説明

再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法

【課題】NGH(天然ガスハイドレート)輸送船のNGH貨物倉内のNGHペレットを、簡単な構成で、安定して効率良く再ガス化することができる、再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法を提供する。
【解決手段】NGH貨物倉10と、循環水に熱を供給する熱交換器22と、循環水を前記NGH貨物倉10と前記熱交換器22との間を循環させる循環用ポンプ21を備えると共に、前記NGH貨物倉10の上部にガス排出配管11と循環水散水装置13を設け、更に、前記NGH貨物倉10の内部に開口部から前記NGH貨物倉10内の循環水を前記NGH貨物倉10の底部10aよりも下に配置された排水配管17を経由して前記循環水用配管18に導く循環水降下管16を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NGH(天然ガスハイドレート)輸送船の船倉に搭載されているNGHを、循環水を用いて簡単な構成で効率良く再ガス化できる再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
天然ガスハイドレート(以下、NGHという)の海上輸送を担うNGH輸送船には、揚げ荷したNGHペレットを陸上で再ガス化することを前提として、NGH搬送用の機械式荷役装置を備えたNGH輸送船と、船内で再ガス化したガスを揚げ荷することを前提として、NGH輸送船の船内に再ガス化設備を備えた再ガス化可能なNGH輸送船(NGHリガス輸送船)とがある。
【0003】
この再ガス化可能なNGH輸送船では、船内にNGHの再ガス化設備が必要となるが、船内にNGH揚げ荷用の機械式荷役装置を設ける必要がなくなり、また、揚げ地においても、NGH貯蔵設備や再ガス化設備を設ける必要が無くなるというメリットがある。そのため、これらの設備を設けるスペースが無い揚げ地で、NGHを利用する際に、輸送と再ガス化の両方の重要な役割を果たす船舶として、再ガス化可能なNGH輸送船が期待されている。
【0004】
この船内でNGHを再ガス化する船舶の一例としては、NGHを揚げ荷する船舶ではないが、例えば、NGHが貯蔵されたNGHタンクと、このNGHタンクより供給されるNGHを分解して燃料ガスを生成するNGH分解装置を備えて、このNGHガス化装置により生成された燃料ガスを用いてガスエンジン発電機で電力を生成し、この電気でプロペラをモータで駆動する船舶が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
この船舶のNGH分解装置は、NGH分解槽とNGH分解用の温水をNGH分解槽内のNGHタンクから搬送し、ネット上に溜められたNGHペレットの上方から噴霧することで、NGHを分解し、分解した天然ガスをNGH分解槽の上方に設けたガス排出口より取り出して、ガスエンジン発電機に供給する。一方、分解されたNGH分解水は、NGH分解槽の下部に張られたネットを通過してNGHペレットと分離され、NGH分解槽の下方に設けた排水口より取り出されて、温水器で加熱、又は、海水との熱交換等によって、昇温された後、NGH分解用の温水として使用される。
【0006】
しかしながら、この船舶では、再ガス化を行うためのNGH分解装置をNGHタンクとは別に設ける必要があり、NGH輸送船に適用しようとすると、揚げ荷時に大量に再ガス化する必要があるので、NGH分解装置の再ガス化能力を高める必要が生じ、NGH分解装置が大型化し、輸送用のNGHタンクの容積を減少させる必要が生じるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−126830号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記の問題を回避するために、船舶側で、再ガス化を行う再ガス化可能なNGH輸送船において、NGH貨物倉内のNGHを再ガス化装置に搬送して再ガス化する代わりに、NGH貨物倉内で再ガス化を行うことが考えられる。この方が、再ガス化装置のためのスペースや配管や機器類、及び、NGH貨物倉から再ガス化装置までの搬送用機器が不要になり、効率的である。
【0009】
また、NGH貨物倉内での再ガス化を迅速に行うためには、高熱を与えてNGHペレットを融解すればよいが、オペレーションコスト及び高熱の発生に伴う二酸化炭素の削減を勘案すると、再ガス化可能なNGH輸送船の場合には、周囲に海水があるので、ガス化に使用する熱源としては海水との熱交換から得た循環水(清水)とすることが望ましいことが分かる。
【0010】
しかしながら、NGH貨物倉内の大量のNGHペレットに海水温程度の温度の循環水をNGHペレット層の上部から供給した場合、循環水がNGHペレット層の下の内部へ浸透していくことができず、NGHペレット層の上部に循環水が滞留して、循環水の一部で凍結が発生する可能性がある。この凍結の規模が広範囲に及ぶと、排水経路が確保できずに循環水の水位が上昇し、NGH貨物倉内の循環水がオーバーフローする可能性がある。そして、循環水がオーバーフローするような状態では、NGHを分解する熱源である循環水をうまく循環できないため、NGHペレットを安定して効率良く再ガス化することは難しいという問題がある。
【0011】
本発明は、上述の状況を鑑みてなされたものであり、その目的は、NGH(天然ガスハイドレート)輸送船のNGH貨物倉内のNGHペレットを、簡単な構成で、安定して効率良く再ガス化することができる、再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の目的を達成するための本発明の再ガス化可能なNGH(天然ガスハイドレート)輸送船は、NGHペレットを収容するNGH貨物倉と、NGHペレットを分解する熱源となる循環水に熱を供給する熱交換器と、循環水を前記NGH貨物倉と前記熱交換器との間を循環させるための循環水用配管と循環用ポンプを備えると共に、前記NGH貨物倉の上部に、NGHペレットの分解ガスを導出するガス排出配管と、循環水を散水する循環水散水装置を設け、更に、前記NGH貨物倉の内部に、開口部から前記NGH貨物倉内の循環水を前記NGH貨物倉の底部よりも下に配置された排水配管を経由して前記循環水用配管に導く循環水降下管を設けて構成される。
【0013】
NGHペレット層に上部から循環水を散水する場合、NGHペレットの貨物倉の上部から投入されたNGHペレットを分解する熱源である循環水が、NGHペレット層で凍結して、NGHペレット層に殆ど浸透しないで、NGHペレット層の上部に滞留する可能性があるが、このような場合でも滞留した循環水をNGH貨物倉の内部に設けた循環水降下管(縦穴)を通過させてNGH貨物倉の底部よりも下に降下させて、循環水降下管の下部に接続する排水配管からNGH貨物倉の外部の循環水用配管に導くことができる。
【0014】
なお、この循環水降下管は、NGH貨物倉内のNGHペレットの分解に伴ってNGHペレット層が低下した場合でも、NGHペレット層の上部の循環水を循環水降下管内に導入できるように、開口部を循環水降下管の上下方向の複数の位置に設ける。
【0015】
また、上記の再ガス化可能なNGH輸送船において、前記熱交換器及び前記循環用ポンプを機関室と該機関室の前方のNGH貨物倉との間に設けた区画に配置すると共に、該区画に隣接する機関室もしくは電動機室の非危険区画に設けた駆動源により前記循環用ポンプを駆動するように構成すると、これにより、防爆区域(非危険区域)の機関室から循環用ポンプを駆動することになるので、非防爆仕様の駆動源を用いることができる。
【0016】
また、上記の再ガス化可能なNGH輸送船において、NGHの再ガス化で発生する分解水を循環水として利用するように構成すると、初期の循環水の保有量は少量で済む。
【0017】
また、上記の再ガス化可能なNGH輸送船において、揚げ地でNGHを再ガス化し、再ガス化で発生した分解水を積み地に持ち返ることで、海水バラストを積み込まずに積み地へのバラスト航海を行うことができる。その結果、専用のバラストタンクや、バラスト水処理装置が不要となるため、船内スペースの有効利用ができ、また、コストダウンできる。
【0018】
また、上記の再ガス化可能なNGH輸送船において、前記NGH貨物倉に耐圧構造を持たせて、NGH貨物倉内でのガス化圧力を上げるように構成すると、NGH輸送船内でガス化されたガスは需要側の要求値に合わせて、ガス圧縮機により圧縮されて供給されるが、このように、NGH貨物倉内のガス化圧力を上げることで、大気圧近傍でのガス化に比べて、ガス圧縮機での昇圧を小さくして、ガス圧縮機のサイズを小さくでき、また、動力を少なくすることができる。
【0019】
そして、上記の目的を達成するための本発明のNGH輸送船におけるNGH再ガス化方法は、NGHペレットを収容しているNGH貨物倉内の上部から、NGHペレットを分解する熱源となる循環水を散水し、該循環水の熱により分解して発生したNGHの分解ガスを前記NGH貨物倉の上部に設けたガス排出配管から導出すると共に、前記NGH貨物倉内の循環水を開口部から循環水降下管内に導入して、前記NGH貨物倉の底よりも下に配置された排水配管に導出して、該排水配管に導出された循環水を循環水用配管と循環用ポンプにより熱交換器に循環させて、該熱交換器において循環水と海水との間で熱交換させて、循環水の温度を上昇させて、再び、前記NGH貨物倉の上部から散水することを特徴とする方法である。
【0020】
NGHペレット層に上部から循環水を散水する場合、NGH貨物倉の上部から投入されたNGHペレットを分解する熱源である循環水が、NGHペレット層で凍結して、NGHペレット層にほとんど浸透しないで、NGHペレット層の上部に滞留する可能性があるが、このような場合でも滞留した循環水をNGH貨物倉の内部に設けた循環水降下管を通過させてNGH貨物倉の底部よりも下に降下させて、循環水降下管の下部に接続する排水配管からNGH貨物倉の外部の循環水用配管に導くことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法によれば、NGHを分解する熱源である循環水が、NGHペレット層で凍結して、NGHペレット層に殆ど浸透しないで、NGHペレット層の上部に滞留する場合があるが、この場合でも滞留した循環水をNGH貨物倉の内部に設けた鉛直方向の循環水降下管(縦穴)を通過させてNGH貨物倉の底部よりも下に降下させて、循環水降下管の下部に接続する排水配管からNGH貨物倉の外部の循環水用配管に導くことができる。
【0022】
これにより、循環水降下管を通してNGH貨物倉の上部から散水された循環水をNGH貨物倉の底部の排水配管へ排水されるため、NGHペレット層の上部に循環水が滞留してオーバーフローすることを防ぐことができる。その結果、NGH輸送船の船倉に搭載されているNGHを循環水を用いて簡単な構造で効率良く再ガス化できる。
【0023】
更に、本発明の再ガス化可能なNGH輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法は、再ガス化しないでNGHペレットのまま揚げ荷する機械式荷役装置を備えたNGH輸送船においても、この機械式荷役装置や陸上側の揚げ荷荷役装置が故障した時の緊急時のガス化用として利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係る実施の形態の再ガス化可能なNGH輸送船の構成を示す側面断面図である。
【図2】図1の再ガス化可能なNGH輸送船の構成を示す平面図である。
【図3】NGH貨物倉部分を拡大した側面断面図である。
【図4】NGH貨物倉部分を拡大した正面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面を参照して本発明に係る実施の形態の再ガス化可能なNGH(天然ガスハイドレート)輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法について説明する。
【0026】
図1及び図2に示すように、本発明に係る実施の形態の再ガス化可能なNGH輸送船1は、船底2と船側外板3と上甲板4とで囲われた船内スペースの後部に機関室5を設け、この機関室5内に設けたエンジン(図示しない)で駆動されるプロペラ6を船尾に設けている。この船尾のプロペラ6の後に舵7を備え、また、機関室5の上方に船橋を有する居住区8が設けられている。 図1及び図2に示すように、船内スペースの機関室5の前方に、NGHペレットを収容するNGH貨物倉10が、複数設けられる。図1及び図2では、横方向(船幅方向)に左右各1で2列、前後方向(船長方向)に5個(NO.1〜NO.5)で計10個のNGH貨物倉10が設けられている。
【0027】
図1〜図4に示すように、このNGH貨物倉10の上部にNGHペレットの分解ガスを導出するガス排出配管11を設けると共に、このガス排出配管11が接続されるガス排出用本管12を設けて、このガス排出用本管12をガス圧縮機(図示しない)を介して、陸上側の揚げ荷配管に接続可能に設ける。そして、揚げ荷役時には、NGH貨物倉10で分解した天然ガスをガス排出配管11とガス排出用本管12を経由してガス圧縮機により圧送して陸上側の揚げ荷配管に揚げ荷できるように構成する。
【0028】
また、各NGH貨物倉10の上部にNGHペレットを分解する熱源となる循環水を散水する循環水散水装置13を設ける。この循環水散水装置13は、循環水供給用配管14を介して上部の循環水用配管15に接続される。
【0029】
そして、本発明においては、NGH貨物倉10の内部に、循環水降下管16を設ける。この循環水降下管16は、予め設定した粒径よりも大きなNGHペレットが侵入しない開口部16aを有して形成され、この開口部16aからNGH貨物倉10内の循環水をNGH貨物倉10の底部10aよりも下に配置された排水配管17を経由して下部の循環水用配管18に導くように構成される。
【0030】
なお、この循環水降下管は、NGH貨物倉内のNGHペレットの分解に伴ってNGHペレット層が低下した場合でも、NGHペレット層の上部の循環水を循環水降下管16内に導入できるように、開口部16aを循環水降下管16の上下方向の複数の位置に設ける。
【0031】
更に、機関室5とこの機関室5の前方のNGH貨物倉10との間に区画を設けてポンプ室20とし、このポンプ室20に、NGHペレットを分解する熱源となる循環水に熱を供給する熱交換器22と、循環水をNGH貨物倉10と熱交換器22との間を循環させるための循環用ポンプ21を配管で接続して設ける。その上、機関室5に設けた駆動源により、循環用ポンプ21を駆動するように構成すると、これにより、防爆区域の機関室5から循環用ポンプ21を駆動することになるので、駆動源を非防爆仕様にすることができる。
【0032】
また、この循環用ポンプ21に下部の循環水用配管18が接続され、熱交換器22に上部の循環水用配管15が接続される。なお、熱交換器22に下部の循環水用配管18を接続し、循環用ポンプ21に上部の循環水用配管15を接続する構成でもよい。また、熱交換器22は循環用ポンプと同一区画でなく、船上に設けたガス機器室に設置してもよい。
【0033】
次に、この構成の再ガス化可能なNGH輸送船1等で行われるNGH再ガス化方法について説明する。このNGH輸送船におけるNGH再ガス化方法は、NGHペレットをガス化してガスの状態で揚げ荷する際に行われるNGH再ガス化方法であり、循環用ポンプ21を運転して、NGHペレットを収容しているNGH貨物倉10内の上部から、NGHペレットを分解する熱源となる海水温度程度の循環水を、循環水供給用配管14の先端の循環水散水装置13から散水し、この循環水の熱により分解して発生したNGHの分解ガスをNGH貨物倉10の上部に設けたガス排出配管11から導出する。なお、循環水の温度と投入量により、NGH貨物倉10内におけるガス化量をコントロールすることができる。なお、NGH分解によって発生する分解水を循環水として使用できるので、最初の循環水は少量でもよい。
【0034】
それと共に、NGH貨物倉10内の循環水を開口部16aから循環水降下管16内に導入して、NGH貨物倉10の底部10aよりも下に配置された排水配管17に導出して、この排水配管17に導出された循環水を下部の循環水用配管18に送る。この場合に、大きな粒径のNGHペレットが排水配管17から下部の循環水用配管18から侵入して、この中でNGHペレットがガス化して、ガス化した天然ガスが循環用ポンプ21に搬送されると、循環用ポンプ21の性能が著しく低下するので、これを防止するために、循環水降下管16内でガス化しきるような小さな粒径のNGHペレットしか開口部16a通過させないようにすることが好ましく、開口部16aを、予め設定した粒径よりも大きなNGHペレットが侵入しない構造に形成することが好ましい。
【0035】
この下部の循環水用配管18に送られた循環水は、循環用ポンプ21により熱交換器22に循環され、この熱交換器22において海水との間で熱交換する。この熱交換により温度が上昇した循環水は、再び、上部の循環水用配管15を経由して循環水供給用配管14の先端の循環水散水装置13からNGH貨物倉10内に散水される。
【0036】
これを繰り返すことにより、循環水を介して、NGH貨物倉10内のNGHペレットに海水の持つ熱エネルギーを伝達し、NGHペレットを分解することができる。NGH貨物倉10内のNGHペレットが全部分解し終わると、循環用ポンプ21を停止して、揚げ荷役を終了する。なお、循環用ポンプ21は循環水の循環に用いられるが、熱交換器22に海水を供給するためのポンプを別に設けて、再ガス化中は、循環水に海水の持つ熱エネルギーを伝達し続ける必要がある。
【0037】
また、NGH輸送船1内でガス化されたガスは需要側の要求値に合わせて、ガス圧縮機により圧縮されて供給されるが、NGH貨物倉10に耐圧構造を持たせて、NGH貨物倉10内でのガス化圧力を上げるように構成する。これにより、NGH輸送船1内のNGH貨物倉10内のガス化圧力を大気圧より上げることで、大気圧近傍でのガス化に比べて、ガス圧縮機での昇圧を小さくして、ガス圧縮機のサイズを小さくでき、また、動力を少なくすることができる。
【0038】
また、陸上で必要とされるガス圧力は5MPa(ゲージ圧)程度であるため、大気圧でガス化した場合には大気圧から5MPa(ゲージ圧)程度へガス圧縮機によって昇圧する必要があるが、例えば、NGH貨物倉10を0.4MPa(ゲージ圧)でガス化するように構成すると、圧力比で約50の昇圧分を3段階で昇圧した場合の1段分(3√50=3.68)に相当する値であり、この圧力までNGH貨物倉10内のガス化圧力を昇圧することにより、ガス圧縮機の動力を約1/3とすることができる。
【0039】
上記の構成の再ガス化可能なNGH輸送船1、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法によれば、NGHを分解する熱源である循環水が、NGHペレット層で凍結して、NGHペレット層に殆ど浸透しないで、NGHペレット層の上部に滞留する場合があるが、この場合でも滞留した循環水をNGH貨物倉10の内部に設けた鉛直方向の循環水降下管16を通過させてNGH貨物倉10の底部10aよりも下に降下させて、循環水降下管16の下部に接続する排水配管17からNGH貨物倉10の外部の循環水用配管18に導くことができる。
【0040】
これにより、循環水降下管16による循環水の排水経路が確保されるため、NGHペレット層上部における循環水の凍結による流路閉鎖と排水不良を防ぐことができ、また、循環水降下管16を通してNGH貨物倉10の上部から散水された循環水をNGH貨物倉10の底部10aより下の排水配管17へ排水できるため、NGHペレット層の上部に循環水が滞留してオーバーフローすることを防ぐことができる。
【0041】
その結果、循環水を用いて、再ガス化可能なNGH輸送船1のNGH貨物倉10に搭載されているNGHペレットを効率良く再ガス化できる。
【0042】
つまり、簡単な構成で、熱交換器を通過することにより、海水と熱交換して得られる海水温程度の低温熱源となる循環水を、NGH貨物倉10の上部から散水し、この散水した循環水をNGH貨物倉10内に設けた鉛直方向に設けられた循環水降下管を通してNGH貨物倉の底部に導き、NGH貨物倉の底部よりNGH貨物倉の外部に設けた熱交換器に導くことで、NGHペレットを、簡単な構成で、安定して効率良く再ガス化することができる。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明の本発明の再ガス化可能なNGH(天然ガスハイドレート)輸送船、及び、NGH輸送船におけるNGH再ガス化方法によれば、NGH輸送船のNGH貨物倉内のNGHペレットを、簡単な構成で、安定して効率良く再ガス化することができるので、NGH輸送船に利用することができる。また、再ガス化しないでNGHペレットのまま揚げ荷する機械式荷役装置を備えたNGH輸送船においても、この機械式荷役装置や陸上側の揚げ荷荷役装置が故障した時の緊急時のガス化用として利用できる。
【符号の説明】
【0044】
1 再ガス化可能なNGH輸送船
5 機関室
10 NGH貨物倉
10a 底部
11 ガス排出配管
12 ガス排出用本管
13 循環水散水装置
14 循環水供給用配管
15 上部の循環水用配管
16 循環水降下管
16a 開口部
17 排水配管
18 下部の循環水用配管
20 ポンプ室
21 循環用ポンプ
22 熱交換器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
NGHペレットを収容するNGH貨物倉と、NGHペレットを分解する熱源となる循環水に熱を供給する熱交換器と、循環水を前記NGH貨物倉と前記熱交換器との間を循環させるための循環水用配管と循環用ポンプを備えると共に、
前記NGH貨物倉の上部に、NGHペレットの分解ガスを導出するガス排出配管と、循環水を散水する循環水散水装置を設け、
更に、前記NGH貨物倉の内部に、開口部から前記NGH貨物倉内の循環水を前記NGH貨物倉の底部よりも下に配置された排水配管を経由して前記循環水用配管に導く循環水降下管を設けたことを特徴とする再ガス化可能なNGH輸送船。
【請求項2】
前記熱交換器及び前記循環用ポンプを機関室と該機関室の前方のNGH貨物倉との間に設けた区画に配置すると共に、該区画に隣接する機関室もしくは電動機室の非危険区画に設けた駆動源により前記循環用ポンプを駆動することを特徴とする請求項1に記載の再ガス化可能なNGH輸送船。
【請求項3】
NGHの再ガス化で発生する分解水を循環水として利用することを特徴とする請求項1又は2に記載の再ガス化可能なNGH輸送船。
【請求項4】
揚げ地でNGHを再ガス化し、再ガス化で発生した分解水を積み地に持ち返ることで、海水バラストが不要となることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の再ガス化可能なNGH輸送船。
【請求項5】
前記NGH貨物倉に耐圧構造を持たせて、NGH貨物倉内でのガス化圧力を上げることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の再ガス化可能なNGH輸送船。
【請求項6】
NGHペレットを収容しているNGH貨物倉内の上部から、NGHペレットを分解する熱源となる循環水を散水し、
該循環水の熱により分解して発生したNGHの分解ガスを前記NGH貨物倉の上部に設けたガス排出配管から導出すると共に、
前記NGH貨物倉内の循環水を開口部から循環水降下管内に導入して、前記NGH貨物倉の底よりも下に配置された排水配管に導出して、
該排水配管に導出された循環水を循環水用配管と循環用ポンプにより熱交換器に循環させて、該熱交換器において循環水と海水との間で熱交換させて、循環水の温度を上昇させて、再び、前記NGH貨物倉の上部から散水することを特徴とするNGH輸送船におけるNGH再ガス化方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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