抑制することができる。更に、冊子カバー2は、冊子カバー2が装着された冊子1の第一表紙3、第二表紙4や用紙12をリング状の綴じ具11の内周に沿って容易に回転させることができる。更に、冊子1が不意に開くことを防ぐこととペン15を収納することとを同時に実行することができる。
【0049】
(実施形態2)
図9(a)は、実施形態2の冊子カバーをリング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子の表紙に装着した状態を示している。また、図9(b)は、実施形態2の変形例を示す。実施形態2は、冊子1の質量が小さい、すなわち外側カバー片7と第一表紙3と固定片8との間に発生する摩擦力を小さく設定することが可能である場合に採用される。
【0050】
この場合において、第一表紙用カバー5が第一表紙3から不意に離脱することを防ぐためには、舌片9と綴じ具11とで離脱する方向への移動の大半を阻止することができる。そのため、外側カバー片7と固定片8とが袋体を形成してこれらと第一表紙3とが当接する面積を増やして摩擦力を大きくする必要は無い。そこで、実施形態2では、図9(a)に示すように、固定片8は、細い帯状に形成されている。帯状の固定片8は、冊子の表紙の硬さなどに応じていくつ設けられてもよい。図9(a)に示す実施形態2では、帯状の固定片8が、2本設けられている。具体的には、帯状の固定片8は、外側カバー片7における角部のうち、綴じ具11側の長辺と平行な他方の長辺の両端部に位置する二つの角部近傍に、帯の長手方向と外側カバー片7の長辺(綴じ具11の反対側)とが所定の角度を成すように設けられている。所定の角度は、本実施形態では約45度であるが、これに限定されるものではない。また、図9(b)に示す実施形態2の変形例では、帯状の固定片8が1本設けられている。具体的には、帯状の固定片8は、外側カバー片7における上記他方の長辺から綴じ具11側に所定の間隔をあけて、帯の長手方向と上記他方の長辺とが平行になるように設けられている。
【0051】
実施形態2の冊子カバー2によれば、実施形態1の冊子カバー2の効果に加えて、固定片8の面積を大幅に小さいものにできるため、材料費を軽減することができる。
【0052】
(実施形態3)
図10Aから図10Eは、舌片9の形状に関する他の実施例を示す図である。舌片9は、第一表紙用カバー5の一側端から延出する延出部91と、これに連設されて当該延出部の延出方向とは異なる方向に屈曲するように延出する屈曲部92とを有していればよく、その形状や数はどのようなものでもよい。
【0053】
舌片9は、その数が少なければ、挿抜性は高いが、大きい質量の冊子に対して離脱防止の機能を果たせないばかりか、冊子の移動により受ける大きい力が綴じ具11の少ない箇所に集中して綴じ具に大きな負担を与える。一方、舌片9は、その数が多ければ、挿抜性は低いものの、大きい質量の冊子に対して離脱防止の機能を担保することができる。これ
らの条件から、冊子カバー2の材質や厚さ、冊子1の材質や質量により好適なものが選択されることが好ましい。
【0054】
図10Aに示す舌片9aは、第一延出部91a、第一屈曲部92a、第二延出部93a、第一屈曲部94aによって構成されている。第一延出部91aは、第一表紙用カバー5の綴じ具11側の長片の両端部から夫々綴じ具11側に延出している。第一屈曲部92aは、第一延出部91aから更に延出した領域が綴じ具11側に直角に屈曲することで形成されている。第一延出部91aと第二延出部93aとは、綴じ具11の一つのリングを跨ぐように、リング1つ分の幅よりも広い間隔をあけて配置されている。第二延出部93aは、第一表紙用カバー5の綴じ具11側の長片の両端部の近傍から夫々綴じ具11側に延出している。第二屈曲部94aは、第二延出部93aから更に延出された領域が第一屈曲部92a側に直角に屈曲することで形成されている。第二屈曲部92aと第二屈曲部94aとの先端同士の間は、分断されている。これにより、舌片9aは、綴じ具11から取り外し自在である。図10Aに示す舌片9aは、綴じ具11のリングを第一延出部91及び第二延出部93aで挟み込む構成であり、実施形態1の舌片9よりも、冊子カバー2が冊子2から離脱し難くなる。
【0055】
図10Bに示す舌片9bは、第一延出部91b、第一屈曲部92b、第二延出部93b、第一屈曲部94bによって構成されている。図10Bに示す舌片9bは、図10Aに示す舌片9aと異なり、第一延出部91bと第二延出部93bとが、綴じ具11の二つのリングを跨ぐように、リング二つ分の幅よりも広い間隔をあけて配置されている。また、このような舌片9bが第一表紙カバー5の綴じ具11側の長辺に沿って連続して複数設けられている。図10Bに示す舌片9bは、綴じ具11のリングを第一延出部91及び第二延出部93aで挟み込む構成であり、更に、このような舌片9bが複数連設していることから、図10Aに示す舌片9aよりも、冊子カバー2が冊子2から離脱し難くなる。
【0056】
図10Cに示す舌片9cは、第一延出部91c、第一屈曲部92c、第二延出部93c、第一屈曲部94cによって構成されている。図10cに示す舌片9cは、図10bに示す舌片9bと異なり、第一屈曲部92c及び第二屈曲部94cがそれぞれ第一延出部91及び第一屈曲部92cから二方向に屈曲するように延出することで形成されている。換言すると、各舌片9cがT字状である。なお、第一延出部91cと第二延出部93cとが、綴じ具11の二つのリングを跨ぐように、リング二つ分の幅よりも広い間隔あけて配置されている点は、図10bに示す舌片9bと同じである。そして、このような舌片9cが第一表紙カバー5の綴じ具11側の長辺に沿って連続して複数設けられている。図10Cに示す舌片9cは、綴じ具11のリングを第一延出部91及び第二延出部93aで挟み込む構成であり、更に、このような舌片9bが複数連設している。また、図10Cに示す舌片9cは、全てのリングが何れかの舌片9cに挟み込まれている(図10Bに示す舌片9bは、二つのリングおきに舌片9bによって挟み込まれないリングが存在する)ことから、図10Bに示す舌片9aよりも、冊子カバー2が冊子2から離脱し難くなる。
【0057】
図10Dに示す舌片9dは、第一延出部91d、第一屈曲部92dによって構成されている。図10dに示す舌片9dは、実施形態1の舌片9と異なり、第一屈曲部92dの先端が第一表紙用カバー5側に更に屈曲することで形成されている。これにより、実施形態1の舌片9よりも、冊子カバー2が冊子2から離脱し難くなる。
【0058】
図10Eに示す舌片9eは、第一延出部91e、第一屈曲部92eによって構成されている。図10eに示す舌片9eは、図10Cに示す舌片9cと同じく、T字状である。但し、図10eに示す舌片9eは、図10Cに示す舌片9cと異なり、第一表紙用カバー5の綴じ具11側の長辺の両端部近傍にのみ設けられている。図10Eに示す舌片9eは、一つの舌片9eが少なくとも二つのリングに当接できるので、実施形態1の舌片9よりも
、冊子カバー2が冊子2から離脱し難くなる。
【0059】
なお、上記した種々の内容は、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲に於いて可能な限り組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0060】
1 冊子
2 冊子カバー
3 第一表紙
4 第二表紙
5 第一表紙用カバー
6 第二表紙用カバー
7 外側カバー片
8 固定片
9 舌片 91 延出部 92 屈曲部
10 開口部
11 綴じ具
12 用紙
13、14 ペンホルダ
15 ペン
16 従来の冊子カバー
17 従来の冊子カバー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リング状の綴じ具を用いて綴じ込まれた冊子の表紙に着脱自在に装着される冊子カバーであって、
一又は複数の前記表紙のそれぞれに装着される表紙用カバーと、
前記表紙用カバーの一側端から延出し、当該表紙用カバーを前記冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置するように形成された舌片と、を備える
冊子カバー。
【請求項2】
請求項1に記載の冊子カバーであって、
前記舌片は、前記表紙用カバーの一側端から延出する延出部と、当該延出部に連設され、当該延出部の延出方向とは異なる方向に屈曲するように延出する屈曲部とを有し、
前記屈曲部は、前記表紙用カバーを前記冊子に装着したときに綴じ具の内側に位置し、前記冊子カバーを冊子から取り外す方向に移動させようとしたとき、前記綴じ具に当接して当該移動を阻害する
冊子カバー。
【請求項3】
請求項2に記載の冊子カバーであって、
前記舌片は可撓性を有する
冊子カバー。
【請求項4】
請求項1から3の何れか1項に記載の冊子カバーが装着された冊子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10A】
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【図10B】
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【図10C】
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【図10D】
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【図10E】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−78916(P2013−78916A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−220811(P2011−220811)
【出願日】平成23年10月5日(2011.10.5)
【出願人】(000129437)株式会社キングジム (241)