説明

冷凍サイクル装置およびその制御方法

【課題】冷凍サイクル装置の絞り装置において、冷媒が液とガスの混合した二相状態で膨張する場合に発生する不快な冷媒音を低減する。
【解決手段】冷凍サイクル装置は、圧縮機と4方弁と第1の熱交換器と第1の絞り装置と第2の絞り装置と第2の熱交換器とを環状に接続し、第1の絞り装置は圧縮機の入口配管と熱交換を行う内部熱交換器を備える。さらに、第1の絞り装置と第2の絞り装置の間に冷媒の状態量を検出する冷媒状態量検出手段と、冷凍サイクル装置の負荷を検出する負荷検出手段とを備え、冷媒状態量検出手段によって検出された冷媒の状態量と、検出された負荷に対応する飽和液の状態量とを比較して、第1の絞り装置の出口冷媒が所定の比エンタルピ値よりも小さくなるように第2の絞り装置の開度を制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャピラリチューブのような減圧装置を内部熱交換器の一部として用いる冷凍サイクル装置において、減圧するときに生じる冷媒音を抑制する冷凍サイクル装置およびその制御方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は従来の冷凍サイクル装置を示す構成図である。放熱器13の出口配管に設けられたキャピラリチューブ17と、圧縮機11の入口配管とを熱交換させる内部熱交換器24を設けることで、キャピラリチューブ内で冷媒が急激に膨張することを抑制する冷凍サイクル装置である。かかる熱交換により、蒸発器入口の冷媒乾き度を低下させ、液冷媒の割合を増加させることができるので、蒸発器の冷媒側熱伝達率が向上し、冷却性能を向上させることができる(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4600200号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1のように冷媒が液とガスの混合した二相状態で膨張する場合には、不快な冷媒音が発生する。
【0005】
また、冷媒が二相状態で減圧する場合に発生する音を低減させるためには、絞り装置に防音材を巻くなどの対策が考えられるものの、コスト高となるとともに、設置スペースが確保できない。
【0006】
本発明は、このような課題に対して、キャピラリチューブで減圧する行程における冷媒を液状態にすることで不快な冷媒音の発生を抑制しつつ、コストや設置スペースを増やすことなく、冷凍サイクル装置の省エネルギー化を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決するために、請求項1記載の本発明の冷凍サイクル装置の制御方法は、冷媒を昇圧する圧縮機と、4方弁と、昇圧された冷媒を冷却する第1の熱交換器と、冷媒を減圧膨張する第1の絞り装置と第2の絞り装置と、第2の絞り装置で減圧膨張された冷媒を加熱する第2の熱交換器とを環状に接続し、第1の絞り装置は圧縮機の入口配管と熱交換を行う内部熱交換器を有する。さらに、第1の絞り装置と第2の絞り装置の間の冷媒の状態量を検出する冷媒状態量検出手段と、冷凍サイクル装置の冷房または暖房負荷を検出する負荷検出手段と、冷媒状態量検出手段によって検出された冷媒の状態量と、負荷検出手段で検出された冷房または暖房負荷に対応する飽和液状態量から求めた冷媒状態量目標値とを比較する比較手段と、比較手段の結果に応じて、第1の絞り装置の出口冷媒の比エンタルピ値が所定の値よりも小さくなるように、第2の絞り装置の開度を制御するコントローラとを備える。
【0008】
かかる構成によって、第1の絞り装置の入口から出口までの冷媒を液状態とすることができるので、不快な冷媒音の発生を防ぎつつ、高効率な運転を実現することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明の冷凍サイクル装置によれば、不快な冷媒音の発生を抑制しつつ、冷凍サイクル装置の省エネルギー化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置を示す構成図である。
【図2】従来の冷凍サイクルのモリエル線図である。
【図3】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクルのモリエル線図である。
【図4】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において第2の絞り装置の開度と中間温度との関係を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において第2の絞り装置の開度を変化させた場合のモリエル線図である。
【図6】本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の制御フローチャートである。
【図7】従来の冷凍サイクル装置を示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明の冷凍サイクル装置の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0012】
(実施の形態1)
本発明の冷凍サイクル装置の構成について、図1を用いて説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置を示す構成図である。本実施の形態1における冷凍サイクル装置は、冷媒を昇圧する圧縮機101と、4方弁102と、圧縮機101で昇圧された冷媒を冷却する第1の熱交換器(ここでは放熱器103)と、冷媒を減圧膨張する第1の絞り装置104と、第1の絞り装置104の出口配管に設けた冷媒状態量検出手段(ここでは冷媒温度検出手段105)と、冷媒をさらに減圧膨張する第2の絞り装置106と、第2の絞り装置106から流出した冷媒を加熱する第2の熱交換器(ここでは蒸発器107)を順次配管接続したものである。
【0014】
さらに、第1の絞り装置104には圧縮機101の入口配管と熱交換する内部熱交換器108を有し、冷凍サイクル装置の負荷を検出する負荷検出手段110と、負荷検出手段によって検出された値から飽和液状態量(ここでは飽和液温度)と冷媒状態量目標値(ここでは冷媒温度目標値)を求め、冷媒状態量検出手段によって検出された値と比較する比較手段111と、比較手段によって得られた値を基に第2の絞り装置106の開度を制御するコントローラ109とを備えている。
【0015】
負荷検出手段は、例えば圧縮機の回転数を検出する手段や、室内温度と設定温度の差や、外気温度を検出する手段などがあげられる。すなわち、室内熱交換器の冷凍能力を推定するための検出手段である。
【0016】
また、冷媒状態量検出手段は、冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段であってもよい。
【0017】
その場合は、飽和液状態量として飽和液圧力を求め、さらに冷媒状態量目標値として冷媒圧力目標値を求めることになる。
【0018】
図2に従来の冷凍サイクル装置のモリエル線図を、図3に本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置のモリエル線図を示す。図3に示すように、本発明の冷凍サイクル装置は、第1の絞り装置と圧縮機の入口配管とを熱交換させているが、第1の絞り装置としてキャピラリチューブのような細径管を用いた場合、冷媒の比エンタルピ値が変化しながら減圧する。これによって、図2に示すように、従来であれば第1の絞り装置の出口冷媒は完全に液とガスのニ相状態となるが、本発明の冷凍サイクル装置の場合は第1の絞り装置の入口から出口までずっと液状態で減圧することとなるので、不快な冷媒音の発生を抑制することができる。
【0019】
図4に、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において、第2の絞り装置の開度と中間温度との関係を示す。ここで中間温度とは、冷媒温度検出手段105によって検出される第1と第2の絞り装置の間の冷媒温度である。図4に示すように、冷房負荷が変わると中間温度のピーク点も異なるため、負荷を検出して中間温度のピーク点(Ap、Bp、Cp)を明らかにする必要がある。
【0020】
図5に、本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置において、第2の絞り装置の開度を変化させたときのモリエル線図を示す。図5に示すように、第2の絞り装置の開度を小さくするに従って、第1の絞り装置出口冷媒の比エンタルピ値は減少し、第1の絞り装置出口のポイントではE1→E2→E3のように変化する。
【0021】
図6に示す本発明の実施の形態1に係る冷凍サイクル装置の制御フローチャートにて動作を説明する。
【0022】
図6に示すように、まず、要求負荷に応じた冷凍サイクル運転が開始されたのち、ステップ201では、第2の絞り装置の開度が初期値Xになるように制御する。
【0023】
次にステップ202では、第2の絞り装置の開度を絞るように制御し、ステップ203に移る。ステップ203では中間温度Tを計測し、ステップ204に移る。ステップ204にて、中間温度の時間に対する変化率ΔT[deg/s]と設定値A[deg/s]とが比較され、ΔT≧Aの場合はステップ205に移り、ΔT<Aの場合はステップ202に戻る。なお、温度変化率を確認しなくても、第2の絞り装置の開度制御自体は可能である。
【0024】
そして、ステップ205にて、負荷検出手段110にて検出した冷凍サイクル装置の負荷にもとづき、飽和液温度Txを求める。ここでいう飽和液温度とは、第1と第2の絞り装置の間の冷媒温度である中間温度Tと、第2の絞り装置の開度との関係において、冷凍サイクル装置の負荷によって決まる中間温度カーブのピークの温度(図4では、Ap、Bp、Cp)である。なお、負荷から飽和液温度を求めるには、都度演算によって導いてもよいし、あらかじめ負荷と飽和液温度との関係をテーブル等で記憶しておき、それから読み出してもよい。
【0025】
さらに、ステップ206に移り、負荷検出手段110にて検出した冷凍サイクル装置の負荷にもとづく所定の値を飽和液温度Txに付加し、第2の絞り装置の開度制御の目標値である中間温度目標値T1を算出しステップ207に移る。ステップ207では、第2の絞り装置の開度を小さくするように制御し、ステップ208に移る。ステップ208では、比較手段111により中間温度Tと目標値T1とを比較し、T≦T1のときはステップ209に移り、コントローラ109により第2の絞り装置の開度制御を停止し、制御フローを終了する。なお、T>T1のときはステップ207に戻り、さらに第2の絞り装置の開度を絞る。
【0026】
以上のように、第2の絞り装置106を制御することによって、キャピラリチューブで減圧する行程における冷媒を液状態にすることができる。これによって、不快な冷媒音の発生を抑制しつつ、コストや設置スペースを増やすことなく、冷凍サイクル装置の省エネルギー化を図ることができる。
【0027】
また、第1の絞り装置に圧縮機の入口配管と熱交換を行う内部熱交換器を有しているので、併せて高圧側の冷媒密度を低下させることができ、冷凍サイクル装置内の冷媒封入量の増加を抑制することができる。
【0028】
なお、第1の絞り装置は、キャピラリチューブであってもよい。そうすることによって、設置スペースを増やすことなく、不快な冷媒音の発生を防ぎつつ、高効率な運転を実現することができる。
【0029】
また、冷媒状態量検出手段は冷媒圧力検出手段であってもよい。かかる構成によって、さらに確実に第1の絞り装置の入口から出口までの冷媒を液状態とすることができるので、不快な冷媒音の発生を防ぎつつ、高効率な運転を実現することができる。
【0030】
さらに、冷媒は二酸化炭素であってもより。そうすることによって、さらに高効率な冷凍サイクル装置の運転を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明にかかる冷凍サイクル装置は、給湯用や空調用など、様々な用途の冷凍サイクル装置として利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
11 圧縮機
13 放熱器
17 キャピラリチューブ
24 内部熱交換器
101 圧縮機
102 4方弁
103 放熱器
104 第1の絞り装置
105 冷媒温度検出手段
106 第2の絞り装置
107 蒸発器
108 内部熱交換器
109 コントローラ
110 負荷検出手段
111 比較手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷媒を昇圧する圧縮機と、4方弁と、前記昇圧された冷媒を冷却する第1の熱交換器と、冷媒を減圧膨張する第1の絞り装置と第2の絞り装置と、前記第2の絞り装置で減圧膨張された冷媒を加熱する第2の熱交換器とを環状に接続し、
前記第1の絞り装置は前記圧縮機の入口配管と熱交換を行う内部熱交換器を有し、
前記第1の絞り装置と第2の絞り装置の間の冷媒の状態量を検出する冷媒状態量検出手段と、
冷凍サイクル装置の冷房または暖房負荷を検出する負荷検出手段と、
前記冷媒状態量検出手段によって検出された前記冷媒の状態量と、前記負荷検出手段で検出された冷房または暖房負荷に対応する飽和液状態量から求めた冷媒状態量目標値とを比較する比較手段と、
前記比較手段の結果に応じて、前記第1の絞り装置の出口冷媒の比エンタルピ値が所定の値よりも小さくなるように、第2の絞り装置の開度を制御するコントローラと
を備える冷凍サイクル装置。
【請求項2】
前記コントローラは、前記第1の絞り装置の出口冷媒が液状態となるように第2の絞り装置の開度を制御する請求項1に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項3】
前記冷媒状態量検出手段は、冷媒の温度を検出する冷媒温度検出手段であり、
前記比較手段は、前記冷媒温度検出手段によって検出された前記冷媒の温度と、前記冷房または暖房負荷に対応する飽和液温度から求めた冷媒温度目標値とを比較する
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項4】
前記冷媒状態量検出手段は、冷媒の圧力を検出する冷媒圧力検出手段であり、
前記比較手段は、前記冷媒圧力検出手段によって検出された前記冷媒の圧力と、前記冷房または暖房負荷に対応する飽和液圧力から求めた冷媒圧力目標値とを比較する
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項5】
前記内部熱交換器は、前記第1の絞り装置の一部をキャピラリチューブとした
請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項6】
前記冷媒は二酸化炭素である、請求項1または2に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項7】
コントローラにより第2の絞り装置の開度を初期値から絞るステップと、
冷媒温度検出手段により第1の絞り装置と前記第2の絞り装置の間の冷媒の温度である中間温度Tを検出するステップと、
負荷検出手段により検出した冷凍サイクル装置の負荷から、前記第1の絞り装置の出口冷媒の比エンタルピ値が所定の値よりも小さくなる飽和液温度Txを求めるステップと、
前記飽和液温度Txにもとづき、第2絞り装置の開度制御の目標値である冷媒温度目標値T1を求めるステップと、
比較手段により前記中間温度Tと前記冷媒温度目標値T1とを比較するステップと、
T≦T1となったときに、コントローラにより第2の絞り装置を絞る操作を停止するステップと
により、前記第2の絞り装置の開度を制御する冷凍サイクル装置の制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−189275(P2012−189275A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−54116(P2011−54116)
【出願日】平成23年3月11日(2011.3.11)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)