説明

写真処理装置

【課題】 印画紙などの感光材料が槽内に取込まれ、処理液に浸漬されることで、現像・漂白・定着・洗浄などの処理を行い、超音波を加えることで、処理時間を短縮するようにした処理槽であって、前記超音波による感光材料の端部の剥がれを防止する。
【解決手段】 図15(a)で示すような広幅の印画紙シートRAおよび図15(b)で示すような狭小な幅の印画紙シートRBに対して、遮蔽部材90が、それぞれ両端部の領域W2,W3;W2’,W3’にかかる部分を覆い、超音波振動子82から前記印画紙シートRA,RBへの超音波を遮蔽する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハロゲン化銀を感光主体とした銀塩写真システムに適用される感光材料としての写真フィルム(以下フィルムとのみいう)に現像処理を施したり、あるいは現像処理済みのフィルムを用いて感光材料としての印画紙に現像処理(焼付け処理)を施したりする際に用いられる写真処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記の写真処理装置として、従来から、特許文献1に記載されているような印画紙の現像装置が知られている。この現像装置は、ロール状に巻回された長尺の印画紙ロールを引き出しながらその露光面に現像処理済みのフィルムの各コマ(一画面)を順次焼付けた後、現像槽において当該印画紙紙を所定の現像液中に浸漬し、これによって印画紙に現像処理を施すようになされている。
【0003】
現像処理後の印画紙は、搬送ローラ等の搬送手段の駆動で定着槽に導入され、所定の定着液中に浸漬されることによって定着処理が施された後、洗浄槽における水洗処理で定着液が除去されるようになっている。洗浄処理後の印画紙は、乾燥室に導入され、所定の熱源からの熱(温風の吹き付けを含む)による乾燥処理が施された後、現像装置の外部に排出される。
【特許文献1】特許第3478382号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来技術では、縦長に形成される現像・漂白・定着・洗浄の各処理槽を、印画紙が蛇行しながら順に搬送されてゆくことで、処理が施されてゆく。各槽では、必要な時間、印画紙を処理液に浸漬している必要があり、特に洗浄工程は長く、時間がかかる。
【0005】
一方、フィルム式のカメラで撮影した場合、印画紙にプリントするまでの処理には、フィルムの現像工程が必要であり、このため印画紙の処理時間を短縮しても、その短縮効果は、1枚目のプリントを出力するまでの待ち時間の内で、僅かである。ところが、近年普及しているデジタルカメラでは、前記現像工程が不要であるため、印画紙へのプリント時間が処理時間の殆どを占め、焼付け後の上記現像・漂白・定着・洗浄の各工程の処理時間を短縮することは、極めて効果的である。また、前記デジタルカメラでは、使用者は撮影時点で画像を確認することも多く、どのようなプリントに仕上がるか予想も可能であり、それだけに期待感も大きく、前記待ち時間を短縮することが望まれる。
【0006】
本発明の目的は、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができる写真処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の写真処理装置は、シート状または帯状の感光材料を処理液に順次浸漬して処理してゆく写真処理装置において、処理槽に貯留される処理液内に浸漬され、前記感光材料に対向し、かつ該感光材料の搬送方向とは交差する方向に延びる超音波振動子と、処理される感光材料の幅に対応した態様で、前記感光材料と超音波振動子との間を選択的に遮蔽する遮蔽手段とを備えることを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、印画紙などの感光材料が、枚葉毎に、あるいは帯状に、順次連続して搬送されて槽内に取込まれ、予め定める処理時間だけ処理液に浸漬された後、引上げられることで、現像・漂白・定着・洗浄などの内の少なくとも1つの処理を行うようにした写真処理装置において、処理槽に貯留される処理液内に超音波振動子を浸漬し、前記感光材料に超音波振動を与えることで、処理液の浸透を促進し、前記予め定める処理時間や処理工程の短縮を実現するにあたって、前記超音波振動子を前記感光材料に対向させて効率的に超音波を伝搬させる。
【0009】
そして、上述のように順次搬送されて処理されてゆく感光材料の搬送方向とは交差する方向、たとえば直交方向に延びる超音波振動源を、1本のロッド状の超音波振動子で実現し、あるいは複数の超音波振動子を一直線状や千鳥状などに順に配列することで実現する。さらに、遮蔽手段は、それらの超音波振動子と感光材料との間を、処理される感光材料の幅に対応した態様で選択的に遮蔽する。具体的には、幅広の感光材料を処理する場合には開度を大きくし、幅狭の感光材料を処理する場合には両端を遮蔽して開度を小さくする。
【0010】
したがって、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができるとともに、感光材料の端部における乳剤層のベース層からの剥がれを防止することができる。
【0011】
また、本発明の写真処理装置では、前記遮蔽手段は、前記シート状または帯状の感光材料を搬送してゆく搬送機構に離接して該搬送機構から動力を取出す動力取出し機構と、前記超音波振動子と感光材料との間に介挿自在に配置される遮蔽部材と、前記動力取出し機構で取出された動力を正逆切換えて前記遮蔽部材に伝達する伝達機構と、処理される感光材料の幅に応答して、前記動力取出し機構および伝達機構を制御する制御手段とを備えて構成されることを特徴とする。
【0012】
上記の構成によれば、上述のように、感光材料の端部における乳剤層のベース層からの剥がれを防止するために、処理される感光材料の幅に対応した遮蔽部材の開閉を具体的に行うことができる遮蔽手段を実現することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の写真処理装置は、以上のように、印画紙などの感光材料が、枚葉毎に、あるいは帯状に、順次連続して搬送されて槽内に取込まれ、予め定める処理時間だけ処理液に浸漬された後、引上げられることで、現像・漂白・定着・洗浄などの内の少なくとも1つの処理を行うようにした写真処理装置において、処理槽に貯留される処理液内に超音波振動子を浸漬し、前記感光材料に超音波振動を与えることで、処理液の浸透を促進し、前記予め定める処理時間や処理工程の短縮を実現するにあたって、順次搬送されて処理されてゆく感光材料の搬送方向とは交差する方向に延びて超音波振動子を配置し、遮蔽手段が、その超音波振動子と感光材料との間を、処理される感光材料の幅に対応した態様で選択的に遮蔽する。
【0014】
それゆえ、1枚目の感光材料を処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができるとともに、感光材料の端部における乳剤層のベース層からの剥がれを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の一形態に係る写真処理装置1の全体構成の概要を説明するための説明図である。この写真処理装置1は、大略的に、感光材料としての印画紙ロールRから引き出された長尺印画紙R1に焼付けを行う焼付け装置2に、前記焼付けが行われた印画紙に、現像・漂白および定着・洗浄の各処理を行う現像装置3を備えて構成され、写真店の店頭などに設置される、いわゆるミニラボと称される装置である。
【0016】
前記焼付け装置2は、前記印画紙ロールRから引き出された長尺印画紙R1に対してコマ毎に露光処理を施す露光処理部20と、画像データを記憶するディスク等の記録媒体を着脱可能に装填するとともに装填された記録媒体から所望の画像データを読み込むディスクドライブ21と、フィルムや印画紙上に形成された画像を直接読み込むスキャナ22と、読み込んだ画像データを画像としてモニタ表示するディスプレイ23と、現像装置3の状態をテストするためのテストプリント搬入ユニット24と、読み込んだ画像に対して濃度や色等に対する所定の処理の指示およびプリントの指示等の各種指示を行うための図略の操作部と、プリント予定の画像データに所定の処理を行うとともに処理画像を出力する制御部25とを備えて構成されるデジタルカメラに対応可能な焼付け装置である。
【0017】
前記露光処理部20には、ハウジング201の内部適所に巻回された長尺印画紙R1を収納するマガジン26(第1マガジン261および第2マガジン262)が交換可能に搭載されている。第1および第2マガジン261,262の適所には、所定桁のコード情報を表現するための遮光部材が配列されているとともに、桁数に応じたフォトインタラプタからなるセンサ263,264を備え、前記遮光部材の有無を検知することでコード情報を特定し、マガジンの種類すなわちサイズ等を含む印画紙の種別を認識可能にしている。印画紙は、樹脂などで形成される薄層の支持体とその一方面側に乳剤層、さらにコーティング層が形成されているものである。乳剤層は、露光された位置が後述の現像液によって赤、青、緑の各色に発色する染料や顔料が層状に形成されているもので、写真焼付用の印画紙として一般的なものが採用されている。
【0018】
ハウジング201内には、第1および第2マガジン261,262に装着された印画紙ロールRから選択的に繰り出された長尺印画紙R1を合流位置から下流側へ向けて移送する搬送路が形成されるとともに、この搬送路に沿って、モータ等からなる図略の駆動機構により回転駆動される搬送ローラ対265,266(後述するカッター27より上流側にあるものを第1搬送ローラ対265、同下流側にあるものを第2搬送ローラ対266)が所定ピッチで配設されている。第1および第2マガジン261,262の各搬送路の合流位置から下流側に向かう搬送路上には、当該搬送路に対面する姿勢を有して帯状の長尺印画紙R1から所定サイズの印画紙シートR2を作成する印画紙切断装置としてのカッター27と、露光処理部20から入力された画像データを光学的に、たとえばライン露光によって印画紙シートR2面に露光する露光装置28とを備えている。
【0019】
前記カッター27は、本実施形態においては、露光装置28の上流位置に配置されている。このカッター27は帯状の長尺印画紙R1を所定サイズの印画紙シートR2に切断するものであり、たとえばスキャナ22からの写真サイズ情報と、印画紙の移送量を検出するセンサ(たとえば駆動機構(モータ)への駆動パルス数等)からの出力情報とによって、所定寸法分移送される毎に切断動作を行うように構成されている。
【0020】
前記露光装置28は、たとえばRGB各色のレーザ発生器からのレーザビームを画像濃度情報によって各色毎に光変調するとともに、各変調ビームをポリゴンミラー等を介して印画紙シートR2面上で幅方向にライン走査させるもので、印画紙シートR2の移送と合せて、シート面上に2次元のカラー画像を露光するものである。
【0021】
前記現像処理部30は、大略的に、前記露光処理部20で露光処理の施された印画紙シートR2に対して現像処理を施す現像処理部30と、この現像処理部30で現像処理の施された印画紙シートR2に対して乾燥処理を施す乾燥処理部40とを備えて構成される。
【0022】
前記現像処理部30は、露光処理部20から送り込まれた印画紙シートR2を連続的に所定の現像液に浸漬することにより露光の強弱に応じた画像を現出させる現像部31と、この現像部31で現像処理が完了した印画紙シートR2に対して所定の定着液に浸漬することにより漂白・定着処理を施す定着部32と、この定着部32で定着処理の完了した印画紙シートR2に対し洗浄水中に連続的に浸漬することにより洗浄処理を施す洗浄部33とを備えて構成されている。前記現像部31および定着部32ならびに洗浄部33には、類似構成の浸漬処理装置50a,50bが適用されている。本願発明の特許請求の範囲における処理槽に該当するこれらの浸漬処理装置50a,50bの詳細については、後述する。
【0023】
前記乾燥処理部40は、洗浄部33で洗浄処理が完了した印画紙シートR2に対し乾燥処理を施すものであり、洗浄部33の上方位置に設けられている。かかる乾燥処理部40は、上下方向に直列で設けられた複数の搬送ローラ対41と、これらの搬送ローラ対41と対向配置され、乾燥用の熱を印画紙シートR2に供給する通電発熱体42と、この通電発熱体42により乾燥処理の施された印画紙シートR2を次工程に向けて払い出す払出しコンベヤ43とを備えて構成されている。前記通電発熱体42は、上方に向かって搬送される印画紙シートR2の乳剤面と対向するように配設され、これによって印画紙シートR2の乳剤面側に対し優先的に乾燥処理が施されるようになっている。
【0024】
図2および図3は、前記浸漬処理装置50aの一実施形態を示す斜視図であり、図2は、オーバーヘッドラック70の外された処理ラック60aが処理槽51から引き出された状態、図3は、オーバーヘッドラック70の装着された処理ラック60aが処理槽51に装着された状態をそれぞれ示している。また、図4は、図3のA−A線断面図である。なお、図2〜図4において、X−X方向を前後方向、Y−Y方向を左右方向といい、特に−X方向を後方、+X方向を前方、−Y方向を左方、+Y方向を右方という。
【0025】
まず、図2に示すように、浸漬処理装置50aは、内部に処理液が貯留される処理槽51と、この処理槽51内に着脱自在に装着される処理ラック60aと、この処理ラック60aの頂部に着脱自在に冠設されるオーバーヘッドラック70とを備えて構成される。前記処理液は、該浸漬処理装置50aが現像部31用のものであるときは現像液であり、定着部32用のものであるときは漂白・定着液であり、洗浄部33用のものであるときは洗浄水である。これら図2〜図4では、浸漬処理装置50aとして、深さが浅い洗浄部33用のものを示しているが、1槽の現像部31および定着部32用のものであるときは、深さが深くなり、1槽での処理時間が長くなっている。
【0026】
前記処理槽51は、上面に着脱開口511を備えた有底で縦長の直方体状を呈する合成樹脂製の容器によって形成されている。かかる処理槽51は、処理ラック60aが当該処理槽51内に装着された状態で、両者間に予め設定された所定量の処理液を充填し得る空間が確保されるように寸法設定されている。
【0027】
前記処理ラック60aは、前記処理槽51内に挿入される挿入部61aと、この挿入部61aの上端から上方に向かって延設された露出部62とを備えている。挿入部61aと露出部62との間には、処理ラック60aの全周に亘って環状に形成されたシール機能を有するフランジ601が設けられている。そして、挿入部61aを着脱開口511を介して処理槽51内に挿入することにより、フランジ601が処理槽51の上縁部に全周に亘って当止し、これによって処理槽51内が密閉状態になるようになされている。
【0028】
前記挿入部61aは、前後方向一対の側板部材63を有し、これら一対の側板部材63間には、前記フランジ601が設けられた位置に架設された上下を分断する水平仕切壁602が架設されている。この水平仕切壁602より下位における一対の側板部材63間には、左右方向の中央位置に多段で上下方向に向けて等ピッチで配設された複数の大径搬送ローラ64が架設されているとともに、各大径搬送ローラ64を挟持するように2列で小径搬送ローラ65が架設されている。
【0029】
前記大径搬送ローラ64は、一対の側板部材63間に架設された大径ローラ軸641回りに回転自在に軸支されているとともに、前記小径搬送ローラ65は、一対の側板部材63間に架設された小径ローラ軸65a回りに回転自在に軸支されている。そして、露出部62を介して挿入部61aへ導入された印画紙シートR2は、先端が最上位に位置した大径搬送ローラ64と左方側の小径搬送ローラ65との間に差し込まれ、これら大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65の各ローラ軸(大径ローラ軸641および小径ローラ軸65a)回りの駆動回転によって下降し、順次下段の大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65間に差し通されてゆくようになっている。
【0030】
因みに、図2〜図4に示す例では、大径搬送ローラ64は軸心回りに反時計方向に向けて回転される一方、左方の列の小径搬送ローラ65は軸心回りに時計方向に回転され、これらのローラ64,65の上方位置で該ローラ64,65間に挟持された印画紙シートR2は下降するようになっている。
【0031】
そして、印画紙シートR2の先端が最下段の大径搬送ローラ64に到達すると、当該先端は、最下段の大径搬送ローラ64の回転と、最下段の前後の小径搬送ローラ65間に張設された無端ベルト651(図4)の周回とに誘導されて上方へ向かって折り返され、以後は、各大径搬送ローラ64および右方側の各小径搬送ローラ65との間を通過しつつこれらの回転に誘導されて上昇し、露出部62を介して外部へ導出されるようになっている。
【0032】
因みに、各小径搬送ローラ65は、図略の付勢手段の付勢力によって対向した大径搬送ローラ64に向けて付勢されて各周面が互いに押圧当接した状態とされており、これによって大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65に挟持された印画紙シートR2は、両者の駆動回転によって確実に搬送され得るようになっている。
【0033】
前記オーバーヘッドラック70は、処理ラック60aの頂部に装着された状態で、前工程から送り込まれた印画紙シートR2を処理槽51内に案内し、該処理槽51での処理が終了したら次工程へ送り出すためのものであり、処理ラック60aの水平仕切壁602より上方位置における一対の側板部材63間に嵌め込まれ得るように寸法設定されている。
【0034】
かかるオーバーヘッドラック70は、筐体71と、この筐体71の左方側に装着される一対の入口側スポンジローラ(入口側案内ローラ対)72と、同右方側に装着される一対の出口側スポンジローラ(出口側案内ローラ対)73とを備えて構成されている。
【0035】
前記筐体71は、底板711(図4)と、この底板711の左縁部に固定された前面板712と、前記底板711の右縁部に固定された後方板713と、これら前面板712と後方板713との間に架設された前後方向一対の側板714とを備えて構成されている。前記底板711には、左右方向の中央部が上方に向かって膨出されることによって形成された断面視で逆U字状を呈する逆U字壁715(図4参照)が設けられている。この逆U字壁715の下面は開放端になっている。因みに、かかる逆U字壁715は、処理ラック60aを処理槽51に対して着脱操作するときの把手としての機能を備えている。
【0036】
一方、前記処理ラック60aの水平仕切壁602には、左右方向の中央位置に前後方向に延びる衝立壁603が設けられている。この衝立壁603は、前記オーバーヘッドラック70の逆U字壁715に内嵌され得るように寸法設定されている。従って、逆U字壁715を衝立壁603に嵌め込むようにしてオーバーヘッドラック70を処理ラック60aに装着することにより、当該オーバーヘッドラック70は、位置決め状態でオーバーヘッドラック70の頂部における一対の側板部材63間に装着されるようになっている。
【0037】
このようなオーバーヘッドラック70において、前面板712には、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70内に受入れるための前後方向に延びた受入開口74が設けられているとともに、後方板713には処理済みの印画紙シートR2を外部に払い出すための払出開口75(図4)が設けられている。前記受入開口74は、前記一対の入口側スポンジローラ72の当接位置と対向する位置に設けられているとともに、前記払出開口75は、前記一対の出口側スポンジローラ73の当接位置と対向する位置に設けられている。
【0038】
また、処理ラック60aの水平仕切壁602には、左方側に入口側スポンジローラ72の駆動でオーバーヘッドラック70内に引き入れられた印画紙シートR2を処理槽51内に導入するための前後方向に延びた導入開口604が設けられているとともに、右方側に処理済みの印画紙シートR2を出口側スポンジローラ73へ向けて導出する導出開口605(図4)が設けられている。
【0039】
そして、本実施形態においては、処理ラック60aに前記大径搬送ローラ64、前記小径搬送ローラ65、前記一対の入口側スポンジローラ72および前記一対の出口側スポンジローラ73を駆動回転させるための駆動力伝達機構66が装着されている。以下、図5を基に必要に応じて図2〜図4を参照しながら駆動力伝達機構66について説明する。図5は、駆動力伝達機構66の一実施形態を示す浸漬処理装置50aの上部の左側面視の断面図である。
【0040】
図5に示すように、前記駆動力伝達機構66は、外部から図略のギヤを介して所定の駆動源からの駆動力が伝達される軸心が前後方向に延びた駆動ギヤ661と、この駆動ギヤ661と同心で一体回転する第1ベベルギヤ662および第1伝達ギヤ663と、下部で前記第1伝達ギヤ663に噛合する第2伝達ギヤ664と、この第2伝達ギヤ664と同心で一体回転する第3伝達ギヤ665と、前記第1ベベルギヤ662に噛合して上下方向に延びた軸心回りに回転する第2ベベルギヤ666と、この第2ベベルギヤ666と同心で一体回転する第3ベベルギヤ667と、この第3ベベルギヤ667に噛合して前後方向に延びた軸心 回りに回転する第4ベベルギヤ668とを備えて構成されている。
【0041】
前記駆動ギヤ661は、処理ラック60aの露出部62における前方の側板部材63の左右方向(図5の紙面に直交する方向)中央部の外方に設けられ、衝立壁603を貫通して前後の側板部材63間に架設された入力軸671回りに一体回転可能に軸支されている。
【0042】
前記第1ベベルギヤ662は、前側の側板部材63内のギヤ室631においてギヤ面を前後に向けて同心で入力軸671に外嵌固定され、入力軸671回りに一体回転可能になっている。
【0043】
前記第1伝達ギヤ663は、前側の側板部材63のギヤ室631内における第1ベベルギヤ662の後側で入力軸671に同心で外嵌固定され、入力軸671回りに一体回転可能になっている。
【0044】
前記第2伝達ギヤ664は、ギヤ室631内における前記第1伝達ギヤ663の直下位置において第1伝達ギヤ663と噛合した状態でギヤ室631の後側の壁面を貫通した前記入力軸671と平行な中継軸672に同心で外嵌固定され、これによって中継軸672回りに一体回転可能とされている。
【0045】
前記第3伝達ギヤ665は、前記各一対の入口側スポンジローラ72および出口側スポンジローラ73(図2)を従動回転させるものであり、ギヤ室631の後壁面の後側において中継軸672に同心で一体回転可能に外嵌され、第2伝達ギヤ664と中継軸672を介して一体回転し得るようになっている。
【0046】
一方、前記一対の入口側スポンジローラ72は、それぞれが同心で軸支されているローラ軸721の前端部に同心で一体回転可能に外嵌され、かつ、互いに噛合したスポンジローラ用ギヤ722を有している。また、前記一対の出口側スポンジローラ73は、それぞれが同心で軸支されているローラ軸731の前端部に同心で一体回転可能に外嵌され、かつ、互いに噛合したスポンジローラ用ギヤ732を有している。そして、各一対のスポンジローラ用ギヤ722,732の上方のものが、図3に示すように、それぞれ第3伝達ギヤ665に噛合されている。
【0047】
従って、第3伝達ギヤ665が中継軸672回りに図3における時計方向に向けて回転すると、この回転は、各スポンジローラ用ギヤ722,732の上のものに伝達され、これら上の各スポンジローラ用ギヤ722,732に噛合している下の各スポンジローラ用ギヤ722,732が逆回転するため、結局、一対の入口側スポンジローラ72は、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70内に引き入れるように互いに逆回転するとともに、一対の出口側スポンジローラ73は、印画紙シートR2をオーバーヘッドラック70から排出するように互いに逆回転することになる。
【0048】
前記第2ベベルギヤ666および第3ベベルギヤ667は、前記大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65を従動回転させるべく設けられるものである。そして、第2ベベルギヤ666は、側板部材63のギヤ室631内において入力軸671の直下位置で駆動ギヤ661と噛合している。かかる第2ベベルギヤ666は、ギヤ室631から水平仕切壁602を貫通して下方に向けて延設されたベベルギヤ軸673の頂部に同心で軸心回りに一体回転可能に軸支されている。
【0049】
これに対し前記第3ベベルギヤ667は、処理ラック60aの挿入部61aに設けられた大径搬送ローラ64の段数に応じて各大径搬送ローラ64の前端部に対応した位置に複数設けられている。かかる各第3ベベルギヤ667は、ギヤ面を下に向けた状態で前記ベベルギヤ軸673に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0050】
前記第4ベベルギヤ668は、第3ベベルギヤ667の回転を大径搬送ローラ64に伝達するためのものであり、ギヤ面を前方に向けて第3ベベルギヤ667に噛合した状態で大径ローラ軸641の前端部に同心で一体回転可能に軸支されている。
【0051】
そして、大径搬送ローラ64の回転を小径搬送ローラ65に伝達するために、前記大径ローラ軸641には挿入部61aにおける前側の側板部材63の後壁部直後方位置において大径搬送ローラ64に同心で一体回転可能に外嵌された大径ギヤ642が設けられている一方、大径搬送ローラ64に対向した各一対の小径搬送ローラ65の小径ローラ軸650aには、それぞれ大径ギヤ642と噛合する小径ギヤ652が同心で一体回転可能に設けられている。前記大径ギヤ642は、有効径寸法(摩擦円の径寸法)が大径搬送ローラ64の外形寸法と同一に設定されているとともに、小径ギヤ652の有効径寸法は、小径搬送ローラ65の外形寸法と同一に設定され、これによって大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65の各周速度が同一になるようにしている。
【0052】
このように構成された駆動力伝達機構66によれば、所定の駆動源からの駆動力が駆動ギヤ661に伝達されると、この駆動ギヤ661の駆動回転は入力軸671を介して第1ベベルギヤ662および第1伝達ギヤ663に伝達される。そして、第1伝達ギヤ663が回転すると、この回転は第2伝達ギヤ664および中継軸672を介して第3伝達ギヤ665に伝達されて当該第3伝達ギヤ665が中継軸672回りに回転する。
【0053】
この第3伝達ギヤ665の回転は、一対の入口側スポンジローラ72(図2)の上方のスポンジローラ用ギヤ722およびこれに噛合している下方のスポンジローラ用ギヤ722に伝達されるとともに、一対の出口側スポンジローラ73の上方のスポンジローラ用ギヤ732およびこれに噛合している下方のスポンジローラ用ギヤ732にも伝達され、これによって一対の入口側スポンジローラ72は互いに反対方向に向けてローラ軸721回りに回転するとともに、一対の出口側スポンジローラ73も互いに反対方向に向けてローラ軸731回りに回転することになる。
【0054】
一方、第1ベベルギヤ662に噛合している第2ベベルギヤ666の回転は、ベベルギヤ軸673を介して各第3ベベルギヤ667に伝達され、これによって各第3ベベルギヤ667はベベルギヤ軸673回りに一体回転する。この各第3ベベルギヤ667の一体回転は、当該第3ベベルギヤ667に噛合している第4ベベルギヤ668を介して各大径搬送ローラ64の大径ギヤ642に伝達され、これによって各大径搬送ローラ64は大径ローラ軸641回りに回転する。この回転によって大径搬送ローラ64が大径ギヤ642と一体回転することになる。
【0055】
前記各大径ギヤ642の回転は、これに噛合している各一対の小径ギヤ652に伝達され、これによる小径ギヤ652の回転によって小径搬送ローラ65が大径搬送ローラ64と反対方向に向けて同一周速度で回転する。
【0056】
したがって、駆動力伝達機構66の各ギヤが上記のようにそれぞれ回転することにより、入口側スポンジローラ72、出口側スポンジローラ73、大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65がそれぞれ所定の方向に駆動回転した状態で、露光処理部20から受入開口74(図4)を介して浸漬処理装置50a内に受け入れられた印画紙シートR2は、まず、一対の入口側スポンジローラ72によって挟持されつつ下方に向かわされ、導入開口604を通って処理槽51内に導入される。
【0057】
そして、処理槽51内に導入された印画紙シートR2は、まず同一の周速度で互いに反対方向に回転している最上位の大径搬送ローラ64と、上流側(図4における左方)の最上位の小径搬送ローラ65(図4に示す例では大径搬送ローラ64が反時計方向に向けて回転しているとともに、小径搬送ローラ65が時計方向に回転している)との間に挟持された状態で下方に向けて搬送され、最下位の大径搬送ローラ64に到達した後、上方に向けて折り返され、大径搬送ローラ64と下流側(図4における右方)の小径搬送ローラ65とによって挟持されつつ上昇する。かかる昇降の間に印画紙シートR2は、処理槽51に貯留されている処理液によって所定の処理が施される。
【0058】
そして、最上位の大径搬送ローラ64と小径搬送ローラ65との間を通過した印画紙シートR2は、一対の出口側スポンジローラ73に挟持され、処理液が吸着されつつ、これらの駆動回転に誘導され、払出開口75を通って次工程へ向けて送り出される。
【0059】
図6は浸漬処理装置50bの処理ラック60bが処理槽51から引き出された状態の斜視図であり、図7はその断面図である。これらの図6および図7は、前述の図2および図4に対応している。この処理ラック60bの挿入部61bでは、先ず前述の処理ラック60aの挿入部61aにおける大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65が4組設けられているのに対して、3組である点が異なり、前記現像部31および定着部32における浸漬処理装置50aと、洗浄部33におけるこの浸漬処理装置50bとは、それぞれの駆動ギア661は共通の駆動ベルトなどで連動して駆動されており、したがって印画紙シートR2に対して、1槽当りに要する処理時間が短くなっている。
【0060】
そして注目すべきは、この処理ラック60bでは、搬送手段となる前記大径搬送ローラ64および小径搬送ローラ65によって形成される印画紙シートR2の縦搬送路に、超音波振動子アレイ80が対向配置されていることである。印画紙シートR2を液面から底部の間で往復搬送するこの処理ラック60bにおいて、図1から明らかなように、前記縦搬送路の外方側、すなわち小径搬送ローラ65側が乳剤面となっており、前記超音波振動子アレイ80は、その乳剤面側に設けられる。
【0061】
また、注目すべきは、この処理ラック60bでは、前記超音波振動子アレイ80に近接して、前記印画紙シートR2の搬送方向(すなわち上下方向)に昇降変位することで、前記超音波振動子アレイ80と印画紙シートR2との間に介挿自在に配置される遮蔽部材90が設けられていることである。前後方向一対の前記側板部材63には、前記遮蔽部材90を前記上下方向に案内する案内溝91が形成されており、前記遮蔽部材90の両端部はこの案内溝91内に嵌り込み、摺動変位自在となっている。残余の構成は、前述の処理ラック60aと同様であり、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。
【0062】
図8は、前記超音波振動子アレイ80の構造を示す斜視図である。この超音波振動子アレイ80は、帯状の基台81上に、複数の超音波振動子82が設けられて構成されている。各超音波振動子82は、図9で示すように、圧電材料821を電極材料822,823で挟んで構成されている。前記圧電材料821は、たとえば酸化チタンや酸化バリウムなどの粉体を焼結して成る圧電セラミックスに分極処理を施すことで形成されている。
【0063】
前記圧電材料821は円盤状に形成され、図10で示すように、その中央に形成された孔824を通して、基台81とは反対側の電極材料822にリード線831が接続される。基台81側の電極材料823にも前記孔824が連通して形成されており、前記リード線831が挿通するとともに、該電極材料823へのリード線832が接続される。これらのリード線831,832から成るリード線83は、基台81に形成された孔811を通して、超音波振動子82とは反対側に引出され、超音波の交番電流を作成する発振器に接続される。超音波振動子82は、基台81に取付けられた後に、必要に応じて、超音波の吸収が少ない封止材料84によって気密に封止される。
【0064】
本発明で用いる超音波振動子としては、上述の超音波振動子アレイ80のように複数の超音波振動子82が一直線状に設けられるアレイ構造に限らず、単体のロッド状の超音波振動子が用いられてもよく、また前記超音波振動子82も、基台81に一直線状に設けられていなくてもよく、千鳥状など他の形状に配置されていてもよい。すなわち、ロッド状の超音波振動子またはアレイが、印画紙シートR2の搬送方向と交差するように設けられていればよい。
【0065】
また、超音波振動子82は、洗浄部33の総ての浸漬処理装置50bに設けられていなくてもよく、前記現像部31および定着部32における浸漬処理装置50aに設けられ、該浸漬処理装置50aの処理槽51がそれぞれ浅く形成されてもよい。さらにまた、超音波振動子82は、現像装置3に通電されている間は駆動され続けてもよく、あるいは焼付け装置2からの信号や該現像装置3に設けたセンサの検知結果などに応答して、対象となる槽51を通過している間だけ駆動されるようにしてもよい。
【0066】
図11は、処理ラック60bの縦断面図である。該処理ラック60bの前方側に設けられ、前記大径搬送ローラ64、小径搬送ローラ65、入口側スポンジローラ72および出口側スポンジローラ73を駆動回転させるための駆動力伝達機構66は、処理ラック60aと同様に構成される。この処理ラック60bでは、後方側に、前記遮蔽部材90を昇降変位するための駆動力伝達機構92が設けられる。前記駆動力伝達機構92は、前記入力軸671を動力入力端として、先ずこの入力軸671は第5ベベルギヤ921内を遊挿して、クラッチ922に接続される。
【0067】
図12は、前記クラッチ922の断面図である。前記入力軸671の先端にはスプライン923が同心に固着されており、このスプライン923上をクラッチ板924が摺動変位自在となっている。クラッチ板924は、前記第5ベベルギヤ921と一体のもう1つのクラッチ板925と接離可能となっている。前記第5ベベルギヤ921には第6ベベルギヤ926が噛合しており、第6ベベルギヤ926はベベルギヤ軸927の頂部に同心で、上下方向に延びた軸心回りに一体回転可能に軸支されている。
【0068】
前記ベベルギヤ軸927の少なくとも一部はボールねじ928となっており、そのボールねじ928部分の外周面には、図13で示すように、複数の遮蔽部材90の後端側を連結する連結部材901の上部に取付けられた案内部材902が噛合している。前記連結部材901の下部には、案内部材903が取付けられており、この案内部材903は前記ベベルギヤ軸927の外周面に摺接している。前述のように、遮蔽部材90の前後両端は、前後方向一対の側板部材63に形成された案内溝91に嵌り込んでおり、前記入力軸671が正逆方向に回転することで、遮蔽部材90は昇降変位する。
【0069】
前記クラッチ922は、この昇降変位の時にのみ接続され、通常の印画紙シートR2の処理時には離反している。また、昇降変位のために前記入力軸671を逆転する必要が生じた場合には、焼付け装置2と現像装置3とを連動させて駆動しているモータは、前記焼付け装置2と現像装置3との間に介在されるクラッチを遮断した状態で、現像装置3側のみを逆転させる。前記遮蔽部材90を昇降変位するにあたって、上述のようにクラッチ922を用いたり、焼付け装置2や現像装置3を駆動するモータを正逆回転駆動するのではなく、前記ベベルギヤ軸927を、正逆回転駆動可能なモータによって直接駆動するようにしてもよい。
【0070】
複数の前記遮蔽部材90の前方側は、連結部材904によって連結されており、その遮蔽部材90および連結部材904の前方側の任意の箇所には(図11では2つの遮蔽部材90の内の上側)、検出片905が設けられる。この検出片905は、前方側の側板部材63において、上下方向に配列されたフォトインタラプタ906間を通過する。したがって、前記フォトインタラプタ906の何れの光路が遮蔽されているかによって、遮蔽部材90の高さ位置、すなわち超音波振動子アレイ80に対する遮蔽状態を検知することができ、その検知結果をモニタしながら前記クラッチ922を接断することで、遮蔽部材90の遮蔽状態を所望とする状態に切換えることができる。
【0071】
前記遮蔽部材90は、図13で示すように、前記案内部材902,903が取付けられる剛性の基材907と、その基材907の超音波振動子アレイ80側に貼付けられる吸音材908とを備えて構成される。
【0072】
図14は、前記遮蔽部材90の駆動回路の構成を示すブロック図である。前記クラッチ922ならびに焼付け装置2や現像装置3を駆動するモータ202およびそのモータ202の駆動力を焼付け装置2へ伝達するクラッチ203は、前記制御部25によって制御される。制御部25は、印画紙シートR2の連続処理を開始するにあたって、前記マガジン261,262に格納される印画紙ロールRの印画紙の種別を検出する前記センサ263,264の検出結果、およびプリント指示を行う操作部29によってどの印画紙ロールRが選択されたのかに応答して、内蔵する制御テーブル251を参照して、遮蔽部材90を停止させるべき位置を読出す。前記フォトインタラプタ906で検出されている遮蔽部材90の位置が、その停止させるべき位置と異なる場合には、前記フォトインタラプタ906からの出力をモニタしながら、変位させるべき方向および量に対応して、クラッチ922,203を接断するとともに、モータ202を正逆回転駆動する。
【0073】
図15は、前記遮蔽部材90による超音波振動子82の遮蔽の態様の一例を示す図である。図15(a)は幅広の印画紙シートRAが使用される場合の例を示しており、遮蔽部材90は、印画紙シートRAの両端部の領域W2,W3を覆い、それらの領域W2,W3を除く中央寄りの領域W1を開放する。これに対して、図15(b)で示すように、狭小な幅の印画紙シートRBに対しては、前記遮蔽部材90は、印画紙シートRBの中央寄りの狭い領域W1’のみを開放し、該印画紙シートRBの両端部の領域W2’,W3’よりも外方側を覆う。前記遮蔽部材90は、図15のように段階的に遮蔽領域(開度)を変化するのではなく、図16の遮蔽部材90’で示すように、連続的に遮蔽領域を変化するようにしてもよい。
【0074】
以上のように、超音波振動子82を処理槽51内に設けることで、処理液内にボイドが発生し、それが破裂するときの衝撃波で印画紙シートR2,RA,RBに対する処理液の浸透が促進され、処理時間や処理工程を短縮することができる(図1の写真処理装置1では、前記特許文献1の写真処理装置に比べて、洗浄部33が1つ少なくなっている)。これによって、1枚目の印画紙シートR2,RA,RBを処理して出力するまでの待ち時間を短縮することができるとともに、該処理槽51を備える写真処理装置1を小型化することもできる。さらに、超音波振動子82を縦搬送路に配置することで、ボイドと共に発生した気泡などが印画紙シートR2,RA,RBの表面に長時間付着してしまうことはなく、処理むらの発生を防止することができる。
【0075】
また、処理される印画紙シートR2,RA,RBの幅に対応した態様で、遮蔽部材90,90’が印画紙シートR2,RA,RBと超音波振動子82との間を選択的に遮蔽することで、印画紙シートR2,RA,RBの端部の領域W2,W3;W2’,W3’における乳剤層のベース層からの剥がれを防止することができる。
【0076】
さらにまた、上述のように処理時間を短縮することができる該写真処理装置1は、デジタルカメラ対応の写真処理装置であるので、フィルムの現像工程の不要な前記デジタルカメラでは、より一層、短時間での写真プリントの作成が望まれ、本発明が特に好適である。
【0077】
[実施の形態2]
図17は本発明の実施の他の形態に係る写真処理装置における遮蔽部材90’’による超音波振動子82の遮蔽の態様の一例を示す図であり、図18は後方側の前記遮蔽部材90’’付近を拡大して示す斜視図であり、図19は前方側の遮蔽部材90’’付近を拡大して示す側面図である。本実施の形態において、前述の実施の形態に類似し、対応する部分には同一の参照符号を付して示し、その説明を省略する。注目すべきは、本実施の形態では、前記遮蔽部材90,90’が昇降変位によって超音波振動子82を選択的に遮蔽していたのに対して、本実施の形態では、遮蔽部材90’’は角変位によって超音波振動子82を遮蔽することである。
【0078】
このため、超音波振動子82の1つ分の径に略等しい円弧931と、2つ分の径に略等しい円弧932との相互に異なる半径の円弧板を組合わせて成る該遮蔽部材90’’は、その中心が軸94によって前後の側板部材63に水平軸線回りに揺動変位自在に支持される。後方側の軸94には、ギヤ95およびプーリ96が取付けられており、前記ギヤ95は前記ベベルギヤ軸927のボールねじ928に噛合している。一方、前方側の軸94には、プーリ96が取付けられており、前後のプーリ96間にはラックベルト97が巻掛けられる。
【0079】
したがって、たとえば図17(a)で示すように前記円弧932によって超音波振動子82をそれぞれ2つ覆っている状態から、前記ベベルギヤ軸927が回転して遮蔽部材90’’が矢符98方向に角変位すると、図17(b)で示すように前記円弧931によって超音波振動子82をそれぞれ1つ覆っている状態を経て、図17(c)で示すように超音波振動子82を覆っていない全開状態に、相互に連動して変化することができる。この場合の遮蔽部材90’’の開度は、前方側の遮蔽部材90’’に取付けられた検出片99が、前方側の側板部材63に設けられたフォトインタラプタ906間を通過することで検出することができる。このようにしてもまた、超音波振動子82を選択的に遮蔽することができる。
【0080】
ここで、特開平5−303177号公報にも、自動現像装置の水洗槽に超音波発生装置を浸漬させることが記載されているけれども、超音波を発生することで、水垢やカビの発生が抑えられるというものであり、電池程度で賄うことができる微小なパワーを供給している。したがって、気泡の発生も少ないと考えられる。また、水洗槽の底に前記超音波発生装置が設置されている。
【0081】
これに対して、本発明では、印画紙シートR2,RA,RBの乳剤面の処理を促進するために、前記超音波振動子82からは或る程度のパワーで振動を発生するので、それによる気泡が発生してしまう。その気泡が前記乳剤面に長時間付着し、むらが生じないように、前述のように該超音波振動子82を印画紙シートR2,RA,RBの縦搬送路に設置している。また、同じ位置で一定周波数の超音波を発生していると、処理液中で振動の腹となる点(強い点)と節となる点(弱い点)とができ、処理むらが生じる可能性があるけれども、本発明では、印画紙シートR2,RA,RBは移動しており、一定周波数で駆動しても、そのようなむらが生じることはない。
【0082】
なお、対応すべき印画紙シートの幅が多数存在する場合には、それに対応して、遮蔽部材90,90’,90’’の移動量を大きくして、開度の変化を緩やかにし、細かく調整できるようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の実施の一形態に係る写真処理装置の全体構成の概要を説明するための説明図である。
【図2】図1で示す写真処理装置における浸漬処理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図3】図1で示す写真処理装置における浸漬処理装置の一実施形態を示す斜視図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】前記浸漬処理装置における駆動力伝達機構の一実施形態を示す上部の左側面視の断面図である。
【図6】本発明の実施の一形態に係る浸漬処理装置の処理ラックが処理槽から引き出された状態の斜視図である。
【図7】図6の断面図である。
【図8】超音波振動子アレイの構造を示す斜視図である。
【図9】超音波振動子の構造を説明するために前記超音波振動子アレイを一部切り欠いて示す斜視図である。
【図10】超音波振動子の構造を示す断面図である。
【図11】前記処理ラックの縦断面図である。
【図12】クラッチの断面図である。
【図13】遮蔽部材を昇降変位する機構を説明するための斜視図である。
【図14】前記遮蔽部材の駆動回路の構成を示すブロック図である。
【図15】本発明の実施の一形態の遮蔽部材による超音波振動子の遮蔽の態様の一例を示す図である。
【図16】本発明の実施の一形態の遮蔽部材の他の形状を示す図である。
【図17】本発明の実施の他の形態に係る写真処理装置における遮蔽部材による超音波振動子の遮蔽の態様の一例を示す図である。
【図18】後方側の遮蔽部材付近を拡大して示す斜視図である。
【図19】前方側の遮蔽部材付近を拡大して示す側面図である。
【符号の説明】
【0084】
1 写真処理装置
2 焼付け装置
3 現像装置
20 露光処理部
202 モータ
203 クラッチ
22 スキャナ
25 制御部(制御手段)
251 制御テーブル
261,262 マガジン
263,264 センサ
28 露光装置
29 操作部
30 現像処理部
31 現像部
32 定着部
33 洗浄部
40 乾燥処理部
50a,50b 浸漬処理装置
51 処理槽
60a,60b 処理ラック
63 側板部材
64 大径搬送ローラ(搬送手段、縦搬送路)
65 小径搬送ローラ(搬送手段、縦搬送路)
651 無端ベルト(搬送手段)
66 駆動力伝達機構
70 オーバーヘッドラック
72,73 スポンジローラ
80 超音波振動子アレイ
81 基台
82 超音波振動子
821 圧電材料
822,823 電極材料
83;831,832 リード線
84 封止材料
90,90’,90’’ 遮蔽部材(遮蔽手段)
905 検出片
906 フォトインタラプタ
907 基材
908 吸音材
92 駆動力伝達機構
921 第5ベベルギヤ(動力取出し機構)
922 クラッチ(動力取出し機構)
923 スプライン(動力取出し機構)
924,925 クラッチ板(動力取出し機構)
926 第6ベベルギヤ(伝達機構)
927 ベベルギヤ軸(伝達機構)
928 ボールねじ(伝達機構)
931,932 円弧
95 ギヤ
96 プーリ
97 ラックベルト
99 検出片
R 印画紙ロール(感光材料)
R1 長尺印画紙(感光材料)
R2,RA,RB 印画紙シート(感光材料)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状または帯状の感光材料を処理液に順次浸漬して処理してゆく写真処理装置において、
処理槽に貯留される処理液内に浸漬され、前記感光材料に対向し、かつ該感光材料の搬送方向とは交差する方向に延びる超音波振動子と、
処理される感光材料の幅に対応した態様で、前記感光材料と超音波振動子との間を選択的に遮蔽する遮蔽手段とを備えることを特徴とする写真処理装置。
【請求項2】
前記遮蔽手段は、
前記シート状または帯状の感光材料を搬送してゆく搬送機構に離接して該搬送機構から動力を取出す動力取出し機構と、
前記超音波振動子と感光材料との間に介挿自在に配置される遮蔽部材と、
前記動力取出し機構で取出された動力を正逆切換えて前記遮蔽部材に伝達する伝達機構と、
処理される感光材料の幅に応答して、前記動力取出し機構および伝達機構を制御する制御手段とを備えて構成されることを特徴とする請求項1記載の写真処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2007−41064(P2007−41064A)
【公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−222139(P2005−222139)
【出願日】平成17年7月29日(2005.7.29)
【出願人】(000135313)ノーリツ鋼機株式会社 (1,824)
【Fターム(参考)】